NF-κB デコイオリゴ塗布型 PTA バルーンカテーテルの共同開発契約終了について遺伝子医薬の主力事業に経営資源を集中
平成 28 年 12 月6日
各位
会 社 名 アンジェス MG株式会社代 表 者 代表取締役社長 xx x
(コード番号 4563 東証マザーズ)問合せ先 経営戦略本部長 xx xx電話番号 00-0000-0000
NF-κB デコイオリゴ塗布型 PTA バルーンカテーテルの共同開発契約終了について遺伝子医薬の主力事業に経営資源を集中
当社は、NF-κB デコイオリゴ塗布型 PTA バルーンカテーテル(以下、本開発品)についてメディキット株式会社(本社:xxx文京区、代表取締役社長:xx xxx、以下、メディキット)との間で締結していた共同開発契約を終了することを平成 28 年 12 月6日に決定し、同日、両社間で合意しましたのでお知らせいたします。
本開発品は、血管の再狭窄(バルーン治療など血管拡張の処置後に血管が再び狭くなること)防止を対象に、PTA バルーンカテーテルのバルーン表面に塗布された核酸医薬 NF- κB デコイオリゴの抗炎症作用により、血管の再狭窄までの期間延長、及び外科的手術の回避を目指したものです。平成 24 年 9 月より、人工透析に伴う透析シャント静脈狭窄病変を有する 175 症例を対象に、既存の PTA バルーンカテーテルと比較することで本開発品の安全性と有効性を実証する試験(以下、本治験)を実施しました。
本治験の結果を解析した結果、主要評価項目である静脈狭窄治療部位の一次開存持続時間(処置後に再度治療が必要となるまでの期間)において、本開発品の治療群(116 例)は既存の PTA バルーンカテーテル群(59 例)と比較して、持続時間の延長が認められたものの統計的有意差は得られませんでした。但し、層別解析(特定の患者群に絞った詳細な解析)を行った結果、一般的に血管の炎症レベルが高いとされる糖尿病を合併した患者群に関しては、合併しない患者群に比較してより長い持続時間が得られました。また、安全性については、本開発品に起因する重篤な副作用は報告されませんでした。
本治験結果に基づき両社で今後の進め方を総合的に検討した結果、承認申請が可能なデータは取得できたものの本開発品の事業上の優位性が得られにくいことなどから、製造販売承認の申請を断念し契約を終了することで合意しました。これに伴い、本開発品を対象
とした NF-κB デコイオリゴの微粒子化の目的で当社がホソカワミクロン株式会社と結んでいましたライセンスおよび技術契約も終了することで両社が合意しました。
なお、本開発品の開発プロジェクトの一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の平成 21 年度第 2 回イノベーション推進事業「次世代戦略技術実用化開発助成事業」に採択されNEDO からの支援を受けて実施されました。
今回の契約終了により当社は、現行の NF-κB デコイオリゴを使ったPTA バルーンカテーテルの開発を中止します。一方で当社は、NF-κB に加えて STAT6 と呼ばれる炎症関連因子も抑制する次世代型の核酸医薬として「キメラデコイ」の開発に乗り出しています。将来、PTA バルーンカテーテルの開発を実施する提携先を確保し、当社が保有する薬剤(キメラデコイ)のデータ並びにこれまで蓄積してきたコンビネーション機器(医薬品と医療機器の組み合わせ)の研究開発のノウハウを提供する形での共同開発を目指します。但し現時点では、自社の資金負担を伴う医療機器の開発は実施せず、当社の主要事業である遺伝子治療、核酸医薬および DNA ワクチンの開発に経営資源を集中させます。
本件の平成28年12月期の連結業績への影響は軽微です。
以上
- 用語の解説 -
1. NF-κB (nuclear factor-kappa B)
遺伝子は、生体の恒常性を維持する上で重要な働きを担っていますが、ほとんどの遺伝子は普段発現しておらず、必要な時に必要な遺伝子が発現できるように発現の制御を司っている蛋白質が転写因子です。NF-κB は、炎症や免疫が活性化する時、活性酸素などによる酸化ストレスなどの刺激が外部から与えられた時に、細胞が炎症反応や免疫反応を惹起させるため活性化する主要な転写因子です。 実際に、NF-κB の活性化は、アトピー性皮膚炎、乾癬、関節リウマチなど異常な炎症や免疫関連の疾患を引き起こし、病態を悪化させることが指摘されています。
2.デコイオリゴ
遺伝子は、転写因子が染色体DNA に直接結合することで発現しますが、デコイオリゴは、その染色体DNAの転写因子結合部位と同じDNA 配列を含む二重鎖の短い核酸で、体内に投与すると転写因子が染色体DNA に結合することを阻害して遺伝子の働きを抑えます。
3. NF-κB デコイオリゴ (NF-κB decoy oligodeoxynucleotide)
NF-κB デコイオリゴは、NF-κB 結合部位のDNA 配列をもつデコイオリゴであり、転写因子そのものを標的とすることから、既存の薬剤と比較して特異性、標的分子に対し確実に効果が発揮されるなど有効性の面で治療薬として優位性があると考えられ、また副作用の面でも軽減することが期待されます。当社では、アトピー性皮膚炎、乾癬や関節リウマチなど免疫反応を原因とする疾患の治療薬として開発しております。
4. NF-κB デコイオリゴ塗布型PTA バルーンカテーテル
PTA バルーンカテーテルとは、血管の狭窄部位にバルーンを挿入して血管を拡張することで血流を回復させる医療機器であり、このバルーンの外表面に薬剤を塗布したものが薬剤塗布型PTAバルーンカテーテルです。NF-κB デコイオリゴ塗布型PTA バルーンカテーテルはNF-κB デコイオリゴをホソカワミクロンのPLGA ナノ粒子に封入し、メディキットの PTA バルーンカテーテルに塗布したものです。