(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk1_000002.html)に掲載予定です 。
国 不 建 推 第 2 6 号令 和 4 年 8 月 2 日
建設業者団体の長 殿
国土交通省不動産・建設経済局建設業課長
( 公 印 省 略 )
発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドラインの一部改正について
建設業法において、契約当事者は、各々対等な立場における合意に基づいて、契約締結及 びその履行を図るべきものとし、不当に低い請負代金の禁止、不当な使用資材等の購入強制 の禁止など契約の適正化のために契約当事者が遵守すべき最低限の義務等を定めていますが、これらの規定の趣旨が十分に認識されていない場合等においては、法令遵守が徹底されず、 建設業の健全な発展と建設工事の適正な施工を妨げるおそれがあります。
公共工事、民間工事にかかわらず、法令遵守は、受発注者双方が徹底を図らなければならないものであり、「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」(平成23 年8月策定。以下「受発注者ガイドライン」という。)を策定し、その周知に努めてきたところです。今般、「コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策(令和4年4月26日原油 価格・物価高騰等に関する関係閣僚会議決定)」において、現下の原材料費等の高騰の状況を踏まえた新たな価格体系への適応の円滑化に向けた中小企業対策等の一環として、建設業における適正な請負代金の設定や適切な工期の確保等について政府全体で取り組むこととされたこと、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画フォローアップ(令和4年6月7日閣議決定)」において、令和8年の約束手形の利用廃止に向けた取組を促進する閣議決定されていること、下請中小企業振興法(昭和45年法律第145号)に基づく振興基準(令和
4年7月29日改定)において、約束手形をできる限り利用しないよう努めること及びサプライチェーン全体で約束手形の利用の廃止等に向けた取組を進めることとされていること、宅地造成等規制法の一部を改正する法律(令和4年法律第55号。通称「盛土規制法」)が令和4年5月27日に公布されたことなどから、「建設業法令遵守ガイドライン」(平成 19 年6月策定)のほか、受発注者ガイドラインについても所要の改訂を行いました。
貴団体におかれましては、受発注者ガイドラインの改訂の趣旨及び内容を了知の上、傘下の建設業者に対し、その周知と適正な契約締結及びその履行が徹底されるようよろしくお願いするとともに、引き続き建設業者の法令遵守の推進が図られますよう指導方併せてお願いします。
なお、受発注者ガイドラインは、国土交通省のホームページ
(xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxxxxxxxx/xxxxx/xxxxx_xxxxx_xx0_000000.xxxx)に掲載予定です。
発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン改訂新旧対照表
(朱色傍線部分は変更部分)
改 正 (令和 4 年 8 月) | 現 行 (令和 3 年 7 月) | 備 考 |
はじめに (略) | はじめに (略) | |
1.見積条件の提示等(建設業法第20条第4項、第20条の2) | 1.見積条件の提示等(建設業法第20条第3項、第20条の2) | |
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】 ①~②(略) 【建設業法上違反となる行為事例】 ③~④(略) | 【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】 ①~②(略) 【建設業法上違反となる行為事例】 ③~④(略) | |
上記①及び②のケースは、いずれも建設業法第20条第4項に違反するおそれがあり、③のケースは、同項に違反し、④のケースは、同項及び第20条の2に違反する。 | 上記①及び②のケースは、いずれも建設業法第20条第3項に違反するおそれがあり、③のケースは、同項に違反し、④のケースは、同項及び第20条の2に違反する。 | |
建設業法第20条第4項では、発注者は、建設工事の請負契約を締結する前に、下記(1)に示す具体的内容を受注予定者に提示し、その後、受注予定者が当該工事の見積りをするために必要な一定の期間を設けることが義務付けられている。これは、請負契約が適正に締結されるためには、発注者が受注予定者に対し、あらかじめ、契約の内容となるべき重要な事項を提示し、適正な見積期間を設け、見積落し等の問題が生じないよう検討する期間を確保し、受注予定者が請負代金の額の計算その他請負契約の締結に関する判断を行うことが可能となることが必要であることを 踏まえたものである。 | 建設業法第20条第3項では、発注者は、建設工事の請負契約を締結する前に、下記(1)に示す具体的内容を受注予定者に提示し、その後、受注予定者が当該工事の見積りをするために必要な一定の期間を設けることが義務付けられている。これは、請負契約が適正に締結されるためには、発注者が受注予定者に対し、あらかじめ、契約の内容となるべき重要な事項を提示し、適正な見積期間を設け、見積落し等の問題が生じないよう検討する期間を確保し、受注予定者が請負代金の額の計算その他請負契約の締結に関する判断を行うことが可能となることが必要であることを踏 まえたものである。 |
(1)見積りに当たっては工事の具体的内容を提示することが必要
(1)見積りに当たっては工事の具体的内容を提示することが必要
建設業法第20条第4項により、発注者が受注予定者に対して提示しなければならない具体的内容は、同法第19条により請負契約書に記載することが義務付けられている事項(工事内容、工事着手及び工事完成の時期、工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときはその内容、前金払又は出来形部分に対する支払の時期及び方法等(8ページ「2-1 当初契約」参照))のうち、請負代金の額を除くすべての事項となる。
建設業法第20条第3項により、発注者が受注予定者に対して提示しなければならない具体的内容は、同法第19条により請負契約書に記載することが義務付けられている事項(工事内容、工事着手及び工事完成の時期、工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときはその内容、前金払又は出来形部分に対する支払の時期及び方法等(8ページ「2-1 当初契約」参照))のうち、請負代金の額を除くすべての事項となる。
見積りを適正に行うという建設業法第20条第4項の趣旨に照らすと、例えば、上記のうち「工事内容」に関し、発注者が最低限明示すべき事項としては、
①工事名称
②施工場所
③設計図書(数量等含む)
④工事の責任施工範囲
⑤工事の全体工程
⑥見積条件
⑦施工環境、施工制約に関する事項
が挙げられ、発注者は、具体的内容が確定していない事項についてはその旨を明確に示さなければならない。施工条件が確定していないなどの正当な理由がないにもかかわらず、発注者が、受注予定者に対して、契約までの間に上記事項等に関し具体的な内容を提示しない場合には、建設業法第20条第4項に違反する。
また、建設業法第20条の2により、発注者は、当該建設工事に関し、
① 地盤の沈下、地下埋設物による土壌の汚染その他の地中の状態に起因する事象
② 騒音、振動その他の周辺の環境に配慮が必要な事象
が発生するおそれがあることを知っているときは、請負契約を締結するまでに、受注予定者に対して、必要な情報(例えば、地盤
見積りを適正に行うという建設業法第20条第3項の趣旨に照らすと、例えば、上記のうち「工事内容」に関し、発注者が最低限明示すべき事項としては、
①工事名称
③施工場所
③設計図書(数量等含む)
④工事の責任施工範囲
⑤工事の全体工程
⑥見積条件
⑦施工環境、施工制約に関する事項
が挙げられ、発注者は、具体的内容が確定していない事項についてはその旨を明確に示さなければならない。施工条件が確定していないなどの正当な理由がないにもかかわらず、発注者が、受注予定者に対して、契約までの間に上記事項等に関し具体的な内容を提示しない場合には、建設業法第20条第3項に違反する。
また、建設業法第20条の2により、発注者は、当該建設工事に関し、
① 地盤の沈下、地下埋設物による土壌の汚染その他の地中の状態に起因する事象
② 騒音、振動その他の周辺の環境に配慮が必要な事象
が発生するおそれがあることを知っているときは、請負契約を締結するまでに、受注予定者に対して、必要な情報(例えば、地盤
に関するボーリング調査結果報告書、土壌汚染調査報告書、既存 に関するボーリング調査結果報告書、土壌汚染調査報告書、既存
建物の建築図面、近隣住民との工事に関する協定書・要望書など、 建物の建築図面、近隣住民との工事に関する協定書・要望書など、
発注者が認識している情報)を提供しなければならない。発注者が把握しているにも関わらず必要な情報を提供しなかった場合、建設業法第20条第4項及び第20条の2に違反する。
発注者が認識している情報)を提供しなければならない。発注者が把握しているにも関わらず必要な情報を提供しなかった場合、建設業法第20条第3項及び第20条の2に違反する。
(2)~(3) (略) (2)~(3) (略)
(4)予定価格の額に応じて一定の見積期間を設けることが必要 (4)予定価格の額に応じて一定の見積期間を設けることが必要
建設業法第20条第4項により、発注者は、以下のとおり受注予定者が見積りを行うために必要な一定の期間(下記ア~ウ(建設業法施行令(昭和31年政令第273号)第6条)を設けなければならないこととされている。
ア 工事2件の予定価格が500万円に満たない工事については、1日以上
イ 工事1件の予定価格が500万円以上5,000万円に満たない工事については、10日以上
ウ 工事1件の予定価格が5,000万円以上の工事については、15日以上
建設業法第20条第3項により、発注者は、以下のとおり受注予定者が見積りを行うために必要な一定の期間(下記ア~ウ(建設業法施行令(昭和31年政令第273号)第6条)を設けなければならないこととされている。
ア 工事2件の予定価格が500万円に満たない工事については、1日以上
イ 工事1件の予定価格が500万円以上5,000万円に満たない工事については、10日以上
ウ 工事1件の予定価格が5,000万円以上の工事については、15日以上
上記期間は、受注予定者に対する契約内容の提示から当該契約の締結又は入札までの間に設けなければならない期間である。そのため、受注予定者が所定の見積期間満了を待たずに見積書を交付した場合を除き、例えば、4月1日に契約内容の提示をした場合には、アに該当する場合は4月3日、イに該当する場合は4月
12日、ウに該当する場合は4月17日以降に契約の締結又は入札をしなければならない。ただし、やむを得ない事情があるときは、イ及びウの期間は、5日以内に限り短縮することができる。
上記の見積期間は、受注予定者が見積りを行うための最短期間であり、より適正な見積が行われるようにするためには、とりわけ大型工事等において、発注者は、受注予定者に対し、余裕を持った十分な見積期間を設けることが望ましい。
また、上記見積期間については、追加工事等に伴う見積依頼に
上記期間は、受注予定者に対する契約内容の提示から当該契約の締結又は入札までの間に設けなければならない期間である。そのため、受注予定者が所定の見積期間満了を待たずに見積書を交付した場合を除き、例えば、4月1日に契約内容の提示をした場合には、アに該当する場合は4月3日、イに該当する場合は4月
12日、ウに該当する場合は4月17日以降に契約の締結又は入札をしなければならない。ただし、やむを得ない事情があるときは、イ及びウの期間は、5日以内に限り短縮することができる。
上記の見積期間は、受注予定者が見積りを行うための最短期間であり、より適正な見積が行われるようにするためには、とりわけ大型工事等において、発注者は、受注予定者に対し、余裕を持った十分な見積期間を設けることが望ましい。
また、上記見積期間については、追加工事等に伴う見積依頼に
おいても同様に適用されるため、留意すること。
なお、国が一般競争入札により発注する公共工事については、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)第74条の規定により入札期日の前日から起算して少なくとも10日前(急を要する場合には5日までに短縮可能)に公告しなければならないとされており、この期間が上記ア~ウの見積期間とみなされる。
おいても同様に適用されるため、留意すること。
なお、国が一般競争入札により発注する公共工事については、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)第74条の規定により入札期日の前日から起算して少なくとも10日前(急を要する場合には5日までに短縮可能)に公告しなければならないとされており、この期間が上記ア~ウの見積期間とみなされる。
2.~4.(略) 2.~4.(略)
5.原材料費等の高騰・納期遅延等の状況における適正な請負代 金の設定及び適正な工期の確保(建設業法第19条第2項、第
19条の3、第19条の5))
(新設)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
原材料費、労務費、エネルギーコスト等(以下「原材料費等という。)の高騰や資材不足など発注者及び受注者双方の責め
に帰さない理由により、施工に必要な費用の上昇、納期の遅延、 工事全体の一時中止、前工程の遅れなどが発生しているにもかかわらず、追加費用の負担や工期について発注者が受注者からの協議に応じず、必要な変更契約を行わなかった場合
(新設)
上記のケースは、建設業法第19条第2項に違反し、第19条 の3又は第19条の5に違反するおそれがある。
(新設)
(1)原材料費等の高騰や納期遅延が発生している状況において は、取引価格を反映した適正な請負代金の設定や納期の実態を踏まえた適正な工期の確保のため、請負代金及び工期の変更に関する規定を適切に設定・運用することが必要
(新設)
原材料費等の取引価格を反映した適正な請負代金の設定や納期
の実態を踏まえた適正な工期の確保のため、請負契約の締結に当 たっては、公共工事標準請負契約約款第26条(賃金又は物価の変動に基づく請負代金額の変更)(いわゆるスライド条項)及び第22条(受注者の請求による工期の延長)又は民間建設工事標準請負契約約款(甲)第31条(請負代金額の変更)及び第30条(工事又は工期の変更等)(電力・ガス、鉄道等の民間企業の工事の請負契約においては公共工事標準請負契約約款を使用)を適切に設定・運用するとともに、契約締結後においても受注者から協議の申出があった場合には発注者が適切に協議に応じること等により、状況に応じた必要な契約変更を実施するなど、適切な対応を図る必要がある。
なお、発注者・受注者間におけるこれらの対応は、元請負人・ 下請負人間の適正な請負代金の設定及び適正な工期の確保に当たっても重要であること、下請中小企業振興法(昭和45年法律第
145号)に基づく振興基準(令和4年7月29日、以下「振興 基準」という。)において、建設など見積り及び発注から納品までの期間が長期にわたる取引においては、期中に原材料費等のコストが上昇した場合であって、下請事業者からの申出があったときは、親事業者は、期中の価格変更にできる限り柔軟に応じるものとするとされていることについても留意しなければならない。
(2)発注者が受注者との協議や変更契約に応じない場合は「不 当に低い請負代金の禁止」や「著しく短い工期」に違反するおそれ
(新設)
建設業法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)により禁 止される行為は、当初契約の締結に際して不当に低い請負代金を強制することに限られず、契約締結後に原材料費等が高騰したにもかかわらず、それに見合った請負代金の増額を行わないことも含まれる。
このため、原材料費等が高騰している状況において、発注者が、 自己の取引上の地位を不当に利用して、受注者側からの協議に応じず、必要な変更契約を行わなかった結果、請負代金の額がその
建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない 金額となっている場合には、同条に違反するおそれがある。
また、建設業法第19条の5(著しく短い工期の禁止)により 禁止される行為は、当初契約の締結に際して著しく短い工期を設定することに限られず、契約締結後、原材料等の納期の遅延など受注者の責めに帰さない理由により、当初の契約どおり工事が進行しない場合等において必要な工期の変更を行わないことも含まれる。
このため、資材不足等により原材料費等の納期遅延が発生して いる状況において、その工期が、注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間となっている場合には、同条に違反するおそれがある。
なお、建設業法第19条の6において、国土交通大臣又はxx 府県知事は、発注者が同法第19条の3又は第19条の5の規定に違反している事実があり、特に必要があると認めるときは、当該発注者に対して必要な勧告をすることができ、発注者がその勧告に従わないときは、その旨を公表することができると規定している。
適正な請負代金の設定については、10ページ「2.書面によ る契約締結 2-1当初契約(5)、(6)」、14ページ「2-2追加工事等に伴う追加・変更契約(3)」を参照。
適正な工期の確保については、17ページ「3.著しく短い工 期の禁止」、15ページ「2.書面による契約締結 2-3工期変更に伴う変更契約(1)、(2)、(3)」を参照。
不当に低い請負代金については、19ページ「4.不当に低い 請負代金」を参照。
6.指値発注(建設業法第19条第1項、第19条の3,第20条第4項)
5.指値発注(建設業法第19条第1項、第19条の3,第20条第3項)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①~③(略)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①~③(略)
【建設業法上違反となる行為事例】
④~⑤(略)
【建設業法上違反となる行為事例】
④~⑤(略)
上記①から⑤のケースは、いずれも建設業法第19条の3に違反するおそれがある。また、④のケースは同法第19条第1項に違反し、⑤のケースは同法第20条第4項に違反する。
上記①から⑤のケースは、いずれも建設業法第19条の3に違反するおそれがある。また、④のケースは同法第19条第1項に違反し、⑤のケースは同法第20条第3項に違反する。
指値発注とは、発注者が受注者との請負契約を交わす際、受注者と十分な協議をせず、又は受注者との協議に応じることなく、
指値発注とは、発注者が受注者との請負契約を交わす際、受注者と十分な協議をせず、又は受注者との協議に応じることなく、
発注者が一方的に決めた請負代金の額を受注者に提示(指値)し、 発注者が一方的に決めた請負代金の額を受注者に提示(指値)し、
その額で受注者に契約を締結させることをいう。指値発注は、建設業法第18条の建設工事の請負契約の原則(各々の対等な立場における合意に基づいてxxな契約を締結する。)を没却するものである。
その額で受注者に契約を締結させることをいう。指値発注は、建設業法第18条の建設工事の請負契約の原則(各々の対等な立場における合意に基づいてxxな契約を締結する。)を没却するものである。
公共工事においては、入札公告などから入札期日の前日まで一定の期間を設け、また、発注者が積算した予定価格の範囲内で応札した者の中から受注者を決めるのが一般的であり、当初契約時においては、①から⑤までのようなケースは生じにくいものと考える。しかし、発注者は、歩切りをして予定価格を設定することや、歩切りした予定価格による入札手続の入札辞退者にペナルティを課すなどにより、歩切りをした予定価格の範囲内での入札を実質的に強いるようなことは、厳に慎む必要がある。また、変更契約は、入札手続を経ることなく、相対で締結されることから、発注者が請負代金の増額に応じないなどのケースが生じるおそれがあり、建設業法第19条の3違反とならないよう留意が必要である。
公共工事においては、入札公告などから入札期日の前日まで一定の期間を設け、また、発注者が積算した予定価格の範囲内で応札した者の中から受注者を決めるのが一般的であり、当初契約時においては、①から⑤までのようなケースは生じにくいものと考える。しかし、発注者は、歩切りをして予定価格を設定することや、歩切りした予定価格による入札手続の入札辞退者にペナルティを課すなどにより、歩切りをした予定価格の範囲内での入札を実質的に強いるようなことは、厳に慎む必要がある。また、変更契約は、入札手続を経ることなく、相対で締結されることから、発注者が請負代金の増額に応じないなどのケースが生じるおそれがあり、建設業法第19条の3違反とならないよう留意が必要である。
(1)指値発注は建設業法に違反するおそれ (1)指値発注は建設業法に違反するおそれ
指値発注は、発注者としての取引上の地位の不当利用に当たるものと考えられ、請負代金の額がその工事を施工するために「通常必要と認められる原価」(19ページ「4. 不当に低い発注金額」参照)に満たない金額となる場合には、受注者の当該発注者
指値発注は、発注者としての取引上の地位の不当利用に当たるものと考えられ、請負代金の額がその工事を施工するために「通常必要と認められる原価」(19ページ「4. 不当に低い発注金額」参照)に満たない金額となる場合には、受注者の当該発注者
に対する取引依存度等の状況によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
発注者が受注者に対して示した工期が、通常の工期に比べて短い工期である場合には、工事を施工するために「通常必要と認められる原価」は、発注者が示した短い工期で工事を完成させることを前提として算定されるべきである。
発注者が通常の工期を前提とした請負代金の額で指値をした上で短い工期で工事を完成させることにより、請負代金の額がその工事を施工するために「通常必要と認められる原価」(19ページ「4.不当に低い発注金額」参照)を下回る場合には、建設業法第19条の3に違反するおそれがある。
また、発注者が受注者に対し、指値した額で請負契約を締結するか否かを判断する期間を与えることなく回答を求める行為については、建設業法第20条第4項の見積りを行うための一定期間の確保に違反する(5ページ「1.見積条件の提示等」参照)。
更に、発注者と受注者との間において請負代金の額の合意が得られず、このことにより契約書面の取り交わしが行われていない段階で、発注者が受注者に対し工事の施工を強要し、その後に請負代金の額を発注者の指値により一方的に決定する行為は、建設業法第19条第1項に違反する(8ページ「2.書面による契約締結」参照)。
に対する取引依存度等の状況によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
発注者が受注者に対して示した工期が、通常の工期に比べて短い工期である場合には、工事を施工するために「通常必要と認められる原価」は、発注者が示した短い工期で工事を完成させることを前提として算定されるべきである。
発注者が通常の工期を前提とした請負代金の額で指値をした上で短い工期で工事を完成させることにより、請負代金の額がその工事を施工するために「通常必要と認められる原価」(19ページ「4.不当に低い発注金額」参照)を下回る場合には、建設業法第19条の3に違反するおそれがある。
また、発注者が受注者に対し、指値した額で請負契約を締結するか否かを判断する期間を与えることなく回答を求める行為については、建設業法第20条第3項の見積りを行うための一定期間の確保に違反する(5ページ「1.見積条件の提示等」参照)。
更に、発注者と受注者との間において請負代金の額の合意が得られず、このことにより契約書面の取り交わしが行われていない段階で、発注者が受注者に対し工事の施工を強要し、その後に請負代金の額を発注者の指値により一方的に決定する行為は、建設業法第19条第1項に違反する(8ページ「2.書面による契約締結」参照)。
(2)(略) (2)(略)
7.不当な使用資材等の購入強制(建設業法第19条の4)
(1)~(6)(略)
6.不当な使用資材等の購入強制(建設業法第19条の4)
(1)~(6)(略)
8.やり直し工事(建設業法第19条第2項、第19条の3)
(1)~(4)(略)
7.やり直し工事(建設業法第19条第2項、第19条の3)
(1)~(4)(略)
9 支払(建設業法第24条の3第2項、第24条の6) 8.支払(建設業法第24条の3第2項、第24条の6)
【望ましくない行為事例】
【望ましくない行為事例】
①~③(略)
①~③(略)
上記①から③のケースは、いずれも発注者が受注者による建設業法第24条の6違反の行為を誘発するおそれがあり、望ましくない。
(1)請負代金の支払時の留意事項
請負代金については、発注者と受注者の合意により交わされた請負契約に基づいて適正に支払われなければならない。請負代金の支払方法については、原則として当事者間の取り決めにより自由に定めることができるが、本来は工事目的物の引渡しと請負代金の支払は同時履行の関係に立つものであり、民間約款等においても、その旨が規定されている。また、発注者から受注者への支払は、元請下請間の支払に大きな影響を及ぼすことから、少なくとも引渡し終了後できるだけ速やかに適正な支払を行うように定めることが求められる。
更に、実際には、特に長期工事の場合等、工事完成まで支払がなされないと、受注者及び下請負人の工事に必要な資金が不足するおそれがあるため、民間工事標準請負契約約款の規定に沿って前払金制度あるいは部分払制度(いわゆる出来高払制度)を活用するなど、迅速かつ適正な支払を行うことが望ましい。
(2)(略)
(3)請負代金を手形で支払う場合の留意事項
建設業法第24条の3第2項では、元請負人は、下請代金のうち労務費に相当する部分については、現金で支払うよう適切な配慮をしなければならないとされている。
上記①から③のケースは、いずれも発注者が受注者による建設業法第24条の6違反の行為を誘発するおそれがあり、望ましくない。
(1)請負代金の支払時の留意事項
請負代金については、発注者と受注者の合意により交わされた請負契約に基づいて適正に支払われなければならない。請負代金の支払方法については、原則として当事者間の取り決めにより自由に定めることができるが、本来は工事目的物の引渡しと請負代金の支払は同時履行の関係に立つものであり、民間約款等においても、その旨が規定されている。また、発注者から受注者への支払は、元請下請間の支払に大きな影響を及ぼすことから、少なくとも引渡し終了後できるだけ速やかに適正な支払を行うように定めることが求められる。
更に、実際には、特に長期工事の場合等、工事完成まで支払がなされないと、受注者及び下請負人の工事に必要な資金が不足するおそれがあるため、振興基準において、建設など見積り及び発 注から納品までの期間が長期にわたる取引においては、親事業者は、前払い比率及び期中払い比率をできる限り高めるよう努めることとされていることも踏まえ、発注者からの支払いにおいても、民間工事標準請負契約約款の規定に沿って前払金制度あるいは部分払制度(いわゆる出来高払制度)を活用するなど、迅速かつ適正な支払を行うことが望ましい。
(2)(略)
(3)請負代金を手形で支払う場合の留意事項
建設業法第24条の3第2項では、元請負人は、下請代金のうち労務費に相当する部分については、現金で支払うよう適切な配慮をしなければならないとされている。
また、建設業法第24条の6第3項では、受注者が特定建設業者であり下請負人が資本金4,000万円未満の一般建設業者である場合、下請代金の支払に当たって一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形(例えば、手形期間が120日超の長期手形)を交付してはならないとされている。
発注者から受注者への支払方法は、元請下請間の支払に実質的
また、建設業法第24条の6第3項では、受注者が特定建設業者であり下請負人が資本金4,000万円未満の一般建設業者である場合、下請代金の支払に当たって一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形(例えば、手形期間が120日超の長期手形)を交付してはならないとされている。
発注者から受注者への支払方法は、元請下請間の支払に実質的
な影響を与えかねないことから、発注者は、上記の趣旨を踏まえ、 な影響を与えかねないことから、発注者は、上記の趣旨を踏まえ、
受注者に対する請負代金の支払は、できる限り現金によることが望ましく、手形で支払う場合にも、同条の趣旨を踏まえ、長期手形を交付することがないようにすることが望ましい。
また、下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の趣旨に鑑み、下請代金の支払に係る考え方を改めて整理した、「下請代金の支払手段について」(令和3年3月31日20210322中庁第2号・公取企第25号。以下「手形通達」という。)において、次のとおり下請取引の適正化に努めるよう要請されているため、「建設業法令遵守ガイドライン」(令和4年8月)において、元請負人はこの点についても留意しなければならないとされていることについても併せて留意することが望ましい。
受注者に対する請負代金の支払は、できる限り現金によることが望ましく、手形で支払う場合にも、同条の趣旨を踏まえ、長期手形を交付することがないようにすることが望ましい。
また、下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の趣旨に鑑み、下請代金の支払に係る考え方を改めて整理した、「下請代金の支払手段について」(令和3年3月31日20210322中庁第2号・公取企第25号。以下「手形通達」という。)において、次のとおり下請取引の適正化に努めるよう要請されているため、「建設業法令遵守ガイドライン」(令和3年7月)において、元請負人はこの点についても留意しなければならないとされていることについても併せて留意することが望ましい。
<参考>
〇下請代金の支払手段について(令和3年3月31日2021
0322中庁第2号・公取企第25号)
(略)
<参考>
〇下請代金の支払手段について(令和3年3月31日2021
0322中庁第2号・公取企第25号)
(略)
記 記
親事業者による下請代金の支払については、以下によるものとする。
親事業者による下請代金の支払については、以下によるものとする。
1 下請代金の支払は、できる限り現金によるものとすること。
2 手形等により下請代金を支払う場合には、当該手形等の現金化にかかる割引料等のコストについて、下請事業者の負担とすることのないよう、これを勘案した下請代金の額を親事業者と下請事業者で十分協議して決定すること。当該協議を行う際、
1 下請代金の支払は、できる限り現金によるものとすること。
2 手形等により下請代金を支払う場合には、当該手形等の現金化にかかる割引料等のコストについて、下請事業者の負担とすることのないよう、これを勘案した下請代金の額を親事業者と下請事業者で十分協議して決定すること。当該協議を行う際、
親事業者と下請事業者の双方が、手形等の現金化にかかる割引料等のコストについて具体的に検討できるように、親事業者は、支払期日に現金により支払う場合の下請代金の額並びに支払期日に手形等により支払う場合の下請代金の額及び当該手形等の現金化にかかる割引料等のコストを示すこと。※
3 下請代金の支払に係る手形等のサイトについては、60日以内とすること。
4 前記1から3までの要請内容については、新型コロナウイルス感染症による現下の経済状況を踏まえつつ、おおむね3年以内を目途として、可能な限り速やかに実施すること。
※ 割引料等のコストについては、実際に下請事業者が近時に割引をした場合の割引料等の実績等を聞くなどにより把握する方法が考えられる。
親事業者と下請事業者の双方が、手形等の現金化にかかる割引料等のコストについて具体的に検討できるように、親事業者は、支払期日に現金により支払う場合の下請代金の額並びに支払期日に手形等により支払う場合の下請代金の額及び当該手形等の現金化にかかる割引料等のコストを示すこと。※
3 下請代金の支払に係る手形等のサイトについては、60日以内とすること。
4 前記1から3までの要請内容については、新型コロナウイルス感染症による現下の経済状況を踏まえつつ、おおむね3年以内を目途として、可能な限り速やかに実施すること。
※ 割引料等のコストについては、実際に下請事業者が近時に割引をした場合の割引料等の実績等を聞くなどにより把握する方法が考えられる。
併せて、手形通達によって要請されている取組に加えて、振興 基準において、約束手形をできる限り利用しないよう努めること及びサプライチェーン全体で約束手形の利用の廃止等に向けた取組を進めることとされていること、手形等のサイトの短縮について(令和4年2月16日20211206中庁第1号・公取企第
131号)において、公正取引委員会及び中小企業庁が、おおむ ね令和6年までに、60日を超えるサイトの約束手形、一括決済方式及び電子記録債権を、下請代金支払遅延等防止法上「割引困難な手形」等に該当するおそれがあるものとして指導の対象とすることを前提として、同法の運用の見直しの検討を行うこととしていること、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画フォローアップ(令和4年6月7日閣議決定)」において令和8年の約束手形の利用の廃止に向けた取組を促進する旨閣議決定されていること、金融業界に対し、令和8年に手形交換所における約束手形の取扱いを廃止することの可否について検討するよう要請されていること等を踏まえ、建設業界においても、発注者も含めて関係者全体で、約束手形の利用の廃止等に向けて、前金払等の充実、振込払い及び電子記録債権への移行、支払サイトの短縮等の取組を進めていくよう努めることが重要であることについても留意しなければならない。
また、手形通達によって要請されている取組に加えて、「成長戦 略実行計画(令和3年6月18日閣議決定)」において、約束手形の利用の廃止に向けた取組を促進することとされていること等を踏まえ、建設業界においても、発注者も含めて関係者全体で、約束手形の利用の廃止等に向けて、前金払等の充実、振込払い及び電子記録債権への移行、支払サイトの短縮等の取組を進めていくよう努めることが重要であることについても留意しなければならない。
10.関係法令
10 -1 独占禁止法との関係について
9.関係法令
9-1 独占禁止法との関係について
不当に低い発注金額や不当な使用資材等の購入強制については、建設業法第19条の3及び第19条の4でこれを禁止しているが、これらの規定に違反する上記行為は、私的独占の禁止及び
公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)第19条で禁止している不公正な取引方法の一類型である優越的な地位の濫用にも該当するおそれがある。優越的地位の濫用に関して、公正取引委員会は、平成22年11月
30日、「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(以下「考え方」という。)を示している。
この「考え方」のうち、本ガイドラインと関係のある主な部分は以下のとおりである。
不当に低い発注金額や不当な使用資材等の購入強制については、建設業法第19条の3及び第19条の4でこれを禁止しているが、これらの規定に違反する上記行為は、私的独占の禁止及び
公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)第19条で禁止している不公正な取引方法の一類型である優越的な地位の濫用にも該当するおそれがある。優越的地位の濫用に関して、公正取引委員会は、平成22年11月
30日、「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(以下「考え方」という。)を示している。
この「考え方」のうち、本ガイドラインと関係のある主な部分は以下のとおりである。
①「1.見積条件の提示等」、「2-1 当初契約」、「2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約」、「2-3 工期変更に伴う変
①「1.見積条件の提示等」、「2-1 当初契約」、「2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約」、「2-3 工期変更に伴う変更
更契約」及び「4.不当に低い発注金額」に関しては、「考え方」 契約」及び「4.不当に低い発注金額」に関しては、「考え方」第
第4の2(3)に掲げる「その他経済上の利益の提供の要請」、第4の3(4)に掲げる「減額」及び第4の3(5)に掲げる
「その他取引の相手方に不利益となる取引条件の設定等」
4の2(3)に掲げる「その他経済上の利益の提供の要請」、第4の3(4)に掲げる「減額」及び第4の3(5)に掲げる「その他取引の相手方に不利益となる取引条件の設定等」
②「6.指値発注」に関しては、「考え方」第4の3(5)アに掲げる「取引の対価の一方的決定」
②「5.指値発注」に関しては、「考え方」第4の3(5)アに掲げる「取引の対価の一方的決定」
③「7.不当な使用資材等の購入強制」に関しては、「考え方」第
4の1に掲げる「購入・利用強制」
③「6.不当な使用資材等の購入強制」に関しては、「考え方」第
4の1に掲げる「購入・利用強制」
④「8.やり直し工事」に関しては、「考え方」第4の3(5)イに掲げる「やり直しの要請」
④「7.やり直し工事」に関しては、「考え方」第4の3(5)イに掲げる「やり直しの要請」
⑤「9.支払」に関しては、「考え方」第4の3(3)に掲げる「支 ⑤「8.支払」に関しては、「考え方」第4の3(3)に掲げる「支
払遅延」 払遅延」
なお、発注者が独占禁止法第2条第1項に規定する事業者でない場合(公的発注機関の場合)には、建設業法第19条の6第1項において、国土交通大臣又は都道府県知事は、当該発注者が同法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)又は第19条の4
(不当な使用資材等の購入強制の禁止)の規定に違反している事実があり、特に必要があると認めるときは、当該発注者に対して必要な勧告をすることができると規定している。
なお、発注者が独占禁止法第2条第1項に規定する事業者でない場合(公的発注機関の場合)には、建設業法第19条の6第1項において、国土交通大臣又は都道府県知事は、当該発注者が同法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)又は第19条の4
(不当な使用資材等の購入強制の禁止)の規定に違反している事実があり、特に必要があると認めるときは、当該発注者に対して必要な勧告をすることができると規定している。
10 -2 社会保険・労働保険(法定福利費)等について
(略)
9-2 社会保険・労働保険(法定福利費)等について
(略)
10 -3 建設工事で発生する建設副産物について
建設現場では、土砂、コンクリート塊等の再生資源や産業廃棄 物(以下これらを「建設副産物」と総称する。)が発生する。建設現場で発生した廃棄物混じりの土砂等は、建設現場等で土砂等と廃棄物に分別することが必要であり、分別された廃棄物については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第1
37号。以下「廃棄物処理法」という。)に基づき適正な処理を 行うことが必要である。
廃棄物処理法では、事業者は、その事業活動に伴って生じた廃 棄物を自らの責任において適正に処理しなければならないと規定がされており、建設工事では原則として、発注者から直接建設工事を請け負った受注者が適切な処理を行う排出事業者としての義務を遵守する必要がある。
また、廃棄物が混じっていない土砂等(廃棄物と分別後のもの を含む。)は、資源の有効な利用の促進に関する法律(平成3年法律第48号)に基づき、発注者から直接建設工事を請け負った受注者のもと、他工事での利用など、再生資源としての利用を促進する必要がある。
したがって、建設現場から発生する建設副産物を他工事や再資 源化施設、処分場等に運搬するための経費や、その処理に要する
(新設)
経費は、建設業者が義務的に負担しなければならない費用であり、
建設業法第19条の3に規定する「通常必要と認められる原価」に含まれるものであることに留意が必要である。
受注者は、下請負人から提示された見積書の内容も踏まえ、建 設副産物の適正処理に要する経費を適正に見積り、発注者に交付する見積書に明示すべきである。
発注者は、受注者から交付された建設副産物の適正処理に要す る経費が明示された見積書を尊重しつつ、建設業法第18条を踏まえ、対等な立場で受注者との契約交渉をしなければならない。
なお、受注者の見積書に建設副産物の処理に要する経費が明示 されているにもかかわらず、発注者がこれを尊重せず、当該経費相当額を一方的に削減したり、当該経費相当額を含めない金額で建設工事の請負契約を締結し、その結果「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合には、受注者の当該発注者への取引依存度等によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
また、建設副産物の処理等に要する経費について、契約締結後 の状況により予期せぬ変更が生じた場合にも、発注者と受注者が協議の上、適切に変更契約を行い請負代金に反映することが必要である。追加的に発生した建設副産物の処理等に要する費用を受注者に負担させ、その結果「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合にも、受注者の当該発注者への取引依存度等によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第4版)
令和4年8月
国土交通省 不動産・建設経済局建 設 業 課
目 次
はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
1.見積条件の提示等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
(建設業法第20条4項、第20条の2)
2.書面による契約締結
2-1 当初契約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
(建設業法第19条第1項、第19条の3、第20条第1項)
2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
(建設業法第19条第2項、第19条の3)
2-3 工期変更に伴う変更契約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
(建設業法第19条第2項、第19条の3)
3.著しく短い工期の禁止・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
(建設業法第19条の5)
4.不当に低い発注金額・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
(建設業法第19条の3)
5.原材料費等の高騰・納期遅延等の状況における適正な請負代金・・・・・・22の設定及び適正な工期の確保
(建設業法第19条第2項、第19条の3、第19条の5)
6.指値発注・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
(建設業法第19条第1項、第19条の3、第20条第4項)
7.不当な使用資材等の購入強制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
(建設業法第19条の4)
8.やり直し工事・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
(建設業法第19条第2項、第19条の3)
9.支払・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
(建設業法第24条の3第2項、第24条の6)
10.関係法令
10-1 独占禁止法との関係について・・・・・・・・・・・・・・・・・34
10-2 社会保険・労働保険(法定福利費)等について・・・・・・・・・35
10-3 建設工事で発生する建設副産物について・・・・・・・・・・・・36
関連条文・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37
「建設業法」(抄)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39
「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(抄)・・・・・・・・ 45
「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(抄)・・・・・・・・47
「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(抄)・・・・・・・・・58
「労働基準法」(抄)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・61
「公共工事標準請負契約約款」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64
「民間工事標準請負契約約款(甲)」・・・・・・・・・・・・・・・・・・105
「工期に関する基準」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・131
はじめに
発注者と受注者との間の契約は建設生産システムのスタートとして位置付けられ るものです。両者の間の契約の適正化を図ることは、元請下請間の契約を含め建設業における契約全体について当事者が対等な立場に立ってそれぞれの責任と役割の分 担を明確化することを促進するとともに、適正な施工の確保にも資するものであり、ひいては発注者等の最終消費者の利益にもつながるものです。また、建設業は現在、若年入職者の減少や就業者の高齢化が進行するなどの構造的な問題に直面しており、処遇改善等を通じて、建設業への若年層の入職を促進させることが必要であり、そのためには、職人の処遇改善、社会保険の加入確認などの現場の生産性向上を図る建設キャリアアップシステムを普及させていくことが必要です。
建設業法(昭和24年法律第100号)においては、契約当事者は、各々対等な立場における合意に基づいて、契約締結及びその履行を図るべきものとし、不当に低い請負代金の禁止、不当な使用資材等の購入強制の禁止など契約適正化のために契約当事者が遵守すべき最低限の義務等を定めていますが、これらの規定の趣旨が十分に認識されていない場合等においては、法令遵守が徹底されず、建設業の健全な発展と建設工事の適正な施工を妨げるおそれがあります。法令遵守は、受発注者双方が徹底を図らなければならないものです。
こうした観点から、公共工事、民間工事にかかわらず、発注者と受注者との間で行われる請負契約の締結やその履行に関し、法律の不知等による法令違反行為を防ぎ、発注者と受注者との対等な関係の構築及び公正・透明な取引の実現を図るための対策として、受発注者間の建設業法令遵守ガイドラインの早期策定及びその活用の必要性が指摘され、平成23年6月に建設産業戦略会議がとりまとめた「建設産業の再生と発展のための方策2011」においてもその旨が盛り込まれたことを受け、発注者と受注者との間の取引において、必ずしも十分に徹底されていない法条を中心に、建設業法に照らし、受発注者はどのような対応をとるべきか、また、どのような行為が不適切であるかを明示した「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」を平成23年8月に策定し、必要に応じて、適宜改訂を行うこととしています。
本ガイドラインの活用により、発注者と受注者との間の契約の適正化がより一層促 進されるとともに、元請下請間の契約の適正化を図るために平成19年6月に策定し、今般、併せて改訂した「建設業法令遵守ガイドライン」も併せて活用することにより、 建設業における契約全体の適正化が促進されることが期待されます。
(注1)本ガイドラインにおける用語の意義は、以下のとおり。
「発注者」とは、建設工事の最初の注文者(いわゆる「施主」)をいう。
「受注者」とは、発注者から直接工事を請け負った請負人をいう。
(注2)本ガイドラインは、公共工事及び民間工事における発注者と受注者との間の取引全般を対象としているが、個人が発注する工事で専ら自ら利用する住宅や施設を目的物とするものに関する取引は含まない。
(注3)本ガイドラインは上記のとおり発注者と受注者との間の請負契約全般を対象としているが、公共工事については、入札契約手続が制度化されていることや、支払についての規定があること等、民間工事とは異なる点があることに留意し必要に応じ記述を加えている。
(注4)発注者の代理人が行った行為が、本ガイドラインに抵触する場合にも、発注者が責めを免れるものではない。
1.見積条件の提示等(建設業法第20条第4項、第20条の2)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①発注者が不明確な工事内容の提示等、曖昧な見積条件により受注予定者に見積りを依頼した場合
②発注者が受注予定者から工事内容等の見積条件に関する質問を受けた際、発注者が未回答あるいは曖昧な回答をした場合
【建設業法上違反となる行為事例】
③発注者が予定価格1億円の請負契約を締結しようとする際、見積期間を1週間として受注予定者に見積りを行わせた場合
④発注者が地下埋設物による土壌汚染があることを知りながら、受注予定者にその情報提
供を行わず、そのまま見積りを行わせ、契約した場合
上記①及び②のケースは、いずれも建設業法第20条第4項に違反するおそれがあり、③のケースは、同項に違反し、④のケースは、同項及び第20条の2に違反する。
建設業法第20条第4項では、発注者は、建設工事の請負契約を締結する前に、下記(1)に示す具体的内容を受注予定者に提示し、その後、受注予定者が当該工事の見積りをするために必要な一定の期間を設けることが義務付けられている。これは、請負契約が適正に締結されるためには、発注者が受注予定者に対し、あらかじめ、契約の内容となるべき重要な事項を提示し、適正な見積期間を設け、見積落し等の問題が生じないよう検討する期間を確保し、受注予定者が請負代金の額の計算その他請負契約の締結に関する判断を行うことが可能となることが必要であることを踏まえたものである。
(1)見積りに当たっては工事の具体的内容を提示することが必要
建設業法第20条第4項により、発注者が受注予定者に対して提示しなければならない具体的内容は、同法第19条により請負契約書に記載することが義務付けられている事項(工事内容、工事着手及び工事完成の時期、工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときはその内容、前金払又は出来形部分に対する支払の時期及び方法等(8ページ「2-1 当初契約」参照))のうち、請負代金の額を除くすべての事項となる。
見積りを適正に行うという建設業法第20条第4項の趣旨に照らすと、例えば、上記のうち「工事内容」に関し、発注者が最低限明示すべき事項としては、
① 工事名称
② 施工場所
③ 設計図書(数量等を含む)
④ 工事の責任施工範囲
⑤ 工事の全体工程
⑥ 見積条件
⑦ 施工環境、施工制約に関する事項
が挙げられ、発注者は、具体的内容が確定していない事項についてはその旨を明確に示さなければならない。施工条件が確定していないなどの正当な理由がないにもかかわらず、発注者が、受注予定者に対して、契約までの間に上記事項等に関し具体的な内容を提示しない場合には、建設業法第20条第4項に違反する。
また、建設業法第20条の2により、発注者は、当該建設工事に関し、
① 地盤の沈下、地下埋設物による土壌の汚染その他の地中の状態に起因する事象
② 騒音、振動その他の周辺の環境に配慮が必要な事象
が発生するおそれがあることを知っているときは、請負契約を締結するまでに、受注予定者に対して、必要な情報(例えば、地盤に関するボーリング調査結果報告書、土壌汚染調査報告書、既存建物の建築図面、近隣住民との工事に関する協定書・要望書など、発注者が認識している情報)を提供しなければならない。発注者が把握しているにも関わらず必要な情報を提供しなかった場合、建設業法第20条第4項及び第20条の2に違反する。
(2)望ましくは、工事の内容を書面で提示し、作業内容を明確にすること
発注者が受注予定者に見積りを依頼する際は、受注予定者に対し工事の具体的な内容について、口頭ではなく、書面によりその内容を示すことが望ましい。
(3)追加工事又は変更工事(以下「追加工事等」という。)に伴う変更契約等を 行う際にも適正な見積り手続きが必要
当初の契約どおり工事が進行せず、工事内容に変更が生じ、工期又は請負代金の額に変更が生じる場合には、双方の協議による適正な手順により、受注者に対し、追加工事等の着工前に書面による見積依頼を行うこと。また、当初契約の見積りと同様、上記(1)~(2)に留意し、見積条件の提示を行う必要がある。
(4)予定価格の額に応じて一定の見積期間を設けることが必要
建設業法第20条第4項により、発注者は、以下のとおり受注予定者が見積りを行うために必要な一定の期間(下記ア~ウ(建設業法施行令(昭和31年政令第273号)第6条))を設けなければならないこととされている。
ア 工事1件の予定価格が500万円に満たない工事については、1日以上イ 工事1件の予定価格が500万円以上5,000万円に満たない工事に
ついては、10日以上
ウ 工事1件の予定価格が5,000万円以上の工事については、15日以上
上記期間は、受注予定者に対する契約内容の提示から当該契約の締結又は入札までの間に設けなければならない期間である。そのため、受注予定者が所定の見積期間満了を待たずに見積書を交付した場合を除き、例えば、4月1日に契約内容の提示をした場合には、アに該当する場合は4月3日、イに該当する場合は4月12日、ウに該当する場合は4月17日以降に契約の締結又は入札をしなければならない。ただし、やむを得ない事情があるときは、イ及びウの期間は、5日以内に限り短縮することができる。
上記の見積期間は、受注予定者が見積りを行うための最短期間であり、より適正な見積が行われるようにするためには、とりわけ大型工事等において、発注者は、受注予定者に対し、余裕を持った十分な見積期間を設けることが望ましい。
また、上記見積期間については、追加工事等に伴う見積依頼においても同様に適用されるため、留意すること。
なお、国が一般競争入札により発注する公共工事については、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)第74条の規定により入札期日の前日から起算して少なくとも10日前(急を要する場合には5日までに短縮可能)に公告しなければならないとされており、この期間が上記ア~ウの見積期間とみなされる。
2.書面による契約締結
2-1 当初契約(建設業法第19条第1項、第19条の3、第20条第1項)
【建設業法上違反となる行為事例】
①建設工事の発注に際し、書面による契約を行わなかった場合
②建設工事の発注に際し、建設業法第19条第1項の必要記載事項を満たさない契約書面を交付した場合
③建設工事の発注に際し、請負契約の締結前に建設業者に工事を着手させ、工事の施工途中又は工事終了後に契約書面を相互に交付した場合
上記①から③のケースは、いずれも建設業法第19条第1項に違反する。
(1)契約は工事の着工前に書面により行うことが必要
建設工事の請負契約の当事者である発注者と受注者は、対等な立場で契約すべきであり、建設業法第19条第1項により定められた下記(2)の①から⑮までの15の事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならないこととなっている。
契約書面の交付については、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として工事の着工前に行わなければならない。
(2)契約書面には建設業法で定める一定の事項を記載することが必要
建設業法第19条第1項において、建設工事の請負契約の当事者に、契約の締結に際して契約内容を書面に記載し相互に交付すべきことを求めているのは、請負契約の明確性及び正確性を担保し、紛争の発生を防止するためである。また、あらかじめ契約の内容を書面により明確にしておくことは、いわゆる請負契約の「片務性」の改善に資することともなり、極めて重要な意義がある。契約書面に記載しなければならない事項は、以下の①~⑮の事項である。特に、
「①工事内容」については、受注者の責任施工範囲、施工条件等が具体的に記載されている必要があるので、○○工事一式といった曖昧な記載は避けるべきである。
① 工事内容
② 請負代金の額
③ 工事着手の時期及び工事完成の時期
④ 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
⑤ 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
⑥ 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
⑦ 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
⑧ 価格等(物価統制令(昭和21年勅令第118号)第2条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
⑨ 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
⑩ 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
➃ 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
⑫ 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
⑬ 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
⑭ 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
⑮ 契約に関する紛争の解決方法
請負契約の締結に際しては、受注予定者が交付した見積書において、建設業法第20条第1項の規定により、工事の種別ごとの材料費、労務費その他の経費の内訳並びに工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数が明らかである場合には、その見積内容を考慮すること。
(3)電子契約によることも可能
書面契約に代えて、電子契約も認められる。その場合でも、(2)①~⑮の事項を記載しなければならない。
(4)適正な工期の設定
建設工事の請負契約に基づき、受注者が適正な施工を行うためには、施工内
容に応じた適正な工期設定が必要である。発注者と受注予定者は、建設工事の請負契約の締結に際し、建設工事において適正な工期を確保するための基準として作成された「工期に関する基準」(令和2年7月31日中央建設業審議会勧告。以下「工期基準」という。)を踏まえ、対等な立場に基づき、公平公正に最適な工期を設定する必要がある。(17ページ「3.著しく短い工期の禁止(建設業法第19条の5)」参照)
なお、受注者の責めに帰すべき事由により、工期内に工事を完成することができない場合における違約金の設定については、過大な額にならないよう設定することが必要である。
(5)短い工期にもかかわらず、通常の工期を前提とした請負代金の額で請負契約を 締結することは、不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれ
やむを得ず、通常の工期に比べて短い工期で契約する場合には、工事を施工するために「通常必要と認められる原価」は、短い工期で工事を完成させることを前提として算定されるべきである。(24ページ「6.指値発注」参照)発注者が、短い工期にもかかわらず、通常の工期を前提とした請負代金の額 で請負契約を締結させることにより、請負代金の額がその工事を施工するために「通常必要と認められる原価」を下回る場合には、建設業法第19条の3に
違反するおそれがある。(19ページ「4.不当に低い発注金額」参照)
(6)受注者に過度な義務や負担を課す片務的な内容による契約を行わないことが 必要
建設業法第18条においては、「建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならない」と規定している。建設工事の請負契約の締結に当たっては、同条の趣旨を踏まえ、公共工事については、中央建設業審議会が作成する公共工事標準請負契約約款(以下「公共約款」という。)に沿った契約が締結されている。民間工事においても、同審議会が作成する民間工事標準請負契約約款又はこれに沿った内容の約款※(以下「民間約款等」という。)に沿った内容の契約書による契約を締結することが望ましい。
※ 民間約款に沿った内容の約款として、民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款がある。
民間工事の中には、民間約款等を大幅に修正した契約が締結されており、その修正内容が受注者に過大な義務を課す等、次のような片務的な内容となって
いる場合がある。
① 発注者の責めに帰すべき事由により生じた損害についても、受注者に負担させること
② 工事の施工に伴い通常避けることができない騒音等の第三者への損害についても、受注者に負担させること
③ 例えば、民法(明治29年法律第89号)や住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)に定める期間を大幅に超えて、長期間の瑕疵担保期間を設けること
④ 過度なアフターサービス、例えば、経年劣化等に起因する不具合についてのアフターサービスなどを受注者に負担させること
また、契約外の事項である次のような業務を発注者が求めることも片務的な行為に該当すると考えられる。
⑤ 販売促進への協力など、工事請負契約の内容にない業務を受注者に無償で求めること
⑥ 設計図書と工事現場の状況が異なっていた場合に、設計変更の作業を受注者に無償で協力させること
このような、受注者に過度な義務や負担を課すなど、片務的な内容による契約や契約外の行為をさせることは、結果として建設業法第19条の3により禁止される不当に低い請負代金(19ページ「4.不当に低い発注金額」参照)による契約となる可能性があり、厳に慎むべきである。
(7)一定規模以上の解体工事等の場合は、契約書面に更に以下の事項の記載が必 要
建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(平成12年法律第104号)第13条においては、一定規模(*)以上の解体工事等に係る契約を行う場合に、以下の①から④までの4事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならないこととされており、そのような工事に係る契約書面は上記(2)の①から⑮までの15事項に加え、以下の4事項の記載が必要となる。
① 分別解体等の方法
② 解体工事に要する費用
③ 再資源化等をするための施設の名称及び所在地
④ 再資源化等に要する費用
*「一定規模」とは、次のそれぞれの規模をいう
ア 建築物に係る解体工事…当該建築物(当該解体工事に係る部分に限る。)の床面積の合計が80平方メートル
イ 建築物に係る新築又は増築の工事…当該建築物(増築の工事にあっては、当該工事に係る部分に限る。)の床面積の合計が500平方メートル
ウ 建築物に係る新築工事等(上記イを除く)…その請負代金の額が1億円エ 建築物以外のものに係る解体工事又は新築工事等…その請負代金の額が
500万円
注 解体工事又は新築工事等を二以上の契約に分割して請け負う場合においては、これを一の契約で請け負ったものとみなして、上記の「一定規模」に関する基準を適用する。ただし、正当な理由に基づいて契約を分割したときは、この限りでない。
2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約(建設業法第19条第2項、第19条の3)
【建設業法上違反となる行為事例】
①追加工事等が発生したが、発注者が書面による契約変更を行わなかった場合
②追加工事等について、工事に着手した後又は工事が終了した後に書面により契約変更を行った場合
上記①及び②のケースは、いずれも建設業法第19条第2項に違反するほか、必要な増額を行わなかった場合には同法第19条の3に違反するおそれがある。
(1)追加工事等の着工前に書面による契約変更を行うことが必要
建設業法第19条第2項では、請負契約の当事者は、追加工事等(工事の一時中止に伴う中止期間中の工事現場の維持、工事体制の縮小及び工事の再開準備を含む。)の発生により当初の請負契約書(以下「当初契約書」という。)に掲げる事項を変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならないこととなっている。これは、当初契約書において契約内容を明定しても、その後の変更契約が口約束で行われれば、当該変更契約の明確性及び正確性が担保されず、紛争を防止する観点からも望ましくないためであり、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として追加工事等の着工前に、契約変更を行うことが必要である。
発注者及び受注者が追加工事等に関する協議を円滑に行えるよう、建設工事の当初契約書において、建設業法第19条第1項第6号に掲げる事項(当事者の一方から設計変更等の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め)について、できる限り具体的に定めておくことが望ましい。
なお、追加・変更契約を行うべき事由及びその方法については、公共約款、民間約款等において規定しているほか、国土交通省等では、「工事請負契約における設計変更ガイドライン」や「工事一時中止に係るガイドライン」を策定している。
(2)追加工事等の内容が直ちに確定できない場合の対応
工事状況により追加工事等の全体数量等の内容がその着工前の時点では確定できない等の理由により、追加工事等の依頼に際して、その都度追加・変更契約を締結することが不合理な場合は、発注者は、以下の事項を記載した書面を追加工事等の着工前に受注者と取り交わすこととし、契約変更等の手続については、追加工事等の内容が確定した時点で遅滞なく行う必要がある。
① 受注者に追加工事等として施工を依頼する工事の具体的な作業内容
② 当該追加工事等が契約変更等の対象となること及び契約変更等を行う時期
③ 追加工事等に係る契約単価の額
(3)追加工事等に要する費用を受注者に一方的に負担させることは、不当に低い 請負代金の禁止に違反するおそれ
追加・変更契約を行う場合には、追加工事等が発生した状況に応じ、当該追加工事等に係る費用について、発注者と受注者との間で十分協議を行い決定することが必要である。発注者が、受注者に一方的に費用を負担させたことにより、請負代金の額が当初契約工事及び追加工事等を施工するために「通常必要と認められる原価」(19ページ「4.不当に低い発注金額」参照)に満たない金額となる場合には、受注者の当該発注者への取引依存度等の状況によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
2-3 工期変更に伴う変更契約(建設業法第19条第2項、第19条の3)
【建設業法上違反となる行為事例】
受注者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、当初契約で定めた工期を短縮し、又は延長せざるを得なくなり、また、これに伴って工事費用が増加したが、発注者が受注者からの協議に応じず、書面による契約変更を行わなかった場合
上記のケースは、建設業法第19条第2項に違反するほか、必要な増額を行わなかった場合には同法第19条の3に違反するおそれがある。
工期は、建設業法第19条第1項第3号により、建設工事の請負契約において定めなければならない項目となっている。建設工事の請負契約の当事者は、当初契約の締結に当たって適正な工期を設定すべきであり、また、受注者は工程管理を適正に行うなど、できる限り工期に変更が生じないよう努めるべきである。しかし、工事現場の状況により、やむを得ず工期を変更することが必要になる場合も多い。こうした場合において、工期の変更に係る請負契約の締結に関しても、書面によることが必要である。
なお、工期の変更の原因となった工事の一時中止の期間中における現場維持、体制縮小又は再開準備に要する費用については、追加工事が発生した場合と同様に書面で契約変更等を行うことが必要である。(13ページ「2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約」参照)
(1)工期変更についても書面による契約変更が必要
建設工事の請負契約において、工期に係る変更をする場合には、建設業法第
19条第2項により、契約当事者である発注者及び受注者は、原則として工期変更に係る工事の着工前にその変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
また、発注者及び受注者が工期変更に関する協議を円滑に行えるよう、当初契約書において、建設業法第19条第1項第6号に掲げる事項(当事者の一方から工事着手の延期等の申し出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め)について、できる限り具体的に定めておくことが望ましい。
なお、工期に係る変更の方法については、公共約款、民間約款等において規定しているほか、国土交通省等では、「工事請負契約における設計変更ガイドライン」や「工事一時中止に係るガイドライン」を策定している。
(2)工事に着手した後に工期が変更になった場合、変更後の工期が直ちに確定で きない場合の対応
工事に着手した後に工期が変更になった場合の契約変更等の手続については、変更後の工期が確定した時点で遅滞なく行うものとする。工期を変更する必要があると認めるに至ったが、変更後の工期の確定が直ちにできない場合には、発注者は、工期の変更が契約変更等の対象となること及び契約変更等を行う時期を記載した書面を、工期を変更する必要があると認めた時点で受注者と取り交わすこととし、契約変更等の手続については、変更後の工期が確定した時点で遅滞なく行うものとする。
(3)工期の変更に伴う費用を受注者に一方的に負担させることは、不当に低い請 負代金の禁止に違反するおそれ
工期が変更になり、これに起因して工事の費用が増加した場合には、発注者と受注者とが工期変更の原因及び増加費用の負担について、十分協議を行うことが必要であり、発注者の一方的な都合により受注者の申出に応じず、必要な変更契約を締結しない場合には、建設業法第19条第2項に違反する。(13ページ「2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約」参照)
また、発注者の責めに帰すべき事由により工期が変更になった場合に、発注者が、工期変更に起因する費用の増加分を受注者に一方的に負担させたことにより、請負代金の額が工事を施工するために「通常必要と認められる原価」(1
9ページ「4.不当に低い発注金額」参照)に満たない金額となるときには、受注者の当該発注者への取引依存度等の状況によっては、建設業法第19条の
3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
(4)追加工事等の発生に起因する工期変更の場合の対応
工事現場においては、工期の変更のみが行われる場合のほか、追加工事等の発生に起因して工期の変更が行われる場合が多いが、追加工事等の発生が伴う場合には、(1)から(3)のほか、追加工事等に伴う追加・変更契約に関する記述が該当する(13ページ「2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約」参照)。
3.著しく短い工期の禁止(建設業法第19条の5)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①発注者が、早期の引渡しを受けるため、受注予定者に対して、一方的に当該建設工事を施工するために通常よりもかなり短い期間を示し、当該期間を工期とする請負契約を締結した場合
②受注予定者が、発注者から提示された工事内容を適切に施工するため、通常必要と認められる期間を工期として提示したにも関わらず、それよりもかなり短い期間を工期とする請負契約を締結した場合
③受注者の責めに帰さない理由により、当初の請負契約において定めた工期を変更する際、当該変更後の工事を施工するために通常よりもかなり短い期間を工期とす
る請負契約を締結した場合
上記①から③のケースは、建設業法第19条の5に違反するおそれがある。
(1)建設業における働き方改革のためには、適正な工期の確保が必要
建設業就業者の年間の実労働時間は、全産業の平均と比べて相当程度長い状況となっており、建設業就業者の長時間労働の是正が急務となっている。また、長時間労働を前提とした短い工期での工事は、事故の発生や手抜き工事にもつながるおそれがあるため、建設工事の請負契約に際して、適正な工期設定を行う必要があり、通常必要と認められる期間と比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結することを禁止するものである。
(2)「通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間」とは、「工期に関す る基準」等に照らして不適正に短く設定された期間
建設業法第19条の5の「通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間」とは、単に定量的に短い期間を指すのではなく、「工期基準」等に照らして不適正に短く設定された期間をいう。したがって、建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間の工期(以下「著しく短い工期」という。)であるかの具体的な判断については、請負契約毎に、「工期基準」等を踏まえ、見積依頼の際に発注者が受注予定者に示した条件、受注予定者が発注者に提出した見積り等の内容、締結された請負契約の内容、当該工期を前提として請負契約を締結した事情、受注者が「著しく短い工期」と認識する考え方、発注者の工期に関する考え方、過去の同種類似工事の実績、賃金台帳等をもとに、
①契約締結された工期が、「工期基準」で示された内容を踏まえていないために短くなり、それによって、受注者が違法な長時間労働などの不適正な状態で
当該建設工事を施工することとなっていないか
②契約締結された工期が、過去の同種類似工事の工期と比較して短い場合、工期が短くなることによって、受注者が違法な長時間労働などの不適正な状態で当該建設工事を施工することとなっていないか
③契約締結された工期が、受注者が見積書で示した工期と比較して短い場合、工期が短くなることによって、受注者が違法な長時間労働などの不適正な状態で当該建設工事を施工することとなっていないか
等を総合的に勘案したうえで、個別に判断されることとなる。
ただし、第196回国会(常会)で成立した「働き方改革関連法」による改正労働基準法に基づき、令和6年4月1日から、建設業についても、災害時の復旧・復興事業を除き、時間外労働の罰則付き上限規制の一般則が適用されることを踏まえ、当該上限規制を上回る違法な時間外労働時間を前提として設定される工期は、例え、発注者と受注者との間で合意している場合であっても、「著しく短い工期」であると判断される。
また、建設業法第19条の6において、国土交通大臣又は都道府県知事は、発注者が同法第19条の5の規定に違反している事実があり、特に必要があると認めるときは、当該発注者に対して必要な勧告をすることができ、発注者がその勧告に従わないときは、その旨を公表することができると規定している。
(3)建設業法第19条の5は契約変更にも適用
建設業法第19条の5により禁止される行為は、当初契約の締結に際して、著しく短い工期を設定することに限られず、契約締結後、受注者の責に帰さない理由により、当初の契約どおり工事が進行しなかったり、工事内容に変更が生じるなどにより、工期を変更する契約を締結する場合、変更後の工事を施工するために著しく短い工期を設定することも該当する。
なお、工期の変更時に紛争が生じやすいため、紛争の未然防止の観点から、当初契約の締結の際、公共工事については公共約款第21条の規定(発注者は、工期の延長又は短縮を行うときは、この工事に従事する者の労働時間その他の労働条件が適正に確保されるよう、やむを得ない事由により工事等の実施が困難であると見込まれる日数等を考慮しなければならない。)、民間工事については民間工事標準請負契約約款(甲)第29条の規定(発注者は、工期の変更をするときは、変更後の工期を建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間としてはならない。)を明記しておくことが重要である。
4.不当に低い発注金額(建設業法第19条の3)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①発注者が、自らの予算額のみを基準として、受注者との協議を行うことなく、受注者による見積額を大幅に下回る額で建設工事の請負契約を締結した場合
②発注者が、契約を締結しない場合には今後の取引において不利な取扱いをする可能性がある旨を示唆して、受注者との従来の取引価格を大幅に下回る額で、建設工事の請負契約を締結した場合
③発注者が、請負代金の増額に応じることなく、受注者に対し追加工事を施工させた場合
④発注者の責めに帰すべき事由により工期が変更になり、工事費用が増加したにもかかわらず、発注者が請負代金の増額に応じない場合
⑤発注者が、契約後に、取り決めた代金を一方的に減額した場合
上記のケースは、いずれも建設業法第19条の3に違反するおそれがある。
公共工事においては、発注者が直接工事費、共通仮設費、現場管理費及び一般管理費等により積算した予定価格の範囲内で応札した者の中から受注者を決めるのが一般的であり、①及び②のようなケースは生じにくいものと考える。しかし、発注者は、積算した金額(設計金額)からいわゆる歩切りをして予定価格を設定することや、歩切りした予定価格による入札手続の入札辞退者にペナルティを課すなどにより、歩切りをした予定価格の範囲内での入札を実質的に強いるようなことは、建設業法第19条の3に違反するおそれがあり、厳に慎む必要がある。
また、変更契約は、入札手続を経ることなく、相対で締結されることから、発注者が請負代金の増額に応じないなどのケースが生じるおそれがあり、同条違反とならないよう留意が必要である。
(1)「不当に低い請負代金の禁止」の定義
建設業法第19条の3の「不当に低い請負代金の禁止」とは、発注者が、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を受注者と締結することを禁止するものである。
発注者が、取引上の地位を不当に利用して、不当に低い請負代金による契約を強いた場合には、受注者が工事の施工方法、工程等について技術的に無理な手段、期間等の採用を強いられることとなり、手抜き工事、不良工事や公衆災害、労働災害等の発生につながる可能性もある。
(2)「自己の取引上の地位の不当利用」とは、取引上優越的な地位にある発注者 が、受注者を経済的に不当に圧迫するような取引等を強いること
建設業法第19条の3の「自己の取引上の地位を不当に利用して」とは、取引上優越的な地位にある発注者が、受注者の選定権等を背景に、受注者を経済的に不当に圧迫するような取引等を強いることをいう。
ア 取引上の優越的な地位
取引上優越的な地位にある場合とは、受注者にとって発注者との取引の継続が困難になることが受注者の事業経営上大きな支障を来すため、発注者が受注者にとって著しく不利益な要請を行っても、受注者がこれを受け入れざるを得ないような場合をいう。取引上優越的な地位に当たるか否かについては、受注者の発注者への取引依存度等の状況により判断されることとなるため、例えば受注者にとって大口取引先に当たる発注者については、取引上優越的な地位に該当する蓋然性が高いと考えられる。
イ 地位の不当利用
発注者が、受注者の選定権等を背景に、受注者を経済的に不当に圧迫するような取引等を強いたか否かについては、請負代金の額の決定に当たり受注者と十分な協議が行われたかどうかといった対価の決定方法等により判断されるものであり、例えば受注者と十分な協議を行うことなく発注者が価格を一方的に決定し、当該価格による取引を強要する指値発注(24ページ「6.指値発注」参照)については、発注者による地位の不当利用に当たるものと考えられる。
(3)「通常必要と認められる原価」とは、工事を施工するために一般的に必要と 認められる価格
建設業法第19条の3の「通常必要と認められる原価」とは、当該工事の施工地域において当該工事を施工するために一般的に必要と認められる価格(直接工事費、共通仮設費及び現場管理費よりなる間接工事費、一般管理費(利潤相当額は含まない。)の合計額)をいい、具体的には、受注者の実行予算や下請先、資材業者等との取引状況、さらには当該施工区域における同種工事の請負代金額の実例等により判断することとなる。
(4)建設業法第19条の3は変更契約にも適用
建設業法第19条の3により禁止される行為は、当初の契約の締結に際して、不当に低い請負代金を強いることに限られず、契約締結後、発注者が原価の上昇を伴うような工事内容や工期の変更をしたのに、それに見合った請負代金の増額を行わないことや、一方的に請負代金を減額したことにより原価を下回ることも含まれる。
追加工事等を受注者の負担により一方的に施工させたことにより、請負代金の額が当初契約工事及び追加工事等を施工するために「通常必要と認められる原価」に満たない金額とならないよう、適正な追加・変更契約を行うことが必要である。(13ページ「2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約」参照)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
原材料費、労務費、エネルギーコスト等(以下「原材料費等」という。)の高騰や資材不足など発注者及び受注者双方の責めに帰さない理由により、施工に必要な費用の上昇、納期の遅延、工事全体の一時中止、前工程の遅れなどが発生しているにもかかわらず、追加費用の負担や工期について発注者が受注者からの協議に応じず、必要な変更契約を行わなかった場合
5.原材料費等の高騰・納期遅延等の状況における適正な請負代金の設定及び適正な工期の確保(建設業法第19条第2項、第19条の3、第19条の5)
上記のケースは、建設業法第19条第2項に違反し、第19条の3又は第19条の5に違反するおそれがある。
(1)原材料費等の高騰や納期遅延が発生している状況においては、取引価 格を反映した適正な請負代金の設定や納期の実態を踏まえた適正な工期の確保のため、請負代金及び工期の変更に関する規定を適切に設定・運用することが必要
原材料費等の取引価格を反映した適正な請負代金の設定や納期の実態を踏まえた適正な工期の確保のため、請負契約の締結に当たっては、公共工事標準請負契約約款第26条(賃金又は物価の変動に基づく請負代金額の変更)(いわゆるスライド条項)及び第22条(受注者の請求による工期の延長)又は民間建設工事標準請負契約約款(甲)第31条(請負代金額の変更)及び第30条(工事又は工期の変更等)
(電力・ガス、鉄道等の民間企業の工事の請負契約においては公共工事標準請負契約約款を使用)を適切に設定・運用するとともに、契約締結後においても受注者から協議の申出があった場合には発注者が適切に協議に応じること等により、状況に応じた必要な契約変更を実施するなど、適切な対応を図る必要がある。
なお、発注者・受注者間におけるこれらの対応は、元請負人・下請負人間の適正な 請負代金の設定及び適正な工期の確保に当たっても重要であること、下請中小企業 振興法(昭和45年法律第145号)に基づく振興基準(令和4年7月29日、以 下「振興基準」という。)において、建設など見積り及び発注から納品までの期間 が長期にわたる取引においては、期中に原材料費等のコストが上昇した場合であっ て、下請事業者からの申出があったときは、親事業者は、期中の価格変更にできる 限り柔軟に応じるものとするとされていることについても留意しなければならない。
(2)発注者が受注者との協議や変更契約に応じない場合は「不当に低い請 負代金の禁止」や「著しく短い工期の禁止」に違反するおそれ
建設業法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)により禁止される行為は、当初契約の締結に際して不当に低い請負代金を強制することに限られず、契約締結後に原材料費等が高騰したにもかかわらず、それに見合った請負代金の増額を行わないことも含まれる。
このため、原材料費等が高騰している状況において、発注者が、自己の取引上の地位を不当に利用して、受注者側からの協議に応じず、必要な変更契約を行わなかった結果、請負代金の額がその建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額となっている場合には、同条に違反するおそれがある。
また、建設業法第19条の5(著しく短い工期の禁止)により禁止される行為は、当初契約の締結に際して著しく短い工期を設定することに限られず、契約締結後、原材料等の納期の遅延など受注者の責めに帰さない理由により、当初の契約どおり工事が進行しない場合等において必要な工期の変更を行わないことも含まれる。
このため、資材不足等により原材料費等の納期遅延が発生している状況において、その工期が、注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間となっている場合には、同条に違反するおそれがある。
なお、建設業法第19条の6において、国土交通大臣又は都道府県知事は、発注者が同法第19条の3又は第19条の5の規定に違反している事実があり、特に必要があると認めるときは、当該発注者に対して必要な勧告をすることができ、発注者がその勧告に従わないときは、その旨を公表することができると規定している。
適正な請負代金の設定については、10ページ「2.書面による契約締結 2-1当初契約(5)、(6)」、14ページ「2-2追加工事等に伴う追加・変更契約(3)」を参照。
適正な工期の確保については、17ページ「3.著しく短い工期の禁止」、15ページ「2.書面による契約締結 2-3工期変更に伴う変更契約(1)、(2)、(3)」を参照。
不当に低い請負代金については、19ページ「4.不当に低い請負代金」を参照。
6.指値発注(建設業法第19条第1項、第19条の3、第20条第4項)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①発注者が、自らの予算額のみを基準として、受注者と協議を行うことなく、一方的に請負代金の額を決定し、その額で請負契約を締結した場合
②発注者が、合理的根拠がないにもかかわらず、受注者の見積額を著しく下回る額で請負代金の額を一方的に決定し、その額で請負契約を締結した場合
③発注者が複数の建設業者から提出された見積金額のうち最も低い額を一方的に請負代金の額として決定し、当該見積の提出者以外の者とその額で請負契約を締結した場合
【建設業法上違反となる行為事例】
④発注者と受注者の間で請負代金の額に関する合意が得られていない段階で、受注者に工事に着手させ、工事の施工途中又は工事終了後に発注者が受注者との協議に応じることなく請負代金の額を一方的に決定し、その額で請負契約を締結した場合
⑤発注者が、受注者が見積りを行うための期間を設けることなく、自らの予算額を受注者に提示し、請負契約締結の判断をその場で行わせ、その額で請負契約を締結した場合
上記①から⑤のケースは、いずれも建設業法第19条の3に違反するおそれがある。また、④のケースは同法第19条第1項に違反し、⑤のケースは同法第20条第4項に違反する。
指値発注とは、発注者が受注者との請負契約を交わす際、受注者と十分な協議をせず、又は受注者との協議に応じることなく、発注者が一方的に決めた請負代金の額を受注者に提示(指値)し、その額で受注者に契約を締結させることをいう。指値発注は、建設業法第18条の建設工事の請負契約の原則(各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結する。)を没却するものである。
公共工事においては、入札公告などから入札期日の前日まで一定の期間を設け、また、発注者が積算した予定価格の範囲内で応札した者の中から受注者を決めるのが一般的であり、当初契約時においては、①から⑤までのようなケースは生じにくいものと考える。しかし、発注者は、歩切りをして予定価格を設定することや、歩切りした予定価格による入札手続の入札辞退者にペナルティを課すなどにより、歩切りをした予定価格の範囲内での入札を実質的に強いるようなことは、厳に慎む必要がある。また、変更契約は、入札手続を経ることなく、相対で締結されることから、発注者が請負代金の増額に応じないなどのケースが生じるおそれがあり、建設業法第19条の3違反とならないよう留意が必要である。
(1)指値発注は建設業法に違反するおそれ
指値発注は、発注者としての取引上の地位の不当利用に当たるものと考えられ、請負代金の額がその工事を施工するために「通常必要と認められる原価」
(19ページ「4. 不当に低い発注金額」参照)に満たない金額となる場合には、受注者の当該発注者に対する取引依存度等の状況によっては、建設業法第
19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
発注者が受注者に対して示した工期が、通常の工期に比べて短い工期である場合には、工事を施工するために「通常必要と認められる原価」は、発注者が示した短い工期で工事を完成させることを前提として算定されるべきである。発注者が通常の工期を前提とした請負代金の額で指値をした上で短い工期で 工事を完成させることにより、請負代金の額がその工事を施工するために「通常必要と認められる原価」(19ページ「4.不当に低い発注金額」参照)を
下回る場合には、建設業法第19条の3に違反するおそれがある。
また、発注者が受注者に対し、指値した額で請負契約を締結するか否かを判断する期間を与えることなく回答を求める行為については、建設業法第20条第4項の見積りを行うための一定期間の確保に違反する(5ページ「1.見積条件の提示等」参照)。
更に、発注者と受注者との間において請負代金の額の合意が得られず、このことにより契約書面の取り交わしが行われていない段階で、発注者が受注者に対し工事の施工を強要し、その後に請負代金の額を発注者の指値により一方的に決定する行為は、建設業法第19条第1項に違反する(8ページ「2.書面による契約締結」参照)。
(2)請負代金決定に当たっては、十分に協議を行うことが必要
建設工事の請負契約の締結に当たり、発注者が契約希望額を提示した場合には、自らが提示した額の積算根拠を明らかにして受注者と十分に協議を行うなど、一方的な指値発注により請負契約を締結することがないよう留意すべきである。
7.不当な使用資材等の購入強制(建設業法第19条の4)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①請負契約の締結後に、発注者が受注者に対して、工事に使用する資材又は機械器具等を指定し、あるいはその購入先を指定した結果、受注者が予定していた購入価格より高い価格で資材等を購入することとなった場合
②請負契約の締結後、当該契約に基づかないで発注者が指定した資材等を購入させたことにより、受注者が既に購入していた資材等を返却せざるを得なくなり金銭面及び信用面における損害を受け、その結果、従来から継続的取引関係にあった販売店との取引関係が悪化した場合
上記①及び②のケースは、いずれも建設業法第19条の4に違反するおそれがある。
(1)「不当な使用資材等の購入強制」の定義
建設業法第19条の4で禁止される「不当な使用資材等の購入強制」とは、請負契約の締結後に、発注者が、自己の取引上の地位を不当に利用して、受注者に使用資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを受注者に購入させて、その利益を害することである。
(2)建設業法第19条の4は、請負契約の締結後の行為が規制の対象
「不当な使用資材等の購入強制」が禁止されるのは、請負契約の締結後における行為に限られる。これは、発注者の希望するものを作るのが建設工事の請負契約であり、請負契約の締結に当たって、発注者が、自己の希望する資材等やその購入先を指定することは、当然想定し得る。発注者が請負契約締結前にこれを行ったとしても、受注者はそれに従って適正な見積りを行い、適正な請負代金で契約を締結することができるため、建設業法第19条の4の規定の対象とはならない。
(3)「自己の取引上の地位の不当利用」とは、取引上優越的な地位にある発注者 が、受注者を経済的に不当に圧迫するような取引等を強いること
「自己の取引上の地位を不当に利用して」とは、取引上優越的な地位にある発注者が、受注者の選定権等を背景に、受注者を経済的に不当に圧迫するような取引等を強いることをいう(19ページ「4.不当に低い発注金額」参照)。
(4)「資材等又はこれらの購入先の指定」とは、商品名又は販売会社を指定する こと
「使用資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを購入させる」とは、発注者が工事の使用資材等について具体的に○○会社○○型というように会社名、商品名等を指定する場合又は購入先となる販売会社等を指定する場合をいう。
(5)受注者の「利益を害する」とは、金銭面及び信用面において損害を与えるこ と
受注者の「利益を害する」とは、資材等を指定して購入させた結果、受注者が予定していた資材等の購入価格より高い価格で購入せざるを得なかった場合、あるいは、既に購入していた資材等を返却せざるを得なくなり、金銭面及び信用面における損害を受け、その結果、従来から継続的取引関係にあった販売店との取引関係が極度に悪化した場合等をいう。
したがって、発注者が指定した資材等の価格の方が受注者が予定していた購入価格より安く、かつ、発注者の指定により資材の返却等の問題が生じない場合には、受注者の利益は害されたことにはならない。
(6)資材等の指定を行う場合には、見積条件として提示することが必要
使用資材等について購入先等の指定を行う場合には、発注者は、あらかじめ見積条件としてそれらの項目を提示する必要がある。
8.やり直し工事(建設業法第19条第2項、第19条の3)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
発注者が、受注者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、やり直し工事を行わせ、必要な変更契約を締結せずにその費用を一方的に受注者に負担させた場合
上記のケースは、建設業法第19条第2項、第19条の3に違反するおそれがある。
(1)やり直し工事を受注者に依頼する場合は、発注者と受注者が帰責事由や費用 負担について十分協議することが必要
発注者と受注者は、工事の施工に関し十分な協議を行い、工事のやり直し(手戻り)が発生しないよう努めることはもちろんであるが、発注者の指示や要求により、やむを得ず、工事の施工途中又は施工後において、やり直し工事が発生する場合がある。やり直し工事が発生した場合には、発注者が受注者に対して一方的に費用を負担させることなく、発注者と受注者とが帰責事由や費用負担について十分協議することが必要である。
(2)受注者の責めに帰さないやり直し工事を依頼する場合は、契約変更が必要
受注者の責めに帰すべき事由がないのに、工事の施工途中又は施工後において、発注者が受注者に対して工事のやり直しを依頼する場合にあっては、発注者は速やかに受注者と十分に協議した上で契約変更を行う必要があり、発注者がこのような契約変更を行わず、当該やり直し工事を受注者に施工させた場合には、建設業法第19条第2項に違反する(13ページ「2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約」参照)。
(3)やり直し工事の費用を受注者に一方的に負担させることは、不当に低い請負 代金の禁止に違反するおそれ
発注者の責めに帰すべき事由によりやり直し工事が必要になった場合に、発注者がやり直し工事に係る費用を一方的に受注者に負担させることによって、請負代金の額が当初契約工事及びやり直し工事を施工するために「通常必要と認められる原価」(19ページ「4.不当に低い発注金額」参照)に満たない金額となるときには、発注者と受注者との間の取引依存度等の状況によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
(4)受注者の責めに帰すべき事由がある場合とは、施工内容が契約書面に明示さ
れた内容と異なる場合や施工に瑕疵等がある場合
受注者の責めに帰すべき事由があるため、受注者に全ての費用を負担させ、工事のやり直しを求めることができるケースとしては、施工が契約書面に明示された内容と異なる場合や施工に瑕疵等がある場合などが考えられる。
次のような場合には、施工が契約書面と異なり、又は瑕疵等があるとは認められず、発注者の責めに帰すべき事由がある場合に該当する。
ア 受注者から施工内容等を明確にするよう求めがあったにもかかわらず、発注者が正当な理由なく明確にせず、受注者に継続して作業を行わせたことにより、施工が発注者の意図と異なることとなった場合
イ 発注者の指示、あるいは了承した施工内容に基づき施工した場合において、工事の内容が契約内容と異なる場合
なお、天災等により工事目的物が滅失し、工事の手戻り等が生じる場合があるが、発注者及び受注者の双方の責めに帰すことができない不可抗力による損害の負担者については、民間約款等において、協議により重大と認めるものは発注者がこれを負担すると規定されている。
9.支払(建設業法第24条の3第2項、第24条の6)
【望ましくない行為事例】
①請負契約に基づく工事目的物が完成し、引渡し終了後、発注者が受注者に対し、速やかに請負代金を支払わない場合
②発注者が、請負代金支払の大部分を手形払いで行った場合
③発注者が、手形期間の長い手形により請負代金の支払を行った場合
上記①から③のケースは、いずれも発注者が受注者による建設業法第24条の6違反の行為を誘発するおそれがあり、望ましくない。
(1)請負代金の支払時の留意事項
請負代金については、発注者と受注者の合意により交わされた請負契約に基づいて適正に支払われなければならない。請負代金の支払方法については、原則として当事者間の取り決めにより自由に定めることができるが、本来は工事目的物の引渡しと請負代金の支払は同時履行の関係に立つものであり、民間約款等においても、その旨が規定されている。また、発注者から受注者への支払は、元請下請間の支払に大きな影響を及ぼすことから、少なくとも引渡し終了後できるだけ速やかに適正な支払を行うように定めることが求められる。
更に、実際には、特に長期工事の場合等、工事完成まで支払がなされないと、受注者及び下請負人の工事に必要な資金が不足するおそれがあるため、振興基準において、建設など見積り及び発注から納品までの期間が長期にわたる取引においては、親事業者は、前払い比率及び期中払い比率をできる限り高めるよう努めることとされていることも踏まえ、発注者からの支払いにおいても、民間工事標準請負契約約款の規定に沿って前払金制度あるいは部分払制度(いわゆる出来高払制度)を活用するなど、迅速かつ適正な支払を行うことが望ましい。
(2)目的物の引渡しを受けた場合には、できるだけ速やかに支払を行うこと
発注者は、請負契約に基づく目的物の引渡しを受けた場合、受注者に対し、請負契約において取り決められた請負代金の額を、できるだけ速やかに支払うことが望ましい。
建設業法第24条の6では、受注者が特定建設業者であり下請負人が資本金
4,000万円未満の一般建設業者である場合、下請契約における下請代金の支払期日は、下請負人が引渡しの申出を行った日から起算して50日以内と規
定している。これは、発注者から受注者に工事代金の支払があるか否かにかかわらず適用される規定であるが、発注者の支払期日によっては建設業法に定めた元請下請間の支払に実質的な影響を与えかねないことから、発注者は、これらの元請下請間の下請代金の支払に関する規定も考慮し、できるだけ速やかに支払を行うことが望ましい。
国が発注する公共工事においては、政府契約の支払遅延防止等に関する法律
(昭和24年法律第256号)に、検査、支払の時期が規定されており、同法に従って支払が行われている。国以外の公共発注者においても、それぞれが定めた検査や支払についての規則に従って行われているが、受注者からの工事完了の通知の速やかな受理や検査の適切な実施を含め、迅速な支払の確保に努めるべきである。
(3)請負代金を手形で支払う場合の留意事項
建設業法第24条の3第2項では、元請負人は、下請代金のうち労務費に相当する部分については、現金で支払うよう適切な配慮をしなければならないとされている。
また、建設業法第24条の6第3項では、受注者が特定建設業者であり下請負人が資本金4,000万円未満の一般建設業者である場合、下請代金の支払に当たって一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形(例えば、手形期間が120日超の長期手形)を交付してはならないとされている。
発注者から受注者への支払方法は、元請下請間の支払に実質的な影響を与えかねないことから、発注者は、上記の趣旨を踏まえ、受注者に対する請負代金の支払は、できる限り現金によることが望ましく、手形で支払う場合にも、同条の趣旨を踏まえ、長期手形を交付することがないようにすることが望ましい。
また、下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の趣旨に鑑み、下請代金の支払に係る考え方を改めて整理した、「下請代金の支払手段について」
(令和3年3月31日20210322中庁第2号・公取企第25号。以下「手形通達」という。)において、次のとおり下請取引の適正化に努めるよう要請されているため、「建設業法令遵守ガイドライン」(令和4年8月)において、元請負人はこの点についても留意しなければならないとされていることについても併せて留意することが望ましい。
<参考>
〇下請代金の支払手段について(令和3年3月31日20210322中庁第
2号・公取企第25号)
(略)
記
親事業者による下請代金の支払については、以下によるものとする。
1 下請代金の支払は、できる限り現金によるものとすること。
2 手形等により下請代金を支払う場合には、当該手形等の現金化にかかる割引料等のコストについて、下請事業者の負担とすることのないよう、これを勘案した下請代金の額を親事業者と下請事業者で十分協議して決定すること。当該協議を行う際、親事業者と下請事業者の双方が、手形等の現金化にかかる割引料等のコストについて具体的に検討できるように、親事業者は、支払期日に現金により支払う場合の下請代金の額並びに支払期日に手形等により支払う場合の下請代金の額及び当該手形等の現金化にかかる割引料等のコストを示すこと。※
3 下請代金の支払に係る手形等のサイトについては、60日以内とすること。
4 前記1から3までの要請内容については、新型コロナウイルス感染症による現下の経済状況を踏まえつつ、おおむね3年以内を目途として、可能な限り速やかに実施すること。
※ 割引料等のコストについては、実際に下請事業者が近時に割引をした場合の割引料等の実績等を聞くなどにより把握する方法が考えられる。
併せて、手形通達によって要請されている取組に加えて、振興基準において、約束手形をできる限り利用しないよう努めること及びサプライチェーン全体で約束手形の利用の廃止等に向けた取組を進めることとされていること、「手形等のサイトの短縮について」(令和4年2月16日20211206中庁第1号・公取企第131号)において、公正取引委員会及び中小企業庁が、おおむね令和6年までに、60日を超えるサイトの約束手形、一括決済方式及び電子記録債権を、下請代金支払遅延等防止法上「割引困難な手形」等に該当するおそれがあるものとして指導の対象とすることを前提として、同法の運用の見直しの検討を行うこととしていること、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画フォローアップ(令和4年6月7日閣議決定)」において令和8年の約束手形の利用の廃止に向けた取組を促進する旨閣議決定されていること、金融業界に対し、令和8年に手形交換所における約束手形の取扱いを廃止することの可否について検討するよう要請されていること等を踏まえ、建設業界においても、発注者も含めて関係者全体で、約束手形の利用の廃止等に向けて、
前金払等の充実、振込払い及び電子記録債権への移行、支払サイトの短縮等の取組を進めていくよう努めることが重要であることについても留意しなければならない。
10.関係法令
10-1 独占禁止法との関係について
不当に低い発注金額や不当な使用資材等の購入強制については、建設業法第
19条の3及び第19条の4でこれを禁止しているが、これらの規定に違反する上記行為は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)第19条で禁止している不公正な取引方法の一類型である優越的な地位の濫用にも該当するおそれがある。優越的地位の濫用に関して、公正取引委員会は、平成22年11月30日、「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(以下「考え方」という。)を示している。
この「考え方」のうち、本ガイドラインと関係のある主な部分は以下のとおりである。
① 「1.見積条件の提示等」、「2-1 当初契約」、「2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約」、「2-3 工期変更に伴う変更契約」及び「4.不当に低い発注金額」に関しては、「考え方」第4の2(3)に掲げる「その他経済上の利益の提供の要請」、第4の3(4)に掲げる「減額」及び第
4の3(5)に掲げる「その他取引の相手方に不利益となる取引条件の設定等」
② 「6.指値発注」に関しては、「考え方」第4の3(5)アに掲げる「取引の対価の一方的決定」
③ 「7.不当な使用資材等の購入強制」に関しては、「考え方」第4の1に掲げる「購入・利用強制」
④ 「8.やり直し工事」に関しては、「考え方」第4の3(5)イに掲げる「やり直しの要請」
⑤ 「9.支払」に関しては、「考え方」第4の3(3)に掲げる「支払遅延」なお、発注者が独占禁止法第2条第1項に規定する事業者でない場合(公的
発注機関の場合)には、建設業法第19条の6第1項において、国土交通大臣
又は都道府県知事は、当該発注者が同法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)又は第19条の4(不当な使用資材等の購入強制の禁止)の規定に違反している事実があり、特に必要があると認めるときは、当該発注者に対して必要な勧告をすることができると規定している。
10-2 社会保険・労働保険(法定福利費)等について
社会保険や労働保険は労働者が安心して働くために必要な制度であり、強制加入の方式がとられている。
具体的には、健康保険と厚生年金保険については、法人の場合にはすべての事業所について、個人経営の場合でも常時5人以上の従業員を使用する限り、必ず加入手続を行わなければならず、また、雇用保険については、建設事業主の場合、個人経営か法人かにかかわらず、労働者を1人でも雇用する限り、必ず加入手続をとらなければならない。
このため、受注者には、これらの保険料に係る費用負担が不可避となっている。これらの保険料にかかる受注者の費用は、労災保険料とともに受注者が義務的
に負担しなければならない法定福利費であり、建設業法第19条の3に規定する
「通常必要と認められる原価」に含まれるべきものである。
このため、発注者及び受注者は見積時から法定福利費を必要経費として適正に考慮すべきであり、法定福利費相当額を含まない金額で建設工事の請負契約を締結した場合には、発注者がこれらの保険への加入義務を定めた法令の違反を誘発するおそれがあるとともに、発注者が建設業法第19条の3に違反するおそれがある。
また、受注者が、中小企業退職金共済法の規定に基づく建設業退職金共済制度の加入事業者である場合、公共工事、民間工事の別を問わず、その雇用する者すべてに対して賃金を支払う都度、納付しなければならない建退共掛金についても、工事の施工に直接従事する建設労働者に係る必要経費であり、建設業法第1
9条の3に規定する「通常必要と認められる原価」に含まれるものであるため、上記の法定福利費と同様に、適正に確保することが必要である。
10-3 建設工事で発生する建設副産物について
建設現場では、土砂、コンクリート塊等の再生資源や産業廃棄物(以下これらを
「建設副産物」と総称する。)が発生する。建設現場で発生した廃棄物混じりの土砂等は、建設現場等で土砂等と廃棄物に分別することが必要であり、分別された廃棄物については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)に基づき適正な処理を行うことが必要である。
廃棄物処理法では、事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならないと規定されており、建設工事では原則として、発注者から直接建設工事を請け負った受注者が適切な処理を行う排出事業者としての義務を遵守する必要がある。
また、廃棄物が混じっていない土砂等(廃棄物と分別後のものを含む。)は、資源の有効な利用の促進に関する法律(平成3年法律第48号)に基づき、発注者から直接建設工事を請け負った受注者のもと、他工事での利用など、再生資源としての利用を促進する必要がある。
したがって、建設現場から発生する建設副産物を他工事や再資源化施設、処分場等に運搬するための経費や、その処理に要する経費は、建設業者が義務的に負担しなければならない費用であり、建設業法第19条の3に規定する「通常必要と認められる原価」に含まれるものであることに留意が必要である。
受注者は、下請負人から提示された見積書の内容も踏まえ、建設副産物の適正処理に要する経費を適正に見積り、発注者に交付する見積書に明示すべきである。
発注者は、受注者から交付された建設副産物の適正処理に要する経費が明示された見積書を尊重しつつ、建設業法第18条を踏まえ、対等な立場で受注者との契約交渉をしなければならない。
なお、受注者の見積書に建設副産物の処理に要する経費が明示されているにもかかわらず、発注者がこれを尊重せず、当該経費相当額を一方的に削減したり、当該経費相当額を含めない金額で建設工事の請負契約を締結し、その結果「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合には、受注者の当該発注者への取引依存度等によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
また、建設副産物の処理等に要する経費について、契約締結後の状況により予期せぬ変更が生じた場合にも、発注者と受注者が協議の上、適切に変更契約を行い請負代金に反映することが必要である。追加的に発生した建設副産物の処理等に要する費用を受注者に負担させ、その結果「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合にも、受注者の当該発注者への取引依存度等によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
関 連 条 文
目 次
「建設業法」(抄)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39
「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(抄)・・・・・・・・ 45
「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(抄)・・・・・・・・・ 47
「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(抄)・・・・・・・・・ 58
「労働基準法」(抄)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61
「公共工事標準請負契約約款」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64
「民間工事標準請負契約約款(甲)」・・・・・・・・・・・・・・・・・・105
「工期に関する基準」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・131
「建設業法」(抄)(昭和二十四年法律第百号)
(建設工事の請負契約の原則)
第十八条 建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。
(建設工事の請負契約の内容)
第十九条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
一 工事内容
二 請負代金の額
三 工事着手の時期及び工事完成の時期
四 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
五 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
六 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
七 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
八 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
九 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
十 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
十一 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
十二 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
十三 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
十四 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
十五 契約に関する紛争の解決方法
十六 その他国土交通省令で定める事項
2 請負契約の当事者は、請負契約の内容で前項に掲げる事項に該当するものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
3 建設工事の請負契約の当事者は、前二項の規定による措置に代えて、政令で定めるところにより、当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて、当該各項の規定による措置に準ずるものとして国土交通省令で定めるものを講ずることができる。この場合において、当該国土交通省令で定める措置を講じた者は、当該各項の規定による措置を講じたものとみなす。
(不当に低い請負代金の禁止)
第十九条の三 注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。
(不当な使用資材等の購入強制の禁止)
第十九条の四 注文者は、請負契約の締結後、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事に使用する資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを請負人に購入させて、その利益を害してはならない。
(著しく短い工期の禁止)
第十九条の五 注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。
(発注者に対する勧告等)
第十九条の六 建設業者と請負契約を締結した発注者(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 (昭和二十二年法律第五十四号)第二条第一項に規定する事業者に該当するものを除く。)が第十九条の三又は第十九条の四の規定に違反した場合において、特に必要があると認めるときは、当該建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該発注者に対して必要な勧告をすることができる。
2 建設業者と請負契約(請負代金の額が政令で定める金額以上であるものに限る。)を締結した発注者が前条の規定に違反した場合において、特に必要があると認めるときは、当該建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該発注者に対して必要な勧告をすることができる。
3 国土交通大臣又は都道府県知事は、前項の勧告を受けた発注者がその勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。
4 国土交通大臣又は都道府県知事は、第一項又は第二項の勧告を行うため必要があると認めるときは、当該発注者に対して、報告又は資料の提出を求めることができる。
(建設工事の見積り等)
第二十条 建設業者は、建設工事の請負契約を締結するに際して、工事内容に応じ、工事の種別ごとの材料費、労務費その他の経費の内訳並びに工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数を明らかにして、建設工事の見積りを行うよう努めなければならない。
2 建設業者は、建設工事の注文者から請求があつたときは、請負契約が成立するまでの間に、建設工事の見積書を交付しなければならない。
3 建設業者は、前項の規定による見積書の交付に代えて、政令で定めるところにより、建設工事の注文者の承諾を得て、当該見積書に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該建設業者は、当該見積書を交付したものとみなす。
4 建設工事の注文者は、請負契約の方法が随意契約による場合にあつては契約を締結するまでに、入札の方法により競争に付する場合にあつては入札を行うまでに、第十九条第一項第一号及び第三号から第十六号までに掲げる事項について、できる限り具体的な内容を提示し、かつ、当該提示から当該契約の締結又は入札までに、建設業者が当該建設工事の見積りをするために必要な政令で定める一定の期間を設けなければならない。
建設業法施行令(昭和三十一年政令第二百七十三号)(抄)
(建設工事の見積期間)
第六条 法第二十条第四項に規定する見積期間は、次に掲げるとおりとする。ただし、やむを得ない事情があるときは、第二号及び第三号の期間は、五日以内に限り短縮することができる。
一 工事一件の予定価格が五百万円に満たない工事については、一日以上
二 工事一件の予定価格が五百万円以上五千万円に満たない工事については、十日以上
三 工事一件の予定価格が五千万円以上の工事については、十五日以上
2 国が入札の方法により競争に付する場合においては、予算決算及び会計令(昭和二十二年勅令第百六十五号)第七十四条の規定による期間を前項の見積期間とみなす。
(工期等に影響を及ぼす事象に関する情報の提供)
第二十条の二 建設工事の注文者は、当該建設工事について、地盤の沈下その他の工期又は請負代金の額に影響を及ぼすものとして国土交通省令で定める事象が発生するおそれがあると認めるときは、請負契約を締結するまでに、建設業者に対して、その旨及び当該事象の状況の把握のため必要な情報を提供しなければならない。
(下請代金の支払)
第二十四条の三 元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは、当該支払の対象となつた建設工事を施工した下請負人に対して、当該元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び当該下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、当該支払を受けた日から1月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならない。
2 前項の場合において、元請負人は、同項に規定する下請代金のうち労務費に相当する部分については、現金で支払うよう適切な配慮をしなければならない。
3 元請負人は、前払金の支払を受けたときは、下請負人に対して、資材の購入、労働者の募集その他建設工事の着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしなければならない。
(特定建設業者の下請代金の支払期日等)
第二十四条の六 特定建設業者が注文者となつた下請契約(下請契約における請負人が特定建設業者又は資本金額が政令で定める金額以上の法人であるものを除く。以下この条において同じ。)における下請代金の支払期日は、第二十四条の四第二項の申出の日(同項ただし書の場合にあつては、その一定の日。以下この条において同 じ。)から起算して五十日を経過する日以前において、かつ、できる限り短い期間内において定められなければならない。
2 特定建設業者が注文者となつた下請契約において、下請代金の支払期日が定められなかつたときは第二十四条の四第二項の申出の日が、前項の規定に違反して下請代金の支払期日が定められたときは同条第二項の申出の日から起算して五十日を経過する日が下請代金の支払期日と定められたものとみなす。
3 特定建設業者は、当該特定建設業者が注文者となつた下請契約に係る下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付してはならない。
4 特定建設業者は、当該特定建設業者が注文者となつた下請契約に係る下請代金を 第一項の規定により定められた支払期日又は第二項の支払期日までに支払わなければならない。当該特定建設業者がその支払をしなかつたときは、当該特定建設業者は、下請負人に対して、第二十四条の四第二項の申出の日から起算して五十日を経過し
た日から当該下請代金の支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該未払金額に国土交通省令で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。
(公正取引委員会への措置請求等)
第四十二条 国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が第十九条の三、第十九条の四、第二十四条の三第一項、第二十四条の四、第二十四条の五又は第二十四条の六第三項若しくは第四項の規定に違反している事実があり、その事実が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第十九条の規定に違反して いると認めるときは、公正取引委員会に対し、同法の規定に従い適当な措置をとるべきことを求めることができる。
2 国土交通大臣又は都道府県知事は、中小企業者(中小企業基本法(昭和三十八年法律第百五十四号)第二条第一項 に規定する中小企業者をいう。次条において同
じ。)である下請負人と下請契約を締結した元請負人について、前項の規定により措置をとるべきことを求めたときは、遅滞なく、中小企業庁長官にその旨を通知しなければならない。
「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(抄)
(昭和二十二年法律第五十四号)
第二条 この法律において「事業者」とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいう。事業者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者は、次項又は第三章の規定の適用については、これを事業者とみなす。
2~8 (略)
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
一~四 (略)
五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は 役務を購入させること。
ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。
六 (略)
第十九条 事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。
第二十条 前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為の差止め、契約条項の削除その他当該行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。
2 第七条第二項の規定は、前条の規定に違反する行為に準用する。
第二十条の六 事業者が、第十九条の規定に違反する行為(第二条第九項第五号に該当するものであつて、継続してするものに限る。)をしたときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、当該事業者に対し、当該行為をした日から当該行為がなくなる日までの期間(当該期間が三年を超えるときは、当該行為がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。)における、当該行為の相手方との間における政令で定める方法により算定した売上額(当該行為が商品又は役務の供給を受ける相手方に対するものである場合は当該行為の相手方との間における政令で定める方法により算定した購入額とし、当該行為の相手方が複数ある場合は当該行為のそれぞれの相手方との間における政令で定める方法により算定した売上額又は購入額の合計額とする。)に百分の一を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、その額が百万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。
第二十五条 第三条、第六条又は第十九条の規定に違反する行為をした事業者(第六条の規定に違反する行為をした事業者にあつては、当該国際的協定又は国際的契約において、不当な取引制限をし、又は不公正な取引方法を自ら用いた事業者に限る。)及び第八条の規定に違反する行為をした事業者団体は、被害者に対し、損害賠償の責めに任ずる。
2 事業者及び事業者団体は、故意又は過失がなかつたことを証明して、前項に規定する責任を免れることができない。
「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(抄)
(平成22年11月30日公正取引委員会)
はじめに
優越的地位の濫用は,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和2
2年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)において,不公正な取引方法の一つとして禁止されている。優越的地位の濫用の規定は,独占禁止法の一部を改正する法律(平成21年法律第51号。以下「独占禁止法改正法」という。)によって,独占禁止法第2条第9項第5号として法定化された。
第1 優越的地位の濫用規制についての基本的考え方(略)
第2「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して」の考え方
1 取引の一方の当事者(甲)が他方の当事者(乙)に対し,取引上の地位が優越しているというためには,市場支配的な地位又はそれに準ずる絶対的に優越した地位である必要はなく,取引の相手方との関係で相対的に優越した地位であれば足りると解される。甲が取引先である乙に対して優越した地位にあるとは,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても,乙がこれを受け入れざるを得ないような場合である。
2 この判断に当たっては,乙の甲に対する取引依存度,甲の市場における地位,乙にとっての取引先変更の可能性,その他甲と取引することの必要性を示す具体的事実を総合的に考慮する(注7)。
(注7)甲が乙に対し,取引上の地位が優越しているかどうかは,次の(1)から (4)までに記載された具体的事実を総合的に考慮して判断するので,大企業と中小企業との取引だけでなく,大企業同士,中小企業同士の取引においても,取引の一方当事者が他方の当事者に対し,取引上の地位が優越していると認められる場合があることに留意する必要がある。
(1) 乙の甲に対する取引依存度
乙の甲に対する取引依存度とは,一般に,乙が甲に商品又は役務を供給する 取引の場合には,乙の甲に対する売上高を乙全体の売上高で除して算出される。乙の甲に対する取引依存度が大きい場合には,乙は甲と取引を行う必要性が高 くなるため,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大き な支障を来すことになりやすい。
(2) 甲の市場における地位
甲の市場における地位としては,甲の市場におけるシェアの大きさ,その順位等が考慮される。甲のシェアが大きい場合又はその順位が高い場合には,甲と取引することで乙の取引数量や取引額の増加が期待でき,乙は甲と取引を行う必要性が高くなるため,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すことになりやすい。
(3) 乙にとっての取引先変更の可能性
乙にとっての取引先変更の可能性としては,他の事業者との取引開始や取引拡大の可能性,甲との取引に関連して行った投資等が考慮される。他の事業者との取引を開始若しくは拡大することが困難である場合又は甲との取引に関連して多額の投資を行っている場合には,乙は甲と取引を行う必要性が高くなるため,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すことになりやすい。
(4) その他甲と取引することの必要性を示す具体的事実
その他甲と取引することの必要性を示す具体的事実としては,甲との取引の額,甲の今後の成長可能性,取引の対象となる商品又は役務を取り扱うことの重要性,甲と取引することによる乙の信用の確保,甲と乙の事業規模の相違等が考慮される。甲との取引の額が大きい,甲の事業規模が拡大している,甲が乙に対して商品又は役務を供給する取引において当該商品又は役務が強いブランド力を有する,甲と取引することで乙の取り扱う商品又は役務の信用が向上する,又は甲の事業規模が乙のそれよりも著しく大きい場合には,乙は甲と取引を行う必要性が高くなるため,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すことになりやすい。
第3 「正常な商慣習に照らして不当に」の考え方
「正常な商慣習に照らして不当に」という要件は,優越的地位の濫用の有無が,公正な競争秩序の維持・促進の観点から個別の事案ごとに判断されることを示すものである。
ここで,「正常な商慣習」とは,公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認されるものをいう。したがって,現に存在する商慣習に合致しているからといって,直ちにその行為が正当化されることにはならない。
第4 優越的地位の濫用となる行為類型
ここでは,優越的地位の濫用につながり得る行為であることが,独占禁止法第2
条第9項第5号イからハまでの規定から明らかな行為を中心に,行為類型ごとに,優越的地位の濫用の考え方について明らかにする。
なお,優越的地位の濫用として問題となるのは,これらの行為類型に限られるものではない。優越的地位の濫用として問題となる種々の行為を未然に防止するためには,取引の対象となる商品又は役務の具体的内容や品質に係る評価の基準,納期,代金の額,支払期日,支払方法等について,取引当事者間であらかじめ明確にし,書面で確認するなどの対応をしておくことが望ましい。
1 独占禁止法第2条第9項第5号イ(購入・利用強制)
独占禁止法第2条第9項第5号イの規定は,次のとおりである。
イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して,当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
この規定における「当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務」には,自己の供給する商品又は役務だけでなく,自己の指定する事業者が供給する商品又は役務が含まれる。
また,「購入させる」には,その購入を取引の条件とする場合や,その購入をしないことに対して不利益を与える場合だけではなく,事実上,購入を余儀なくさせていると認められる場合も含まれる(注8)。
(注8)独占禁止法第2条第9項第5号ロにおける「提供させる」の考え方も,これと同様である。
(1) 取引上の地位が相手方に優越している事業者が,取引の相手方に対し,当該 取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務の購入を要請する場合であって,当該取引の相手方が,それが事業遂行上必要としない商品若しくは役務であり,又はその購入を希望していないときであったとしても,今後の取引に与える影 響を懸念して当該要請を受け入れざるを得ない場合には,正常な商慣習に照ら して不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる。
(2) 略
<想定例>
① 購入しなければ相手方との取引を打ち切る,取引数量を削減するなど,今後の取引に影響すると受け取られるような要請をすることにより,購入させること。
② 購買担当者等取引の相手方との取引関係に影響を及ぼし得る者が購入を要請することにより,購入させること。
③~⑥ 略
2 独占禁止法第2条第9項第5号ロ
独占禁止法第2条第9項第5号ロの規定は,次のとおりである。
ロ 継続して取引する相手方に対して,自己のために金銭,役務その他の経済上の利益を提供させること。
この規定における「経済上の利益」の提供とは,協賛金,協力金等の名目のいかんを問わず行われる金銭の提供,作業への労務の提供等をいう。
(1) 協賛金等の負担の要請(略)
(2) 従業員等の派遣の要請(略)
(3) その他経済上の利益の提供の要請
ア 協賛金等の負担の要請や従業員等の派遣の要請以外であっても,取引上の地位が相手方に優越している事業者が,正当な理由がないのに,取引の相手方に対し,発注内容に含まれていない,金型(木型その他金型に類するものを含む。以下同じ。)等の設計図面,特許権等の知的財産権,従業員等の派遣以外の役務提供その他経済上の利益の無償提供を要請する場合であって,当該取引の相手方が今後の取引に与える影響を懸念してそれを受け入れざ るを得ない場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる(注15)。
(注15)無償で提供させる場合だけでなく,取引上の地位が優越している 事業者が,取引の相手方に対し,正常な商慣習に照らして不当に低 い対価で提供させる場合には,優越的地位の濫用として問題となる。この判断に当たっては,「取引の対価の一方的決定」(第4の3(5) ア)に記載された考え方が適用される。
イ(略)
<想定例>
① 略
② 発注内容に金型の設計図面を提供することが含まれていないにもかか
わらず,取引の相手方に対し,金型の設計図面を無償で提供させること。
③ 補修用部品,金型等自己が保管すべきものについて,自己の一方的な都合により,取引の相手方に無償で保管させ,また,保管に伴うメンテナンス等をさせること。
④ 自己が支給した部品・原材料の不具合,自己が行った設計の不備等自己に責任があるにもかかわらず,最終ユーザーからクレームがあった際,自己は一切責任を負わず,取引の相手方に最終ユーザーに対する損害賠償を含むクレーム対応を無償ですべて行わせること。
⑤ 商品を納入するに当たって,取引の相手方と十分協議することなく一方的に,当該取引の相手方が回収する義務のない産業廃棄物や他の事業者の輸送用具等を取引の相手方に無償で回収させること。
3 独占禁止法第2条第9項第5号ハ
独占禁止法第2条第9項第5号ハの規定は,次のとおりである。
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み,取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ,取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ,若しくはその額を減じ,その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し,若しくは変更し,又は取引を実施すること。
この独占禁止法第2条第9項第5号ハには,「受領拒否」,「返品」,「支払遅延」及び「減額」が優越的地位の濫用につながり得る行為の例示として掲げられているが,それ以外にも,取引の相手方に不利益を与える様々な行為が含まれる。
(1) 受領拒否(略)
(2) 返品(略)
(3) 支払遅延
ア 取引上の地位が相手方に優越している事業者が,正当な理由がないのに,契約で定めた支払期日に対価を支払わない場合であって,当該取引の相手方が,今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合
には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる。
また,契約で定めた支払期日より遅れて対価を支払う場合だけでなく,取引上の地位が優越している事業者が,一方的に対価の支払期日を遅く設定する場合や,支払期日の到来を恣意的に遅らせる場合にも,当該取引の相手方に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなりやすく,優越的地位の濫用として問題となりやすい。
イ (略)
<想定例>
① 社内の支払手続の遅延,製品の設計や仕様の変更などを理由として,自 己の一方的な都合により,契約で定めた支払期日に対価を支払わないこと。
② 分割して納入を受ける取引において,初期納入分の提供を受けた後に対 価を支払うこととされているにもかかわらず,一方的に支払条件を変更し,すべてが納入されていないことを理由として対価の支払を遅らせること。
③ 商品の提供が終わっているにもかかわらず,その検収を恣意的に遅らせることなどにより,契約で定めた支払期日に対価を支払わないこと。
④ 取引に係る商品又は役務を自己が実際に使用した後に対価を支払うこ ととされている場合に,自己の一方的な都合によりその使用時期を当初の予定より大幅に遅らせ,これを理由として対価の支払を遅らせること。
⑤ 非常に高額な製品・部品等の納入を受けている場合において,当初,契約で一括払いとしたにもかかわらず,支払の段階になって自己の一方的な都合により数年にわたる分割払いとし,一括払いに応じないこと。
(4) 減額
ア 取引上の地位が相手方に優越している事業者が,商品又は役務を購入した後において,正当な理由がないのに,契約で定めた対価を減額する場合であって,当該取引の相手方が,今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる。
契約で定めた対価を変更することなく,商品又は役務の仕様を変更するなど対価を実質的に減額する場合も,これと同様である。
イ(略)
<想定例>
① 商品又は役務の提供を受けた後であるにもかかわらず,業績悪化,予算不足,顧客からのキャンセル等自己の一方的な都合により,契約で定めた対価の減額を行うこと。
② あらかじめ定められた検査基準を恣意的に厳しくして,発注内容と異なる又は瑕疵があることを理由に,納入価格の値引きをさせること。
③ 自己の一方的な都合により取引の対象となる商品若しくは役務の仕様 等の変更,やり直し又は追加的な提供を要請した結果,取引の相手方の作業量が大幅に増加することとなるため,当該作業量増加分に係る対価の支
払を約したにもかかわらず,当初の契約で定めた対価しか支払わないこと。
④ セールで値引販売したことを理由に,又は当該値引販売に伴う利益の減少に対処するために,値引販売した額に相当する額を取引の相手方に値引きさせること。
⑤ 毎月,一定の利益率を確保するため,当該利益率の確保に必要な金額を計算して,それに相当する額を取引の相手方に値引きさせること。
⑥ 商品の製造を発注した後であるにもかかわらず,自社で策定したコスト削減目標を達成するために必要な金額を計算して,それに相当する額を取引の相手方に値引きさせること。
⑦ 自己の要請に基づいて設備投資や人員の手配を行うなど,取引の相手方が自己に対する商品又は役務の提供の準備のための費用を負担している にもかかわらず,自己の一方的な都合により,当該商品又は役務の一部の取引を取りやめ,契約で定めた対価から取引の減少分に係る対価の減額を行うこと。
⑧ 同一商品が他店で安く販売されていることを理由に,納入業者と協議することなく,自店と他店の販売価格の差額分を納入価格から差し引いた対価しか支払わないこと。
⑨ 消費税・地方消費税相当額を支払わないことにより,又は支払時に端数切捨てを行うことにより,契約で定めた対価の減額を行うこと。
⑩ 自己の一方的な都合による設計変更,図面提供の遅延等があったにもかかわらず,取引の相手方の納期延長を認めず,納期遅れのペナルティの額を差し引いた対価しか支払わないこと。
(5) その他取引の相手方に不利益となる取引条件の設定等
前記第4の1,第4の2及び第4の3(1)から(4)までの行為類型に該当しない場合であっても,取引上の地位が優越している事業者が,取引の相手方に正常な商慣習に照らして不当に不利益となるように取引の条件を設定し,若しくは変更し,又は取引を実施する場合には,優越的地位の濫用として問題となる。
一般に取引の条件等に係る交渉が十分に行われないときには,取引の相手方 は,取引の条件等が一方的に決定されたものと認識しがちである。よって,取 引上優越した地位にある事業者は,取引の条件等を取引の相手方に提示する際,当該条件等を提示した理由について,当該取引の相手方へ十分に説明すること が望ましい。
ア 取引の対価の一方的決定
(ア) 取引上の地位が相手方に優越している事業者が,取引の相手方に対し,一方的に,著しく低い対価又は著しく高い対価での取引を要請する場合であって,当該取引の相手方が,今後の取引に与える影響等を懸念して当該要請を受け入れざるを得ない場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる(注25)。
この判断に当たっては,対価の決定に当たり取引の相手方と十分な協議が行われたかどうか等の対価の決定方法のほか,他の取引の相手方の対価と比べて差別的であるかどうか,取引の相手方の仕入価格を下回るものであるかどうか,通常の購入価格又は販売価格との乖離の状況,取引の対象となる商品又は役務の需給関係等を勘案して総合的に判断する。
(注25)取引の対価の一方的決定は,独占禁止法第2条第9項第5号ハの
「取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定(中略)すること。」に該当する。
(イ) (略)
<想定例>
①(略)
② 納期までの期間が短い発注を行ったため,取引の相手方の人件費等のコストが大幅に増加したにもかかわらず,通常の納期で発注した場合の単価と同一の単価を一方的に定めること。
③ 通常の発注内容にない特別の仕様を指示したり,配送頻度の変更を指示したりするなどしたため,取引の相手方の作業量が増加し,当該取引の相手方の人件費等のコストが大幅に増加したにもかかわらず,通常の発注内容の場合の単価と同一の単価を一方的に定めること。
④ 自己の予算単価のみを基準として,一方的に通常の価格より著しく低い又は著しく高い単価を定めること。
⑤ 一部の取引の相手方と協議して決めた単価若しくは不合理な基準で算 定した単価を他の取引の相手方との単価改定に用いること,又は取引の相手方のコスト減少を理由としない定期的な単価改定を行うことにより,一
律に一定比率で単価を引き下げ若しくは引き上げて,一方的に通常の価格より著しく低い若しくは著しく高い単価を定めること。
⑥・⑦(略)
⑧ 原材料等の値上がりや部品の品質改良等に伴う研究開発費の増加,環境規制への対策などにより,取引の相手方のコストが大幅に増加したにもかかわらず,従来の単価と同一の単価を一方的に定めること。
⑨(略)
⑩ 取引の相手方から,社外秘である製造原価計算資料,労務管理関係資料等を提出させ,当該資料を分析し,「利益率が高いので値下げに応じられるはず」などと主張し,著しく低い納入価格を一方的に定めること。
イ やり直しの要請
(ア) 取引上の地位が相手方に優越している事業者が,正当な理由がないのに,当該取引の相手方から商品を受領した後又は役務の提供を受けた後に,取 引の相手方に対し,やり直しを要請する場合であって,当該取引の相手方 が,今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場 合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越 的地位の濫用として問題となる。(注26)(注27)。
(注26)「やり直し」は,独占禁止法第2条第9項第5号ハの「取引の相手方に不利益となるように取引の条件を(中略)変更し,又は取引を実施すること。」に該当する。
(注27)取引の相手方から商品を受領する前又は役務の提供を受ける前に,給付内容を変更し,当初の給付内容とは異なる作業をさせる場合に ついては,「減額」(第4の3(4)参照)又は「その他取引の相手方
に不利益となる取引条件の設定等」(第4の3(5)ウ参照)として優越的地位の濫用の問題となり得る。
(イ) (略)
<想定例>
① 商品又は役務の受領前に,自己の一方的な都合により,あらかじめ定めた商品又は役務の仕様を変更したにもかかわらず,その旨を取引の相手方に伝えないまま,取引の相手方に継続して作業を行わせ,納入時に仕様に合致していないとして,取引の相手方にやり直しをさせること。
② 委託内容について取引の相手方に確認を求められて了承したため,取引の相手方がその委託内容に基づき製造等を行ったにもかかわらず,給付内
容が委託内容と異なるとして取引の相手方にやり直しをさせること。
③ あらかじめ定められた検査基準を恣意的に厳しくして,発注内容と異なること又は瑕疵があることを理由に,やり直しをさせること。
④ 取引の相手方が仕様の明確化を求めたにもかかわらず,正当な理由なく仕様を明確にしないまま,取引の相手方に継続して作業を行わせ,その後,取引の相手方が商品を納入したところ,発注内容と異なることを理由に,やり直しをさせること。
ウ その他
(ア) 前記第4の3(1)から(4)まで並びに第4の3(5)ア及びイの行為類型に該当しない場合であっても,取引上の地位が優越している事業者が,一方的に,取引の条件を設定し,若しくは変更し,又は取引を実施する場合に,当該取引の相手方に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとな るときは,優越的地位の濫用として問題となる。
(イ) 次に掲げる想定例は,通常,これまでに述べた行為類型のいずれにも当てはまらないものと考えられるが,独占禁止法第2条第9項第5号ハに該当すれば,優越的地位の濫用として問題となる。
<想定例>
① (略)
② 特定の仕様を指示して部品の製造を発注し,これを受けて取引の相手方が既に原材料等を調達しているにもかかわらず,自己の一方的な都合により,当該取引の相手方が当該調達に要した費用を支払うことなく,部品の発注を取り消すこと。
③ 取引の相手方に対し,新たな機械設備の導入を指示し,当該機械設備の導入後直ちに一定数量を発注することを説明して発注を確約し,当該取引の相手方が当該機械設備の導入等の取引の実現に向けた行動を採ってい るのを黙認していたにもかかわらず,自己の一方的な都合により,発注数量を著しく減少する又は発注を取り消すこと。
④ 取引の相手方に対し,債務超過等業績が不振な会社の振り出した手形,手形サイトが著しく長い手形等の支払期日までに一般の金融機関による
割引を受けることが困難な手形を交付し,通常よりも割高な割引料を負担させること。
⑤ (略)
⑥ 取引の相手方が納期までに納品できなかった場合又は取引の相手方が 納入した商品に瑕疵があった場合に,当該取引の相手方に対して課すペナ
ルティについて,その額や算出根拠等について当該取引の相手方と十分協議することなく一方的に定め,納品されて販売していれば得られた利益相当額又は当該瑕疵がなければ得られた利益相当額を超える額を負担させ ること。
(ウ) (略)
「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(抄)
(平成十二年法律第百四号)
(分別解体等実施義務)
第九条 特定建設資材を用いた建築物等に係る解体工事又はその施工に特定建設資材を使用する新築工事等であって、その規模が第三項又は第四項の建設工事の規模に関する基準以上のもの(以下「対象建設工事」という。)の受注者(当該対象建設工事の全部又は一部について下請契約が締結されている場合における各下請負人を含む。以下「対象建設工事受注者」という。)又はこれを請負契約によらないで自ら施工する者(以下単に「自主施工者」という。)は、正当な理由がある場合を除き、分別解体等をしなければならない。
2 前項の分別解体等は、特定建設資材廃棄物をその種類ごとに分別することを確保するための適切な施工方法に関する基準として主務省令で定める基準に従い、行わなければならない。
3 建設工事の規模に関する基準は、政令で定める。
4 都道府県は、当該都道府県の区域のうちに、特定建設資材廃棄物の再資源化等をするための施設及び廃棄物の最終処分場における処理量の見込みその他の事情から判断して前項の基準によっては当該区域において生じる特定建設資材廃棄物をその再資源化等により減量することが十分でないと認められる区域があるときは、当該区域について、条例で、同項の基準に代えて適用すべき建設工事の規模に関する基準を定めることができる。
(対象建設工事の請負契約に係る書面の記載事項)
第十三条 対象建設工事の請負契約(当該対象建設工事の全部又は一部について下請契約が締結されている場合における各下請契約を含む。以下この条において同じ。)の当事者は、建設業法(昭和二十四年法律第百号)第十九条第一項に定めるもののほか、分別解体等の方法、解体工事に要する費用その他の主務省令で定める事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
2 対象建設工事の請負契約の当事者は、請負契約の内容で前項に規定する事項に該当するものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
3 対象建設工事の請負契約の当事者は、前二項の規定による措置に代えて、政令で定めるところにより、当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって、当該各項の規定による措置に準ずるものとして主務省令で定めるものを講ずることができる。この場合において、当該主務省令で定める措置を講じた者は、当該各項の規定による措置を講じたものとみなす。
「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律施行令」(抄)
(平成十二年政令第四百九十五号)
(建設工事の規模に関する基準)
第二条 法第九条第三項の建設工事の規模に関する基準は、次に掲げるとおりとする。
一 建築物(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第一号に規定する建築物をいう。以下同じ。)に係る解体工事については、当該建築物(当該解体工事に係る部分に限る。)の床面積の合計が八十平方メートルであるもの
二 建築物に係る新築又は増築の工事については、当該建築物(増築の工事にあっては、当該工事に係る部分に限る。)の床面積の合計が五百平方メートルであるもの
三 建築物に係る新築工事等(法第二条第三項第二号に規定する新築工事等をいう。以下同じ。)であって前号に規定する新築又は増築の工事に該当しないものについては、その請負代金の額(法第九条第一項に規定する自主施工者が施工するものについては、これを請負人に施工させることとした場合における適正な請負代金相当額。次号において同じ。)が一億円であるもの
四 建築物以外のものに係る解体工事又は新築工事等については、その請負代金の額が五百万円であるもの
2 解体工事又は新築工事等を同一の者が二以上の契約に分割して請け負う場合においては、これを一の契約で請け負ったものとみなして、前項に規定する基準を適用する。ただし、正当な理由に基づいて契約を分割したときは、この限りでない。
「特定建設資材に係る分別解体等に関する省令」(抄)
(平成十四年三月五日国土交通省令第十七号)
(対象建設工事の請負契約に係る書面の記載事項)
第四条 法第十三条第一項の主務省令で定める事項は、次のとおりとする。一 分別解体等の方法
二 解体工事に要する費用
三 再資源化等をするための施設の名称及び所在地四 再資源化等に要する費用
「労働基準法」(抄)
(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)
第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
2 前項の協定においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
二 対象期間(この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、一年間に限るものとする。第四号及び第六項第三号において同じ。)
三 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合
四 対象期間における一日、一箇月及び一年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数
五 労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項
3 前項第四号の労働時間を延長して労働させることができる時間は、当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において、限度時間を超えない時間に限る。
4 前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間
(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。
5 第一項の協定においては、第二項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長
して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。この場合において、第一項の協定に、併せて第二項第二号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が一箇月について四十五時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間)を超えることができる月数(一年について六箇月以内に限る。)を定めなければならない。
6 使用者は、第一項の協定で定めるところによつて労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であつても、次の各号に掲げる時間について、当該各号に定める要件を満たすものとしなければならない。
一 (略)
二 一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間 百時間未満であること。
三 対象期間の初日から一箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の一箇月、二箇月、三箇月、四箇月及び五箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の一箇月当たりの平均時間 八十時間を超えないこと。
第百三十九条 工作物の建設の事業(災害時における復旧及び復興の事業に限る。)その他これに関連する事業として厚生労働省令で定める事業に関する第三十六条の規定の適用については、当分の間、同条第五項中「時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)」とあるのは「時間」と、「同号」とあるのは「第二項第四号」とし、同条第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は適用しない。
2 前項の規定にかかわらず、工作物の建設の事業その他これに関連する事業として厚生労働省令で定める事業については、令和六年三月三十一日(同日及びその翌日を含む期間を定めている第三十六条第一項の協定に関しては、当該協定に定める期間の初日から起算して一年を経過する日)までの間、同条第二項第四号中「一箇月及び」とあるのは、「一日を超え三箇月以内の範囲で前項の協定をする使用者及び労働組合若しくは労働者の過半数を代表する者が定める期間並びに」とし、同条第
三項から第五項まで及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は適用しない。
別表第一(第三十三条、第四十条、第四十一条、第五十六条、第六十一条関係)一・二 (略)
三 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
四~十五 (略)
労働基準法施行規則(昭和二十二年八月三十日厚生省令第二十三号)
第六十九条 法第百三十九条第一項及び第二項の厚生労働省令で定める事業は、次に掲げるものとする。
一 法別表第一第三号に掲げる事業
二 事業場の所属する企業の主たる事業が法別表第一第三号に掲げる事業である事業場における事業
公共工事標準請負契約約款
昭和25年2月21日中央建設業審議会決定
最終改正令和4年6月21日
建 設 | 工 事 | 請 負 | 契 約 | 書 | ||
一 | 工 事 名 | |||||
二 | 工事場所 | |||||
三 | 工 期 | 自 | 令和 | 年 | 月 | 日 |
至 | 令和 | 年 | 月 | 日 |
四 工事を施工しない日
工事を施工しない時間帯
工事を施工しない日又は時間帯を定めない場合は削除。
五 請負代金額
(うち取引に係る消費税及び地方消費税の額)
六 契約保証金
第四条(B)を使用する場合には、「免除」と記入する。
七 調 停 人
調停人を活用することが望ましいが、発注者及び受注者が調停人をあらかじめ定めない場合は削除。
(八 建設発生土の搬出先等)
この工事に伴い工事現場から建設発生土を搬出する予定である場合は、
「建設発生土の搬出先については仕様書に定めるとおり」と記入し、仕様書に建設発生土の搬出先の名称及び所在地を定める。
(九 解体工事に要する費用等)
この工事が、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(平成十二年
法律第百四号)第九条第一項に規 定する対象建設工事の場合は、(1)解体工事に要する費用、(2)再資源化等に要する費用、(3)分別解体等の方法、(4)再資源化等をする施設の名称及び所在地についてそれぞれ記入する。
(十 住宅建設瑕疵担保責任保険)
特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(平成十九年法律第六十六号)第二条第五項に規定する
特定住宅瑕疵担保責任を履行するため、住宅建設瑕疵担保責任保険に加入する場合は、(1)保険法人の名称、
(2)保険金額、(3)保険期間についてそれぞれ記入する。なお、住宅建設瑕疵担保保証金の供託を行う場合は、
受注者は、供託所の所在地及び名称、共同請負の場合のそれぞれの建設瑕疵負担割合を記載した書面を発注
者に交付し、説明しなければならない。
上記の工事について、発注者と受注者は、各々の対等な立場における合意に基づいて、別添の条項によって公正な請負契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行するものとする。
また、受注者が共同企業体を結成している場合には、受注者は、別紙の共同企業体協定書により契約書記載の工事を共同連帯して請け負う。
本契約の証として本書 通を作成し、発注者及び受注者が記名押印の上、各自一通を保有する。
令和 年 月 日
発 注 者 住 所
氏 名 印
受 注 者 住 所
氏 名 印
受注者が共同企業体を結成している場合においては、受注者の住所及び氏名の欄には、共同企業体の名称並
びに共同企業体の代表者及びその他の構成員の住所及び氏名を記入する。
(総則)
第一条 発注者及び受注者は、この約款(契約書を含む。以下同じ。)に基づき、設計図書(別冊の図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書をいう。以下同じ。)に従い、日本国の法令を遵守し、この契約(この約款及び設計図書を内容とする工事の請負契約をいう。以下同じ。)を履行しなければならない。
2 受注者は、契約書記載の工事を契約書記載の工期内に完成し、工事目的物を発注者に引き渡すものとし、発注者は、その請負代金を支払うものとする。
3 仮設、施工方法その他工事目的物を完成するために必要な一切の手段(以下「施工方法等」という。)については、この約款及び設計図書に特別の定めがある場合を除き、受注者がその責任において定める。
4 受注者は、この契約の履行に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
5 この約款に定める催告、請求、通知、報告、申出、承諾及び解除は、書面により行わなければならない。
6 この契約の履行に関して発注者と受注者との間で用いる言語は、日本語とする。
7 この約款に定める金銭の支払いに用いる通貨は、日本円とする。
8 この契約の履行に関して発注者と受注者との間で用いる計量単位は、設計図書に特別の定めがある場合を除き、計量法(平成四年法律第五十一号)に定めるものとする。
9 この約款及び設計図書における期間の定めについては、民法(明治二十九年法律第八十九号)及び商法(明治三十二年法律第四十八号)の定めるところによるものとする。
10 この契約は、日本国の法令に準拠するものとする。
11 この契約に係る訴訟については、日本国の裁判所をもって合意による専属的管轄裁判所とする。
12 受注者が共同企業体を結成している場合においては、発注者は、この契約に基づくすべての行為を共同企業体の代表者に対して行うものとし、発注者が当該代表者に対して行ったこの契約に基づくすべての行為は、当該企業体のすべての構成員に対して行ったものとみなし、また、受注者は、発注者に対して行うこの契約に基づくすべての行為について当該代表者を通じて行わなければならない。
(関連工事の調整)
第二条 発注者は、受注者の施工する工事及び発注者の発注に係る第三者の施工する他の工事が施工上密接に関連する場合において、必要があるときは、その施工につき、調整を行うものとする。この場合においては、受注者は、発注者の調整に従い、当該第三者の行う工事の円滑な施工に協力しなければならない。
(請負代金内訳書及び工程表)
第三条(A) 受注者は、設計図書に基づいて請負代金内訳書(以下「内訳書」とい
う。)及び工程表を作成し、発注者に提出し、その承認を受けなければならない。
2 内訳書には、健康保険、厚生年金保険及び雇用保険に係る法定福利費を明示するものとする。3 内訳書及び工程表は、この約款の他の条項において定める場合を除き、発注者及び受注者を
拘束するものではない。
(A)は、契約の内容に不確定要素の多い契約等に使用する。
第三条(B) 受注者は、この契約締結後〇日以内に設計図書に基づいて、請負代金内訳書(以下「内訳書」という。)及び工程表を作成し、発注者に提出しなければならない。
2 内訳書には、健康保険、厚生年金保険及び雇用保険に係る法定福利費を明示するものとする。3 内訳書及び工程表は、発注者及び受注者を拘束するものではない。
(契約の保証)
第四条(A) 受注者は、この契約の締結と同時に、次の各号のいずれかに掲げる保証を付さなければならない。ただし、第五号の場合においては、履行保証保険契約の締結後、直ちにその保険証券を発注者に寄託しなければならない。
一 契約保証金の納付
二 契約保証金に代わる担保となる有価証券等の提供
三 この契約による債務の不履行により生ずる損害金の支払いを保証する銀行又は発注者が確実と認める金融機関等の保証
四 この契約による債務の履行を保証する公共工事履行保証証券による保証
五 この契約による債務の不履行により生ずる損害をてん補する履行保証保険契約の締結
2 受注者は、前項の規定による保険証券の寄託に代えて、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法(以下「電磁的方法」という。)であって、当該履行保証保険契約の相手方が定め、発注者が認めた措置を講ずることができる。この場合において、受注者は、当該保険証券を寄託したものとみなす。
3 第一項の保証に係る契約保証金の額、保証金額又は保険金額(第六項において「保証の額」という。)は、請負代金額の十分の〇以上としなければならない。
4 受注者が第一項第三号から第五号までのいずれかに掲げる保証を付す場合は、当該保証は第五十五条第三項各号に規定する者による契約の解除の場合についても保証するものでなければならない。
5 第一項の規定により、受注者が同項第二号又は第三号に掲げる保証を付したときは、当該保証は契約保証金に代わる担保の提供として行われたものとし、同項第四号又は第五号に掲げる保証を付したときは、契約保証金の納付を免除する。
6 請負代金額の変更があった場合には、保証の額が変更後の請負代金額の十分の〇
に達するまで、発注者は、保証の額の増額を請求することができ、受注者は、保証の額の減額を請求することができる。
(A)は、金銭的保証を必要とする場合に使用することとし、〇の部分には、たとえば、一と記入する。
第四条(B) 受注者は、この契約の締結と同時に、この契約による債務の履行を保証する公共工事履行保証証券による保証(引き渡した工事目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないもの(以下「契約不適合」という。)である場合において当該契約不適合を保証する特約を付したものに限る。)を付さなければならない。
2 前項の場合において、保証金額は、請負代金額の十分の〇以上としなければならない。
3 第一項の規定により受注者が付す保証は、第五十五条第三項各号に規定する契約の解除による場合についても保証するものでなければならない。
4 請負代金額の変更があった場合には、保証金額が変更後の請負代金額の十分の〇に達するまで、発注者は、保証金額の増額を請求することができ、受注者は、保証金額の減額を請求することができる。
(B)は、役務的保証を必要とする場合に使用することとし、〇の部分には、たとえば、三と記入する。
(権利義務の譲渡等)
第五条 受注者は、この契約により生ずる権利又は義務を第三者に譲渡し、又は承継させてはならない。ただし、あらかじめ、発注者の承諾を得た場合は、この限りでない。
ただし書の適用については、たとえば、受注者が第三十二条第二項の検査に合格した後に請負代金債権を譲渡する場合や工事に係る請負代金債権を担保として資金を借り入れようとする場合(受注者が、「下請セーフティネット債務保証事業」(平成十一年一月二十八日建設省経振発第八号)又は「地域建設業経営強化融資制度」(平成二十年十月十七日国総建第百九十七号、国総建整第百五十四号)により資金を借り入れようとする等の場合)が該当する。
2 受注者は、工事目的物並びに工事材料(工場製品を含む。以下同じ。)のうち第十三条第二項の規定による検査に合格したもの及び第三十八条第三項の規定による部分払のための確認を受けたものを第三者に譲渡し、貸与し、又は抵当権その他の担保の目的に供してはならない。ただし、あらかじめ、発注者の承諾を得た場合は、この限りでない。
3 受注者が前払金の使用や部分払等によってもなおこの契約の目的物に係る工事
の施工に必要な資金が不足することを疎明したときは、発注者は、特段の理由がある場合を除き、受注者の請負代金債権の譲渡について、第一項ただし書の承諾をしなければならない。
4 受注者は、前項の規定により、第一項ただし書の承諾を受けた場合は、請負代金債権の譲渡により得た資金をこの契約の目的物に係る工事の施工以外に使用してはならず、またその使途を疎明する書類を発注者に提出しなければならない。
第三項を使用しない場合は、同項及び第四項を削除する。
(一括委任又は一括下請負の禁止)
第六条 受注者は、工事の全部若しくはその主たる部分又は他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の工事を一括して第三者に委任し、又は請け負わせてはならない。
公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成十二年法律第百二十七号)の適用を受けない発注者が建設業法施行令(昭和三十一年政令第二百七十三号)第六条の三に規定する工事以外の工事を発注する場合においては、「ただし、あらかじめ、発注者の承諾を得た場合は、この限りではない。」とのただし書を追記することができる。
(下請負人の通知)
第七条 発注者は、受注者に対して、下請負人の商号又は名称その他必要な事項の通知を請求することができる。
第七条の二(A) 受注者は、次の各号に掲げる届出をしていない建設業者(建設業法(昭和二十四年法律第百号)第二条第三項に定める建設業者をいい、当該届出の義務がない者を除く。以下「社会保険等未加入建設業者」という。)を下請負人としてはならない。
一 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十八条の規定による届出
二 厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第二十七条の規定による届出三 雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第七条の規定による届出
2 前項の規定にかかわらず、受注者は、次の各号に掲げる下請負人の区分に応じて、当該各号に定める場合は、社会保険等未加入建設業者を下請負人とすることができる。
一 受注者と直接下請契約を締結する下請負人 次のいずれにも該当する場合
イ 当該社会保険等未加入建設業者を下請負人としなければ工事の施工が困難となる場合その他の特別の事情があると発注者が認める場合
ロ 発注者の指定する期間内に当該社会保険等未加入建設業者が前項各号に掲げる届出をし、当該事実を確認することのできる書類(以下「確認書類」とい
う。)を、受注者が発注者に提出した場合
二 前号に掲げる下請負人以外の下請負人 次のいずれかに該当する場合
イ 当該社会保険等未加入建設業者を下請負人としなければ工事の施工が困難となる場合その他の特別の事情があると発注者が認める場合
ロ 発注者が受注者に対して確認書類の提出を求める通知をした日から○日(発注者が、受注者において確認書類を当該期間内に提出することができない相当の理由があると認め、当該期間を延長したときは、その延長後の期間)以内に、受注者が当該確認書類を発注者に提出した場合
○の部分には、たとえば、三十と記入する。
3(a) 受注者は、次の各号に掲げる場合は、発注者の請求に基づき、違約罰として、当該各号に定める額を発注者の指定する期間内に支払わなければならない。一 社会保険等未加入建設業者が前項第一号に掲げる下請負人である場合におい
て、同号イに定める特別の事情があると認められなかったとき又は受注者が同号ロに定める期間内に確認書類を提出しなかったとき 受注者が当該社会保険等未加入建設業者と締結した下請契約の最終の請負代金額の十分の○に相当する額
二 社会保険等未加入建設業者が前項第二号に掲げる下請負人である場合において、同号イに定める特別の事情があると認められず、かつ、受注者が同号ロに定める期間内に確認書類を提出しなかったとき 当該社会保険等未加入建設業者がその注文者と締結した下請契約の最終の請負代金額の百分の○に相当する額
3(b) 受注者は、社会保険等未加入建設業者が前項第一号に掲げる下請負人である場合において、同号イに定める特別の事情があると認められなかったとき又は同号ロに定める期間内に確認書類を提出しなかったときは、発注者の請求に基づき、違約罰として、受注者が当該社会保険等未加入建設業者と締結した下請契約の最終の請負代金額の十分の○に相当する額を、発注者の指定する期間内に支払わなければならない。
「十分の○」の○の部分には、たとえば、一と記入する。「百分の○」の○の部分に は、たとえば、五と記入する。
(A)は、すべての下請負人を社会保険等加入建設業者に限定する場合に使用する。
違約罰を課す場合は、(a)又は(b)を選択して使用し、課さない場合は、第三項を削除する。
第七条の二(B) 受注者は、次の各号に掲げる届出をしていない建設業者(建設業法(昭和二十四年法律第百号)第二条第三項に定める建設業者をいい、当該届出の義務がない者を除く。以下「社会保険等未加入建設業者」という。)を下請契約(受注者が直接締結する下請契約に限る。以下この条において同じ。)の相手方としてはならない。
一 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十八条の規定による届出
二 厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第二十七条の規定による届出三 雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第七条の規定による届出
2 前項の規定にかかわらず、受注者は、当該建設業者と下請契約を締結しなければ工事の施工が困難となる場合その他の特別の事情があると発注者が認める場合は、社会保険等未加入建設業者を下請契約の相手方とすることができる。この場合において、受注者は、発注者の指定する期間内に、当該社会保険等未加入建設業者が前項各号に掲げる届出をし、当該事実を確認することのできる書類(以下「確認書類」という。)を発注者に提出しなければならない。
3 受注者は、前項に定める特別の事情があると認められなかった場合又は同項に定める期間内に確認書類を提出しなかった場合は、発注者の請求に基づき、違約罰として、受注者が当該社会保険等未加入建設業者と締結した下請契約の最終の請負代金の額の十分の○に相当する額を、発注者の指定する期間内に支払わなければならない。
○の部分には、たとえば、一と記入する。
(B)は、下請契約の相手方のみを社会保険等加入建設業者に限定する場合に使用する。
違約罰を課さない場合は、第三項を削除する。
(特許権等の使用)
第八条 受注者は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権その他日本国の法令に基づき保護される第三者の権利(以下「特許権等」という。)の対象となっている工事材料、施工方法等を使用するときは、その使用に関する一切の責任を負わなければならない。ただし、発注者がその工事材料、施工方法等を指定した場合において、設計図書に特許権等の対象である旨の明示がなく、かつ、受注者がその存在を知らなかったときは、発注者は、受注者がその使用に関して要した費用を負担しなければならない。
(監督員)
第九条 発注者は、監督員を置いたときは、その氏名を受注者に通知しなければならない。監督員を変更したときも同様とする。
2 監督員は、この約款の他の条項に定めるもの及びこの約款に基づく発注者の権限とされる事項のうち発注者が必要と認めて監督員に委任したもののほか、設計図書に定めるところにより、次に掲げる権限を有する。
一 この契約の履行についての受注者又は受注者の現場代理人に対する指示、承諾又は協議
二 設計図書に基づく工事の施工のための詳細図等の作成及び交付又は受注者が
作成した詳細図等の承諾
三 設計図書に基づく工程の管理、立会い、工事の施工状況の検査又は工事材料の試験若しくは検査(確認を含む。)
3 発注者は、二名以上の監督員を置き、前項の権限を分担させたときにあってはそれぞれの監督員の有する権限の内容を、監督員にこの約款に基づく発注者の権限の一部を委任したときにあっては当該委任した権限の内容を、受注者に通知しなければならない。
4 第二項の規定に基づく監督員の指示又は承諾は、原則として、書面により行わなければならない
5 発注者が監督員を置いたときは、この約款に定める催告、請求、通知、報告、申出、承諾及び解除については、設計図書に定めるものを除き、監督員を経由して行うものとする。この場合においては、監督員に到達した日をもって発注者に到達したものとみなす。
6 発注者が監督員を置かないときは、この約款に定める監督員の権限は、発注者に帰属する。
(現場代理人及び主任技術者等)
第十条 受注者は、次の各号に掲げる者を定めて工事現場に設置し、設計図書に定めるところにより、その氏名その他必要な事項を発注者に通知しなければならない。これらの者を変更したときも同様とする。
一 現場代理人
二 (A)[ ]主任技術者
(B)[ ]監理技術者
(C)監理技術者補佐(建設業法第二十六条第三項ただし書に規定する者をいう。以下同じ。)
三 専門技術者(建設業法第二十六条の二に規定する技術者をいう。以下同じ。)
(B)は、建設業法第二十六条第二項の規定に該当する場合に、(A)は、それ以外の場合に使用する。(C)は、(B)を使用する場合において、建設業法第二十六条第三項ただし書の規定を使用し監理技術者が兼務する場合に使用する。
[ ]の部分には、同法第二十六条第三項本文の工事の場合に「専任の」の字句を記入する。
2 現場代理人は、この契約の履行に関し、工事現場に常駐し、その運営、取締りを行うほか、請負代金額の変更、請負代金の請求及び受領、第十二条第一項の請求の受理、同条第三項の決定及び通知並びにこの契約の解除に係る権限を除き、この契約に基づく受注者の一切の権限を行使することができる。
3 発注者は、前項の規定にかかわらず、現場代理人の工事現場における運営、取締
り及び権限の行使に支障がなく、かつ、発注者との連絡体制が確保されると認めた場合には、現場代理人について工事現場における常駐を要しないこととすることができる。
4 受注者は、第二項の規定にかかわらず、自己の有する権限のうち現場代理人に委任せず自ら行使しようとするものがあるときは、あらかじめ、当該権限の内容を発注者に通知しなければならない。
5 現場代理人、監理技術者等(監理技術者、監理技術者補佐又は主任技術者をいう。以下同じ。)及び専門技術者は、これを兼ねることができる。
(履行報告)
第十一条 受注者は、設計図書に定めるところにより、この契約の履行について発注者に報告しなければならない。
(工事関係者に関する措置請求)
第十二条 発注者は、現場代理人がその職務(監理技術者等又は専門技術者と兼任する現場代理人にあっては、それらの者の職務を含む。)の執行につき著しく不適当と認められるときは、受注者に対して、その理由を明示した書面により、必要な措置をとるべきことを請求することができる。
2 発注者又は監督員は、監理技術者等、専門技術者(これらの者と現場代理人を兼任する者を除く。)その他受注者が工事を施工するために使用している下請負人、労働者等で工事の施工又は管理につき著しく不適当と認められるものがあるときは、受注者に対して、その理由を明示した書面により、必要な措置をとるべきことを請求することができる。
3 受注者は、前二項の規定による請求があったときは、当該請求に係る事項について決定し、その結果を請求を受けた日から十日以内に発注者に通知しなければならない。
4 受注者は、監督員がその職務の執行につき著しく不適当と認められるときは、発注者に対して、その理由を明示した書面により、必要な措置をとるべきことを請求することができる。
5 発注者は、前項の規定による請求があったときは、当該請求に係る事項について決定し、その結果を請求を受けた日から十日以内に受注者に通知しなければならない。
(工事材料の品質及び検査等)
第十三条 工事材料の品質については、設計図書に定めるところによる。設計図書にその品質が明示されていない場合にあっては、中等の品質を有するものとする。
2 受注者は、設計図書において監督員の検査(確認を含む。以下この条において同
じ。)を受けて使用すべきものと指定された工事材料については、当該検査に合格したものを使用しなければならない。この場合において、当該検査に直接要する費用は、受注者の負担とする。
3 監督員は、受注者から前項の検査を請求されたときは、請求を受けた日から〇日以内に応じなければならない。
4 受注者は、工事現場内に搬入した工事材料を監督員の承諾を受けないで工事現場外に搬出してはならない。
5 受注者は、前項の規定にかかわらず、第二項の検査の結果不合格と決定された工事材料については、当該決定を受けた日から〇日以内に工事現場外に搬出しなければならない。
(監督員の立会い及び工事記録の整備等)
第十四条 受注者は、設計図書において監督員の立会いの上調合し、又は調合について見本検査を受けるものと指定された工事材料については、当該立会いを受けて調合し、又は当該見本検査に合格したものを使用しなければならない。
2 受注者は、設計図書において監督員の立会いの上施工するものと指定された工事については、当該立会いを受けて施工しなければならない。
3 受注者は、前二項に規定するほか、発注者が特に必要があると認めて設計図書において見本又は工事写真等の記録を整備すべきものと指定した工事材料の調合又は工事の施工をするときは、設計図書に定めるところにより、当該見本又は工事写真等の記録を整備し、監督員の請求があったときは、当該請求を受けた日から〇日以内に提出しなければならない。
4 監督員は、受注者から第一項又は第二項の立会い又は見本検査を請求されたときは、当該請求を受けた日から〇日以内に応じなければならない。
5 前項の場合において、監督員が正当な理由なく受注者の請求に〇日以内に応じないため、その後の工程に支障をきたすときは、受注者は、監督員に通知した上、当該立会い又は見本検査を受けることなく、工事材料を調合して使用し、又は工事を施工することができる。この場合において、受注者は、当該工事材料の調合又は当該工事の施工を適切に行ったことを証する見本又は工事写真等の記録を整備し、監督員の請求があったときは、当該請求を受けた日から〇日以内に提出しなければならない。
6 第一項、第三項又は前項の場合において、見本検査又は見本若しくは工事写真等の記録の整備に直接要する費用は、受注者の負担とする。
(支給材料及び貸与品)
第十五条 発注者が受注者に支給する工事材料(以下「支給材料」という。)及び貸与する建設機械器具(以下「貸与品」という。)の品名、数量、品質、規格又は性
能、引渡場所及び引渡時期は、設計図書に定めるところによる。
2 監督員は、支給材料又は貸与品の引渡しに当たっては、受注者の立会いの上、発注者の負担において、当該支給材料又は貸与品を検査しなければならない。この場合において、当該検査の結果、その品名、数量、品質又は規格若しくは性能が設計図書の定めと異なり、又は使用に適当でないと認めたときは、受注者は、その旨を直ちに発注者に通知しなければならない。
3 受注者は、支給材料又は貸与品の引渡しを受けたときは、引渡しの日から〇日以内に、発注者に受領書又は借用書を提出しなければならない。
4 受注者は、支給材料又は貸与品の引渡しを受けた後、当該支給材料又は貸与品に種類、品質又は数量に関しこの契約の内容に適合しないこと(第二項の検査により発見することが困難であったものに限る。)などがあり使用に適当でないと認めたときは、その旨を直ちに発注者に通知しなければならない。
5 発注者は、受注者から第二項後段又は前項の規定による通知を受けた場合において、必要があると認められるときは、当該支給材料若しくは貸与品に代えて他の支給材料若しくは貸与品を引き渡し、支給材料若しくは貸与品の品名、数量、品質若しくは規格若しくは性能を変更し、又は理由を明示した書面により、当該支給材料若しくは貸与品の使用を受注者に請求しなければならない。
6 発注者は、前項に規定するほか、必要があると認めるときは、支給材料又は貸与品の品名、数量、品質、規格若しくは性能、引渡場所又は引渡時期を変更することができる。
7 発注者は、前二項の場合において、必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
8 受注者は、支給材料及び貸与品を善良な管理者の注意をもって管理しなければならない。
9 受注者は、設計図書に定めるところにより、工事の完成、設計図書の変更等によって不用となった支給材料又は貸与品を発注者に返還しなければならない。
10 受注者は、故意又は過失により支給材料又は貸与品が滅失若しくはき損し、又はその返還が不可能となったときは、発注者の指定した期間内に代品を納め、若しくは原状に復して返還し、又は返還に代えて損害を賠償しなければならない。
11 受注者は、支給材料又は貸与品の使用方法が設計図書に明示されていないときは、監督員の指示に従わなければならない。
(工事用地の確保等)
第十六条 発注者は、工事用地その他設計図書において定められた工事の施工上必要な用地(以下「工事用地等」という。)を受注者が工事の施工上必要とする日(設計図書に特別の定めがあるときは、その定められた日)までに確保しなければなら
ない。
2 受注者は、確保された工事用地等を善良な管理者の注意をもって管理しなければならない
3 工事の完成、設計図書の変更等によって工事用地等が不用となった場合において、当該工事用地等に受注者が所有又は管理する工事材料、建設機械器具、仮設物その 他の物件(下請負人の所有又は管理するこれらの物件を含む。)があるときは、受 注者は、当該物件を撤去するとともに、当該工事用地等を修復し、取り片付けて、発注者に明け渡さなければならない。
4 前項の場合において、受注者が正当な理由なく、相当の期間内に当該物件を撤去せず、又は工事用地等の修復若しくは取片付けを行わないときは、発注者は、受注者に代わって当該物件を処分し、工事用地等の修復若しくは取片付けを行うことができる。この場合においては、受注者は、発注者の処分又は修復若しくは取片付けについて異議を申し出ることができず、また、発注者の処分又は修復若しくは取片付けに要した費用を負担しなければならない。
5 第三項に規定する受注者のとるべき措置の期限、方法等については、発注者が受注者の意見を聴いて定める。
(設計図書不適合の場合の改造義務及び破壊検査等)
第十七条 受注者は、工事の施工部分が設計図書に適合しない場合において、監督員がその改造を請求したときは、当該請求に従わなければならない。この場合において、当該不適合が監督員の指示によるときその他発注者の責めに帰すべき事由によるときは、発注者は、必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
2 監督員は、受注者が第十三条第二項又は第十四条第一項から第三項までの規定に違反した場合において、必要があると認められるときは、工事の施工部分を破壊して検査することができる。
3 前項に規定するほか、監督員は、工事の施工部分が設計図書に適合しないと認められる相当の理由がある場合において、必要があると認められるときは、当該相当の理由を受注者に通知して、工事の施工部分を最小限度破壊して検査することができる。
4 前二項の場合において、検査及び復旧に直接要する費用は受注者の負担とする。
(条件変更等)
第十八条 受注者は、工事の施工に当たり、次の各号のいずれかに該当する事実を発見したときは、その旨を直ちに監督員に通知し、その確認を請求しなければならない。
一 図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書が一致しないこと
(これらの優先順位が定められている場合を除く。)。二 設計図書に誤謬又は脱漏があること。
三 設計図書の表示が明確でないこと。
四 工事現場の形状、地質、湧水等の状態、施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しないこと。
五 設計図書で明示されていない施工条件について予期することのできない特別な状態が生じたこと。
2 監督員は、前項の規定による確認を請求されたとき又は自ら同項各号に掲げる事実を発見したときは、受注者の立会いの上、直ちに調査を行わなければならない。ただし、受注者が立会いに応じない場合には、受注者の立会いを得ずに行うことができる。
3 発注者は、受注者の意見を聴いて、調査の結果(これに対してとるべき措置を指示する必要があるときは、当該指示を含む。)をとりまとめ、調査の終了後〇日以内に、その結果を受注者に通知しなければならない。ただし、その期間内に通知できないやむを得ない理由があるときは、あらかじめ受注者の意見を聴いた上、当該期間を延長することができる。
4 前項の調査の結果において第一項の事実が確認された場合において、必要があると認められるときは、次の各号に掲げるところにより、設計図書の訂正又は変更を行わなければならない。
一 第一項第一号から第三号までのいずれかに該当し設計図書を訂正する必要があるもの 発注者が行う。
二 第一項第四号又は第五号に該当し設計図書を変更する場合で工事目的物の変更を伴うもの 発注者が行う。
三 第一項第四号又は第五号に該当し設計図書を変更する場合で工事目的物の変更を伴わないもの 発注者と受注者とが協議して発注者が行う。
5 前項の規定により設計図書の訂正又は変更が行われた場合において、発注者は、必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
(設計図書の変更)
第十九条 発注者は、必要があると認めるときは、設計図書の変更内容を受注者に通知して、設計図書を変更することができる。この場合において、発注者は、必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
(工事の中止)
第二十条 工事用地等の確保ができない等のため又は暴風、豪雨、洪水、高潮、地震、
地すべり、落盤、火災、騒乱、暴動その他の自然的又は人為的な事象(以下「天災等」という。)であって受注者の責めに帰すことができないものにより工事目的物等に損害を生じ若しくは工事現場の状態が変動したため、受注者が工事を施工できないと認められるときは、発注者は、工事の中止内容を直ちに受注者に通知して、工事の全部又は一部の施工を一時中止させなければならない。
2 発注者は、前項の規定によるほか、必要があると認めるときは、工事の中止内容を受注者に通知して、工事の全部又は一部の施工を一時中止させることができる。
3 発注者は、前二項の規定により工事の施工を一時中止させた場合において、必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は受注者が工事の続行に備え工事現場を維持し若しくは労働者、建設機械器具等を保持するための費用その他の工事の施工の一時中止に伴う増加費用を必要とし若しくは受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
(著しく短い工期の禁止)
第二十一条 発注者は、工期の延長又は短縮を行うときは、この工事に従事する者の労働時間その他の労働条件が適正に確保されるよう、やむを得ない事由により工事等の実施が困難であると見込まれる日数等を考慮しなければならない。
(受注者の請求による工期の延長)
第二十二条 受注者は、天候の不良、第二条の規定に基づく関連工事の調整への協力その他受注者の責めに帰すことができない事由により工期内に工事を完成することができないときは、その理由を明示した書面により、発注者に工期の延長変更を請求することができる。
2 発注者は、前項の規定による請求があった場合において、必要があると認められるときは、工期を延長しなければならない。発注者は、その工期の延長が発注者の責めに帰すべき事由による場合においては、請負代金額について必要と認められる変更を行い、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
(発注者の請求による工期の短縮等)
第二十三条 発注者は、特別の理由により工期を短縮する必要があるときは、工期の短縮変更を受注者に請求することができる。
2 発注者は、前項の場合において、必要があると認められるときは請負代金額を変更し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
(工期の変更方法)
第二十四条 工期の変更については、発注者と受注者とが協議して定める。ただし、
協議開始の日から〇日以内に協議が整わない場合には、発注者が定め、受注者に通知する。
〇の部分には、工期及び請負代金額を勘案して十分な協議が行えるよう留意して数字を記入する。
2 前項の協議開始の日については、発注者が受注者の意見を聴いて定め、受注者に 通知するものとする。ただし、発注者が工期の変更事由が生じた日(第二十二条の 場合にあっては発注者が工期変更の請求を受けた日、前条の場合にあっては受注者 が工期変更の請求を受けた日)から〇日以内に協議開始の日を通知しない場合には、受注者は、協議開始の日を定め、発注者に通知することができる。
〇の部分には、工期を勘案してできる限り早急に通知を行うよう留意して数字を記入する。
(請負代金額の変更方法等)
第二十五条(A) 請負代金額の変更については、数量の増減が内訳書記載の数量の百分の〇を超える場合、施工条件が異なる場合、内訳書に記載のない項目が生じた場合若しくは内訳書によることが不適当な場合で特別な理由がないとき又は内訳書が未だ承認を受けていない場合にあっては変更時の価格を基礎として発注者と受注者とが協議して定め、その他の場合にあっては内訳書記載の単価を基礎として定める。ただし、協議開始の日から〇日以内に協議が整わない場合には、発注者が定め、受注者に通知する。
(A)は、第三条(A)を使用する場合に使用する。
「百分の〇」の〇の部分には、たとえば、二十と記入する。「〇日」の〇の部分には、工期及び請負代金額を
勘案して十分な協議が行えるよう留意して数字を記入する。
第二十五条(B) 請負代金額の変更については、発注者と受注者とが協議して定める。ただし、協議開始の日から〇日以内に協議が整わない場合には、発注者が定め、受注者に通知する。
(B)は、第三条(B)を使用する場合に使用する。〇の部分には、工期及び請負代金額を勘案して十分な協議が行えるよう留意して数字を記入する。
2 前項の協議開始の日については、発注者が受注者の意見を聴いて定め、受注者に通知するものとする。ただし、請負代金額の変更事由が生じた日から〇日以内に協議開始の日を通知しない場合には、受注者は、協議開始の日を定め、発注者に通知することができる。
〇の部分には、工期を勘案してできる限り早急に通知を行うよう留意して数字を記入する。
3 この約款の規定により、受注者が増加費用を必要とした場合又は損害を受けた場合に発注者が負担する必要な費用の額については、発注者と受注者とが協議して定める。
(賃金又は物価の変動に基づく請負代金額の変更)
第二十六条 発注者又は受注者は、工期内で請負契約締結の日から十二月を経過した 後に日本国内における賃金水準又は物価水準の変動により請負代金額が不適当と なったと認めたときは、相手方に対して請負代金額の変更を請求することができる。
2 発注者又は受注者は、前項の規定による請求があったときは、変動前残工事代金額(請負代金額から当該請求時の出来形部分に相応する請負代金額を控除した額をいう。以下この条において同じ。)と変動後残工事代金額(変動後の賃金又は物価を基礎として算出した変動前残工事代金額に相応する額をいう。以下この条において同じ。)との差額のうち変動前残工事代金額の千分の十五を超える額につき、請負代金額の変更に応じなければならない。
3 変動前残工事代金額及び変動後残工事代金額は、請求のあった日を基準とし、(内訳書及び)(A) [ ]に基づき発注者と受注者とが協議して定める。
(B) 物価指数等に基づき発注者と受注者とが協議して定める。
ただし、協議開始の日から〇日以内に協議が整わない場合にあっては、発注者が定め、受注者に通知する。
(内訳書及び)の部分は、第三条(B)を使用する場合には削除する。
(A)は、変動前残工事代金額の算定の基準とすべき資料につき、あらかじめ、発注者及び受注者が具体的に定め得る場合に使用する。[ ]の部分には、この場合に当該資料の名称(たとえば、国又は国に準ずる機関が作成して定期的に公表する資料の名称)を記入する。〇の部分には、工期及び請負代金額を勘案して十分な協議が行えるよう留意して数字を記入する。
4 第一項の規定による請求は、この条の規定により請負代金額の変更を行った後再度行うことができる。この場合において、同項中「請負契約締結の日」とあるのは、
「直前のこの条に基づく請負代金額変更の基準とした日」とするものとする
5 特別な要因により工期内に主要な工事材料の日本国内における価格に著しい変動を生じ、請負代金額が不適当となったときは、発注者又は受注者は、前各項の規定によるほか、請負代金額の変更を請求することができる。
6 予期することのできない特別の事情により、工期内に日本国内において急激なインフレーション又はデフレーションを生じ、請負代金額が著しく不適当となったときは、発注者又は受注者は、前各項の規定にかかわらず、請負代金額の変更を請求することができる。
7 前二項の場合において、請負代金額の変更額については、発注者と受注者とが協議して定める。ただし、協議開始の日から〇日以内に協議が整わない場合にあって
は、発注者が定め、受注者に通知する。
〇の部分には、工期及び請負代金額を勘案して十分な協議が行えるよう留意して数字を記入する。
8 第三項及び前項の協議開始の日については、発注者が受注者の意見を聴いて定め、受注者に通知しなければならない。ただし、発注者が第一項、第五項又は第六項の 請求を行った日又は受けた日から〇日以内に協議開始の日を通知しない場合には、受注者は、協議開始の日を定め、発注者に通知することができる。
〇の部分には、工期を勘案してできる限り早急に通知を行うよう留意して数字を記入する。
(臨機の措置)
第二十七条 受注者は、災害防止等のため必要があると認めるときは、臨機の措置をとらなければならない。この場合において、必要があると認めるときは、受注者は、あらかじめ監督員の意見を聴かなければならない。ただし、緊急やむを得ない事情があるときは、この限りでない。
2 前項の場合においては、受注者は、そのとった措置の内容を監督員に直ちに通知しなければならない。
3 監督員は、災害防止その他工事の施工上特に必要があると認めるときは、受注者に対して臨機の措置をとることを請求することができる。
4 受注者が第一項又は前項の規定により臨機の措置をとった場合において、当該措置に要した費用のうち、受注者が請負代金額の範囲において負担することが適当でないと認められる部分については、発注者が負担する。
(一般的損害)
第二十八条 工事目的物の引渡し前に、工事目的物又は工事材料について生じた損害その他工事の施工に関して生じた損害(次条第一項若しくは第二項又は第三十条第一項に規定する損害を除く。)については、受注者がその費用を負担する。ただし、その損害(第五十八条第一項の規定により付された保険等によりてん補された部分を除く。)のうち発注者の責めに帰すべき事由により生じたものについては、発注者が負担する。
(第三者に及ぼした損害)
第二十九条 工事の施工について第三者に損害を及ぼしたときは、受注者がその損害を賠償しなければならない。ただし、その損害(第五十八条第一項の規定により付された保険等によりてん補された部分を除く。以下この条において同じ。)のうち発注者の責めに帰すべき事由により生じたものについては、発注者が負担する。
2 前項の規定にかかわらず、工事の施工に伴い通常避けることができない騒音、振
動、地盤沈下、地下水の断絶等の理由により第三者に損害を及ぼしたときは、発注者がその損害を負担しなければならない。ただし、その損害のうち工事の施工につき受注者が善良な管理者の注意義務を怠ったことにより生じたものについては、受注者が負担する。
3 前二項の場合その他工事の施工について第三者との間に紛争を生じた場合においては、発注者及び受注者は協力してその処理解決に当たるものとする。
(不可抗力による損害)
第三十条 工事目的物の引渡し前に、天災等(設計図書で基準を定めたものにあっては、当該基準を超えるものに限る。)発注者と受注者のいずれの責めにも帰すことができないもの(以下この条において「不可抗力」という。)により、工事目的物、仮設物又は工事現場に搬入済みの工事材料若しくは建設機械器具(以下この条において「工事目的物等」という。)に損害が生じたときは、受注者は、その事実の発生後直ちにその状況を発注者に通知しなければならない。
2 発注者は、前項の規定による通知を受けたときは、直ちに調査を行い、同項の損害(受注者が善良な管理者の注意義務を怠ったことに基づくもの及び第五十八条第一項の規定により付された保険等によりてん補された部分を除く。以下この条において「損害」という。)の状況を確認し、その結果を受注者に通知しなければならない。
3 受注者は、前項の規定により損害の状況が確認されたときは、損害による費用の負担を発注者に請求することができる。
4 発注者は、前項の規定により受注者から損害による費用の負担の請求があったときは、当該損害の額(工事目的物等であって第十三条第二項、第十四条第一項若しくは第二項又は第三十八条第三項の規定による検査、立会いその他受注者の工事に関する記録等により確認することができるものに係る損害の額に限る。)及び当該損害の取片付けに要する費用の額の合計額(以下この条において「損害合計額」という。)のうち請負代金額の百分の一を超える額を負担しなければならない。ただし、災害応急対策又は災害復旧に関する工事における損害については、発注者が損害合計額を負担するものとする。
5 損害の額は、次の各号に掲げる損害につき、それぞれ当該各号に定めるところにより、(内訳書に基づき)算定する。
(内訳書に基づき)の部分は、第三条(B)を使用する場合には、削除する。
一 工事目的物に関する損害
損害を受けた工事目的物に相応する請負代金額とし、残存価値がある場合にはその評価額を差し引いた額とする。
二 工事材料に関する損害