発行企業名 大健工業 株式会社 所 在 地 岐阜県中津川市茄子川字鯉ケ平 1143 番地 代 表 者 髙木 海 事業内 容 ダイカスト(ダイキャスト) 製品鋳造および加工 資 本 金 10 百万円 設 立 1966 年 6 月 10 日 第三者評価機関 株式会社 格付投資情報センター評価レポート:https://www.r-i.co.jp/rating/esg/index.html
2023 年 7 月 25 日
大健工業 株式会社との
ポジティブ・インパクト・ファイナンスの契約締結について
岐阜信用金庫(理事長 好岡 政宏)は、持続可能な社会への貢献を共に実現するため、 大健工業 株式会社(代表取締役 髙木 海)と、「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結いたしましたのでお知らせします。
岐阜信用金庫は、引き続き、地域金融機関としての責任を果たし、ポジティブ・インパクト・ファイナンスの普及と持続可能な社会を実現するために、お客さまの目標にあわせたサポートを行い、ポジティブな社会的、環境的、経済的なインパクトの実現に積極的に取り組
んでいきます。
記
【契約内容】
融 資 金 額 | 100 百万円 |
期 間 | 5 年 |
資 金 使 途 | 事業資金 |
【企業概要】
発行企業名 | 大健工業 株式会社 |
所 在 地 | 岐阜県中津川市茄子川字鯉ケ平 1143 番地 |
代 表 者 | 髙木 海 |
事業内 容 | ダイカスト(ダイキャスト) 製品鋳造および加工 |
資 本 金 | 10 百万円 |
設 立 | 1966 年 6 月 10 日 |
第三者評価機関 | 株式会社 格付投資情報センター |
以 上
大健工業株式会社
ポジティブインパクトファイナンス評価書
2023 年 7 月 25 日
岐阜信用金庫は、大健工業株式会社(以下、「大健工業」)に対してポジティブインパクトファイナンス(以下、「PIF」)を実施するにあたって、同社の事業活動が環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブインパクトおよびネガティブインパクト)を分析・評価した。この分析・評価は、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した PIF 原則およびPIF 実施ガイド
(モデル・フレームワーク)、ESG 金融ハイレベル・パネルにおいてポジティブインパクトファイナンスタ
スクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則ったうえで、岐阜信用金庫が開発した評価体系に基づいている。
目次
(1) 高品質と小ロット対応・環境負荷軽減を達成する生産体制整備 5
(3) 省エネ型設備の活用による環境に配慮したものづくり体制の整備 7
企業名 | 大健工業株式会社 |
本社所在地 | 岐阜県中津川市茄子川字鯉ケ平 1143 番地 |
代表者 | 代表取締役 髙木 海 |
資本金 | 1,000 万円 |
売上高 | 603 百万円(2022 年 5 月期) |
創業 | 1955 年 4 月 |
設立 | 1966 年 6 月 |
事業内容 | ダイカスト(ダイキャスト) 製品鋳造および加工 |
従業員数 | 47 名(2023 年 6 月現在) |
許認可 | 品質管理システム認証 ISO9001 取得 |
1955 年 | 創業 |
1966 年 | 大健工業株式会社として法人設立 |
2002 年 | 品質管理システム認証 ISO9001 取得 |
同社は岐阜県中津川市に本社を構えるアルミダイカスト製品製造業である。
【特徴】 同社ではアルミダイカスト製品製造に特化し、金型の設計製造から鋳造、加工まで一貫した生産体制により、ムダ・ムリ・ムラを省くことで高品質と低コスト化を両立させたものづくりを実現している。 |
創業以来、50 年以上にわたりアルミダイカスト一筋に技術と実績を磨き続けてきた同社は、自動車用ターボチャージャー部品、自動車用バルブ部品などの自動車市場を中心とし、高品質なアルミダイカスト製品を提供している。自動車部品以外にも照明器具や産業機械関連など他分野からの生産依頼にも対応している。
①経営理念
「経営理念」
社員の幸福実現の追求社会の幸福実現への貢献
「企業ビジョン」
・技術を維持・向上させお客様に提供し続ける
・お客様に安心してもらえる生産管理・品質管理
・工場、及び事務所の3S を徹底する
・社員が安心して働き、身内に勧めたくなる職場づくり
・事業の持続的発展
②組織体制
同社においては取締役会のもと、「製造部」、「生産管理部」、「営業部」、「総務部」の 4 事業部にて事業を展開している。
取締役会
総務部
営業部
生産管理部
製造部
総務課
生産管理課
品質管理課
技術課
鋳造課
加工課
(1) 高品質と小ロット対応・環境負荷軽減を達成する生産体制整備
同社では創業以来 50 年以上にわたりアルミダイカスト鋳造に特化し蓄積してきたノウハウ、技術力に裏付けられた金型の設計製造から鋳造、加工まで一貫した生産体制により、高品質と多品種小ロット対応の両立を特徴としている。
① 小型マシンでの鋳造対応
同業他社が 500~800t 超クラスのダイカストマシンを使用して鋳造するケースでも、同社では蓄積されたノウハウと技術力により、わずか 350t のマシンでの鋳造を可能としている。
最小限のマシンレートで最大限の生産を実現することでのコスト削減に加えて、離型剤使用量の削減を通じて環境負荷低減も実現している。
② 製品重量比率向上による材料消耗の削減
ダイカスト製品製造に必要不可欠となるオーバーフロー(ガス通路)について、効率的に最小限のオーバーフローを実現する経路設計により鋳造後製品の品質安定化を実現している。
これにより、鋳造後のバリ取り加工を最小限とすることでのコスト削減、余計な材料消費を抑制することでの環境負荷低減を実現している。
③ 外寸の取付寸法標準化
同社では金型の外形寸法を均一化することにより、ムダな金型や材料の出し入れ作業をカットし、作業効率の向上を実現している。
この作業効率向上により、コスト低減と従業員の労働負荷軽減を実現している。
これらの生産体制により、本来大量生産に適しているダイカスト鋳造を用いながらも 100 個以下の小ロット案件対応を可能としており、金型設計から鋳造、加工までの一貫対応による短納期対応を実現することで受注先からの高い評価を得てきている。
同社では上記のような生産体制を活用しながら、ムダ・ムラ・ムリを撲滅するために、製造工程ごとに1個または1台ずつ加工、組付けを行い1個ずつ次工程へと流していく「1 個流し生産方式」を採用している。 これにより工程間の待ち時間を削減するとともに、製造工程を明確化することで問題発生時の正確な原因究明を 実現し高品質、短納期のものづくりを実現している。 |
加えて、品質面においても国際規格である ISO9001 を取得し品質管理に万全の体制を敷いており、日進月歩で品質面の進歩が求められる自動車産業を主力産業としながら事業を展開してきている。
同社ではものづくりを支える人材の育成、定着に向け、従業員の技術習得支援および労働環境の改善に取り組んでいる。
① ものづくり人材の育成体制整備
同社では同社のものづくりを支える人的資源への取り組みを重要視しており、従業員のものづくり技術習得を支援している。
特に、若手従業員については入社 1 年目の教育ロードマップを制定し、入社後の 1 年間でものづくりに関する基礎知識の定着を実現する計画的教育に取り組み、会社負担にて各種技能検定の取得を促進している。
また、キャリアシミュレーションの設定、人事評価制度の制定による人事考課体系の整理や、資格取得者への資格手当支給を通じた業務に関連する資格取得の奨励に努めており、働きがいのある職場形成を図っている。
<.. image(グラフィカル ユーザー インターフェイス, テーブル 自動的に生成された説明) removed ..>
さらに、子育て中の従業員の仕事と育児の両立に向けて、通常入社半年を経過したタイミングで付与される有給休暇を入社 1 日目より付与し、働きやすい職場環境の形成に努めている。
② 労働環境の改善
同社ではアルミ素材を高温で融解し、金型に流し込むことで成形するアルミダイカスト鋳造に特化していることから、製造環境については高温となり、特に夏場については過酷な労働環境となる。
これに対し、従業員にファン付きの作業服の支給、休憩時の飲料支給等を実施しているほか、不要な残業の抑制に努めることで労働環境の改善を図り従業員の労働負荷低減に取り組んでいる。
③ 技能実習生、特定技能実習生等多様な人材の雇用
同社では外国人技能実習生、特定技能実習生を継続的に採用、雇用しており、外国人従業員の働きやすい環境整備のため、職場環境のみならず日本での生活支援についても実施している。具体的には、外国人実習生への日本語習得の支援、経営者による定期的な面談に加えて、
生活基盤となる住居についても技能実習生、特定技能実習生専用の寮を整備している。
(3) 省エネ型設備の活用による環境に配慮したものづくり体制の整備
同社では製造工程における効率化の工夫による環境負荷の軽減への取り組みに加え、製造設備についても省エネ型設備への更新を進めている。
同社製造工程において最も環境負荷が高いと想定されるアルミ素材のガス融解炉について、7基中 1 基を省エネ型モデルへ更新済みであり、今後すべての融解炉を省エネ型モデルへ更新することで製造コストの削減と環境負荷の低減を実現していく方針である。
また、先に記載のとおり同社の特徴として小型マシンでの鋳造対応が挙げられ、最小限のマシンレートで最大限の生産を実現することにより、製造時の過剰なエネルギー使用を抑制している。
インパクトの特定のため、同社主力事業である「アルミダイカスト製品製造事業」についてバリューチェーン分析を実施した。
同社ではアルミダイカスト製品の一貫生産体制を構築し、多品種小ロット生産を得意として主に自動車産業向けに製品提供を実施している。
同社一貫生産体制においては、金型設計・製造からダイカスト鋳造、バリ取り、鋳造後の切削加工までの各工程を一貫対応しており、川下の事業者の高品質、低コスト、短納期ニーズを満たしている。
このダイカスト製品一貫生産体制において、創業以来のノウハウ、技術の蓄積を活用した小ロット生産対応力、ISO9001 による徹底した品質管理を通じた高品質維持が同社優位性の源泉となっており、量産部品受注に加えて試作開発段階から量産段階までの早期立ち上げについても受注先より高い評価を得ている。
また、近年では従来からの主力産業であった自動車産業に加え、照明器具部品や産業用ロボッ ト部品をはじめとする同社技術の適用分野の拡大を図っており、川下の事業者の開拓に努めている。
同社のバリューチェーン図(図は同社提供資料をもとに岐阜信用金庫にて作成)
先述のバリューチェーン分析の結果をもとに、インパクトマッピングを実施する。
同社の事業および川上・川下の事業を国際産業標準分類(ISIC)上の業種カテゴリに適用させた上、UNEP FI が提供するインパクトレーダーを用いて「ポジティブインパクト」(以下 PI)と「ネガティブインパクト」(以下 NI)を想定する。
同社の事業については「非鉄金属鋳造業(ISIC:2432)」、「金属の処理・塗装・機械加工業
( ISIC:2592 ) 」、を、川上の事業については「第一次貴金属・その他非鉄金属製造業
(ISIC:2420」を、川下の事業については「自動車部品及び付属品製造業 ISIC:2930)」、「その他の特殊産業用機械製造業(ISIC:2829)」をそれぞれ適用し、発生するインパクトの検証を行った。
◎:主要カテゴリ ○:関連カテゴリ
川上の事業 | 同社の事業 | 川下の事業 | ||||||||
国際産業標準分類 インパクトカテゴリ | 【2420】 第一次貴金属・ その他非鉄金属製造業 | 【2432】 非鉄金属鋳造業 | 【2592】 金属の処理・塗装・機械加工業 | 【2930】 自動車部品及び付属品製造業 | 【2829】 その他の特殊産業用機械製造業 | |||||
PI | NI | PI | NI | PI | NI | PI | NI | PI | NI | |
水 | ||||||||||
食糧 | ||||||||||
住居 | ○ | |||||||||
健康・衛生 | ||||||||||
教育 | ||||||||||
雇用 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
エネルギー | ||||||||||
移動手段 | ○ | ○ | ||||||||
情報 | ○ | |||||||||
文化・伝統 | ||||||||||
人格と人の安全保障 | ||||||||||
正義・公正 | ||||||||||
強固な制度・平和・安定 | ||||||||||
水(質) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
大気 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
土壌 | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ||||||
生物多様性と生態系サービス | ||||||||||
資源効❹・安全性 | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ○ | |||||
気候 | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | |||||
廃棄物 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
包括的で健全な経済 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
経済収束 | ○ |
上表のうち、同社事業に関わる「住居」、川上の事業は同社事業との関連性が希薄と判断し分析を省略した。また、川下の事業に関しては「移動手段」のみを分析対象とし、その他は同社事業との関連性が希薄と判断し、分析を省略した。
同社の事業
PI | 「雇用」、「包括的で健全な経済」 |
NI | 「雇用」、「水(質)」、「大気」、「土壌」、「資源効率・安全性」、「気候」、「廃棄 物」 |
【社会面】
◆「雇用」
従業員の雇用の創出という PI と、労働形態によっては労働者の健康状態が脅かされるという NI が発現する。
同社では定年後再雇用制度の積極活用等や従業員に対する計画的なものづくり技術習得支援をはじめとする人材育成体制の整備を通じて PI の拡大に努めており、また、ファン付き作業服の配布や休憩時に飲料配布をおこなうなど労働環境の改善を図り NI の低減に努めている。
上記は SDG8「働きがいも経済成長も」に該当する。
□「8.2:高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化や技術向上、イノベーションを通じて、より高いレベルの経済生産性を達成する。」
□「8.5:2030 年までに、若者や障害者を含むすべての女性と男性にとって、完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい仕事を実現し、同一労働同一賃金を達成する。」
□「8.8:移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある人々を含め、すべての労働者を対象に、労働基本権を保護し安全・安心な労働環境を促進する。」
【環境面】
◆「水(質)」、「大気」、「土壌」、「資源効率・安全性」、「気候」、「廃棄物」
同社アルミダイカスト製品の製造工程において水質や大気、土壌への汚染が発生する可能性があることに加え、非効率な製造プロセスによるエネルギーの過剰利用や温室効果ガスの排出量増加が懸念される。また、製造工程での廃棄物増加などにより環境問題が発生する可能性があり、NI が発現する。
同社ではアルミダイカスト製品製造に利用する原料についてはリターンアルミを主成分とする ADC12 を用いており、また製造に用いる融解炉についても省エネ型モデルへの更新を進めているほか、小型マシンによる生産によって過剰なエネルギー利用を抑制しており、また工場排水についても処理装置を設け外部への有害物質の流出を防止することで NI の低減に努めている。
上記は SDG12「つくる責任つかう責任」、SDG13「気候変動に具体的な対策を」に該当する。
□「12.4:2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクル全体を通じて化学物質や廃棄物の環境に配慮した管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小限に抑えるため、大気、水、土壌への化学物質や廃棄物の放出を大幅に減らす。」
□「12.5:2030 年までに、廃棄物の発生を、予防、削減(リデュース)、再生利用(リサイクル)、や再利用(リユース)により大幅に減らす。」
【経済面】
◆「包括的で健全な経済」
自社の事業活動が地域経済活性化につながることに加え、自動車産業のサプライチェーン全体を支えているという PI が発現する。
同社では、主力産業である自動車産業に対して、自動車部品の金型の設計製造から鋳造、加工まで一貫した生産体制を構築することで、迅速な生産体制を整え自動車産業のサプライチェーンの一部を支えている。また、今後、自動車産業に加えて同社技術の適用分野拡大を図ることで、試作開発から量産体制立ち上げまでの早期対応力強化による受注量拡大を目指し地域経済の活性化を図っていく方針である。以上の取り組みにより PI 拡大に努めている。
上記は SDG9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に該当する。
川下の事業
PI | 「移動手段」 |
【社会面】
◆「移動手段」
自動車製造において、安全、安心な移動手段の普及を促進させるという PI が発現する。
同社では自動車産業向けに高品質、低コスト、短納期アルミダイカスト製品提供を通じて、自動車製造における品質確保、納期短縮、低コスト化の実現に貢献しており、PI 拡大へと貢献している。
上記は SDG9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に該当する。
下図は「バリューチェーン分析」「インパクトマッピング」の結果を踏まえて、同社のバリューチェーンが与えるインパクトを可視化したものである。
技術革新
SDG9
雇用創出
地域経済活性化
SDG8
SDG9
正の影響
環境負荷
労働負荷
SDG12 SDG13
SDG8
負の影響
以上を踏まえて同社のインパクトを下記の 3 つに特定した。
【重要なインパクト】
「高品質・低コスト・環境負荷軽減につなげる計画的な省エネ設備更新」
「アルミダイカスト製品の特徴を生かした新規分野展開」
「ものづくり人材育成体制の整備を通じた地域雇用の創出」
① 高品質・低コスト・環境負荷軽減につなげる計画的な省エネ設備更新:SDG9、12、13
同社ではアルミダイカスト製品の一貫製造体制のもと、創業以来培ってきたダイカスト鋳造ノウハウ、技術の活用により高品質と低コストを両立させた多品種小ロット生産への対応を特徴としてきた。
この製造工程においては、小型マシンの積極活用により最小限のマシンレートで最大限の生産を実現することで低コスト化に加えて離型剤の使用量抑制、過剰な原材料使用の抑制により環境負荷軽減にも貢献してきている。
このように高品質と低コスト、短納期を実現する多品種小ロット生産への対応力を優位性としてきた同社であるが、受注先からの低コスト化ニーズは根強く、また製造工程で発生するエネルギーコストをはじめとする原価高騰の影響もあり収益性強化は継続的課題となっている。
これに対し、同社はこれまでも継続してきた製造工程におけるムダ・ムラ・ムリの撲滅に向けた改善活動に加えて、同社製造工程において必須となるアルミ素材の融解工程に利用する融解炉の省エネ型モデルへの更新を実施していく方針である。
全 7 基中1基については更新済みとなり、今後残り6基についても計画的に省エネ型モデルへの更新を実施していく計画であり、アルミ素材融解時のガス使用量、エネルギー使用量の抑制により、同社製造コストの低減と環境負荷の低減を両立させていく方針である。
また、工場全体の省エネ最適化診断を現在進めており、診断結果に沿った工場内環境の改善により製造工程におけるエネルギー使用量の削減を進めていく方針である。
これらのインパクトは UNEP FI のインパクトレーダーでは「資源効率・安全性」、のカテゴリに該当し、環境的側面の NI を緩和すると考えられる。
② アルミダイカスト製品の特徴を生かした新規分野展開:SDG9、12、13
従来、自動車産業を主力産業としてきた同社であるが、同産業への依存度が高く同産業における業界動向の影響を受けやすいことから、近年は積極的に他分野への取引拡大を図り照明器具や産業機械など 5 年間で 10 社内外の新規取引先開拓を実現している。
自動車産業への貢献は継続しつつ新分野からの受注拡大を図るためには、試作開発から量産体制構築までの開発リードタイムの短縮が必須であり、社内製造体制整備が同社今後の課題となっている。
同社ではこれに対し、新工場を取得し体制整備に取り組んでいく方針であり、新工場と現工場での開発、量産の役割分担の明確化、治具製造の内製化等を通じて受注先の要請に応え、販路開拓を実現していく方針である。
同社が得意とするダイカスト製造は一般的に切削加工による部品製造と比較し、製造数量が少ない段階では生産効率が低下するが、一定数量を確保できるようになれば、生産工程における効率化が図られるという特徴がある。また、ダイカスト製造は複雑形状においても寸法精度が高い点や後工程の負担軽減が図られるという特徴がある。同社では 100 個以下の受注にも対応できる体制を構築しており、小ロットでもダイカスト製造における効率化のメリットを生み出すことができるため、自動車産業を中心に培ったノウハウ・技術を他分野での応用が可能である。
これにより、同社アルミダイカスト製品製造技術の適用分野拡大を通じた地域経済の活性化につなげていくとともに、開発フェーズから量産フェーズまでの円滑な製造体制立ち上げを通じ
た資源効率の改善を実現し、環境負荷の低減を図る。
これらのインパクトはUNEP FI のインパクトレーダーでは「資源効率・安全性」、「包括的で健全な経済」のカテゴリに該当し、経済的側面の PI を拡大し、環境的側面の NI を緩和すると考えられる。
③ ものづくり人材育成体制の整備を通じた地域雇用の創出:SDG8
同社ではものづくり人材の計画的な育成体制の整備、製造現場を中心とした労働環境の整備を通じて働きがいのある職場形成に努めている。
若手人材については同社への勤務を通じてものづくりに関する基礎知識の定着、技能検定取得に取り組むことができ、またジョブローテーション制度や人事評価制度の制定、活用により年齢、性別を問わず多様な人材が活躍、キャリアアップできる環境を整備している。
また、製造工程においても高品質、低コスト、短納期の実現に向けた作業標準化への取り組み、金型の寸法の均一化によるムダな金型や材料の出し入れ作業の削減といった工夫によって、従業員の多能工化、対応要員の拡大を図っている。
これらの取り組みを通じて、地域において多様な人材が分け隔てなく労働を提供できる環境を整備し、地域社会の発展に貢献している。
同社では今後、同社技術の適用分野拡大を通じた事業規模拡大を計画しており、既存分野での技術・ノウハウを習得した従業員の新分野への配置転換をしていく方針である。これに伴い、既存分野での雇用の確保、従業員育成を実現していく方針である。
これらのインパクトは UNEP FI のインパクトレーダーでは「雇用」のカテゴリに該当し、社会的側面において PI を拡大すると考えられる。
① 日本におけるインパクトニーズ
同社売上高の大半は日本国内におけるものであり、国内における SDG インデックス&ダッシュボードを参照し、そのインパクトニーズと同社のインパクトとの関係性を確認した。
本 PIF において特定したインパクトに対応する SDGs のゴールは、以下の4点である。
「 8:働きがいも経済成長も」
「 9:産業と技術革新の基盤をつくろう」
「12:つくる責任、つかう責任」
「13:気候変動に具体的な対策を」
国内における SDG ダッシュボード上では、「9」に関しては「達成に近づいている」とされているものの、「12」、「13」に関しては「大きな課題が残る」、「8」に関しては「重要な課題が残る」とされて おり、同社における高品質と低コスト、短納期を実現するアルミダイカスト製品製造への取り組み、新規分野への展開、従業員の人材育成および労働環境改善への取り組みや、環境負荷低減の取り組みなどが、日本国内におけるインパクトニーズと一定の関係性があることを確認した。
(出典:SDSN)
② 岐阜県におけるインパクトニーズ
同社の事業活動は立地する岐阜県を中心に行われていることから、「岐阜県 SDGs 未来都市計画」を参照し、岐阜県内における SDGs 達成に向けての課題を確認した。
下記の通り、岐阜県では「<環境>美しい清流とそれを育む豊かな森の保全と活用」、「<経済>「清流の国ぎふ」ブランドと変化に強い地域経済の確立」、「<社会>誰もが活躍し生きがい を感じられる地域社会の構築」を 2030 年のあるべき姿と設定し SDGs 達成に向けた課題を設定しており、同社の高品質と低コスト、短納期を実現するアルミダイカスト製品製造への取り組み、新規分野への展開、従業員の人材育成および労働環境改善への取り組みや、環境負荷低減の取り組みといった取り組みが、岐阜県におけるインパクトニーズと一定の関係性があることを確認 した。
<.. image(グラフィカル ユーザー インターフェイス, テキスト, アプリケーション 自動的に生成された説明) removed ..>
(出典:岐阜県第 2 期 SDGs 未来都市計画の概要)
③ 岐阜信用金庫との親和性
◆「ぎふしん SDGs 宣言」
以下の 3 項目を SDGs 達成に向けた重点課題としている。
(1)持続可能な地域の経済成長のための活動
(2)持続可能な地域産業の基盤構築のための活動
(3)持続可能なまちづくりのための活動
◆親和性の確認
本件 PIF の取り組みに際し特定した当社のインパクトである「高品質・低コスト・環境負荷軽減につなげる計画的な省エネ設備更新」は、「ぎふしん SDGs 宣言」の(3)と、「アルミダイカスト製品の特徴を生かした新規分野展開」は「ぎふしん SDGs 宣言」の(1)、(2)と、「ものづくり人材育成体制の整備を通じた地域雇用の創出」は「ぎふしん SDGs 宣言」の(2)と親和性があり、相互に協力しあうことで、「経済」「社会」「環境」の 3 つの側面に渡り、持続可能な開発に関する枠組みとして、良質な効果が発生するものと思われる。
以上から、本 PIF の取組みは追加性のある PI 創出支援を行うものであり、その本源的目的との合致を確認したうえで SDGs 達成に向けた資金需要と資金供給とのギャップを埋めることを目指すものである。
特定したインパクトの発現状況を今後も継続的に測定可能なものとするため、先に特定したインパクトに対し、インパクトの種類、インパクトカテゴリ、関連する SDGs、内容・対応方針および目標と KPI を整理、設定する。
■高品質・低コスト・環境負荷軽減につなげる計画的な省エネ設備更新
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | 環境的側面においてネガティブインパクトを緩和 |
インパクトカテゴリ | 「資源効率・安全性」 |
関連するSDGs |
|
内容・対応方針 | ・融解炉を中心とした製造設備の省エネ型設備への更新計画の策定、実行。 ・省エネ診断結果に基づく製造工程における継続的な改善活動の検討、実行。 ・これらを通じて、製造工程における過剰なエネルギー使用を抑制し、収 益性向上とエネルギー削減による環境負荷軽減を両立する。 |
目標とKPI | ・2025 年 5 月期までに、融解炉全 7 台(うち 1 台は更新済み)をすべて省エネ型設備に更新する。 ・2028 年 5 月期において、製品 1 単位当たり製造時利用LP ガス使 用量を 30%削減する。 |
■アルミダイカスト製品の特徴を生かした新規分野展開
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | 経済的側面においてポジティブインパクトを拡大 環境的側面においてネガティブインパクトを緩和 |
インパクトカテゴリ | 「資源効率・安全性」「包括的で健全な経済」 |
関連するSDGs |
|
内容・対応方針 | ・新工場環境整備を通じた開発リードタイム短縮を実現する社内製造体制整備計画の立案、実行。 ・本社工場と新工場の役割分担の明確化、治具製造の内製化等を通じた継続的な開発リードタイム短縮に向けた改善活動の実行。 ・これらの取り組みを通じて新規産業分野への販路開拓を実現する。 |
目標とKPI | ・2028 年 5 月期までに、新たに産業機械分野、医療介護分野、レジャー分野を新規開拓し、継続的取引先を確保する。 ・2028 年 5 月期において、同社売上構成比のうち、自動車産業以 外の新規開拓分野構成比率を 25%以上とする。 |
■ものづくり人材育成体制の整備を通じた地域雇用の創出
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | 社会的側面においてポジティブインパクトを拡大 |
インパクトカテゴリ | 「雇用」 |
関連するSDGs | |
内容・対応方針 | ・若手従業員を中心としたものづくりに関する基礎知識、技能検定取得支援の計画的な継続実施。 ・ジョブローテーション制度や人事評価制度の継続的見直しによる従業員の働き甲斐ある職場環境の形成。 ・従業員からの労働環境改善に向けた意見収集の仕組み化 を通じた労働環境改善の実行。 |
目標とKPI | ・2028 年 5 月期まで、新規採用者を毎期 1 名以上確保する。 ・新規雇用者の機械検査 3 級試験およびフライス盤 3 級試験の取得率 100%達成。(経験者を除く) (1 年目:機械検査 3 級試験、2 年目:フライス盤 3 級 試験) |
同社では、髙木社長を中心に自社業務の棚卸を行い、本 PIF におけるインパクトの特定、並びに KPI の設定を行った。
今後については、以下の体制を中心とした同社プロジェクトチームが柱となって SDGs の推進、本 PIF で設定した KPI の進捗管理を行っていく方針である。
【モニタリング体制】
統括責任者 | 代表取締役 | 髙木 海 |
本PIF で設定した KPI および進捗状況については、同社と岐阜信用金庫の担当者が定期的な場を設けて情報共有する。情報共有については、少なくとも年に 1 回実施することに加え、日々の情報交換や営業活動を通じて実施していく。
下記の通り融資返済期間と同一期間にて定める。
モニタリング期間 (返済期間) | 5 年間 (2028 年 7 月 10 日) |
【留意事項】
1.本評価書の内容は、岐阜信用金庫が現時点で入手可能な公開情報、大健工業株式会社から提供された情報や同社へのインタビューなどで収集した情報に基づいて、現時点での状況を評価したものであり、将来における実現可能性、ポジティブな成果等を保証するものではありません。
2.岐阜信用金庫が本評価に際して用いた情報は、岐阜信用金庫がその裁量により信頼できると判断したものではあるものの、これらの情報の正確性等について独自に検証しているわけではありません。岐阜信用金庫は、これらの情報の正確性、適時性、網羅性、完全性、および特定目的への適合性その他一切の事項について、明示・黙示を問わず、何ら表明または保証をするものではありません。
3.本評価書に関する一切の権利は岐阜信用金庫に帰属します。評価書の全部または一部を自己使用の目的を超えての使用(複製、改変、送信、頒布、譲渡、貸与、翻訳及び翻案等を含みます)、または使用する目的で保管することは禁止されています。