本契約において、利用期間中、乙が甲に承認する本件自動車の契約走行距離は、月間○kmとする。甲が、利用期間中、当該契約走行距離を超過して本件自動車を運行したとき は、甲は、乙に対し、本件自動車の返還時に、別表○〔省略〕記載の精算表に基づき超過走行精算金を支払う。
書式例6
(賃借人:非事業者)○○○○(以下「甲」という。)と(賃貸人)○○株式会社(以下「乙」という。)は、乙から甲に対する自動車の賃貸に関し、以下のとおり契約(以下
「本契約」という。)を締結する。
第1条(契約の目的及び契約の成立)
乙は、甲が指定する別表○〔省略〕記載の売主から、甲が指定する別表○〔省略〕記載の自動車(以下「本件自動車」という。)を買い受けて、本契約に定める条件で、甲に対し賃貸し、甲はこれを賃借する。なお、本件自動車には、別表○〔省略〕記載の乙指定の自動車保険(任意保険)及び乙指定のメンテナンス業者(以下「乙の指定事業者」という。)によるメンテナンスサービスが付帯している。
第2条(本件自動車の引渡し、検査及び契約不適合責任)
1 乙は、本件自動車の自動車登録の手続完了後、甲に対し、速やかにその旨を通知し、甲は、甲乙間で合意した日に、別表○〔省略〕記載の引渡場所(以下「引渡場所」という。)で、乙立会いの下、別表○〔省略〕記載の検査表に従い、本件自動車を検査する(以下「本件検査」という。)。
2 本件自動車が本件検査に合格したときは、乙は、甲に対し、本件自動車を引渡場所で引き渡す。本件検査に不合格のときは、乙は、遅滞なく、当該不適合箇所を修理及び整備し、甲乙間で別途合意した日に、乙立会いの下、甲による本件検査を行い、本件自動車は引き渡される。
3 本件自動車の引渡し後○か月以内に、本件検査では発見し得なかった契約不適合箇所が発見されたときは、甲は、乙に対し、速やかに書面でその旨を通知する。乙が当該不適合箇所の存在を認めたときは、遅滞なく、これを修理及び整備するものとする。乙が当該契約不適合箇所に異議があるときは、遅滞なく、書面により甲にその旨を申し出て、甲乙間で協議の上、解決する。
4 天災地変、法令の制定若しくは改廃、自動車製造者の製造遅延、輸送遅延、自動車登録手続の遅延その他乙の故意又は過失によらず本件自動車の引渡しが遅延し又は履行不能になったとき、乙は当該遅延又は履行不能に係る責任を負わない。
5 甲が、本件自動車の引渡しを不当に拒み又は遅延させる場合、乙は、甲に対し相当な期間を定めて本件自動車の受領を催告し、甲が当該期間内に受領しないときは、乙は、直ちに本契約を解除することができ、これによって生じた損害を甲に対して請求できる。
【チェック事項】
ファイナンス・リース型カー・リース契約では、通常、賃貸人(リース会社)の契約不適合責任の免責特約又は責任限定特約が置かれていますが、賃貸人がサプライヤー(対象物件の売主)に対して有する契約不適合責任に係る請求権を賃借人に譲渡したり、サプライヤーが賃借人のために当該責任を負うことを保証すること等により、賃借人の権利保護が図られています。サブスクリプション契約でも、賃借人によるサプライヤーに対する当該権利行使が確保されるならば、第3項では、賃貸人の契約不適合責任の限定も許容できるものと考えます。ただし、サプライヤーと賃貸人との間で事前又は同時に締結される契約等で、サプライヤーのこのような責任が定められていることが必要になります(消費契約8②二)。
第3条(自動車の所有者及び変更登録)
1 本件自動車の自動車検査証に記載される所有者は乙、使用者は甲とする。
2 本件自動車は、甲が使用するものとし、乙の事前の書面承諾を得た場合を除き、甲以外の者は使用できない。
3 甲は、氏名、住所又は本件自動車の使用の本拠の位置を変更しようとするときは、乙にあらかじめ通知する。甲は、当該手続に必要な書類を速やかに乙に提出し、乙が、本件自動車の自動車検査証の当該記載事項の変更申請を行うものとする。ただし、当該申請に要する費用は甲の負担とする。
4 乙の商号変更、本店所在地の変更又は合併、事業譲渡その他の乙の事情により、本件自動車の自動車検査証の記載事項の変更が必要になるときは、乙は、その費用を負担の上、当該変更申請を行うものとする。
第4条(本件自動車の保管及び使用)
1 甲は、道路交通法、道路運送車両法等適用法令を遵守し、善良な管理者の注意をもって、本件自動車を自動車検査証に記載の使用の本拠の位置において保管し、日常点検整備及び定期点検整備を行い、本件自動車を通常の用法に従って使用するものとする。当該保管及び使用に要する費用は甲の負担とする。
2 乙が本件自動車の現状、利用及び保管状況に関し点検又は調査を求めたときは、甲はこれに応じるものとする。
第5条(利用期間)
利用期間は、本件自動車の引渡し日から○年間とする。
第6条(利用料)
甲は、乙に対して、別表○〔省略〕記載の利用料を、毎月、当該別表記載の支払期日までに、当該別表記載の支払方法で支払う。利用料の支払義務発生日は本件自動車
の引渡し日とする。
第7条(公租公課及び費用等の変更及び負担)
1 甲が乙に対し本契約に基づき支払う利用料又は費用に係る消費税及び地方消費税の税率変更があったときは、当該利用料又は費用に係る税額相当額も変更される。
2 本契約締結後、本件自動車に係る公租公課(前項に定めるものを除く。)、保険料及び諸費用が変更され又は新たにこれらが課せられる場合でも、甲乙間では精算しないものとする。
第8条(契約走行距離及び超過走行精算金)
本契約において、利用期間中、乙が甲に承認する本件自動車の契約走行距離は、月間○kmとする。甲が、利用期間中、当該契約走行距離を超過して本件自動車を運行したときは、甲は、乙に対し、本件自動車の返還時に、別表○〔省略〕記載の精算表に基づき超過走行精算金を支払う。
第9条(メンテナンスサービス)
1 甲は、利用期間中、本件自動車本体、装備及び付属品に係るメンテナンスサービスを受けるものとする。メンテナンスサービスの対象となる修理及び整備は別表○〔省略〕記載のとおりであり、乙の指定事業者で実施される。
2 前項のメンテナンスサービスの対象外となる修理及び整備は別表○〔省略〕記載のとおりである。メンテナンスサービス対象外の修理及び整備に係る費用は、甲の負担とするが、当該修理及び整備は乙の指定事業者で実施する。
【チェック事項】
(1) 第1項のメンテナンスサービスの対象項目の参考例
① 道路運送車両法に定める法定点検整備、車検整備
② 通常使用の範囲内の損傷又は故障の修理及び整備。ただし、甲の故意又は重過失によるものを除く。
③ ○○
(2) 第2項のメンテナンスサービスの対象外項目の参考例
① 通常使用を超えた使用による損傷又は故障の修理及び整備
② 甲の故意若しくは重過失又は本契約又は法令の違反行為により必要になった修理及び整備
③ 甲の故意又は重過失による保険事故で、自動車保険で填補されないもの(保険免責金額、保険対象外費用又は保険金超過費用に係る修理)
④ メンテナンスサービスの対象とならないその他の修理及び整備
⑤ ○○
第10条(通知義務)
甲は、本契約の他の条項で定める通知のほか、次のいずれかに該当したときは、直ちに、乙に対しその旨を通知する。
① 本件自動車について、損傷、故障その他の異常が生じたとき
② 甲が第16条第1項の解除事由のいずれかに該当したとき
③ ○○
第11条(禁止行為)
甲は、別表○〔省略〕記載の本件自動車並びに本契約上の権利及び義務に関する禁止行為を理解し、禁止行為を行わないことを確認する。
【チェック事項】
(1) 禁止事項の参考例
① 乙の事前承諾を得ない本件自動車本体、装備又は付属品の改造、加工、追加その他の変更
② 乙の事前承諾を得ない本件自動車の自動車検査証の記載事項の変更(使用者の氏名、住所又は使用の本拠の位置の変更等)
③ 通常使用を超える使用
④ 甲の故意又は重過失による自動車事故又は本件自動車の損壊、故障若しくは価値の棄損行為
⑤ 道路交通法、道路運送車両法その他の法令に違反する行為
⑥ 貨物自動車運送事業、旅客自動車運送事業又は甲の事業に利用すること
⑦ 本件自動車の譲渡、処分、転貸又は担保の供与
⑧ 本契約上の地位又は本契約上の権利義務の第三者への移転、譲渡若しくは承継又は担保の供与
⑨ ○○
なお、車内へのペットの持込み、喫煙を禁止する契約もあります。
第12条(保険)
1 乙は、利用期間中、本件自動車に別表○〔省略〕記載の自動車保険(任意保険)をxxする。甲は、あらかじめ当該保険約款の内容を理解した上で、本件自動車を利用する。
【チェック事項】
(1) 自動車保険(任意保険)内容の参考例
① 対人賠償 1名につき無制限(自賠責保険を含む)
② 対物賠償 1事故につき無制限(免責額○円)
③ 人身傷害補償 1名につき○円まで(免責額○円)
④ 車両補償 1事故につき○○(免責額○円)
2 保険事故が発生した場合、甲は、必要書類を遅滞なく乙に対し提出し、乙の保険金請求手続に協力する。
3 保険事故が発生し、甲が、本契約に従い自己の費用負担で本件自動車の損傷を修理した場合で、乙が保険会社から当該損傷に係る保険金を受領したときは、乙は、当該受領金額を限度として、甲に支払う。
第13条(交通事故発生時の対応)
甲は、本件自動車に関し交通事故が発生したときは、直ちに、負傷者の救護措置及び危険防止措置をとり、警察署に交通事故を報告する。また、甲は、乙及び保険会社に対しても、これを報告し、指示に従う。本件自動車の盗難が発生したときも、甲は、直ちに、警察署、乙及び保険会社に対しその旨を報告し、指示に従う。
第14条(本件自動車の保管、使用に起因する賠償責任)
本件自動車自体又は甲の本件自動車の保管若しくは使用により、第三者に損害を与えたときは、甲は、直ちに、乙に対しその旨を通知し、乙が別段の要請をしない限り、甲の責任と費用負担で解決する。
第15条(本件自動車の損傷又は滅失)
1 天災地変若しくは当事者の責めに帰さないその他の事由により又は乙の故意若しくは過失により本件自動車が損傷したものの、修理可能なときは、乙の費用負担で、遅滞なく修理及び整備されるものとする。この場合、甲は、本件自動車を使用収益できない期間が生じても、乙に対し、利用料の支払を拒否し又は減額を請求できない。
2 甲の故意又は重過失により本件自動車が損傷したものの、修理可能なときは、甲の費用負担で、遅滞なく修理及び整備されるものとする。この場合、乙は、自己に生じた損害があれば甲に対してこれを請求できる。
3 天災地変若しくは当事者の責めに帰さないその他の事由により又は乙の故意若しくは過失により、本件自動車の全部が滅失又は使用収益が不能になり、修理不能なとき又は当該修理に多額の費用を要するときは、本契約は終了する。この場合、甲は、残存期間の利用料の支払を要しないが、乙に対し、第8条の超過走行精算金を支払い、第 18条に基づき直ちに本件自動車を返還する。
4 甲の故意又は重過失により、本件自動車の全部が滅失又は使用収益が不能になり、修理不能なとき又は当該修理に多額の費用を要するときは、本契約は終了する。この場合、甲は、残存期間の利用料の支払を要しないが、乙に対し、別表○〔省略〕記載の規定損害金及び第8条の超過走行精算金を支払い、第18条に基づき直ちに本件自動車を返還する。この場合、乙は、自己に生じた損害があれば甲に対してこれを請求できる。
5 本条の定めは、第16条及び第17条に優先して適用される。
第16条(契約違反による解除)
1 〔省略〕
2 甲が、前項の解除事由のいずれかに該当し、乙が本契約を解除した場合、甲は、乙に対し、別表○〔省略〕記載の規定損害金及び第8条の超過走行精算金を支払い、第18条に基づき直ちに本件自動車を返還する。
3 乙が、第1項の解除事由のいずれかに該当し、甲が本契約を解除した場合、甲は、乙に対し、第8条の超過走行精算金を支払い、第18条に基づき直ちに本件自動車を返還する。
【チェック事項】
① 第1項の契約解除事由としては、甲の利用料の不払、乙のメンテナンスサービス履行義務違反、双方当事者のその他の契約違反、仮差押え、仮処分等の申立て、滞納処分又は破産手続開始の申立て等一般的な解除事由が考えられます。ファイナンス・リース型カー・リース契約では、リース物件の修理義務が賃借人負担とされていること等から、通常、賃貸人の契約違反の場合の賃借人による契約解除条項を置いていません。しかし、メンテナンスサービス付きのサブスクリプション契約では、賃貸人のメンテナンスサービスの債務不履行や賃貸人の破産等が想定し得る以上、第1項は、双方当事者の契約違反等に適用がある条項にすることが望ましいと考えます。
② 第2項の規定損害金の表示方法は、各月に対応した具体的な金額を明示した一覧表形式が分かりやすいでしょう。
③ 規定損害金については、自動車の期間前返還があった場合の利益の清算義務に関する議論(賃貸人が期間前返還により得る利益を賃借人に返戻又はこれを賃借人が支払う規定損害金や残存利用料に充当)を踏まえた金額設定が望ましいでしょう。
④ 消費者向けの自動車のサブスクリプション契約においては、規定損害金等の条項は、消費者契約法の抵触に留意する必要があります(消費契約8~10)。また、民法の定型約款に該当する利用規約を用いる場合、民法の不当条項規制(民548の2
②)にも留意する必要があります(第7章2◆免責条項を作成する際の留意点を参照ください。)。
第17条(xによる本契約の中途解約)
1 甲は、利用期間の開始日より○か月経過後は、甲が希望する契約終了日の○か月前までに、乙所定の中途解約通知書を乙に提出して、本契約を解除できる。ただし、本項に基づく本契約の解除の効力発生は、甲が、本契約終了日までに、乙に対し、別表
○〔省略〕記載の中途解約料及び第8条の超過走行精算金を支払い、第18条に基づき本件自動車の返還を完了させたことを条件とする。
2 前項の定めにかかわらず、利用期間中に以下のいずれかに該当したときは、甲は、乙所定の解約通知書を乙に提出して、本契約を解除できる。ただし、本項に基づく本
契約の解除の効力発生は、甲が、本契約終了日までに、乙に対し、別表○〔省略〕記載の解除事由に係る証拠資料を提出し、第8条の超過走行精算金を支払い、第18条に基づき本件自動車の返還を完了させたことを条件とする。
① 甲の死亡
② 甲が運転免許証を返納したとき
③ 甲が疾病罹患又は治癒不能の負傷により運転不能又は困難になったとき
④ ○○
3 本条の定めは、第15条及び第16条の適用がないときに限り、適用される。
【チェック事項】
① 第1項は、自動車は中古市場があり賃貸人による目的物の再利用が可能であることから、一定期間経過後の賃借人からの中途解約を可能とする条項例です。中途解約料は、賃借人の契約違反等を理由とする解除の場合の規定損害金に比べて、低額の設定にすることが考えられます。
② 第2項は、賃借人にやむを得ない事由が発生した場合に、中途解約料を支払うことなく、中途解約を認める条項例です。
③ 第3項は、契約終了条項の相互の優先順位を定めた条項です。
第18条(本件自動車の返還及び処理)
1 本契約が利用期間の満了又はその他の理由で契約が終了するときは、甲は、当該満了日又は終了日までに、自己の責任と費用負担で、本件自動車の引渡し後に生じた損傷(別表○〔省略〕記載の通常の使用収益により生じた損傷、経年劣化並びに甲の責めに帰さない事由による損傷を除く。)を原状に復した上で、本件自動車(鍵、自動車検査証及び自動車損害賠償責任保険証明書を含む。)を、乙の指定場所に返還する。
2 乙は、一般財団法人日本自動車査定協会による査定又はその他xxな方法によって、返還時の本件自動車の状態及び原状回復義務の履行の完了を確認する。本件自動車の返還時に、甲による原状回復義務の履行が未了の場合には、乙は、甲に対し、書面により通知の上、甲の代わりにこれを行う。この場合、甲は、乙が要した費用を乙に支払うとともに、乙が被った損害を賠償する。
3 乙の事前承諾を得て甲により本件自動車に付着された動産が甲の所有に属するときは、甲は、本件自動車の返還前に、自己の責任と費用負担で当該動産を分離収去する。
4 甲が、本件自動産に付着した動産の分離収去を怠ったときは、乙は、甲に対し、書面により通知の上、甲の代わりにこれを行う。この場合、甲は、乙が要した費用を乙に支払うとともに、乙が被った損害を賠償する。
5 甲が、本件自動車の返還を遅延したときは、甲は、乙に対し、本件自動車の返還完了日までの遅延日数に応じて、利用料相当損害金(第6条に定める1日当たりの利用料を基に算出した金額)を支払う。
6 甲が、本件自動車の返還を遅延したときは、乙は、自己又は自己の代理人によりこ
れを任意に引き揚げることができるものとする。甲は、乙の本件自動車の引揚げを妨害、拒否せず、当該引揚げに異議がないことを確認する。また、当該引揚げがなされたときは、甲は、乙に対し、本件自動車の引揚げに要する費用(裁判費用、弁護士費用等を含む。)を速やかに支払う。
第19条(相殺の禁止)
甲は、本契約に基づく債務を、乙に対する債権をもって相殺することはできない。
第20条(遅延損害金)
〔省略〕
第21条(通知の宛先及び方法)
〔省略〕
第22条(反社会的勢力の排除)
〔省略〕
第23条(裁判管轄)
〔省略〕
【チェック事項】
(1) その他の条項
① 利用期間の途中で対象自動車の乗換えを可能とする場合には、当該条項
② 契約終了時の賃借人による買取り、再契約等を可能にする場合には、当該条項
③ 連帯保証人を要求する場合には、当該条項
④ 契約当初、本件自動車の返還時の残存価格を設定しておき、当該価格と実際の査定価格との差額精算を行う場合には、当該条項
本契約締結の証として、本契約書2通を作成し、甲乙署名又は記名押印の上、各1通を保有する。
令和○年○月○日
甲 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
○ ○ ○ ○ 印
○○県○○市○○町○丁目○番○号乙 ○○株式会社
代表取締役 ○ ○ ○ ○ 印
◆チェックリスト
目的物 | |
・対象となる自動車が特定されているか。自動車は新車か、中古車か ・賃貸人の契約不適合責任の内容は明確に定められているか | □ □ |
利用料等 | |
・利用料の金額、支払方法及び利用料の算定に含まれる費用項目が明確に定められているか ・賃借人が契約締結時又は利用期間中に負担する費用(保険料、税金、修理費その他の諸費用)が明確に定められているか ・利用料の発生日が特定されているか ・利用料の変更の有無、変更理由が明確に定められているか | □ □ □ □ |
利用期間 | |
・利用期間が賃借人の希望期間に合致しているか ・早期終了が見込まれる事由は想定されないか | □ □ |
利用期間中の修理義務、損傷又は滅失発生時の危険負担 | |
・メンテナンスサービスの内容及び対象外の内容、並びに修理の分担区分が明確に定められているか ・不可抗力事由に起因する損傷の修理条項、全部滅失の場合の契約終了及び損害 の負担当事者が明確に定められているか | □ □ |
契約違反等の場合の解除事由、賃借人による中途解約権、契約終了時の扱い | |
・契約違反等の解除事由は一般的な事由であるか ・契約違反等の解除による契約終了の場合、賃借人が支払う規定損害金又は残存利用料等は明確に定められているか。その金額はいくらか ・賃借人による利用期間中の中途解約権があるか。この場合、賃借人は中途解約料等の支払を要するか。その金額はいくらか ・契約終了時に、支払又は精算が必要とされる諸費用は明確に定められているか ・自動車の返還時の賃借人の原状回復義務の範囲は明確に定められているか。通常の使用収益によって生じた損傷、経年劣化による損傷又は賃借人の責めに帰さない損傷については、賃借人の原状回復義務は免除されているか ・期間満了の際、期間の延長(再契約)は可能か。買取権は認められているか | □ □ □ □ □ □ |
他方で、一般にフリーランスが発注者との間で契約交渉上劣位に置かれがちであるにもかかわらず、労働法規による保護が与えられないこと等から、成長戦略フォローアップにおいてフリーランスとして安心して社会で活躍できる環境の整備が提案され、これを受けて策定された「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(以下「フリーランスガイドライン」といいます。)においても、フリーランスに労働法規が適用され得ることや、その適用がない場合でも独占禁止法や下請法に基づく規制があることが説明されています。
本項では、上記のようなフリーランスの可能性や懸念事項を踏まえ、xxxxxxと、フリーランスに仕事を発注する事業者(発注者)の間で一般的に締結される業務委託契約を審査する上での留意点を説明します。
トピックス
○xxxxxxの保護の要請
xxxxxxの広がりに伴い、その問題点が指摘されるようになり、成長戦略フォローアップにおいてもフリーランスの保護が意識されています。労働法規や独占禁止法、下請法の適用が求められる風潮が今後更に強まると予想されるため、フリーランスとの間で健全・xxな契約を締結することで予想外のリスクを防止するという意識で契約審査に臨む必要があります。
◆労働関係法規の適用可能性に関する留意点
フリーランスとの業務委託契約を締結する上で最も重要な点は、労働関係法令が適用されないようにすることです。形式的に労働契約を締結していない場合でも、実態としてフリーランスが「労働者」に該当すると判断された場合、労働基準法や労働組合法等の労働関係法規の適用を受け、フリーランスと発注者の間の法的関係が大きく変わってしまいます。
「労働者」の概念については、労働基準法や労働契約法等の労働条件を定める法令と、労働組合法とで異なる解釈がされますので、以下それぞれにつき解説します。
弁護士に聞きたい!
Q3 フリーランスが設立した法人と契約する場合
個人と契約する場合労働者に該当し得ることは分かりますが、フリーラン
スが設立した法人と契約する場合も労働法の適用があるのでしょうか。
A 形式的にいえば、労働契約上の労働者は自然人(個人)であることが想定されており、法人が労働者として労務提供を約する労働契約の成立は認められないと考えられます。例えば、東京地裁平成30年1月26日判決(判タ1463・190)は、法人間で請負の名目で締結された契約が労働契約に類似することを認定しつつ、労働者は自然人であることを要するため労働契約ではないとして労働基準法の適用を否定しました。
しかし、個人事業主が労働法規の適用を回避する目的で法人成りしているにすぎない等、その実態が個人事業主と変わりがないような場合、代表者個人を契約当事者とする労働契約が成立したと判断される可能性はあります。また、発注者がフリーランスの設立した法人の従業員に対して直接指示命令等している場合は、発注者と当該従業員との間で労働者派遣法違反等の問題が生じ、当該従業員を雇い入れたとみなされる場合もあります(大阪高裁令和3年11月4日判決(労判1253・60)は、業務委託契約に偽装請負等の目的があったと認定し、労働者派遣法40条の6に基づき労働契約の申込みがあったとみなして派遣先・派遣労働者間の労働契約の成立を認めました。)。
次に、労働組合法上の使用者性は労働基準法より広く認められます。雇用主以外の事業主であっても、基本的な労働条件等について支配決定できる地位にあることから使用者に該当し得るという判例(最判平7・2・28労判668・11)からすれば、契約の当事者である法人の労働者の労働条件等を発注者が支配決定していると評価されるような場合には、労働組合法の適用を受ける可能性があります。
(1) 労働基準法上の「労働者」
労働基準法と労働契約法における労働者概念は同一のものと解されています。加えて、労働基準法上の「労働者」は労働基準法の附属法・関連法である労働安全衛生法や労働者災害補償保険法等の適用対象でもあります。よって、xxxxxxが労働基準法上の「労働者」に該当する場合、フリーランスとの契約関係がこれら労働関係法の適用により(基本的には発注者に不利益な方向で)大幅に修正され、発注者が想定しない負担や予想していない労働法規違反による刑事上、行政上、民事上等のリスクが生じ得ることとなります。
xxxxxxが労働基準法上の「労働者」に当たるか否かは、契約の名称や形式に
第11条(本契約の解除)
甲又は乙は、相手方当事者が次の場合の一つに該当したときは、催告をしないで、直ちに本契約を解除することができる。
〔省略〕
第12条(合意管轄)
本契約に関する紛争については○○地方裁判所を第xxの専属的合意管轄裁判所とする。
第13条(協議条項)
本契約に定めのない事項及び甲乙間に疑義の生じた事項については、その都度甲乙協議して解決する。
以上の契約を証するため、本契約書2通を作成し、甲及び乙は各々1通を保有する。令和○年○月○日
○○県○○市○○町○丁目○番○号甲 ○○株式会社
代表取締役 ○ ○ ○ ○ 印
乙 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
○ ○ ○ ○ 印
【チェック事項】
発注者が、フリーランスの責めに帰すべき事由がないにもかかわらず損害賠償することなく一方的に解除できるような規定は問題となり得るため避けましょう。
◆チェックリスト
労働基準法の適用を避けるための確認事項 | |
・業務の発注についてフリーランスに諾否の自由が確保されているか ・業務遂行方法の指定が業務内容との関係で必要最小限にとどまっているか ・役務提供の場所や時間の指定が業務の性質との関係で必要最小限にとどまっているか ・報酬が業務の性質上やむを得ない場合を除き稼働時間等ではなく成果に対して支払われる内容になっているか ・「有給休暇」「懲戒」「解雇」等、労働契約特有の文言が入っていないか | □ □ □ □ □ |
・給与所得を前提とした公的手続を行う等、労働契約であることを前提としたx xが含まれていないか | □ |
労働組合法の適用を避けるための確認事項 | |
・フリーランスによる役務提供が事業の不可欠な前提となっていないか ・契約の内容を一方的・定型的に決定するのではなく都度受注者と協議し決定しているか ・受注者が発注を引き受けることが原則となっている実態はないか ・定期的な作業報告や稼働予定申告の要求等、作業の遂行状況や日時場所を発注者が具体的に管理するための規定が入っていないか | □ □ □ □ |
経済法の遵守に関する確認事項 | |
・委託後直ちに取引条件を説明する書面(3条書面)を作成し、又は契約書の中で取引条件を明示しているか ・合理的な理由なく(十分な協議を経ることなく)他の発注先に提示する金額や市価を下回る報酬額を定めていないか ・報酬の支払期日が成果物の受領や役務の提供を受けた日から60日以内である等、下請法、独占禁止法上の規制を踏まえた支払期限になっているか ・成果物に関する知的財産権の使用許諾等も対象として対価を定めているか(特に、権利の譲渡を受け、あるいは権利の行使について受注者に対して制限を課す場合には、それに見合った対価を定めているか) ・合理的な理由なく自社の商品や役務の利用を求める規定が入っていないか ・発注業務外の作業等を無償ないし廉価に供出させる規定が入っていないか ・発注業務等との関係で必要な範囲を超える秘密保持義務を課していないか ・発注業務等との関係で必要な範囲を超える競業避止義務や専属義務を課していないか ・発注の取消し等ができるのは受注者の責めに帰すべき事由がある場合(契約不適合がある場合等)に限定されているか ・業務内容や成果物の仕様等、契約不適合の判断材料が十分具体化されているか ・最初からやり直しが想定される場合、報酬額でカバーされるやり直しの範囲や想定を超える場合の対価ないし補償の金額が規定されているか | □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ |
第7章 デジタル市場に関する契約の審査 331
第7章 デジタル市場に関する契約の審査
1 デジタル市場分野の契約における審査の視点
① デジタル市場分野は、技術の進歩等、その環境の変化は著しく、日々新たなサービスが生まれますが、その変化に対応するためには、提供されるサービス、役務の内容等に応じて契約の内容を検討するとともに、基礎的な概念の理解がより重要となります。
② デジタル市場分野における取引には、定型取引に該当するものが少なくなく、定型約款に関する規制への対応が求められる場面があります。
③ デジタル市場分野における取引では、データを対象とする取引が少なくなく、データの利活用に関する条項の審査が重要となるとともに、想定するビジネスによっては個人情報の適切な取扱いが重要となります。
Point
◆デジタル市場の発展
成長戦略会議が取りまとめた成長戦略実行計画(令和3年6月18日)では、コロナ禍でも経済を牽引している分野の一つとしてデジタル市場分野が取り上げられており、デジタル市場分野は、ポストコロナ時代においても重要視される分野といえます。
この点、「デジタル市場」あるいは、その前提としての「デジタル技術」は必ずしも画一的な定義が確立しておらず、論者やその文脈により、その具体的な意味内容が左右される側面は否めないものの、近時のビジネス環境において、AI技術(機械学習技術)、データあるいはクラウドサービスの重要性を否定することは難しいでしょう。
第 7 章
コンピュータの性能向上や通信の高速化などによって情報処理が多様化し、リアルタイムで膨大なデータがクラウド上で取得、蓄積、そして、AI技術などにより分析されることによって、さらなるサービスの発展につながっています。また、各種クラウドサービスが、API(Application Programming Interface)連携を前提として構築されることにより、自社と他社のサービスとの組合せによる新たなサービスが生まれたり、IoT/M2M技術の発達によるデータ取引量の増大など、日々ビジネス環境は変化・進化しています。