「MRSA 院内感染対策委員会」及び「看護科院内感染対策委員会」を設置している。
平成 15 年度
包括外部監査の結果に関する報告
「病院事業」
平成 16 年2月
北九州市包括外部監査人公認会計士 x x x x
xx 16 年2月 24 日
北九州市包括外部監査人
xx xx
xx15 年4月1日付包括外部監査契約書第8条に基づき外部監査の結果について別紙のとおり報告いたします。
包括外部監査の結果に関する報告
(病院事業)目 次
第1.外部監査の概要 1
1.外部監査の種類 1
2.選定した特定の事件(テーマ) 1
3.事件を選定した背景及びその理由 1
4.外部監査の方法 2
5.外部監査の実施期間 2
6.外部監査人補助者 2
第2.病院事業の概要 3
1.事業の目的と沿革 3
2.病院事業の運営 3
3.決算・業務実績等の分析 5
第3.外部監査の結果 11
Ⅰ.組織及び運営関連 12
1.病院の組織 12
2.xx病院の廃止 15
Ⅱ.固定資産関連 16
1.固定資産の現物管理 16
2.固定資産に関する会計処理 20
3.情報システムサーバーのセキュリティ 21
Ⅲ.診療報酬関連 22
1.診療報酬請求事務 22
2.その他診療報酬請求事務 25
Ⅳ.債権管理関連 26
1.外来未収金のxx 26
2.未収金管理 28
Ⅴ.材料費関連 31
Ⅵ.委託費関連 37
1.委託契約業務 37
2.食事提供業務委託 39
3.保育所業務委託等 40
4.各システム保守業務の委託 41
5.委託業務の検収・確認 42
Ⅶ.人件費関連 43
Ⅷ.繰入金関連 46
第4.利害関係 50
本文中の表内の数値については、四捨五入にて端数処理を行っており、合計数値と内訳数値とに相違がある場合がある。
第1.外部監査の概要
1.外部監査の種類
地方自治法第 252 条の 37 第1項及び第2項に基づく包括外部監査
2.選定した特定の事件(テーマ)
(1)外部監査対象
病院事業
(2)外部監査対象期間
自 平成 14 年4月1日 至 平成 15 年3月 31 日
ただし、必要と認めた範囲において、上記平成 14 年度以外の各年度分についても一部監査の対象とした。
3.事件を選定した背景及びその理由
公的病院事業の多くは、市民生活に密接な行政サービスでありながら、厳しい経営が継続している。そのため、継続的に高度なサービスを提供するのに困難を伴う状況に陥っている。
北九州市は、現在、4病院を運営して、良質な医療サービスを提供し、地域医療の中心的役割を果たしている。
しかしながら、5市合併前の名残から、市立として複数の病院を経営しており、過去、赤字再建団体となった経緯もある。
また、国の医療費抑制策の実施等により、さらに病院の経営環境はより厳しい状況となっている。平成 15 年度予算では、病院事業の 10 億円を超える経営収支の赤字と
20 億円近くの企業債償還が見込まれている。
今後も、これまでと同様、適切な経営管理が求められている。
一方、市は、高齢化が著しく、市民(国民健康保険被保険者1人当り)の医療費は政令指定都市の中でも高額の都市のひとつである。このように、経済的な負担も市民にとって大きく市民生活への影響も大きいものと判断できる。さらに、市政要望調査では、保健・医療の充実項目が上位にランクされる等、市民の期待も大きい。
このように、医療サービスを市民の期待に応えつつ、継続的に高度で良質な提供を実現することは、市民生活に最も重要な行政サービスの課題のひとつでもあるため、当該事件を選定する。
4.外部監査の方法
(1)外部監査の視点
当該事件について、次のような着眼点で監査を実施した。
① 事務事業の財務事務は、関係諸法令に従って、合規に執行されているか。
② 事務事業の経営管理事務は、経済性・効率性及び有効性の観点から、合理的かつ適切に執行されているか。
なお、具体的には次のような視点を有している。
③ 診療報酬請求の事務は適切に行われているか。また、医業未収金の債権管理は適切に行われているか。
④ 人事に関する事務は適切に行われているか。
⑤ 外部委託業務等の契約事務は適切に行われているか。
⑥ 医療品や診療材料の購入手続、及びたな卸資産の管理は適切に行われているか。固定資産の管理事務は適切か。
⑦ 一般会計からの繰入金は地方公営企業法等に従った妥当な内容であるか。
⑧ 経営状態はどのような状況にあるか。それに対応する、経営改善計画の実施状況や病院局の経営体制はどうか。
5.外部監査の実施期間
自 平成 15 年6月 18 日 至 平成 16 年2月 24 日
6.外部監査人補助者
公認会計士 | xx | xx |
同 | xx | xx |
同 | xx | xx |
同 | xx | xx |
会計士補 | xx | xx |
その他 | x x | x |
同 | xx | xx |
同 | x x | x |
第2.病院事業の概要
1.事業の目的と沿革
xxxxxxx 00 年、xx市、xx市、xx市、八幡市、xx市の5市合併により
誕生し、病院事業については旧衛生局が所管していた。しかし、昭和 41 年度決算で不
良債務が 10 億円に達したため、地方公営企業法第 49 条に基づく財政再建の申出を行
った。これを受け、昭和 42 年に地方公営企業法を全部適用し、病院事業を統括するための「事務の一元化」と「管理体制の強化」を柱に病院局が設置された。旧5市がそれぞれ経営していた五つの総合病院と、一部事務組合で持っていた二つの結核療養所を引き継いだ病院局は、財政再建計画に基づき昭和 42 年度より 11 年間にわたって財政再建に取り組んだ。この間、市は「北九州市立病院基本計画審議会」を発足させ、市における医療体制の在るべき姿を展望しながら、市立病院の位置付けの検討がなされた。
さらに、平成2年、長期的視点に立った総合的な保健及び医療の供給体制を確立するために「北九州市保健医療総合検討委員会」を発足させ、救急医療及び市立病院機能の在り方の検討を行った。
病院局が引き継いだ病院のうち結核療養所は、昭和 48 年に一ヵ所に統合、さらに平
成5年にはxx病院に結核病棟を併設することにより廃止した。また、平成 14 年にxx病院を廃止した。
現在は、医療センター、xx病院、xx病院、八幡病院の四病院であり、許可病床数は、合計 1,491 床(一般:1,370 床、療養:50 床、結核:55 床、感染症:16 床)である。
2.病院事業の運営
現在、病院局には、医療センター、xx病院、xx病院、八幡病院及び看護専門学校が属している。各病院の院長は、それぞれの病院の管理・運営の責任を負うが、医療センターの院長は同時に他の市立病院の病務に関し、各院長に助言及び指導を行うことになっている。また、医療センターには、他の市立病院の院長に相当する総括副院長を置き、医療センターの管理・運営を補佐する仕組みになっている。
各病院の基幹となる医療センターにおいては、管理・運営の実際は、院長、総括副院長、副院長、看護部長及び事務局長で構成する「幹部会」で協議し、院長の責任において実行に移すことになる。また、合理的に運営するためには構成員の意向を充分に反映する必要があり、運営を協議するために「運営協議会」を設け、毎月開催している。さらに、病院機能を円滑に遂行するため、運営協議会の求めに応じて各種の小委員会を常設し、各部門業務の分析、運用の合理化・効率化、設備や将来設計に関する具体的な企画等を求めることとしている。
また、病院の安全を確保し、倫理的責任を明確にし、業務の改善等に資するため、運営協議会とは別に「薬事委員会」「院内感染対策委員会」「医療安全対策委員会」等の委員会が設置されている。
医療センター
xx病院
xx病院
八幡病院
看護専門学校
事務局
看護科
薬剤科
臨床検査料
各診療科
経理課
業務課
次長
病院局長
総務課
事務局長
副院長
副院長
副院長
院長
副院長
副院長
院長
事務局長
看護部長
副院長
副院長
総括副院長
校長
院長
<病院局組織図>
17科
八幡病院
11科
xx病院
8科
xx病院
医療センター 21科
院長 | 副院長 | |
3.決算・業務実績等の分析
(1)損益計算書
病院事業の経営状況は、総務省自治財政局「平成 14 年度地方公営企業決算の概況」によると、全国的にも経常損失が生じた事業数が 63.5% と半数を上回っている等、近年の医療制度改革等の中、一段と厳しくなっている。
市病院事業の損益計算書によれば、平成 14 年度の純損益はおよそ9億円の損失となっており、前年度よりは縮小している。純損益の年度間比較による損失縮小
(1,086,427 千円)の要因は、主としてxx病院の廃止に伴うものである。全体としては、給与費の圧縮等で費用の減少は見られるものの、患者数の減少等により収益の減少もあり、平成 14 年度は、以前の年度と同様に、医業損益、経常損益、純損益のすべての利益において赤字となっている。
医業費用に対する医業収益の比率は平成 14 年度では 92.0% と前年度の 90.2%より若干の改善が見られ、全国の地方公営企業病院事業平均(以下「全国平均」) 90.3%よりも多少上回っている。
一方、経常収支比率は 93.5%と全国平均 97.2% よりも下回っている。これは、支払利息の負担が大きい等が要因となっている。
経常損益において、平成 13 、14 年度の決算で 20 億円程度の赤字を計上している。市立病院は日々の医療行為の尽力によって、市民から大きな安心と信頼を得ているところであるが、赤字であることを鑑みると高品質の医療を継続的に提供できるか懸念がある。病院事業には、救急医療等の不採算医療、特殊・高度医療に対応する等、公共性の強い事業の特殊性があり、そのため、不採算となっている面もある。しかし、地方公営企業法上、経費は、一般会計等において負担するものを除き、事業の経営に伴う収入をもって充てなければならない(第 17 条の2第2項)とされているので、経営効率化を促進し、経営基盤の強化を引き続き努め、取り巻く環境の変化に対応していくことが必要である。
表Ⅰ-1 損益計算書推移 (単位:千円)
科 目 | 平成 14 年度 | 平成 13 年度 | 増 減 |
1 医 業 収 益 | 22,264,787 | 23,108,700 | △ 843,913 |
(1) 入院収益 | 15,345,537 | 15,803,643 | △ 458,108 |
(2) 外来収益 | 4,831,521 | 5,179,828 | △ 348,307 |
(3) 他会計負担金 | 1,478,945 | 1,460,891 | 18,054 |
(4) 補助金 | 138,835 | 137,175 | 1,660 |
(5) その他医業収益 | 469,949 | 527,163 | △ 57,214 |
2 医 業 x x 益 | 2,315,317 | 2,411,006 | △ 95,689 |
(1) 受取利息及び配当金 | 199 | 192 | 7 |
(2) 他会計負担金 | 1,675,335 | 1,770,810 | △ 95,475 |
(3) 他会計補助金 | 349,272 | 355,920 | △ 6,648 |
(4) 補助金 | 214 | 0 | 214 |
(5) 患者外給食収益 | 3,334 | 3,563 | △ 229 |
(6) その他医業外収益 | 286,963 | 280,521 | 6,442 |
3 特 別 利 益 | 1,248,212 | 33,016 | 1,215,196 |
(1) 固定資産売却益 | 1,223,408 | 0 | 1,223,408 |
(2) 過年度損益修正益 | 24,804 | 33,016 | △ 8,212 |
4 医 業 費 用 | 24,200,755 | 25,614,283 | △ 1,413,528 |
(1) 給与費 | 14,052,239 | 15,315,766 | △ 1,263,527 |
(2) 材料費 | 5,011,067 | 5,157,609 | △ 146,542 |
(3) 経費 | 3,160,170 | 3,606,673 | △ 446,503 |
(4) 減価償却費 | 1,517,279 | 1,374,304 | 142,975 |
(5) 資産減耗費 | 397,481 | 96,576 | 300,905 |
(6) 研究研修費 | 62,519 | 63,355 | △ 836 |
5 医 業 外 費 用 | 2,075,805 | 1,798,472 | 277,333 |
(1) 支払利息及び企業債取扱諸費 | 1,088,355 | 1,084,100 | 4,255 |
(2) 患者外給食委託費 | 63 | 490 | △ 427 |
(3) 雑損失 | 790,404 | 543,269 | 247,135 |
(4) 看護師養成費 | 196,983 | 170,613 | 26,370 |
6 特 別 損 失 | 456,140 | 130,779 | 325,361 |
(1) 固定資産売却損 | 335,092 | 0 | 335,092 |
(2) 過年度損益修正損 | 121,048 | 130,779 | △ 9,731 |
医 業 損 益 ( 1 - 4 ) | △1,935,968 | △2,505,583 | 569,615 |
経常損益 {( 1 + 2 ) - ( 4 + 5 )} | △1,696,456 | △1,893,049 | 196,593 |
純損益 {( 1 ~ 3 ) - ( 4 ~ 6 )} | △904,384 | △1,990,812 | 1,086,428 |
(2)貸借対照表
平成 14 年度は固定資産が 5,489,213 千円増加している。これはxx病院の移転
改築及びxx病院改築工事等によるものである。また、流動資産が 3,537,452 千円増加している。これは主として企業債の受入れやxx病院の売却によるものである。
一方、流動負債は、増改築事業費及び資産購入費に係る未払金等を原因として、 2,108,989 千円増加している。また、資本金は企業債元金償還のための出資金受入
れによる自己資本金の増加 957,903 千円や施設の改築、設備増強のための企業債借入れによる借入資本金の増加 6,870,684 千円によって大きく増加している。
次に、貸借対照表では、健全性の観点からの分析を行う。
まず、地方公営企業法第 49 条において、適用することができる財政再建企業の要件として、不良債務の発生がある。不良債務とは、政令で定めるところにより計算した、流動負債の額が流動資産の額を超える場合のその超過額を指す。ここで、一般に企業財務の安定度を計る流動比率(流動資産額×100 /流動負債額)をみると、平成 14 年度で 123.2%、平成 13 年度で 99.5% となっている。不良債務が発生しているかどうかは 100%を下回っているかどうかで判別できる。平成 13 年度は 99.5%で不良債務が発生しているが、一方、平成 14 年度は主として、xx病院の廃止(固定資産の売却(資産の流動化と資産の売却益の実現))をはじめ、従前から取り組んでいた様々な経営改善策の実施により、123.2% と経営が大幅に改善した。
流動比率に改善が認められた平成14 年度でも純損益は9億円程度の赤字であるため、累積欠損金は 200 億円程度となっており、この額は依然として年々、膨らんでいる。
全国の病院事業では累積欠損金を有する事業が平成 14 年度において 561 事業 (全事業のうち 73.7%)と前年度より 24 事業増加している。同様に、市病院事業においても財務の内容が悪化しているため、より一層の健全化が必要である。
表Ⅰ-2 貸借対照表推移 (単位:千円)
平成 14 年度 | 平成 13 年度 | 増 減 | ||||||
固 定 資 産 (1) 有形固定資産ア 土地 イ 建物 ウ 構築物 エ 機器備品オ 車輌 カ 放射性同位元素キ 建設仮勘定 (2) 無形固定資産 電話加入権 流 動 資 産 (1) 現金預金 (2) 未収金 (3) 貯蔵品 (4) 短期貸付金 (5) 前払金 (6) 保管有価証券 | 28,029,695 | 22,540,482 | 5,489,213 | |||||
28,025,179 | 22,535,708 | 5,489,471 | ||||||
131,399 | 208,641 | △ 77,242 | ||||||
18,647,315 | 17,138,397 | 1,508,918 | ||||||
325,853 | 239,077 | 86,776 | ||||||
4,154,767 | 3,518,678 | 636,089 | ||||||
27,641 | 14,350 | 13,291 | ||||||
0 | 231 | △ 231 | ||||||
4,738,205 | 1,416,334 | 3,321,871 | ||||||
4,516 | 4,774 | △ 258 | ||||||
4,516 | 4,774 | △ 258 | ||||||
7,492,647 | 3,955,195 | 3,537,452 | ||||||
3,474,672 | 162,175 | 3,312,497 | ||||||
3,930,825 | 3,721,284 | 209,541 | ||||||
71,150 | 54,736 | 16,414 | ||||||
0 | 0 | 0 | ||||||
0 | 0 | 0 | ||||||
16,000 | 17,000 | △ 1,000 | ||||||
資 | 産 | 合 | 計 | 35,522,343 | 26,495,677 | 9,026,666 | ||
流 動 負 債 (1) 一時借入金 (2) 未払金 (3) 前受金 (4) その他流動負債 | 6,083,623 0 6,027,877 6,425 49,320 | 3,974,633 230,000 3,659,922 7,200 77,511 | 2,108,990 △ 230,000 2,367,955 △ 775 △ 28,191 | |||||
負 債 合 計 | 6,083,623 | 3,974,633 | 2,108,990 | |||||
資 本 金 | 48,586,110 | 40,757,524 | 7,828,586 | |||||
(1) 自己資本金 | 17,825,193 | 16,867,290 | 957,903 | |||||
(2) 借入資本金 | 30,760,917 | 23,890,233 | 6,870,684 | |||||
剰 余 金 | △ | 19,147,390 | △ | 18,236,480 | △ 910,910 | |||
(1) 資本剰余金 | 914,214 | 920,741 | △ 6,527 | |||||
ア 受贈財産評価額 | 81,349 | 87,933 | △ 6,584 | |||||
イ 寄附金 | 500 | 0 | 500 | |||||
ウ その他資本剰余金 | 832,365 | 832,807 | △ 442 | |||||
(2) 利益剰余金 | △ | 20,061,605 | △ | 19,157,220 | △ 904,385 | |||
当年度未処分利益剰余金 | △ | 20,061,605 | △ | 19,157,220 | △ 904,385 | |||
資 | x | x | x | 29,438,720 | 22,521,044 | 6,917,676 | ||
負 債・資 x x x | 35,522,343 | 26,495,677 | 9,026,666 |
(3)病院別の業務実績
表Ⅰ-3 病院別業務の実績 (単位:床、%、人)
項 目 | 医療センター | xx病院 | xx病院 | 八幡病院 | xx病院 | 計 | |||
稼働病床数 | 14 年度 | 636 | 155 | 210 | 400 | ― | 1,401 | ||
13 年度 | 636 | 155 | 210 | 400 | 75 | 1,476 | |||
病床利用率 | 14 年度 | 87.9 | 77.0 | 82.5 | 90.8 | ― | 86.7 | ||
13 年度 | 84.3 | 84.2 | 87.1 | 95.8 | 77.1 | 87.4 | |||
患 者 数 | 入 院 | 計 | 14 年度 | 203,980 | 43,543 | 63,213 | 132,492 | ― | 443,228 |
13 年度 | 195,658 | 47,658 | 66,759 | 139,891 | 21,092 | 471,058 | |||
一日 平均 | 14 年度 | 558.8 | 119.3 | 173.2 | 363.0 | ― | 1,214.3 | ||
13 年度 | 536.1 | 130.5 | 182.9 | 383.3 | 57.8 | 1,290.6 | |||
外 来 | 計 | 14 年度 | 336,836 | 69,352 | 121,428 | 195,069 | 0 | 722,685 | |
13 年度 | 357,500 | 82,106 | 141,103 | 208,354 | 55,590 | 844,653 | |||
一日 平均 | 14 年度 | 1,374.8 | 283.0 | 495.7 | 796.2 | 0.0 | 2,949.7 | ||
13 年度 | 1,459.2 | 335.1 | 575.6 | 850.4 | 226.9 | 3,447.6 |
表Ⅰ-4 平成 14 年度来院患者の居住地別割合
(入院)
医療センター | xx病院 | xx病院 | 八幡病院 | |
xx区 | 15.8% | 65.4% | 0.2% | 0.6% |
xx区 | 2.9% | 2.4% | 92.9% | 7.5% |
xx区 | 5.3% | 2.8% | 1.2% | 4.1% |
xx北区 | 32.1% | 10.5% | 0.5% | 2.0% |
xxx区 | 19.9% | 5.8% | 0.5% | 0.9% |
xxx区 | 2.3% | 2.8% | 0.3% | 20.2% |
八幡西区 | 1.8% | 2.1% | 2.4% | 40.1% |
その他 | 19.9% | 8.2% | 2.0% | 24.6% |
計 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
(外来)
医療センター | xx病院 | xx病院 | 八幡病院 | |
xx区 | 11.6% | 86.2% | 0.3% | 0.5% |
xx区 | 2.3% | 0.6% | 90.7% | 8.3% |
xx区 | 4.8% | 1.0% | 1.4% | 4.6% |
xx北区 | 34.0% | 3.9% | 0.9% | 2.2% |
xxx区 | 24.2% | 3.1% | 0.5% | 1.2% |
xxx区 | 2.3% | 0.8% | 0.5% | 19.8% |
八幡西区 | 2.4% | 0.7% | 2.9% | 42.0% |
その他 | 18.4% | 3.7% | 2.8% | 21.6% |
計 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
(資料)病院局資料より作成
(注) 患者数は入院、外来とも延べ患者数ではなく実患者数を使用。
xx病院とxx病院は所在区の地元からの患者中心である。医療センターと八幡病院も地元の比率が高いが、他区あるいは市外等広域からの来院が特徴である。
表Ⅰ-5 業務実績の年度比較
項 目 | 単位 | 14 年度 | 13 年度 | 対前年度比較(△減) | |||||||||
増 減 | 比率(%) | ||||||||||||
稼 | 動 | 病 | 床 | 数 | 床 | 1,401 | 1,476 | 0 | 0 | ||||
患 者 数 | 入院 | 年 計 | 人 | 443,228 | 471,058 | △ 27,830 | △ | 5.9 | |||||
1日平均 | 人 | 1,214 | 1,291 | △ 77 | △ | 6.0 | |||||||
外来 | 年 計 | 人 | 722,685 | 844,653 | △ 121,968 | △ | 14.4 | ||||||
1日平均 | 人 | 2,950 | 3,448 | △ 498 | △ | 14.4 | |||||||
計 | 年 計 | 人 | 1,165,913 | 1,315,711 | △ 149,798 | △ | 11.4 | ||||||
1日平均 | 人 | 4,164 | 4,739 | △ 575 | △ | 12.1 | |||||||
病 | 床 | 利 | 用 | 率 | % | 86.7 | 87.4 | △ 0.7 | ― | ||||
入院外来患者比較 | % | 163.1 | 179.3 | △ 16.2 | ― | ||||||||
職 | 員 | x | x | 1,182 | 1,263 | △ 81 | △ | 6.4 |
表Ⅰ-6 病院別経営収支の年度比較 (単位:千円)
項 目 | 医療センター | x x | x x | 八 幡 | x x | x | |
総収益 | 14 年度 | 12,462,161 | 1,596,844 | 2,530,337 | 7,533,819 | ― | 24,123,161 |
13 年度 | 12,002,420 | 1,697,560 | 2,582,687 | 7,859,315 | 930,044 | 25,072,026 | |
増 減 | 459,741 | △ 100,716 | △ 52,350 | △ 325,496 | △ 930,044 | △ 948,865 | |
総費用 | 14 年度 | 12,457,996 | 2,781,306 | 3,298,250 | 7,168,343 | ― | 25,705,895 |
13 年度 | 11,912,859 | 2,523,833 | 3,042,315 | 7,359,066 | 1,957,184 | 26,795,257 | |
増 減 | 545,137 | 257,473 | 255, 935 | △ 190,723 | △1,957,184 | △1,089,362 | |
純損益 | 14 年度 | 4,166 | △1,184,462 | △ 767,913 | 365,476 | ― | △1,582,734 |
13 年度 | 89,562 | △ 826,273 | △ 459,628 | 500,249 | △1,027,140 | △1,723,230 | |
増 減 | △ 85,396 | △ 358,189 | △ 308,285 | △ 134,773 | 1,027,140 | 140,496 |
注.病院局の管理統括部門及び看護専門学校の数値は除く。
医療センターは入院収益、外来収益が増となったが、建物減価償却費、薬品費、職員数の増に伴う給料の増により、黒字額が減少している。xx病院は、職員の減に伴い給料、退職給与金が減となったが、入院収益、外来収益の減、結核病棟経費にかかる一般会計からの繰入金の減により赤字額が増加している。xx病院は、入院収益、外来収益の減により赤字額が増加している。八幡病院は、診療材料費、薬品費が減となったが、入院収益及び外来収益の減により、黒字額が減少している。
第3.外部監査の結果
今回の包括外部監査の目的は、病院事業について内容を把握し、法令等に従って事務が適正かつ効果的に執行されているかを確かめることにある。そしてこの目的は、法令、条例、規則、要綱、要領等定められた基準(以下、「法令等定められた基準」という。)への合規性・準拠性を検証し、監査を実施することにより達成される。包括外部監査は、第xx的に合規性監査であることを踏まえ、監査結果の報告書(以下、「結果報告書」という。)ではこの趣旨に沿うもののみを記載している。
また、監査実施時に、経済性、効率性及び有効性の観点から組織又はその運営の合理化に資するため必要と認めた事項につき、地方自治法第 252 条の 38 第2項に基づく意見として、「包括外部監査の結果に関する報告に添えて提出する意見書」(以下、「意見書」という。)を結果報告書に添えて申し述べる。
Ⅰ.組織及び運営関連
1.病院の組織
(1)概 要
病院の運営は法令等に従って行われている。運営には意思決定を要し、組織を 構成しながら、合議を含む意思決定事項の分担者を法令等によって規定している。病院事業を市長に代わり代表する病院事業管理者(病院局長)は、地方公営企
業法(以下「地公企法」という。)において、その業務執行のための地位と権限及び担任する事務が規定されている。同時に、地公企法と市病院局事務分掌規程(以下「事務分掌規程」という。)によって、その権限において組織を編成し事務を分掌させることも規定されている。
また、管理者以下の地位にあるものは、市病院局事務専決規程等においてその事項が定められている。
ところで、意思決定においては合議によるもの、単独によるもの、いずれにおいても、その基礎となる報告を受け、情報収集し、意見調整を図り最善の努力をすることが求められる。そのため、病院ごとに複数の委員会組織が編成され、各種委員会では、その協議事項又は目的、組織構成者、開催頻度等を規程や規約等で定め、適正な運営を図ろうとしている。
また、健康保険法等において、診療報酬の算定点数項目として医療安全管理体制に関する基準が定められている。例えば、安全管理の責任者等で構成される委員会が月1回程度開催されている等の基準を満たすとともに社会保険事務所へ所定の届出を行っていれば、入院基本料を請求する上で減算されないことになっている。このように、指針、制度及び体制等の整備状況は診療報酬にも影響があるために重要である。
ここで、八幡病院とxx病院の主な委員会に絞って、各委員会とその運営状況について概要を説明する。
① 八幡病院
当該病院では、現在、幹部会をはじめ、23 の委員会がある。そのうち病院運営上重要と認められる次の四つの委員会とその運営状況についてまとめる。
ア.幹部会
幹部会は、院長が委員長になって他 10 名の委員で構成されている。幹部会の規約はないが、毎月定例の日に開催されている。議題は、毎回業務状況報告とその他に分けられ、業務状況報告では、患者数・稼働額調、紹介率算定表や平均在院日数等が報告される。
イ.運営協議会
運営協議会も幹部会と同様、院長が委員長となり、33 名の委員が加わり、毎月定例の日に会議が行われ、病院運営に関する事項や病院内の協力体制に関する事項等を中心に協議され、幹部会で決まったことの周知徹底が図られている。
ウ.医療安全管理委員会
当該病院では、平成 14 年9月に「医療安全管理指針」を定め、医療事故をなくし、患者が安心して安全な医療を受けられる環境を整えることを目標に、医療従事者の個人レベルでの事故防止対策と医療施設全体の組織的な事故防止対策の二つの対策を推し進めている。
医療安全管理委員会はこの指針の中で設置がうたわれており、同委員会は院長を委員長とし、内科系の副院長を医療安全推進者と定め、この他8名の委員で構成されている。
また、委員会の中の下部組織として、「リスクマネージメント部会」を設置するとともに、リスクマネージメント部会運営要綱を定めている。
医療事故の報告は所定の「インシデント・アクシデントレポート」により行われているが、リスクマネージメント部会では報告された事例について検討し、医療の安全管理上有益と思われるものについて、再発防止の観点から、組織としての改善に必要な防止対策を作成するとともに、改善策が各部門において確実に実施され、かつ安全対策として有効に機能しているかを点検・評価することになっている。
また、指針では、安全管理のために輸血マニュアル等の「安全管理マニュアル」を整備するとともに、医療安全管理のための研修等も定めている。
エ.院内感染対策委員会
八幡病院では、院内感染対策委員会を設置するとともに、さらに、その下に
「MRSA 院内感染対策委員会」及び「看護科院内感染対策委員会」を設置している。
院内感染対策委員会は毎月定例の日に開催されているが、下部の二つの委員会は1カ月に1回開催されている。
② xx病院
若松病院には、局幹部会等病院内の職員が出席する病院局主催の会議体や医局会等病院内の職員のほとんどが出席する定期会議体を除いて 20 の委員会が設置されている。そのうち、病院運営上重要と認められる次の四つの委員会とその運営状況についてまとめる。
ア.院内幹部会
院内幹部会は病院の幹部5名に事務局から書記1名を加えて構成されており、院長が議長となって毎月2回定例の日に開催されている。会議では、主として 病院全般に係る重要な事項を取り上げて協議している。
イ.薬事委員会
薬事委員会は院長、副院長、内科部長、泌尿器科部長、薬剤科正副部長に事
務局長が加わって構成されており、毎月1回定例の日に開催されている。
薬事委員会は病院局長の通達で定められた薬事委員会設置要綱及び運営方針に従って設置・運営されており、薬品採用、購入停止及び院内加工製剤の使用については、定められた手続に従って処理することとなっている。
ウ.経営改善委員会
経営改善委員会は院長、副院長の他、各科部長・技師長・xxx看護師長に事務局3名が加わって構成されており、毎月1回定例の日に開催されている。同委員会では、毎月の科別目標値と稼働額実績についての報告が行われてい
る。
エ.医療安全管理委員会
医療安全管理委員会は経営改善委員会のメンバーに副部長や各病棟の看護師長や栄養士が加わって構成されており、毎月1回定例の日に開催されている。委員会の議題はほとんど各科からのインシデント報告であり、「インシデント
報告書」に基づいて行われていた。
(2)実施した監査手続
① 八幡病院及びxx病院の主な委員会について、事務責任者に質問し、委員会組織とその運用状況について把握した。
② 八幡病院及びxx病院の主な委員会において、市病院局事務専決規程や各種委員会の規程や規約等に則って、組織や審議等の事務がなされているか、議事録等の関連書類を閲覧しながら確かめた。
(3)結 果
八幡病院及びxx病院の主な委員会について、特に指摘すべき事項は認められなかった。
2.xx病院の廃止
(1)概 要
市立5病院の中でも特に収支の悪いxx病院について、市ではその在り方を検討してきたが、最終的に平成 14 年3月末で廃止する方針を固め、平成 13 年5月
1日に廃止方針を公表した。
その後、2団体から廃止方針の撤回を求める陳情が市議会になされたが、平成 13 年6月の定例市議会で「北九州市病院事業の設置等に関する条例」の改正案が
可決され、xx病院の平成 14 年3月末での廃止が決定した。また、同市議会においては、「市立xx病院廃止後の医療水準の確保を求める決議」も可決された。
このような中、平成 13 年7月に「市立xx病院跡地利用検討委員会」が設置され、委員会の協議の結果、“医療機関として民間に移譲することが最も望ましい”という報告書が出された。
これを受け、市ではxx病院を移譲することとし、平成 13 年 12 月に移譲先公
募要綱を発表、応募した3法人の中から、平成 14 年1月 24 日に医療法人共愛会が移譲先として決定された。
市病院局と医療法人共愛会との間で、平成 14 年4月1日に土地・建物等の売買契約が締結され、同日引渡しが行われた。
(2)実施した監査手続
① xx病院にかかる資産売却を含む廃止決定の経緯と手続について、病院局事務担当者より質問を行い、全体の概要を把握した。
② xx病院に廃止に伴う資産売却に関し、土地、建物及び物品の売買に関する決裁書、売買契約書、不動産鑑定評価書、領収済通知書及び振替伝票等関連書類を入手し、事務手続の妥当性、書類間の整合性を検証した。
(3)結 果
xx病院の廃止決定から民間への移譲に至るまでの手続を検証した結果、適正に処理されているものと認めた。
Ⅱ.固定資産関連
1.固定資産の現物管理
(1)現物との照合
① 概 要
市病院局会計規程(以下、「会計規程」という。)第 110 条によれば、「総務課長は、固定資産につき毎年事業年度少なくとも1回、台帳記帳事項と固定資産の実態を照合し、その結果を局長に報告しなければならない。」となっている。
平成 15 年3月末現在、各病院の固定資産残高(帳簿価額)は以下のとおりである。
表Ⅱ-1 固定資産残高 (単位:千円)
種 類 | 医療センター | xx | xx | 八幡 | 本庁 | 合計 |
土地 | 76,757 | 7,224 | 25,155 | 13,167 | 9,094 | 131,399 |
建物 | 9,413,464 | 4,313,381 | 639,565 | 4,280,904 | - | 18,647,315 |
構築物 | 110,265 | 154,456 | 7,471 | 53,659 | - | 325,853 |
器械備品 | 2,092,222 | 493,650 | 783,697 | 775,417 | 9,778 | 4,154,767 |
車両 | 14,194 | 34 | 104 | 13,185 | 121 | 27,641 |
- | 2,278 | ※ 4,735,925 | - | - | 4,738,205 | |
電話加入権 | 1,000 | 000 | 000 | 0,109 | 1,285 | 4,516 |
計 | 11,707,938 | 4,971,580 | 6,192,444 | 5,137,441 | 20,278 | 28,029,695 |
(※)xx病院の建設仮勘定は、新病院建設工事の支出額である。
② 実施した監査手続
器械備品のうち1件あたり 1,000 万円以上のものについて現物実査、固定資産台帳の通査、照合報告書の閲覧及び担当者への質問を実施することにより、会計規程に基づいて現物との照合を実施し報告しているか、合規性について検証を行った。
③ 監査の結果
監査の結果、会計規程第 110 条に基づく現物照合が行われていないことが確認された。また、現物照合を実施した結果、検出事項は以下のとおりである。
ア.固定資産の廃棄(除却)漏れ
抽出件数及び検出件数並びに検出金額(帳簿価額)は以下のとおりである。医療センター:59 件抽出中8件:53,749 千円
xx病院 :10 件抽出中0件
若松病院 :20 件抽出中4件: 6,668 千円八幡病院 :27 件抽出中3件:17,673 千円
除却漏れの原因を確認したところ、抽出サンプルについては器械備品更新時の現場からの廃棄報告漏れが原因であった。
イ.備品整理票の貼付不徹底(市会計関係帳票規則別表第 69 号様式の1)
担当者からの回答によれば、固定資産の管理を徹底するために台帳上の資産番号、取得年月日、機種及び設置場所が記された備品整理票を総務課から発行する手続となっている。しかし、物理的に備品整理票が貼付できない固定資産を例外としても、多くの固定資産で備品整理票が貼付されていない(貼付場所不明も含む)。また、貼付された備品整理票の内容が読取れないものも存在した。これらの理由として以下のことが指摘できる。
(ア)検収後相当期間経過して発行されている。
(イ)現場担当者が備品整理票を貼付することを忘れている。
(ウ)備品整理票を貼付する場所が適切でない。
解決の方策として以下の事項のxxxxが必要である。
(ア)検収報告書を総務課が受領した後、遅滞なく発行する。
(イ)現場責任者が定期的な現物照合を行う。
(ウ)貼付する場所を誰が見ても分かる場所にする。例えば、システム一式に貼付する場合にはサーバーPCに貼付することを統一する等、手続についてマニュアルを作成する。
備品整理票は実地照合の際、現物を効率的に把握するために有効である。貼付場所等含め、備品整理票管理の再検討が必要である。
(2)管理換手続
① 概 要
管理換手続に関する会計規程第 104 条によれば、「主管課長は、その主管に属す
る固定資産の撤去により、再使用できるものは、第 71 条の規定に準じて庫入れの
手続をしなければならない。」となっている。また、会計規程第 71 条によれば、
「たな卸資産を受け入れた場合は、事務局企業出納員は入庫伝票を発行し、貯蔵品出納簿に記帳しなければならない。ただし、購入によって受け入れた場合は、入庫伝票を納品書で代えることができる。」となっている。
平成 14 年度の管理換の実績は以下のとおりである。
表Ⅱ-2 管理換の実績 (単位:千円)
受入側 送出側 | 医療センター | xx | xx | 八幡 | 本庁 | 合計 |
医療センター | - | - | - | - | - | - |
xx | - | - | - | - | - | - |
xx | - | - | - | - | - | - |
八幡 | - | - | - | - | - | - |
本庁 | - | - | - | - | - | - |
xx(※1) | 19,011 | 95,876 | 22,562 | 57,709 | - | 195,159 |
(※1)xx病院の廃止(平成 14 年4月1日)に伴い、生じたもの。
② 実施した監査手続
証憑書類の閲覧、担当者への質問により管理換手続の妥当性を検証した。
③ 監査の結果
監査の結果、管理換手続は会計規程に準拠し、適切に処理されている。
(3)固定資産管理台帳
① 概 要
会計規程第 109 条によれば、「総務課長は、固定資産台帳を備え、資産の数量、価額の増減、減価償却累計額及び処分等による異動を記載し、常にその現況を総合的に明らかにしなければならない。」となっている。
② 実施した監査手続
証憑書類の閲覧及び担当者への質問により会計規程に基づいて台帳管理を実施しているか、合規性について検証を行った。
③ 監査の結果
病院局では、固定資産の取得、除却等の固定資産台帳への記述を年度末に一括して行っている。しかしながら、この方法では、固定資産の実態を適時に把握することができない問題がある。また、固定資産台帳に記入する原始証憑の紛失等による記帳の網羅性の問題も生じる恐れがある。
取得・除却報告時に遅滞なく固定資産台帳に記帳を行うよう、会計規程の遵守が求められる。それによって台帳管理が適切に行われる。
2.固定資産に関する会計処理
(1)補助金等による購入固定資産の会計処理
① 概 要
地方公営企業法施行規則(以下、「地公企則」という。)第8条第4項によれば、
「地方公営企業の有形固定資産で、資本的支出に充てるために交付された補助金、負担金その他これらに類する金銭又は物件(以下「補助金等」という。)をもつて取得したものについては、当該有形固定資産の取得に要した価額からその取得のために充てた補助金等の金額に相当する金額(物件にあっては、その適正な見積価額をいう。)を控除した金額を帳簿原価又は帳簿価額とみなして、第1項の規定により各事業年度の減価償却額を算出することができる。」となっている。
② 実施した監査手続
証憑書類の閲覧、担当者への質問により地公企則に基づいて継続して処理を行っているか、合規性について検証した。
③ 監査の結果
施行規則第8条第4項の規定に対して、固定資産の減価に対応すべき収益の獲 得が予定されない固定資産の取得のための財源に関しての規定と解釈するならば、補助金および負担金の他に寄附金についても「補助金等」に包含される。その場 合、いずれの取得財源で調達したものであっても、いったん採用した会計処理は 実態に照らして整合的な処理が求められる。
しかし、現状、病院局では現物での寄付と現金での寄付とで固定資産の処理が異なっている。
前者の場合はいわゆる「みなし償却」により除却するまで減価償却を計上せず除却時に一括費用計上を行う処理を採用している。後者の場合は現金で取得したものとして他の固定資産と同様、取得の翌年度から減価償却を行っている。
寄付という実質が同じであるにもかかわらず処理が異なると、公営企業の実態を反映しない決算書が作成される恐れがある。
平成 14 年度中に発生した10 万円以上の寄付による採納は以下のとおりである。現物での寄付:456 千円
(内訳)エアーマット、電子ミシン:200 千円パソコン 1 台 :256 千円
現金での寄付:500 千円
統一的な会計処理を行い、公営企業の実態を反映した決算書の作成が必要である。
3.情報システムサーバーのセキュリティ
(1)概 要
医療センターには、診療棟3階に施錠付の専用サーバー室が設けられている。この専用サーバー室には、医療センターの医事会計サーバーのほか、市立病院全体の患者管理サーバーや財務会計サーバー等、基幹システムのサーバーが設置されている。
また、臨床検査サーバー(3階)、放射線管理サーバー(1階)等の各部門システムのサーバーについては、各部署の管理エリア内に施錠付きのサーバー室を設ける等して設置されている。
このように、基幹システムや部門システムのサーバーについては厳重な管理のもとで情報管理がなされている。
(2)実施した監査手続
基幹システムや部門システムのサーバーについては、上述のように厳重な管理のもとで情報管理がなされている。よって、今回は、それ以外の特に見過ごされがちな医療機器に付属した単独サーバーについて、その管理状況を検証することとした。
平成 15 年7月に診療棟地下の放射線機器に付属するサーバー室への視察及び担当者への質問を実施し、管理の妥当性について検証した。
(3)監査の結果
診療棟地下の放射線機器に付属するサーバー室については、サーバーへのアクセス制限が不十分である。理由は以下のとおりである。
まず、論理的制限については職員 ID 及びシステム起動するためのパスワードが準備されており、十分な配慮がなされている。しかし、物理的制限については、情報システムサーバーとしてではなく単なる放射線機器の制御管理サーバーとして認識されているためか、一般市民が自由に往来できる廊下に面した一室に配置されているにもかかわらずサーバー室の施錠状況は徹底されていない状況であった。
悪意のある人間によりプログラムを破壊された場合には、業務に支障をきたすとともに、修復に多額の費用がかかる。また、同サーバー室の別のサーバーでは個人情報に関するものも保管されているため、情報保護の観点から見ても徹底した管理が求められる。
サーバー室の場所を移動させることが不可能な場合、サーバー室の施錠管理を強化する等対策を講じることにより、情報管理の徹底及び責任の所在を明確にすることが必要である。
Ⅲ.診療報酬関連
1.診療報酬請求事務
(1)概 要
病院の医業収益は、健康保険における診療報酬の保険者負担額、同じく患者負担額及び健康保険の適用を受けない診療に関する患者負担額で構成されており、その大半を占めるのは診療報酬の保険者負担額である。したがって、診療報酬の保険者負担額が適正に請求されることが、病院の運営にとって重要であり、当該請求事務の適正性について監査を行った。
診療報酬請求事務は、各病院が社会保険診療報酬支払基金(以下、「支払基金」という。)及び福岡県国民健康保険団体連合会(以下、「国保連」という。)に対し、毎月診療した月の翌月 10 日頃までに診療報酬を請求する事務である。
市病院局事務分掌規程第2条によれば、「診療報酬その他の収入xx及び請求に関すること」は各病院事務局医事係の事務分掌となっている。なお、当該事務は A社に外部委託している。
(2)実施した監査手続
診療報酬請求事務が適正になされるために、医事係において委託事務の管理が適切になされているか、委託契約書、北九州市委託業務要綱、業務委託事務の手引の閲覧及び担当者へ質問することにより、合規性について検証を行った。
(3)監査の結果
監査の結果、診療報酬請求事務に関する履行又は進行についての管理体制がないことが確認された。詳細は以下のとおりである。
① 委託事務の業務計画書を徴していない。
委託契約書第4条によれば「乙(受託者)は、委託業務を実施するにあたり、あらかじめ業務対象、内容を調査のうえ業務計画等を作成し、甲(市病院局)に提出してその承認を得なければならない。」とされている。また、北九州市委託業務要綱第 15 条(1 )によれば「業務に着手するときは、あらかじめ委託先から業務の実施計画書を徴するとともに、必要な場合は、当該実施計画の内容について調整を図ること。」とされている。
しかし、業務計画書を徴しておらず、委託事務がどのように遂行されていくのか病院局として把握できず、委託事務の適正な管理を行う上で支障が生じる恐れがある。
病院局によると、委託契約を締結する前に病院局が作成した仕様書を基に委託事務の詳細を詰めて仕様書を固め、それを業務計画書に代わるものとしているとのことであった。しかし、仕様書は委託契約書第2条で「乙は、業務仕様書により、委託の本旨に従い、甲の指示監督に基づき委託業務を実施しなければならない。」とされているものであり、第4条の業務計画書とは別のものである。
業務計画書を提出させる趣旨は、委託業務の適正な履行を確保するためである。このことは、平成 11 年2月 16 日の北九契管第 260 号「委託契約書の整備・標準
化について(通知)」に留意事項として「委託業務の内容及び処理の方法については、仕様書及び要領等で詳細に定めるところであるが、それらを相手方に再認識させ、業務の完全履行を確保し、履行内容に疑義を生じさせないため、具体的かつ詳細な業務計画書等を相手方から提出させること。」と記載されていることからも省略すべきでない。
業務仕様書には、診療報酬請求事務におけるレセプトの処理に関する事項等が挙げられているが、具体的なスケジュールや担当者等の記載はない。例えば、業務仕様書で「委託業務に従事する職員の診療報酬請求事務に関する資質向上のため、年間研修計画を策定する。」とあるが、当該研修計画は、業務仕様書に記載されていない以上、業務計画書において策定されるものである。したがって、委託事務の適正な管理のためには、仕様書とは別途の具体的な業務分担等を記載した業務計画書が必要である。
適正な事務処理をされたい。
② 業務報告書を徴していない。
委託契約書第5条によれば「乙は、必要に応じて業務報告書を作成して甲に提出し、委託業務の実施結果及び処理状況を報告しなければならない。」とされており、また、市委託業務要綱第 15 条によれば「業務が完了したときは、速やかに委託先から業務の完了報告書等を徴するとともに、履行の確認又は成果物の検査及び検収を行うこと。」とされている。契約室管理課が作成している業務委託契約事務の手引においても、第8で適正履行の確保が求められている。
しかしながら、業務報告書は徴されていない。したがって、当該委託業務の結果について病院局側(業務課及び各病院医事係)で十分な点検ないし管理ができていないと考えられる。
病院局によると、委託業務は医事係職員と同じフロアーで履行されており、常に管理はなされているとのことであった。しかし、客観的に管理の事実を示すことができるものではない。そのことからも、適正な履行の確認を客観的に示すものとして、業務報告書が求められているのであり、業務報告書の提出を省略すべきではない。
適正な事務処理をされたい。
③ 診療報酬請求点数のチェック体制の不備
レセプトの作成及び請求点数の集計は全面的にA社が実施しており、病院局(業務課及び各病院医事係)はA社が集計した請求点数をチェックすることなくそのまま受け入れている。
確かにA社は診療報酬請求事務に精通しているが、先に述べたように診療報酬請求事務の重要性に鑑みると、病院局(業務課及び各病院医事係)が委託者としての管理責任から、請求漏れがないか等、A社の集計した診療報酬請求点数についてチェックをする必要がある。
しかし、診療報酬請求事務は相当の専門的知識が必要であるが、人事異動サイ
クルは2~3年であり、精通者の養成が難しく、医事係でレセプトチェックを行うことは現状では難しいことも事実である。
2.その他診療報酬請求事務
(1)概 要
前述のとおり、診療報酬請求事務は、各病院が支払基金及び国保連に対し、毎月診療した月の翌月 10 日頃までに診療報酬を請求する事務である。通常、翌月 10日頃までには請求されるのであるが、一部、請求が保留されるレセプト(請求保留レセプト)がある。
請求保留レセプトは、レセプトは作成されているものの提出の条件が整わず、請求が保留されるレセプトである。一般に、公費負担がある場合に、公費負担申請の手続を要するため、翌月までに請求できないものである。
(2)実施した監査手続
「請求保留分レセプト写」の閲覧及び担当者へ質問により、合理的な理由がな く請求が遅滞している診療報酬がないか等の手続の合規性について検証を行った。
(3)監査の結果
平成 14 年度医療センターの請求保留レセプトの状況は、実査日(9月 16 日)現在、25 件 504,640 点であった。全件について検討した結果、理由なく請求が遅滞しているものはなかった。その他、特に指摘すべき事項はない。
Ⅳ.債権管理関連
1.外来未収金のxx
(1)概 要
地公企法第 20 条によれば、第1項で「地方公営企業においては、その経営成績を明らかにするため、すべての費用及び収益を、その発生の事実に基づいて計上し、かつ、その発生した年度に正しく割り当てなければならない。」、第2項で「地方公営企業においては、その財政状態を明らかにするため、すべての資産、資本及び負債の増減及び異動を、その発生の事実に基づき、かつ、適当な区分及び配列の基準並びに一定の評価基準に従って、整理しなければならない。」となっている。
市立病院等の使用料及び手数料条例第2条第1項により、「病院の診療を受ける 者は、使用料又は手数料を納入しなければならない。」とされており、また、地公 企令第 13 条によれば、「地方公営企業の現金の収支を伴う収入及び支出のうち、 その債権又は債務の確定の際直ちに現金の収納又は支払をしないものについては、未収又は未払として計理しなければならない。」となっている。
(2)実施した監査手続
xx簿及び請求書等関連証憑の整合性の検証又は金額突合、閲覧、担当者への質問により、地方公営企業法等に基づいて処理を行っているか、合規性について検証した。
(3)監査の結果
患者負担分の外来未収金についてxxがなされていなかった。簿外にて請求書で管理しており、入金のあったときに入金分のxx(収入xx)を行っている状況である。
件数(件) | 金額(円) | |
医療センター | 3,094 | 10,559,845 |
xx病院 | 950 | 1,748,329 |
xx病院 | 2,641 | 6,118,219 |
八幡病院 | 7,139 | 53,873,811 |
合 計 | 13,824 | 72,300,204 |
平成 15 年3月末現在で簿外になっている金額は以下のとおりである。表Ⅳ-1 簿外の外来未収金
xxしていない理由を病院局に質問したところ、外来収入の件数が多いこと、自費診療の患者が後日保険証を持参した場合の事務手続が煩雑であること等により、現状では事務遂行上対応が困難であるとの回答を得た。
しかし、診療行為に基づく患者負担分についてxxを行わないことは、地公企
法第 20 条、地公企令第 13 条の規定に従っておらず妥当でない。このことは、平
成 14 年 12 月 16 日の北九州市監査公表第 34 号にあるとおり、監査委員の定期監査でも指摘されている事項である。
その後、早い段階で外来未収金のxxを実施すべく、医事係長会議等でその正確かつ迅速な手法について協議されており、平成 15 年5月 15 日の北九州市監査
公表第 11 号にあるとおり、医事会計システムの改善や事務手順の作成等の準備が進められている。
実査日(平成 15 年 10 月)現在では、外来診療費を全てxxできるように、医事会計システムの改善の基本設計、仕様確定作業が進められている。このシステム改善により、外来・入院とも未収金のxx管理ができるようになり、現在システム外で作成されている督促状や未収金整理カード等が、システム帳票化される予定である。
今後の予定では、平成 16 年3月にシステムを仮稼働させ、平成 16 年度当初から本稼働し、全ての外来未収金をxx計上することとなっている。
地方公営企業法の規定からも、債権管理の観点からも、当該予定の確実な実行が求められる。
適正な処理をされたい。
なお、入院収益と未収金の計上については、平成 15 年7月をサンプルとして検証したところ、診療報酬請求書から正しく転記されていることが確かめられた調定額集計資料に基づいて会計処理がなされていることが、確かめられている。
2.未収金管理
(1)概 要
会計規程第 11 条第1項では、「この会計に関する取引を記録し、計算し、及び整理するため、次の会計帳簿(以下「帳簿」という。)を備える。(略)(2)総勘定元帳、(略)(9)未収金整理簿(略)」となっている。
また、市立病院使用料及び手数料滞納整理事務処理要綱(以下、「事務処理要綱」という。)第 2-5 では「過年度外来未収金については、過年度外来未納金管理簿及び過年度分未収外来診療報酬請求書によって管理する。詳細は別途要領を定める。」となっている。
(2)実施した監査手続
未収金明細表や入院未収金整理簿等、関係証憑を閲覧するとともに、担当者への質問により、未収金管理が適正になされているか、検証した。
(3)監査の結果
① 入院未収金の照合
「未収金整理簿」は財務会計システム外で管理されているため、随時照合する必要がある。会計規程第 14 条にも「総勘定元帳、補助簿その他相互に関連する帳簿は、随時照合しなければならない。」とされている。
病院局経理課によると、未収金については、毎月照合しているとのことである。照合方法は、経理課が財務会計システムで把握した金額に基づき「調定額及び収入金集計表」及び「未収金明細表」を作成し、それを各病院医事係に照会し、各病院において「未収金整理簿」と照合させる方法によっている。
医療センターの担当者に照合方法を質問したところ、経理課からの照会に応じて、未収金整理簿に基づく集計表との照合は、毎月適正に行われていると認められた。
しかし、経理課においては、年度末を除いて、随時照合していることの証跡は残されておらず、事後的に担当者以外の者において照合がなされたことを確認することができない。年度末においては、経理課担当者が照合したことの確認印を残しているので、今後は年度末だけでなく、毎月照合の都度確認印を押印し、照合がなされたことの証跡を残す必要がある。
適正な事務処理をされたい。
② 外来未収金の管理
外来未収金については、「未収金整理簿」が作成されておらず、会計規程第 11条の規定に従っていない。また、「過年度外来未納金管理簿」及び「別途要領」も作成されておらず、事務処理要綱第 2-5 (1 )の規定に従っていない。
現在、外来未収金は、各病院医事係が請求書で管理している状況である。請求書は個人別に綴じられており、督促状況等については、当該請求書に記録されている。入院未収金については、未収金整理簿が作成されているものの、外来未収
金についてはこのように別管理されており、入院・外来とも未収となっている患者等について管理がしにくいものと考えられる。
病院局に今後における外来未収金管理の方策について質問したところ、医事会計システムの改善で対応する予定であるとの回答を得た。外来未収金のxxを行うのと同時に、入院・外来で統一した帳票等を整理する方針であり、xx管理できる予定であるとのことである。
したがって、外来未収金の管理が適切に行われるよう、医事会計システムの改善スケジュールを予定通り進行していく必要がある。
適正な事務処理をされたい。
③ 入院未収金の管理
入院未収金は、各病院とも「入院未収金整理簿」を作成し、台帳管理がなされている。
平成 14 年度医療センターの入院未収金整理簿を閲覧し、入院未収金の管理状況について調査したところ、以下のような状況であった。
ア.入院未収金は年度別に管理されている。したがって、同一人物でも別冊であり、過年度のみの滞納者について管理しにくいと考えられる。
病院局によると、医事会計システムの改善で対応予定とのことであった。 イ.実査日(9月 17 日)現在の入院未収金のうち、記録に不備のあるものは、全
102 件、12,799,334 円であった。状況別内訳は下表のとおりである。なお、下表の件数、金額については、決裁もなく接触もないもの等が重複している。
ウ.決裁がないものが 77 件と最も多かったが、「事務処理要綱」第 3 -8(4) で「入院未収金整理簿は月に 1 回全件について事務局(次)長までの決裁を受ける。」との規定に従っていない。債権管理の観点から、当該規定には従うべきである。
適正な事務処理をされたい。
表Ⅳ-2 実査日現在の入院未収金のうち記録に不備のあるもの
件数(件) | 金額(円) | |
記事がないもの | 11 | 2,007,211 |
記事が漏れているもの | 2 | 80,678 |
決裁がないもの | 77 | 9,081,078 |
申請書の印鑑漏れ | 3 | 440,254 |
3ヶ月以上接触のないもの | 9 | 1,190,113 |
計 | 102 | 12,799,334 |
エ.xx病院において、入院未収金の台帳を閲覧したところ、担当者ごとに台帳名が異なっていた。客観的に見て同じ内容の台帳であることが認識できない可能性があるので、事務処理要綱第 3-8 にあるとおり「入院未収金整理簿」に台帳名を統一すべきである。
また、督促状の発行事務について、入院未収金整理簿に「指定納入期限」と
「滞納金額」の記入がなく、また、割印がなされていなかった。事務処理要綱第5-2の規定に従っていない。xx病院医事係によると、入院未収金整理簿に督促状を発送する旨を記載し、指定納入期限と滞納金額等必要事項を記載した督促状そのものを添付して、事務局長の決裁を受けているとのことであった。しかし、台帳3冊全件について、督促状の写しは保管されておらず、また入院未収金整理簿の記載からは、事後的客観的に「指定納入期限」と「滞納金額」を確かめることができない。
当該規定において「指定納入期限」等を入院未収金整理簿に記入し、割印して発送することとされている趣旨は、未収金管理を適正に行うためである。例えば、「指定納入期限」を記入しておくことによって、他の担当者が督促の電話をする場合に、指定納入期限前の電話を保留する等そのタイミングに注意を払うことができると考えられる。xx病院における督促状発行事務では、必要事項について適正に決裁を受けていると思われるが、その証跡が残されていない。適正な未収金管理のために、当該規定に従うべきである。
その他、分割納入申請書に日付や押印漏れが散見された。適正な事務処理をされたい。
Ⅴ.材料費関連
(1)概 要
診療を行う上で薬品と診療材料を使用するために、各病院はこれらを管理する必要がある。会計規程においても、たな卸資産として管理することになっている。薬品と診療材料にかかる費用は材料費として会計処理されている。材料費は(病 院特会)損益計算書の費用及び損失合計の 18.7% を占める。各病院にかかった材料費の平成 13 年度と平成 14 年度の決算金額は次のとおりである。全国の公的病院において材料費の事業費にかかる割合からして平均的な割合にあるといえる。しかし、一般に、材料費は、経営改善において、最初の削減努力目標の対象とされることが多く、「物品管理の一元化(SPD)」といった新たな計画的管理手法を導入する等、費用節約や効率的な物流はできないかについて検討するものとされてい
る。
このような場合、組織の内外を問わず意思決定に資する説明責任を果たすためにも、適正な方法で管理をし、適正な基準に基づいて会計が行われなければならない。
表Ⅴ-1 材料費の病院別決算額の2ヵ年比較 (単位:千円)
xx病院 | 医療センター | 八幡病院 | xx病院 | 合計 | |
平成13 年度 | 175,585 | 2,960,421 | 1,419,666 | 438,463 | 5,157,609 |
平成14 年度 | 172,263 | 3,029,753 | 1,286,984 | 522,067 | 5,011,067 |
会計規程第 62 条において、薬品や診療材料はたな卸資産の対象となる物品として規定され、所定の管理が求められている。一方、各病院では、薬剤科が薬品を、放射線科がレントゲンフィルム(診療材料の一部)を、その他診療材料を病院事務局(一部を委託)が管理することとしている。
また、会計規程第 64 条において「経理企業出納員は、たな卸資産の出納および保管に関する事務の総括をつかさどるものとする」とされている。
現状、出納に関していえば、薬品と診療材料とで管理が異なり、しかも、4病院ともその記録の方法が異なっており、統一的でない。中でも、出納記録に関しては、発注、受入れ(納品検収)、払出しの各段階で必要となるものであるが、あるものとないものがある。
(2)実施した監査手続
病院は市の事業のうち、取扱う物品の品目数が最も多い部局の一つである。そのため、当初、想定し得ない管理が必要となっている可能性もあり、会計規程が現実に見合っているか、一度、見直す必要があるので、材料費で計上される薬品、診療材料等たな卸資産と認識できるものを監査の対象とした。
① 薬品及び診療材料について各病院の管理者に質問し、取扱いの概要を把握した。
② 薬品及び診療材料の受払い及びたな卸等の取扱いに関する帳票を閲覧しながら、
質問し、法令等に基づいて実施されているか合規性の観点から確かめた。
③ 薬品及び診療材料の取扱いに関する帳票であるたな卸表、受払表、会計伝票等を入手し、整合性を確かめた。
(3)監査の結果
① たな卸資産の受払管理ア.たな卸資産の受入れ
会計規程第 71 条では、たな卸資産を受け入れた場合に、貯蔵品出納簿に記帳することとなっているが、各病院ではこれを実施していない。ただし、薬品に関しては、発注管理システム(KMS システム)上の出力帳票がある。しかし、この発注管理システムの出力帳票は、発注消し込みを目的としたもので、薬剤科において一時的に使用されるものである。また、事務局企業出納員の押印もないため、規定書類とはいえない。会計規程に則った適正な事務を図るか、合理的な会計規程に改訂するかの措置が必要である。
なお、発注データは経理課に伝送され電子媒体に5年間保存されることとしている。
イ.たな卸資産の検収
たな卸資産の購入に際して、薬品については、薬剤科において薬品を購入する契約業者の納品書をもとに検品し、薬品注文書出力帳票と照合し消し込みを行っている。ただし、会計規程第 69 条に求められるように、たな卸資産の購入に際して、主管課長が検収報告書を作成し、これについて局長の決裁を受けていない。また、診療材料等についても同様に、必要とされる決裁を受けていない。
上記ア.と同様に、業務が会計規程に合っていない場合は規程自体の見直しが必要である。
会計規程に則った適正な事務を図るか、合理的な会計規程に改訂するかの措置が必要である。
ウ.たな卸資産の出庫
たな卸資産を使用しようとする場合は、出庫伝票によって決裁を、事務局企業出納員(事務局長・次長)に請求することになっている(会計規程第 73 条)が、現状、各病院の業務には無理があり、行っていない。
例えば、xx病院では、診療材料の払出しについては、カードによる請求に基づいているので、これを委託業者が管理システムに読み込ませ記録している。しかし、事務局企業出納員はこれらの結果をその都度、把握し、承認決裁していない。
また、各病院で使用される伝票等は統一的でない。
会計規程に則った適正な事務を図るか、合理的な会計規程に改訂するかの措置が必要である。
エ.たな卸資産の受払記録
「事務局企業出納員は、毎月末日現在で、たな卸資産の受払資産の受払に関し、帳簿に基づいてたな卸資産受払報告書を作成し、翌月5日までに経理企業出納員に送付しなければならない。」(会計規程第 77 条)
病院局では、基本的な考えとして、たな卸資産は購入とともに払い出され開封され使用されるため、貯蔵をしていないという前提があり、いわゆる直購入品であり、たな卸資産はないという認識である。よって、会計規程で求められている出納簿を作成していない。
しかし、薬剤科に保管される薬品や放射線科に保管されるレントゲンフィルムは、年度末には決算で計上されるたな卸資産として捉えている。また、実際には、ほとんどの薬品、診療材料については、納品されてから使用するまでの一定時間は貯蔵保管されるため、事務局企業出納員はたな卸資産を適正に管理しなければならない(会計規程第 63 条)とされている以上、たな卸資産として認識し、出納簿を備える等の管理が必要である。
薬品については、各病院とも薬剤科における発注事務はKMSシステムを使用して管理している。しかし、このシステムでは病棟に向けて薬剤科から出庫される払出し量(額)及び薬剤科での在庫量(額)は捕捉されない。
診療材料については、次のとおりである。
レントゲンフィルムは、各病院とも所管する科の専用のコンピュータにおいて日々、受払の管理をしている。
レントゲンフィルム以外の診療材料は、病院事務局で発注、納品・検収事務を行っているが、注文したものの網羅性を確かめる発注残の消し込みや納品後、一時的に保管される診療材料倉庫から病棟等への払出しにかかる記録は限定的であり、受払管理がなされているとはいえない。
なお、物流管理システムを導入している医療センターやxx病院では、発注残の消し込みが行われている。
現状、注文の方法やその記録も統一的な取扱いはなく、病院によって方法や記録が異なる。薬品、診療材料の発注と検収において、専用様式の管理帳票と整備状況が各病院でまちまちである。倉庫から病棟といった部署間の受渡しにおいて、責任の所在と解除の状況があいまいである。例えば、定数より注文し過ぎ、無駄になってしまった場合のフォローができない状況にある。
また、支払のための検品で使用した納品書と後日送付される請求書との照合は行っているが、注文数量の妥当性や払出し数量の妥当性を確かめる書類がなく、事後的にも確かめる手段がない。
会計規程上、たな卸資産を適正に管理するための要件が明確ではないが資産の保全と毀損の予防のためには、購入、払出し及び現在在庫の数量の把握は不可欠である。
ただし、すべての消耗品の管理を同等に厳格に管理するのは、費用対効果の面から意義をなさないので、管理のあり方を見直すと同時に、現実的な会計規
程の改訂整備が必要である。
② たな卸資産管理の委託(診療材料のみ)
医療センター及びxx病院については、診療材料の管理を業者に委託している。業者からの業務報告書の提出を受けるとともに、少なくとも、定期的に監督又は管理状況の報告を受けなければならない。現状、実績の結果として契約書において要求されている、業務計画書、業務報告書等の委託業者からの文書はない。委託している場合も同様に管理責任がある。
xx病院において確かめたところ、委託契約書(平成 15 年5月1日)の業務仕様書別紙では在庫管理業務が盛られているが、会計規程で求められている業務と整合性が図られていない。
委託している診療材料の管理及び病院事務局による委託内容の遂行確認のためには、出納簿又は受払報告書の作成が必要である。xx病院は委託開始から期間を経過していないため実現していない。年度中には月次での頻度による帳簿記帳を目指しているとのことである。
③ たな卸資産のたな卸
ア.たな卸の実施とその範囲
たな卸資産(薬品、診療材料等)は会計規程第 79 条等においてたな卸を実施することが求められている。
一方、各病院では、たな卸資産のうち、たな卸の対象となっているのは薬剤科に保管される薬品と放射線科に保管されるレントゲンフィルムのみとなっている。従来、病院局がたな卸の対象をこの二つに指定している。これは、対象としていない他の多くの診療材料や病棟に保管される薬品について、開封済みであり貯蔵していないとの理由からであり、根拠となる規定はない。また、仮に実施した場合でも、診療のための頻繁な受払を止めて、たな卸を実施するのは業務に支障を来たす、数量の規模が大きいとの理由等から困難であるとのことである。
しかし、八幡病院等において実際の保管状況を視察したところ、相当の在庫があり(管理されていないので金額規模には言及できないが)、前述したたな卸資産管理の意義からすれば、各病院は困難な状況であるから、むしろ、把握できるデータを備え、内部統制を整備する必要がある。例えば、ある職員が高額の診療材料を継続的に外部に流用したとしても、それを防止する統制機能はこの会計規程及び病院内の事務にはない。同時に、不正流用がないという心証を得るような裏づけもない。
よって、受払の記録とともにたな卸によって在庫を把握する必要はある。 現状、病院事務局職員が少人数でたな卸の対応をしている。本来は全病院と
して病棟も対象に加える必要があり、看護師の協力が是非とも不可欠である。また、全材料をたな卸の対象とするのは現実的でないこともあり、単価の大
小に応じて在庫管理の方法を変える ABC 管理を参考にして、例えば、カテーテ
ルといった高額材料で在庫保管されるものを対象に加えるという方法も考えられる。
さらに、たな卸を実施することによる、診療への支障が少ない方法も複数あるため、たな卸資産の受払記録と実地たな卸を合せて実施できるよう検討されたい。
イ.たな卸結果
たな卸の結果を金額換算し、会計処理上、貯蔵品残高を材料費から繰戻して調整するので、会計帳簿残高とたな卸結果の残高とは、必ず一致することになる。この場合、たな卸資産残高としては、実態に即した決算結果が算出される。しかし、この方法によっては、正当な理由以外によって減耗したことについては捕捉できない。本来は、統制上、帳簿残高と実地たな卸残高に差異がある場合、これを毎期、記録し、異常の有無を分析する必要がある。会計規程第 81 条第2項では、「実地たな卸の結果、帳簿残高が現品と一致しないときは、(略)その原因及び現状を調査し、(略)報告しなければならない。」とされている。日常的に受払を記録した帳簿による数量管理とすべてを対象としたたな卸による一定時点での数量把握の両方があって初めてこの規程の事務が行われる。
④ 期限到来及び切迫品ア.期限到来品
各病院では、期限が到来した薬品及び診療材料の処分はその都度、行なわれている。しかしながら、会計規程第 76 条によると、不要品の処分では局長の決裁を受ける旨の規定がなされているが、特段の決裁を行っておらず、責任の所在が不明である。
xx病院において、平成 15 年9月末のたな卸の際に、期限到来となった薬品の調査をするよう依頼したところ、67 品目、533 千円あった。
このうち、平成 15 年3月(平成 14 年度末)より以前に期限が到来しているものも、6品目、72 千円あることから推測すると、年度ごとに網羅的に期限到来品のたな卸がなされているとはいえない。
病院運営上、緊急用で一定数の備置も不可欠で、多数の薬品、診療材料を扱う面もあることから、期限到来が生じてしまうのは、止むを得ない部分もあるが、期限到来によって資産を無駄に使用価値のないものにしてしまうことは、会計規程第 63 条にいう「適正な管理」をしているとはいえない面もある。
イ.期限切迫品
八幡病院で診療材料について質問したところ、使用期限についての管理は特段、行っていない。そのため、病棟においては、到来後、病院事務局に返却するケースもまれにあり、廃棄を行っている。廃棄処分されることは、結果的に
使用されないため、無駄となってしまうので、上記アと同様の趣旨から、使用期限が到来する前の予防を、適切に管理されたい。
Ⅵ.委託費関連
1.委託契約業務
(1)概 要
市立4病院の委託契約の大部分は、市立病院を統括する病院局が集中して契約を行っている。
主要な業務委託として平成 14 年度は食事提供業務、医療事務等 66 業務を委託
しており、その金額は総額 1,817,425 千円となっている。このうち、委託金額の大きな業務は次のとおりである。
この上位 10 委託業務の合計金額は 1,486,071 千円であり、病院局の総委託契約金額の 81.8% を占めている。
表Ⅵ-1 市立病院委託業務金額(上位 10 業務) ( 単位:千円)
委託業務名 | 金 額 | 備 考 |
1.食事提供業務 | 541,437 | |
2.医療事務 | 311,724 | |
3.清掃及び雑役 | 188,158 | |
4.物品管理業務 | 123,517 | |
5.電気機械設備等運転管理 | 82,810 | |
6.汚物洗濯及び消毒材料運搬 | 75,600 | |
7.警備及び駐車場管理 | 56,519 | |
8.CT スキャナー保守 | 37,910 | |
9.寝具及び病衣交換 | 34,776 | (注)1.参照 |
10.院内保育所運営 | 33,620 | |
計 | 1,486,071 |
(注)1.「9.寝具及び病衣交換業務」は、平成 15 年度から看護補助者制度を導入することにより業務委託を廃止している。
2.金額欄は、平成 14 年度決算額である。
(2)実施した監査手続
病院の委託業務に関しては、次の監査手順で実施した。
会計年度は、原則として平成 14 年度とし、必要に応じて平成 15 年度及び平成
13 年度に係る事項も関連して調査した。
① 病院局が平成 14 年度及び平成 15 年度に契約した全ての契約の一覧表の策定を求めるとともに全体の概要を把握した。
② 各委託契約書に基づき、委託業務の名称、委託料、契約期間、契約履行場所、委託者名、受託者名、連帯保証人及び契約条項等によりその内容等を確認した。
③ 委託業務の履行状況等について、各病院等を訪問し履行状況等を現認するとともに施設管理業務日誌、病院作業日誌、工事完了報告書等の関係書類等により確認した。
④ 委託業務に係る支出決議書、支出予算整理簿、支出命令書、請求書、領収書等
の関係書類の整合性を検証した。
⑤ 関係する事項について、市委託業務要綱等法令に基づき事務処理がなされているか、担当職員に質問する等により確かめた。
(3)監査の結果
任意に抽出し確かめた範囲では、関連書類間の不整合はなく、所定の法令等に準拠していた。
2.食事提供業務委託
(1)概 要
食事提供業務は、入院患者の食事の材料費も含めて委託しているため、病院局の委託業務の中で最も委託金額が多額となっている。
病院局は、食事提供業務を長期間随意契約により業務委託していた。平成 14 年度の定期監査の結果報告書においては、随意契約とする特命理由に合理性、具体性が認められない業務として指摘されていないにもかかわらず、平成 15 年度から競争入札制に移行した。
食事提供業務を随意契約から競争入札による契約に移行したことは高く評価される。
(2)実施した監査手続
① 食事提供業務の一部委託契約書及び業務分担書、負担区分書、食材費の分類とその単価、有資格者基準等の関係規程等の内容を確認した。
② 決算書等を確認した。
③ 各病院を訪れ、施設等の現況を現認した。
④ 関係職員に対して質問を行った。
(3)監査の結果
各病院において、抽出サンプルした月の委託契約書、見積書、作業日報等、請求書、支出命令書、領収書等とそれぞれ履行内容及びその金額と合計について突合を行ったところ一致していた。
その他、特に指摘すべき事項はない。
3.保育所業務委託等
(1)概 要
市立病院のうち、医療センター及び八幡病院では、病院に勤務する看護師等の確保及び定着化を図るため院内保育所を設置し、病院に勤務する職員、嘱託、パート(以下、「病院職員等」という。)の保護乳幼児の保育を行っている。院内保育所の運営は、病院事務局長等から構成される「院内保育所運営委員会」を設置して、同委員会に業務委託を行っている。
他の2病院(xx病院、xx病院)の院内保育所については、平成 15 年3月末に廃止している。
(2)実施した監査手続
① 院内保育所運営業務委託契約書、各院内保育所運営要綱、各院内保育所保育料一覧xxの関係規程等を確認した。
② 運営について、保育乳幼児数の現況、各院内保育所歳入歳出決算書等を確認した。
③ 各院内保育所を訪れ、施設等の現況を現認した。
④ 関係職員に対して質問を行った。
(3)監査の結果
院内保育所運営委託契約書、院内保育所利用児童数調、保育士等給与明細、各院内保育所歳入歳出決算書等と保育履行内容及びその金額と合計について突合を行ったところ一致していた。
特に指摘すべき事項はない。
4.システム保守業務の委託
(1)概 要
医事会計やカルテ管理等のシステムは一度導入するとその保守業務は、施工業者に対する特命随意契約として行っている。
病院局は、医療機器及び医事会計システムは導入時においては、競争入札に基づいて契約ないしはコンペ方式に基づいて随意契約を行っているが、導入後の医療機器及び医事会計システムの保守業務は導入した業者への特命随意契約で行っている。
医療機器の保守業務については、年間保守契約書に基づき年1~4回、機器の定期点検を実施している。また、定期点検の検収については、委託先業者が保守、修繕したのちに病院へ修繕書を提出し、病院の技術職員が確認、検収して、会計支払いを行っている。
(2)実施した監査手続
① ANS カルテ管理システム保守業務委託、医事会計システム運用業務委託、自動再来受付機保守業務委託等システム関係等の契約の内容を確認した。
② 各病院を訪れ、システム、機器等の現況を現認した。
③ 業務について、保守サービス報告書、作業報告書、定期点検報告書等の書類の確認を行った。
④ 関係職員に対して質問を行った。
(3)監査の結果
医事会計システム運用委託契約書等とサンプル月の見積書、作業日報等、保守サービス報告書、作業報告書、定期点検報告書等、請求書、支出命令書、領収書等とその金額及び合計金額について突合を行ったところ一致していた。
5.委託業務の検収・確認
(1)概 要
委託業務の多くは、各病院で業者が履行するため、検収・確認は各病院が実施し、履行確認の後に支払いが行われる。
(2)実施した監査手続
① 病院会計規程等の関係規程類の内容を確認した。
② 各委託契約書に基づき、委託業務の名称、委託料、契約期間、契約履行場所、委託者名、受託者名、連帯保証人及び契約条項等により内容等を確認した。
③ 委託業務の履行状況等について、各病院等を訪問し履行状況等を現認及び施設管理業務日誌、病院作業日誌、工事完了報告書等の関係書類等により確認した。
④ 委託業務に係る支出決議書、支出予算整理簿、支出命令書、請求書、領収書等の関係書類を検証した。
⑤ 関係する事項について担当職員に質問を行った。
(3)監査の結果
各病院で調査したサンプル月の委託業務について、各関連帳票の金額の整合性は確かめられた。そのほか、特に指摘すべき事項はない。
Ⅶ.人件費関連
下表は、病院局における、直近3年間の人件費の推移である。参考までに4病院の中で最も人件費総額の多い医療センターにおける同期間の推移も示している。
病院局全体の医業費用合計はここ3年間はxx病院の費用を除くと 200 億円~250
億円の間で増加傾向にある。医業費用の内、人件費の占める割合は全体でおおよそ 58%
である。看護師等の年齢構成の違いもあるが、14 年度においてxx、八幡病院は 60%を超える水準である。医療センターは、市における高度医療サービスの充実を図るため、人員増による人件費の増加がみられる。
手当の種類は次ページのとおりである。
表Ⅶ-1 病院局 給与費推移
(単位:千円)
医療センター | 病院局合計 | |||||
12 年度 | 13 年度 | 14 年度 | 12 年度 | 13 年度 | 14 年度 | |
給料 | 1,742,342 | 1,997,420 | 2,105,844 | 4,785,967 | 4,971,925 | 5,060,947 |
手当 | 1,614,374 | 1,852,423 | 1,907,861 | 4,407,272 | 4,567,585 | 4,521,325 |
(時間外手当) | 162,094 | 194,342 | 201,582 | 467,380 | 476,520 | 489,962 |
(期末勤勉手当) | 793,506 | 895,995 | 896,960 | 2,169,931 | 2,230,840 | 2,142,811 |
(その他手当) | 658,774 | 762,086 | 809,319 | 1,769,961 | 1,860,225 | 1,888,552 |
報酬 | 529,894 | 562,180 | 554,790 | 1,176,277 | 1,205,758 | 1,201,768 |
賃金 | 199,480 | 253,108 | 266,527 | 443,420 | 508,499 | 527,581 |
退職給与金 | 170,641 | 290,249 | 414,752 | 561, 268 | 977,894 | 973,052 |
法定福利費 | 645,080 | 718,920 | 754,503 | 1,720,171 | 1,754,825 | 1,767,566 |
給与費計 | 4,901,811 | 5,674,299 | 6,004,277 | 13,094,375 | 13,986,487 | 14,052,239 |
医業費用合計 | 9,365,434 | 10,886,870 | 11,457,983 | 21,989,342 | 23,688,747 | 24,200,755 |
医業費用に占める 給与費割合 | 52.3% | 52.1% | 52.4% | 59.5% | 59.0% | 58.1% |
稼働病床数 | 516 | 636 | 636 | 1294 | 1401 | 1401 |
1病床当り給与費 | 9,500 | 8,922 | 9,441 | 10,119 | 9,983 | 10,030 |
(注)12、13 年度からはxx病院を除いている。
表Ⅶ-2 手当の種類
手当の種類 | 摘 要 |
時間外勤務手当 | |
単身赴任手当 | |
調整手当 | 国の調整手当に準じた手当 |
扶養手当 | |
住居手当 | |
通勤手当 | |
特殊勤務手当 | 危険作業等に対して支払われる手当、8つの種類がある |
休日勤務手当 | |
期末勤勉手当 | |
宿日直手当 | |
夜間勤務手当 | |
管理職手当 | |
管理職員特別勤務手当 | 臨時・緊急の必要等から、週休日又は休日勤務に対して支払われる手当 |
児童手当 |
(2)実施した監査手続
① 手当の支給額の検討
平成 15 年5月をサンプルとして抽出し、医療センターの時間外勤務手当、宿日直手当、住居手当、特殊勤務手当等について、時間外勤務等命令書、宿日直勤務命令書及び特殊勤務実績簿等の証憑と突合した。
また、同サンプルが各基準、規程、条例等に基づいて正確に計上されていることを確かめた。
② 試算表と補助簿との整合性検討
平成 15 年5月をサンプルとして抽出し、医療センターの給与支給明細表(例月)と試算表を突合した。
③ 定員の管理について
平成 14 年度の給与費に基づき、実職員数と定員数の比較を行った。
(3)監査の結果
① 手当の支給額の検討
サンプルは各基準、規程、条例等に基づいて正確に計上されていた。
② 試算表と補助簿との整合性検討
給与支給明細表(例月)と試算表は一致していた。
③ 定員の管理について
実職員数と定員数との比較において、法令違反等は特に認められなかった。その他、指摘すべき事項はない。
Ⅷ.繰入金関連
(1)概 要
地方公営企業は独立採算による経営が基本であるが、地方公営企業法第 17 条の
2に基づき、地方公営企業の経費の一部を地方公共団体の一般会計等から負担するものとし、また、同法第 17 条の3に基づいて一般会計等から補助できるとされている。負担あるいは補助の根拠としては次の①~③の3通りである。
表Ⅷ-1 地方公営企業法
①第 17 条の2 第1項 第1号(負担) | その性質上当該地方公営企業の経営に伴う収入をもって充てることが適当で ない経費 |
②第 17 条の2 第1項 第2号(負担) | 当該地方公営企業の性質上能率的な経営を行ってもなおその経営に伴う収入 のみをもって充てることが客観的に困難であると認められる経費 |
③第 17 条の3(補助) | 地方公共団体は、災害の復旧その他特別の理由により必要がある場合には、一般会計又は他の特別会計から地方公営企業の特別会計に補助をすることがで きる。 |
表Ⅷ-2 平成 14 年度一般会計繰入金 (単位:千円)
合 計 | 医療 センター | xx病院 | xx病院 | 八幡病院 | 看護学校 | 本庁 | 根拠条文 | |
収益的収入 | 3,503,552 | 1,116,321 | 370,177 | 57,788 | 1,568,208 | 180,216 | 210,842 | |
医業収益 | 1,478,945 | 161,658 | 0 | 0 | 1,317,287 | 0 | 0 | |
他会計負担金 | 1,478,945 | 161,658 | 0 | 0 | 1,317,287 | 0 | 0 | |
救急医療確保経費 | 1,317,287 | 0 | 0 | 0 | 1,317,287 | 0 | 0 | ① |
感染症病棟経費 | 161,658 | 161,658 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ① |
医業外収益 | 2,024,607 | 954,663 | 370,177 | 57,788 | 250,921 | 180,216 | 210,842 | |
他会計負担金 | 1,675,335 | 893,570 | 353,921 | 38,288 | 208,843 | 179,050 | 1,663 | |
企業債利息 | 734,309 | 464,522 | 63,114 | 38,288 | 166,722 | 0 | 1,663 | ② |
看護師養成費 | 179,050 | 0 | 0 | 0 | 0 | 179,050 | 0 | ① |
結核病棟運営経費 | 289,127 | 0 | 289,127 | 0 | 0 | 0 | 0 | ② |
高度医療経費 | 299,185 | 257,064 | 0 | 0 | 42,121 | 0 | 0 | ② |
リハビリテーション医療経費 | 3,643 | 1,963 | 1,680 | 0 | 0 | 0 | 0 | ② |
周産期医療経費 | 170,021 | 170,021 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ② |
他会計補助金 | 349,272 | 61,093 | 16,256 | 19,500 | 42,078 | 1,166 | 209,179 | |
本局設置経費 | 204,025 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 204,025 | ③ |
医師等研究研修費 | 16,494 | 8,135 | 1,645 | 2,240 | 2,976 | 0 | 1,497 | ③ |
基礎年金拠出金 | 124,653 | 51,383 | 14,346 | 16,735 | 37,712 | 1,166 | 3,312 | ③ |
児童手当負担経費 | 4,100 | 1,575 | 265 | 525 | 1,390 | 0 | 345 | ③ |
資本的収入 | 970,503 | 442,914 | 74,494 | 112,402 | 307,749 | 0 | 32,943 | |
出資金 | 957,903 | 442,914 | 61,894 | 112,402 | 307,749 | 0 | 32,943 | |
企業債償還金 | 864,239 | 421,246 | 45,006 | 87,600 | 277,443 | 0 | 32,943 | ② |
一般改良工事費 | 50,000 | 19,136 | 3,992 | 0 | 26,872 | 0 | 0 | ② |
医療器械購入費 | 43,664 | 2,532 | 12,896 | 24,802 | 3,434 | 0 | 0 | ② |
負担金 | 12,600 | 0 | 12,600 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
結核病棟運営経費 | 12,600 | 0 | 12,600 | 0 | 0 | 0 | 0 | ② |
合 計 | 4,474,055 | 1,559,236 | 444,671 | 170,190 | 1,875,957 | 180,216 | 243,785 |
(注)根拠条文欄の①~③は前述の地方公営企業法のxxの①~③に対応
平成 14 年度、病院事業会計に対する一般会計からの繰入金の総額は 44 億 7,405万円である。収益的収入と資本的収入に大別され、8割弱(78.3%)は収益的収入の繰入金である(35 億 355 万円)。収益的収入を病院別でみると、八幡病院(15億 6,820 万円)と医療センター(11 億 1,632 万円)に対する繰入金額が大きく、この2病院で収益的収入の繰入金額の 76.6% を占めている。
なお、収益的収入に対する他会計繰入金の比率(繰入率)について、全国の自治体病院(平成 13 年度)と比較すると、次表のようになる。年度が一致していないため正確ではないが、市の病院事業の繰入率は 13.6% であり、全国平均を若干上回る一方、政令指定都市の平均よりは低くなっている。1床当たりの繰入金についても同様の傾向である。
表Ⅷ-3 繰入率の比較 (単位:百万円)
平成 14 年度北九州市病院事業 | 全国自治体病院合計 | 指定都市 | |||||||||
医療 センター | xx病院 | xx病院 | 八幡病院 | 看護学校 | 本庁 | 合計 | 11 年度 | 12 年度 | 13 年度 | 13 年度 | |
収益的収入 | 12,462 | 1,597 | 2,530 | 7,534 | 200 | 1,505 | 25,828 | 4,141,246 | 4,203,952 | 4,241,153 | 291,907 |
うち他会計繰入金 | 1,116 | 370 | 58 | 1,568 | 180 | 211 | 3,504 | 575,802 | 568,058 | 562,658 | 53,985 |
負担金 | 1,055 | 354 | 38 | 1,526 | 179 | 2 | 3,154 | 482,250 | 476,211 | 475,131 | 45,806 |
補助金 | 61 | 16 | 19 | 42 | 1 | 209 | 349 | 85,264 | 84,060 | 81,662 | 7,342 |
特別利益 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 8,288 | 7,786 | 5,865 | 837 |
稼働病床数(床) | 636 | 155 | 210 | 400 | 0 | 0 | 1,401 | - | - | - | - |
収益的収入に対す る繰入金比率 | 9.0% | 23.2% | 2.3% | 20.8% | 90.3% | 14.0% | 13.6% | 13.9% | 13.5% | 13.3% | 18.5% |
1 床当たり繰入金 (千円) | 1,755 | 2,388 | 275 | 3,921 | - | - | 2,501 | 2,456 | 2,395 | 2,360 | 3,877 |
(資料)北九州市決算資料及び「平成 13 年度地方公営企業決算の概況」(総務省自治財政局)より作成
(2)実施した監査手続
① 市の「病院事業に対する一般会計の繰出基準」の資料を査閲するとともに、その内容について説明を受け、地方公営企業法及び国の基準(総務省自治財政局長通知)との整合性を検証した。
② 平成 14 年度一般会計繰入金の算定に係る根拠資料の一部を査閲し、繰出基準への準拠性を検証した。
③ 一般会計繰入金の算定に係る根拠資料の一部を査閲し、繰入金の算定根拠の妥当性や算定の正確性等について確認した。
(3)監査の結果
次の点については、改善を要する。
① 繰入金算定上のダブルカウント
原則として、繰入金算定の対象となる経費等は明確に特定され、かつ特定の経費を複数の繰入金の算定で重複して用いるべきではない。
平成 14 年度の繰入金算定根拠資料から次のようなダブルカウントが見られた。
八幡病院の MRI 保守業務委託費が、救急医療確保経費の繰入金算定と、高度医療の繰入金算定の両方においてカウントされており、救急医療確保経費の 851 千円だけ、余分に繰入金が算定されたことになる。
また、基礎年金拠出金の公的負担の経費については全額繰入金として算定されているが、他の繰入金でも基礎年金拠出金が算定基礎の経費に含まれている。救急医療確保経費等のように繰入金算定の最後に基礎年金拠出金分が控除されている場合もあるが、感染症病棟経費等のように控除されていない繰入金もあり、その分(病院局の試算によると 24,602 千円)だけ繰入金が膨らんでいることになる。
経費等 | 繰入金ごとの算定状況 | |
MRI 保守業務委託費 (八幡病院) | 救急医療確保経費 ・救命救急センターMRI保守委託費(按分後) 249 千円 ・第2夜間・休日急患センターMR I保守業務委託費(按分後) 602 千円 | 高度医療経費 ・八幡病院MRI保守委託料 4,200 千円 |
基礎年金拠出金 | 基礎年金拠出金負担金 (病院事業会計全体) 124,653 千円 | ・感染症病棟経費(基礎年金拠出金分を 算定から控除せず) ・結核病棟運営経費(同上) ・高度医療経費(同上) ・リハビリテーション医療経費(同上) ・周産期医療経費(同上) ※救急医療確保経費、看護師養成費、本局設置経費は基礎年金拠出金分を算定から控除 |
重複を取り除くため、算定方法を見直すことが必要である。表Ⅷ-4 繰入金算定上のダブルカウント実例
(資料)繰入金算定根拠資料より作成
② 繰入金算定の正確性
監査を行った範囲内において、平成 14 年度の繰入金の算定で次表のような入力・計算ミスが見つかっている。正しく計算すると収益的収入の繰入金額の合計は 3,496,605 千円となる。決算額より 6,946 千円ほど小さく、それだけ余分に繰入金を受け入れたことになる。
平成 13 年度の同じ算定個所についてはいずれも正しく計算されており、担当職 員の交代時に引継ぎがうまくいっていないこと等が原因であるとの説明を受けた。ただし、もともとデータや算定式の量が多いため、引き継ぎの徹底のみでは同様 の計算ミスが発生する可能性を否定できない。現在、計算シート上で入力や計算 に関する解説が付されているが、別途、繰入金算定業務に関するマニュアルのx xや計算過程のチェック機能の導入等を含めて、入力・計算業務の改善について 検討する必要がある。入力・計算の単純なミスが繰入金の金額の間違いに直結す るだけに、慎重な事務処理が求められる。
表Ⅷ-5 繰入金算定上の入力・計算ミスの実例
繰入金 | 算定基礎科目 | 計算ミスの内容 |
救急医療確保経費・救命救急センター運営経費(八幡病院) | ・委託料・被服洗濯業務 ・厚生福利費 ・職員被服費 ・消耗品費 ・消耗備品費 ・諸会費 | ・決算額×救急職員数/職員総数という算定式の中の職員総数を 361 名とすべきところを、 362 名で計算している。 |
同上 | ・旅費交通費 ・雑費 | ・決算額×救急医師数/医師総数という算定式の中の医師総数を 69 名とすべきところを、 74 名で計算している。 |
同上 | ・委託料・産業廃棄物処理業務 ・委託料・産業廃棄物収 集運搬業務 | ・入院決算額×救急患者数/入院患者数という算定式の中で、入院決算額で計算すべきところ、入院と外来を合計した決算額で計算して いる。 |
救急医療確保経費・第 2夜間休日急患センター(八幡病院) | ・委託料・産業廃棄物処理業務 ・委託料・産業廃棄物収 集運搬業務 | ・外来決算額×急患患者数/外来患者数という算定式の中で、外来決算額で計算すべきところ、入院と外来を合計した決算額で計算して いる。 |
救急医療確保経費・救命救急センター運営 経費(八幡病院) | ・委託料・医事会計システムハード保守 | ・入院決算額×救急患者数/入院患者数で計算すべきところ、決算額×救急面積/(全体x x-機械室面積)で計算している。 |
救急医療確保経費・第 2夜間休日急患センター(八幡病院) | ・その他医業外収益 | ・公舎入居料×医師数×12 月という算定式の中で、公舎入居料を 33,500 円で計算すべきと ころ、33.5 円で計算している。 |
結核病棟運営経費 (xx病院) | ・委託料 | ・委託料の合計金額を 107,127,661 円とすべき ところ、106,443,892 円と計算している。 |
(資料)繰入金算定根拠資料より作成
第4.利害関係
包括外部監査の対象とした事件につき、私は地方自治法第 252 条の 29 の規定により記載すべき利害関係はない。
以 上
平成 15 年度
包括外部監査の結果に関する報告に添えて提出する意見書
「病院事業」
平成 16 年2月
北九州市包括外部監査人公認会計士 x x x x
包括外部監査の結果に関する報告に添えて提出する意見書
(病院事業)目 次
第1.意見書について 1
第2.病院事業についての意見 2
Ⅰ.病院運営関連 2
1.病院の組織 2
2.患者xxxの把握 4
Ⅱ.固定資産関連 6
1.リース資産の会計処理 6
2.リース契約 8
3.廃棄(除却)手続 9
4.医療機器の稼働状況管理 10
5.減価償却の開始時期 11
Ⅲ.診療報酬関連 12
1.返戻・査定・過誤レセプトの処理 12
2.計算差額 16
3.診療報酬請求点数のチェック体制 17
Ⅳ.債権管理関連 19
1.「北九州市立病院使用料及び手数料滞納整理事務処理要綱」の改訂 19
2.未収金管理体制の強化 20
Ⅴ.材料費関連 21
1.材料費に関わる会計事務 21
2.実地たな卸の実施 24
Ⅵ.委託費関連 25
1.委託契約の方法の見直し 25
2.医療事務関係業務委託の契約の締結方法の見直し 30
3.保育所運営業務 33
4.委託業務の検収・編綴等の統一 34
Ⅶ.人件費関連 35
1.管理者の任期 35
2.時間外作業の管理 36
3.臨時調整手当 37
4.事務職員のローテーション 39
5.退職給付の処理 40
Ⅷ.繰入金関連 42
1.病院局設置に要する経費の繰出 42
2.繰入金算定式の統一性の確保 43
Ⅸ.診療科別原価計算の導入 44
Ⅹ.今後に向けての提案 58
本文中の表内の数値については、四捨五入にて端数処理を行っており、合計数値と内訳数値とに相違がある場合がある。
第1.意見書について
監査実施時に、経済性、効率性及び有効性の観点から組織又はその運営の合理化に資するために必要と認めた事項につき、地方自治法第 252 条の 38 第2項に基づき意見として述べている。
監査の結果とともに、この意見についても参考とされ、今後の病院事業に関して、より一層改善を望むものである。
第2.病院事業についての意見
Ⅰ.病院運営関連
1.病院の組織
(1)病院局全体
① 概 要
各病院では、幹部会、運営協議会等の委員会を設置し、病院の運営に当たっている。これらの委員会組織における運営について、自主性が尊重されているところである。一部では、委員会の運営に関し、北九州市病院薬事委員会運営方針等の病院局長通知を行って、統一的な規定を有している面もあるが、多くは各病院において構成される委員会等会議体の種類、役割、構成者等は異なっている。
例えば、医療安全管理委員会について四つの病院における委員の構成を比較してみると、次の表のとおり、異なっている。異なる状況について管理指針等の規定によれば、八幡病院を一例とすると、当該病院は医療安全管理の責任的立場にある者による協議を想定しているため、他の病院よりも構成人数が少ないものと推測できる。
病 院 | 委員の構成 |
医療センター | 院長、総括副院長、副院長、看護部長、事務局長、 事務局次長 |
八幡病院 | 院長、副院長、医局長、看護部長、薬剤部長、放射 線科xxxx、臨床検査科xxxx、事務局次長 |
xx病院 | 院長、副院長、診療科部長(一部副部長)、放射線科部長、放射線科技師長、麻酔科部長、薬剤科部長、臨床検査科技師長、理学療法士、xxxxx、副xxxxx、中央材料部看護師長、手術部看護師長、 病棟看護師長、事務局長、事務局係長、栄養士 |
xx病院 | 副院長、薬剤部長、医師若干名、看護師若干名、事 務局長、事務局医事係長 |
なお、開催頻度は月に1回と同一である。表Ⅰ-1
② 意 見
市立4病院は、市病院事業の設置等に関する条例に基づいて設置、運営がなされている。また、病院の運営には意思決定を要し、組織を構成しながら、合議を含む意思決定事項の分担者が規定されているが、各病院とも、地方公営企業法(以下「地公企法」という。)や市病院局事務分掌規程等の同一の規定に基づいている。さらに、近年の医療事故に見られるように今後、病院運営において避けること のできない多様な課題に対処していかなくてはならない。病院の運営に特有のリスクを漏れなく予測し未然に防ぐ意味でも、組織的なリスクマネジメントが必要
である。
そのためには、病院の規模や特徴を勘案しながらも、できるだけ統一的な規定によって、構成される委員会等会議体の種類、役割、構成者等をルール化し、同じ水準での体制整備をすることが望ましい。
(2)xx病院
① 幹部会等委員会組織
院内幹部会規則は制定されていないが、事務局長の説明によれば、来春、財団法人日本医療機能評価機構の「病院機能評価」を受けることを検討しており、その準備として、病院全体の管理体制の整備のため、近く病院内のすべての規程の整備を進めていくとのことであった。他の未整備の規程も含めて整備することが望まれる。
② 経営改善委員会
経営改善委員会での議事の記録がなされていない。そもそも同委員会の規約がないため、議事録の作成が求められているものではないが、委員が出席できない場合、情報の共有化等の面からも議事録の作成が望ましい。
③ 医療安全管理委員会
医療安全管理委員会の議題はほとんど各科からのインシデント報告であり、委員会にインシデント報告書が提出されるため、委員会の議事録は改めて作成していない。しかしながら、現在のところ規約上は議事録作成を求めていないが、どのような議事があったか事後的に確かめる上で、議事録を作成することが望ましい。今後は病院機能評価を受けるためにも整備していきたいとのことである。
なお、インシデントについては、年度末に部門報告内容ごとに件数を集計してまとめているが、単に件数報告的なものであり、今後の医療ミスを防止するのに役立つような形でまとめられることが望ましい。
2.患者xxxの把握
(1)概 要
現在、各病院において、患者からの意見や要望を把握する方法としては、患者と直に接する医療、看護、事務手続等の現場から上がってくるもののほかに、電話や投書、電子メール等、一般的な手段が用いられている。その中で、サービスの向上や経営改善を目的として、組織的に取組まれているものとしては、投書箱・意見箱の設置がある。名称や処理手順等は各病院で異なるが、いずれも投書箱等に投函された患者からの意見を定期的に集約し、幹部に報告するとともに意見への対応を行っているものである。特に、医療センターでは設置数も多く、意見への対応を院外ニュースで不特定の患者にフィードバックする等、充実している。
表Ⅰ-2 各病院における投書箱等の概要
医療センター | xx病院 | xx病院 | 八幡病院 | |
名 称 | 投書箱「声」 | あなたの「声」 | 意見箱 | 意見箱 |
設置場所 | 外来ホール( 1 階)、時間外待 合、各階デイルームに合計 10ヵ所 | 外来受付機横カウン ター | 1階受付カウンター | 1階医療相談室の横 |
回収頻度 | 毎週1回(月曜日) | 毎週1回(月曜日) | 毎月2回 | 毎月1回 |
処理手順 の概要 | 1)処理票にまとめ、該当各科 に検討依頼 2)各科は事務局に処理報告又は処理計画提出 3)その一部を週1回開催の 幹部会で報告、検討 4)検討結果に基づき処理(電 話連絡等) | 1)毎週月曜日の幹部 会でxx、読み上げ 2)関係各科で対応 3)翌週幹部会で処理状況報告 | 1)月2回の幹部会で 報告、及び対応方法の協議 2)関係部署に周知徹底させるとともに要望者に電話で回答 | 1)毎月1回集約して 正副院長へ報告 2)関係各科と対応策を協議 |
備 考 | ・院外ニュース(チラシ及び ホームページ上)でも「声」とそれへの対応を紹介 | ・一時期設置を中断し ていたが平成15 年4月に再開 | - | - |
(資料)病院局資料及びヒアリング調査結果より作成
(2)意 見
病院にとっての顧客は患者であり、患者の満足度や評価が病院の売上げ及び経営自体に直結するといっても過言ではない。特に患者にとっては医療サービスの質だけでなく、施設環境や接客態度に至るまで多様な要因が評価対象となり、その評価結果が市場に与える影響(口コミ等を通じた評価の浸透)も大きいため、今まで以上に患者のニーズの把握に努めることが必要である
例えば、投書箱等の仕組みをもう少し工夫する余地がある。各病院の自主性を阻害しない程度に、病院局として統一的な仕組みに改善するとともに、その状況を病院局で取りまとめて病院間で意見や対応の情報を共有化することが考えられる。それが各病院の競争意識の喚起やサービス改善の促進につながると思われる。また、
4病院を管理する立場の病院局としても、各病院のサービスや経営の改善、あるい
は今後の病院のあり方等を検討する材料であり、データベース化し、適宜分析することが有効である。さらに、必要に応じて、患者満足度調査を4病院共通で実施する等、患者ニーズの多様な把握方法についても組み合わせていくことを提案する。
Ⅱ.固定資産関連
1.リース資産の会計処理
(1)概 要
平成 14 年度において、リース契約が八幡病院で1件ある。
地公企法上、リースに関する規定はなく、病院局では従来から契約に基づく、毎月のリース料を計上しているのみである。
(2)意 見
病院局では契約時に契約書とともに覚書を作成しており、それには契約期間が明記され、例外を除いて実質的に5年間の契約となっている。また、リース期間終了後無償で譲り受ける旨の記載がある。上述のとおり地公企法上、リースに関する規定がないため、病院局の処理は法令等に照らして、反するものではない。
しかし、企業会計で一般に適用されるリース会計基準の観点からは、病院局のリース契約は、所有権が借主に移転すると認められるxxxxxx・xxx取引(※
1)に該当するため、実質は割賦で購入したものと見做され、通常の売買取引と同様、リース料総額から利息相当額を控除した金額を資産計上し、リース期間にわたって毎期減価償却する方法もある。この会計処理は、病院会計準則の見直し案にも明記されている(平成 15 年4月厚生労働特別研究事業「病院会計準則及び医療法人会計基準の必要性に関する研究」)。
また、過去の同様の契約について、期間満了後の固定資産(栄養管理システム:リース料総額 20,700 千円)の取扱いを寄付と見做す処理している。契約期間が終了しているということで、台帳には記帳処理していない。しかし、稼働しており、病院運営に貢献しているものであり、何らかの評価額(例えば備忘価額)で記帳し、管理していく方法もある。
以上、参考にされたい。
※1:所有権が借主に移転すると認められるファイナンス・リース取引
「リース取引に係る会計基準」では、下記の内容のリース取引は所有権が借主に移転すると認められるファイナンス・リース取引に該当し売買処理をしなければならないとなっている。
ア.中途解約ができない(事実上できないものを含む)取引で、経済的利益を実質的に享受かつコストを実質的に負担するリース取引
イ.所有権が借主に移転すると認められるリース取引で、以下のいずれかの要件を満たす場合
(ア)リース契約上、リース期間終了後又はリース期間の途中でリース物件の所有権が借手に移転することとされているリース取引
(イ)リース契約上、借手にリース期間終了後又はリース期間の途中で、名目的価額又は著しく有利な価額で買い取る権利(割安購入選択権)が与えられ、行使が確実なリース取引
(ウ)リース物件が借手の用途等にあわせた特別仕様で、返還後第3者に再リース又は売却できないもの(借手のみ使用することが明らかな物件)
2.リース契約
(1)概 要
地方自治法第 214 条によれば、「歳出予算の金額、継続費の総額又は繰越明許費の金額の範囲内におけるものを除くほか、普通地方公共団体が債務を負担する行為をするには、予算で債務負担行為として定めておかなければならない。」となっている。また、地方公営企業法第24 条及び同法施行令第17 条第1項第4号によれば、予算に債務負担行為を記載するよう定められている。
病院局では現状、リースについて翌1年度分の予算を把握しているのみである。
(2)意 見
病院局が締結しているリース契約は、上述のとおり覚書を締結しており実質的に
5年間の契約となっている。地方自治法に鑑みると、契約満了までの債務額、すなわち5年分のリース料総額を債務負担行為の形式による必要がある。
3.廃棄(除却)手続
(1)概 要
会計規程第 103 条第1項によれば、「主管課長は、その主管に属する固定資産を廃棄し、又は撤去する場合は、振替伺書に次の各号に掲げる事項を記載し、合議欄押印のうえ、総務課長に提出しなければならない。(1)固定資産の名称及び種類(2)所在地(3)理由(4)その他必要と認められる事項」となっている。
平成 14 年度の固定資産除却状況は以下のとおりである。
表Ⅱ-1 (単位:千円)
医療センター | xx | xx | 八幡 | 本庁 | 合計 | |
土地 | - | - | - | - | - | - |
建物 | - | 904,934 | - | - | 1,511,927 | 2,416,862 |
構築物 | - | 4,562 | - | - | 58,438 | 63,000 |
器械備品 | 21,925 | 248,907 | 7,638 | 85,748 | 134,437 | 498,657 |
車両 | - | - | - | - | 26 | 26 |
放射性同位元素 | 4,610 | - | - | - | - | 4,610 |
電話加入権 | - | - | - | - | - | - |
(2)意 見
除却の手続について、検討すべきである。具体的には、現状の除却に関する現場医師、看護師からの報告だけではなく、除却時に事務局の職員が立会うことが挙げられる。また、写真等による視覚的な証憑を作成することも有用である。この手続の追加により、除却が適切に行われたことを明らかにすることができるとともに、除却漏れの発生を少なくする効果が期待できる。
仮に、現物がないことを理由にした除却の場合は、会計規程第 99 条第1項の「その他の理由」による固定資産の滅失に該当する。そのため、事故報告書の形で病院局長への報告が必要になる。
除却についても取得と同様、厳密な手続が行われる必要がある。
4.医療機器の稼働状況管理
(1)概 要
病院局では購入後の高額医療器械(購入価額 10,000 千円以上)の稼働状況管理は、予算折衝時の資料である「医療器械稼働状況表」を作成し、モニタリングしている。なお、「医療器械稼働状況表」には台帳番号、器械名及び設置場所、規格・仕様、導入時見込件数、月別件数(実績)が記載されている。
(2)意 見
各病院での、現状の稼働状況管理では不十分であると考える。すなわち、「医療器械稼働状況表」は、予算折衝のヒアリングの資料として、高額医療器械の更新等の際に、作成されているのみであり、定期的にモニタリングするための資料としては活用されていない。
医療という公共性の強い事業であったとしても、公営企業として事業を継続していかなければならない使命を課されている以上、高額な投資額が、どの程度の期間で診療報酬等によって回収されているのか検討することは必要である。また、予算の執行が妥当であったかを事後的に検証するためにも、定期的なモニタリングは必要である。
なお、細かい稼働状況管理は各病院に委ねられているため、各病院の責任者は、高額医療器械に関して最大利用可能な能力と現実の利用実態を把握し、稼働の少ない医療器械等については利用効率向上の方策等を迅速に検討することが望ましい。
例えば、高額医療器械が有効に利用されていることを計画と実績を比較する形でモニタリングし、カンファレンス等を定期的に実施し、有効利用されるような意識づけを行う等の方策が必要である。
5.減価償却の開始時期
(1)概 要
病院局では、減価償却開始時期を取得の翌年度としている。公営企業法上、この処理は、規定に反するものではない。ただし、各公営企業が独自に管理規程を設定して、取得開始年度から月割計算することは妨げない。
(2)意 見
減価償却とは、成果獲得のための償却資産の使用による経済的犠牲を一定の方法により費用計上し、もって費用収益対応による損益計算を行う会計処理である。
現状の会計方針によれば、仮に高額な診療報酬が期待できる医療器械の購入を年度の早い月に購入し稼働させた場合では、成果獲得に対応する犠牲としての費用が十分に計上・反映されず、損益計算書の数値だけでは各病院の経営成績が明らかにできない。
取得した年から月割償却するように、会計方針を変更することによって病院事業の経営成績を実態に即して明らかにできる。経営に役立たせる管理会計の観点からは正確な償却計算が望まれる。
Ⅲ.診療報酬関連
1.返戻・査定・過誤レセプトの処理
(1)概 要
各病院の医事係は、診療報酬点数表に基づいて計算した医療費のうち、保険請求分についてレセプト(診療報酬明細書)を作成し、1カ月分のレセプト集計表を添付して、審査支払機関である社会保険診療報酬支払基金(以下、「基金」という。)及び福岡県国民健康保険団体連合会(以下、「国保連」という。)に請求する。
レセプトは患者ごとに1月単位で作成され、病名や診療内容、投与された薬等が記載される。
レセプトは診療行為のあった月(以下、「診療月」という。)の翌月 10 日頃までに請求し、基金及び国保連が請求のあった月にレセプトを審査する(以下、「審査月」という。)。基金及び国保連は、審査の結果、審査月の翌月に減点通知書を病院に送り(査定)、同様に記載不備のレセプトを病院に返す(返戻)。
基金及び国保連は、提出されたレセプトについて適正な医療を行っているかどうかを審査し、審査後保険者に送付する。同時に病院に対して保険金額が振り込まれる。基金及び国保連から送付されたレセプトを保険者が最終的に審査し、その結果保険者による減点や返戻が生じる。これを過誤調整といい、この通知を過誤調整通知書という。
(2)返戻レセプトの処理状況
① 返戻レセプトの状況
返戻レセプトは各病院にて「返戻整理簿」により管理されているとともに、局業務課に「返戻レセプト処理状況」を毎月提出している。
返戻通知を受けると、当初請求時のxxを減額変更し、再請求する時点で改めてxxする。
平成 14 年度の返戻状況は下表のとおりである。
表Ⅲ-1 (単位:件、円)
病院名 | 項目 | xx(請求) | 返 戻 | 返戻率 |
医療センター | 件数 | 229,487 | 1,364 | 0.59% |
金額 | 9,305,630,027 | 219,019,857 | 2.35% | |
xx病院 | 件数 | 46,645 | 277 | 0.59% |
金額 | 1,097,968,700 | 23,873,101 | 2.17% | |
xx病院 | 件数 | 57,582 | 421 | 0.73% |
金額 | 2,063,365,753 | 64,035,558 | 3.10% | |
八幡病院 | 件数 | 143,235 | 893 | 0.62% |
金額 | 4,807,288,456 | 108,868,795 | 2.26% | |
計 | 件数 | 476,949 | 2,955 | 0.62% |
金額 | 17,274,252,936 | 415,797,311 | 2.41% |
表Ⅲ-1の返戻のうち、年度末時点で再審査未了につき、再請求なされていないもの及び実査日現在におけるその解消状況は、下表のとおりである。
表Ⅲ-2 (単位:件、円)
病院名 | 項目 | 年度末時点 | 実査日(10/16)現在 |
医療センター | 件数 | 160 | 0 |
金額 | 10,969,021 | 0 | |
xx病院 | 件数 | 13 | 9 |
金額 | 485,156 | 462,898 | |
xx病院 | 件数 | 40 | 1 |
金額 | 5,348,607 | 191,378 | |
八幡病院 | 件数 | 156 | 17 |
金額 | 20,555,241 | 6,376,681 | |
計 | 件数 | 369 | 27 |
金額 | 37,358,025 | 7,030,957 |
返戻理由は、保険証記号番号の誤りや資格喪失後の受診等事務上の原因によるものが多く、通常1カ月から2カ月程度で記載不備を解消し、再請求されている。しかし、上表にあるとおり数カ月以上保留する場合があり、年度末時点で再請求未了返戻レセプトのうち、実査日( 10 月 16 日)現在で27 件、7,030,957 円の返戻レセプトが再請求未了となっている。このように処理が遅滞している理由は、有効期限経過後の新たな保険又は保険の正確な記号番号を確認するため、患者本人に連絡をとるのに時間がかかっているためである。
② 返戻率削減に向けた取組み
返戻があると、適正な診療報酬の支払が遅れてしまうことから、適正な診療報酬を適正な時期に計上するためにも、返戻率削減に向けた取組みが必要である。
保険証の記号番号の不備を原因とする返戻を抑制するためには、保険証の毎月確 認を徹底する必要がある。確認時に保険証のコピーを取っておくことも、返戻後の 再請求を迅速にするために有効な方策である。なお、各病院に保険証コピーの実施 状況を質問したところ、医療センターでは実施しておらず、八幡病院では初診時の み実施、xx病院とxx病院では初診時及び変更時とも実施していると回答を得た。
さらに、レセプト作成者以外の者による再チェックも有効である。医事係職員が、新患や保険が変更となった患者について、保険証のコピーをもとに、記号番号を再チェックする等、効果的な返戻抑制策を講じる必要がある。
(3)査定・過誤レセプトの処理状況
① 査定・過誤の状況
平成 14 年度の状況は下表のとおりである。
表Ⅲ-3 (単位:件、円)
病院名 | 項目 | xx(請求) | 査定 | 比率 | 過誤 | 比率 | 査定・過誤計 | 比率 |
医療センター | 件数 | 229,487 | 5,973 | 2.60% | 3,715 | 1.62% | 9,688 | 4.22% |
金額 | 9,305,630,027 | 36,134,427 | 0.39% | 17,652,565 | 0.19% | 53,786,992 | 0.58% | |
xx病院 | 件数 | 46,645 | 410 | 0.88% | 558 | 1.20% | 968 | 2.08% |
金額 | 1,097,968,700 | 1,681,834 | 0.15% | 2,042,503 | 0.19% | 3,724,337 | 0.34% | |
xx病院 | 件数 | 57,582 | 1,242 | 2.16% | 1,040 | 1.81% | 2,282 | 3.96% |
金額 | 2,063,365,753 | 6,839,474 | 0.33% | 3,159,726 | 0.15% | 9,999,200 | 0.48% | |
八幡病院 | 件数 | 143,235 | 4,302 | 3.00% | 2,289 | 1.60% | 6,591 | 4.60% |
金額 | 4,807,288,456 | 15,918,257 | 0.33% | 7,665,126 | 0.16% | 23,583,383 | 0.49% | |
計 | 件数 | 476,949 | 11,927 | 2.50% | 7,602 | 1.59% | 19,529 | 4.09% |
金額 | 17,274,252,936 | 60,573,992 | 0.35% | 30,519,920 | 0.18% | 91,093,912 | 0.53% |
査定の理由は、過剰診療や不適当な診療等医療上の理由によるものや、診療報酬 の制度上、算定できない診療費の計上といった事務上の理由によるもの等がある。各病院は「増減点連絡書」・「過誤減」等により減点の通知を受けたレセプトにつ
いては、減点の理由が合理的かどうか検討し、再審査請求を行うかどうか判断することになる。
② 再審査請求の処理
上表のうち、平成 14 年度医療センター分について、再審査請求の処理について質問を行い、以下のとおり回答を得た。
医療センターでは、「増減点連絡書」・「過誤減」等の通知を各科xx部長まで供覧し、各医師が減点理由の合理性と再審査請求の可否を検討する。なお、減点が 5,000 点以上のレセプトについては、毎月、開催される保険診療委員会にて、減点理由の合理性について検討される。ここで、医師が再審査請求すべきであると判断したものにつき、再審査請求することになる。
再審査請求する分については、院長決裁により処理され、処理簿も作成されてい るが、それ以外の分で減点が 5,000 点未満のものについては特に処理簿等はなく、再審査請求をしないのか、保留しているのかといった状況が明らかにされていない。減点の減少や再審査請求の漏れを防ぐ観点からは、再審査請求を見送った理由等の 顛末を、明らかにしておく必要がある。
なお、減点が 5,000 点以上のもので再審査請求しないものについては、医師が「再審査請求をしない理由書」を作成し、院長決裁により処理することとしているが、
実際には一部の医師が作成するに止まっている。「再審査請求をしない理由書」には理由だけでなく、今後の対策も記載されるようになっており、今後において、同様の症例での同様の減点を防止するのに有効である。また、「再審査請求をしない理由書」という書面で記録を残すことによって、保険診療委員会の委員以外の医師も適宜参照することができ、今後の対策のxxxxが図られる。したがって、査定・過誤の防止をより有効にする観点からは、「再審査請求しない理由書」の作成を徹底する必要がある。
平成 14 年度の医療センター分について、実査日(9 月 17 日)現在の再審査請求
状況の調査を依頼した。結果は下表のとおりである。なお、減点が 5,000 点以上のレセプトについては、翌月までに再審査請求の判断を報告することとなっているので、再審査請求する分、再審査請求をしない分、判断を保留している分の区別ができるが、5,000 点未満のレセプトについては、供覧した各医師が再審査請求すると申し出たレセプトのみ処理するため、それ以外の分は再審査請求しないのか、保留しているのか把握していない。そこで、それ以外の分については全て再審査請求しない分として集計している。
表Ⅲ-4 医療センター平成 14 年度査定・過誤再審査請求状況 (単位:件、円)
項 目 | 5,000 点以上 | 5,000 点未満 | 計 | |
再審査請求した分 | 件 数 | 120 | 56 | 176 |
金 額 | 10,233,468 | 226,247 | 10,459,715 | |
再審査請求しない分 | 件 数 | 64 | 9,412 | 9,476 |
金 額 | 6,501,474 | 34,138,461 | 40,639,935 | |
保留している分 | 件 数 | 36 | 0 | 36 |
金 額 | 2,687,342 | 0 | 2,687,342 | |
計 | 件 数 | 220 | 9,468 | 9,688 |
金 額 | 19,422,284 | 34,364,708 | 53,786,992 |
保留している分の内訳は、翌月(10 月)の保険診療委員会で再審査請求の判断が報告される分が、6件で 771,624 円、それ以外の分が、30 件で 1,915,718 円である。それ以外の分とは、保険診療委員会での報告時に判断を保留したものであり、その後の判断結果については報告が求められておらず、保留分のまま集計しているものである。
その後の判断結果が報告されないと、保留期間が長くなり処理が遅滞することから、再審査請求の漏れを防ぐ観点からも、医事係が状況を医師に適宜問い合わせる等の方策が考えられる。
2.計算差額
(1)計算差額の状況
基金及び国保連請求分について、下表のとおり入金予定額と銀行振込額との差額
(以下、「計算差額」という。)を算出した。入金予定額とは当初請求に基づく調定額から、返戻・査定・過誤分を減額した額である。ただし、返戻・査定・過誤については、診療月の2ヵ月後に返戻・査定・過誤のあった分を、当初xxに対応する分として算出している。
表Ⅲ-5 (単位:千円)
医療センター | xx病院 | xx病院 | 八幡病院 | 合 計 | |
調定額 A | 9,305,630 | 1,097,969 | 2,063,366 | 4,807,288 | 17,274,253 |
返戻 B | 219,020 | 23,873 | 64,036 | 108,869 | 415,798 |
査定・過誤 C | 53,787 | 3,724 | 9,999 | 23,583 | 91,093 |
入金予定額 D=A-B-C | 9,032,823 | 1,070,372 | 1,989,331 | 4,674,836 | 16,767,362 |
銀行振込額 E | 9,017,487 | 1,052,166 | 2,037,881 | 4,738,895 | 16,846,429 |
計算差額 F=E-D | △15,336 | △18,206 | 48,550 | 64,059 | 79,067 |
(2)計算差額の原因
計算差額の分析は行われていないため、計算差額の原因について、各病院に検討を依頼したところ、次のような回答を得た。
すなわち、計算差額は、主に当初請求時においてレセプト集計表の請求点数を調定額に換算する過程や、返戻・査定・過誤の通知点数を金額に換算する過程で生じるものと考えられるとのことである。
計算差額に対しては、支払基金及び国保連の支払金額に合わせる形でxx変更を行っている。つまり、最終的には支払基金及び国保連からの通知に基づく金額を医業収益として計上しており、債権管理の観点からは、病院が主体的に医業収益を計上すべきであり、当初請求時の調定額をより正確に算定する必要がある。
調定額の計算は、主に各病院医事係担当者が作成した、表計算ソフトの所定様式で行っているものの、公費負担分や患者負担割合等が複雑であるためどうしても計算差額が生じている状況である。しかし、医療センターでは、平成 15 年度の7月診療分より様式を改良し、より正確なxx金額を算定できるように対策が講じられているところであり、不明な計算差額をできるだけ少額にするよう、改善の方向に向かっている。
より正確なxx金額の算定は、全病院に共通の課題であり、病院ごとに対策を講じるのではなく、効率的に事務が改善されるよう、各担当者研修等の機会を設け、全病院統一した事務処理をされたい。
3.診療報酬請求点数のチェック体制
診療報酬請求点数について、本来は医事係においてチェックすることが望ましいが、現状を考慮すると難しい。しかし、診療報酬請求事務の適正性を確保する必要があるため、現状の事務体制を前提とした工夫として、以下の提案をする。
(1)外部講師による診療報酬請求事務研修等により、知識の習得を図ってはどうか研修等を行うことで、精通者とまではいかないとしても、診療報酬請求事務の基
本的な知識を習得することができる。その結果、病名漏れや診療内容漏れ等、基本的なミスはチェックできるようになると考えられる。
また、研修は請求事務を分掌している医事係だけでなく、医師や看護師等関連職員も対象とすることで、点数解釈等の相互理解が深まり、診療報酬請求事務の適正性がより確保されることが期待される。
なお、専門性の高い診療報酬のチェック業務については、OB を嘱託として採用し、知識移転や習得の向上を図っている公立病院もある。
(2)チェック業務を別の業者に委託してはどうか
結果報告書でも述べたが、診療報酬請求事務は全面的に民間のA社に委託しており、局は、A社が集計した請求点数をチェックすることなく、そのまま受け入れている。現状では、医事係職員がレセプトチェックを行うことは技術的に困難なため、別の対策として、診療報酬請求事務のチェック業務を、A社とは異なる別の外部業者に委託することを提案する。
別の外部業者がチェックすることで、牽制機能が働くことが期待され、より適正な診療報酬請求事務の実施に資すると考えられる。
委託契約に際しては、以下の点に留意すべきであると考える。まず、現場従事者の要件や実施計画及び実施結果に関する事項を明確に定める必要がある。また、現場従事者は、診療報酬請求事務を遂行できる知識と経験を有する者とし、具体的な資格要件も定める。例えば、医療事務の認定資格を取得している者で、かつ、実務経験を一定期間以上有する者といった要件が考えられる。次に、実施計画及び実施結果に関する事項も定める必要がある。例えば、提出させた実施計画に基づき計画的に業務を実施し、その実施結果を毎月報告させ、業務の完遂を確認するように定めることが考えられる。
(3)業務仕様書に従って業務がなされたかどうかのチェックリストをA社に作成させ、医事係に提出させてはどうか
A社自身に業務のチェックリストを作成させ、当該チェックリストを医事係に提出させることを業務仕様書に盛り込むことを提案する。
A社自身にチェックリストを作成させることで、診療報酬請求事務に対する自己チェック機能が働くことが期待され、より適正な診療報酬請求事務の実施に資すると考えられる。
例えば、チェック項目として、レセプトの点検項目を挙げ、点検済みの項目にチェックマークを付すことで、点検漏れが防止できるとともに、点検者以外の者が点検済みであることを客観的に確かめることができる。
Ⅳ.債権管理関連
1.「北九州市立病院使用料及び手数料滞納整理事務処理要綱」の改訂
各病院の未収金管理は、「北九州市立病院使用料及び手数料滞納整理事務処理要綱(以下、「事務処理要綱」という。)」に基づいてなされている。
しかし、債権回収に関して、事務処理要綱には、「担当者は、適宜、外来及び入院の未収状況を確認し、収入未済となっているものについて督促状等の発送を行う。」とあるものの、何日以内に発送するかといった期日についての明確な規定がない。そのため、担当者によって未収金管理の事務処理の精度が異なる。例えば、結果報告書にあるとおり、医療センターにおける 14 年度の入院未収金台帳では、催告状送付後6カ月間記事
がないもの等、3カ月以上接触のないものが9件、また、全く記事がないものが 11 件ある一方で、逐一、滞納者との対応が記録されているものがあった。
滞留未収金が増加すると、病院経営にマイナスの影響を及ぼすことになるため、未収金管理体制の強化が求められる。そのため、滞納整理事務について統一した対応を強化する必要があると考える。
八幡病院では、事務処理要綱の他に、八幡病院独自の「未収金発生防止マニュアル」が作成されている。当該マニュアルの6では、未収金台帳の作成時点及び台帳の管理について具体的に規定されている。例えば、「未収金台帳は毎月1回月初め 10 日までに全件について事務局次長まで回覧する。」と決裁時点が明確に規定されている。
このように事務処理要綱をより具体的に改訂することで、統一した対応が強化され、滞留未収金の解消につながると考えられる。
2.未収金管理体制の強化
現在、未収金管理は医事係で行われている。しかし、未収金担当者は専任体制にはないため、未収金管理業務に十分な時間が割けない状況であった。この点に関して、未収金担当課(係)を設ける等の対策が考えられるが、人員増は現実的に困難な状況である。これに対し、局では各病院医事係が未収金管理業務を強化できるように、医事係長会
議等の場で以下のとおり指導している。
・ 未収金担当者以外の者の業務分担量をある程度重くすることで、未収金担当者ができるだけ専念できる環境を作る
・ 医事係職員で分担して、その日の未収患者に対し即日電話催告する
・ 庶務係職員の協力を得て、夜間等の訪問徴収を実施する
また、平成 16 年度からは、医事会計システムの改善も予定されており、未収金管理が、より効率的、有効的に実施されることが期待される。
Ⅴ.材料費関連
1.材料費に関わる会計事務
(1)材料費に関わる決算事務と内部管理事務
材料費に関わる決算事務の現状と課題を説明する。
地公企法等法令では、決算上、会計期間中の薬品や診療材料等にかかった費用は材料費として損益計算書に計上することが求められている。具体的には、地公企法施行規則に基づき規定した病院局の会計規程における決算報告書等の提出(第132
条)と勘定科目(第 15 条)等によって規定されている。
病院局では材料費を計算する上で、決算整理を行っている(会計規程第 131 条)。年度末に未使用の状態にある一定範囲のたな卸資産をたな卸し、その年度xx使用在庫金額を費用計上額から控除する(逆に、年度当初に引き継いだ前年度未使用在庫(たな卸資産)は、当年度に使用するものとして費用に加算し、年度末の未使用在庫は新たなたな卸資産として捉えて費用化されるものから控除して資産計上される)ので、診療行為に貢献した薬品や診療材料等にかかった支出額のみが材料費に計上される。しかし、結果報告書で述べたとおり、たな卸資産のたな卸の範囲が限定的であるため、費用の計上が実際の診療行為にもとづく発生と一致しない面もある。
次に、上記課題を前提として、たな卸資産に関わる内部管理事務について検討する。
健全な経営を行うためには、正確な費用計算及びそのための正確なたな卸資産のたな卸が必要となる。これは、実際の給付と異なる費用計算による情報では誤った判断をする恐れがあるからである。とはいえ、材料費を管理会計上、正確に集計するためにはそれなりの手間と費用がかかるため、実務上限界があるので、費用計算事務を行うにあたっては、実施効果を十分に検討し、実施の可否を判断しなければならない。
また、正確な材料費の集計及びたな卸資産のたな卸にはもう一つの意義がある。すなわち、決まった時点ごとにたな卸資産の在庫量と金額を把握し、払出し時にその量と金額を計算すること、及びその払出し行為に正当な理由を求めることには、財産を保全する効果と保全していることを証明する(日常の払出し行為(統制事務)が適切に行われていること示す)効果がある。
したがって、実務面を考慮しながら、実態に即した材料費の計算とたな卸資産の受け払い事務をすることが望ましい。
(2)たな卸資産の払出し事務
結果報告書Ⅴ(3)③の監査の結果に関連して、たな卸資産の払出し事務のあり方を検討する。
会計規程第 73 条では、たな卸資産を使用するとき出庫伝票を起票し、所定の決裁を受けることとなっている。これは、責任者が正当な事由によってたな卸資産を使用したことを示す証拠書類となるが、現状では、この趣旨を生かした運用となっていない。
市における他の事務事業と異なり、病院事業は薬品等において多くの品種を扱うため、事務が非常に煩雑であり、限られた職員での対応は困難である。
よって、病院事業の特性を検討しながら、たな卸資産の払出し事務のルールを規定することが望まれる。
ところで、現在、医療センター薬剤科では、保険請求投薬料のデータからの薬品払出し量と薬品の購入量の整合性を品種ごと月ごとに分析することを試みている。薬品が正常に使用されていることを確かめるとともに、使用薬品にかかった費用が漏れなく請求によって回収できているかを確かめるためには有効な方法である。
しかしながら、処方せん等によって総体的に証拠付けることができるとしても、証拠書類が整備されていないため個別の払い出し状況を事後的に検証することは難しい。
今後、オーダリングシステム等の IT に依拠した管理方法の導入や上記の例に倣い、分析手続によって著しく異常な払出しがないことをモニタリングすることが望ましい。
よって、可能な限り分析手続の精度を高めるよう分析範囲や分析手続をルール化し、整備をしていくことを検討されたい。
(3)物流管理システム導入の場合の留意点
現在、八幡病院において診療材料物流管理システムの導入について、検討されている。また、今後のその他の病院やたな卸資産でのシステムによる管理を検討する場合に備え、物流管理システム導入の場合の留意点をチェックリスト形式で説明する。
表Ⅴ-1
№ | チェック項目 | 備考 |
1 | システムで管理する対象は何か、目的は何か | 従来の課題を抽出すれば解決するための目的が明らかになる |
2 | 有効性、効率性の観点から、システムの導入によって代替で きる又は廃止できる事務はないか | |
3 | システムの購入費用は、人件費の節減や収入の増加と比べてどうか | 費用対効果分析は、なるべく網羅的に検討項目をあげる必要がある |
4 | 導入するシステムは会計規程等の病院局のルールに反している部分はないか | 会計規程の改訂と同時に検討する必要がある |
5 | システムベンダーよりシステムを購入する際、対象や目的等の設計内容が漏れなく仕様書に記載されているか 契約後、他のニーズが生じた場合の対処はどうするか | |
6 | システムベンダーが提案するシステムを操作する場合、現場での事務に過大な工数を要しないか | |
7 | システムの導入スケジュールは現場の事務に支障をきたさないか | |
8 | テストを実施し、システムの不具合や導入現場特有の課題が ないことを確かめているか | |
9 | 責任者が必要な事項を必要な時期にシステムの出力帳票によって管理・監督できるか | |
10 | たな卸に必要な出力帳票はあるか | 会計規定の改訂と同時に検討する必要がある |
11 | たな卸資産の使用期限等その他必要な管理が可能か | |
12 | システムで得られる情報には、適正在庫量管理等在庫管理に役立つ情報があるか | |
13 | たな卸資産を購入する際、注文や検収の局面において業者との連携が十分に確保できるか |
2.実地たな卸の実施
たな卸資産(薬品、診療材料等)は会計規程第 79 条等においてたな卸を実施することが求められている。
たな卸の趣旨からして一定時に行う必要があるが、倉庫で集計された薬品が転送された病棟でも重複して集計されることになれば、現状では正確な在庫量が集計できない。したがって、病棟や倉庫に在庫しているたな卸資産をたな卸の対象とする場合、一定時における把握をするには、相当数の職員が対応しなければならない。
また、実施にあたっては、複数の者が関与し、複数の種類のたな卸を行うので不統一な事務になる可能性があるため、綿密な計画と実施者への趣旨の説明を徹底する必要がある。
そこで、日常の診療の中でどの程度なら実地たな卸の実施が可能となるのか、現状のたな卸実施環境を把握するとともに、医療現場職員(医師、技師、看護師等)にたな卸の趣旨や手続きについて十分に周知を図る等、たな卸を実施する環境を整備する必要がある。
たな卸の趣旨には財産の保全や材料費の正確な計算等があるが、日常業務の中でたな卸実施について現場の理解を得るには相当の説明が必要である。たな卸には期限切れの抑制、在庫量削減によるコスト節約も期待できるため、同時に意識づけにも役に立つはずである。
さらに、たな卸を実施するには、たな卸を記録する書類にも配慮する必要がある。たな卸表の作成と報告が会計規程で規定されているが、たな卸表は実施しやすい様式にすることが望ましい。
Ⅵ.委託費関連
1.委託契約の方法の見直し
(1)概 要
① 契約の締結方法
契約の締結方法には、一般競争入札、指名競争入札による契約、随意契約及びせり売りの4種類があり(地方自治法第 234 条第1項)、一般競争入札を原則としている。また、随意契約は、特定の相手方を任意に選ぶ方法であるが、単独の1者を選定して行う、いわゆる特命随意契約という方法もある。
随意契約は、同法施行令第 167 条の2第1項等の法令による要件に適合することが必要となる。そのため、この契約の方法、特に、特命随意契約においては、市契約規則と法令等によって、要件を満たす正当な事由が必要とされており、また、その検討過程を所定の書類に記録し、決裁を受けることが求められている。
② 委託業務の随意契約
ところで、市立病院の委託業務では、xxにわたり随意契約により、行っているものもあり、最も長いものでは、27 年間にわたり同一業者に委託している業務もある。
随意契約の方法により業務委託契約を締結しようとするときは、市契約規則において、原則として2人以上の者から見積書を徴するものとされている。また、市委託業務要綱でも、随意契約により契約する場合には事前確認表の作成と当該表を原議に添付することが求められている。
平成 15 年度の契約 70 業務のうち、監査日現在では、指名競争による契約が 16
業務、随意契約が 46 業務、その他(監査日現在未契約を含む)8業務となってい
る。このうち随意契約とした 46 件の委託業務の事由は次表のとおりである。
このうち最も多いのが「施工業者のため」であり、これは設備の工事を行った業者、システムを設計した業者、医療機器のメーカー等に、その後の保守等を随意契約で委託しているものである。
表Ⅵ-1平成 15 年度随意契約とした事由調べ (単位:千円)
随意契約とした事由 | 件数 | 予算額 |
施工業者のため | 30 | 416,530 |
業務の特殊性を考慮 | 2 | 54,748 |
見積もり合わせ | 2 | 6,086 |
大量処理できる業者が少ないため | 1 | 29,089 |
他に応札業者がいないため | 1 | 3,867 |
質の高いサービスの提供 | 1 | 436,090 |
各病院に運営組織を設置 | 1 | 56,471 |
市の福祉政策に協力し障害者授産施設に委託 | 1 | 6,471 |
その他 | 7 | 28,986 |
計 | 46 | 1,038,338 |
資料:北九州市立病院委託契約一覧表(平成 15 年度・平成 14 年度)
「15 年度の業者選定方法」から作成した。
③ 契約締結方法の見直しによる費用節減効果
病院局は、平成 14 年度市監査委員の定期監査の指摘を受けて、施行令上の随意
契約が認められる該当要件を見直すと同時に、平成 15 年度の一部の委託業務について、随意契約から競争入札による契約が可能かどうか検討を行い、競争入札を導入した。
委託業務の中には、前年度まで随意契約で行っていた業務を競争入札による契約に変更しても、同一業者が落札した業務(電話交換業務、電気機械設備等運転管理)もあるが、契約金額は、競争入札による契約に方法を見直したため、節減されたものとなっている。平成 15 年度から随意契約から競争入札による契約に移行した委託業務の契約金額について、節減効果を一定の方法で分析すると、84 百万円程度の経費節減が認められる。
平成 15 年度から、随意契約から指名競争入札契約に移行した委託業務について、業務ごとに、年度の対照表を示すと、次のとおりとなる。
表Ⅵ-2 随意契約から指名競争入札契約に移行した委託業務の金額差調べ
(単位:件、千円)
区 分 | 平成 14 年度(随意契約) | 平成 15 年度(指名競争入札による契約) | 差 額 | |||||
委託業務名 | 委託業者 (随意契約) | 履行病院 | 契約金額 (a) | 入札業者数 | 委託業者 (指名競争入札による契約) | 履行病院 | 契約金額 (b) | 差 額 (c=a-b) |
1.警備及び 駐 車 場管理 | A社 | センター・xx・ xx・八幡 | 57,617 | 11 | ①A社 ②B社 | ①センター・xx ②xx・八幡 | 24,559 22,919 | 10,139 |
2.電話交換業務 | ①C社 ②D社 | ①センター ・xx ②xx ・八幡 | 9,166 9,166 | 5 | ①C社 ②D社 | ①センター ・xx ②xx ・八幡 | 8,715 8,668 | 949 |
3.電気機 | ①C社 | ①センター | 24,759 | ①C社 | ①センター | 23,184 | ||
械設備等 | ②E社 | ②xx | 19,747 | 6 | ②E社 | ②xx | 17,850 | 6,239 |
運転管理 | ③A社 | ③八幡 | 30,634 | ③A社 | ③八幡 | 27,867 | ||
4.害虫駆除業務 | F社 | センター ・xx ・xx・八幡 | 3,208 | 4 | G社 | センター ・xx ・xx・八幡 | 2,545 | 663 |
5.医療ガス設備保 守点検 | H社 | センター ・xx ・xx・八幡 | 6,148 | 2 | H社 | センター ・xx ・xx・八幡 | 4,452 | 1,696 |
6.食事提供業務 | ①I社 ②J社 ③K社 | ①センター ②xx ③xx ・八幡 | 107,906 44,475 136,037 | 6 | ①I社 ②L社 | ①センター ・xx ②xx・八幡 | 141,262 93,570 | 53,586 |
7.清掃・汚物洗濯及び雑役 業務 | ①M社 ②C社 ③M社 | ①センター ②xx ③八幡 | 96,544 32,192 54,286 | 8 | ①M社 ②C社 | ①センター ・xx ②八幡 | 120,750 51,072 | 11,200 |
計 | 631,885 | 547,413 | 84,472 |
(注) 委託業務3.及び7.は、xx病院が平成 15 年 5 月新築移転したため、前年度と比較できないので
同病院分は除いた。また、委託業務7.の平成 15 年度の金額においては、八幡とxxの2病院での履行が単一の契約で行われているため、契約金額を予定価格で按分し八幡分を抽出している。
委託業務1.における契約金額の差額には、警備員の定数を1名削減した効果も含まれている。金額は、千円未満切り捨て。
資料:「委託の見直しについて(14 年度契約と 15 年度契約の比較)」(平成 15 年 4 月 24 日 業務課)より作成した。なお、入札業者数は別途業務課から徴した。
(2)意 見
平成 15 年度における委託業務の契約のうち、中央材料管理業務(20,832 千円)等の契約金額が大きい主要な委託業務契約においても、業務数としては随意契約の割合は小さくなく、今後も見直しが期待される。
委託事務の有効性、経済性、効率性の観点から、引き続き検討することにより、さらなる効果発現が期待される。そのためには、委託契約の手続においてどのような統制が機能しているかという観点からの改善検討が有効である。
市委託業務要綱で規定される事前確認表には、契約事務が、地方自治法や同要綱に則って行われることに対し、準拠性確保に確実を期し、また、統一的かつ効率的に行うためのチェックリストとしての機能がある。
しかし、事前確認表の確認内容には、随意契約における法令上の限定範囲に対し、解釈に幅がある場合、適用できるか否かの判断に関して、運用上、統制効果が期待できない恐れもある。例えば、当初、随意契約を行っていたが、翌年度に、委託を行う環境や条件等が変化し、競争入札による契約をする必要がある場合を考えた場合、事前確認表の確認内容において、随意契約を行った前年度と同一の記載さえしておけば、当該契約の適用の可否についての判断を誤り、随意契約を選択してしまうことにもなる。
業務を行っている環境又は条件は、時間の経過によって変化するものであり、前年度と同一とは限らない。契約の種類に関する選択の妥当性を判断するには、その経営環境の変化を見逃さないようにする必要がある。
事前確認表の統制だけでは、契約締結の方法の見直しには働かないので、契約締結事務を進める上で、次のような工夫をすることを提案する。これは、通常の契約締結事務と履行確認事務を、より丁寧に進めることにより、結果として、契約締結の方法の見直しを可能とする。
第一に、履行が不完全であったり、遅延したりすることはあってはならないが、委託側と受託側とで履行の状況に対して、認識に差異が生じることがある。例えば、患者からのクレームへの対応で時間がかかるようなケースである。これは契約時に提示する委託側の仕様が不十分であることが主因である。このようなケースがあった場合、これまでの仕様内容と履行状況を分析する方法がある。これにより、新たな仕様を設計する、又は委託者側からの留意点をまとめたマニュアルを作成することができる。このとき、業者の能力を再確認し、能力が要求水準より不足していれば別の業者への見直しを行う、又は、業務内容を分割し複数の契約をするといった検討が可能となる。
第二に、前年度の委託業者とその業務内容に対して、履行報告や関係者への意見聴取等によって、当該契約上の仕様や当初の業務計画で想定できなかった事項がないか確かめる方法がある。新たな契約を行う際に、工夫する余地がないか検
討することができる。このとき、業務委託の環境や条件の変化を見る基礎となりうる。
第三に、契約締結の方法すべての選択肢で、業務内容ごとにメリットやデメリットを比較し、方法の見直しにおいて利用する方法がある。競争入札においては、経済性の利点があるものの、例えば、長期的業務遂行能力等で業者選定を誤るリスクも内在している。委託したい業者に何を求めているか、定期的にニーズのたな卸を行うことが、業務委託の環境や条件の変化を見る基礎となりうる。
2.医療事務関係業務委託の契約の締結方法の見直し
(1)概 要
市病院局は、複数の医療事務関係業務を包括して遂行することが可能な事業者は、市内1社のみであるとして、同業務をxxにわたり1社に随意契約で委託している。
市立病院の医療事務関係は、昭和 52 年度に競争入札によりA社に委託して以来、
一括随意契約により 27 年間にわたり業務委託している。同社に対する平成 14 年度
の医療事務委託料の支出総額は、次表のとおり 3 億 1,172 万円となっている。
局は、平成 14 年 10 月からxx病院、同 15 年4月から残りの3病院の医療情報管理室(医療センターでは委託済み)、臨床検査xx、放射線科、リハビリテーション室の受付業務について、市嘱託及びパート職員を廃止し、従来から委託している診療報酬請求事務に追加している。
表Ⅵ-3 市立病院の医療事務委託額調べ (単位:千円)
区 分 | 平成 14 年度 | 平成 15 年度 |
医療センター | 162,348 | 179,033 |
xx病院 | 24,340 | 33,457 |
xx病院 | 27,428 | 54,781 |
八幡病院 | 97,608 | 129,408 |
計 | 311,724 | 396,679 |
(注)平成 14 年度は決算額、平成 15 年度は契約金額である。千円未満四捨五入、消費税込み。
資料:北九州市委託契約書より作成した。
(2)医療事務委託の内容
医療事務について、医療センターの医療事務仕様書をみると、次表のとおりの委託業務を行っている。
表Ⅵ-4 医療センターの医療事務仕様書
委託業務の区分 | 業務項目 | 明示業務事項例及び件数( )内数 |
xx業務 | 委託業務全体の統括等(5) | |
医事係 | 1.新患等受付業務 | 診察券の発行、配布等(6) |
2.再来受付業務 | 患者に対する受付機の操作説明、操作補助等(3) | |
3.受付窓口業務 | 会計伝票、処方せんの医事係内の各担当者への振り分け 等(2) | |
4.保険確認業務 | 保険証の確認(1) | |
5.計算業務 | 患者伝票受付、審査、診察内容の電算入力及び請求書出 力等(6) | |
6.使用料等の収納業務 | 収納及び還付並びに計算内訳書の作成等(2) | |
7.駐車券認定処理業務 | 料金認定及び付随する業務(1) | |
8.伝票処理業務 | 毎日の診療行為伝票を各科別、患者別に仕分け整理等 (2) | |
9.診療報酬請求業務 | レセプトの出力及び点検等(6) | |
10.医療改定時及びシステム変更 時業務 | 変更時等の点数マスターの確認及び端末操作による動 作確認(1) | |
11.その他 | (1) | |
医療情報管理室 | 1.カルテ及びフイルムの管理業 務 | 外来カルテ及びフイルムの管理(1) |
2.新規カルテ作成・搬送業務 | 新規カルテを作成し、該当外来への搬送業務(1) | |
3.予約以外の再来患者のカルテ 及びフイルムの検索・取出し・ 搬送業務 | 再来患者カルテ等の取り出し、処方箋及び伝票との照合 等(5) | |
4.予約受診患者のカルテ及びフ イルムの検索・取出し・搬送業務 | 予約患者カルテ等の取出し、処方箋及び伝票との照合等 (3) | |
5.カルテの回収・収納業務 | 外来診療カルテの回収、返却情報入力及びカルテの収納 等(3) | |
6.カルテの整理業務 | 6か月未受診患者カルテのセミアクチィブカルテ収納 棚への移動及び1年間未受診患者カルテの別館倉庫への搬入等(3) | |
7.検査データの整理業務 | 検査データを患者別に外来カルテフォルダーの裏側ポ ケットへの入れ込み等(3) | |
8.フィルム(X 線、心電図、脳 波、消化管フイルム、MMG)の回収・収納及び整理業務 | 新規患者はフイルム袋を作成し、患者名、ID、撮影月日、 撮影部位、枚数、診療科を記入し、見出しラベルを貼付する、ID 等入力しバーコードラベルを打ち出し、フイ ルム袋に貼り、所定のフイルム棚に収納する等(5) | |
9.CT,MR,RI フイルムの貸し出 し・収納及び整理業務 | 貸し出し依頼があった場合、端末で ID を入力し、貸し 出し登録し、フイルムを取出す等(11) | |
10.その他 | (1) | |
中央処置室 | 1.検体検査入力 | 検査伝票の項目を検査システムに入力する(1) |
2.バーコードラベル付きスピッ ツ出力業務 | 外来分は、診察券をリーダーで読み込ませ、バーコード ラベル付きスピッツを出力し所定の位置に置く等(2) | |
3.検査結果の閲覧対応業務 | 結果呼び出し及びハードコピー等(1) | |
外来 ステーション | 点検終了後、予約患者一覧表を出力し、写しを各科外来 に配布する等(4) | |
臨床検査科 | 2F 内視鏡室 |
委託業務の区分 | 業務項目 | 明示業務事項例及び件数( )内数 |
1.検査の準備 | カルテ、フイルムを外来患者予約時間別、来院順に整理 し、番号票をつけ、カルテカートに並べ所定の場所に置 く等(4) | |
2.検査終了後 | 病理伝票と検体、フイルムチェック表を照合し、検査科 へ伝票・検体を搬送する等(4) | |
2F 生理検査室・超音波検査室 | エコー室及び心電図のベッドシーツの交換等(20) | |
3F 中央検査部受付 | 検体を遠心機にて血清分離を行い、自動分注搬送機にセ ットする等(4) | |
3F 洗浄室 | 洗浄室及び検査控え室の整理整頓、ならびに白衣の整理 等(4) | |
放射線科 | 1F 60 番受付及びホール | |
1.受付業務 | 照射録を参考に枚数・部位等を RIS 端末に入力する等 (10) | |
2.ホール業務 | フイルムコピー等(13) | |
1F 61 番予約受付 | 生体検査予約受付け等(7) | |
2F 透視・アンギオ室 | ||
1.受付業務 | 照射録の受付及びコピー(コピーは、看護師に渡す)等 (12) | |
2.ホール | フイルムの現像等(10) | |
2F RI 検査 | 伝票の整理と帳簿の記入等(7) | |
2F 読影室 | 各科医師、病棟と放射線科医師との連絡業務等(13) | |
別館放射線科 | 患者受付、説明(検査手順等)及び案内等(6) | |
リハビリ | 1.始業前準備、終業後整頓の補 助 | 訓練用具、治療用品の配置と収納等(5) |
2.受付業務 | 集計及び統計処理等(8) | |
3.その他 | 製剤薬品請求簿の提出と薬品の受け取り等(6) | |
医局 | 医局と院内各部署の連絡事務等(4) | |
夜間休日受付 | 夜間休日受付計算業務 | 退院を含む会計計算及び診療費の徴収(死亡退院は除 く)等(11) |
資料:医療センター医療事務仕様書(平成 15 年度)より作成した。
(3)意 見
同委託業務の内容は、診療報酬請求業務以外は、カルテ・フィルムの管理や受付業務等の補助的業務である。
そこで、現在、1社に随意契約で委託している医療事務関係業務内容を適宜分割することによって、それぞれの業務委託医療事務関係分野は他の業者でも対応可能となるものと考えられるので、現在、随意契約で一括包括委託している業務を分割し、それぞれ競争入札とするよう検討することを提案する。この場合、従来の場合と分割した場合とメリット・デメリットを比較し、経済性以外の観点からも検討することが望ましい。
3.保育所運営業務
(1)概 要
市立病院のうち、医療センター及び八幡病院では、病院に勤務する看護師等の確保及び定着化を図るため院内保育所を設置し、病院に勤務する職員、嘱託、パート
(以下、「病院職員等」という。)の保護乳幼児の保育を行っている。他の2病院(xx病院、xx病院)の院内保育所については、平成 15 年3月末に廃止している。院内保育所の運営は、病院事務局長等から構成される「院内保育所運営委員会」 を設置して、同委員会に業務委託を行っている。なお、八幡病院内保育所の運営は、
「北九州市立八幡病院内保育所運営委員会」がA社に再委託している。A社は、代休要員を含め保育士の有資格者4人を人材派遣している。
医療センターに設置されている保育所は、乳幼児の 24 時間保育を実施している。夜間における保育は、乳幼児を就寝させることが主体であるが、その利用状況は、次表のとおり利用が少ないものとなっている。同保育所は、正月3日を除く 362 日
の開設であるが、夜間における保育は、平成 14 年度で 33 回の利用である。
表Ⅵ-5 医療センター保育所の夜間保育利用状況 (単位:回)
月 | H14.4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | H15.1 | 2 | 3 | 計 |
回数 | 6 | 7 | 4 | 5 | 3 | 3 | 2 | 1 | 0 | 1 | 1 | 0 | 33 |
医療センター内保育所の運営費は平成14 年度総額31,329 千円である。財源は、
補助金が 5,934 千円(17.9%)、市負担金が 10,916 千円(34.8%)で、利用者が負担す
る保育料 14,819 千円(47.3%)となっている。
(2)意 見
院内保育所については、以下の点について検討することが望ましい。
① 他の(認可)保育所の整備状況及び、看護師の高齢化及び少子化等を総合的に考慮しての院内保育所の維持の可否
② 医療センター院内保育所は 24 時間保育を行っているが、夜間の利用が少ないので、その在り方
③ 医療センター院内保育所は保育所運営を業者に委託化し、業者委託とすることによって、保育士の雇用責任を明確化すること
4.委託業務の検収・編綴等の統一
委託業務については、原則的に契約締結手続を市病院局で行っているが、委託業務のほとんどは、委託契約に基づき、業者が各病院において委託業務を履行するため、検収・確認は各病院で実施し、履行確認の後に支払し、編綴等書類の処理が行われている。
各病院における委託業務の検収、編綴等の状況を調査したところ、支出決議から請求書入手、履行、検収、支払等の一連の事務において、関連帳票に業務の執行を確認しにくい状態にあるものがあり、また、委託事業の証拠書類の添付状況も病院ごとに違いがみられ、事後的に点検しにくいものとなっている。
例えば、次のような点である。
(1)検収・確認書類(写しを含む)が病院において保存・整理されていない委託業務が見られた。また、同一の委託業務でありながら病院によっては契約履行前と履行後の写真を添付してある場合と、添付されていないため事後的に履行状況が確認しにくい場合等が見られ、取扱いが統一されていない。
(2)支出決議書や請求書の原本は市病院局に送付しているため、その写しを委託業務の提供を受けた病院でファイルしている場合と、必ずしも整理・保存されていない場合が見られた。
現状では、委託業務の検収を行なっている各病院で関連書類(写しを含む)の整理・保存の対象や方法について、統一されているわけでない。各病院で適切な検収業務を統一的かつ継続的に実施していくためにも、まず、検収結果に関する証拠書類と、その関連書類の写しのうち必要なものについては、各病院で統一的に整理保存しておくことが望ましい。
Ⅶ.人件費関連
1.管理者の任期
(1)概 要
平成 13 年度、平成 14 年度において、病院局長は任期1年で交代している。また、
平成8年度から 10 年度を除いては任期2年での交代という現状である。地公企法で定められているとおり、管理者すなわち病院局長の任命は、地方公共団体の長すなわち市長の専権事項である。また、管理者の任期は4年であるが、再任できる規定がある。
表Ⅶ-1 過去 10 年間の管理者の任期及び前職
年度 | 管理者 | 前職 |
平成6年度 平成7年度 | A | 総務局人事部長 (病院局経験あり) |
平成8年度平成9年度 平成 10 年度 | B | 教育委員会文化部長 (病院局経験あり) |
平成 11 年度 平成 12 年度 | C | xxx区長 |
平成 13 年度 | D | 企画政策室長 |
平成 14 年度 | E | 経済局長(病院局経験あり) |
平成 15 年度 | F | 病院局次長(現職) |
(2)意 見
病院経営を取り巻く環境は益々厳しくなっており、公的事業としての病院事業経営に関しても、それが独立採算を前提とする限り、組織の長としての管理者である病院局長の役割は重要になるものと考えられる。
管理者の任期を原則として4年とする法の趣旨に照らし、管理者の任期について、配慮が望ましい。
さらに、病院事業には、かつて、赤字再建団体となり、病院局設置とともに管理者を設置した経緯からして、中長期にわたって計画的に運営がなされるとともに、経営の指揮監督が行われるべきである。
2.時間外作業の管理
(1)概 要
平成 14 年度における時間外手当は、489 百万円であり、人件費総額の約 3.5%に相当している。所定の勤務時間を超える作業が必要な場合には、「時間外勤務等命令書」による時間外作業の命令が所属長より行われる。作業実施者は、同命令に従い必要な作業を実施し、作業の内容、作業時間等を「時間外勤務等命令書」に記載する。同命令書では所属長の命令及び事後の確認が行われる。
時間外作業は大きく二つに分類が可能である。
・ 事前に必要な時間外作業の内容が分かっているもの
・ 緊急に、あるいは当日の作業の流れから結果として時間外作業が必要となるもの
(2)意 見
サンプルとして平成 15 年4月の「時間外勤務等命令書」を調査したところ、同命令書には予定時間を記載する欄があるものの、事務職以外では記載されているものは認められなかった。
(1)に記載した分類の前者については、時間外作業の命令を行う際に、事前に予定時間を、本人が記入し、作業実施者は原則として当該時間内に作業を終わらせることが求められる。
予定時間を予め決めておくことにより、削減可能な時間外作業を極力、減らすことができる。
一方、後者のように、緊急に、あるいは当日の作業の流れから結果として必要となった作業については、その管理は困難であると思われるが(特に看護師において)、例えば、以下のような方法による管理も作業の内容によっては可能である。
・ 緊急の場合、作業の緊急性を明らかにする
・ 結果として時間外となる場合も考えられるが、その場合には事後的に時間外となった理由を「時間外勤務等命令書」の中で明確にしておく
時間外管理の一案としては、一定時間以上の時間外作業を行った者に対して、聞き取り調査等を行う。
聞き取り調査等の結果、問題点があればこれを整理し、各病院、所属において共通的な内容であれば、改善策を検討のうえ全体に適用するという方法もある。
時間外管理は、無駄な作業を減らすことで人件費の削減を図る目的もあるが、過剰な時間外作業により、健康を害することを防止するといった観点からも必要である。
3.臨時調整手当
(1)概 要
「臨時調整手当」とは医師及び歯科医師(再任用職員である医師及び歯科医師を除く)が診療に従事したときに支給するものであり、月額は 120,000 円である。
ただし、市病院局職員給与規程(付則)において、当分の間「月額 120,000 円に別に管理者が定める額を加えた額」とする旨規定されている。別に管理者が定める額とは、いわゆる診療業績手当をいう。
・ 支給対象 :医師・歯科医師
・ 支給額の基本的な計算方法:
実績占床率が調整目標率に達しない場合・・・0実績占床率が調整目標率に達した場合
・・・(2万円+(実績占床率-調整目標率)×3千円)
×法定医師数/実医師数
診療業績手当については、医療センター等占床率が相対的に高い病院は、他病院と比較して業務量が多いため、あるいは占床率を高めるという動機付けのためにも、手当としての存在意義はあるという意見もある。
(2)意 見
同手当については、以下のような問題点がある。
・ 必ずしも医師個人による業績と連動していない(医師間の不xx感)
・ 実績占床率と調整目標率との乖離が大き過ぎ、占床率向上の動機付け機能を果たしていない病院も認められる(手当とその効果の因果関係が明確でない)
次表のとおり、xx病院に関しては平成 14 年度の実績0、xx病院については実績として2カ月あるものの、金額が他病院と比較して少額である。
医療センター及び八幡病院は比較的収支が良好である。これに対し、xx、xx病院は収支の状況改善が急務であるにもかかわらず、現行の診療業績手当制度では医師の士気の喚起に繋がらない懸念がある。
年間4千万円の支出は決して少額とはいえず、支出はその有効性を十分に確認し、手当の継続を含めた検討が必要であると考える。
表Ⅶ-2 平成 14 年度診療業績手当月次推移
(資料)「診療業績手当について」から作成(単位:千円
医療センター | xx病院 | xx病院 | 八幡病院 | 病院計 | |
平成 14 年 4月分 | 1,338 | 0 | 415 | 3,884 | 5,636 |
平成 14 年 5月分 | 1,033 | 0 | 0 | 1,730 | 2,763 |
平成 14 年 6月分 | 0 | 0 | 0 | 1,333 | 1,333 |
平成 14 年 7月分 | 973 | 0 | 0 | 2,595 | 3,569 |
平成 14 年 8月分 | 1,419 | 0 | 549 | 2,829 | 4,796 |
平成 14 年 9月分 | 1,416 | 0 | 0 | 2,208 | 3,624 |
平成 14 年 10 月分 | 1,272 | 0 | 0 | 2,426 | 3,699 |
平成 14 年 11 月分 | 1,122 | 0 | 0 | 2,240 | 3,362 |
平成 14 年 12 月分 | 1,281 | 0 | 0 | 2,649 | 3,929 |
平成 15 年 1月分 | 0 | 0 | 0 | 2,424 | 2,424 |
平成 15 年 2月分 | 0 | 0 | 0 | 2,409 | 2,409 |
平成 15 年 3月分 | 1,289 | 0 | 0 | 2,622 | 3,911 |
平成 14 年度計 | 11,143 | 0 | 963 | 29,349 | 41,456 |
4.事務職員のローテーション
(1)概 要
病院局の事務職員は、ほぼ3年間のローテーションにより人事異動が行われている。一方で、病院事業の経営においては、専門性と特殊性が高く要求される。そこで、係長以上の役職者に関しては、専門性・特殊性のある病院事務を有効かつ効率的に行うため、病院事務経験者の人事を要請している。
(2)意 見
人事ローテーションは、幅広い知識・技能の習得、不正の防止等のメリットが認められる反面、特に、病院事務のように専門性・特殊性のある業務に関しては、前任者からの引継ぎが当然あるにしても、知識・技能の蓄積という観点からはデメリットとなる側面もあると考えられる。特に、診療報酬のチェックやその委託の監督管理等、病院特有の専門性が高い分野に関しては、定期的ローテーションによる事務引継ぎ・知識及び技能の習得期間のロスは無視できないのではないかと考える。
また、一般会計とは独立した会計で行っており、公共性という性格を一部では有しながら民間病院との厳しい競争環境下に置かれている状況において、病院事務においても不断の効率性追求を求められて然るべきところ、ローテーションを前提とした改善・改革では十分な結果を得られない可能性についても留意が必要と思われる。
病院事務職の専門化を図る一案として、ローテーションを前提としない、病院事務プロパーの採用を検討する余地もあると考えられる。国立大学や公営企業、公立大学等では、独立行政法人化を前提としてではあるが、検討中のところもある。プロパー職員の採用に関しては、身分保証の問題等、解決すべき課題はあるものの、上述のような病院経営を取り巻く環境等から検討の余地はあるものと考える。
5.退職給付の処理
(1)概 要
地公企法(計理の方法)第 20 条第1項によると、「地方公営企業においては、その経営成績を明らかにするため、すべての費用及び収益を、その発生の事実に基づいて計上し、かつ、その発生した年度に正しく割り当てなければならない。」とされている。
また、「退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書」(企業会計審議会)三基本的考え方2では、「・・・退職給付は、その発生が当期以前の事象に起因する将来の特定の費用的支出であり、「当期の負担に属すべき退職金の金額は、その支出の事実に基づくことなく、その支出の原因又は効果の期間帰属に基づいて費用として認識する」との企業会計における従来の考え方は、企業年金制度による退職給付についても同じく当てはまると考えられる。したがって、退職給付はその発生した期間に費用として認識することが必要である。」としている。
市の病院事業では退職給付引当金を計上していないが、病院事業の業績を適正に把握・表示するためには、各会計期間に属する費用として、職員在職期間中に発生した退職金相当額の退職給付引当金を計上することを検討すべきである。
厚生労働特別研究事業「病院会計準則及び医療法人会計基準の必要性に関する研究所」においても、資産・負債の部の勘定科目として退職給付引当金(「退職給付に係る会計基準に基づき従業員が提供した労働用益に対して将来支払われる退職給付に備えて設定される引当金」)を設定している。
(2)意 見
① 引当金計上の是非についての検討
独自の調査によると、将来の退職金支出に備えて、何らかの引当金を設定しているのは平成 13 年度の都道府県立の自治体病院において、47 都道府県中 13 都道府県である(約 28%)。また、引当金を設定している都道府県のうち、自己都合期末要支給額の 100%を設定する基準を採用しているのが4都道府県(全体の約9%)である。さらに、この4自治体のうち基準としては採用しているものの、実際に 100%の設定を実施している都道府県は二つである。
なお、自己都合期末要支給額の 100%による引当金設定は、「退職給付に係る会計基準」(企業会計審議会)に定める簡便的な方法であるが、このような簡便法は小規模な企業や退職給付の重要性が乏しい企業に認められるものである。
地方自治体が経営する病院の多くは欠損金を抱えているため、欠損金のある場合や引当計上することによって実質的に不良債務が発生又は増加する場合には、退職給与引当金を計上するのは不適当とする行政実例に従って、引当金を計上していない自治体が多いものと考えられる。
しかし、現在となっては、実際には欠損が生じていても規定どおりに退職金を支給している実態や、経営状況に対する透明性が求められていることから、決算数値開示において、退職給付引当金を計上する、あるいは注記する方法が必要となっている。参考にされたい。
② 平成 14 年度末における退職給付引当金試算
平成 14 年度末における、期末の退職給付の要支給額を用いた退職給付引当金の見積計算を実施した。実施の結果は以下のとおりである。
表Ⅶ-3 (単位:xx)
所 属 | 退職給付引当金試算額 |
本庁 | 299,437 |
医療センター | 3,445,865 |
xx | 1,587,893 |
xx | 1,474,958 |
八幡 | 2,499,517 |
看護専門学校 | 98,779 |
合 計 | 9,406,452 |
-計算の前提-
ア.平成 15 年3月末に全職員が退職したと仮定し、
55 才未満の職員は普通退職手当率(ただし医師は 60 才未満)
55 才以上の職員は定年退職手当率(ただし医師は 60 才以上)で計算している。
イ.金額は、平成 14 年度発生の退職給付引当金のみならず、平成 13 年度以前に発生している退職給付引当金を含んだ累積値である。
Ⅷ.繰入金関連
1.病院局設置に要する経費の繰出
平成 14 年度には、病院局設置に要する経費(以下、「本局設置経費」という。)とし
て2億 402 万円の繰入金が計上されている。市の繰出基準は地公企法第 17 条の3に基づくものとして、下表のようになっている。これは、総務省自治財政局長通知「地方公営企業繰出金について」において定められている繰出ではなく、市が独自に基準を設けて繰り出しているものである。
表Ⅷ-1 病院局設置経費に係る市の繰出基準
負担区分 | 項 目 | 繰出基準 | 繰出金の算定方法 |
地方公営企業法第 17 条の3 | 病院局設置に要する経費 | 地方公営企業法全面適用により企業管理者のもとに病院局を設置したことによる必要な経費の1/2に相当する額 | 病院局本庁職員給与費及び 本庁経費(保育所運営委託料を除く)の合計額1/2に相当する額 |
(資料)市の繰出基準に関する資料より、病院局設置に要する経費についての記述を抜粋
地公企法第 17 条の3では、「災害の復旧その他特別の理由により必要がある
場合には、(略)補助をすることができる。」とされているため、市における「特別の理由」を確認したところ、次のような説明を受けた。
市の病院事業は、1960 年代、5市合併等を背景として財政が悪化したため、国から財政再建計画の承認を受けて昭和 42 年度から財政の健全化に取り組んでいる。その取組の推進役として病院局(本局)が設置され、行政事務や財務事務等の民間病院にはない特有な事務を行うということもあり、本局設置経費への繰出が開始されている。その後、財政再建計画終了後の昭和 53 年度以降においても、病院の経営状況や本局業務の特殊性を勘案し、現在まで本繰出が継続されているとのことである。
本局設置経費に対する繰出の必要性については、最終的には市民によって判断されるものである。実際、毎年度の予算が検討され、議決される過程において、病院事業の財政の現状や将来見通し等から繰出の必要性が判断されてきているとのことである。
ただし、本繰出は、市独自の繰出基準に基づき、財政再建計画終了後も 25 年間継続して補助されているものである。その間に、本局が果たすべき役割、あるいはそれに対する補助の必要性や有効性についても、少なからず変化してきているはずである。そこで、xx病院の廃止等の経営改善が進められているこの時期に、改めて本局設置の目的やこれまでの実績を再確認し、適宜、本繰出を見直していくことが必要である。