Contract
1 随意契約とは
「随意契約」とは,競争入札の方法によらないで,普通地方公共団体が任意に特定の相手方を選択して締結する契約方法をいいます。
地方自治法において,地方公共団体の契約方法は一般競争入札が原則とされていますが,随意契約はその例外として「地方自治法施行令第 167 条の 2 第 1 項」及び「地方
公営企業法施行令第 21 条の 14」の第 1 号から第 9 号の規定に該当する場合に限り利用が認められている契約方法です。
◎地方自治法施行令第 167 条の 2 第 1 項第 1 号から第 9 号
◎地方公営企業法施行令第 21 条の 14 第 1 号から第 9 号
1 号 | 売買,貸借,請負その他の契約でその予定価格が一定額を超えないものをする とき。 |
2 号 | 不動産の買入れ又は借入れ,普通地方公共団体が必要とする物品の製造,修理,加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又 は目的が競争入札に適しないものをするとき。 |
3 号 | 特定の施設等から物品を買入れ又は役務の提供を受ける契約をするとき。 |
4 号 | 新規事業分野のベンチャー企業から新商品を買い入れる契約をするとき。 |
5 号 | 緊急の必要により競争入札に付することができないとき。 |
6 号 | 競争入札に付することが不利と認められるとき。 |
7 号 | 時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあると き。 |
8 号 | 競争入札に付し入札者がないとき,又は再度の入札に付し落札者がないとき。 |
9 号 | 落札者が契約を締結しないとき。 |
2 随意契約ができる場合
(1号)売買,貸借,請負その他の契約でその予定価格が一定額を超えないものをする
とき。
売買,貸借,請負その他の契約で,予定価格が,契約の種類に応じて定められた額の範囲内のときは随意契約をすることができます。
この号は,金額の少額な契約についてまで競争入札で行うことは,事務量が増大し,能率的な行政運営を阻害することから,契約の種類に応じた一定の金額以内のものについては,随意契約によることができることとされているものです。
一定の金額とは、神栖市財務規則で次のように定められています。
【 神栖市財務規則第118条の2 】
(1)工事又は製造の請負・・・130万円以下
1
(2)財産の買入れ・・・・・・・80万円以下
(3)物件の借入れ・・・・・・・40万円以下
(4)財産の売払い・・・・・・・30万円以下
(5)物件の貸付け・・・・・・・30万円以下
(6)前各号以外のもの・・・・・50万円以下
(2号)不動産の買入れ又は借入れ,普通地方公共団体が必要とする物品の製造,修理
加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質
又は目的が競争入札に適しないものをするとき。
不動産の買入れ又は借入れ,その他に地方公共団体が必要とする契約で,その性質又は目的が競争入札に適しないものをするときは随意契約をすることができます。
この号では「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」であるかどうかによって随意契約の適否が決定されることになります。
ここでいう「その性質又は目的」とは,「契約の内容」と解され,契約の内容が競争入札に適しない場合に適用されます。
【2 号随契とする場合の具体例】
◎業種共通
① 国又は地方公共団体との直接契約の場合
② 企画提案方式(プロポーザル方式)等,業務の内容が入札に適しない場合
◎建設工事・建設コンサルタント業務等
① 特殊な技術,機器又は設備等を必要とする工事等で,特定の者と契約を締結しなければ契約の目的を達することができない場合
ア 特許工法等の新開発工法等を用いる必要がある工事
イ 文化財その他極めて特殊な建築物等であるため,施工者が特定される補修,増築等の工事
ウ 実験,研究等の目的に供する極めて特殊な設備等であるため,施工可能な者が特定される設備,機器等の新設,増設等の工事
エ ガス事業法等の法令等の規定に基づき施工者が特定される工事
② 施工上の経験,知識を特に必要とする場合,又は現場の状況等に精通した者に施工させる必要がある場合
ア 本施工に先立ち行われる試験的な施工の結果,試験的な施工を行った者に施工させなければならない本工事
イ 既設の設備と密接不可分の関係にあり,同一施工者以外の者に施工させた場合,既設の設備等の使用に著しい支障が生ずるおそれがある設備,機器等の
増設,改修等の工事
ウ 埋蔵文化財の調査,発掘,移転等で,特殊な技術,手法等を用いる必要がある工事
◎物品納入・業務委託等
① 額面価格が定められているものなど,競争性がないと認められる場合郵便葉書及び切手,収入印紙,新聞,官報等
② 地方公共団体の行為を秘密にする必要がある場合試験問題の印刷物の発注等
③ 契約の目的物が特定の者でなければ納入できない場合不動産の買入れや賃貸借契約等
④ 特殊な性質を有する品物の買入れ,買入れ先が特定されている特殊の技術(特許等)を必要とする場合
市有の材木を売払い,その材木で特殊な机を製造させるような場合等
⑤ 市が試験をするため物品の製造等をさせる場合特殊な規格,品質等が要求される場合等
⑥ 特定のものでなければ役務を提供することができない場合
特殊な技術を用いて設計・施工した施設・設備の保守・点検業務の場合等
⑦ 電算システムについて,当該システムの特許権,著作権その他の排他的権利を有するシステム開発者にしかできない改造,改良,保守,点検等を実施する場合
⑧ 既存の電算システムと密接不可分の関係にあり,同一システム開発者以外の者にプログラムの増設・追加等を履行させると,既存の電算システムの運用に著しく支障が生じるおそれのある場合
⑨ 法令等により契約の相手方が特定されている場合
⑩ 市内の医療機関で健康診断等を受診できるようにするため,医療機関と締結する健康診断業務等を実施する場合
⑪ 施設の維持管理において,他の施設(市以外の者が所有管理する施設を含む)と一体的に維持管理しなければ業務上支障が生ずるため,他の施設の維持管理をしているものに委託する場合
⑫ 契約の目的を達成するためには,能力その他の複数の条件を満たすことが必要であって,一つ一つの条件については,それを満たすものが複数存在するが,すべての条件を満たす者が1者に特定される場合
⑬ 印刷物等で,版権を業者が保有している場合
(3号)特定の施設等から物品を買入れ又は役務の提供を受ける契約をするとき。
障がい者に対する職業訓練を行う施設において製作された物品を買い入れる契約や高年齢者又は母子家庭の母等の支援を行う団体から役務の提供を受ける契約については,随意契約をすることができるとされています。
【3 号随契とする施設の具体例】
シルバー人材センター,障がい者支援施設等
(4号)新規事業分野のベンチャー企業から新商品を買い入れる契約をするとき。 新商品の生産により新たな事業分野の開拓を図る者として総務省令で定めるとこ
ろにより,普通地方公共団体の長の認定を受けた者が新商品として生産する物品を,普通地方公共団体の規則で定める手続により,買い入れる契約をするときは随意契約をすることができるとされています。
契約の目的物に新規性があり,他の者が納品する物よりも優れた機能性があって,地方公共団体はその機能性からもたらされる利益を享受することができますから,これらを調達することは,経済性及び競争性の原則の支障にならないものであると考えられています。
(5号)緊急の必要により競争入札に付することができないとき。
この号において「緊急の必要」とは,例えば,災害時において一般競争入札又は 指名競争入札の方法による手続きを取っていたのでは,その時期を失し,あるいは全く契約の目的を達することができなくなり,経済上,著しく不利益を被る場合です。
【5 号随契とする場合の具体例】
◎建設工事・建設コンサルタント業務等
① 緊急に施工しなければならない工事であって,競争入札に付す時間的余裕がない場合
ア 堤防崩壊,道路陥没,地すべり等の災害に伴う応急工事イ 電気,機械設備等の故障に伴う緊急復旧工事
ウ 災害の未然防止のための応急工事
◎物品納入・業務委託等
① 堤防崩壊,道路陥没,地すべり等の災害に伴う復旧用資材の買入れや復旧用資材の運搬車両の借入れ,水道・下水道施設等の設備機能等の故障において直ちに機能を復旧しなければ施設の運転に支障をきたす場合
② 電気,機械設備等の故障に伴う応急復旧の場合
③ 天変地異その他災害等や感染症発症時において,緊急に必要となる物品の調達の場合
④ OA システム・インターネットを通じた申請・申込システム等の市民サービスを提供している場合で,緊急に復旧をしなければ,市民生活に多大な損害や利便性低下が生じる場合
⑤ 公の秩序維持のための警備等に関する業務,災害発生時の住民避難に関する業務
⑥ 堤防,橋りょう,遊具等の緊急点検などの災害の未然防止のための応急業務を実施する場合
⑦ エレベーターや医療機器などの特定機器の故障に伴う応急復旧業務を実施する場合
⑧ 選挙など法令等の規定により業務を行う期間が短いため緊急に必要とするものを調達する場合
(6号)競争入札に付することが不利と認められるとき。
この号において「不利」の解釈は,価格面だけではなく,その業務の品質,期間,安全性等も考慮して決定しています。
現に行っている事業や継続的事業と密接に関連する事業の場合,新たに競争入札に付すると,かえって事業の手順を複雑にしてしまい,事業完了までに様々な支障が予想される場合があります。また,発注手続きの遅れにより事業遅滞を招くもの,予定価格の騰貴により財政への影響が生じる場合もあり,これらは,結果的に市民サービスへの悪影響が発生してしまうことから不利としています。
【6 号随契とする場合の具体例】
◎建設工事・建設コンサルタント業務等
① 現に契約履行中の施工者に履行させることにより,工期の短縮,経費の節減が確保できる等有利と認められる場合
ア 当初予期し得なかった事情の変化等により必要になった追加工事イ 本体工事と密接に関連する付帯的な工事
② 前工事に引き続き施工される工事(以下「後工事」という。)で,前工事の施工者に施工させることにより,工期の短縮,経費の節減,安全・円滑かつ適切な施工が確保できる等有利と認められる場合
ア 前工事と後工事とが,一体の構造物(一体の構造物として完成して初めて機能を発揮するものに限る。)の構築等を目的とし,かつ,前工事と後工事の施工者が異なる場合は,かし担保責任の範囲が不明確になる等密接不可分の関係にあるため,一貫した施工が技術的に必要とされる当該後工事
イ 前工事と後工事が密接な関係にあり,かつ,前工事で施工した仮設備は引き続き使用される後工事(ただし,本体工事の施工に直接関連する仮設備であって,工期の短縮,経費の節減が確保できるものに限る。)
③ 他の発注者の発注に係る現に施工中の工事と交錯する箇所での工事で,当該施工中の者に施工させることにより,工期の短縮,経費の節減に加え,工事の安全・円滑かつ適切な施工を確保する上で有利と認められる場合
ア 鉄道工事等と立体交差する道路工事等の当該交差箇所での工事イ 他の発注者の発注に係る工事と一部重複,錯綜する工事
◎物品納入・業務委託等
① 現に契約履行中の者に履行させることにより,履行期間の短縮,経費の削減が確保できる等有利と認められる場合
ア 当初予期しなかった事情の変化等により必要となった業務であることイ 本体業務と密接に関連する付帯的な業務であること
② 早急に契約をしなければ契約する機会を失い,又は著しく不利な価格をもって契約しなければならないこととなる場合
③ 契約金額以外の条件が市にとって不利となる場合(品質・性能等の要素が業者によって異なる場合等)(運送,保管等の際の地理的条件等により市に不利となる場合等)
④ 複数単価契約等により,競争入札に図ることが不可能な場合
⑤ 機器,設備,情報処理システム等の維持管理(運転,保守,監視,運用支援等を含む)で,既設の機器,設備,情報処理システム等と密接不可分の関係にあり,同一の者以外では責任区分が不明確になり,また,故障発生時の原因究明・故障修理などの対処が困難になるなど,業務の履行を達成できない場合
ア 既設の機器,設備,情報処理システム等と密接不可分な関係にあり,また,どの部分が密接不可分であるかが明確であること
イ 密接に関連していることによって,故障原因の特定等が困難となることや責任区分があいまいになること又はその他の契約の目的達成が極めて困難になることが明確であること
⑥ 複合施設の共有部分の清掃業務(第三者発注)等の受注者に専用部分の業務を委託する場合
とき。
(7号)時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのある
この号において,「著しく有利な価格」の考え方について,一般的に品質,性能等が他の物件と比較して問題がなく,かつ,予定価格(時価を基準としたもの)か
ら勘案しても,競争入札に付した場合よりも誰がみてもxxxに有利な価格で契約できる場合です。
【7 号随契とする場合の具体例】
◎建設工事・建設コンサルタント等
① 特定の施工者が,施工に必要な資材等を当該現場付近に多量に保有するため,当該者と随意契約することにより,競争に付した場合よりも著しく有利な価格で契約することが認められる場合
② 特定の施工者が開発し,又は導入した資機材,作業設備,新工法等を利用することにより,競争入札に付した場合よりも著しく有利な価格で契約することができると認められる場合
◎物品納入・業務委託等
① ある物品を購入するにあたり,特定の業者がその物品を相当多量に保有し,しかも他の業者が保存している当該同一物品の価格に比べて著しく有利な価格をもって契約することができる見込みがある場合
② 特定の施工者が開発したシステム等を利用することにより,競争に付した場合よりも著しく有利な価格で契約することができると認められる場合
(8号)競争入札に付し入札者がないとき,又は再度の入札に付し落札者がないとき。競争入札に付し入札者がいないとき,又は再度の入札に付し落札者がないときには,
日時を改めて再度一般競争入札や指名競争入札に付すことができますが,改めて競争入札に付す時間がない場合もあることから,随意契約によることができるとされています。
(9号)落札者が契約を締結しないとき。
一般競争入札又は指名競争入札に付した場合において,落札者の決定後,当該落札者が契約を締結しないときには,当該落札者の落札金額の範囲内で随意契約によることができるとされています。
落札者が契約を締結しないときには,日時を改めて再度一般競争入札や指名競争入札に付すことができますが,改めて競争入札に付す時間がない場合もあることから,随意契約によることができるとされています。