Contract
PFI事業契約との関連における業務要求水準書の基本的考え方
目 次
まえがき 3
第1章 PFIのプロセスからみた業務要求水準書の位置付け 4
1.PFIのプロセスからみた業務要求水準書の位置付け 4
2.本書の対象範囲 4
第2章 業務要求水準書に求められるもの 5
第1節 管理者等の意図の明確化及び民間の創意工夫の発揮から留意すべきこと 5
1.事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)の明確化 5
2.対話により業務要求水準書を明確化する手順 5
3.性能規定と仕様規定の適切な採用 6
4.支払許容度の範囲内か否かの確認 6
5.業務要求水準と整合したPSC、PFI-LCCの算定 6
6.業務手順を明示することの必要性 6
第2節 基準の明確化から留意すべきこと 8
1.性能規定による業務要求水準に数値的な基準を盛り込む等客観的に整理する必要性 8
2.支払メカニズムとの連動 8
3.業務要求水準とモニタリングの指標、支払メカニズムの一体的な検討手順 8
第3章 業務要求水準書に関する諸課題と対応の方向性 9
第1節 管理者等の意図の明確化 9
1.事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を明確にする必要性 9
2.民間事業者に期待する役割の検討 10
第2節 業務要求水準の具体化、明確化、精緻化. 11
第2-1節 業務要求水準の明確化 11
1.性能規定による業務要求水準に数値的な基準を盛り込む等客観的に整理する必要性 11
2.仕様規定の適切な活用 13
3.管理者等側の事業担当部門の関与の在り方 15
4.業務手順を明示することの必要性 16
5.官民のコミュニケーション 17
6.業務要求水準書に対応する予定価格の設定 20
第2-2節 達成すべき基準の明確化 22
1.業務要求水準に対応したモニタリング指標の設定及びモニタリングの基本計画の作成 22
2.事業目的に合致したモニタリング指標と支払メカニズムの連動 24
3.組織品質や業務全体の傾向を評価する指標の活用 26
4.実効的なモニタリングの仕組みの構築 27
5.モニタリング結果の公表と第三者評価 28
第2-3節 業務要求水準・モニタリング・支払メカニズムの三位一体の検討 29
第3節 その他の課題 31
1.事業者選定後の仕様の確定 31
2.優れた業務要求水準書作成ノウハウの蓄積・継承 31
第4章 地球温暖化対策の観点から求められること 33
第5章 業務要求水準書の構成 38
第1節 業務要求水準書と他の書類との関係 38
第2節 各書類の構成及びその考え方 38
1.業務要求水準書に盛り込むべき事項の考え方 38
2.業務要求水準書の構成 38
3.モニタリングの基本計画の構成 42
第6章 業務要求水準書の作成手順 46
第1節 検討の流れ 46
第2節 チェックリスト 47
1.使用方法 47
2.チェックリスト(案) 47
A.検討手順チェックリスト 47
B.書類チェックリスト 51
まえがき
業務要求水準書は入札参加者に対して公共施設等の管理者等(以下、「管理者等」という。)の意図 を示すための最も重要な書類である。業務要求水準書はPFI事業によって整備される施設やサービ スの質や効率性に大きな影響を及ぼす。また、管理者等が事業の最終的な責任を負いながらも、民間 の創意工夫を発揮するというPFI本来の趣旨の達成の如何も業務要求水準書によるところが大きい。
しかしながら、平成 19 年 11 月 15 日に取りまとめられた「PFI推進委員会報告-真の意味の官民のパートナーシップ(官民連携)実現に向けて-」(以下、「推進委員会報告」という。)では、業務要求水準書について以下のような課題が指摘されている。
・要求水準書作成前の段階で、管理者等が何を求めているのか明確に整理しきれず、結果として民間事業者に丸投げになっている事例があること
・アウトプット仕様である要求水準書に示された管理者等の意図を民間事業者が完全に把握しきれず、後ほどの段階である契約締結段階等で管理者等と民間事業者の認識の不一致からくる齟齬が生じている事例があること
・予定価格と要求水準書が必ずしも整合性が取れた形で作成されておらず、入札参加者に当該予定価
格では実現不可能な過大な内容の要求水準書を示している事例が見受けられること
上述した課題を含めた業務要求水準書に関する諸課題に対応し、PFI事業によって整備される施設やサービスの質と効率性の向上に資することを目的に、「PFI事業契約との関連における業務要求水準書の基本的考え方」(以下、「本書」という。)として取りまとめた。本書は、今後のPFI事業の進捗状況の変化等を踏まえ、適宜見直していく必要があるものである。
第1章 PFIのプロセスからみた業務要求水準書の位置付け
1.PFIのプロセスからみた業務要求水準書の位置付け
管理者等の意図を明確に民間事業者に伝達し、併せて民間の創意工夫を最大限に誘発するための PFIのプロセスにおいて、業務要求水準書は最も重要な文書の一つといえる。
管理者等は、まず、PFIという手法を採用するか否かを検討するのに先立ち、管理者等による事業ごとの長期計画や中期計画に基づき、対象事業に係る基本構想や基本計画を作成し、その中で管理者等が個別の事業に関して考える政策目的や求める成果(アウトカム)を明確にする。
次に、業務要求水準書を作成するが、これには管理者等の事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を実現するためにどのようなサービスが提供されるべきかという観点に加えて、民間事業者が何を提供できるかという視点が必要である。したがって、その作成に当たっては、官民がコミュニケーションを行い、民間事業者からの意見を考慮することが重要である。民間事業者は、自らの創意工夫を活用して、業務要求水準書に示された内容を満足するための具体的な仕様を提案し、当該仕様に基づいて公共サービスを提供する。管理者等はそのサービス水準の監視(測定・評価)
(モニタリング)を行うこととなる。
2.本書の対象範囲
本書では、一般的に業務要求水準書に記載される内容(事業の設計や運営等に係る要件)を取り扱う。詳細は第3章以降に記述するが、業務要求水準書は、民間事業者に期待する役割をまとめた記述、原則として性能規定1による業務要求水準で構成され、さらに、モニタリングの基本計画を示した文書が添付されるべきものである。また、必要と判断される場合には、事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)に関する記述を再記することも有用である。本書は、これら業務要求水準書そのもの及び添付書類の作成の在り方について示すことを目的とする。ただし、業務要求水準書と関連の深いその他の事項についても必要に応じて記述している。
なお、本書ではいわゆる財務モニタリング(経営状況の報告)については、業務要求水準を満足するサービスの提供がなされているかどうかを確認するモニタリングとは別のものとして整理し、触れていない。
1 インプット仕様、アウトプット仕様という場合の「仕様」と、仕様発注、性能発注という場合の「仕様」では意味が異なり混乱を招くおそれがあるため、本書では「インプット仕様」「アウトプット仕様」という用語は使用せず、「仕様規定」(=形状・寸法・材料等の具体的な仕様を規定する方法)、「性能規定」(=事業者が満たすべき性能を規定する方法)という用語を用いることにした。
第2章 業務要求水準書に求められるもの
管理者等は、業務要求水準書を作成する前に具体的な事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を明確にすべきである。業務要求水準書はこの目的や成果を実現するための要求項目であり、次の3点がその狙いとなる。
① 管理者等が何を求めているかを明示的に示すこと
② その実現に際し、リスクを特定して適切に分担し、民間の創意工夫が最大限発揮されるような配慮をすること
③ 民間の創意工夫が発揮されるサービスの提供について、達成すべき基準を明確に示すこと
第1節 管理者等の意図の明確化及び民間の創意工夫の発揮から留意すべきこと
業務要求水準書は事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)そのものを記述するものではなく、これらを民間の創意工夫が最大限発揮されるように原則として性能規定の形で再整理したものである。したがって以下の点に留意する必要がある。
1.事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)の明確化
導入可能性調査等のPFI事業の手続に入る前に、管理者等は対象事業に係わる基本構想や基本計画を作成し、その中で政策目的や求める成果(アウトカム)を明確に定義する。これらが民間事業者に明確に伝わるよう、具体的な記述として取りまとめ、事業の前提として業務要求水準書と併せて民間事業者に示すことが必要である。どのような政策目的で事業が実施されるのか、求める成果(アウトカム)は何かを併せて明確に示すことにより、性能規定による業務要求水準の背後にある考え方、優先順位が民間事業者に伝わりやすくなる。これにより、民間の創意工夫を発揮できる余地が増えることを期待できる。なお、事業を考慮する際の前提となる基本構想、基本計画の中にこれらに相当する事項が含まれている場合には、これらを代用又は抜粋する形で明示してもよい。また、この考えを提示する仕方としては、実施方針の中で明らかにする方法、実施方針に添付される業務要求水準書(案)の別添資料として提示する方法等が考えられる。いずれにしろ、事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)は、PFIの検討の前段階で明確に整理される必要がある。
2.対話により業務要求水準書を明確化する手順
PFI事業は、管理者等がサービスの水準を業務要求水準書として規定し、具体的な仕様は入札参加者が個別に提案するいわゆる性能発注を前提とするため、管理者等が期待する一定の基準から大きく離れた提案が民間事業者からなされる可能性がある。このような状況が起こることを避けるために、管理者等と民間事業者との意思の疎通を図るための質問回答等を行うことで、管理者等と民間事業者との意思の疎通を図ることが重要となる。管理者等は、当初から完成度の高い業務要求水準書(案)を作成し、公表したら変更しないというのではなく、民間事業者との対話を通じてむしろその内容を改善していくべきものであるとの考えを持つ必要がある。
また、業務要求水準書の作成に当たっては、あらかじめリスクワークショップ等によりリスクを特定し、その分担を明確にすることが必要である。リスク分担についても、業務要求水準書と同様に、質問回答等により管理者等と民間事業者との意思の疎通を図ることが重要となる。
3.性能規定と仕様規定の適切な採用
PFI事業では、民間の創意工夫を活用する観点から、求めるサービスを仕様規定により示すのではなく、性能規定により示すことが原則である。ただし、仕様規定を全く採用すべきでないということではなく、提示した仕様が民間の創意工夫を阻害するか否かでその可否を判断すべきである。
例えば、性能規定では非常にxxの複雑な記載が必要となる場合等においては、仕様規定を一部採用することがより良いVFMの達成に資することもある。また、適切なリスクの移転につながる場合においても、仕様規定を採用することがありうる。
ただし、仕様規定を採用する場合は、これが民間事業者の提案を拘束する条件となるか否かについて、明確に提示することが必要である。参考情報として提示する場合はそれを明記し、必ずしも民間事業者の提案がこれに拘束される必要がないことを伝える必要がある。一方、法令等で仕様が規定されている場合等は、変更できない条件であることを明記した上で提示することとする。
4.支払許容度の範囲内か否かの確認
アフォーダビリティ(後年度財政負担能力)の観点からの検討は、基本構想、基本計画の作成等において、事業計画を検討し、事業の優先順位を決める段階で行われるべきものである。その上で、導入可能性調査段階以降に作成する業務要求水準が、基本構想、基本計画の作成段階でアフォーダビリティを確認された事業費(支払許容度)の範囲内か否かについて、確認する必要がある。
5.業務要求水準と整合したPSC、PFI-LCCの算定
管理者等は、業務要求水準書で求めるサービスの水準を示すことに加え、サービス対価と求められるサービス水準との間に整合性があることを確認する必要がある。PFI事業のサービス対価を設定するためには、PSCやPFI-LCCを把握する必要があり、これらは業務要求水準書で示したサービス水準に基づいて算定される必要がある。
業務要求水準と整合したPSC又はPFI-LCCを算定することにより、結果として業務要求水準に則したサービス対価を設定することが可能となる。
6.業務手順を明示することの必要性
サービス提供業務の比重が重く、多数の業務から構成されている事業をはじめとしたPFI事業においては、これまで個別に発注されていた個々の業務を束ねて実施すること、また設計、建設、維持管理、運営のライフサイクル全体を通じた一気通貫の手順を改善することなどにより、BPR
(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング:現状の業務手順を再編・再構築することにより、無駄を省き効率化を実現する考えをいう。)を実施できることによる経済効果が大きい。
管理者等は、民間事業者によるBPRの提案を可能とするために、現状の(従来方式で行われている)業務手順・作業量・人員布陣等について業務要求水準書の参考資料として添付することが望ましい。
なお、核となる業務を管理者等が行い、複数の多様な周辺支援業務を民間事業者が行うようなP FI事業で、かつ運営上互いに調整が必要となるもの(病院、刑務所等)に関しては、管理者等が行う業務と民間事業者が行う業務のすりあわせにより業務分担を明確にすることが、サービス受益者(最終利用者)に対する一体的サービス提供という観点からも、官民のリスク分担という観点からも重要である。したがって、事業の核となる業務の業務手順(周辺業務と関連するもの)についても、調査・検討し、必要に応じて公表することが望ましい。
第2節 基準の明確化から留意すべきこと
業務要求水準は、管理者等と民間事業者の認識に齟齬のないよう、客観的に提示する必要がある。また、モニタリング指標に対応しうる程度の具体性を有するべきである。
1.性能規定による業務要求水準に数値的な基準を盛り込む等客観的に整理する必要性
管理者等と民間事業者との間で、性能規定により示された業務要求水準についての認識の齟齬が発生しやすいことが指摘されている。これを改善するためには、可能な限り、数値的な基準を盛り込む等客観的に整理する必要がある。
2.支払メカニズムとの連動
管理者等の意図を明確にするという観点からは、サービス対価の支払メカニズムは、業務要求水準書に示したサービス水準やサービスの内容に関する管理者等の優先順位(管理者等にとって特に重要である部分とそうでない部分の区別)を明確に反映すべきである。そのため、業務要求水準書に示された遵守すべき事項について優先順位を整理した上で、支払メカニズムを作成する必要がある。
3.業務要求水準とモニタリングの指標、支払メカニズムの一体的な検討手順
モニタリングが業務要求水準を満足するサービスの提供の確保につながるものとするためには、業務要求水準の検討段階において、モニタリング指標と支払メカニズムを一体のものとして検討することが必要である。例えば、入札公告時にこれらの関係を整理した上でモニタリングの基本計画として取りまとめ、業務要求水準書と一括して提示していくこと等が考えられる。モニタリングの基本計画で提示するモニタリング指標は原則としてそのまま運営段階に適用されるものであるが、実態に則した変更は可能とすべきである。具体的には、民間事業者の提案書の内容やそれに基づいて提示される業務仕様を踏まえて、モニタリングの実施計画(モニタリングの基本計画に基づいてモニタリング方法の詳細を定めたもの)を改めて作成するという手順を採ることが合理的と考えられる。
また、サービス提供業務の比重が重く、多数の業務から構成されている事業等においては、サー ビス提供業務を実際に開始した後にモニタリングの対象とすべき項目が新たに判明することも多く、サービス提供業務開始後一年程度かけてモニタリングの項目、手法等につき、サービス提供業務の 実情に合わせて柔軟性をもって適合していく仕組みを導入することが有効である。ただし、民間事 業者の積算額に大きく影響を与えるような重要な部分については、入札段階において決定されてい る必要があり、このような部分まで入札後の調整に委ねるのは妥当ではない。
第3章 業務要求水準書に関する諸課題と対応の方向性
第1節 管理者等の意図の明確化
1.事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を明確にする必要性
① 課題
・ 推進委員会報告においては、業務要求水準書に関する課題として、管理者等が何を求めているのかを明確に整理しきれず、結果として民間事業者に丸投げになっている事例があると指摘されている。
② 考え方
・ PFI事業実施プロセスに関するガイドラインでは、「PFIは、公共施設等の整備等に関する事業を行う場合の実施方法の一つである。したがって、PFI事業の検討を行う場合、まず実施すべき公共施設等の整備等に関する事業が想定されていることが前提であり、その上で、PFIの可能性を検討することとなる」と記載されている。このように、PFI事業を実施するに当たっては、まずその前段階において管理者等自身が事業のニーズを確認した上で、当該事業の具体的な実施方法について、新たに施設を整備するのか、それとも別の方法でサービスを提供するのかも含め、様々な選択肢を検討する必要がある。
・ その上で、管理者等としての事業の目的や方針、達成すべき成果(アウトカム)等を取りまとめることが必要である。
・ 事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を明確にするという作業自体は、基本構想や基本計画の策定段階において行われているのが一般的である。したがって、基本構想や基本計画から必要な事項を抜粋又は取りまとめることにより、これを準備できる。
・ 業務要求水準書とは、この事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)の内容を実現するための性能規定等によりまとめられたものになる。よって、導入可能性調査において業務要求水準を検討する前に、事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を整理しておく必要がある。
・ 民間事業者が、PFI事業の提案書を作成し、また事業を実施するに際して、事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を理解しておくことは、業務要求水準の背後にある管理者等の意図を理解し、官民間の齟齬を解消するとともに、民間の創意工夫を誘発することに資するものと期待される。
・ 一方、これらの作業には、管理者等にとって、管理者等の内部で事業に関わる職員やアドバイザー間で認識を共有できるという意義もある。
③ 留意点
・ 事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を明確にし、これらを事業の前提として業務要求水準書と併せて民間事業者に示すことが望ましい。
・ 事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を明確に民間事業者に伝達するためには、基本計画や基本構想を抜粋することも有効である。この場合、管理者等は、その内容が可能な限り
具体的、客観的かつ明確なものとなるよう努力すべきである。また、複数の項目がある場合には、その優先順位も明記しておくことが望ましい。また、盛り込むべき項目は、事業に係る管理者等の政策目的や達成すべき成果(アウトカム)であることから、これに該当する部分のみ抜粋し、施設整備のイメージ等は抜粋しないことが望ましい(施設整備のイメージ等は管理者等が考える仕様規定の例と位置付けて提示することが考えられる。)(p.6 第2章第1節3参照)。
2.民間事業者に期待する役割の検討
① 課題
・ PFIの目的は、民間の創意工夫を活用することにより効率的で質の高い公共サービスを実現することにある。しかし、より明確に管理者等の意図を伝達するためには、管理者等が民間事業者に期待するポイントを分かりやすく説明する必要がある。
② 考え方
・ PFIを実施するに当たり、管理者等が特に何を期待しているのか、例えば、「具体的にどこに重点を置くべきか。」、「リスク移転のポイントはどこか。」等について、管理者等の考え方を示す必要がある。
・ これらは事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)とは異なり、PFIを検討する民間事業者に管理者等が期待する役割をより明確に伝達するために示すものであることから、業務要求水準書の一部として明記されることが必要である。
第2節 業務要求水準の具体化、明確化、精緻化第2-1節 業務要求水準の明確化
1.性能規定による業務要求水準に数値的な基準を盛り込む等客観的に整理する必要性
① 課題
・ 推進委員会報告では、業務要求水準の記載内容の解釈に関して、可能な限り数値的な基準で示すべきとの方向性が示されている。
・ しかしながら、PFI事業によっては「おいしい食事」「円滑な利用」といった数値的な基準を示すことが困難な要素が含まれ、達成すべき水準を民間事業者に客観的に伝えることが難しい場合がある。
・ 業務要求水準書で示された各種要件の中に、例えば建築について設計図書を作成してみないと両立しえないことがわからない要件が含まれる等、矛盾する要件が設定される場合がある。
② 考え方
・ 業務要求水準書については、可能な限り、民間事業者が達成すべき性能について数値的な基準を盛り込む等、客観的に整理する必要がある。2
(ⅰ)提供するサービスの内容を整理して文章化し、当該サービスを構成する機能や業務に分解する。
例:病院の場合、施設については機能単位(病室、手術室、診察室、待合室、トイレ等)、運営については業務単位(給食、清掃等)に分解される。
(ⅱ)(ⅰ)で分解された個々の機能や業務の各々を、プロセスに分解する。この際、詳細に分割しすぎると仕様規定に近づくため、ある程度まとまった単位で考える必要がある。例:給食であれば、献立作成、材料調達、調理、配膳、片付け等のプロセスに分解され
る。 (ⅲ)各プロセスの重要度や、業務要求水準未達があった場合に事業全体に与える影響を評
価し、性能を規定すべき部分を特定する。
例:配膳であれば、患者へ食事を提供する時刻等。 (ⅳ)(ⅲ)で特定された部分について、質や水準を評価するために何に着目すればよいかに
ついて検討する。
例:食事の提供時刻であれば、一定の時間帯に配膳できた食事の割合等。
(ア) この場合、ただいたずらに数値化を図るのではなく、例えば以下のような手順でサービス内容を要素分解していくことが客観的な整理を行う上で有用と考えられる。
(イ) 特にサービス提供業務は、基準が定性的になるケースが多い。この場合、ISOやHAC CP(Hazard Analysis and Critical Control Point の頭文字をとったもので食品の衛 生管理システムの国際標準)等のプロセスの基準が利用可能であれば、当該プロセスの合 意により一定の品質水準を確保するなどの方法によって、客観化を図ることが考えられる。
2 業務要求水準の客観化の方法に関して、数値的な基準で示すことを基本とすべきという意見もあるが、要は、モニタリングの際に業務要求水準の達成の有無を客観的に判断できるようにしておくことが必要である。
(ウ) 数値やプロセスのような客観的な基準がなく、主観的な要素が多い場合は、顧客満足度調査やクレーム情報等に関するデータを一箇所に集約し、その履歴(トラックレコード)の分析を行うことにより、数値化や客観化の努力をすることが考えられる。こうした分析に当たっては、大量のデータの取得や管理が必要となるため、専用ソフトウェア等の情報技術の活用が有効である。
(エ) 建築物や機械設備等の維持管理業務の水準については、重要度別に維持管理度合いを評価し、全体としての維持管理の達成度合いを客観化することも有効と考えられる。
・ 業務要求水準の明確化のレベルとしては、民間事業者がサービスの提供と併せ、これに係わるリスクを評価し、これらに必要な費用を見積もることが可能な程度に具体的に示すことが必要である。
・ 両立しえない条件を設定することを避けるためには、業務要求水準書で提示する各種の性能規定による業務要求水準については、矛盾が生じないように十分な確認を行うこと、また、万が一矛盾が生じた際に民間事業者が混乱しないように管理者等にとっての優先順位を明確に示すことが必要である。
③ 留意点
・ ②(ウ)で示した主観的な評価指標の数値化、客観化は、供用開始後のデータ収集等に依存する場合もある。こうした場合は、業務要求水準書においては、対象となる業務において達成すべき大まかな水準(例:過半の利用者が満足する、等)を性能規定により示し、これを達成する方法について民間事業者に提案を求める等、PFIプロセス全般にわたる実施の仕組みを検討することが望ましい。
・ 満たすべき性能について客観的な水準を検討する際に、現状のサービス水準に比べて過剰な水準を求める傾向が見られる。しかし、サービス水準が高くなれば一般的にコストも増大することから、安易に高い水準を規定することはVFMの実現の観点から望ましいとはいえない。管理者等は、現在のサービス水準を踏まえつつ、対象施設の用途や求められる機能を検討し、不必要に高いサービス水準を設定しないよう留意する必要がある。
2.仕様規定の適切な活用
① 課題
・ 性能規定のみでは管理者等が何を求めているのかを民間事業者が把握しにくく、その結果、民間事業者がどのような提案をすべきかについてイメージをつかむことができない場合や、民間事業者からの提案内容が管理者等の意図に合致しない場合がある。
② 考え方
・ PFIでは、民間の創意工夫を最大限活用するため、性能発注の考え方に従って業務要求水準書を作成することが原則である。管理者等は業務要求水準書で満たすべき性能を提示し、民間事業者はそれを達成するための具体的手法を提案する。
・ ただし、このことは仕様規定を業務要求水準書に全く採用すべきでないということではない。民間の創意工夫を必ずしも阻害しない場合には、仕様規定を採用することも可能である。
・ 仕様規定を採用する場合は、民間事業者が提案を作成するに当たっての参考条件とするか、それとも民間事業者の提案において変更できない拘束条件とするかを明記することにより、民間の創意工夫を阻害しないようにする必要がある。また、参考情報として仕様規定を採用する場合に参考情報である旨を明記したとしても、入札参加者が管理者等の意思の表れと受け取り、実質的に拘束条件として取り扱うことにより創意工夫が発揮されないおそれがあることから、仕様規定は必要最小限のものに限定することが望ましい。
・ 仕様規定を活用することが想定されるケースの事例とその留意点を挙げると以下の通りである。
仕様規定を採用するこ とが想定されるケース | 仕様規定の例 | 留意点 |
ア)仕様規定を一部採用することにより管理者等の意図をより具体的に伝達することが可能となり、より良いV FMの達成に資す る場合 | (例:病院の清掃業務) 性能規定:手術室・無菌xxの清潔区域の清掃を行う場合には、細菌や埃が散乱しないような処理を講ずること 仕様規定の例:専用の清掃用具を使うとともに、HEPAフィルター付掃除機を使用 (仕様は参考例であり、性能規定を達成できる 提案であれば、これを遵守する必要はない。) | この場合に示される仕様は例示であり、民間事業者の提案内容を拘束するものではない。その旨明記する。 |
イ)法令等により仕様がxx的に定まる 場合 | (ごみ処理施設における機械設備の耐震) 「官庁施設の総合耐震計画基準」で規定される機械設備の耐震規定を遵守すること | この場合に示される仕様は拘 束条件で変更できないことを明記する。 |
ウ)管理者等が仕様を個別具体に指定したい場合 | (例:実験室の仕様) 仕様規定:実験室は XX ㎡とし通路側に○○を設置すること | この場合に示される仕様は拘束条件で変更できないことを明記する。ただし、仕様の指定はVFMの達成を阻害するおそれがあることから必要最 小限とすることが望ましい。 |
③ 留意点
・ 参考として仕様を示す場合には、どのような趣旨で示しているか、どの程度の変更が可能なのかを明らかにすることが必要である。特に、②の表ア)に該当するケースにおいては、民間事業者の提案が満たすべき性能を規定した上で、参考として仕様を示し、かつ変更可能であることを分かりやすく明示することが必要である(単に仕様を参考として示すのみでは、入札参加者はどの程度の変更が許容される(「失格」とならない。)のかが把握できないため、別途当該業務等に関して満たすべき性能を明確な形で示す必要がある。)。
・ 仕様規定として、図面を活用することも考えられる。ただし、図面の提示は民間の創意工夫を阻害する可能性もある。図面が民間事業者の提案を拘束することがないよう、図面を示す意図や、民間事業者の提案に期待している事項について具体的に記載することが望ましい。
・ ②の表ア)に該当するケースで仕様規定を採用した場合、提案書が業務要求水準を満たしているかの審査はあくまでも「性能を満足しているかどうか」で行う必要がある。
・ 仕様規定を採用する際に、公共施設の標準仕様に規定されたものを使用したり、標準仕様そのものを参考資料等として添付したりする場合がある。しかし、公共施設の標準仕様は、災害時の避難場所としての機能等、高度な機能を前提としたものがあるなど、必ずしも一般的に適用すべきものとは限らない。高度な機能を必ずしも必要としない施設においてこうした仕様を使うことは、不必要に高いサービス水準を求めることにつながり、VFMを低下させるおそれがある。したがって、安易に公共施設の標準仕様を参考とするのではなく、PFIにより整備する施設の用途や求められる機能を十分に踏まえた上で、公共施設としての標準仕様を用いるかどうかを検討する必要がある。
3.管理者等側の事業担当部門の関与の在り方
① 課題
・ 病院事業や刑務所、大学、研究所等の事業では、管理者等の内部に発注担当部門及び事業担当部門(学校PFIの教員、病院PFIの医師、看護師等)が存在し、相互の意思疎通が図られないことが問題になることがある。
・ この場合、発注担当部門が主体となって業務要求水準書を策定するが、あらかじめ事業担当部門との連携・意思疎通を図り、その意向をできる限り反映させる必要がある。また事業契約締結後も同様に、これらが連携・協力して施設の設計や仕様を検討することとなる。互いの連携・協力が内部的にうまくいかない場合、業務要求水準書やそれに基づいた設計書、業務仕様書に対して、事業担当部門から過剰な仕様であること(あるいは逆に必要な仕様が含まれていないこと)が指摘されることがある。また、逆に、対話を踏まえて業務要求水準の明確化を図ったにも関わらず、過剰な要求や予算に見合わない要求が事業担当部門から出される可能性がある。
② 考え方
・ 制度上、発注担当部門が事業担当部門と異なる場合でも、互いの連携・意思疎通を図り、事業担当部門の代表者を決め、この代表者が事業担当部門の意向を集約するとともに業務要求水準書の作成等に主体的に参加することが望ましい。
・ 事業者選定の段階から、施設等の設計、事業の運営段階にわたり、業務要求水準の解釈の一貫性が図られるべきである。特に、民間事業者が提案書を作成する段階と、事業者選定後の設計協議や業務仕様書の確定の段階とで解釈が異なると、事業の円滑な運営に支障をきたすこととなる。こうした事態を防止するためには、管理者等側の各部門が、事業契約締結の前後において業務要求水準の解釈の一貫性を確保するように努めるべきである。そのためには、発注担当部門が自らの責任において内部調整を早い段階から行い、責任を一元化し一貫性を確保することが必要である。
③ 留意点
・ 事業担当部門の代表者が民間事業者との対話にも参加する場合には、事業担当部門の代表者と発注担当部門との意見の相違がないよう意見の一本化に努めるとともに、責任の一元化を図る必要がある。
・ 事業によっては、事業担当部門は自らが事細かに設計や仕様を指示する従来方法に慣れているため、性能発注を前提とした仕様の確定手順に戸惑うことが考えられる。このため、発注担当部門は、性能発注の考え方について事前に事業担当部門に対する啓発を行うとともに、契約締結後に契約内容の周知が必要である。
・ サービス受益者(最終利用者:学校PFIの学生、病院PFIの患者等)が存在する場合、発注担当部門は当該の最終利用者に対して良好なサービスが提供されるよう、最終利用者の意見を聴くことや、事業担当部門に対して助言、提案を行うことも必要である。
4.業務手順を明示することの必要性
① 課題
・ サービス提供業務の比重が重く、多数の業務から構成されている事業をはじめとしたPFI事業においては、これまで個別に発注されていた個々の業務を束ねて実施すること、また設計、建設、維持管理、運営のライフサイクル全体を通じた一気通貫の手順を改善することなどによりBPR
(p.6 参照)を実施できることによる経済効果が大きい。
・ 民間事業者によるBPRの提案を促し、これを積極的に受け入れるためには、管理者等が従来方式による業務手順や業務量、人員布陣、サービスの水準等を開示する必要がある。しかしながら、現状では従来方式の業務手順等について十分な分析や情報提供がなされていないことが多い。
② 考え方
・ 管理者等は、民間事業者によるBPRの提案を可能とするために、現状の(従来方式で行われている)業務手順や業務量、それによる成果の調査・分析を行い、その結果を業務要求水準書の参考資料として添付することが望ましい。
・ BPRにより現状よりも高い水準のサービスを実現することを業務要求水準に規定し(すなわち、従来方式による現在の水準を最低限満たされるべき水準として規定した上で、それを上回る提案を求め)、民間事業者からの提案に基づいて具体的なサービス水準を客観的に決定することも一つの考えになる。
③ 留意点
・ 特に、核となる業務を管理者等が行い、周辺支援業務を民間事業者が行う事業では、民間事業者が所掌する業務についてBPRを実施するに当たり、管理者等の業務手順(病院であれば医師や看護師の業務手順)にも影響を与え、その見直しが必要となることも考えられる。この場合、落札者決定後に、民間事業者が管理者等と協議しなければ決定できない内容も多いと考えられるため、設計や運営に関する協議を通じて内容を詰める必要がある。なお、この際、管理者等は、従前の業務の実施方法が変わること、民間事業者と合意した業務手順を遵守する必要があることに留意すべきである。また、管理者等が所掌する業務のBPRについては、組織や人員体制の変更等が必要となり、管理者等側の業務手順への影響が大きいことに留意すべきである。
・ 運営開始後においても、必要に応じて業務手順の見直しを行うことは有効である。
5.官民のコミュニケーション
① 課題
・ PFI事業においては、民間の創意工夫を発揮することにより、VFMの一層の向上を図ることが期待されており、そのためには官民が適切なコミュニケーションを図り民間事業者の意見を踏まえながら業務要求水準書を作成する必要があるが、実態として必ずしも適切なコミュニケーションが図られていない事例もある。
・ 特に民間事業者が関連するサービスを担った経験のない事業分野(刑務所、裁判所等)や、官民双方の経験が少ない事業分野では、そもそも事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)から性能規定を作成することが難しく、結果として、書面上のやり取りのみでは管理者等にとっての常識と民間事業者の認識が埋まらない可能性が高い。このような場合、効果的なモニタリングが難しくなる上、支払メカニズムの根拠も曖昧になり、VFMの達成が困難になる事態が想定される。
・ また、事業によっては警備上の観点等から業務要求水準書への諸条件の詳細な規定ができない場合も考えられる。
② 考え方
・ 管理者等が単独で業務要求水準書を作成するのではなく、行政実務と実態に関し、情報公開を徹底し、民間事業者との意識や認識のギャップを埋めること、そこで得られた内容を可能な範囲で業務要求水準書に反映していくことが必要である。例えば、以下のような方法が考えられる。
(ア)管理者等による業務内容、人員布陣、予算、業務手法等に関する積極的な情報公開
(イ)類似の他施設の見学・意見交換
(ウ)入札公告前段階における民間事業者からの意見の収集等の様々な対話
・ また、技術アドバイザー等と十分な議論を行い、管理者等の意図が適確に伝わるような業務要求水準書を作成するための表現の工夫がよりいっそう求められる。
・ また、書面による管理者等の意図の伝達を補完するため、入札公告後においても「PFI事業に係る民間事業者の選定及び協定締結手続きについて(平成 18 年 11 月 22 日PFI関係省庁連絡会議幹事会申合せ)」に従った対話、質問回答などによって、業務要求水準書をより適切なものに修正していくことが望ましい。この際、特に民間事業者が関連するサービスを担った経験のない事業分野については、民間事業者に対して必要な情報が適切に提供されているかを確認すべきである。
<導入可能性調査段階>
・ 業務要求水準書はPFI事業の根幹をなすものであり、その骨子は早期に作成する必要がある。
・ PFI事業の導入可能性の把握あるいはコスト調査等のためにマーケットサウンディングを行う際、業務要求水準書の骨子を民間事業者に提示する。マーケットサウンディングにおいて得られるコスト情報やVFM向上のための提案を踏まえ、業務要求水準書案を作成し、実施方針に添付し公表する。なお、情報を開示する際には、民間事業者間のxx性を害しないよう配慮する必要がある。
・ 官民のリスク分担についても、導入可能性調査段階で検討を行うことが望ましい。
<実施方針公表以降>
・ 業務要求水準書の内容を充実させるため、実施方針等の公表に際して行うヒアリング、質問回答、さらに個別・相対での対話等も活用し、適宜、業務要求水準書案の内容の修正や追記を行う。
・ 官民のリスク分担は、事業契約書として具体化、明確化されるべきものであるが、実施方針公表段階でその概要を開示することも、民間事業者に管理者等の考え方を示す上で有効である。例えば、リスク分担表に加え、リスクに関する部分について重要な取引条件を記載する書面を添付することも考えられる。
<入札公告後>
・ 公表された業務要求水準書に関する確認事項については、書面による質問回答を行うことが一般的であるが、それに加えて、必要に応じて応募者ごとに対話を行うことが考えられる。
・ 記述が不明確である場合は、対話を通じてこれを明確にする必要がある。
・ 民間事業者からの提案は、管理者等にとって、より良い提案の余地があると思われるもの、あるいは過剰な提案となっているものが含まれている可能性がある。このため、管理者等は、民間事業者の提案をそのまま採用するのではなく、対話により管理者等が求めるサービスに最適化する必要がある。3
①対話を行う方法
対話を行う場合には、xx性・透明性等を担保するため、実施方針等においてその旨を明記し、書面による質問回答、説明会の実施等の方法により、入札参加者全員に対して共通の方法で行うとともに書面により記録し、その内容を共有することが基本となる。また、入札参加者ごとに対面で対話を行うことにより、発注者のニーズに適合した提案が得られる可能性が高まる場合も考えられるため、必要に応じて入札参加者ごとに対面による対話を行うことも考えられる。この場合において、管理者等は、入札参加者の提案について改善を求めることも考えられる。
②対話の内容の公表
入札参加者全員に対して行う対話については、原則としてその内容を全て公表することとなる。他方、入札参加者ごとに個別に対話を行う場合には、提案書に関する情報が含まれる場合も考
えられるため、公表すべき情報と秘匿すべき情報を明確化する必要がある。なお、xx性・透明性等を担保するため、秘匿すべき情報は、公表することにより民間事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのあるものに限られる。さらに、提案書に関する情報を秘匿するとしても、対話により入札参加者の提案が改善される場合には、その改善に係る過程の概要について公表する必要がある。
③ 留意点
・ 入札公告後の対話は、管理者等の意図を民間事業者に伝えるための有効な手段の一つであるが、あくまでも入札公告時に業務要求水準書を具体的に、明確に、精緻に示していくことがまず必要
3 EUの競争的対話方式では、入札参加者別に契約に関するあらゆる側面(価格も含む。)について対話を行うことができることとされている。この場合の対話とは、提案により解決策を見出すための価格要素を含めた包括的な対話であり、対話終了後、競争の対象となる解決策を固定し、競争環境を保持したまま入札に付すことになる。入札後は軽微な修正のみしか認められず、対話により価格を含めた自由な交渉ができるという仕組みではない。わが国の入札制度における対話は、入札前段階における双方向の理解を深めるための行為を意味するが、価格要素を含めた対話を実施できるか否かに関しては慎重な検討を必要とする。また、わが国の入札制度における対話の在り方と位置付けについては、更なる検討が必要である。
であることに留意する必要がある。
・ 特に民間事業者が関連するサービスを担った経験のない事業分野(刑務所等)や、官民双方の経験が少ない事業分野では、以下に留意する必要がある。
(ア)あくまでも、入札公告時に業務要求水準書を具体的に、明確に、精緻に示していくことが前提であるが、事業の開始後になって実態に合わせるために業務要求水準の見直しが必要となる可能性がある。そのため、事業契約締結後の対話により、業務要求水準の充実を図ることも考慮すべきである。例えば、施設の設計書、業務仕様書が作成される契約締結から施設供用開始までの間、施設供用開始後一定期間後において、事業の進捗に併せて業務要求水準書やモニタリングの仕組みを見直すことが考えられる。
(イ)その際、必要に応じて、契約にも当該の見直しを反映する。このような見直しが必要と考えられる事業においては、あらかじめ、業務要求水準書及び契約書に見直しのための検討を行う旨を記載することで、業務要求水準の改善が必要であることに対する官民双方の注意を喚起することが期待できる。
(ウ)上記の場合でも、他の民間事業者とのxx性及び民間事業者や金融機関が取るリスクに対する配慮は必要である。したがって、できる限り入札公告段階で条件を具体化し、変更される可能性がある部分については、「協議」に委ねるのではなく、「サービス内容の変更」(原則対価の変更を伴う。)として扱うべきである。
6.業務要求水準書に対応する予定価格の設定
① 課題
・ 予定価格を算定した時期には業務要求水準の内容が固まっていないため、その後に作成された業務要求水準が予定価格に見合わないものになることがある。
・ 特に、管理者等の内部や関係者の意見を幅広く取り入れたり、民間事業者からの提案を十分な対話をしないでそのまま採用したりすること等により、結果として総花的な業務要求水準書になり、予定価格に見合わない内容となる場合がある。
② 考え方
・ 本来、業務要求水準は導入可能性調査段階で骨子が作成され、その後実施方針公表を経て公告に至るまでの間に具体化、詳細化され、業務要求水準書が確定した後にその内容を踏まえて予定価格が設定されるべきである。
・ しかしながら、現実には業務要求水準が具体化、詳細化される前の段階で、予定価格が事実上設定されることが多く、具体的には、PSC、PFI-LCCが導入可能性調査段階で算定され、これに基づいて予定価格が算定されることが多い。このような場合には、この段階までにできるだけ業務要求水準書の重要部分を詰めておくことによって、予定価格と業務要求水準の内容とが乖離しないように努めるべきである。
・ 業務要求水準書は、プロセスが進むごとに具体化、詳細化される。これに併せて、予定価格が業務要求水準書と乖離していないかをその都度確認するとともに、確認の結果、乖離が認められた場合には、予定価格又は業務要求水準を柔軟に見直すことにより、それを是正する必要がある。特に、実施方針公表後の官民の間での対話等に基づいて業務要求水準の内容が修正された場合は、予定価格との乖離が生じていないかを確認することが必要である。4また、管理者等が修正を行う場合には、適正な競争環境を確保するため、修正できる期間を事前に明示しておくことも必要である。
・ PSCの算出については、業務要求水準を満たす管理者等の案として基本設計を実施し、算出する方法が考えられるが、費用やスケジュールの観点から全ての事業で適用可能な方法とはいえない。「VFMに関するガイドライン」において、「(設計費、建設費、維持管理費については)従来方式で実施する場合の設計費、建設費、維持管理・運営費と同様であり、管理者等が必要な調査を実施した結果により、また、過去の実績、経験等に基づく等の方法により算出されることが望ましい。ただし、過去の実績等を用いる場合は、対象事業を現時点で実施した場合に想定される費用とする点に留意する必要がある」とされており、必ずしも設計が必要なのではなく、各種データから合理的に算定することも有効である。
③ 留意点
・ 国が発注するPFI事業では、予算決算及び会計令の規定を踏まえ、現状では予定価格が開示さ
4 業務要求水準が予定価格から乖離する理由として、①予定価格設定と業務要求水準策定のタイミングの差異(議会対策等の観点から、業務要求水準を具体化・詳細化する前の段階で債務負担行為を設定し、これに基づいて予定価格を設定することがあり、その時期のずれから乖離が生まれる。)、②業務要求水準が民間事業者の意見や提案を聴取しない限り確定しないため、結果として予定価格設定に反映されないこと等が考えられる。これらの背景には制度上の予定価格の硬直性の問題がある。
れていないことから、民間事業者は予定価格を知ることができない。一方、地方公共団体が実施するPFI事業では約2/3の事業で予定価格(公募プロポーザルの場合は参考価格や予算額)が提示されている。5
5 コストと業務要求水準書の整合性については、推進委員会報告において、①要求水準の内容をまとめた上でPSC、 PFI-LCCを積み上げ、要求水準に即した「予定価格」を設定すること、②可能な限り要求水準の明確化を図った上で、上限拘束性のない参考価格を提示する、又は、「予定価格」の算定根拠を示すこと、が具体的な対応策として示されている。これらに加え、「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(平成 17 年 3 月 31 日法律第 18 号)では、公共工事について高度な技術又は優れた工夫を含む技術提案を求めたときは、その審査の結果を踏まえて予定価格を定めることができるとされており、こうしたアプローチによるPSC、予定価格の精緻化ついても検討する必要がある。
第2-2節 達成すべき基準の明確化
1.業務要求水準に対応したモニタリング指標の設定及びモニタリングの基本計画の作成
① 課題
・ 業務要求水準書に示された性能規定による業務要求水準を基準に、実際に提供されるサービスについて、その達成度が確認される必要がある(モニタリング)。
・ しかしながら、業務要求水準書に対して適切なモニタリング項目が必ずしも設定されていないこと、さらにはモニタリングを実効的に行う手順についての認識が不十分であること等により、モニタリングが有効に機能していない場合がある。
② 考え方
・ モニタリング指標をできるだけ客観的に示すことで、サービスの履行状況について官民の齟齬が生じないようにする必要がある。
・ 業務要求水準書で提示した性能規定による業務要求水準に対して、それらの達成状況を計測するためのモニタリング指標をあらかじめ検討し、業務要求水準書に示すことが必要である。
・ モニタリング指標の設定方法は事業の性格により異なる。
(ア)病院事業のように、個別の業務に対するモニタリング指標の検討を行うことが必要である場合、少数の指標で事業全体をモニタリングすることは困難である。第2-1節1にあるような、サービス受益者(最終利用者)の満足度等のデータをモニタリング指標として活用することも考えられる。
(イ)廃棄物処理事業のように、処理量や排出基準といった客観的な数値基準を満たすことが前提となる施設を運営する事業の場合には、比較的少数の基準等で施設のパフォーマンスを規定することが可能である。
・ 比較的事例数が多い施設整備を中心とした事業であっても、現状では「どの程度モニタリングを行う必要があるか」については具体的な基準がないため、管理者等が基準を示す必要がある。
・ 以上をまとめると、業務要求水準書の提示と併せて、性能規定による業務要求水準ごとに、達成状況を見るためのモニタリング指標と、その計測方法や計測頻度について可能な限り管理者等が枠組みを示すことが必要となる。これらをモニタリングの基本計画として取りまとめ、公募書類の一つとして提示することが必要である。
・ ただし、モニタリングの具体的な内容が民間事業者の提案により影響を受けることもあることを踏まえると、モニタリングの基本計画を入札公告の段階で細部まで詰めて提示することは困難な場合がある。このような場合にあっても、モニタリング指標ごとに、可能な限り計測の具体的な方法や頻度を入札公告時に併せて示すことで、民間事業者がモニタリングにかかる費用を見積もることができるようにすることが必要である。
・ 各指標の測定結果が管理者等の求める基準に達しなかった場合に修復するための期間(修復期間:この期間内に修復された場合には、ペナルティの対象外とする。)を明示することで、サービスの水準を規定することも必要である。修復期間としては、例えば4段階程度に区分し、重要度に応じて修復期間を設定することが考えられる。
・ 修復期間が明示されていない場合、民間事業者にとってどの程度の時間で修復できる体制を整え
ればよいのか不明であるため、見積りが困難となる。修復期間が市場の慣行に合致していないと、高いコストが見積もられることになる。したがって、マーケットサウンディングの際に案を示すこと等により、市場の慣行に従った修復期間を設定することが必要である。
③ 留意点
・ モニタリング指標は、できる限り性能規定によることが望ましい。ただし、サービス提供業務において、品質管理のプロセス(ISO、HACCP等)を合意した場合は、当該プロセスの遵守状況等をモニタリング指標として設定することも考えられる。
・ モニタリングは費用負担や労務負担を伴うものであるため、その効果と負担を考慮して、指標や計測の頻度、方法等を設定する必要がある。具体的には、常時確認するモニタリング指標は重要性の高い目標を中心に設定する、類似したモニタリング項目は一括した指標により確認するといったように、モニタリング指標間の軽重をつけること等が考えられる。
・ モニタリングの基本計画で提示されたモニタリング指標及び支払メカニズムは原則としてそのまま運営段階に適用される。しかしながら、民間事業者から提出される実際の提案書及びそれに基づく業務仕様の内容によっては、変更が必要となることも多いと考えられる。そのため、これらを全く変更しえないものとすると、実態と乖離して効果的なモニタリングができない可能性もある。そこで、モニタリングの基本計画に基づき、モニタリング方法の詳細を定めたモニタリングの実施計画を作成する手順を採用することが合理的と考えられる。
2.事業目的に合致したモニタリング指標と支払メカニズムの連動
① 課題
・ モニタリング指標を総花的に設定して支払メカニズムと連動させると、重要な指標が埋没し、事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)に見合ったものとならなくなるおそれがある。
・ 業務間で類似のモニタリング指標を規定する場合に、減額の重複が生じないよう留意する必要がある。
・ 各モニタリング指標を満たさなかった場合の減額幅がバランスのとれたものでないと、民間事業者がペナルティによる減額を回避しようとして、逆にサービスの低下をもたらすこともある。例えば、海外の列車サービスの事例においては、運休とする場合の減額が大きいために、一本運休して列車の遅延を改善するという手法がとられず、遅延を継続させて大きな減額を回避し、結果として利用者の利便性が低下するという例が指摘されている。
・ また、過剰な減額を設定した場合、応募者のリスクを増大させ、応募者の参加意欲の低下や過剰な予備費の設定につながり、VFMの低下を招く可能性がある。
② 考え方
・ PFI事業の支払メカニズムには、公共サービスの適正かつ確実な実施を確保するため、民間事業者に業務要求水準を満たすサービスの提供に対して強い動機付けを与えることが期待される。その意味で、支払メカニズムは、業務要求水準の達成状況を確認するためのモニタリング指標と一体的に構築される必要がある。
・ 管理者等は、原則としてこれらを入札公告時に一括して提示することが必要である。
・ そのためには、管理者等の事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)に即したサービスが提供されるよう、性能規定による業務要求水準ごとの重み付け等を明確にした支払メカニズムを構築する必要がある。
・ 性能規定による業務要求水準ごとの重み付けに当たっては、例えば以下のような要素を考慮して総合的に判断することが考えられる。
(ア)当該性能規定による業務要求水準がサービスや成果に与える影響の度合い(例えば病院であれば手術室は重要だが、会議室は比較的軽微である、等)
(イ)当該性能が確保されない場合に管理者等に与える経済的影響を含めたリスク(例えば病院であれば診察ができない状態は医業収入の減少になる)
・ 業務要求水準未達時のペナルティについては、過剰な減額により民間事業者の事業の継続に支障が生じないよう、収支への影響を踏まえた設計が必要である。
(アベイラビリティとパフォーマンスについて)
・ 施設によっては、業務要求水準を満たしているか否かを、施設のアベイラビリティ6ないしサービスのパフォーマンス7という2つの指標でチェックすることが考えられる。
6 ここでいう「アベイラビリティ」とは、施設の「利用可能性」を指す。「施設が利用可能な状態である」場合に対価をはじめて支払うこととすることにより、施設の不具合や維持管理の不備により施設が利用できないリスクを選定事業者に移転することになる。
7 ここでいう「パフォーマンス」とは、契約上の義務の履行を意味し、管理者等が業務要求水準で示したサービスの履行状況を指す。
・ アベイラビリティとパフォーマンスという概念を用いる場合には、両者の関係を明確にする必要がある。特に同じ事項について二重に減額されることがないように、どのような場合にアベイラビリティに基づく減額のみがなされ、どのような場合にアベイラビリティとパフォーマンスの双方に基づいて減額されるのか等を明確に規定しておくことが望ましい。
③ 留意点
・ いわゆるペナルティポイント制(業務要求水準未達に対し減額ポイントを付与し、一定の点数以上になったときに実際に減額する仕組み)では、各項目の重み付けの工夫や、業務要求水準に規定されたサービス水準を超えた場合にリカバリーポイント(ペナルティポイントと相殺できるポイント)を付すことによって、より柔軟にインセンティブを与える仕組みを構築することも考えられる。
3.組織品質や業務全体の傾向を評価する指標の活用
① 課題
・ 多数の請負業務を統括して管理する必要がある事業では、サービスや業務の質、セルフモニタリングの実効性、管理者等との協力体制等の選定事業者のマネジメント能力がPFI事業のサービス水準に影響を与える場合がある。このような場合、選定事業者の組織品質をいかに保持していくかが重要となる。
・ サービス提供業務が多岐にわたりモニタリング指標の数が多い事業では、モニタリングの実効性が低下することが懸念される。こうした事業では、サービス全体が適切に提供されているかどうかについて、業務ごとのモニタリング指標だけでは必ずしも十分にモニタリングできない可能性がある。
② 考え方
・ 選定事業者のマネジメント能力の重要度が高い事業では、業務ごとに示された性能規定による業務要求水準とは別に、組織品質を評価する指標を活用することで、民間事業者の組織品質を維持し継続的なサービス水準の改善を行うことが考えられる。
・ サービス提供業務が多岐にわたる事業においては、モニタリング指標が個別業務に対して設定されることから、業務全体の傾向を見るための経営管理的な指標を活用することで全体としてのサービス水準の傾向を把握することが有効と考えられる。
・ 国内においても、一部の病院事業においては、業務要求水準書に「統括マネジメント業務」(統括管理業務)が規定されており、選定事業者に求める要件が示されている。なお、統括管理業務の目的として、「本業務は、事業者が受託した個別業務の全てを統括することにより、適切なコスト管理及び適切な品質管理を行う」等が明記されているほか、「発注者のパートナーとして、管理者等が行う業務についても助言・協力を行い、病院の健全経営に貢献する」こと等が示されている。
・ なお、統括管理業務は、あくまで民間事業者が行う業務の統括を担うものであり、管理者等の所掌する業務(例えば病院であれば医療行為、刑務所であれば刑務官の行う業務等)や、公共サービスの提供の責任を代替するものではないことに留意が必要である。
③ 留意点
・ 経営管理的な指標の活用に当たっては、第2-1節1で示したような、履歴データを分析して利用することも検討すべきである。
・ どのような指標を使用する必要があるかについては、個別の事業の性質に応じて決定すべきであり、安易に他の事業のものを用いたり、パッケージ化されたものを用いたりするべきではない。
4.実効的なモニタリングの仕組みの構築
① 課題
・ モニタリングの仕組みをつくっても、管理者等がモニタリングを民間事業者任せにしており、実際にはモニタリングの仕組みが機能しない可能性がある。
・ モニタリングにおいて重要なのは、業務要求水準書に則したサービス水準を確保することであるが、特にサービス提供業務の比重の重い事業については、サービス提供業務を実際に開始した後に新たに判明又は発生する事項も多く、当初想定していたモニタリングの項目、手順等をそのまま適用するのでは実効的なモニタリングが行えないことが多いと考えられる。
② 考え方
・ モニタリングの最終的な責任はあくまでも管理者等にあることから、管理者等は民間事業者が実施するセルフモニタリングの結果を監視し、評価を行う必要がある。この観点から、モニタリングの仕組みの構築に当たっては、モニタリング結果の監視や評価を行いやすい、実効的なものとすることが必要である。
・ サービス提供業務の比率が重く、多数の業務から構成されている事業等については、管理者等及び民間事業者により、定期モニタリングにおける評価の事実確認及び確定行為をする場として、協議を行う場を整えること(例えば定期モニタリング委員会の設置)が有効である。協議においては、セルフモニタリングの結果及び管理者等の評価を対照させながら、両者の認識を一致させ、モニタリングの基準を共同で作成していくことが想定されている。また、例えば、初めの1年間は原則ペナルティを課さないとすることも考えられる。
③ 留意点
・ モニタリング専用のソフトウェア(例えば、誰がいつモニタリングを行う必要があるかに関するリアルタイムでの指示、入力フォームの提供、入力結果の分析をxx的に行うことができるソフトウェア)を用いることにより、多数の指標があっても効率的かつ効果的にモニタリングを行えるようにするとともに、モニタリング結果について管理者等や金融機関等の関係者にアクセス権限を与えることで、随時モニタリング結果を確認可能とし、民間事業者に緊張感を持たせること等も有効と考えられる。もとより、これらの導入に当たっては、管理者等の状況に応じ、適宜必要性を個別に判断すべきものであることは言うまでもない。
・ モニタリング結果の検証を行うためには、十分な期間にわたり、データを蓄積、分析することが重要である。契約締結までのプロセスに関与した担当者やアドバイザーが管理者等側に加わるなど、管理者等側に十分な体制を確保することにも留意すべきである。
・ モニタリングの際に作成される書類について、管理者等、民間事業者双方にとって効率的かつ効果的なモニタリングが行えるような形で、標準化を進めていくことも考えられる。
5.モニタリング結果の公表と第三者評価
① 課題
・ 「モニタリングに関するガイドライン」においては、事業の実施に係る透明性を確保するため、 PFI事業契約等に定めるモニタリング等の結果について、住民等に対し公表することが必要である旨が示されている。
・ 一方、管理者等に対するアンケート調査8によれば、モニタリング結果を公表しているのは、全体の約2割の事業にとどまっている。
② 考え方
・ モニタリングの仕組みや指標及び結果を積極的に公表するなどの仕組みを取り入れることで、透明性の確保に加え、納税者に対する説明責任を果たすべきである。
・ モニタリングの結果は、ホームページ等により公開することが考えられる。
・ モニタリング結果について、第三者による評価を受けることも検討すべきである。例えば、一部の指定管理者制度において取り入れられているように、納税者である住民(あるいは施設の利用者)を含めた協議会により評価を行うことも考えられる。あるいは、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)レポート等の公表の際に行われているように中立的な第三者等による意見書を添付することも考えられる。
・ 各事業でモニタリング結果の公表を進めることにより、ノウハウの共有が進み、わが国のPFI全体の水準が向上することが期待される。
・ また、業務要求水準書、モニタリングの実施計画、モニタリング結果を併せて公表することにより、事業類型ごとのモニタリング手法の精緻化(定型化)がなされ、官民双方の準備負担の軽減並びにPFI事業の水準向上が期待される。
③ 留意点
・ 民間事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある事項については、開示に当たり配慮が必要であるため、モニタリングの実施計画の作成時点で取決めを行う必要がある。
8 平成 19 年度内閣府調査による。
第2-3節 業務要求水準・モニタリング・支払メカニズムの三位一体の検討
① 課題
・ 第2-2節で整理したように、業務要求水準はモニタリング及び支払メカニズムと密接な関係にあることから、これらを一体的に検討し、入札公告時にまとめて民間事業者に提示する必要がある。しかし、実際には一体的な検討が行われず、各々の関連性が不明確なまま民間事業者に提示されることが多く見られる。
② 考え方
・ 導入可能性調査の段階から、業務要求水準、モニタリング、支払メカニズムを一体的に検討する必要がある。
・ 具体的な検討フローを、各段階における着眼点を中心に整理すると以下の通りである。
(ア)導入可能性調査段階
・ 導入可能性調査段階では、業務要求水準書と併せてどのようなモニタリング指標、支払メカニズムが想定できるかについても検討し、業務要求水準書の骨子及び重要な取引条件を記載する書面を作成する。
・ その際は、運営段階に入っている類似事例等も参考にすべきである。
(イ)公募準備段階
・ 応募者に十分な情報を与え、xx性を確保するためには、公募書類において、業務要求水準書の提示に加え、モニタリングの基本計画、事業契約書(案)を提示することにより、モニタリングの基本的枠組みや支払メカニズムについても一括で提示することが必要である。
(ウ)事業者選定段階(入札公告後)
・ モニタリングの基本計画で提示するモニタリング指標及び支払メカニズムは原則としてそのまま運営段階に適用されるものであるが、実態に則した変更は可能とすべきである。
・ 具体的には、民間事業者の提案書の内容やそれに基づいて提示される業務仕様を踏まえて、モニタリングの基本計画に基づいてモニタリング方法の詳細を定めたモニタリングの実施計画を改めて作成するという手順を採ることが合理的と考えられる。
・ モニタリングの方法については、官民の対話の中でも、その内容について確認を行うことが適当である。
業務要求水準・モニタリング・支払メカニズムの三位一体の検討フローの例
第3節 その他の課題
1.事業者選定後の仕様の確定
① 課題
・ 性能発注を旨とするPFI事業においては、提案段階では詳細な内容が詰まっておらず、事業者選定後に管理者等と民間事業者間の協議を経て設計書や仕様が最終的に確定されることが多い。この際、民間事業者が想定していなかった様々な要求が管理者等からなされ、対応を求められることがあり、かつそれが民間事業者の業務の範囲を超えている場合が見られる。
・ 事業者選定後に仕様が大幅に変更されることを想定した場合、民間事業者は多くの予備費を念頭におかざるを得なくなり、結果としてVFMの発現を阻害する要因となる。
② 考え方
・ 原則として、契約締結時に業務要求水準を満足する民間事業者の提案内容に基づく仕様の主要部分を確定し、その後は価格改定を伴うサービス内容の変更(「PFI事業契約に際しての諸問題に関する基本的考え方」第1章参照)として対応することが、不必要な予備費の削減につながる。また、契約締結後は設計協議等により詳細化していくことになるが、あくまでも詳細化であって契約締結時に合意した仕様を超えるものについては価格改定を伴うサービス内容の変更として対応することが望ましい。ただし、民間事業者側も、例えば費用が実質的に増加しない場合には管理者等の要請に応じるなど、柔軟に対応することが望まれる。
③ 留意点
・ 落札者の決定から契約締結までの期間を十分確保し、具体的な業務内容について、官民双方で十分に詰めることができるようにすることが望ましい。
2.優れた業務要求水準書作成ノウハウの蓄積・継承
① 課題
・ 業務要求水準書の理念や対象事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を理解していても、経験が十分でないこと等により、適切な性能規定や仕様規定の設定ができないケースが少なくない。
・ 特に地方公共団体においては、PFI事業に関する基本的考え方や導入手順等についての理解は進んでいるものの、業務要求水準書の作成や性能規定の設定は、実務知識としては新しい分野となるために内部に経験の蓄積がほとんどない場合が多いことが想定される。
② 考え方
・ 上述した課題を解決するためには、特に、実施件数が重ねられ、今後需要が多いと考えられる分野の事業について、管理者等側でPFI事業を経験した人材の知識・ノウハウの共有を進め、業務要求水準書のノウハウのプラットフォームを作成することが有効と考えられる。具体的には、以下のような取組が考えられる。
(ア)知識・ノウハウの集約と蓄積
・ 当該分野の事業に関する知識・ノウハウを集約させ、蓄積させることが考えられる。業務要求水準書の内容は事業分野別に異なることから、関係団体等が相互に情報提供・連携することが考えられる。
・ 上記のための具体的な方法として、既に施設の供用が開始されている事業に対して、書面やヒアリング等による事後調査を行い、ベストプラクティスを蓄積するとともに、発注段階あるいは運営段階で生じた課題や対応策を整理することが考えられる(英国NHSではプロジェクトの事後評価を行うための「Good Practice Guidance」が整備されている。)。
(イ)業務要求水準書の標準化の推進
・ (ア)の実施において、案件同士の比較を容易にするために、業務要求水準書の様式などの標準化を図ることは有益と考えられる。
・ さらに、分野別の業務要求水準書の標準化を進め、(ア)で得られた課題のフィードバックにより、継続的な改善を行うことが有効である。
(ウ)管理者等への支援体制の充実
・ 業務要求水準書を作成するに当たり、管理者等がこれまでに生じた課題も踏まえた検討を行えることが望ましい。そのための仕組みとして、以下の方法が考えられる。 (ⅰ)PFI事業の発注担当者や発注を行う部署に対し、業務要求水準書の作成方法に関する
研修等を行う。 (ⅱ)既にPFI事業を経験した人材が、同一団体又は別の団体に出向し、別の事業の実施時
に関与する。
③ 留意点
・ 人事異動等により、経験ある職員のxxxxが活用されない可能性があるため、職員が継続して業務を担当するための仕組みが存在することが望ましい。
・ ②の(ウ)において、研修等を行う者としては、先行案件の発注担当者やアドバイザー、所管官庁のPFI担当者などが考えられる。
第4章 地球温暖化対策の観点から求められること
① 課題
・ エネルギー起源のCO2 排出量を削減する具体的な手法としては、(1)エネルギー効率の高い設備
(省エネルギー設備)の導入、(2)xxx発電、風力発電等の自然エネルギーの利用がある。
・ 特に前者は、当該事業のPFI-LCC低減に寄与するとともに地球温暖化対策としても有効である9ことから積極的に推進されるべきであるが、現状ではエネルギー関連施設、エネルギーコスト(光熱水費)、エネルギーマネジメント(エネルギー使用量の測定・分析及びその結果を踏まえた運用改善を通じ、エネルギー利用における環境性と経済性を継続的に向上させるための取組を行うこと)に対する管理者等の意識が必ずしも高くない。
・ 具体的に、PFIにおける現状の省エネルギーに関する扱いをみると、(1)具体的な評価項目に省エネルギーが含まれず、かつ光熱水費もPFI-LCCに含まれていない事業と、(2)省エネルギーについて評価項目に含まれているが、光熱水費はPFI-LCCには含まれていない事業が大半を占めている。しかし、以下のような課題が生じている。
(ア) 光熱水費をPFI-LCCに含まず、かつ省エネルギーが評価項目に含まれていない(価格評価の対象がイニシャルコストのみ)場合、高効率の省エネルギー設備は一般的に割高であるため、事業者提案において採用されにくい。すなわち、初期投資が少ないが省エネルギーという観点からは劣っている提案に高い評価がついてしまう可能性がある。
(イ) 省エネルギーが評価項目に含まれている場合でも、それによって節減できるコストに見合った点数が配分されていなければ、PFI-LCCで見れば劣る提案が採用されてしまう可能性がある。
(ウ) 将来の省エネルギー効果を採点項目にしても、実際にどの程度の削減効果が見込めるのか、採点者にとって判断が難しいことがある。
・ このように、これまでのPFI事業においては、省エネルギーに関する民間事業者の創意工夫を引き出す仕組みが構築されていないことが多く、高効率な省エネルギー設備の導入が進んでいない。また、ほとんどの事業で、運営段階において省エネルギーを促進するための具体的な手法が導入されていない。
・ 以上の結果、光熱水費の低減によりPFI-LCCを低くすることができるにもかかわらず、それがなされていない可能性があるといえる。
・ 地球温暖化防止をより積極的に推進するためには、自然エネルギー等の利用も有効であるが、現時点においては、一般的に高コストとなることから、経済原理に基づいた導入が期待できないという課題がある。
② 考え方
・ 管理者等は、省エネルギーの推進がCO2 排出量削減とPFI-LCC低減とを同時に達成できる重要な取組みであることを認識し、これがPFI事業における地球温暖化対策の基本となることを理解する必要がある。
9 環境省の算定結果によるとわが国の温室効果ガス排出量のおよそ9割はエネルギー起源CO2(エネルギーの使用に伴い発生する二酸化炭素)であり、多くのPFI事業が該当する「業務その他部門」では基準年比で大幅な増加となっている。また、政府の地球温暖化対策推進本部等からエネルギー起源のCO2 排出抑制対策が重要であることが指摘されている。
・ 管理者等は、民間の創意工夫を発揮しやすく経済原理に基づいて省エネルギー(CO2 排出量の削減)が達成される事業スキームとなるよう、配慮することが必要である。
・ 現状のPFI事業をエネルギーの観点から整理すると、次のような3つの事業スキームに類型化できる。
事業類型 | エネルギーに関する役割分担 | |
光熱水費負担(エネルギー調達) | エネルギーマネジメント | |
類型1 | 民間事業者 | 民間事業者 |
類型2 | 管理者等 | 民間事業者 |
類型3 | 管理者等 | 管理者等 |
・ 課題で指摘したような問題点を解決し、CO2 排出量を削減するための具体的な手法としては、類型 1 のように光熱水費をPFI-LCCに含める10ことによって、省エネルギーのインセンティブを組込む方法が最も有効と考えられる。
(ア) 民間事業者は事業構造に組み込まれたインセンティブに応じて、エネルギーに関して設計から運営・維持管理までを一貫して最適化することが可能となる。
(イ) その結果、イニシャルコストが割高であっても、光熱水費を含めたPFI-LCC低減が実現できる場合は、省エネルギー設備の積極的な導入が期待できる。
(ウ) 運営期間中における省エネルギーの実現が自らの利益となることから、主体的なエネルギーマネジメントが実施され、継続的に省エネルギー推進に向けた創意工夫が発揮される。
・ 運営段階における省エネルギーを推進するためには、民間の創意工夫を活かしたエネルギーマネジメントが重要であり、光熱水費をPFI-LCCに含めることが困難な場合は、エネルギーマネジメントを民間事業者の業務範囲として位置付けることが望ましい。
・ 管理者等がxxx発電等の自然エネルギー設備の導入を求める場合、現時点においては、経済原理に基づいた導入が期待できないことから、業務要求水準書等において具体的に設備名称、能力等の諸条件を規定する必要がある。
10 ここでは、エネルギー(電気・ガス・水道等)の調達を民間事業者の業務範囲とし、管理者等が支払うサービス対価に光熱水費を含めることを指す。なお、VFM評価の際には、PSC及びPFI-LCC双方に参入する必要がある。
施設整備費
エネルギー関連施設費
運営費
維持管理費
光熱水費
ライフサイクルコスト
従来型設備
光熱水費
(高)
エネルギー関連施設費
(低)
光熱水費を事業費に含めると...
LCC削減
エネルギー関連施設費
(高)
光熱水費
(低)
VFM拡大
省エネ設備
イニシャルコスト重視での施設選定
ライフサイクルコスト重視での施設選定
図 エネルギー関連施設選定におけるイニシャルコスト重視型とライフサイクルコスト重視型との比較イメージ図
【類型1】 【類型2】
図 省エネルギー実現のための事業スキーム例
③ 留意点
・ 特に事業規模が大きい事業や総事業費に占める光熱水費の割合が高い事業については、管理者等にとってもメリットが大きいと考えられるため、原則として光熱水費をPFI-LCCに含めること(類型1)とすべきである。
・ 民間事業者にLCCO2(当該事業の事業期間中に排出されるCO2 の総量)の提示を義務付け、審査における非価格評価として適切な点数を付与することは、上記3類型に共通して有効な手法である。
・ 事業全体のリスクの最小化に資するよう、エネルギー関連リスクを把握し、適切な官民のリスク分担の在り方を検討する必要がある。
・ 主たるエネルギーの利用者が管理者等であるなど、民間事業者による需要の管理ができないにも係わらず、民間事業者に不適切にリスクを負担させることがないよう留意する必要がある。
・ 民間事業者にとって過度な負担とならないよう、電気・ガス・水道の単価変動と使用量変動を考慮したサービス対価の改定方法をあらかじめ設定しておく必要がある。
(参考:類型1におけるリスク分担の考え方の例)
リスクの種類 | リスクの内容 | リスク分担の考え方 | |
運営開始時 | 運営条件に起因する計画と実需の乖離 | 提示された運営の前提条件(職員数、就業時間等)と供用開始後の実際の運営条件が異なることによりエネルギー使用量に差が生じ、光熱水費の提案価格と実績価格が 乖離するリスク | 運営開始後の諸条件が、管理者等の都合により入札公告時に示した内容と異なった場合は、管理者等に帰責事由があることから管理者等がリスクを負担する |
設計に起因する計画と実需の乖離 | 提案時の基本設計に基づいた事業期間中のエネルギー使用量の計画値と運営開始後の実績値に差が生じ、光熱水費の提案価格と実績価 格が乖離するリスク | 民間事業者の想定不備によりエネルギー使用量が計画値と異なる場合は、民間事業者に帰責事由があるため、民間事業者がリス クを負担する | |
運営期間中 | 気温・天候の変動 | 気象条件等の変動によりエネルギー使用量が変動し、光熱水費の提案価格と実績価格が乖離するリス ク | 官民双方とも帰責者ではないため、諸条件を考慮して事業ごとに設定する |
施設運営方法の変更 | 事業期間中に施設の運営方法が変更されることによってエネルギー使用量が変動し、光熱水費の提案 価格と実績価格が乖離するリスク | 事業期間中における管理者等による施設運営方法の変更は、帰責者は管理者等であるため、管理者等がリスクを負担する | |
設 備 の 追加・更新 | 管理者等が事業期間中に自ら設備を更新する、あるいは当初想定していなかった設備を追加することによりエネルギー使用量が変動し、光熱水費の提案価格と実績価 格が乖離するリスク | 管理者等の都合による設備の更新・追加は、設備内容・タイミングなど民間事業者が想定できるものではなく、帰責者は管理者等であるため、管理者等がリスクを負担する | |
設備劣化による効率低下 | 民間事業者が設置・維持管理する設備が、経年劣化等により当初の性能を発揮できなくなることによりエネルギー使用量が変動し、光熱水費の提案価格と実績価格が乖 離するリスク | 設備の提案・設置・保守管理は民間事業者の業務範囲であり、それに起因した経年劣化は民間事業者の責任において対応すべき事項であることから、民間事業者がリスク を負担する | |
運転・保守管理の不備 | 民間事業者の運転ミスや施設・設備の保守管理の不備等により、エネルギー使用量が変動し、光熱水費の提案価格と実績価格が乖離す るリスク | 設備の運転・保守管理は民間事業者の業務範囲であり、民間事業者の責任において対応すべき事項であることから、民間事業者がリスクを負担する |
(参考:類型1におけるサービス価格改定の考え方の例)
項 目 | 改定 | 改定方法例 | |||
エネルギー調達業務 | 単価変動 | ○ | 指標として電気・ガス・上下水道の料 金改定率を使用 | ||
使用量変動 | 計画と実需との乖離 (運営方法) | ○ | 一定の監視期間を設けた後、計画値を 補正した「基準使用量」を設定 | ||
気温・天候変動 | ○ | エネルギー使用量と気温との相関を確 認し、平均気温との乖離幅より算定 | |||
施設運用 | 施設運用方法の変更 | ○ | 残業時間等に応じた増減 | ||
管理者等都合による 設備更新・追加 | ○ | 新設・更新機器等による負荷変動分の エネルギー使用料金を算定 | |||
維持管理・運転 | - | 民間事業者による対応が原則 | |||
エネルギーマネジメント業務 | ○ | 物価変動を考慮 |
・ 予算措置上の制約等により、光熱水費をPFI-LCCに含めることが困難な場合は、次のような対策を講ずる必要がある。
(ア) エネルギーマネジメント機能の具体的な業務内容を整理し、民間事業者の業務範囲として規定する。
(イ) 民間事業者が提案するLCCO2/LCCの実効性、担保性を確保するためのモニタリング方法を検討する。
(ウ) 運営段階において、省エネルギー推進のためのインセンティブ手法(省エネルギー達成時には光熱水費削減額に応じたボーナスを支給する等)を検討する。
・ 施設内に売店やレストラン等の民間収益施設が含まれる場合には、原則として当該施設で使用した光熱水費は、その施設の事業主体(テナント等)が負担すべきである。あらかじめ、このような施設の設置が見込まれる場合には、エネルギー使用量の計測が可能となるような設計とする必要がある。
・ 適切なVFMの評価を行うために、自然エネルギー設備の導入を業務要求水準として規定する場合は、それに見合う費用をPSCにも算入する必要がある。
(参考:運営段階におけるエネルギーマネジメントの例)
改善策の立案・実行
予測値と実績値との比較・検証エネルギー利用改善策の検討
エネルギー使用実績の測定・分析
エネルギー設備運転・施設運用
計測データ
エネルギー利用計画の立案
PLAN DO
CHECK
ACTION
第5章 業務要求水準書の構成
第1節 業務要求水準書と他の書類との関係
本章では、業務要求水準書に関係する要素となる事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)(p.9 第3章第1節1参照)並びに業務要求水準書に添付されるモニタリングの基本計画(p.22第3章第2-2節1参照)の構造について示す。
事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を示す記述は、第3章に示した通り、必ずしも業務要求水準書を構成するものではないが、管理者等の意図をより深く理解するために、その構成要素となることもある。
また、業務要求水準書との対応関係を明記したモニタリングの基本計画を作成し、公募の際に、募集要項の一部として提示する必要がある。さらに、業務要求水準書には、民間事業者に期待する役割を記載する。
第2節 各書類の構成及びその考え方
1.業務要求水準書に盛り込むべき事項の考え方
業務要求水準書においては、以下の点が明確に示される必要がある。
① 民間事業者の業務範囲(対象とする領域や時間帯、施設等が明示されているか。)
② 管理者等が果たすべき役割(管理者等の業務範囲との区分が明確に示されているか、あるいは民間事業者が業務要求水準を満たすに当たって管理者等が果たすべき役割(事業用地確保やインフラ整備等)などの前提条件が示されているか。)
③ 民間事業者に求める水準(数値等を用いてできるだけ客観的に示されているか。)
④ 水準を求める背景や目的、方針(③の水準を達成する背景となった考え方が示されているか。)
⑤ 性能規定による業務要求水準に関する管理者等の意図を示すに当たり、参考となる仕様(p.13第3章第2-1節2参照)
⑥ 法令や基準等により遵守すべき仕様
⑦ 確保すべき実施体制や、遵守すべき業務手順等
上記について、個々の業務単位、施設整備業務やサービス提供業務といったような業務種別単位、あるいは業務全体に対して、記述される必要がある。
2.業務要求水準書の構成
第1部 総論
事業全体を理解するために必要な情報、あるいは事業全体に共通で遵守すべき要件を記載する。
①位置付け
・ 事業者選定における本書類の位置付け、他の書類との関係について示す。
②基本方針
・ 事業の背景や目的、事業の概要、事業目標等、事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)の内容を示す。
③民間事業者に期待する役割
・ 民間事業者に期待する役割を記載する。
④管理者等が果たすべき役割
・ 民間事業者に期待する役割に基づき管理者等の役割をまとめる。
⑤法令等遵守すべき要件
・ 事業全体で遵守すべき法令や基準等がある場合、記載する。ただし、業務ごとに記載したほうが分かりやすい場合、第2部(業務ごとの業務要求水準)の総論において記載することも可能である。
⑥その他
・ 官民間の理解に齟齬が生じないよう、誤解が生じやすい用語の定義は、用語集を作成するなどして、できるだけ明確にする必要がある。
第2部 各論
(1)総論
・ 施設整備業務、サービス提供業務といった業務ごとに、業務全体を理解するために必要な情報、あるいは業務全体に共通で遵守すべき要件を記載する。
(2)前提条件
・ 事業用地やインフラの整備など、民間事業者がPFI事業を実施するに当たり、管理者等が満たすべき前提条件は、業務要求水準とは明確に区分して示す必要がある。
・ 業務要求水準を達成するに当たり、管理者等側が満たすべき前提条件がある場合、当該条件を明記する(一般廃棄物処理事業において、投入される廃棄物の組成が一定範囲内にあること等)。
・ 管理者等の前提条件の充足は、民間事業者が業務要求水準を達成できなかった場合の免責要件となる等、リスク分担上の重要事項であるため、前提条件についても、業務要求水準と同様、できるだけ具体的に記載すべきである。
・ 一方、管理者等は、自らが設定する前提条件の充足を優先するあまり、民間事業者側に不利な規定を含めることや不用意に前提条件の幅を拡げることは、民間事業者のコストを上昇させる点に配慮が必要である。
・ 業務別の前提条件がある場合は、業務別要件に記載する。
(3)業務別要件
・ 業務要求水準の記載方法を定型化することが、管理者等側の業務要求水準書作成に関する負担の軽減、民間事業者側の検討期間の短縮や理解の促進に有効である。以下のような項目を記載する。
①基本方針
・ 個々の業務の基本方針や考え方、留意点などを示すことが民間事業者の理解の促進に資すると考えられる。
・ ただし、それが拘束力を有するものであるのか否かを明示するとともに、当該記述が民間の創意工夫の妨げにならないよう配慮することが必要である。
②業務範囲
・ 対象とする業務の内容をできるだけ明確に示す必要がある。
・ 病院事業や刑務所事業など核となる業務を管理者等が行い、周辺支援業務を民間事業者が行う事業では、業務区分や費用負担区分が明確になるよう記述することが必要である。その他の事業においても、既存施設の大規模修繕業務など、管理者等との役割分担を明確にする必要がある場合は同様の記述が必要である。
③業務ごとの業務要求水準
・ 個々の業務ごとの業務要求水準として、管理者等が求める施設やサービスの水準をできるだけ具体的に示す必要がある。
④仕様規定
・ 仕様規定を採用する場合には、参考情報か拘束条件かを明記する必要がある。
・ 配置や動線に関する記述等については、文章を補うために、必要に応じて、図による例示等を検討すべきである。ただし、例示によって特定のイメージが固定化しないよう留意する必要がある。
添付資料
・ 業務要求水準を構成するものではないが、PFI事業の参考とすべき書類等は、添付資料として提示する。
・ PFI事業に関連する計画、周辺施設の事業動向等、管理者等が入手できる情報については、できるだけ添付することが望ましい。
・ ただし、記載箇所が分散されることによる見落とし等を避けるため、民間事業者が遵守すべき条件については、できるだけ本文中に記載することが望ましい。
以上を踏まえた業務要求水準書の様式例を次に示す。
業務要求水準書の様式例(素案)
大項目 | 中項目 | 盛り込むべき内容 |
第1部総論 | (1)業務要求水準書の位置付け | 事業者選定における業務要求水準書の位置付けを記載する。 |
(2)事業概要 | 事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)の内容を引用し、事業を行うに至った背景や目的、目標等を記載する。 事業名称、整備する施設と概要、管理者等、事業方式、 事業期間等について記載する。 | |
(3)民間事業者に期待する役割 | PFI方式を活用することで民間事業者にどの部分に重点をおいて創意工夫を発揮してほしいのか、管理者等として民間事業者に期待する事項を具体的に記載する。 | |
(4)管理者等の役割 | PFI事業において、民間事業者に(3)に示す役割を期待するに当たり、管理者等がどのような役割を担うかについて具体的に記載する。 | |
(5)適用法令 | 本事業に適用される法律・政省令・条例等を具体的に記載する。 | |
(6)その他 | 目次、業務要求水準書の構成や用語集など、応募者のより良い理解に資するものを記載する。 |
大項目 | 中項目 | 盛り込むべき内容 | ||
第2部各論 | 1 . 施 設 整備業務 | (1)総論 | 施設整備に関する基本的な考え方、管理者等としての方針等を記載する。 | |
(2)前提条件 | 設計や施工に当たって前提条件として考慮すべき、対象用地、インフラ状況、事業期間、延床面積、利用者数、開業日数・時間、施設の仕様などを記載する。 | |||
(3)業務別要件 | ①基本方針 | 個々の業務に当たっての基本的な考え方、管理者等としての方針等を記載する。 | ||
②業務範囲 | 業務範囲や内容を明記する。 役割分担が前提となる部分については、業務区分や費用負担区分についても明確に示すことが望ましい。 | |||
③業務ごとの業務要求水準 | 設計に当たっての要件(全体計画、機能別要件)等について明記する。 施工に当たっての要件(環境対策、安全対策、住民対応、周辺施設、廃棄物処理、現場管理、施工管理)について記載する。 仕様規定による場合は、その位置付けを記載する。また、標準仕様等については、関連のありそうなものを列記するのではなく、事業に応じた必要最低限のもののみを 記載する。 | |||
④手順、実施体制 | 設計や施工の手順(設計、施工監理、検査、試験、検収)について記載する。 また、施工計画書の提出や実施体制の確保、報告書提 出などの実施体制や手順について記載する。 | |||
2.サービス提供業務 | (1)総論 | サービス提供に関する基本的な考え方、管理者等としての方針等を記載する。 | ||
(2)前提条件 | サービス提供全般に当たって前提条件として考慮すべき、対象施設などを記載する。 | |||
(3)業務別要件 | ①基本方針 | 個々の業務に当たっての基本的な考え方、管理者等としての方針等を記載する。 | ||
②業務範囲 | 業務範囲や内容を明記する。 官民の役割分担が前提となる部分については、業務区分や費用負担区分についても明確に示すことが望ましい。 | |||
③業務ごとの業務要求水準 | 業務単位で、性能規定により業務要求水準を個別に記載する。 仕様規定による場合は、その位置付けを記載する。 | |||
④手順、実施体制 | 業務別仕様書の提出やマニュアルの作成、報告書提出などの実施体制や手順について記載する。 | |||
添付資料 | 図面 | 前提条件等となる図面を添付する。 | ||
現況 | 参考資料としてサービス提供等の現況に関する書類を添付する。拘束力がないことを明記する。 | |||
参考資料 | 参考資料として提示する仕様や図面を添付する。 |
上記の業務区分は例示である。事業内容や業務特性にあった分類を行うことが望ましい。
また、事業者に統括的な機能が求められる事業の場合、統括管理業務について記載することも考えられる。
3.モニタリングの基本計画の構成
第1部 総論
(1)目的、位置付け
・ モニタリング計画書は業務要求水準書と一体的に作成することが必要であり、業務要求水準書の提示と併せて示す必要がある。
・ モニタリングの基本計画の具体的な目的について記載する。基本的には、民間事業者が実際に提供するサービスについて、その達成度が確認されることを目的とする。
・ モニタリングの基本計画の位置付けについて記載する。特に、業務要求水準を満たすサービス提供が実現されるためには、モニタリングの指標が、業務要求水準及び支払いメカニズムと一体的に検討、設定されることが重要である。
・ モニタリングの項目によっては、民間事業者が提供するサービスの内容と方法等によってモニタリング方法が異なる場合があるため、事業契約締結後にモニタリングの実施計画を策定し、そこに定める。
・ なお、本書ではいわゆる財務モニタリング(経営状況の報告)については、業務要求水準を満足するサービスの提供がなされているかどうかを確認するモニタリングとは別のものとして整理し、触れていない。
(2)体制等
・ モニタリングための協議の場(例えば、確認作業を担う委員会の設置、構成主体、役割、開催頻度等)について記載する。
(3) 対象業務
・ モニタリングの対象業務(建設モニタリング、サービス提供時モニタリング等)について記載する。
(4)モニタリングの実施計画の変更
・ モニタリングの実施方法の変更があった場合に、モニタリングの実施計画の変更となる場合、業務要求水準書の変更となる場合の区分について記載する。
第2部 建設モニタリング
(1)モニタリングの方法
・ 設計時、施工中及び完成時に、業務計画の具体的な内容や、当該施設が業務要求水準書等の内容を満たしているかを確認する。各種計画書や業務のモニタリング方法は、一般的に書類の確認又は現地立ち入り検査により行われる。
(2)業務要求水準未達の場合の措置
・ 業務要求水準未達の場合の管理者等による是正勧告や是正命令等の是正措置の内容や、支払減額や契約解除等について記載する。
第3部 サービス提供時モニタリング
(1)モニタリングの方法
サービス提供時においては、主に以下の3段階のモニタリング方法が実施されている。
①日常モニタリング
民間事業者は、提供する業務パフォーマンスに対する日常的なセルフモニタリングを行い、苦情対応等も含めてその結果を業務日報として取りまとめる。
②定期モニタリング
民間事業者は、日常モニタリングの結果も含めて、業務パフォーマンスのセルフモニタリング結果を月報、四半期報等として取りまとめる。
管理者等はその報告及び定めたモニタリング項目に従っての現地巡回を実施し、各業務の遂行状況を確認する。
③随時モニタリング
管理者等は必要に応じて現地巡回し、各業務の遂行状況を確認する。また、管理者等は業務是正勧告又は業務是正命令を行った業務について、業務パフォーマンスが回復しているか否か確認を行う。
④その他
例えば、管理者等や民間事業者が、業務のパフォーマンスや業務全体の傾向を確認するためにサービス受益者(最終利用者)や管理者等の事業担当部門に対するアンケートを実施することが考えられる。
(2)モニタリングの種別
業務要求水準書に則ったモニタリング指標を、以下の考え方に基づき管理者等又は民間事業者の提案により設定する。
モニタリング指標については、管理者等側も主体的に関与して設定することが必要である。サービス提供業務において特に管理者等側が重要視する事項や、想定可能な事項については、本基本計画にて指標を設定する。
①業務評価(パフォーマンス11)
業務パフォーマンスの確認に当たっては、業務要求水準書に沿って民間事業者がモニタリング項目を設定する。この各モニタリング項目について、事業全体への影響度からレベル分けをするとともに、客観的な業務判断基準を設定する。
業務評価においては、民間事業者によるセルフモニタリング結果をもとに、管理者等が日常、定期、随時モニタリングを実施する。
②施設の利用可能性(アベイラビリティ12)
施設の利用可能性は、実際に問題が発生した時点で報告を受け、日常的なモニタリング結果に反映させる。
なお、施設の利用可能性の基準は、施設を用途別にいくつかのカテゴリーに分類し、その重要度に応じ設定する。
(3)未達の場合の措置
以下の項目について、業務ごとに設定する。
①修復期間13
未達になった場合に一定期間内の修復を義務付ける場合、その定義と修復期間の設定について記載する。問題となる事象が管理者等に報告されてから、修復行為が行われ、施設が利用可能に
11 p.24 脚注7参照。
12 p.24 脚注6参照。
13 p.22 参照。
なるという報告までの期間が修復期間内であれば、ペナルティポイントや減額の対象とはならない。
修復期間の長さについては、重要度に応じてランクを設定し、提案を踏まえて具体的な期間を設定する。また、問題となる事象の発生開始時期を認識する考え方も設定する。
②ポイント付与の重み付け
業務評価においてはモニタリング項目のレベル分け、施設の利用可能性においては施設カテゴリーの分類により、付与されるペナルティポイントに重み付けを設定する。また、業務是正勧告・命令の発動によってもポイントの重み付けを設定する。
③減額措置
減額金額の算出手順等を設定し、これに基づきペナルティポイントに応じて減額を措置する。
④業務是正に関する措置
管理者等は、民間事業者に対して、当該業務を担当する協力企業等の変更の要請や、契約の一部又は全部の解除が可能であることを示し、またその条件を定める。
以上を踏まえたモニタリングの基本計画の様式例を以下に示す。
モニタリングの基本計画の様式例(素案)
大項目 | 中項目 | 盛り込む内容 | 備考 | ||
第 1 部 総論 | 1.目的・位置付け | ・ | 業務要求水準等を満たすサービス提供を確認するためのモニタリングである旨、業務要求水準書や民間事業者が作成するモニタリングの実施計画との関係を記載 する。 | ||
2.体制 | ・ | 各種モニタリングの実施主体、体制について記載する。 | |||
3.対象業務 | ・ | モニタリングの対象業務(建設モニタリング、サービス提供時モニタリング等)について記載する。 | |||
4.モニタリングの実施計画の変更 | ・ | 変更があった場合に、モニタリングの実施計画の変更となる場合、業務要求水準書の変更となる場合について記載する。 | |||
第2部建設モニタリング | 1.モニタリングの方法 | ・ | 書類確認、現場確認等のモニタリング方法について記載する。 | 手続の確認が中心であるため、書類確認や現場確認によるモニタリングを中心に記載する。 | |
2.未達の場合の措置 | ・ | 未達の場合の是正措置の内容や、支払減額や契約解除等について記載する。 | |||
第3部サービス提供時 モニタリング | 1.モニタリングの方法 | (1)日常モニタリング | ・ | 民間事業者が自ら行う、日報の作成や日常的な日報の確認等について記載する。 | |
(2)定期モニタリング | ・ | 民間事業者が自ら行う、月報の作成や月報の確認、意見交換の実施等について記載する。 | |||
(3)随時モニタリング | ・ | 管理者等が行う、必要に応じた実地確認等について記載する。 |
2.モニタリングの種別 | (1)業務評価 | ・ ・ ・ | パフォーマンス(業務評価基準)に関する指標について記載する。 サービス対価への反映方法を記載する。未達成の場合の業務是正措置について記載する。 | 民間事業者の提案によらないモニタリング指標については、管理者等側が設定し、基本計画内に盛り込む。 | |
(2)施設の利用可能性 | ・ ・ | アベイラビリティ(施設の利用可能性)の設定について記載する。 施設の利用可能性の結果をサービス対価に反映する旨を記載する。 | 業務内容を踏まえ、必要に応じて記載する。 民間事業者の提案によらないモニタリング指標については、管理者等側が設定し、基本計画 内に盛り込む。 | ||
3.未達の場合の措置 | (1)修復期間 | ・ ・ | 未達になった場合に一定時間内の修復を義務付ける場合、その定義と修復期間の設定について記載する。 修復期間中はペナルティポイントや減額の対象とはならない。 | 修復期間の長さについては、重要度に応じてランクを設定し、提案を踏まえて具体的な期間を設定する。 | |
(2)ペナルティポイント付与 | ・ ・ | 業務に応じたペナルティポイントの重み付けについて記載する。 ペナルティポイントの付与の仕方について記載する。 | これを相殺できるリカバリーポイントの考え方と相殺手順について記載す る。 | ||
(3)減額措置 | ・ | 減額の対象期間、サービス対価の減額率の算出式、減額金額の算出式、減額金額の上限設定について記載する。 | |||
(4)業務是正に関する措置 | ・ ・ | 業務要求水準が満たされていない際等の、業務是正勧告・業務是正確認・業務是正命令について記載する。 契約の全部又は一部が解除可能である 旨を記載する。 | 協力企業の変更要請が可能である旨を記載する例もあ る。 |
上記の項目は例示である。事業内容や業務特性にあった内容とすることが望ましい。
第6章 業務要求水準書の作成手順
第1節 検討の流れ
一般的なPFIの検討手順に沿った、業務要求水準書に関連する検討事項を以下に示す。
第2節 チェックリスト
1.に示した各段階で使用するチェックリスト(案)を以下に示す。
1.使用方法
・ 本チェックリストは、「検討手順チェックリスト」と「書類チェックリスト」の2つに分かれている。
・ 「検討手順チェックリスト」は、業務要求水準書の検討に関してチェックすべき事項が時系列で示されている。管理者等の検討チームにおいて、各段階の実施前に必要項目を確認した上で検討に着手するとともに、実施後にチェックを行い、記録として残すことを想定している。
・ 「書類チェックリスト」は、業務要求水準書及びモニタリングの基本計画の骨子や案及び最終版の作成に当たり、各々の業務の業務要求水準作成担当者が、業務ごとにチェックを行うことを想定している。
・ チェック者は、各項目のチェックを行った後、チェック欄である□にレを記入する。当該項目が関係ない
(事業や業務の性質上チェックする必要がない)場合は、備考欄に「N/A」を記入する。その他、留意すべき点を備考欄に記入することを想定している。
確認時期 | 大項目 | チェック項目 | 備考 |
導入可能性調査前 | 事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)の明確化 | 管理者等の事業に係わる政策目的や求める成果(アウト □ カム)を明確化している。 | |
上記を明確化し、それを配布することなどにより、管理者 □ 等の内部で認識を共有している。 | |||
庁内の関係者との情報共有の仕組みを構築している □ (庁内連絡会議の開催等)。 | |||
PFI事業の検討に必要な各部門のスタッフを確保してい □ る。 | |||
対象施設を利用すると想定される者(例えば学校PFIの □ 教員など)も検討に参画させている。 | |||
<既にPFI事業を実施したことのある管理者等の場合> □ PFI事業に関与した職員にも関与させている。 | |||
事業の優先順 位の評価 | 納税者の視点から、事業の優先順位について検討して □ いる。 | ||
導入可能性調査 | 検討体制の確保 | 当該分野で業務要求水準を作成するノウハウを有する □ アドバイザーに導入可能性調査を委託している。 | |
必要に応じて、庁内の検討にかかわるスタッフを増やし □ ている。 | |||
事業に係わる政策目的や求める成果(アウ トカム)の確認 | 事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)が、明 □ 確であるかについて、再確認している。 | ||
上記が、関係者(アドバイザーを含む)の間で共有され □ ているかについて再確認している。 | |||
民間事業者に期待する役割の確認 | 管理者等において、民間事業者に期待する役割その他 □ PFIで何を期待しているかを具体的かつ明確に整理している。 | ||
□ 事業スキームを検討している。 |
2.チェックリスト(案) A.検討手順チェックリスト
確認時期 | 大項目 | チェック項目 | 備考 |
民間事業者に期待する点について、管理者等にとって □ の優先順位を検討している。 | |||
民間の創意工夫を発揮することが期待される内容が、民 □ 間事業者に実施可能な内容であることを確認している。 | |||
民間事業者に期待する役割を踏まえ、管理者等と民間 □ 事業者の役割分担やリスク分担を明確化している。 | |||
業務要求水準書(骨子)の作成 | 民間事業者が管理できないリスクを負わせることになっ □ ていないかを確認している。 | ||
民間事業者に期待する役割の内容を業務要求水準書 □ (骨子)に記載している。 | |||
民間事業者に期待する役割及び事業に係わる政策目 □ 的や求める成果(アウトカム)に基づき、業務要求水準書の骨子を作成している。 | |||
作成した業務要求水準書(骨子)が、PSCやPFI-LC □ Cの算定を行うに足る程度の具体性を有していることを確認している。 | |||
モニタリングの基本計画(骨子)の作成 | 特に重要度が高い(見積りに影響を与える)部分につい □ て、モニタリングの基本的枠組みを作成している。 | ||
管理者等にとっての重要度に応じて、支払メカニズム □ (減額までの仕組み、減額幅)の概要を作成している。 | |||
管理者等にとっての重要度に応じ、民間事業者のセル □ フモニタリング結果の確認手法が明記されている。 | |||
マーケットサウンディング | マーケットサウンディングの方法を検討している。この □ 際、xx性、透明性に配慮している。 | ||
□ PFI-LCC算定に必要な情報を得ている。 | |||
重要な部分で不明確な部分はないかについての意見を □ 得ている。 | |||
□ 市場の慣行に合致しているかについて確認している。 | |||
民間の創意工夫を阻害するような内容がないかについ □ ての意見を得ている。 | |||
支払許容度の確認 | 業務要求水準書(骨子)に基づき算定されたPFI-LC C等が管理者等の支払許容度の範囲内であるかを確認している。 □ (留意点) ・PFI-LCC等の算定に当たり、同種類似事例等の原単位等に基づき設定した場合、前提条件や時期の違いに対する補正を行う。 | ||
実施方針等の公表から入札公告まで | 業務要求水準書(案)のx x、公表 | 「B.書類チェックリスト」に記載した内容に配慮して、業 □ 務要求水準書(案)を作成し、実施方針に添付している。 | |
モニタリングの基本計画(案)の作成、公表 | 「B.書類チェックリスト」に記載した内容に配慮して、モ □ ニタリングの基本計画(案)を作成し、実施方針に添付している。 |
確認時期 | 大項目 | チェック項目 | 備考 |
(実施方針公表後)質問回答、対話 | 以下に留意した質問回答を実施している。 (留意点) □ ・どのような業務要求水準であれば民間の創意工夫を活かしやすいかという観点から意見を聴取する。 ・内容が曖昧である点についても意見を聴取する。 | ||
個別の対話を行う場合、あらかじめ対話手続の進め方について基準を作成している。 (留意点) ・具体的な対話の進め方については、PFI関係省庁連 □ 絡会議幹事会申合せ「PFI事業に係る民間事業者の選 定及び協定締結手続きについて」(平成 18 年 11 月 22日)参照。 ・管理者等の担当者間で齟齬が生じないよう留意する。 | |||
以下の観点から対話ができているか確認している。 (留意点) □ ・どのような業務要求水準であれば民間の創意工夫を活かしやすいかという観点から意見を聴取する。 ・内容が曖昧である点についても意見を聴取する。 | |||
業務要求水準書の作成 | 質問回答や対話の内容を踏まえ、業務要求水準書(案) □ を修正している。 | ||
内容が「B.書類チェックリスト」に照らして妥当なもので □ あるかを再確認している。 | |||
一定の時期にサービス内容の見直し・調整を行う旨の規定をPFI事業契約に規定する必要がないかを検討している。 (留意点) □ ・新規性の高い事業、複雑な事業などでは、見直しの必要性が生じる可能性がある。ただし、この場合でも、できるだけ業務要求水準は明確に規定すべきである。不明確であると、変更する際に価格算定が困難になり不都合が生じる。 | |||
モニタリングの基本計画の作成 | 質問回答や対話の内容を踏まえ、モニタリングの基本計 □ 画(案)を修正している。 | ||
内容が「B.書類チェックリスト」に照らして妥当なもので □ あるかを再確認している。 | |||
入札公告後から運営開始まで | 質問回答 | 質問回答を通じて、業務要求水準書の解釈等について □ 明確化を図っている。 | |
運営段階で事業に携わることが予定されている事業担 □ 当部門の意向を質問回答に反映させるよう努めている。 | |||
対話 | 対話を通じて、民間事業者がどのような提案が可能か等 □ について明確化を図っている。 | ||
運営段階で事業に携わることが予定されている事業担当部門の意向を質問回答に反映させるよう努めている。 (留意点) □ ・事業担当部門が直接対話に参加する場合には、管理 者等側の関係者の間で回答に齟齬が生じないように留意する。 |
確認時期 | 大項目 | チェック項目 | 備考 |
提案書の審査 | 管理者等の意図が審査に反映されるように審査基準等 □ を設定している。 | ||
提案内容が業務要求水準を満たしているかを確認して □ いる。 | |||
□ 省エネルギー又はCO2 排出量削減の取組みを事業 者選定の評価基準に含めている。 | |||
□ CO2 削減の具体的な提案を求めることを提案要領に記載している。 | |||
予定価格 | 予定価格が業務要求水準書等の内容と乖離していな □ い。 | ||
契約締結 | 重要な内容について、全て合意できていることを確認し □ ている。 | ||
建設モニタリン グ | □ 全ての業務要求水準を満たしているかを確認する。 | ||
運営開始後 | モニタリング結果の公表・評価 | モニタリング結果を外部に公表している。 (留意点) □ ・施設によっては、モニタリング結果について、最終利用者の代表者や中立的な第三者機関等による評価を行 う。 | |
モニタリング結 果の検証 | モニタリング結果を検証するための、委員会等の官民に □ よる協議の場を設定している。 | ||
見直しの実施 | モニタリング指標や実施方法が現実に見合ったものでない場合、必要に応じて修正している。 □ (留意点) ・あくまでも重要な条件は入札時までに示され、それに変更がないことが前提である。 | ||
業務要求水準などサービス内容についても、必要に応 □ じて見直しを行う。 |
B.書類チェックリスト
業務名( ) 記入者( )
確認書類 | 大項目 | チェック項目 | 備考 |
業務要求水準書 | 業務要求水準書作成の留意点 | 民間事業者の業務範囲(対象とする領域や時間帯、施 □ 設、許認可の取得等)を明示している。 | |
管理者等が果たすべき役割(管理者等の業務範囲との □ 区分)を明示している。 | |||
原則として性能規定の形で業務要求水準の項目を記載 □ している。 | |||
業務要求水準達成に当たっての前提条件を明確に示し □ ている。 | |||
事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)及び □ 民間事業者に期待する役割に適合するものであるかを確認している。 | |||
管理者等にとって不必要な過剰仕様になっているところ □ がないかを確認している。 | |||
検討チーム内外で広く意見を聴取することなどにより、 □ 不足がないかを確認している。 | |||
□ 数値を用いるなどできるだけ客観的に記載している。 | |||
それぞれの項目について、解釈の齟齬が生じるような内 □ 容がないかを確認している。 | |||
民間事業者による見積りが可能である程度の具体性が □ あるかを確認している。 | |||
それぞれの項目について、未達が発生した場合の修復 □ 期間を設定している。 | |||
多数のサービスから構成されている等統合管理力が重 □ 要な事業の場合、民間事業者の管理能力に関する業務要求水準を規定している。 | |||
法令、ガイドライン等に反する部分はないかを確認して □ いる。 | |||
業務要求水準の項目間で、矛盾が生じているもの(事実 □ 上、両項目を反映させた設計は困難というものも含む。)がないかを確認している。 | |||
特に民間事業者の受注経験が少ない分野については、 □ 管理者等側の「常識」が通じないことに配慮し、十分な情報を提供している。 | |||
業務要求水準書を補完する他の資料作成の留意点 | 仕様規定を採用する場合には、まず仕様規定を用いるだけの理由があるかを確認している。 例:①法令等で義務付けられている。 ②管理者等が特定の仕様にすることを明確に希望している。 □ ③適切なリスク分担という点から、仕様を示すのが望まし い事情がある。 ④性能規定で表現すると過度に複雑になる。 ⑤性能規定で表現するのでは管理者等の意図を伝えるのが困難である。 |
確認書類 | 大項目 | チェック項目 | 備考 |
各項目が例示(参考)にすぎないのか、拘束力を有するのか明示している。 □ (留意点) ・例示(参考)としても差し支えない場合には例示として位置付け、できる限り創意工夫を害しないようにする。 | |||
例示(参考)にすぎない場合には、それに対応する性能 □ 規定が具体的かつ明確に示されているかを確認している。 | |||
数値や材質等、解釈の齟齬がないように客観的に示さ □ れているかを確認している。 | |||
必要以上に民間の創意工夫を阻害しないものになって □ いるかを確認している。 | |||
必要に応じて、ISOやHACCP等のようなプロセスの基 □ 準を利用している。 | |||
標準仕様を添付する場合には、過剰仕様にならないよう □ に、不可欠な項目に絞って提示している。 | |||
地球温暖化への配慮に関する留意点 | 事業期間中のエネルギー使用量、CO2 排出量(LCC □ O2)の概算値を把握している。 | ||
光熱水費の負担者について、官民のどちらが適当かを □ 検討している。 | |||
□ CO2 排出量の目標値について検討している。 | |||
適切なエネルギーマネジメントの体制について検討して □ いる。 | |||
省エネルギー、CO2 削減に関するインセンティブにつ □ いて検討している。 | |||
光熱水費をPFI-LCCに含める場合、以下を検討している。 □ ・エネルギーに関するリスク分担 ・サービス価格の見直し方法 ・モニタリング項目 | |||
モニタリングの基本計画 (案) | モニタリングの内容(方法、頻度、減額幅)などが、民間 □ 事業者の見積りに大きく影響を与えない程度に特定している。 | ||
モニタリング指標が、客観的に測定可能であるものかを □ 確認している。 | |||
管理者等にとっての重要度に応じて、モニタリング指標 □ の優先順位付けを行い、これを支払メカニズムに連動させている。 | |||
未達が発生した場合の修復期間を設定している(業務 □ 要求水準の一部として記載)。 | |||
事業の規模や内容に比べてモニタリングが過剰な負担 □ とならないことを確認している。 | |||
入札の際の提案書において、xxxxxxの基本計画 □ (案)の内容を民間事業者がどこまで変更することができるのかを明示している。 |
確認書類 | 大項目 | チェック項目 | 備考 |
設定された減額幅が、妥当な水準になっているかを確 □ 認している。 | |||
特定のモニタリング指標が過度な減額に結びつくため □ に、逆にサービスの向上を妨げるような状況が生じないかを確認している。 | |||
応札者が提案すべき内容を入札書類中で明示してい □ る。 | |||
主観性が強い項目についても、満足度調査やクレーム □ 情報等の履歴データにより一定程度数値化や客観化が可能かどうかを検討している。 | |||
特にサービス提供業務の比重が重い事業等では、組織 □ 品質等を評価する指標の活用について検討している。 | |||
モニタリング結果の公表について規定している。 (留意点) □ ・公表に当たり、民間事業者の権利、競争上の地位、その他正当な利益を害するおそれのある事項について配慮する。 | |||
施設によっては、モニタリング結果について、最終利用 □ 者の代表者や中立的な第三者機関等による評価を行う。 |