Contract
第6章 雑 則
(売買契約に基づかないで送付された商品)
第 59 条 販売業者は、売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者及び売買契約を締結した場合におけるその購入者(以下この項において「申込者等」という。)以外の者に対して売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合又は申込者等に対してその売買契約に係る商品以外の商品につき売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合には、その送付した商品の返還を請求することができない。
2 前項の規定は、その商品の送付を受けた者が営業のために又は営業として締結するこ
ととなる売買契約の申込みについては、適用しない。
趣 旨
本条は購入の申込みをしていない者に一方的に商品を送り付け、その代金の請求をするいわゆるネガティブ・オプションに関する規定である。
解 説
1 法律的には、一方的に商品を送り付ける又は配置する行為を行った販売業者が勝手に、
「購入の意思がない旨の通知がなければ購入を承諾したものとみなす。」と言っても売買契約は成立しない。また、勝手に商品を送付して、「購入しなければ返送せよ。返送しなければ購入とみなす。」と言っても商品の返送義務は生じない。しかし、民法の一般原則のみに委ねた場合、その商品を受領した後においては、他人の所有物である以上は、勝手に処分することはできないと解される。このような状態を長期にわたって続けることは、消費者に過重な負担を強いることになるため、一方的に送り付けられた商品は直ちに処分できることとしたものである。
なお、本条第1項は昭和 63 年の改正以降、長期にわたり、送付から 14 日(消費者が引取りを請求した場合は請求の日から7日)を経過するまでは、一方的な送り付けを行った販売業者に商品の返還請求を行う余地を留保する形で規定されていた。しかしながら、売買契約が存在しないのに商品を一方的に送付し、売買契約の申込みをする行為は、何ら正常な事業活動とみなされず、一切正当性のない行為であり、一方的に送り付けた商品について、代金を支払わなければならないと誤認させて代金を請求するような行為は、一種の詐欺行為であるとも考えられ、令和2年度に商品の一方的な送り付けに関するトラブルが増加したこと、諸外国の制度状況等にも鑑み、一方的に送り付けた商品について販売業者が(直ちに)返還請求できない旨を規定することにより、実質的に消費者が当該商品を一定期間保管しておく必要性を排除することとした。
2 「売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合」
本条の適用がある場合の要件としては、①売買契約の申込み行為であること、及び②商
品の送付が行われたことの二つである。
したがって、まず、売買契約の申込みでない場合については、適用がない。例えば、1 年間雑誌の購読を契約した際、1年経過前に購読者から購読を継続しないときにはその 旨を通知すること及びその通知がない場合には継続することについて両当事者間で合意 がなされている場合において、1年経過後当該雑誌を送付してもそれは売買契約の申込 みとはならない。しかし、事前に何らの契約もない状態において勝手に商品を送付すれば、商品を送った行為が申込み行為にも該当する場合が多いであろうから、この場合二つの 要件を充足することとなるので本条は適用される。
いずれにせよ、契約を締結させて代金を支払わせようとして一方的に商品を送付する行為は、①売買契約の申込み行為であること、及び②商品の送付が行われたことの双方の要件を同時に満たすものとなる。
なお、①及び②の要件は、時点が異なっても構わない。両方の要件が充足された時点において、本条の適用対象となる。
当然のことながら、送付を受けた者本人を名宛人としたものではなく、誤配送された商品など誤って送付された商品である場合には、①の売買契約の申込みがないため、本条は適用されない。
また、「送付」とは、ある場所や人から他の場所や人に物を送り届けることであり、その手段は問わない。つまり、通常の場合、発送から到達までの過程を包括した観念として用いられている。したがって、郵便や運送等の手段により送付された場合はもちろん、販売業者自身が消費者へ直接商品を送り届けることも該当する。
例えば、配置販売で消費者の意思を確認しないまま、あるいは、消費者が要らない旨の意思表示をしたにもかかわらず、販売業者が勝手に置いていった場合も本条が適用となる。
本条は、送付された「商品」の種類を問わない。商品について限定を付していない理由は、およそ、かかる行為の対象となり得る商品についてかかる行為が行われた場合、一部商品について本条を適用しない合理的理由がないためである。
3 「その送付した商品の返還を請求することができない。」
解説2の要件に該当することとなった場合には、商品を送付した販売業者は、直ちに商品の返還請求権を失うこととなる。
なお、一方的に送り付けた商品についての返還請求権が消滅すれば、その反射効果として所有権も主張できなくなり、所有権が移転したときと法律効果の差異は生じない。
したがって、その商品の送付を受けた者は、直ちにその商品の処分をすることができる。この場合は、売買契約が成立しておらず、代金支払義務が生じることはない。また、同様 に、当該商品の処分に伴って損害賠償請求や不当利得返還請求に係る支払義務が生じる こともない。
(注)なお、所有権は、憲法上認められた財産権の主要なものである(日本国憲法第 29 条
第1項)ことから、贈与や売買契約といった所有権者の意思表示なくして、ある者の所有権を剥奪し、他者に与えるという法的論理構成については、極めて慎重な検討が必要であることに鑑み、所有権そのものが移転する法的論理構成ではなく、返還を請求することができないと規定することで、その反射的効果として所有権の主張を封じることとしている。
4 第2項は、本法が一般消費者を保護するための規定であるので、商品の送付を受けた者にとって営業のために又は営業として締結することとなる売買契約については適用しない旨規定しているものである(ただし、法第 26 条第1項第1号の解釈と同様、売買契約の申込みを受けた相手方の属性が事業者であることをもって一律に適用除外とするものではなく、xx、事業者を名宛人として商品を送り付けたとしても、当該商品が、事業用というよりも主として個人用・家庭用に使用するためのものであった場合等は、本条第1項は適用される。)。
また、事業者間の商取引においては、営業の部類に属する契約の申込みとともに受け取った物品がある場合に、その申込みを拒絶したときであっても、申込者の費用をもってその物品を保管しなければならないこととされており(商法第 510 条)、これについてまで対象とすることは、実態上問題があると考えられたためもある。
第 59 条の2 販売業者は、売買契約の成立を偽つてその売買契約に係る商品を送付した場合には、その送付した商品の返還を請求することができない。
趣 旨
売買契約に基づかない一方的な商品の送り付けの中には、売買契約が存在しないにもかかわらず、契約があるかのように偽装し、商品を送り付ける悪質な事例もみられる。しかし、この場合に、販売業者が、(偽装された)契約の履行として行う送付については、その送付をもって申込みとすることができるかどうかは疑義があり、法第 59 条第1項が適用されない可能性もある。そこで、この場合も、販売業者は当然に商品の返還を請求することができないことを明確にする必要があることから本条が設けられた。
解 説
販売業者は、売買契約の成立を偽って、商品を送付した場合についても、法第 59 条第1項の場合と同様に、その送付した商品の返還を請求できない。
売買契約の成立を偽って、商品を送付した場合とは、例えば、消費者との間に売買契約は存在しないにもかかわらず、販売業者が「以前電話で注文を受けた商品です。売買契約は成立していますので、代金をお支払いください。」といった趣旨の文書と現金書留封筒を同封して商品を送付するような場合である。なお、商品と請求書を送り付けられた消費者が問い合わせた際に、販売業者が「売買契約が成立している。」などと偽りの主張をした場合も該当する。
(主務大臣に対する申出)
第 60 条 何人も、特定商取引のxx及び購入者等の利益が害されるおそれがあると認めるときは、主務大臣に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。
2 主務大臣は、前項の規定による申出があつたときは、必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置をとらなけれ
ばならない。
趣 旨
消費者保護の徹底を図るためには、行政措置の機動的な発動による法律の実効性担保が重要であり、特に消費者保護の分野においては、行政措置の機動的発動には一般消費者と一体となった取組が必要であることから、かかる規定を設けることとしたものである。
解 説
1 「何人も」
直接の利害関係者に限らず、また、個人、法人、団体を問わず、誰でも申出ができる趣旨である。
2 「申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。」
申出の具体的手続は、省令第 57 条において定められており、主務大臣に対して申出をしようとする者は、様式に従って次の事項を記載した申出書を提出しなければならない。
① 申出人の氏名又は名称及び住所
② 申出に係る取引の態様
③ 申出の趣旨
④ その他参考となる事項
以上四つの事項を記した文書であれば、送付方法等は問わない。
イ 「申出に係る取引の態様」とは、訪問販売、通信販売若しくは電話勧誘販売に係る取引、連鎖販売取引、特定継続的役務提供に係る取引、業務提供誘引販売取引又は訪問購入に係る取引のいずれの取引についての申出かを記載する。
ロ 「申出の趣旨」は、取引のxx及び購入者等の利益が害されるおそれがあると認める事実、主務大臣に対して求める措置並びに当該措置を必要とする理由等につき、なるべく具体的かつ詳細に記載することが望ましい。
ハ 「その他参考となる事項」としては、個別のケースにより異なるが、例えば、被害状況の詳細、受領した広告物や契約書その他の書面、同様の被害を受けた者の証言等のほか、消費生活センターや消費生活アドバイザー等有識者の意見等が考えられる。
(注) 消費者の契約トラブル等については、消費者庁や経済産業省、国民生活センターのほか、都道府県・市町村等に設けられた消費生活センターが日常的な相談業務を行っ
ており、各センターにおいては専門的知識を有する相談員が相談に応じている。申出に際しても各センターでの相談時における事案の検討・整理を踏まえたセンターの意見等(類似案件についての動向の整理や背景となる事情の説明を含む。)を付記することは、申出の趣旨、内容を明らかにし、それに伴う業務の円滑遂行に資するばかりでなく、申出者にとってもその負担を減らす上で有効であると考えられる。
3 申出先は、法第 67 条に規定する主務大臣であるところ、実際の運用としては主に消費者庁長官及びその権限を委任された経済産業局長に対し申出がなされることとなる。このうち、特に地域性のある申出などについては、法第 68 条及び政令第 19 条に基づき、実
際に当該取引が行われている地域の都道府県知事に申し出ることとなる(法第 68 条の解説3を参照。)。
4 「必要な調査」
申出の趣旨に係るような事実があったかどうかについて、関係当事者(販売業者、役務提供事業者、通信販売電子メール広告受託事業者、統括者、勧誘者、一般連鎖販売業者、連鎖販売取引電子メール広告受託事業者、業務提供誘引販売取引を行う者、業務提供誘引販売取引電子メール広告受託事業者、購入業者、密接関係者、消費者(売主の場合も含む。)等)から事情を聴取し、あるいは、法第 66 条の規定に基づく報告徴収、立入検査等を行うことである。
5 「この法律に基づく措置その他適当な措置」
申出の趣旨が、調査の結果事実であった場合には主務大臣は、このような状況を是正するため、事業者に対する指示、業務停止命令の発動、消費者啓発活動の充実、必要な予算等の助成措置等の措置を講ずることとなる。
(指定法人)
第 61 条 主務大臣は、主務省令で定めるところにより、一般社団法人又は一般財団法人であつて、次項に規定する業務(以下この項及び第 66 条第5項において「特定商取引適正化業務」という。)を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、特定商取引適正化業務を行う者(以下「指定法人」という。)として指定することができる。
2 指定法人は、次に掲げる業務を行うものとする。
一 前条第1項の規定による主務大臣に対する申出をしようとする者に対し指導又は助言を行うこと。
二 主務大臣から求められた場合において、前条第2項の申出に係る事実関係につき調査を行うこと。
三 特定商取引に関する情報又は資料を収集し、及び提供すること。
四 特定商取引に関する苦情処理又は相談に係る業務を担当する者を養成すること。
趣 旨
法第 60 条の規定に基づく主務大臣への申出制度の一層の活用を図るため、申出を行おうとする者に指導又は助言を行うとともに、主務大臣の求めに応じて申出に係る事実関係についての調査等の業務を行う指定法人に係る規定を設けることとしたものである。
解 説
1 指定の要件等(第1項関係)
主務大臣は、特定商取引適正化業務を適正かつ確実に行うことができる一般社団法人又は一般財団法人を省令で指定することができる旨定めるものである。なお、一般社団法人日本産業協会が指定されている。
当該法人を省令で定めるに当たっての要件は以下のとおりである。
(1) 「一般社団法人又は一般財団法人であつて」
営利企業ではxx中立性に問題がある一方、人格なき社団等では運営母体が不安定であることなどから、指定の対象として一般社団法人又は一般財団法人としているものである。
(2) 「特定商取引適正化業務を適正かつ確実に行うことができると認められるもの」
人材面、組織面、経営面、運営面等に照らし、特定商取引適正化業務を適正かつ確実に行うことが可能であると認められる法人である必要がある。
なお、具体的には特定商取引適正化業務を行う者に関する命令(以下「指定法人に関する主務省令」という。)第2条において以下のように規定されている。
① 特定商取引適正化業務を適正かつ確実に行うため必要な経理的基礎及び技術的能力を有すること。
② 役員又は社員の構成が特定商取引適正化業務のxxな実施に支障を及ぼすおそれのないものであること。
③ 特定商取引適正化業務以外の業務を行っているときは、当該業務を行うことにより特定商取引適正化業務が不xxになるおそれがないこと。
④ その指定をすることによって特定商取引適正化業務の適正かつ確実な実施を阻害することとならないこと。
(3) 「その申請により」
指定に当たっては、当該指定を受けようとする法人からの申請を要する。
なお、指定法人に関する主務省令第1条において、申請書には、①名称及び住所並びに代表者の氏名、②事務所の所在地を記載すべきこととされ、また、次の書類を添付することとされている。
① 定款又は寄附行為及び登記簿の謄本
② 申請の日の属する事業年度の前事業年度における事業報告書、貸借対照表、収支決算書、財産目録その他の特定商取引適正化業務を適正かつ確実に実施できることを証する書面
③ 役員の名簿及び履歴書
④ 指定の申請に関する意思の決定を証する書類
⑤ 組織及び運営に関する事項を記載した書類
⑥ その他主務大臣が求める指定のため必要な書類
2 指定法人の業務内容(第2項関係)
第1号は、法第 60 条第1項に規定する主務大臣への申出を行おうとする者に対して、その求めに応じて、申出先や必要書類の様式等について教示を行うものである。
第2号は、主務大臣の求めに応じて、法第 60 条第2項に規定する主務大臣の調査に関して、事実関係等について調査を行うことである。なお、指定法人の行う本号の業務は「事実関係」の調査であるが、これは関係当事者からの任意の聴取や関係書類の収集・整理等であり、立入検査権限等強制的な調査権限を有するものではない。
第3号は、特定商取引の適正化のため、当該取引の実態や消費者トラブルの実態等について情報又は資料の収集を行うとともに、これらの提供を行うことである。
収集の対象となる情報・資料は、一般消費者等から寄せられた苦情、相談に係るもののほか、特定商取引の適正化に資するもの一般を広く含む。また、提供形態としては、直接の問合せに応じるほか、その機関誌やウェブサイト等の媒体を通じたものが考えられる。
第4号は、円滑な消費者トラブルの解決を行うためには苦情申出先の多くを占める製造事業者や販売店等においてこれらの苦情申出に対応する適切な知識と技能を有する人材を供給していくことが極めて重要であるため、指定法人に対し、このような人材の育成の業務に当たらせることとするものである。
3 その他
指定法人に関する主務省令第3条において、指定法人がその名称、住所、代表者又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を主務大臣に届け出なければならないこと、指定法人に関する主務省令第4条において、指定法人は、①毎事業年度の事業計画書及び収支予算書を作成し、当該事業年度の開始前に主務大臣に提出しなければならない(これを変更しようとするときも同様)こと、②毎事業年度終了後3月以内に、事業報告書、貸借対照表、収支決算書及び財産目録を作成し、主務大臣に提出しなければならないことが規定されている。
(改善命令)
第 62 条 主務大臣は、指定法人の前条第2項に規定する業務の運営に関し改善が必要であると認めるときは、その指定法人に対し、その改善に必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
解 説
指定法人による特定商取引適正化業務が本法の規定等にのっとって適正に行われていな
いなど、業務の運営に関し改善が必要であるときには、主務大臣は、業務の適正さを確保するために必要な限度で、改善命令を行うことができる旨を規定するものである。
(指定の取消し)
第 63 条 主務大臣は、指定法人が前条の規定による命令に違反したときは、その指定を取り消すことができる。
解 説
指定法人が前条の改善命令に違反した場合には、主務大臣は指定の取消しをすることができる旨を定めるものである。
(消費者委員会及び消費経済審議会への諮問)
第 64 条 主務大臣は、第2条第4項第1号、第 26 条第1項第8号ニ、第3項、第4項各
号、第5項第1号若しくは第2号、第6項第2号若しくは第7項第2号、第 41 条第1項
第1号(期間に係るものに限る。)若しくは第2項、第 48 条第2項、第 58 条の4又は第
58 条の 17 第2項第2号の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、政令で定めるところにより、消費者委員会及び消費経済審議会に諮問しなければならない。
2 主務大臣は、第2条第1項第2号若しくは第3項、第6条第4項、第 13 条第2項、第 26 条第5項第3号若しくは第7項第1号、第 34 条第4項、第 40 条の2第2項第4号、
第 41 条第1項第1号(金額に係るものに限る。)、第 49 条第2項第1号ロ若しくは第2
号、第 52 条第3項又は第 66 条第2項(密接関係者の定めに係るものに限る。)の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、政令で定めるところにより、消費者委員会及び消費経済審議会に諮問しなければならない。
趣 旨
本条は、本法に規定されている政令の制定又は改廃の立案に当たっては、政令で定められる整理に基づいて、消費者委員会と消費経済審議会に諮問すべきことを規定したものである。
解 説
1 消費者委員会は、消費者庁及び消費者委員会設置法第6条により、消費者の利益の擁護及び増進に関する基本的な政策等に関する重要事項に関し、自ら調査審議し、内閣総理大臣、関係各大臣又は消費者庁長官に建議すること、また、内閣総理大臣、関係各大臣又は消費者庁長官の諮問に応じ、消費者の利益の擁護及び増進に関する基本的な政策等に関する重要事項を調査審議すること、更には、消費者安全法の規定により、内閣総理大臣に対し、必要な勧告をし、これに基づき講じた措置について報告を求めるほか、個別の法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理する機関として、内閣府に設置されて
いるものである。
消費経済審議会は、経済産業省設置法第8条の規定により、消費生活用製品の安全性、家庭用品の品質に関する表示の適正化のほか、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引及び訪問購入に関する重要事項等について審議を行う機関として経済産業省に設置されているものである。
平成 21 年改正において、消費者庁及び消費者委員会が設置されたことに伴い、横断的観点から企画・立案に関わる主務大臣が、内閣総理大臣(消費者保護の観点)及び経済産業大臣(商取引一般の適正化の観点)の2大臣となったことから、本法に規定されている政令の制定又は改廃の立案をするときは、経済産業大臣が消費経済審議会に諮問する関係と同様、内閣総理大臣は消費者委員会に諮問することとなった。なお、本法の規制対象となる商品等ごとの主務大臣が諮問する場合には、消費者委員会と消費経済審議会の両方に諮問することとした。この場合の主務大臣は、個別商品等につき本法上の横断的な取引ルールの規制対象とするか否かの是非を、当該個別商品に係る消費者保護と、それによる当該個別商品の流通等への影響を併せて判断することとなることから、両審議会へ諮問することとしている。これらの主務大臣と諮問先との関係については、政令第 16 条の
6に定められているとおり。
2 第1項
第1項は、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供又は訪問購入に係る規定に関する政令であるが、これらの政令は、個別商品及び物品の流通性、個別権利に係る施設若しくは役務の提供を行う事業の特性、又は個別役務の提供を行う事業の特性を踏まえることが必要であるため、内閣総理大臣、経済産業大臣及び当該商品及び物品の流通を所掌する大臣又は当該事業を所管する大臣が諮問することとしたものである。
諮問対象は、①法第2条第4項第1号の特定権利を定める政令、②法第 26 条第1項第
8号ニ、第3項、第4項各号、第5項第1号若しくは第2号、第6項第2号若しくは第7項第2号の適用除外に関する政令、③法第 41 条第1項第1号の特定継続的役務提供とな
る期間を定める政令、④同条第2項の特定継続的役務を定める政令、⑤法第 48 条第2項
の関連商品を定める政令、⑥法第 58 条の4の訪問購入規制の対象とならない物品を定め
る政令、⑦法第 58 条の 17 第2項第2号の適用除外に関する政令のそれぞれ制定、改廃である。
3 第2項
第2項の主務大臣が内閣総理大臣及び経済産業大臣となっているのは、諮問事項がいずれも商取引の態様に関するものであり、個別商品特性等によってその内容が決められるものではないからである。
諮問対象は、①法第2条第1項第2号及び同条第3項並びに第6条第4項、第 34 条第
4項及び第 52 条第3項の特定の誘引方法を定める政令、②法第 13 条第2項の承諾等の
通知を電磁的方法により提供する場合における承諾の取得方法に関する政令、③法第 26
条第5項第3号若しくは同条第7項第1号の適用除外に関する政令、④法第 40 条の2第
2項第4号の連鎖販売取引における商品販売契約の解除を行うことができないときを定める政令、⑤法第 41 条第1項第1号の特定継続的役務提供となる金額を定める政令、⑥
法第 49 条第2項第1号ロ及び第2号の特定継続的役務提供契約の中途解約の場合の通常
生ずる損害の額及び契約の締結及び履行に要する費用の額を定める政令、⑦法第 66 条第
2項の密接関係者の定めに関する政令のそれぞれ制定、改廃である。
(経過措置)
第 65 条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置
(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
趣 旨
本条は、この法律の規定に基づき政省令を制定し、又は改廃する場合には、それぞれ政省令で所要の経過措置を定めることができることを規定したものである。
解 説
特定権利を定める政令、書面記載事項を定める省令等本法で定められている委任命令の 制定改廃に伴い規制対象が増減し、また規制内容が強化、又は緩和されることがあり得るが、これらによる制度改正を円滑に行うためには、種々の経過的な規定を設けることが必要と なる。例えば、特定権利の追加指定を行った場合に、その改正命令の施行目前に、追加する こととなる権利について契約の申込みを受け、施行後に契約を締結した場合の本法の適用 の有無、特定権利を削除した場合に、その改正政令の施行日に行われた違法行為に対する施 行後の罰則の適用の有無等について、明らかにする必要がある。本条は、このような経過措 置を設けることができることを確認的に規定したものである。
(報告及び立入検査)
第 66 条 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより販売業者、役務提供事業者、統括者、勧誘者、一般連鎖販売業者、業務提供誘引販売業を行う者若しくは購入業者(以下「販売業者等」という。)に対し報告若しくは帳簿、書類その他の物件の提出を命じ、又はその職員に販売業者等の事務所、事業所その他その事業を行う場所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは従業員その他の関係者に質問させることができる。
2 主務大臣は、この法律を施行するため特に必要があると認めるときは、政令で定めるところにより関連商品の販売を行う者その他の販売業者等と密接な関係を有する者として政令で定める者(以下この項において「密接関係者」という。)に対し報告若しくは資料の提出を命じ、又はその職員に密接関係者の事務所、事業所その他その事業を行う場所に
立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは従業員その他の関係者に質問させることができる。
3 主務大臣は、この法律を施行するため特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、その職員に販売業者等から業務の委託を受けた者の事務所、事業所その他その事業を行う場所に立ち入り、その委託を受けた業務に関し帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
4 主務大臣は、この法律を施行するため特に必要があると認めるときは、販売業者等と取引する者に対し、当該販売業者等の業務又は財産に関し参考となるべき報告又は資料の提出を命ずることができる。
5 主務大臣は、特定商取引適正化業務の適正な運営を確保するために必要な限度におい て、指定法人に対し、特定商取引適正化業務若しくは資産の状況に関し必要な報告をさせ、又はその職員に、指定法人の事務所に立ち入り、特定商取引適正化業務の状況若しくは帳 簿、書類その他の物件を検査させることができる。
6 第1項から第4項までの規定は、通信販売電子メール広告受託事業者、連鎖販売取引電子メール広告受託事業者及び業務提供誘引販売取引電子メール広告受託事業者について準用する。この場合において、第2項から第4項までの規定中「販売業者等」とあるのは、
「通信販売電子メール広告受託事業者、連鎖販売取引電子メール広告受託事業者又は業務提供誘引販売取引電子メール広告受託事業者」と読み替えるものとする。
7 第1項から第3項まで(これらの規定を前項において準用する場合を含む。)又は第5項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
8 第1項から第3項まで(これらの規定を第6項において準用する場合を含む。)又は第
5項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
趣 旨
本条は報告徴収及び立入検査に関する根拠規定である。
解 説
1 第1項は、主務大臣が販売業者、役務提供事業者、統括者、勧誘者、一般連鎖販売業者、業務提供誘引販売業を行う者若しくは購入業者(「販売業者等」)に対して、強制力に基づく報告徴収、物件提出及び立入検査、関係者への質問をできる場合を定めたものである。なお、本条は、強制力に基づかない任意の調査を排除するものではない。
(1) 「この法律を施行するため必要があると認めるときは、」
本条の規定により報告の徴収、物件提出及び立入検査、関係者への質問をすることができる事項は、この法律の施行に必要な限度においてである旨を定めたものである。
(2) 「政令で定めるところにより」
販売業者等について政令第 17 条により報告を徴収することのできる事項や物件の提出を命ずることのできる事項が定められている。
(3) 「事務所、事業所その他その事業を行う場所」
恒常的に使用する一般的な事務所や事業所のほか、業務に事実上使用されている場所であれば、一時的にしか使用されていない流動的な場所であっても、立入検査の対象となる。
2 第2項は、主務大臣が販売業者等と密接な関係を有する者(「密接関係者」)に対して、法の施行のために特に必要と認められる場合に、強制力に基づく報告徴収及び立入検査をできる場合を定めたものである。なお、密接関係者は、政令第 17 条の2で以下の五つが定められており、同条においてそれぞれの密接関係者に対して報告徴収等をすることのできる事項が定められている。
(1) 関連商品の販売を行う者
(2) 業務提供誘引販売取引に係る業務の提供を行う者
(3) 購入業者が訪問購入に係る売買契約の相手方から引渡しを受けた物品の引渡し(法第 58 条の 14 第1項ただし書に規定する場合におけるものを除く。)を受けた第三者
(4) 販売業者等が行う特定商取引に関する事項であって、顧客若しくは購入者若しくは役務の提供を受ける者、連鎖販売取引の相手方、業務提供誘引販売取引の相手方又は訪問購入に係る売買契約の相手方の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものを告げ、又は表示する者
イ 「販売業者等……が行う特定商取引に関する事項であつて、……判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」とは、購入者等が契約を締結する場合又は契約の申込みの撤回や解除をする場合の意思形成に対して重大な影響を及ぼす事項であって、当該契約に関連のある事項であれば足りる。
ロ 「告げ、又は表示する者」とは、例えば、特定商取引に関する契約の締結について 勧誘を行う者、顧客に対し売買契約等の締結を必要とする事情があると告げ、又は表 示する者、売買契約等の対象となる商品や物品についてその性能、品質等について告 げ、又は表示する者、売買契約等の締結を条件に何らかの利益を提供することを告げ、又は表示する者等が該当する。
(5) 販売業者等の子法人等、販売業者等を子法人等とする親法人等、販売業者等を子法人等とする親法人等の子法人等(当該販売業者等、当該販売業者等の子法人等及び当該販売業者等を子法人等とする親法人等を除く。)又は販売業者等の関連法人等
販売業者等と密接な資本関係や人的関係等を持つ者を規定しており、政令第 17 条の
2の表の備考及び省令第 58 条において詳細を規定している。
x 「子法人等」とは、親法人等によりその意思決定機関を支配されている他の法人等である。
x 「親法人等」とは、他の法人等の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関を支
配する法人等として主務省令で定めるものである。省令第 58 条第1項において、「他の法人等……の議決権の過半数を自己の計算において所有している法人等」(同項第
1号)等を規定している。
ハ 「関連法人等」とは、法人等が出資、取締役等への就任、融資、債務保証、技術提供等を通じて、財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる他の法人等(子法人等を除く。)として主務省令で定めるものである。省令第 58 条第2項において、「法人等……が子法人等以外の他の法人等……の議決権
の 100 分の 20 以上を自己の計算において所有している場合における当該子法人等以外の他の法人等」(同項第1号)等を規定している。
3 第3項は、第2項に規定する密接関係者に該当しないが「販売業者等と取引する者」の中でも、特に立入検査の必要性が高い「販売業者等から業務の委託を受けた者」に対する立入検査権限を定めたものである。「販売業者等から業務の委託を受けた者」とは、例えば、販売業者等が販売する商品の倉庫業者や、販売業者等と業務委託契約を締結して連携して取引に関与する業務委託先業者などが該当する。
4 第4項は、主務大臣が販売業者等と取引する者に対して、販売業者等の業務又は財産に関し、法の施行のために特に必要があると認められる場合に、強制力に基づく報告徴収及び資料提出命令をできる旨を定めたものである。例えば、銀行口座を付与する金融機関、オフィス賃貸事業者やクレジット会社等のほか、販売業者等がインターネットサイトの開設や電子メールアドレスの取得のために契約している、いわゆるインターネット・サービス・プロバイダーや、携帯電話の通信サービスを提供している会社等が対象となる。
5 第5項は、指定法人に対する報告徴収及び立入検査についての規定である。
主務大臣は①特定商取引適正化業務の実施状況、②資産の状況について報告徴収を行うことができ、また、その職員に、指定法人の事務所に立ち入り、上記①、②及び帳簿、書類その他の物件について検査させることができる旨を定めるものである。
6 第7項は、立入検査をする職員の証明書の携帯及び提示義務を定めたものである。証明書は、①主務大臣より本条の立入検査の権根を付与されていること、②その職員であることを明らかにするものでなければならない(特定商取引に関する法律の規定に基づく立入検査をする職員の携帯する身分を示す証明書の様式を定める命令)。
7 第8項は立入検査の権限は犯罪捜査のため認められたものでない旨を念のため明らかにしたものである。
8 本条第1項又は第2項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をした者、若しくは物件を提出せず、若しくは虚偽の物件を提出し、又は検査を拒み、妨げ若しくは忌避し、若しくは質問に対し陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をしたときは、当該違反行為をした者は、6月以下の懲役又は 100 万円以下の罰金(併科あり)が科せられる(法第 71 条第
3号、第4号)。
また、本条第3項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避したとき、本条第4項又は第5項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは資料を提出せず、若しくは虚偽の資料を提出し、又は検査を拒み、妨げ若しくは忌避したときは、当該違反行為をした者は、30 万円以下の罰金が科せられる(法第 73 条第2号から第4号まで)。
(協力依頼)
第 66 条の2 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、官庁、公共団体その他の者に照会し、又は協力を求めることができる。
趣 旨
本条は、主務大臣が官庁、公共団体その他の者に対して協力等を求める場合における根拠規定である。従来、照会又は協力の法的根拠が不明確であったところ、本条に法律上のxxの根拠を置くことによって、依頼の相手方が安んじて協力することができるようになり、実務上の運用がスムーズなものとなることが期待される。
解 説
1 「官庁、公共団体その他の者」には、官庁及び公共団体等の公的機関だけでなく、民間事業者等も含まれる。
本条に基づく依頼の具体例としては、自動車のナンバーについて運輸局に対して照会する、電力会社、ガス会社等に契約情報を照会する、電気通信事業者又は銀行に電話番号又は口座を利用している者の情報を照会する、販売業者等が販売する製品を製造している事業者に対し、当該製品の性能・仕様等について照会する等の場合が想定される。
このほか、法第 66 条第2項に規定する「密接関係者」、同条第3項に規定する「販売業 者等から業務の委託を受けた者」又は同条第4項に規定する「販売業者等と取引をする者」のいずれにも該当しない、又はこれらに該当するか否かが判然としない事業者に対して 調査を行う必要がある場合に、これらの者に対し、本条に基づく照会又は協力依頼を行う ことも想定される。
2 本条に基づく依頼と個人情報保護法制との関係であるが、本条に基づく依頼は個人情報の保護に関する法律(平成 15 年法律第 57 号)第 27 条第1項第1号及び第 69 条第1項の「法令に基づく場合」として、個人情報取扱事業者又は行政機関のxxが第三者への提供を行うことができる場合に該当するものと解釈される。
(指示等の方式)
第 66 条の3 この法律の規定による指示又は命令は、主務省令で定める書類を送達して行う。
(送達に関する民事訴訟法の準用)
第 66 条の4 書類の送達については、民事訴訟法(平成8年法律第 109 号)第 99 条、第
101 条、第 103 条、第 105 条、第 106 条、第 107 条第1項(第1号に係る部分に限る。次
条第1項第2号において同じ。)及び第3項、第 108 条並びに第 109 条の規定を準用する。
この場合において、同法第 99 条第1項中「執行官」とあり、及び同法第 107 条第1項中
「裁判所書記官」とあるのは「主務大臣の職員」と、同項中「最高裁判所規則」とあるのは「主務省令」と、同法第 108 条中「裁判長」とあり、及び同法第 109 条中「裁判所」とあるのは「主務大臣」と読み替えるものとする。
趣 旨
本法の規定による指示又は命令の方式については「送達」によることとし、その手続については、民事訴訟法の関連規定を読み替えて準用する旨を定めている。
これは、インターネット通販等においてみられるような処分すべき相手方の所在が不明である場合に対応するため、公示送達(法第 66 条の5)を導入する前提として、指示等の方式について「送達」を原則的な形式として規定したものである。
解 説
1 本法にいう送達とは、民事訴訟法(第 99 条から第 109 条まで)及び民法(第 98 条)に規定する手続と同一であり、指示又は命令の相手方に対して確実にその内容を知らせるために、一定の方式により書類を交付することをいう。
送達は、特別の定めがある場合を除き、相手方に書類を交付することによって行われ、その実施は、郵便に従事する者又は主務大臣の職員が行わなければならない(民事訴訟法第 99 条、第 101 条の準用)。送達が行われる場所は相手方の住所、営業所であることが原則であるが、その場所で送達を行うに当たって支障がある等の一定の場合には、相手方の就業場所においてもこれを行うことができる(同法 103 条の準用)。
このほか、日本国内に住所があるかどうかが明らかでない場合(日本国内に住所等を有することが明らかであってもその者が送達を受けることを拒まない場合も同様)、相手方と出会わない場合、相手方が正当な理由なく書類の受取を拒んだ場合等には、それぞれ、出会送達、補充送達、差置送達といった仕組みを活用することができる(同法第 105 条、第 106 条の準用)。また、補充送達又は差置送達によることができない場合には、書留郵便等に付する送達を活用することもできる(同法第 107 条第1項)。さらに、外国において送達すべき場合は、その国の管轄官庁又はその国に駐在する日本国の大使等に送達を嘱託して行う(同法第 108 条の準用)。
なお、送達を行った主務大臣の職員又は郵便に従事する者は、書面を作成し、送達に関する事項を記載して、これを主務大臣に提出しなければならない(同法第 109 条の準用)。
2 「主務省令で定める書類」には、不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項並びにその原因となった事実を記載しなければならない(省令第 59 条)。
(参考:本条において準用されている民事訴訟法の規定(xx下線部分は本条の規定による読替え、二重下線部分は当然読替え))
(送達実施機関)
第 99 条 送達は、特別の定めがある場合を除き、郵便又は主務大臣の職員によってする。
2 郵便による送達にあっては、郵便の業務に従事する者を送達をする者とする。
(交付送達の原則)
第 101 条 送達は、特別の定めがある場合を除き、送達を受けるべき者に送達すべき書類を交付してする。
(送達場所)
第 103 条 送達は、送達を受けるべき者の住所、居所、営業所又は事務所(以下この節において「住所等」という。)においてする。ただし、法定代理人に対する送達は、本人の営業所又は事務所においてもすることができる。
2 前項に定める場所が知れないとき、又はその場所において送達をするのに支障があるときは、送達は、送達を受けるべき者が雇用、委任その他の法律上の行為に基づき就業する他人の住所等(以下「就業場所」という。)においてすることができる。送達を受けるべき者が就業場所において送達を受ける旨の申述をしたときも、同様とする。
(出会送達)
第 105 条 第 103 条の規定にかかわらず、送達を受けるべき者で日本国内に住所等を有することが明らかでないものに対する送達は、その者に出会った場所においてすることができる。日本国内に住所等を有することが明らかな者が送達を受けることを拒まないときも、同様とする。
(補充送達及び差置送達)
第 106 条 就業場所以外の送達をすべき場所において送達を受けるべき者に出会わないときは、使用人その他の従業者又は同居者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるものに書類を交付することができる。郵便の業務に従事する者が日本郵便株式会社の営業所において書類を交付すべきときも、同様とする。
2 就業場所において送達を受けるべき者に出会わない場合において、第 103 条第2項の他人又はその法定代理人若しくは使用人その他の従業者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるものが書類の交付を受けることを拒まないときは、これらの者に書類を交付することができる。
3 送達を受けるべき者又は第1項前段の規定により書類の交付を受けるべき者が正当な理由なくこれを受けることを拒んだときは、送達をすべき場所に書類を差し置くことができる。
(書留郵便等に付する送達)
第 107 条 前条の規定により送達をすることができない場合には、主務大臣の職員は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場所にあてて、書類を書留郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成 14 年法律第 99 号)第2条第6項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第9項に規定する特定信書便事業者の提供する同条第2項に規定する信書便の役務のうち書留郵便に準ずるものとして主務省令で定めるもの(次項及び第3項において「書留郵便等」という。)に付して発送することができる。
一 第 103 条の規定による送達をすべき場合 同条第1項に定める場所
3 第1項(第1号に係る部分に限る。)の規定により書類を書留郵便等に付して発送した場合には、その発送の時に、送達があったものとみなす。
(外国における送達)
第 108 条 外国においてすべき送達は、主務大臣がその国の管轄官庁又はその国に駐在する日本の大使、公使若しくは領事に嘱託してする。
(送達報告書)
第 109 条 送達をした者は、書面を作成し、送達に関する事項を記載して、これを主務 大臣に提出しなければならない。
(公示送達)
第 66 条の5 主務大臣は、次に掲げる場合には、公示送達をすることができる。一 送達を受けるべき者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
二 前条において準用する民事訴訟法第 107 条第1項の規定により送達をすることができない場合
三 外国においてすべき送達について、前条において準用する民事訴訟法第 108 条の規定によることができず、又はこれによつても送達をすることができないと認めるべき場合
四 前条において準用する民事訴訟法第 108 条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後6月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合
2 公示送達は、送達すべき書類を送達を受けるべき者にいつでも交付すべき旨を主務大臣の事務所の掲示場に掲示することにより行う。
3 公示送達は、前項の規定による掲示を始めた日から2週間を経過することによつて、その効力を生ずる。
4 外国においてすべき送達についてした公示送達にあつては、前項の期間は、6週間とす
る。
趣 旨
法第 66 条の3により、本法の規定による指示又は命令は、主務省令で定める書類を送達
して行うこととされているが、インターネット通販等においてみられるように、違反事業者の所在地が不明であり、送達すべき相手方の所在が不明であり、前条において準用する民事訴訟法の各規定に基づくいかなる送達の方式によっても送達ができない場合もある。こうした場合の手続として、民法第 98 条は、民事訴訟法第 110 条以下に定める手続を準用し、表意者が裁判所の掲示場に意思表示を公示すること等の手続によって公示送達を行うことができるとしているが、本条では、違反事業者に対する行政処分を迅速に行うため、民法の当該規定によらず、主務大臣が一定の手続により公示送達を行うことができることとしている。
解 説
1 送達を受けるべき者の住所、居所等が知れないときは、法第 66 条の4において準用する民事訴訟法の規定に各々定めるとおり、就業場所への送達や出会送達を行うことが可能である。しかしながら、送達をすべき場所が知れず、かつ、上記の各種送達の方法のいずれにもよりがたい場合においては、最後の手段として、主務大臣は、公示送達の方法によって送達をすることができることとしている。
なお、送達をすべき場所が知れないことについては主務大臣が立証する必要があるが、これには、例えば、郵送した書類が宛先不明で返送されてきたというだけでは不十分であり、相手方について必要な調査(書類の調査、実施調査、住民票の調査等)を行っても、なお送達すべき場所が知れないことを明らかにする必要がある。
2 「主務大臣の事務所の掲示場」としては、公衆の見やすい場所に設置されているものであれば、処分庁において一般的に使用されている掲示場であっても差し支えない。
公示送達の効力を生ずる(相手方に送達したこととみなす)のは本条第2項の規定による掲示を始めた日から2週間後(外国においてすべき送達についてした公示送達は6週間後)であるが、当該期間内に送達を受けるべき者の所在地が判明した場合は、その者に書類を改めて送達すれば、当該期間を経過しなくとも行政処分の効力が生じることとなる。
(電子情報処理組織の使用)
第 66 条の6 主務大臣の職員が、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成 14 年法律第 151 号)第3条第9号に規定する処分通知等であつてこの章の規定により書類の送達により行うこととしているものに関する事務を、同法第7条第1項の規定により同法第6条第1項に規定する電子情報処理組織を使用して行つたときは、第 66 条の
4において準用する民事訴訟法第 109 条の規定による送達に関する事項を記載した書面の作成及び提出に代えて、当該事項を電子情報処理組織を使用して主務大臣の使用に係
る電子計算機(入出力装置を含む。)に備えられたファイルに記録しなければならない。
趣 旨
本法の規定による指示又は命令について、電子情報処理組織を使用して送達を行う場合の手続等について定めるものである。
解 説
情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律第7条第1項は、行政機関等は、処分通知等のうち当該処分通知等に関する他の法令の規定において書面等により行うこととされているものについては、当該法令の規定にかかわらず、同法に基づく主務省令で定めるところにより、電子情報処理組織を使用して行うことができる旨を定めている。
本条では、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律の規定により電子情報処理組織を使用して書面の送達を行った場合には、法第 66 条の4において準用する民事訴訟
法第 109 条の規定に基づいて行われる送達事項を記載した書面の作成及び提出に代えて、当該事項を当該電子情報処理組織を使用して主務大臣の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録しなければならない旨を規定している。
(主務大臣等)
第 67 条 この法律における主務大臣は、次のとおりとする。
一 商品及び特定権利(第2条第4項第2号及び第3号に掲げるものに限る。以下この号において同じ。)に係る販売業者に関する事項、商品に係る一連の連鎖販売業の統括者、勧誘者及び一般連鎖販売業者に関する事項、商品に係る業務提供誘引販売業を行う者に関する事項並びに物品に係る購入業者に関する事項については、内閣総理大臣、経済産業大臣並びに当該商品、特定権利及び物品の流通を所掌する大臣
二 特定権利(第2条第4項第1号に掲げるものに限る。)に係る販売業者に関する事項、施設を利用し又は役務の提供を受ける権利に係る一連の連鎖販売業の統括者、勧誘者及び一般連鎖販売業者に関する事項、特定継続的役務の提供を受ける権利に係る販売業者に関する事項並びに施設を利用し又は役務の提供を受ける権利に係る業務提供誘引販売業を行う者に関する事項については、内閣総理大臣、経済産業大臣及び当該権利に係る施設又は役務の提供を行う事業を所管する大臣
三 役務提供事業者に関する事項、役務に係る一連の連鎖販売業の統括者、勧誘者及び一般連鎖販売業者に関する事項並びに役務に係る業務提供誘引販売業を行う者に関する事項については、内閣総理大臣、経済産業大臣及び当該役務の提供を行う事業を所管する大臣
四 通信販売電子メール広告受託事業者、連鎖販売取引電子メール広告受託事業者及び業務提供誘引販売取引電子メール広告受託事業者に関する事項、訪問販売協会及び通信販売協会に関する事項並びに第 64 条第2項の規定による消費者委員会及び消費経済審議会への諮問に関する事項については、内閣総理大臣及び経済産業大臣
五 指定法人に関する事項については、内閣総理大臣、経済産業大臣並びに販売に係る商品及び特定権利(第2条第4項第2号及び第3号に掲げるものに限る。)並びに購入に
係る物品の流通を所掌する大臣、特定権利(同項第1号に掲げるものに限る。)に係る施設又は役務の提供を行う事業を所管する大臣、役務の提供を行う事業を所管する大臣並びに特定継続的役務の提供を行う事業を所管する大臣
六 第 64 条第1項の規定による消費者委員会及び消費経済審議会への諮問に関する事項については、内閣総理大臣、経済産業大臣及び当該商品、特定権利(第2条第4項第2号及び第3号に掲げるものに限る。)若しくは物品の流通を所掌する大臣、当該権利に係る施設若しくは役務の提供を行う事業を所管する大臣又は当該役務の提供を行う事業を所管する大臣
2 内閣総理大臣は、この法律による権限(金融庁の所掌に係るものに限り、政令で定めるものを除く。)を金融庁長官に委任する。
3 内閣総理大臣は、この法律による権限(消費者庁の所掌に係るものに限り、政令で定めるものを除く。)を消費者庁長官に委任する。
4 この法律における主務省令は、内閣総理大臣及び経済産業大臣が共同で発する命令とする。ただし、第61条第1項に規定する主務省令については、第1項第5号に定める主務大臣の発する命令とする。
趣 旨
本条は、この法律の規定における主務大臣を明らかにするとともに、消費者庁長官等への内閣総理大臣権限の委任を定める規定である。
解 説
1 第1項は本法における主務大臣についての規定である。
第1号は「商品」、「特定権利」のうち社債・株式等、及び「物品(訪問購入)」の販売に係る主務大臣、第2号は特定権利のうち政令で定めるものの販売に係る主務大臣、第3号は「役務」の提供に係る主務大臣を定めるものであり、「流通を所掌する大臣」、「事業を所管する大臣」とは、各省設置法等に定めるところにより各々所掌又は所管する大臣である。
第4号は、電子メール広告受託事業者や自主規制法人等に係る主務大臣として、本法に 係る横断的観点から権限を持つ内閣総理大臣及び経済産業大臣を定めている規定である。
第5号は法第 61 条の指定法人に関する主務大臣の規定である。
第6号は消費者委員会及び消費経済審議会への諮問を行う主務大臣についての規定である。ただし、諮問事項によっては、横断的観点から内閣総理大臣及び経済産業大臣が行うこととされるものがあるため、第4号にその旨定められている。
2 第2項は、金融庁の所掌に係る権限については、内閣総理大臣から金融庁長官に委任されることを規定したものであり、政令においては、指定法人の指定やその取消し、消費者委員会及び消費経済審議会への諮問について、内閣総理大臣に留保されることとしている。
3 第3項は、消費者庁の所掌に係る権限については、内閣総理大臣から消費者庁長官に委任されることを規定したものであり、政令においては、指定法人の指定やその取消し、消費者委員会及び消費経済審議会への諮問について、内閣総理大臣に留保されることとしている。
4 第4項は本法における主務省令についての規定である。
(都道府県が処理する事務)
第 68 条 この法律に規定する主務大臣の権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。
趣 旨
本条は、本法に規定する主務大臣の権限の属する事務のうち、政令で定めた事項については、都道府県の自治事務として行うこととすることができる旨を定めている。
解 説
1 政令第 19 条第1項本文においては、訪問販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引及び訪問購入について、本法違反の疑いある行為が都道府県の区域内において存在すれば、当該都道府県知事が調査又は行政処分を行い得ることとしている。
ただし、政令第 19 条第1項ただし書においては、2以上の都道府県の区域にわたり取引のxx及び購入者等の利益を害するおそれがあり、主務大臣がその事態に適正かつ効率的に対処するため特に必要があると認めるとき、又は都道府県知事から要請があったときは、主務大臣が直接当該事務を行うことを妨げないこととしている。
2 政令第 19 条第2項本文においては、通信販売について、第3項本文においては電話勧誘販売について、本法違反の疑いある行為が都道府県の区域内において存在すれば、当該都道府県知事が調査又は行政処分を行い得ることとしている。
ただし、政令第 19 条第2項及び第3項ただし書においても、2以上の都道府県の区域にわたり取引のxx及び購入者等の利益を害するおそれがあり、主務大臣がその事態に適正かつ効率的に対処するため特に必要があると認めるとき、又は都道府県知事から要請があったときは、主務大臣が直接当該事務を行うことを妨げないこととしている。
3 政令第 19 条第4項から第6項においては、これらの取引における本法違反の疑いある行為が都道府県の区域内において存在すれば、当該都道府県知事が申出を受理し得ることとしている。
4 政令第 19 条第7項においては、都道府県知事がこれらの取引に関する報告徴収、立入検査、指示及び業務停止命令等を行った場合には、速やかにその結果を主務大臣へ報告することとしている。
5 政令第 19 条第8項は、法律上、主務大臣が行うこととなっている事務を政令において
都道府県知事が行う事務(自治事務)とする場合において、都道府県知事が行う事務に付随する事務、罰則等の規定について都道府県知事が自治事務として行う際に、これらの規定の適用があることを明確化するために設けられた規定である。
6 なお、政令第 19 条で定める事務は自治事務として行われるものであるから、本法に係る都道府県の事務に対する国の関与は、本法第 66 条の2の協力依頼及び第 69 条の2の
関係者相互の連携のほかは、地方自治法(昭和 22 年法律第 67 号)に基づく技術的な助言
又は勧告(地方自治法第 245 条の4)又は是正の勧告(同法第 245 条の6)、資料の提出
の要求(同法第 245 条の4)、是正の要求(同法第 245 条の5)等に限定される。
(権限の委任)
第 69 条 この法律により主務大臣の権限に属する事項は、政令で定めるところにより、地方支分部局の長に行わせることができる。
2 金融庁長官は、政令で定めるところにより、第 67 条第2項の規定により委任された権限の一部を財務局長又は財務支局長に委任することができる。
3 消費者庁長官は、政令で定めるところにより、第 67 条第3項の規定により委任された権限の一部を経済産業局長に委任することができる。
趣 旨
本条は、地方支分部局の長に対する権限の委任についての規定である。平成 21 年に、消費者庁が設置されたことに伴い、横断的観点から企画・立案を行う主務大臣が、内閣総理大臣(消費者保護の観点)及び経済産業大臣(商取引一般の適正化の観点)の2大臣となるとともに、執行については消費者庁においてxx的に行うこととなったところ、消費者庁による行政処分等に際し、地方における当該事務に関して経済産業局が担うことができるよう、消費者庁長官から経済産業局長に権限委任を行うことなどを定めた規定となっている。
解 説
1 政令第 20 条第2項は、内閣総理大臣から消費者庁長官に委任された本法上の権限につき、地方における当該事務が経済産業局長に委任される場合として、本法違反の疑いある行為が当該経済産業局長の管轄区域内において存在すれば、当該経済産業局長が申出の受理、調査又は行政処分を行い得ることとしている。なお、これらの事務については、経済産業局は消費者庁長官の指揮監督の下で行うこととなっている(経済産業省設置法第 10 条第3項)。
また、消費者庁長官権限を委任された経済産業局長の行政処分は、結果として全国的効果が及ぶこととなるところ、上記のように管轄区域内において本法違反の疑いある行為を端緒として権限行使する経済産業局長が、域外への立入検査等の調査を行う必要がある場合などには、管轄区域以外の区域をも管轄することができることとなっている(経済産業省組織規則第 228 条第3項)。
2 政令第 20 条第1項は、同様に、金融庁長官に委任された本法上の権限が財務局長又は 財務支局長に委任される場合における委任範囲、管轄、指揮監督等について規定している。
(関係者相互の連携)
第 69 条の2 主務大臣、関係行政機関の長(当該行政機関が合議制の機関である場合にあつては、当該行政機関)、関係地方公共団体の長、独立行政法人国民生活センターの長その他の関係者は、特定商取引をxxにするとともに購入者等が受けることのある損害の防止を図るため、必要な情報交換を行うことその他相互の密接な連携の確保に努めるものとする。
解 説
法第 66 条の2において主務大臣が個別具体の事項に関して関係者に対し協力を求める場合を規定しているのに対し、本条は、より一般的な形で、より幅広い関係者が相互の密接な連携の確保に努めるべき旨を規定する、いわゆる訓示規定である。
本条の訓示の対象としては、本法上の主務大臣のほか、関係行政機関の長(各省各庁のxx)、合議制の行政機関(xx取引委員会等)、関係地方公共団体の長(都道府県知事、市町村xx)、独立行政法人国民生活センターの理事長その他の関係者が規定されており、本法に基づく行政処分の権限を有する者はもちろん、本法の施行に関係する各機関の長及びその職員等、幅広い関係者が一体となって、特定商取引のxx及び購入者等の損害の防止に向けて取り組むべき旨を訓示する内容となっている。
(外国執行当局への情報提供)
第 69 条の3 主務大臣は、この法律に相当する外国の法令を執行する外国の当局(次項及び第3項において「外国執行当局」という。)に対し、その職務(この法律に規定する職務に相当するものに限る。次項において同じ。)の遂行に資すると認める情報の提供を行うことができる。
2 前項の規定による情報の提供については、当該情報が当該外国執行当局の職務の遂行以外に使用されず、かつ、次項の同意がなければ外国の刑事事件の捜査(その対象たる犯罪事実が特定された後のものに限る。)又は審判(同項において「捜査等」という。)に使用されないよう適切な措置がとられなければならない。
3 主務大臣は、外国執行当局からの要請があつたときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、第1項の規定により提供した情報を当該要請に係る外国の刑事事件の捜査等に使用することについて同意をすることができる。
一 当該要請に係る刑事事件の捜査等の対象とされている犯罪が政治犯罪であるとき、 又は当該要請が政治犯罪について捜査等を行う目的で行われたものと認められるとき。
二 当該要請に係る刑事事件の捜査等の対象とされている犯罪に係る行為が日本国内に
おいて行われたとした場合において、その行為が日本国の法令によれば罪に当たるものでないとき。
三 日本国が行う同種の要請に応ずる旨の要請国の保証がないとき。
4 主務大臣は、前項の同意をする場合においては、あらかじめ、同項第1号及び第2号に該当しないことについて法務大臣の確認を、同項第3号に該当しないことについて外務大臣の確認を、それぞれ受けなければならない。
趣 旨
国際化の進展に伴い、特定の国内に限らず、国をまたいで活動する悪質事業者も存在している中で、事案によっては国境を越えた執行協力を行う必要性も考えられるところ、外国執行当局から情報提供等についての協力を得るためには、我が国においても外国執行当局に対して同様の協力を行う制度的基盤を備え、相互主義の確保を図ることが必要であるとの観点から、外国執行当局に対して、情報の提供を行うための根拠規定を設けたものである。解 説
1 第1項は、主務大臣が外国執行当局に対して、情報(具体的には、例えば、本法に関して行った調査等で取得した情報が考えられる。)の提供を行うことができることを規定したものである。
2 第2項は、情報の提供を行う際には、①当該情報が当該外国執行当局の職務の遂行以外に使用されず、かつ、②本条第3項の同意のない限り、提供先の海外当局の刑事事件の捜査(その対象たる犯罪事実が特定された後のものに限る。)又は審判(以下「捜査等」という。)に使用されないよう、適切な措置がとられなければならないことを規定している。
①については、職務目的外に使用された場合には、我が国の法運用等に悪影響を及ぼすことが懸念されるためである。また、②については、刑事事件の捜査等に必要な証拠の我が国からの提供とそのための証拠の収集については、国際捜査共助等に関する法律(昭和 55 年法律第 69 号)の定める要件と手続によることが原則とされていることを踏まえたものである。
3 第3項は、外国執行当局からの要請があった場合に、一部の例外を除き、我が国が提供した情報を当該外国執行当局の要請に係る刑事事件の捜査等に使用することについて同意することができる旨の規定である。なお、例外となる場合とは、以下のとおりである。
(1) 「当該要請に係る刑事事件の捜査等の対象とされている犯罪が政治犯罪であるとき、又は当該要請が政治犯罪について捜査等を行う目的で行われたものと認められるとき。」
国際捜査共助等に関する法律第2条第1号において、共助犯罪が政治犯罪であるとき、又は共助の要請が政治犯罪について捜査する目的で行われたものと認められるときには、共助をすることができないとの制限が設けられており、その趣旨を潜脱しないようにするためである。
(2) 「当該要請に係る刑事事件の捜査等の対象とされている犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、その行為が日本国の法令によれば罪に当たるものでないとき。」
国際捜査共助等に関する法律第2条第2号において、条約に別段の定めがある場合を除き、共助犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、その行為が日本国の法令によれば罪に当たるものでないときには、共助をすることができないとの制限が設けられており、その趣旨を潜脱しないようにするためである。
(3) 「日本国が行う同種の要請に応ずる旨の要請国の保証がないとき。」
国家の平等という観点に立脚し、相互保証があることを前提条件とするためである。
4 第4項は、本条第3項の同意をする場合、同項の同意をすることができない例外に該当しないことについて法務大臣(上記3(1)及び(2))及び外務大臣(上記3(3))の確認を受けなければならないことを規定している。これは、国際捜査共助等に関する法律第5条で政治犯罪等に該当するかどうか等は法務大臣が、同法第4条で同種の要請について相互的であるかどうかは外務大臣が、それぞれ判断することとされている点を踏まえたものである。