①NTTコミュニケーションズ㈱ プロセス&ナレッジマネジメント部知的財産部門担当部長 松本 信一
平成 17 年度 文部科学省
21 世紀型産学官連携手法の構築に係るモデルプログラム
「新たな時代に対応した共同・受託研究契約のあり方」第4回研究会
【主 | 催】 | 国立大学法人電気通信大学 知的財産本部 |
【日 | 時】 | 平成18年3月10日(金) 13時30分~16時45分 |
【場 | 所】 | 電通大スカイオフィス |
(xx区神宮前5-52-2 xxオーバルビル15階 ナジックプ
ラザ内)
【出 席 者】 本研究会メンバー(9大学)
ゲスト· ゲストオブザーバー
【プログラム】 (司 会:電気通信大学 知的財産本部副本部長 x xx)
1.挨拶
文部科学省 研究環境・産業連携課 技術移転推進室 xx xx
2.本研究会第3回までの経過報告
電気通信大学 客員教授(弁理士)xx xx
3.共同研究契約交渉の今後の方向についての討議
(1)企業、大学双方からの問題提起
(契約交渉のこれまでの経過と問題点、最近の状況、今後の方向等について)
①NTTコミュニケーションズ㈱ プロセス&ナレッジマネジメント部知的財産部門担当部長 xx xx
②xxx的財産協会常務理事 (株)日立技術情報サービス取締役社長 xxxx
③東北大学 研究推進・知的財産本部 本部長代理 xx xx
④京都大学 国際融合創造センタ- 融合部門長 xx xx
(2)フリーディスカッション
4.その他連絡事項等
平成17年度21世紀型産学官連携手法の構築に係るモデルプログラム
「新たな時代に対応した共同・受託研究契約のあり方」第4回研究会xxx的財産協会関係者
会 | 社 | 名 | 参加者 | xxx的財産協会役職 | |||
1 | xx技研工業(株) | 知的財産部部長 | xx | xx | 理事長 | ||
2 | xxx薬工業 | 取締役 | xx | xx | |||
3 | xx電器産業(株) | R&D知的財産センター総括 | xx | x | 副理事長 | ||
4 | - | - | xx | x | 専務理事 | ||
5 | 鹿島建設(株) | 知的財産部担当部長 | xx | xx | 常務理事 | ||
6 | (株)日立技術情報サービス | 取締役社長 | xx | xx | 常務理事 産学連携PJリーダ | ||
7 | - | - | xx | xx | 事務局長 | ||
8 | xx製薬(株) | 知的財産部 | 課長 | xx | xx | 会誌広報委員長産学連携PJ | |
9 | NTT コミュニケーションズ(株) | プロセス&ナレッジマネジメント部知的財産部門 担当部長 | xx | xx | 産学連携PJ | ||
10 | xx製薬(株) | 知的財産部 | 部長 | xx | x | ||
11 | 日本電信電話(株) | 知的財産センタ権利化担当 | xx | xx | |||
12 | - | - | xx | xx | 政策グループスタッフ |
「21世紀型産学官連携手法の構築に係るモデルプログラム」
「新たな時代に対応した共同・受託研究契約のあり方」研究会
平成18年3月10日(金)第4回研究会資料
「本研究会第3回までの経過報告」
電気通信大学 xx xx
本研究会の経過
■第1回研究会 平成17年7月15日(金) (於電通大)
1.電気通信大学共同研究・受託研究契約書雛形と交渉事例
2.各大学での事例討議
■第2回研究会 平成17年9月26日(月) (於東大)
1.東京大学における共同研究・受託研究における現状・問題点
2.京都大学における共同研究・受託研究における現状・問題点
3.各大学での事例討議
■第3回研究会 平成17年11月18日(金)(於東北大)
1.東北大学における共同研究・受託研究の現状と課題
2.各大学での事例討議
電気通信大学の標準契約書
◼ 権利の帰属・・・まずは発明者主義による
◼ 大学単独権利の取扱い・・・FFR(先買権)を与える
◼ 共有権利の取扱い・・・排他権を行使する場合に限り不実施補償が必要
文部科学省提案の雛型
◼ 権利の帰属・・・発明者主義
◼ 大学単独権利の取扱い・・・優先実施権の付与
◼ 共有権利の取扱い・・・不実施補償が必要
不実施補償の問題
大学側
・共有権利は共有相手に実施してもらうのを第一に考えており、第三者にはライセンスしないので、支払ってもらう。
・利益を大学にも還元してほしい。これは研究者へのインセンティブになる。
・実質的な独占の場合も独占実施として扱いたい。
企業側
・非独占実施の場合、支払わない。
対応
・大学が自由に第三者へのライセンス可
・特許費用の企業側負担
・企業の貢献を考慮した金額とする
・共同研究費の増額
・内容をみて協議
・利益に不xxを生じた場合協議
・大学が権利の買取を要求できる
・一定額の支払い
・実施料支払いは特許登録後
・契約不成立
共有権利の特許費用負担
大学側
実施するのは企業側なので、企業側の負担
企業側
出願費用は持分に応じて負担
対応
・大学として負担した以上の収益が見込まれない場合、大学は権利を承継しない
・出願時等に協議
・優先実施をする場合は企業負担とする
・企業で負担してもらい、実施料収入が入った場合大学の持分を返済
・不実施料の支払いを条件に大学は持分を負担する
権利の帰属
大学側
・発明者主義。不実施補償を条件にすべて共有を認める場合がある。
・発明者主義が良いが、発明者や持分の決定に困難な場合がある。
企業側
・発明者主義に多くの企業は同意しているが、
すべて共有あるいは、すべて企業側の権利を主張する場合もある。
その他の企業側要求
・大学単独権利について、無償通常実施権付与
・受託研究から生まれた権利に対しても共有を認めてほしい
・共有権利の独占使用。無償としてほしい
・優先、独占実施権行使交渉は特許登録後
・独占実施は要求しないが、ある特定企業へのライセンスは拒否
・乙の指定するものとしてグループ企業すべてを含める。
・機密漏洩の賠償責任を学生にも負わせる。
文部科学省 平成17年度 21世紀型産学官連携手法の構築に係るモデルプログラム
「新たな時代に対応した共同・受託研究契約のあり方」第4回研究会
【日時】 平成18年 3月10日(金)13:30~17:30
【場所】 電通大スカイオフィス
【出席者】 各大学研究会メンバー(巻頭一覧参照)
【議事要約】
1.本研究会第3回までの経過報告
電気通信大学知的財産本部 客員教授 xxxx
<要旨>
⚫ 本研究会は各大学が標準契約書に基づいて契約を進めている中で、どのような問題が出ているかということを各大学が紹介し、その事例を集めて議論するという趣旨で行ってきた。
⚫ 第1回 電気通信大学の共同研究契約書雛型と交渉事例の紹介。各大学の交渉事例紹介と討議。
⚫ 第2回 東京大学にて開催。東京大学と京都大学における現状と課題、交渉事例紹介。各大学における交渉事例紹介と討議。
⚫ 第3回 東北大学にて開催。東北大学における現状と課題、交渉事例紹介。各大学における交渉事例紹介と討議。
⚫ 電気通信大学の標準契約書の説明。主な点は、権利の帰属、大学単独権利の取り扱い、共有権利の取り扱い、の3つ。
⚫ 権利の帰属、これは文部科学省雛形と同様、先ずは発明者主義による。
⚫ 大学の単独権利の取り扱い、FRR(先買い権)、最初に交渉に乗りましょうという権利を与える。
⚫ 共有権利の取り扱いについては、排他権を行使する場合に限って不実施補償を必要とする。
⚫ 他の各大学でも文部科学省雛形をアレンジしながら独自の雛形を作っている。
⚫ 一番大きな問題は、不実施補償の問題。これについては大学側のいろいろな見解が出たが、共有権利は共有相手に実施してもらうことを第一に考えており、第三者にはライセンスはしない、したがって不実施補償はぜひ払ってもらいたい、このような意見がある。
⚫ 不実施補償は実施料という概念ではなく、利益を大学にも還元してほしい、大学に還元してもらえれば、これは研究者へのインセンティブにもなる、このような意見もある。
⚫ xxx的財産協会の提案で、独占実施の場合には不実施補償を払ってもいいということであるが、独占実施といったときに、どのような形が独占実施なのだろうか。例えば独
占実施権契約は結んでいなくても、相手の企業が自分の特許で実質的に大部分のマーケットシェアを持っているような場合には実質的な独占になるので、このようなときにはやはり不実施補償を払ってほしいという意見もある。
⚫ 企業側の意見としては、一切不実施補償を払わないところもあるが、多くのところは非独占実施の場合には支払わないという意見が多い。
⚫ このような意見が出たときに、具体的にではどのような対応を取っているかについて、その例をいくつか挙げた。以下のような条件を単独あるいは組み合わせで解決しているところが相当ある。
・大学は自由に第三者へのライセンス可能。企業は独占権を主張せず、不実施補償は不要
・特許費用を企業側で全額負担。
・不実施補償は、企業の貢献を考慮した金額にする。
・共同研究費の増額で対応
・内容を見て協議
・利益に不xxを生じた場合に協議
・大学が権利の買い取りを要求できるようにする
・あとは一定額の、それほど高額でない支払いで解決する
・実施料の支払いは特許登録後にする
⚫ 最後はどうにもならなくて、契約が成立しなかったというような事例もいくつかある。
⚫ 共有権利の特許費用の負担の問題で大学側は、共有権利について実施するのは企業側なので、企業側の負担としてほしいという要求があるが、それに対して企業側は、出願費用は持ち分に応じて負担すべきであるという。
⚫ このような場合に、大学として負担した以上の収益が見込まれない場合には、大学は権利を承継しない。
⚫ 優先実施をする場合には、企業の負担とする。あるいは、いったん企業で負担してもらって、実施料収入が入った場合に、大学の持ち分について返済する。あるいは不実施料の支払いを条件に、大学は持ち分を負担する。
⚫ 権利の帰属の問題では、大学側は発明者主義を、各大学は原則としている。ただ、場合によっては、不実施補償を条件に、すべて共有を認める場合もある。
⚫ 大学の中での問題であるが、発明者主義というのはいいが、実際には発明者の認定とか持ち分の決定にはいろいろ難しい問題がある。
⚫ 発明者主義は多くの企業は同意しているが、すべて共有、あるいはすべて権利を企業側のものとするというような、そのような事例もあった。
⚫ その他に企業側から出された要求をここに羅列したが、一つは、大学の単独権利について無償実施権を要求されるという事例もあった。
⚫ 受託研究の場合、発明者主義をとると、これはすべて大学の単独権利になるが、受託研
究から生まれた研究についても共有を認めてほしい。
⚫ 共有権利の独占使用、これについても無償としてほしい。
⚫ 優先独占実施権行使の交渉は、特許の登録後にしたい。
⚫ 独占実施は要求しないが、ある特定企業へのライセンスは拒否したい。
⚫ これは文部科学省の雛形にあるが、「乙の指定するもの」というのを、グループ企業すべてを含めてほしい。
⚫ 特許とは違うが、機密漏洩の賠償責任を学生にも負わせてほしいという、事例もある。
2.共同研究契約交渉の今後の方向について企業、大学双方からの問題提起と討議
2.1 「国立大学法人との共同研究の契約」
NTTコミュニケーションズ株式会社 知的財産部門 部長 xx xxx
<要旨>
平成14年に「産学連携を実りあるものにするために」という提言を知的財産協会から出した際に、3つの観点と3点セットという概念を出し、特に「産学連携の成果利用の自由度の確保」と「柔軟性を持たせた大学と企業の契約」がこれからは重要であると述べた。それを受けて平成15年に、当時のライセンス委員会で、柔軟性のある契約について検討を行った。
契約交渉のポイントを6つ挙げ、その中でも「国立大学法人との共有特許」の取り扱いが一番のポイントになると予想したが、そのとおりであった。
検討を行った際に共有特許の契約条件のバリエーションとして5つの例を考えた。例えば1番目は出願費用を企業側で負担することを条件として実施料の支払いをなしにする。
4番目では実施料を企業から大学に対して支払うが、事業化の初期は企業側も大変でリスクも大きいので、事業化の初期においては実施料率を低く設定する、もしくは実施料をなしにし、事業が軌道に乗った段階である一定の実施料を支払う。5番目は、いわゆる独占実施補償と呼ばれるもので、独占的な実施を企業が行う場合には実施料を支払うが、第三者に対してライセンスができる場合には実施料をなしにするという条件である。
共同研究契約の一つの契約条件を、大学の立場から見た視点と、企業のほうから見る視点が、おそらく異なっているのではないかと考えて纏めたのが「産学連携の契約に対するそれぞれの視点」である。
大学のほうからは、研究成果を社会還元したいという気持ちから、例えば産学連携研究成果を早期に公表できるようにしたい、あるいは産学連携研究成果をライセンスしたい、そのようなことができるような契約条件になっているかどうかという視点で契約条件を見ようとしているのではないか。
それに対して企業のほうは、市場において競争力を確保できるような契約条件になっているかどうかという視点で契約条件を見ている。
このような大学と企業の視点が異なるものをどう一致させていくかというところが、この共同研究契約の大きな一つの課題だろうと考えた。そのためには条件を一つに固定せずに、いろいろなバリエーションを出していくことが大事であろうというのが、当時議論した中身であった。
平成16年11月頃、企業を対象にしてアンケートを実施した。共有特許の実施条件として、優先順位の高いもの上位6つは何かという質問を行い、1位から6位に対して10点から1点までの間で点数をつけ、その総得点の集計を円グラフでまとめた。その結果、
大学への実施料の支払いをなしが263ポイントに対して、実施料の支払いをするというのも76ポイントある。これを見ると必ずしも企業側の意識として実施料支払いなしというだけではなくて、いろいろなバリエーションの中から条件を選択していきたいということが表れており、この傾向はおそらく現在においても同じではないかと考えている。
申し上げたいことは、契約条件のバリエーションを増やしていくということとともに、大学の基本となるような特許をベースとして、それを用いて共同研究していくモデルの中で、お互いが WIN-WIN の関係を保てるような方向を探していくのが大事であると考えている。
2.2「相互理解を深化させ、xx志向の産学連携へ」
㈱日立技術情報サービス 取締役社長 xx xxx
<要旨>
xxx的財産協会がどのような形で産学連携に取り組んできたかについて説明する。
2004年度の国立大学の法人化以降、産学連携の進展のために知的財産本部、TLOができ、知的財産ポリシーが制定され、機関帰属が明確化された。共同研究、受託研究が増加し、発明の届け出が予想以上に出てき、成果が非常に出ていると思う。
一方課題もいろいろ出てきたが、まず産学相互の事情の変化の認識が足りないということがあるかと思う。
具体的には、今まで雛型しかなかったところに「柔軟にやりなさい」と言われても、どうやっていいか分からない。大学から言わせると、企業は百戦錬磨の契約担当が出てきて、何かやられてしまう。これで大学側の不満が爆発した。時期は2004年度の最初のころ。もう一つ、従来は奨学寄付金中心の産学連携であった企業が多かった。奨学寄付金とい うのは、成果を期待できない。法人化後は委託研究をすると成果を取られる。そうしたら
共同研究しかないということで、奨学寄付金のパターンを全部共同研究に変えた。
企業の中には奨学寄付金で残している研究もいくつかはあると思うが、某大手電機メーカーは、奨学寄付金はゼロ。そのような会社がどんどん出てきている。
このようなことで共同研究に全部流れて、不実施補償の問題がさらに深刻化したのではないかと思う。
ここに来て業種の中での違いが出てきた。エレクトロニクス、IT、自動車系は、特許権というのは、ある意味で群のうちの一つ。基本特許であったとしても、一つですべてをカバーすることはできなくて、ある意味ではポートフォリオ管理していかないといけないものなので、大学との共同研究で生まれた発明一つでどうこうするというわけにはいかないというのが基本的な考えである。
それに対して、医薬、バイオ、化学、素材系は、ライセンスなどは普通ない。自分たちで使うことが当たり前、独占することが当たり前、など特許権の考え方が違う。だから、
「別に不実施補償など、名前がどうであろうが、大学によって生まれた発明に対して、何
らかの対価を払うのは当たり前であり、何の問題があるのか、電機業界は」という感じである。
それでスライド3にまとめたのは、大学と企業の立場の違い。大学は新しい知を創出して社会に還元していくという非常に大きな目標があり、知的財産をどう活用するかというのは、基本的には研究資金の獲得、リターンはそのような面で貰いたいということである。あとは、いわゆる特許法69条の問題で、試験・研究に使っているものも大学が侵害す るのではないかという議論が一部にあるが、原則として責められることはない。大学が特
許で責められることはない。
企業は、競争力のある製品開発を行って利益を得るというのが究極の目標であって、活用面では非常に多種多様な形態がある。これは会社の方針によっても異なる。
大事なことは、企業は責める側にもなり、責められる側にもなるということ。
企業側からすると、まず研究成果のすべてを事業化したり利益を作り出すことは無理であって、百に一つとか万に一つの確率でしか研究成果というのは当たらない。そこですべての共同研究に対して、一律にすべての大学、すべての研究に対して不実施補償していくというのは、ものすごく抵抗感がある会社が多い。
また企業側は、大学の先生と交渉するときに、通常の、例えば海外のコンペティターとかと交渉するのと同じような態度で臨む、それが大学側は非常にカチンと来ているのではないかなということが、最近分かってきた。やはり大学の先生としては、大学の知というのをリスペクトしてほしいのだということ。しかし企業側の意識がまだそのようになっていない。大学と交渉するときに最初からけんか腰でいくような人もいて、これではうまくいかない。それが分かってきた。この辺は、企業も反省すべきところがある。
企業側は不実施補償を払わない、独占実施補償だけだと言っているわけではなくて、いろいろな落としどころがある。例えば研究費の増額、大学が特許を持っていても、維持費が大変だろうから買い取るとか、いろいろなオプションがあり得る。
スライド4に示すように2004年の初め、法人化した直後で混乱していた時期に「独占実施補償へ」ということを知財協が出したものだから非難が集中した。すべての悪は知財協だと、名指しをされた論文までいくつか出された。その後、一つきっかけになったなと思うのは、昨年の9月のUNITT。私xxxxxが登壇し、大学関係者が数百名いるところで、「独占実施補償というのはバリエーションの一つであり、知財協としても柔軟にやろうとしているし、知財協全体がこのような方針でやるという一枚岩では全くない」という話をして、かなり理解が進んだのではないかと思っている。今もまだ一部にいろいろな動きはあるが、本当に成果を出していく時期になってきたと思っている。
そこで、知的財産権の本質を理解した管理や契約を結んでいかなければいけない、ということで、いくつかの観点を書いた。知的財産権は非常にリスクが高い権利であって、強い権利もあり、もろい権利もあり、時間軸が非常に長い権利もあろう。また相対的価値の権利であって絶対的なものはなかなかない。汎用的ではあるが、自分のところには全く要
らない発明というものもある。そのようなことを考えて管理や契約をやっていくべきだと思う。
次に今後の課題の洗い出しと知財ポリシー等の見直しということで、知的財産本部、T LOのミッションの見直しと書かせていただいた。補助金もそろそろ切られるということで、今後知的財産本部やTLOはどうしていくのかということも、企業側も心配しており、何らかの協力関係ができればと思っている。
そのような状況の中で、知的財産ポリシー、受託研究、共同研究の契約の見直しや大学の発明の管理を強化し見直すことが必要と思う。数だけではなくて、質のほうの見直しもして、今後維持費もかかるので、棚卸しをしていく必要もあろう。
いろいろ勝手なことも申し上げたが、もう一つ大事なことは、大学も企業も、やはり選び選ばれる時代だと思う。柔軟な契約はその一つで、結局、魅力のある研究をやって、その成果が出てくれば、企業も話をするであろうし、逆に企業も威張っていたら、どこの大学からも相手にされないということもあり得る。そのような魅力的な条件を示していくということも非常に大事だと思う。
法律を変えろとか、特許法73条を変えろとか、いろいろな意見を言う方もおられるが、法律を変えて産学連携がうまくいく話ではないと思う。権威による見直しではなくて、現場のレベルでいろいろなアイデアを出し、xxと工夫を出して、産学連携をうまくやっていかなければいけないのではないかなと思う。
その一環として、若手、若手といっても大体40歳以下ぐらいの人が多いが、10大学ぐらいのTLOの人たちと知財協会員会社10社ぐらいで「産学連携を話し合う会」というものをやっており、非常に好評だ。そのような意味では、ファシリテーション能力を発揮して、創造的にいろいろなものを提案して解決していくということで考えていただければと思う。
質疑応答
⚫ xxxxのスライド4「共有特許の契約条件の一例」の中の(1)番、出願費用等は企業側で負担して、実施料は支払わないという、これを1番にしているのはちょっと気になるが、もしこれをやると、企業が実施をして、もし大もうけした場合には、先生から、大学が出願料を実施料の代わりに取ったならば、われわれに対価を支払えという話になると困ることがありうる。この辺はいかがなものか。
⚫ アンケートを今日一つ紹介したが、いくつか例があり、契約交渉で六つポイントになると申し上げたときに、「今どこで一番もめているか」というアンケートを取ったものがある。その結果を見ると、8割以上がやはり共同出願の話であった。不実施補償を含めて共同出願の出願費用をどう持つか。大学によっては、なかなか出願費用を持てないので企業に持ってほしいということで、契約交渉のポイントになっているという結果を得ている。
そのようなこともあって、ではその出願費用を大学のほうで持てないのなら、企業側で
持つので、そのバーターとしてこのような条件はどうかということで考えたのが1番。ただこのときにも第三者に対するライセンスというチャンスは残されており、そのようなライセンス収入があれば、大学と企業で持ち分に応じて分配する。ライセンス収入があれば、大学の中で規程に従って交渉等が行われるのではないかと思っている。したがって、1番と何かほかのものとがセットで、そのような想定される懸念を回避するような条件を考えていくということも、実際のところいいのではないかと思っている。
⚫ xxxxスライドの課題という部分で、知への尊敬ということがある。これは同感で、われわれも大学に来て、先生方は研究者としてのリスペクトを非常に欲しておられると感じた。プライドもあるし、大学もお金という話よりも、まず本当にリスペクトを受けているだろうかというようなことにすごくこだわっていると感じている。ある大手メーカーの窓口の部長が、発明者補償が欲しいのだったら、企業に転職すればいいじゃないかということをいわれたことがあるが、そのような話をしてしまうと何のことだかよく分からなくなってくる。要は、自分たちは、別に補償金が欲しくて研究しているわけではない。
金が欲しかったら企業へ来いというような話をされてしまうと、産学連携というものではなくなってきて、対立するような概念になっていくのではないかと懸念している。そのような企業もあったということであるが、決して一般的なものではないと理解をしている。
次にxxxxプレゼンの中の「深いコミュニケーション」については、本学では、共同研究契約で問題が出てきたら、できる限りお会いしてお話をさせていただくようにしている。もちろん、件数が多いので、すべてお会いするわけにもいかないが、メールや電話でなかなか一致点を見つけられないような場合には、「いろいろな案をお互いに出し合いましょう」ということで、お会いするようにしている。ただ窓口の方は最終的な契約を書いている方が出てこない場合が多く、伝言ゲームのようになってしまって、なかなか契約がまとまらない。決裁権をもっている人と直接話し合って落としどころを探っていきたい。先ほどの自己紹介にあったように、大学側も企業出身者が多く、私自身も企業から来て2年経つが、まだ大学には分からないことが沢山ある。人事制度をはじめ、大学へ来て一番違和感を感じたのは、お金には色がついていること。企業にいるときはお金に色はついていないとずっと言ってきたが、大学に来ると、これは何とか研究費の予算である、これは何とかの予算である、だからこちらは使ってはいけないと、このような話ばかりやっている。まずそのようなこともやはり話し合ってみないと分からないので、ぜひいろいろな場で深いコミュニケーションをさせていただきたい。
2.3「東北大学における共同研究・受託研究の現状と課題」
東北大学 研究推進・知的財産本部本部長代理 客員教授 xx xxx
<要旨>
東北大学では知的財産本部を立ち上げるにあたって日経エレクトロニックスでも取り上げられた反乱事件があった。それらの出来事を経て問題を洗いなおし、共同研究・受託研究が円滑に進められる機構やルールを見直して現在にいたった。(その経緯、現在の運用などをほぼ17枚のスライドに沿って説明があったので、その要旨は省略する)
質疑応答
⚫ 共同研究契約の際、特許の取り扱いについては発明が生まれたときに別途協議ということは、確かにどのような発明が生まれるかということが分からないし条件が決まらないという考えがある一方、成果が見えてしまうと、ますます活用の条件が後回しになって、交渉が難しくなるということはないか。実際にこれを共同出願しようとしたときに、共同出願契約はスムーズにいくものか。
⚫ 共同研究契約は全く上手くいっている。共同出願契約の方は、中にはぎくしゃくしてしまうものもあるが・・・共同出願契約の場合はまず共同研究契約書を見てそれに沿って協議する。これも業界によって違い、いずれにしてもTLOが担当することになるが、例えば電機、IT業界などは、それこそ5万円、10万円とかの世界なので、交渉してもしょうがないではないかと考えることがある。材料系だと、少し頑張る。そのような形でやっている。
TLOは実施料を稼ぎたいと考え、研究推進部は研究費を稼ぎたいと考えがちであるが、その場合には全体最適を考え、あまりもめないようにしている。
2.4 「京都大学の共同研究契約の考え方」
京都大学国際融合創造センター融合部門長・教授 xx xxx
<要旨>
今、本務としてやっているのは共同研究のコーディネートで、契約がなされた後いかにいい研究を企業の方と協力して推進していくか、その部分に最も力を入れている。
基本的に共同研究の成果物は、単独でなした発明は発明者の機関に帰属、共同発明は共有として、知的財産の確保を優先する。
知的財産の確保の目的はライセンスして金銭を得ることではなく、共同研究で良い成果を出し企業に事業化してもらって利益を上げてもらうことにある。
しかし、学内ではまだまだ知的財産を取得する意味を理解されていない先生も見受けられる。
ライセンス収入で大学を黒字にしようとか、それを目指して活動することはない。しかし偶然のホームラン特許で大きな収入が生じればそれは結構なことである。
「いい特許にするために、大学の研究者に協力してください」ということをお願いするために実施料をお願いしているのであって、大学と企業の利益争奪戦ではなく、同じ大きさのパイをどこで切り分けるかという話ではない。共同研究からいかに大きいパイを作るかが一番大事。
大学は発明者への適正な対価を支払えない。そこで企業が算定している適正な対価相当額に基づいた実施料の支払をお願いしている。
2.5 フリーディスカッション
⚫ xx先生、年光先生の話を聞いていると、今まで企業は何を問題にしてきたのか。問題の所在はどこにあるかという気がしてしまう。お二人の話を聞いていると、考えは違うがしっかりした考えをもっていて、企業としても対応しやすい。
しかし文部科学省の雛型に近い形で、不実施補償はゆずらないという大学もある。どうしてもその先生の成果が欲しい場合は、その大学と話し合ってやらざるを得ない。確立されている大学はいい。今日来ている大学は問題ないという気がしている。
では、問題の所在はどこにあるのか。問題提起を2つしたい。
企業側の問題もあるかと思う。たとえば、今年 1 月に政府の知的創造サイクル専門調査会で、特許法73条改正をしたらどうかという意見が突然出てくる。あるいは、総合科学技術会議で、不実施補償は大問題だ、これをなんとかしないと産学連携は上手くいかないという意見が突然出てくる。
みんな上手くいきつつあるのになぜそんな意見が出てくるのか。おそらく、文部科学省、経済産業省、特許庁に訊いてもおそらく上手くいきつつあるという筈なのに、そういう意見が突然出てきて、xxx的財産協会はいったいどう考えているのかといわれるのが第一点。われわれは何が問題なのかわからなくなってきた。
もうひとつは、特許庁と発明協会がやっているTLOや知的財産本部への派遣事業の集まりに参加したとき、中小地方私大中心の集まりに出たときには、本当に袋叩きにあった。初期にもどったような議論だった。ここにきている大学はいろんな形でやっているのに、この温度差は何が問題なのか。
⚫ 法人化直後は、雛型主義の大学が多かったが、今は各大学で雛型を変えてきている。ただし、変えてきた大学は先行的大学が多い。地方は企業からの人材ではなく、大学事務局が交渉に当たっている。なぜ自分たちが雛型に契約条項を定めているのかもわからずやっている大学も中にはある。全大学から意見を聞いてみると、そういった大学からそのような声があがってくることもあるとも考えられる。あとは時期的な問題もあるのではないか。年が明けると、新年度共同研究契約に向けてそういう声があがって、夏ごろにはおさまってというような時期的なものもあるのではないか。実質的には、大学からは、問題はだいぶおさまりつつあるという声が聞こえてきている。
⚫ 大学と企業の力関係によるところがある。ある大学のようにポリシーがはっきりしていればいいが、大学からはなかなかいえない。企業側の担当者ががんばってしまう場合がある。企業の方針ならよいが、担当者個人ががんばってしまうのは困る。
73条は改定までは必要ないが、但し書きくらいはつけて欲しい。不実施機関のことを考えて欲しい。特段の契約がある場合はなんとかとかあるが、わかりやすくして欲しい。
⚫ 昭和47年の沖縄復帰時に、5年特例期間があった。復帰前は、沖縄には日本の特許法が及んでなかったが、本土企業が復帰後一気に商標権違反などといって沖縄に入っていった。庁から説明に行った。大学も同じ状況。今まで治外法権。同じことを大学の先生方にやっている。中国四国の大学にいろんな契約の問題などについて説明したが、大学事務はこういった議論ができるところまでいっておらず、そんな問題があるのかという反応。大学事務は、雛型どおりにやっている。変えることが怖い。どうやっていいのかわからない。文部科学省の指導もあって、中国四国大学を集めて説明をやっている。企業があそこは堅い、難攻不落だといっているところは、実は担当者はどうやっていいのかわからずやっているという感じを受ける。知財にとりくんでいない大学は中国四国の半分以上。産学連携は7,8割はやっている。整備事業採択大学、43大学はいろんな経験をしているので、臨機応変に対応できるが、できない大学は多い。そういうところでは、沖縄復帰と同じ状況。沖縄では5年かかった。2年でここまできたのは立派ではないか。徐々にお互い議論がかみ合うようにしていくことが大事ではないか。
⚫ ここに来ている方は大学の知的財産本部で、研究をいかに進めるかということがもっとも大事であるが、一方でTLOは稼がなくてはならない。ある大学ではTLOと協力して両方がうまくいっているが、TLOとは役割がちがう。なおかつ所轄官庁がちがうというところにも問題があるのでは。このへんについて将来的にどうして行こうという考えがあるのか。
⚫ TLOの半分は株式会社、有限会社。株主の利益を守らなければならない。知的財産本部もふくめTLOとの関係をどうして行くかは18年度政府の大きな課題。このまま維持するか、統合か、吸収か。どうするかを考える上で、知的財産本部とTLOの役割、どういう経営をしていくのか、広域型か 1 対 1 かなど分析して、どうやっていくかを文部科学省、経済産業省から提言していかなければならない。不実施補償、ライセンスだけでなく全体の提言もしなくてはならない。不実施補償もなにがなんでもとらなければならないというのではなく、それに代わるものをもらうという形もある。
企業同士で共有特許を持っているとき、片方は実施、片方は不実施という場合もある。企業同士であれば、実施料の相当分を支払っている。それが問題になっていないのは、量が少ないからということもあるが、企業同士だと話がつきやすいということもある。持ちつ持たれつということでどこかで決着ができる。大学だと不実施ということで強い態度に出るのではと企業は心配をしているのでは。コンセンサスなど事例が少ないので、お互いが心配をしているのではないか。そういう意味では、今日のような場、実務レベルでの意見交換も深めていきたい。
⚫ 不実施補償が問題になっているということ自体が第一歩なのだろうと思っている。自分の会社は海外の大学と数十件、日本の大学とは100件前後の共同・受託研究を行っている。金額は海外が10倍以上、桁が 1 桁ちがっている。雛型がどうこうということではなく、われわれが使っているガイドラインがある。プロセスとしてどうするかという
ガイドライン。研究費を払っているから全部寄こせというのは極端な例。研究費の段階から全体トータルでビジネスとして成立するかというプロセス。まず、研究のテーマが、原理の証明なのか試作なのか、応用なのか商品化までいくのかによってスタートがちがう。それによって出てくる特許が、群の一つに過ぎないのか、基本的特許になるのか、それによって考え方を変える。研究する際に、過去の蓄積が大学にどれくらいあるのか、企業にどれくらいあるか。それから将来どれくらい力をいれるか。過去の蓄積が大学になければ、単発委託研究のような形なので、この先大学にも残らない。その場合、企業に成果を全部移転してくれということもある。全体としてバランスをみて考えていくということ。雛型のバリエーションを社内でもっている。さらに変形もある。トータルでビジネスとして成立するかで考える。その結果、不実施補償ありということもある。そうでなく全部移転もある。全体のビジネスと一緒に考える。海外もいろいろあって、北京、モスクワ、パリ、チューリッヒ、タイともやる。アメリカが一番多いが、受託研究をビジネスとして扱っている大学は、合理的レベルにこれはこうだという条件に落ち着く傾向がある。全体をビジネスとしての位置づけを見ながらやっていくのが、これからの産学連携の1つのパターンになっていくのではないかと思う。日本においても。受託研究に合わない大学もあるが、自分の大学は基礎研究をきちんとやるというような、そういう大学には企業はビジネスとして押し付けるべきではない、それに向いた契約の形もありうる。要は、テーマになっている技術は何か、それが時間の計画の中で過去の蓄積がどうで将来の発展性がどうで、そういう判断をしなければ、いきなり雛型、不実施補償・独占補償という議論をしても、表面的な議論になってしまう。日本の大学も産学連携でビジネス領域に入ってくれば企業からのお金も流れるようになる。日本の大学は、人材供給源でもあるので、できれば日本の大学にお金を出したいと思っている。会社のガイドラインの中にあることの一つに、大学との交渉担当は女性というのがあるが、なぜか成功率が高い。将来のビジネスの利益での交渉でなく、研究ということでの合理的な交渉がしやすいのか。企業はビジネス的合理性があるかをみている。
⚫ ビジネスとして考えるというところを具体的に話してもらえないか。
⚫ 例として、3000万円の資金である研究テーマを大学に頼むケースについていくつかの大学に、一緒にしませんかという場合、ある大学は、PD(ポスドク)がついてチーム編成で、いままでの成果があって、1 年後3000万円でこれくらいの成果を出すというプレゼンをする。そうすると、3000万円の価値に合うのか判断がしやすい。これくらいの条件なら合理的という判断ができる。それが、先生が自分でちゃんとやりますという宣言だけでは判断しにくい。同じ資金でどれくらい成果が得られるかというコンペになる。その中で独占・不実施補償を考える。3000万円でこれくらいの成果で、それに不実施補償もついてくる。それをどう考えるか、トータル的に支払うお金に対しての得られるものがどうかというのが、ビジネスとして判断だと思う。
⚫ 国立大学法人の会計、経費には色があるものとないものがある。運営費交付金、授業料
収入など大学の自己収入には色はない。ただ、これで配分される先生一人当たりの研究費は非常に少ない。それだけでは、1 年の研究はできない。このため、政府からの競争的資金を獲得する一方、もう一つは企業からの共同・受託研究をとってくるという仕組みになっている。これは、会計制度上は、ミッションを帯びているので債務として処理される。その債務に対してどれくらい成果が出たか、使ったかということを最終的に起票するというのが会計制度上のしくみ。特に、産学連携の積算の仕方というのは、実費相当額しか貰わないことになっている。そこで一番問題になるのは、プログラムを先生に作ってもらうときの実費相当額は非常に少ない。ところが出来上がるプログラムというのは、実費相当額どころではない。市場価格で購入しようとするとそんな額では収まらない。実費相当額しかもらっていないので、それに対する先生への対価が全く含まれていない。そういったことで、債務の積算にある意味経過的なものも入れてよいのではないかと思う。不実施補償の問題というのはそういったところからもきている問題。原価、教官への諸手当をやってはいけないということはないが、大学の会計課か公認会計士の方が、だめだといっているのか。そういったところをきちんとしていかないと、1
000万もらっても使い切らないというおかしなことになる。
⚫ 研究テーマが来たときに、人材、成果の見込みをすぐ出せる先生はいないが、できるようにしていかなければいけないし、私自身そういうコーディネートができるように努力している。日本の大学の場合研究者の人件費は国から出ているので、人件費に対する報酬が必要なく、かなり格安に使えるのだから、利用する価値がある。ただ、これには条件があって、国から給与をもらって民間の研究をやる場合には、利益相反の問題があるので、きちんと区別しなければならない問題があって、大学の研究者が本務としてやれるということを担保する必要がある。それができなければ兼業して、企業から報酬をいただくということにする。
⚫ ビジネスとしてやるというのはそのとおりで、我々も意識としては持っているつもりだが、現実にどこまでできているかというと、できている先生もいるし、できていない先生がいる。これは、大きな課題で、直近というより5年後10年後に日本の大学としての地盤が上がっていくか下がっていくのかというところでボディブローのように関係してくるだろう。本学の場合、いくつか試験的に、企業からのお金を入れてもらって、まずプランニングをやって、1 年後プランニングを終えて大型の研究に入っていく、あるいは大学にはそんなシーズはなかったといって終わってしまうというようなことも試験的にやっている。コーディネータが学内にいるわけではないので、今は研究予算で人を採用してそういうコーディネートをチャレンジ的にやっている。
こちらからの指摘としては、そういうような話を企業の研究者にした場合に、研究者と知財はいいというが、事業部にわたすことになったときに事業部がうんといわず、頓挫するケースもある。実際成果を利用する事業部の意向をどのように確認していけばいいのかがなかなかわからない。
⚫ 基礎研究、いわゆるコーポレートの研究所でやった場合、その成果がそのドメイン以外の事業部に関係する場合も出てくる。企業側としては先生に委託したそこの部署で、ランニングではなくイニシャル的に処理したい。買取で処理できれば、だいぶ企業は納得する。このへん企業を経験した方と交渉すればだいたい終わるが、下の方でやるからなかなかうまくいかないのかなと感覚的には思う。
研究者への報酬、インセンティブとして実施料をいただきたいという話があったが、大学の先生と企業の研究者では立場がちがうと理解しているが、だいたいロイヤリティ収入の何%くらいが先生の報酬になるか。
⚫ これは大学の規程で決まっており、入ったお金から大学が経費を引いて30から50%くらいを本人にわたるように内規をつくっている。額は総収入によって異なってくる。
⚫ 産業によってちがうが、薬品などは1つか2つの特許で事業ができるケースが多い。電機などは、たとえば携帯電話などは何十社と契約しないと商品ができない。そうすると現場の発明者の報奨金は少ないのが実態。電機は多くの特許を使ってやっと成り立つ。そうすると大学に払うロイヤリティというと少なくなる。薬品はこんなにもらっているのに、おかしいじゃないかといわれても、事業が全然違うので、知財協でも役員で話していても、薬品はそうなの、電機はそうなの、機械はそうなのというように、初めて理解するケースもある。この研究はたくさん特許が成り立っていて安くなってしまうというような話し合いができるといい。企業の研究者からは大学の先生は5割もらっているのに何でこんなに少ないのかという話もでてくる。企業と大学の形態が違うというところで、大学への不信感があるのかも。企業が出願費用を払うのは当たり前という話もあるが、トータルするとばかにならない。その中で成功するのは数%くらいしかないと、なんでいつもうちばかりが払うのかという気持ちもある。お互い話し合って理解しながら、今回の不実施補償なども解決できれば思う。
⚫ 企業の研究者の報酬と大学の研究者の報酬で料率が違いすぎるというご指摘だと思うが、もとのボディがちがうから料率がいくら高くても知れているという議論になる。
⚫ 企業の場合、ライセンスフィーでもそんなに払わない。
⚫ 企業の場合、自己実施収入の方が多いのでは。
⚫ 企業で実施といっても独占権の行使で実施したら払えるが、単に実施しただけでは払えない。
⚫ 実施機関におけるライセンス収入と不実施機関におけるライセンス収入ではxx的に違う。つまり、企業は基本的に自己実施する事業をもっていて、その傍らでライセンス収入を得ている。大学の場合、自己実施の部分をまったく持たないのだから、ライセンス収入に対する重みのおき方が基本的に異なる。そこを理解してもらわないと扱いがあまりに違うじゃないかという、少し不可解な議論になってしまう。
⚫ ライセンスフィーについては、あげたお金を大学がどう処理しようとこちらが文句言える筋合いではないのは理解している。ただ、研究者の気持ちは察することができる。報
奨金とすると、企業でそんなめちゃくちゃな報奨金を支払っているところはない。
⚫ 率だけで話すと誤解を生じる。
⚫ そうだと思う。いくらもらっているかというと、だいたい20%、50%といって、金額の話はしない。だから誤解された部分もある。
⚫ 自分の大学では不実施補償の問題もだいたいクリアした。来年度からの取組は、大学単独所有の特許をどうするかということで、現在棚卸しをしている。保有特許権は国内外あわせて現在53件あるが、その中で企業では間違いなく権利行使可能というものが3件ほどある。その場合、企業のように通常の権利行使が大学にできるのかという問題がある。研究と教育を主目的とする大学には、権利を振りかざして企業に警告書を送ることなど絶対できない。とすると、死蔵するのはばからしいので、何もしないのであれば、全部放棄してしまうのか。そういうものを企業に持っていくときにどうすれば、けんかを売られたと思われないか。かつ、コアな特許として共同研究を進めるという形に持っていけば、大学の権利の活用の方法としてはあるのではないかと思う。1 社大きな企業にもっていったが、まだ結論はでていない。けんかを売られたと思われないようにするには、どうすればいいか。
⚫ 残念ながら多くの会社はけんかを売られたと思う。アメリカのベンチャーから話があったケースで、上手くまとまったケースがある。それは、1件ではなく、かつ、ペンディングのケースが残っていたケース。つまり企業が全部権利を買い取り、完全に権利が出来上がっているのではなく、企業でも手を加えることができるケースが望ましい。ペンディングのケースがあると、一緒にライセンスを考えたり、譲渡を受けて自分たちの望ましい権利にしたりできる。そういうものがくっついてくると、けんかを売られたというのではなく、一緒に使ってほしいという思いになるのではないか。
⚫ 先程の大学の研究経費の問題についての話は感銘を受けている。そのようにやっていきたい。そうすれば、企業の方もそれなら100万かかりますねと理解してもらえる。ほとんどの共同研究は、研究者と企業で話してこれでいきましょうとなったときに、予算
100万でお願いしますといわれると、それ以上何も言えなくてそれで決まるというのがほとんどのケース。中には、交渉する先生もいて、3000万×3年とか、2年で1億とか言う先生もいる。そういう条件で共同研究する先生は、この研究をすると本来5億の市場規模のものに対して投資コストが 1 億かかるものがあったとします。この研究
が成功すれば、その 1 億のコストが5000万円になるので、共同研究経費3000万円をかけてもペイするとプレゼンしていた。報奨金の料率が大学では20%、30%が高すぎるという話があったが、元の収入が5万、10万にしかなっていない場合が多い。企業が一律10万といって譲らない場合もある。知のリスペクトという話もあったが、やはり個別に評価するべき。自分の大学は法人化時にソフトランディングに気をつけ、うまくいっている共同研究を止めないようにする方針と、知財のために方針を作るのではなく、産学連携が上手くいくために作ろうという骨組みを持った。現在では共同・受
託研究で間接経費をおさめていただいた研究から生まれた発明については持分負担をする。原則不実施補償という形にしているが、これは売り上げが出たら貰う。製薬では売り上げが発生してからでは遅すぎるという議論もあるが。知財協が独占実施補償の考えを出す前に、そうしないと上手くいかないと思っていた。共同研究の契約は、産業界出身者に交渉してもらっていた。大学事務担当では決まったとおりにやるのが得意なので・・・ただ、いつまでもそれではいけないので、徐々に大学事務担当まで裾野を広げていく必要がある。そのためには普遍化が必要だが、普遍化をするとまた凝り固まるので、見直しが必要、普遍化と見直しを繰り返す必要がある。法人化直後にあった、繰り返したくない例を紹介する。共同研究契約するとき、研究者が法人化前からある企業と共同受託研究を行い非常に成果を出していた。しかし発明者には入ったが出願人には入らず5千円だけもらって終わっていた。頑張ってきたのに評価されていない。法人化後は期待していたが、やはりその企業は不実施補償を払わない方針を変えなかったので、その先生は共同研究をする気をなくした。企業には、直近、個別の共同研究でいかに成果を勝ち取るかという狭い観点だけでなく、日本における産学連携が持続的にうまくいくことが、日本全体としてみた時に成果を生み続けるという、大きな視点で臨んでほしい。
⚫ 今日話を聞いていて温度差があると感じることがいくつかある。知的クラスターである研究テーマを文部科学省から年間5億の予算で5年間研究を進めているが、企業の認識と大学の実態が違う点がある。教員による研究のマネジメントは難しい。先生方はいわば腕の良いすし職人。プロジェクトで成果を出せというとやる気をなくす。俺の腕を見てくれ。プロジェクトの形で、助手、PDを含んでやろうという形をとると、動きが鈍くなる。組織的な動きは、大学の教員には苦手な人が多い。講座制を持っている教員ですら上手くいかないケースが多い。助手や講師もそれぞれ研究テーマをもっている。教員の吸引力で人が集まってくる場合もあるが、組織だって動こうという文化ではない。研究はそれぞれの教員が自分の信念をもってやっている。重複研究もなぜ悪いのか。教員にパテントマップを提案してもほとんど見てくれない。おれの研究を誘導する気か。教員の信念でやっていることとマッチングすれば上手くいく。だいたい管理職手当というものがないので、管理しようということがない。学部長ですらやっとxが関の12~
13年目の人が貰うくらいの管理職手当てを貰っている。企業のように組織だったらこれくらいはできるだろうという期待をこめてやると、ギャップがでてくる。大学の課題でもあるが、いきなり企業のやり方を求めるとミスマッチが生じかねない。企業は大学の教員の性質を理解し、一方、大学は企業のニーズを把握するという、相互に地道な作業が必要。
⚫ 補償金の話に戻るが、本学雛型では、企業で収益が上がったら貰う。実施したら頂くのではない。最低限企業の発明者に支払う報奨金と同等貰えればいい。大学のほうが、報奨金が高いじゃないかという話しがあったが、この場合、入ったお金からTLOの分を
引いて4:3:3で分けるので、目減りする。でもたいていの先生はそれでいいと言ってくれる。今日の自分の懐より明日の研究費を稼ぎたい。この先生ありということで、民間の資金をもらえれば先生の利益につながる。大化けする特許の場合は、企業でもそれなりに発明者に払うはず。企業の側の算定でいいので同等レベル、寄与度貢献度を考えて払ってもらえればと思う。
⚫ 大学は実施機能なし。共同研究をやるというのは形の上であって実際は企業の一部としてやっている。そうすると最低発明者に払う保証金くらいは貰ってもいいのでは、それと、研究論文これはいいとかだめとか、あまりいじめると研究者は動かない。やる飴は何なのかお考え頂いて、イニシャルの研究費でも後の実施料補償金でもいいので、企業は研究者を400万使って育てているのに対し、100万で国のお金で育った先生を使うのだから、そういう見方でやってもらうと助かる。
⚫ 補償金について、大学の研究者へのインセンティブとは何かということは、もう少し議論すべき。どういう意味合いで与えられるべきか。ポストとか権限というのはないのでお金になるが。運営交付金から払えばいいとも考えられるが、それだといい成果を出せば出すほど、大学は弱くなっていく。どういう形がいいのかは産業界も含めて真剣に考えていかなければならないと思っている。
大学は、基本的技術を扱っていることが多い。そういったものは、1 対 1 の共同研究も多々あるが、すぐにはお金にならない、どういったものが出るか分からないものは、コンソーシアムのようなものをつくったり、出てきた成果をパテントプールのような形にしたり、大学の研究成果の扱いが複雑化してきている。現場として日々議論をさせてもらうとともに、次のステップに生かさせていきたいと思っている。
⚫ 10年前のアメリカの会合で、日本の大学は権利行使をしないので使っていいのだという話があった。例外的な発言だとは思うが、通常ビジネスマナーとして、調査して分かったら使いたいという連絡をする。ところが、最近出願量がふえたので、調査も漏れたりする。連絡して貰ったほうが、これは使っていたなと分かったりする。その場合、侵害警告ではなく「こういう特許を持っているが関心があるか」というレター。日本の大学の知的財産がどう使われているか、探しに行けばおそらくすぐ見つかる。お金をとるのはそういうところからにして、知的財産の活動の一つとして、知的財産の機能は本来他社に使わせないという機能なので、大学も他社が使っているかウオッチングをして使っていれば警告をしていくという活動も入れていただきたいと思う。
⚫ 今後もこのような機会を作って意見交換をしていきたい。