Contract
仮想通貨と信託契約について
―信託契約の対象財産に仮想通貨は含まれるのか―
中部学院大学経営学部教授 x x x x
− 目 次 −
はじめに
第 1 章 仮想通貨
1 .仮想通貨の概念と形態
2 .仮想通貨の機能と課題
3 .仕組み・テクノロジー第 2 章 信託制度
1 .信託制度の淵源
2 .信託制度の移入
3 .信託制度の改正
第 3 章 仮想通貨の信託財産性 1 .信託財産性の検証
2 .法概念の整理
3 .否定説 4 .肯定説
5 .検討
まとめ 仮想通貨の信託財産該当性
はじめに
IT 技術の利用による決済のデジタル化
(FINTECH)は、政府によるキャッシュレス社会の推進策とも相まって急速に進んでいる(1)。デジタル化の典型的なものとしてビットコイン(BTC)を嚆矢とする仮想通貨がある。仮想通貨の時価総額は、30兆円の規模
(2)に達している。また、仮想通貨の種類は、
それぞれの技術特性から差別化が図られており、約2,400タイプが取引されている。
そこで、本稿ではこうした現代社会経済における決済ツール、経済的価値である仮想通貨について、資産の管理運用を受託者に委ねる有効な信託制度の対象財産として認定することができるかどうか、を検証するものである。
第 1 章 仮想通貨
1 .仮想通貨の概念と形態
⑴ 仮想通貨の概念と類似物
仮想通貨とは、通常のインターネットを使用し PC などで遣り取りされる、経済的価値のある電子情報を指す。英文では Crypto Currency や Crypto Assets、Virtual Currency、Virtual Assets などと表記される。日本では、これまで“仮想通貨”と呼ばれてきたが、仮想通貨との呼称では、通貨として認識され法定通貨との誤解が生じるなどの理由で2019年の法改正により“暗号資産”と変更している(3)。しかし、一般的には依然として仮想通貨との表記が使用されているので、本稿でも仮想通貨としている。
マネロン等の防止対策国際機関である
FATF が2018年に定めた定義では(4)、仮想通貨(Virtual Asset)とはデジタル方式で取引または移転が可能であり、かつ支払いや投資目的で利用できる価値であり、デジタル方式で表象されているものである。また、仮想通貨には法定通貨建てデジタル表象や有価証券、FATF がすでに対象としているその他の金融資産を除く、と規定されている(5)。さらに、仮想通貨を「資産」、「調達額」、「資金」、「資金ないしその他の資産」、または「対価」と扱うべきである、と補注されている(6)。ところで何が通貨なのか、との通貨に関す
る本質論的な議論があるが、いわゆる価値尺度、支払機能、価値貯蔵性の三要素を持つものとして何かを認知し、流通させればその環境、地域では通貨になることは通貨史のうえで明らかである(7)。この三要素を仮想通貨は具備している。
なお、デジタル通貨と呼ばれるものには、交通系の SUICA や小売系 NANACO、 Google Play Card 等各種のプリペードカードなどがある。いずれも法定通貨を電子情報化(通貨建て)した前払式決済手段であり、一回限りの利用に限定される。仮想通貨とは、区別されている。また、代金決済として使えるポイントやマイレージもあるが、その経済的価値は、法の枠外とされ単なる“オマケ”の取扱いとなっている。転々流通性もなく、仮想通貨とは異なる。
⑵ 仮想通貨の分類
ところで仮想通貨のタイプは、分類によって様々なタイプに区分けされる(8)。
一つは、中央管理か分散管理かの基準、他は、法定通貨との換金可能性である。これを組合せるとイ.管理者がいて換金可能なタイプ、ロ.管理者がいるものの換金不能のタイプ、ハ.管理者がなく、換金可能なタイプ、ニ.管理者がなく換金できないタイプの 4 つに区分される(図1)。BTC は、管理者がなく分散して管理され、換金可能なタイプに属する。
換金不能のものは、ゲーム内のコインなどで仮想通貨の範疇に入るものの、社会経済においてその財産的価値がないことから無視することができる。
⑶ 仮想通貨の種類と特徴
① 仮想通貨の種類
仮想通貨は、企画書(White Paper)が公表され、一連の作成アプリも利用可能なため少々の関心があれば、事実上作成が容易に行える(9)。その数は、未確認であるが 2 万とも
5 万種類あるともいわれる。しかし、仮想通貨事業者サイトで現実の取引があるものと確認されるのは、2,440種類になる(10)。現在、仮想通貨取引のメインは BTC で、市場取引の約70%を占める独占状況にある(図 2 )。
② 派生通貨(アルトコイン)
BTC 以外の仮想通貨を派生通貨(アルトコイン)と呼ぶ(11)。その由来は「Alternative Coin(代替的なコイン)」という言葉から来ている。これには、BTC を基に作られたものや、新しい仮想通貨として提供されている
図 1 仮想通貨の分類
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図 2 仮想通貨別取引割合
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ものなど、様々な種類が存在している。アルトコインは、BTC の課題を超えるため、取引の承認スピードの速xx、マイナーの作業が簡易化されているため、利用の利便さから人気が集まっている。しかし、日々利便さが更新されたタイプのコインが出てくるため、後発である特定のアルトコインに取引が集中するのではなく、拡散化傾向にある。
2 .仮想通貨の機能と課題
⑴ 仮想通貨利用による利便性(メリット)仮想通貨を利用した取引について、その主 なメリットは、機能的なものと決済上のもの
とに分かれる。以下では特に断らない限り、 BTC について解説している。
① システム機能的有利性
イ.直接性・迅速性(第三者機関の不介在)第三者機関を通じず、個人当事者間で特定
の情報を送受可能となることが挙げられる。具体的には当事者間で、PC 等の簡易なツールを使い24時間、祝祭日に関わらず何時でも、瞬時に情報を送れる。管理運用する主体がないため、その権限主体に係る信用リスクの影響を受けることがない。
ロ.高度の信頼性
ブロックチェーン方式により、データの改ざんが極めて困難である。したがってそうしたリスクが少ないものとして、情報の信頼度が高い。ブロックチェーン方式は仮想通貨以外の分野、例えば SNS、認証(科学)、流通管理、医療などでその技術活用が進められている(12)。なお、この技術は当初システム自体の内在する課題(処理時間等)があり、実ビジネスでの運用手法が確立されていないなどの状況にあったが、現在用途の拡大、ブロック生成時間の縮減、参加者のコンソーシアム化などの方向で技術の改善・改革が進んでいる(13)。
ハ.送信の簡易・低廉性
銀行送金の場合、平日の営業時間内に銀行窓口に赴き、1,000ドルを送金する場合、幅
はあるものの、約5,000円程度の手数料等を支払い、到着まで数日を要している(14)。仮想通貨の場合、誰でも PC 等を使い送信可能なため簡便であり、基本的に手数料は必要なく、費用も掛からず効率的である。
② 決済手段的利便性イ.中立的決済手段
仮想通貨それ自体に経済的価値が認められるため、どこの国でも決済手段として利用できる。いわば特定国の政治や経済情勢について、影響を受けない。銀行口座を利用しないため、2013年のキプロス、2015年にギリシアで行われた事実上の預金封鎖などソブリン危機による口座凍結の心配が不要となる。また、グローバルな経済価値であるため、当該国の景気変動に左右されることがない。
ロ.為替リスクの解消
ドルや円の送金の場合、通貨の交換を行うために為替リスクがあるので、その担保が必要となる。しかし、仮想通貨では、仮想通貨自体で送信されるため、為替リスクはそもそも予定されていない。したがって、為替の変動リスク要因である、インフレなどにも影響されない。通貨は、その国の経済状況によって為替レートが変更するが、グローバルで管理主体のない BTC では影響を受けることはない。
ハ.少額送付等の許容
銀行で通貨を送金する場合には、取扱額の下限があり、上述の通り、約5,000円の手数料が必要なため、少額の送金は、事実上できない。しかし、仮想通貨では、手数料は事実上ないため少額でも送信ができる。なお、為替管理による持ち出し規制については、2018年から3,000万円を超える仮想通貨の海外送受が報告を要することとされた(15)。
⑵ 仮想通貨のデメリット
① 投機的手段
仮想通貨の代表である BTC は、情報送信技術の試験段階で創作されたもので、本来的
図 3 BTC の価格推移
(資料:CoinMarketCap)
に商流・信用制度の中で流通を予定されていなかった。しかし、現在「BTC ピザデイ」と呼ばれる2010年 5 月22日に偶然にも財の対価として使用できる、決済的側面があることが明らかになった(16)。
その後、経済的価値を持つとの認識から資金洗浄や国内通貨の逃避手段として使われだし、注目を浴びた。そうした過程で、中国を中心に取引が嵩上げされ、高騰し2017年末には BTC の価格が約 2 万ドルとなり仮想通貨バブルと呼ばれる状況が登場した。その後、急落したものの、現在約 1 万ドル水準にある(17)。なお、仮想通貨交換所で行われている取引の 8 割は倍率取引であり、投機的ツールとして利用されている。
② ボラティリティの高さ 2017年には20倍に高騰した後、翌年2018年
前期には四分の一に急落している。日々の価格変動も他のデリバティブ取引の 3 倍に及んでいる。また、この価格の変動が仮想通貨の特定銘柄ではなく、仮想通貨全体の変動傾向となっている。仮想通貨は、銘柄ごと特色を持っているが、それが価格変動率には関係がない。①と合わせ、仮想通貨が決済手段として使われない理由ともなっている。
③ 理論値の不在
株式などの有価証券をはじめこれまでの金融資産は、その発行体の資産や収益状況な
どから価格を推定することは可能である(18)。しかし仮想通貨は、見合いとなる資金・資産はない。強いて言うとそのシステムに対する信頼と憶測しかないので、価格を推定する方程式が成立しない(19)。なお、米国シカゴの大手先物取引所 CBOE 及び CME が BTC の先物取引を開始している(20)。その意義や影響については、研究が開始されているが、現物に対する影響(裁定取引の存在)の有無について、結果が分かれている。
④ 匿 名 性
FATF は、法定通貨でみられるマネーロンダリング等が仮想通貨の場合匿名性がシステムの特徴であるために生起しやすいとみている。FATF の仮想通貨に対する懸念は、現実問題として起こっている。しかし、匿名とはいえブロックチェーンには全ての取引情報が記録されている。また、仮想通貨のシステムから、送金するためにはネットワークに接続することとなり、トレーシングは可能である。ただし、トレーシングを困難にする「ミキシング手法」が使われることがある(21)。
⑤ マイニング必要額の高騰
BTC は、マイナーがブロックの接続(承認行為)を行っている。しかし、その承認行為はマイナーの競争環境下に置かれているために、あるマイナーがxxするには、相当額の投資が必要である。具体的には、高速計
算が可能なコンピュータと専門ソフト、稼働させるための電力量の確保等の優位が必要となる。具体的にはマイニングが成功し、 12.5BTC を報酬として得ても、その価格が果たして投資資金の回収を図れる水準にあるかどうかが課題となる。要するに、BTC の価格がマイニング投資による損益分岐点を超えないのであれば、マイニングが行われなくなる。
3 .仕組み・テクノロジー
仮想通貨については、その売買が行われるのみであるが、その実行や強制xxxについて民法上の売買契約などと同じような課題が生じている(22)。そこで、仮想通貨に係る社
会的秩序や課題の解決にどのように対処すべきかを検証する必要が生じる。仮想通貨は、 21世紀に入って先端の通信技術を用いた情報伝達、決済ツールであるために、既往の伝統的な財やサービス等に係る法的諸制度では対応関係が図れないところに困難性がある。そこで、法律関係を議論する前提として仮想通貨の技術的構成を取上げる(23)。この構造も BTC のシステムを仮想通貨の典型として対象としたものである。
この仕組みは要するに、インターネットを使ったサイバー空間にブロックチェーン方式を有効化したもので、その利用が公開鍵暗号方式(秘密鍵)などにより排他的に行える電子情報システムである。以下で詳述する。
図 4 ノードの内訳
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⑴ 基本構造
基本構造として BTC は、二つの支柱から成り立っている。ひとつは根幹となるシステムとして情報記録の元帳となるブロックチェーン方式である。また、次にそのブロックチェーンはシステムの参加者である多数のノードが管理運営を行っていることである。
各支柱の構成要素は、イ.公開鍵暗号方式による秘密鍵を保管しているウォレット、ロ.一般に使われているインターネットで繋がっている BTC ネットワーク、ハ.取引情報であるトランザクション、ニ.ブロックチェーンの分岐・分裂、ホ.参加者であるノード、ヘ.ノードの機能であるマイニングとなる。
⑵ ブロックチェーン方式
ブロックチェーン方式とは、トランザクションが記録されているブロックが数珠つなぎに並べられているデータ構造を持つもので、各ブロックは一つ前のブロックの識別符号
(ID)を持っている。そのため、最初のブロック以降については、必ず一つの親ブロックを持つことになる。xxxxの親子関係は一対一となるが、稀に一時的に同じ情報を持つクローンである複数の子どもが生まれる場合がある。このブロックチェーン方式には、次のメリットがある。
⑶ ブロックチェーン方式のメリット
① 改ざんの困難さ
一度記録されたデータについて改ざんすることがほぼ不可能であること。ブロックチェーンは、いわば、ブロックという箱に入れられた複数の情報が一塊になり、次々とその塊データが動力を伝えるチェーンのように連結しているものである。自転車のチェーンのように循環する無限軌道ではなく、将来に向かって一方向で進むものである。その連結部分にはコンピュータによって演算計算された数値(「ハッシュ値」という特殊な文字列)が使われている。ブロックを改ざんする場合に
は、この数値を改めて打ち出す必要がある。例外的な方式もあるが、演算計算を繰り返すため事実上できない(24)。
② 管理運用コストの低廉
ブロックチェーンは複数の参加者(ノード)によって、データが分散管理される。分散管理といっても、情報の一部分を管理するのではなく、情報全体を各参加者がそれぞれ管理をする(25)。中央集中管理をするとした場合、相当な容量のサーバーと保守・管理の経費は膨大なものとなる。情報管理を分散することによって費用も軽減化できている。その結果、情報の送付手数料もほとんどかからないことになる。
③ システム運営の安定性
分散管理型ならば、参加者のどこかで不具合が起こっても、他の参加者が全体を把握しているので、システムが休止することがない。複数のマイナーが引続きブロック作業をすれば、次々とブロックが作られるので、取引の信頼性を高める。なお、実際に、BTC は 2009年に取引が始められてから、これまで一度もシステムが停止した実績はないと言われている(26)。
⑷ ノード(NODE)
ノードには、複数の機能タイプが予定されている。まずは、システムに参加するための基礎的機能であるルーティング(routing)が不可欠である。情報伝達の経路・ポイントになる機能を持つ参加者である。この機能に加えてブロックチェーンの情報を管理するデータベース機能を持つ参加者となることが次のステップとして予定されている。また、ブロックチェーンにブロックを追加する作業を行うマイニング(mining)機能を担うマイナー(miner 採掘者)がいる。加えて、BTCの送付(transaction)を行うためのウォレット(wallet 管理保管ツール・財布)機能がある。すべての機能を持つ参加者は、フルノードと呼ばれる。現状では、マイニングノード
は特化してきており、マイニングを行わないノードが太宗を占めている。
⑸ 公開鍵暗号方式
公開鍵暗号方式とは、誤解されやすい表現と指摘されるが、暗号化に公開鍵、復号化に秘密鍵と個別の鍵を使用するタイプのものと言われる(27)。この方式自体は、従来から情報の秘密保持のために用いられているもので、新規性はない。秘密鍵と公開鍵はワンセットになっている。公開鍵は秘密鍵から関数を利用して作成されるが、逆に公開鍵からは秘密鍵が作成できない関係になっている。
① 秘 密 鍵
秘密鍵は数値となり、通常、ウォレットと呼ばれる鍵を管理するツール内でランダムに生成される。生成された秘密鍵は、BTC の保有を主張するための署名に使われる。利用者は秘密鍵を独占的に利用できる状態で管理することによって、仮想通貨の財産的価値を事実上排他的に保有していることになる。
② 公 開 鍵
公開鍵は、秘密鍵からハッシュ関数を用いて生成される(28)。公開鍵は、取引情報の検証をする際に利用される。他者へ BTC を送付する取引情報が BTC ネットワークに書き込まれた後、マイナー(検証者・発掘者)から取引情報の正当性について検証が行われる際に公開鍵が利用される。
③ アドレス
BTC には、日常利用する銀行口座名(番号)と同様の情報を持つ「アドレス」が存在する(29)。銀行送金と同じであるが、BTC を受け取るためには、自分の BTC アドレスを相手に通知する必要がある。反対に BTC を送るには、相手の BTC アドレスを知る必要がある。
図 5 公開鍵暗号方式
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④ ウォレット
ウォレットとは、秘密鍵と公開鍵のペアを管理保管するためのツール(財布)となる。ウォレットでは複数の秘密鍵・公開鍵を管理することができるので、秘密鍵・公開鍵に紐付く複数の BTC アドレスの管理が可能となる。
⑹ BTC・ネットワーク
BTC ネットワークは、システムに加盟しているノード(参加者)が同等の役割を果たす P2P ネットワーク(30)として構築されているので、情報移転に係るサービスの負荷を各ノードが分担し合っていることとなる。要するに、責任分担している。これにより、特定のノードが障害などにより利用ができなくなったとしても、他のノードたちがサービスを支え続けることができることから、情報移転サービスが途絶えることがない仕組みになっている。
⑺ トランザクション
BTC データの取引情報記録(トランザクション)は、ブロックチェーン上に記録されることから、システム参加者は基本的に誰でも確認することができる(31)。BTC の保有者による署名が行われ、BTC ネットワークにトランザクションデータが導出される。
導出されたトランザクションデータは BTC ネットワーク内にいる各ノードのコンピュータに記録され、そのトランザクションが有効なものかどうかがシステム計算により検証されることとなる。ここで有効なトランザクションだと確認された後、他のノードへさらに伝搬される。これが繰り返されることにより、すべてのノードにトランザクションが記録されることとなる。
⑻ マイニング(マイナー)
マイナーは採掘者と呼ばれており、ブロックチェーンにブロックを追加する作業を行
う。新たにブロックを産出するので、鉱山の採掘に例えマイニングと呼び、マイニングには POW(Proof of Work)計算方式が採用されている(32)。金鉱山でもそうであるが、金鉱石を早く見つけないと競争に負ける。xxxxは他のマイナーに優先しようとマイニング技術を競う。そのためには、高速度のコンピュータと専門演算ソフト、大量の電力が必要となる。この三点セットを整備するには、高額な費用が掛かる。
第 2 章 信託制度
1 .信託制度の淵源
信託は、長い歴史の中で第三者である受託者を介する財産の運用管理に関するxx法系の制度である。現代の信託制度は、英国王xxxx 0 xが1535年に制定したユース禁止法を基本に展開されてきた法律体系である。なお、英国信託制度の基本スキームの淵源については、金融史分野で見解が分かれている。ローマ法起源説やザールマン制度起源説、ユース禁止法に淵源を認める英国固有法説などがある。現在の通説は、英国固有説となっている。
2 .信託制度の移入
⑴ 担保附社債信託法の制定
一般論としてどの国においても新たに法律制度を導入する際に、制度機能と法的構成が当該国家の社会慣習や為政者の取組み、法体系の相違などから微妙に異なってくる。我が国において、信託制度の移入した際も例外ではなかった。1905年に信託を利用した担保附社債信託法を制定したが、当時日本の企業は初歩的な工業化の過程に置かれていたため、株式会社には財務的信用がなく、社債の発行も担保が付託されていなければ、出来なかった。そのため担保が付くことになったものの、その担保管理などが問題となった。
⑵ 信託業法・信託法の制定
その対応として、信託会社を規制する信託業法を制定することとなり、改めて信託の構造や性質が検証され、1922年に信託業法と合わせる形で信託法が、制定された。制定に当たり信託法の宗家である英国ではまだ統一された信託法典がなかったために、その系譜を引く米国カリフォルニア州信託法とインド信託法の二法が参照された。
その際、制定の趣旨が金融・商事関係の問題を抑えることにあったので、海外では社会生活・民事関係の社会的必要性の中から生まれた本来の信託が有する機能を捨象していた。そうした経緯があったため、信託制度は資産階級の財産管理手段として止まり、1952年には多数を対象とした信託商品の組成を可能とする貸付信託法の制定が行われたものの、それ以上に拡大することはなかった。
3 .信託制度の改正
⑴ 信託業法等の改正
大正期に制定された信託法は、実質的に80年にわたり改正がなされなかった。しかし、日本経済のバブル崩壊等による社会経済情勢の変化に伴い、信託を用いた多様な金融商品が組成されるようになった。また、福祉・扶養などのための民事信託のニーズも高まった。
そこで、信託制度が本来予定していた財産を信頼のおける他者に託し、その目的に副って第三者(含自分)のために運用・管理・承継できるシステムとして再構築されることになった。具体的には2004年に信託業法が改正された。この法改正によって、イ.信託可能財産の範囲が拡大され、具体的には、知的財産xxを含む財産権一般の受託が可能となった。ロ.信託業のプレイヤー制限も解放された。金融機関以外の事業会社・信託会社が参入可能となった。こうした開放と同時に引受けなど、担保機能としてその他の取引についてxxの確保により委託者や受益者の保護を
図るため、新たな業者の行為規制を加えている。また、2006年には商事信託を中心に発展してきた現状に則し、受託者のxx義務、自己執行義務等の内容を適切な要件の下で合理化を図っている。
⑵ 信託財産の要件
信託の仕組みを構成する主要な構成要素である信託財産については、一般的に次のように解されている(信託法第 2 条 3 項)。
信託の対象となるのは「財産」であるから、金銭に見積もれるものでなければならず(金銭換算性)、かつ、積極財産でなければならない(積極財産性)とされる(33)。また、信託は、委託者から財産を切り離して受託者がそれを管理する制度であるから、委託者から移転または分離可能なものでなければならない(処分・移転可能性)。
① 金銭換算性
xxなどの信託法では、早くから緩和されている(34)。信託財産は信託目的の実現のために法として容認され、しかも移転可能な有体財産および無形財産をほとんど包含する(35)。たとえば、土地、株式、債券、銀行預金勘定、現金、特許権、著作権、鉱業権、契約上の権利、その他、履行を強制し得るあらゆる種類の請求権に及んでいる。著作権、特許権、鉱業xx、物理的に形のないものであっても、金銭に見積もれるものは信託することができるが、人格xxの身分権は信託することができない。
② 積極財産性(責任財産)
不動産、動産などは含むが、借金、第三者の借入金の連帯保証人債務などの債務、買掛金やローン債務などの消極財産は「財産」には含まれないから、債務は信託することはできない。ただし、付随する負担(租税等)や担保の付いた財産は信託することができる。また、責任財産を構成しないものは同様に信託財産とはならない。
③ 処分・移転可能性
信託は、委託者から財産を切り離して受託者がそれを管理する制度であるから、委託者の処分行為によって委託者から移転可能または分離可能でなければならない。譲渡禁止財産等は、信託することができない。
第 3 章 仮想通貨の信託財産性
1 .信託財産性の検証
⑴ 第 1 章第 2 章の小括
第 1 章では、仮想通貨の概要、特にその利用による決済手段としてのメリットや、テクノロジーの分析を行ってきた。そこでは、仮想通貨としての利用開始から10年程の短期間において、様々な仮想通貨が登場し、利用規模も拡大している。現物市場だけではなく投機行為としてシカゴでは先物市場での取引が行われている。
こうした状況のなかで、経済的価値である仮想通貨には直接性・迅速性(第三者機関の不介在)があり、ブロックチェーン方式の利用によるシステムの高度な信頼性などのシステム機能的有利性がある。また、中立的決済手段で為替リスクがない、少額送金も可能などの決済手段的利便性が認められる。特にブロックチェーン方式については改良が進められている。こうした中で、本年 6 月18日には Facebook による新仮想通貨構想として libraが公表され、話題を呼んでいる(36)。
第 2 章で述べたとおり、社会経済において有用な財産の管理運営・承継システムである信託制度ではその対象財産は一定の要件はあるものの、信託としての意義にかなうものであれば、その範囲を制限することなく、広く認めている方向性が確認できた。そこで、仮想通貨についても、資金決済法が経済的価値として決済手段性を認めている以上、その将来性も含めて信託財産として仮想通貨の該当性を検証する必要性が認められる。
⑵ 仮想通貨の法的評価
仮想通貨の信託財産性を検討するにあたり、前述した仮想通貨システム・BTC の構造を前提にすると、これまでの法体系から仮想通貨及びその送受信についてみてどのような評価が可能となるのか、法的評価が課題となる。
立法政策として、金融投資サービス法(金融商品取引法)を選択せず、発行と流通に係る行為規制や開示規制は設けられなかった。結果として銀行以外が行う少額の決済手段などを規制する資金決済法上に仮想通貨を取り込んだ。新しい決済手段の利用可能性を期待したため、規制は最小限に留められた。また、 FATF の要請に応じると共に仮想通貨取引の制度保障を早期に整備するため、仮想通貨の法的位置付けや権利の移転関係などの論議は捨象された(37)。
そこで決済、支払い手段として利用できる電子情報に経済的価値を認め、また電子的手段によって送受し、移転できるとするその仮想通貨の権利関係をどのように法律構成するのかが問われることになった。仮想通貨が日常の経済行為である支払いや投機行為として行われることから、私法上のステイタスを明確にしなければならない状況が生じた。
2 .法概念の整理
⑴ 既存の法概念への取込
仮想通貨は単なるインターネット上にあるデータ情報の一つである。そこに経済的価値を認め、決済性を有する電子的記録の保有と電子的手段により移転ができることは既存の法概念、所有権や債権等など財産権の客体に包含されるものかどうか、法概念の整理として問われる。なお、仮想通貨については、私法が適用されなくとも排他的利用権が技術的に可能なので権利者の保護は必要がない、との果断な見解も主張されている(38)。
① 物・有体物
民法上は、法律関係を基本的に主体と客体
の関係に分離する。客体として民法では、物を定義し、有体物を挙げる(民法第85条)。
この有体物は何かを巡り、解釈が分かれている。有体物限定説と呼ばれる立場では、第 85条の文言から、物の存在形態である固体・液体・気体など空間の一部を占めて存在する物を指すとする。この立場では、例えば、電気のようなエネルギーは民法上の物ではないとする(39)。それぞれの関連する特別法により権利の客体となると解することで足りるとする(40)。これに対して、管理可能性説では、存在形態ではなく法律上の排他的な支配が可能であれば物としている。雷のようなものではなく通常配電されている電気のように管理可能なものも民法上の物に含まれるとする(41)。
しかし、有体物の概念をあえて緩和し、拡大することは概念の混乱になるとともに結果の妥当性からみれば、対象物について特別法や類推適用で足りることから、電子情報である仮想通貨が物であるとは解釈されない。また、BTC について管理可能性を認めることは、ネット上のデータであることや秘密鍵による公開鍵暗号方式では困難である。そこで、仮想通貨が物でなければ、物権・所有権が成り立たないことになる(民法第206条)(42)。
なおこの点については、性質が許す限り、物権変動及び物権法と同様の法理が準用または類推適用されるべきものがあると指摘されるが、所有権の成立までは肯定していない(43)。
② 無体財産権
経済的価値があるとの親和性から BTC のデータ情報をノウハウ等の無体財産権と考えられないか。一般的理解として、実態の把握可能性の低いものに権利性を認めるには、無体財産権として認める特別法が必要である。システム外の関係者に公示性が困難なものに権利性を認めるには、法的安定性を確保する環境を提供する必要がある。法的安定性を認める根拠法令が必要となる。また、仮想通貨
は単なる情報の断片に過ぎないので、情報内容それ自体に効用を持たない。そこで、情報財としても認められないとする(44)。
③ 債権、前払式決済手段
財産権の対人請求権・債権であると考えられないか。そもそも、債権者と財・サービス等を提供する債務者の存在が必要である。仮想通貨のシステムについては、債務者となる発行者も一定の給付行為等をなすべき債務者も予定されていない。システム上は、単なるデータの送受信である。したがって、仮想通貨システム以外の契約関係(スマートコントラクト)を取込まなければ、債権債務関係は出てこない(45)。
同じく資金決済法に資金決済の手法として規定されているプリペードカード・前払式決済手段(資金決済法第 3 条 1 項 1 号)に類似性があるとして、その保護規制の中で処理を考えることも可能だが、前払式決済手段と仮想通貨は異なるものと仕訳されており(46)、デマーケーションの障碍がある。
⑵ 検証の意義等
① 検証の意義
そのような概念整理の結果、既存の概念・権利に包含されないとして、どのように法律上整理をするのかが問われている。現在、仮想通貨について権利関係は認めないとする立場と何らかの権利関係を認める立場とが対立
図 6 法的評価図
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している。権利関係は認めないが不法行為等の救済は認める立場もある。多様な見解の中で、何らかの権利関係の成立を認める立場が有力である(47)。
② 積極的意義の提示
そもそも、①仮想通貨の将来性に対する消極的評価(マイニング・インセンティブの逓減など)や、②法律論に内在する事情として法的性質に関する議論が仮想通貨に係る個別の問題解決に直結しないことから、仮想通貨のこうした権利性の検討について疑問があり、意義を認めない主張がある(48)。しかしこれに対し、次のように意義を積極的に認める立場がある(49)。仮想通貨は、プログラム・コード(computer code)構造で構成されている。この構造が、法とは異なる仕方で、人々の行動を規制しているが、その正当性や形成過程における正統性を法の観点から検討する必要性がある。また、既存の仮想通貨が抱える問題性を法の観点から明らかにすることが取引の安全性などから重要であるとする。
要するに、従来用いられている法律概念の範疇に入らない、プログラム・コード構造をどのように法的に評価するのか、法的効果を持つものと構成できるのかについて、多分に概念形成的議論(ターミノロジー)ではあるが、その意義を強調している。
3 .否 定 説
仮想通貨に対する権利性を否定する立場がある(50)。仮想通貨の事実関係に規範性を否定するとの考え方で行けば、救済性も不要になるとの考えになる。しかし、この中でも権利性を否定するものの必要な救済法理は働くとの見解がある(51)。
⑴ 救済法理説
この救済法理は前述の仮想通貨の構造上、仮想通貨の保有とは、秘密鍵の排他的な管理を通じて当該秘密鍵に係るアドレスに紐づいた仮想通貨を他のアドレスに送付することが
できる状態を独占している事実状態であるので、何らかの権利または法律関係をも伴うものではないとする。しかし、仮想通貨の取引そのものには当事者間の契約を観念できることから、仮想通貨の独占的保有という事実状態は不法行為法等の保護の対象となるとする。
イ.不法行為法理の援用
具体的には、まず、不法行為法理による保護があるとする。不法行為に対しては、「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」(民法第709条)と定める。したがって権利ではなく、法律上保護される利益を侵害した場合でも、不法行為責任が生じることになる。仮想通貨は財産権ではなくても、財産的価値として位置付けられているので法律上保護される利益になると考える。その根拠としては、営業秘密に対する不法行為法理による保護を推測できるとする。不正競争防止法では、「この法律において『営業秘密』とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう」
(同法第 2 条 6 項)と定義されている。その上で、不法行為の特則として差止請求とか損害賠償請求を認めている(同法第 3 条 4 条)。
この基本的考え方からは、利益が法律上保護される根拠が財産的価値について事実上排他的に享受できる状態そのものではなくて、事実上排他的に享受するために保有者が行っている行為となる。これを仮想通貨に比類すれば、他者に仮想通貨の利用をさせない独占的な秘密鍵の管理行為ということになり、その管理行為が保護法益の要件になると考えられるとする。
ロ.不当利得法理の適用
民法第703条における利益と損失の構成をみると、「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に
損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」と規定している。したがって、財産を受取る法律上の根拠がないにも拘わらず、他人の財やサービスによって利益を受け、その結果損害や損失を与えた者は、善意の場合現存利益の範囲で返す義務を負うとされている(悪意者・第704条)。この利益を受け、損失を及ぼす、という概念はそれぞれ当該財産権とは異なっている。より広い概念で規定されている。そこで、財産的利益を生じ得るものによる利得および損失を含むと解されているので、仮想通貨もその対象となる可能性を持つとする。
ハ 責任財産の範囲
強制執行の引当てになる債務者の財産が、責任財産とされる。責任財産の範囲として財産権が存在しなくても、債務者の責任財産には含まれ得ると解されている。一般に債務者の責任財産というのは、債務者の総財産である。債権者への配当の財源となり得る以上は、財産権の客体とならない、信用、のれん、ノウハウ等も含むと解されている。従って、債務者が仮想通貨を保有している場合は、その財産的価値というのは、債務者の責任財産を構成する可能性があるとする。責任財産というからには強制執行が可能なものとなる。相続についても同様に考えている。
結果的にこの立場は、仮想通貨の決済手段が果たす無因・片面的決済の意義を強調することになる。仮想通貨システムそれ自体の法律関係には触れず、救済法理に重点を置いている。
⑵ 決済手段説
典型的な決済手段である金銭は、その占有の有無によって所有関係が決まる。これと同様に仮想通貨は、技術的な排他的利用関係で所有が決まる。それ以外にザインはないため今後も進展していくテクノロジーを権利関係で固定する必要はないし、そういうものとしてシステムを認識すれば、救済すべき不都合
もないとする。決済手段性があっても、例えば“オマケ”であり、権利性のないポイントやマイレージの様な存在がある。これらに不都合はないとされる。そこで、FATF の要請に見合う公的規制があれば足りる。
4 .肯 定 説
権利性、規範性を肯定する立場もその根拠付けから以下の三つの説に大別される(52)。
⑴ 物権・準物権説
仮想通貨を法的保護に値する財産的価値であるとして、帰属や移転については原則として物権法のルールに従うべきとする。その法的根拠は条理とされる(53)。具体的には、ブロックチェーンによる情報の伝達スキームとは離れて、実質的な権利者の主張を認める。
「本来の権利者」は「権利者として記録されている者」に対して、仮想通貨の返還を内容とする物権的請求権を有することになるものと解されている。
この立場の背景としては、仮想通貨が、決済手段ではなく、投機的手段として用いられている実態の重視にあり(54)、本来的に仮想通貨が意図している新通貨としての企画とは異なる。また、主張の根拠が条理にあるとの実質論であるため、特定の条理が認められるレベルまでに仮想通貨の社会的通用性とその認識が高まっているとは言い難い現状からみて、法律の解釈論としては根拠を欠くのではないか。
⑵ 財産権説
仮想通貨に関する本格的検証として主張されたもので、仮想通貨に決済手段性を認めるために財産権の付帯を肯定する。その論拠として民法上の「財産権」概念が「処分することを得べき利益を目的とする権利」を意味することを前提として、「一定の利益が『財産権』として法主体に排他的に帰属することにより、この者に認められる法的権能が『処分
権』であると捉えることができる(55)」とする。根拠として、法制度とは事実上、ある主体
がある対象に関する排他的支配可能性を有する場合に、その状態を法的に、財産権の帰属と評価するものであるとし、その主体は自らに帰属する財産権を法的に処分する権限(処分権)を有するものと解する。この理解からブロックチェーン技術の登場により従前は困難とされていた特定の主体が仮想通貨に関するデータを排他的に支配できるという事実状態が生じたことをもって、仮想通貨に対する財産権を肯定する決定的要因であるとする。要するに、財産権という法的な括りにブロ ックチェーンシステムという事実関係が入り込むと考えている。金銭に代表される決済手段は「それを構成する『通貨媒体』と『通貨手段』との組合せによって法的に把握することが可能となる」ので、ブロックチェーンシ
ステムはそれを体現するものと評価する。 その結果として、仮想通貨である当該財産
権が帰属主体の責任財産に属することや相続の対象となることのほか、財産権の帰属変更について所有権移転と同様の規律が妥当することや、財産権の帰属に対する侵害があった場合に所有権に基づく返還請求権と同様の規律が妥当することになるとする。したがって、結果的には、前述した物権説の主張と同じになる。論理立てが異なるに止まる。
この立場については、民法上の「財産権」という文言がそもそも資金決済法にないことや財産権概念の拡張による確定が失われることが、指摘されている(56)。
⑶ プログラム・コード合意説
プログラム・コードに対する合意(同意)を根拠として、仮想通貨に係る権利性を肯定する立場である。システムとして仮想通貨の保有を可能にしているのは、取引参加者全員が合意し、その前提としている仕組みなので、合意が一種のソフトローとなって法的にシステム全体を支えているとする(57)。即ち、
会社設立行為にみられる合同行為類似のものに、プリンシパルな法的評価を認める。ハードローまでのxxは、将来の課題とする。ソフトローとしてのステイタスに基づき、その範囲での対応によって問題解決を図る。ソフトローとする法的権利関係を法的評価について修正の余地を認めつつ、可能な範囲で、プログラム・コードの内容を尊重すべきであると主張されている。
この立場に対しては、従来の契約法が予定する合意といえるかどうかとの指摘がある(58)。そこで、この点については、プログラム・コードの内容を、当事者の法的な権利義務関係として評価し直すことが今後必要になると応えている。
5 .検討
⑴ 各主張の小括
今後の法改正や裁判所の法令解釈が、仮想通貨の法的ステイタスをどのように判断していくかは全く予測できない。しかし、以上を検討する前提として、第 1 章でも言及したが、仮想通貨に係るシステムが IT 技術であるため、決定的な差別化がどこにあるのか理解不能なほど仮想通貨の種類は多い。最近でも日々、新仮想通貨構想が公表されている状況にある。また、仮想通貨、特に BTC システムは、例えば、承認手続きの回数や容量、マイナーの取組、進行管理に係るコアメンバー等の不確定など、当初の実験的なレベルを超えていないにも拘わらず、他の仮想通貨よりも先行性があるため現在は投機的ツールに特化している。多少の改善があるものの、度重なる分岐フォークやその際の交換業者による取引ストップが続いている。BTC を代表とする既往の仮想通貨が投機的手段になっていることに重点を置き、即物的に物権・準物権と考え、その根拠が条理であるとするのは、仮想通貨を財そのものとして扱い、その通貨機能を無視するものである。
また、この様な状況下で財産権という法的
な括りにブロックチェーンシステムという事実関係が入り込むと考えるのは、ブロックチェーンという仮想通貨に係る一つのシステムに権利性を安易に固定させることにはならないだろうか。そのシステムも、必ずしも同一性を画す基準はなく、POW などの技術との組合せによっては性質が異なるものである。大きくは、その技術的進歩に法規制等の社会規範制度が追い付かない側面が露呈している。そこで、現状では、仮想通貨を私法上の権利とまで法的評価をすることはできないのではないか。
さらに、決済性が目的とされる利用者合意が BTC システムやアルトコインに存在するのかどうかは、取引の現状が殆ど投機であることから疑問が出る。また、合意からソフトローと判断する見解からは、規制当局ではなく自主規制機関等の規則にその根拠付けを見出そうとすることになる。しかし、自主規制機関が本来的な働きをするためには、例えば、英国の金融サービス補償機構(FSCS)や金融オンブズマン(FOS)、日本では証券投資に係る投資者保護基金(JIPF)や証券・金融あっせん相談センター(FINMAC)の鼎立機関による協調体制があって自主規制が円滑に運用される。仮想通貨関係の自主規制機関
(JVCEA) は、登録認定(2018年10月24日)されたばかりで体制整備の段階にある。また、資金決済法・金融商品取引法改正により倍率取引等に係る自主規制の運営主体については、未定である。
⑵ 救済法理の適切性
そこで、仮想通貨の本来的目的として企画された決済手段性に重点を置き、特に BTCの課題を補正し、通貨として相応な流通規模を予定する仮想通貨システムが実装された段階で立法化を前提に権利性を改めて、検討すべき状況にあるのではないか。この考え方に対しては、競争制限的であるとの指摘がなされるかもしれないが、通貨としての機能発揮
が求める水準は利用者の利便性などからみてもデファクトがあった方が効率的である。したがって、権利性は否定するものの、救済法理を働かす立場が法論理的に適切であり、また実際の問題解決に結付く妥当性がある、と考える。なお、私法的権利というより、公的規制で足りるとの意見も、仮想通貨の現状を踏まえた主張と評価できるものの、現実的課題の救済にはならない。私法的な利用者救済を仮想通貨の分野では、不要とする。
デファクトになりそうなものとして、例えば、Facebook が企画している libra は、ブロックチェーンによる分散型を取りながら、管理運営主体を置き、見合い資産の確保をするシステムである。これまでの BTC を太宗とする仮想通貨システムの修正、補完を目的としており、多くのパートナー企業や監督当局との規制調整など合意性を重視したものである(59)。
まとめ 仮想通貨の信託財産該当性
⑴ これまでの議論
繰り返しになるが、今後の法改正や裁判所の法令解釈として、仮想通貨の法的位置付についてどのように定立・判断されていくのかとの予測は立たない。BTC を代表とする既往の仮想通貨が投機的手段になっていることを考慮し、物権・準物権と考えるのは、仮想通貨を財として扱い、その通貨機能を無視するものである。また、財産権として考える立場は、ブロックチェーンという IT システムによって事実的に利用処分を独占することに着目する。しかし、その IT システムもサイバー空間を利用する一形態に過ぎず、規格も流動的である。そこから直ちに私的権利性を認めるのには飛躍がある。物権・準物権説と類似する。仮想通貨の決済手段を重視するとともに関係者のシステムに対する合意からソフトローと考える見解は説得性に富むものの、ソフトロー制定主体の漸新性や仮想通貨
に係るデファクトが形成過程にあるなどの障碍が大きい。仮想通貨システムの革新が今後も行われ継続されていく状況から、存在するとされる合意は流動的であり、その解釈は、期待性を含んでいる。
しかし、私的権利関係があると評価はできなくとも、排他的利用権がシステム関係者の枠内に事実上存在することは仮想通貨システムの根幹となっている。また、資金決済法等が自主規制機関の役割であるソフトローの形成等を重視していることから、必ずしも法律に依拠しない制度設計が予定されている。さらに、利用者に私法上の救済策があれば、敢えてこれまでの私法上の権利構成は取らなくとも、紛争処理は図られる。そこで、仮想通貨そのものには、法的権利関係が認められないが、救済法理によって保護される利益はあると解釈するのが妥当ではないか。
⑵ 仮想通貨の信託財産該当性検証
次に信託財産に該当するのか、信託財産の範疇にあるとされるのかを考える。
仮想通貨が信託財産と評価できるためには、受託者に信認義務を負わせる信託制度の意義・目的に適合することは当然の前提である。信託財産は、第 2 章で言及した通り、海外法制及び我が国の改正信託法においても制限的に考える必要はなく、緩やかに解されている(60)。しかし、特定の法主体の財産に属する金銭価値と見積もることができる積極財産かどうか(責任財産になるのか)、特定の法主体の財産から分離することができるかどうかなどの要件はクリアーする必要がある。権利性を否定するものの、利益救済を認め る立場では、仮想通貨が現実的に秘密鍵の保有者による排他的利用として、決済手段となっていること及び資金決済法では、仮想通貨そのものの性質として不特定者に対する経済的価値が認められていることなどから積極財
産であり、かつ分離性のあるものと解される。仮想通貨交換所では一定の換金レートが示さ
れており、仮想通貨に係る会計基準によって、会社はその資産計上が認められている。
具体的には、①仮想通貨の財産的価値は、代価の弁済に利用できる価値を含むとされる
(資金決済法第 2 条 5 項)。一般に債務者の責任財産というのは、債務者の総財産である。責任財産の範囲として権利である財産権が存在しない対象でも、換価等のために目的物となり得る一切の財産が含まれると解されている。そこで換価ができる仮想通貨は債務者の責任財産に含まれることになる。債権者への配当財源であるとして利用者の積極的財産と構成することが可能となる(61)。また②分離性(譲渡行為)について、特定の法主体の財産から分離することについては、秘密鍵による署名、取引の承認によってシステム上行われており、BTC では事実行為をシステム参加者であるノードがブロックチェーンにより確認ができることが明らかにされている。
なお、仮想通貨の権利性を否定し、一切を公的規制に委ねるとの立場ではその利益性も否定することになるのではないか。したがって、信託財産性も認められない。また、権利性を認める立場では、仮想通貨は、財産的価値を持つ移転が可能な法的対象物とされるので、信託財産に求められる積極財産と分離移転性は当然認められる。合意によるソフトローとする立場では、ソフトローの内部拘束性を利益関係までに普遍化できるのかによるものの、困難ではないか。信託財産性は認められないのではないか。
以上から、仮想通貨は、その救済法理を持って信託財産として要件を充足し認められるものと考える。信託制度の中に仮想通貨を対象財産として取り込むことができる(62)。ただし、仮想通貨は、スティープルコインでなければ、価値があるものとして企画されてもその価値保証はなく、事実上ゼロになることがある。したがって、金融庁に登録されず(資金決済法第63条 1 項 7 号)、また企画先行し、市場取引がなく価値があると認められない仮
想通貨は信託財産とはなり得ない。権利性を肯定する立場でも同様の結論となる。
【注】
(1)2018年 6 月閣議決定「xx投資戦略2018
―「Society5.0」「データ駆動型社会」への変革―」「FinTech/キャッシュレス化推進」を掲げている。
(2)xxxxx://xxxxxxxxxxxxx.xxx/xx/総時価総額:¥29,380,705,047,852
最終更新:2019年08月20日 14:10 UTC
(3)情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律(平成31年 3 月 15日提出、令和元年 5 月31日成立)
2018年 3 月開催の G20では、デジタル通貨であるビットコインなどについてその呼称を暗号資産(crypto-assets)に改めている。 Communiqué, G20 Finance Ministers and Central bank Governors Meeting,Buenos Aires.(Mar.19-20,2018)
(4)国際金融機関などにより仮想通貨の定義は異なる。
(5)FATF Definitions and Features of the VASP Sector Relevant for AML/CFT 33 b)
(6)INTERPRETIVE NOTE TO RECOM- MENDATION 15 1.
(7)通貨は形式的な法律的根拠より、通貨としての機能を有するものとして社会的合意、信頼があることが重要である。通貨史の中で、オーストリアのxxxxxxx銀貨(在位1740-1780)が発行主体であるオーストリア帝国とは関係なく、広く中東・東アフリカ地域で20世紀半ばまで通用したことが挙げられている。貨幣の機能としては①交換の媒体(medium of exchange)、②価値の共通尺度(common measure of value)、③価値の標準(standard of value)、④価値の備蓄(store of value)など。
現在、金融論の教科書には、三つの機能
/役割として①②④があげられることが多い。また、交換と決済を分ける考え方もある。なお、④は貨幣に固有のものではないとする意見もある。
(8)詳細な分類をしている資料 xxx「仮想通貨と仮想通貨をめぐる法規制の一試論
(上)」金融法務事情第2092号42頁(キンザイ2018)
(9)xxxxx://xxxx.xxxxxxxxxxxx.xxx/ articles/40などネットの作成方法紹介サイト
(10)xxxxx://xxxxxxxxxxxxx.xxx/xxx/xxxxx/ all/
2019.8.11 Cryptocurrencies: 2440
・Market Cap: $295,344,742,529
・24h Vol: $55,215,731,510
・BTC Dominance: 68.8%
(11)こうした呼称が適切かどうかは、疑問がxxxxxように使われている。
(12)2016年 4 月28日経済産業省商務情報政策局 情報経済課(ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)報告書概要資料 7 頁ブロックチェーン技術活用のユースケース その後の報告書としては2018年 3 月株式会社日本総合研究所「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(分散型システムに対応した技術・制度等に係る調査)」
(13)同上資料 6 頁
(14)海外送金の手数料特集サイト(2019年 6 月 3 日時点)
xxxxx://xxxxxxxxxxxx.xxx/xx/xxxx/ overseas-remittance-charge
(15)2018年 5 月18日財務省報道発表「仮想通貨に関する外国為替及び外国貿易法に基づく報告について周知します」国際局調査課外国為替室
(16)2010年 5 月22日プログラマー Laszlo Haznycz が10,000BTC でピザ 2 枚を購入
(17)2019年 8 月20日
(18)xxxx「仮想通貨の動向」インターネット白書2018 299頁(株式会社R&D 2018)
(19)xxx xxxx「暗号資産(仮想通貨)研究への誘い―先物、不正・規制、ICOを中心に」ファイナンス2019年 5 月号60頁
(20)2017年末シカゴ・オプション取引所
(Chicago Board Option Exchange, CBOE)やシカゴ・マーカンタイル取引所(Chicago Mercantile Exchange, CME)手先物取引所で BTC の先物取引を導入。CBOE は 2019年 6 月で取引を中止している。
(21)xxxx「暗号資産における取引の追跡の困難性と匿名性:研究動向と課題」 日本銀行研究所 Discussion Paper №2018- J・20
(22)xxx「暗号資産に関する実務上の法的課題」金融法務事情№2119 11頁(キンザイ 2019)
(23)仮想通貨の技術・構造についてはxxxx『仮想通貨法の仕組みと実務』第 4 章仮想通貨の思想とテクノロジー(ブロックチェーン技術)61頁~(日本加除出版2018年)に多くを拠っている。
(24)記録を確認・検証してブロックをつないでいくマイナー(採掘者)たちが結託し、全体の過半数を占めるほどの計算能力を持ったなら、ブロックチェーンに対する様々な攻撃が理論上は可能。これは「51%攻撃」と呼ばれるが、現実的にそれを実行することは、極めて難しい。
(25)なお、一部の情報を管理するノードも存在する。
(26)交換業者によるサービス停止は行われている。2017年 7 月24日日本仮想通貨事業者協会(JCBA)公式サイト公表
(27) 2 つの公開鍵暗号(公開鍵暗号の基礎知識) xxxxx://xxxxx.xxx/xxxxx_x_00/xxxxx/000xx 94160be8d637585
(28)ハッシュ関数とは、任意長のビット列
から規則性のない固定長のビット列を生成する関数、手順のことをいう。一般に、ハッシュ関数への入力データは「メッセージ」、ハッシュ関数からの出力データは「ハッシュ値」「メッセージダイジェスト」「フィンガープリント」などと呼ばれる。ハッシュ関数は一方向関数であるため、出力データから入力データを推定することは極めて難しい。ハッシュ関数とは入力した値に対して、まったく別の値が出力されるという暗号方式である。
(29)ビットコインアドレスは秘密鍵から公開鍵が生成される手順と同様、公開鍵からハッシュ関数を利用して生成されるもので、数値と文字による文字列になる。
例)ビットコインアドレス 1BK5tmLrZS3Uhs6QgfYS6pGLazWj4BD1 hy
(30)Peer-to-Peer
(31)実際のトランザクションを確認可能なサイト例は以下の通り。
◦Blockchain info
(xxxxx://xxxxxxxxxx.xxxx/xx)
◦Bitcoin Block Explorer
(xxxxx://xxxxxxxxxxxxx.xxx/)
(32)これは,自身が生成したブロックを有効化するために,暗号学的ハッシュ関数
(SHA256)を利用して数学的演算を行うことで「誰がビットコインを所有しているのか」を検証することになる。
(33)xxxxx『条解信託法』30頁(弘文堂 2017)
(34)第 3 次リステイトメント 第 2 巻 信託財産(Trust Property)P171
(35)xxxx『xx信託法概論』71頁(xx堂 1998)
(36)libra White Paper
xxxxx://xxxxx.xxx/xx-XX/xxxxx-xxxxx/?xxxx direct=en-US
(37)金融庁 平成30年12月21日仮想通貨交換業に関する報告書 5 頁
(38)xxxx「法務時評 暗号資産(仮想通貨)に関する法整備」銀行法務21№845
1 頁(経済法令研究会2019)
(39)xxx『電力事業における信託活用と法務』12頁(民事法研究会 2018)
(40)xxx『民法 1 総則・物権総論第 4 版』 353頁354頁(東京大学出版会 2008)
(41)通説 xxx『新訂民法総則(民法講義1)』201頁(岩波書店 1965)判例(大刑判明36・ 5 ・21刑録 9 輯874頁、大判昭 12・ 6 ・29民集16巻1014頁)
(42)xxxx「仮想通貨の私法上の性質について」金融法務事情 No.2095 15頁(キンザイ2108)
(43)xxxx「再説・仮想通貨の私法上の性質―xx論文を踏まえた私見(物権法理の準用)の詳説―」金融法務事情 No.2106 11頁(キンザイ 2019)
(44)前注42 xxxx 15頁
(45)xxx「論説 仮想通貨と信託」信託フォーラム vol.10 91頁( 日本加除出版 2018)
(46)資金決済法上前払式決済手段は、“通貨建て”されているので、消極要件が異なる。
(47)加xx「仮想通貨の私法上の法的性質
―ビットコインのプログラム・コードとその法的評価」金融法研究会報告書(33)23頁 仮想通貨に関する私法上・監督法上の諸問題の検討第 1 章(2019) 先行研究として有益なもので、本稿分析の基礎としている。
(48)xxxx『仮想通貨の法的性質』法学教室449号52頁(有斐閣 2018)
(49)前注47 加xx 4 頁
(50)xxxx「ビットコインの決済利用と流通の保護―UCC 第 9 編の議論を素材として」金融法務事情 No.2068 38頁(キンザイ 2017)
(51)xxx「仮想通貨の私法上の位置づけー様々な場面への応用―」仮想通貨事業者協会(JCBA)2019月期勉強会
(52)前注47 | 加xx 18頁~ | (58)前注47 加xx 24頁 |
(53)前注43 | xxxx 10頁 | (59)拙稿「Facebook libra は新通貨!」NF |
(54)前注43 | 加xx 18頁 | 誌49巻 8 号50頁(地域金融研究所 2019) |
(55)前注42 | xxxx 16頁 | (60)xxxx『逐条解説新しい信託法補訂 |
(56)前注43 | xxxx 9 頁 | 版』32頁(商事法務 2008) |
(57)xxxx「仮想通貨の私法上の取扱いについて」NBL 第1090号69頁(商事法務 2017)
(61)前注45 xxx 91頁
(62)前注47 加xx 33頁注120
(xxxxx・xxx)