Contract
10-1 事業譲渡
1【株主総会の特別決議を要する事業の譲渡等】
株式会社は、次に掲げる行為をする場合には、その行為がその効力を生ずる日(「効力発生日」)の前日までに、株主総会の特別決議によって、その行為についての契約の承認を受けなければならない(会法467①各号)。
①事業の全部の譲渡
②事業の重要な一部の譲渡(その譲渡により譲渡す資産の帳簿価額がその株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1(定款で引下可)を超えないものを除く)
③他の会社(外国会社その他の法人を含む)の事業の全部の譲受け
④事業の全部の賃貸、事業の全部の経営の委任、他人と事業上の損益の全部を共通にする契約その他これらに準ずる契約の締結、変更または解約
全部の譲渡・賃貸・委任
全部の譲受け
重要な一部の譲渡
株主総会の特別決議
※ 事業譲渡は本来業務執行行為であり、取締役(取締役会設置会社では取締役会)の権限事項であるが、会社の運命に重大な影響を及ぼし、株主に重大な利害関係があることから、株主の利益保護のために株主総会の特別決議を要求したものである。
2【手 続】
1.事業譲渡にあたる場合(会法467①一、二、最判昭61.9.11)
株主総会の特別決議が必要である。手続違反があった場合には、絶対的に無効である(判例)。なぜなら、株主の利益を守るための株主総会の特別決議がない以上、事業譲渡を無効として株主を保護すべきであり、競業避止義務の負担という明確な基準があるので、事業譲渡を無効としても取引の安全を害することはないからである。
2.重要な財産の譲渡であるが事業譲渡にはあたらない場合(会法362④一)
取締役会設置会社では取締役会の決議が必要である。手続違反があった場合は、「取締役会決議によらない代表取締役の行為の効力」の問題になり、判例では民法93条但書を類推適用し相手方が善意無過失であれば有効とし、利益考量説によれば会社の外部的行為であるから原則として有効となる。
3【略式、簡易の事業譲渡手続】
1.略式の譲渡等(会法468①)
【最高裁昭和40年9月22日判決】
旧商法245条1項1号(会社法467条1項1号2号に相当)にいう「営業(事業)の全部または重要なる一部の譲渡」とは、一定の営業(事業)目的のため組織化され、有機的一体とし て機能する財産の全部または重要な一部を譲渡し、それにより、譲渡会社がその財産によって営んでいた営業(事業)的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じて競業避止義務を負う結果を伴なうものをいう。
契約の相手方が特別支配会社である場合、被支配会社では株主総会の特別決議は不要である。ただし、特別支配会社では、株主総会の特別決議が必要。
2.簡易の事業全部の譲受(会法468②)
他の会社の事業の全部の対価として交付する財産の帳簿価額の合計額が、譲受会社の純資産額 の5分の1(定款で引下可)を超えないときは、譲受会社の株主総会の特別決議は不要である。
4【反対株主の株式買取請求権】
1.譲渡会社の株主
(1) 株主総会の承認を要する場合
①組織再編行為を承認する株主総会において議決権を行使できる株主
株主総会に先立って反対する旨を会社に通知し、かつ、株主総会において反対した株主事業譲渡をする株式会社の株主(会法469①②一イ)
②組織再編行為を承認する株主総会において議決権を行使できない株主事業譲渡をする株式会社の株主(会法469①②一ロ)
(2) 株主総会の承認を要しない場合全ての株主(会法469①②ニ)
(3) 株式買取請求権が認められない場合(会法469①但書)
営業全部を譲渡する場合において、株主総会の承認決議と同時に会社の解散の決議がされたときには、認められない。
2.譲受会社の株主規定なし。
5【債権者保護手続】規定なし。
【最高裁昭和61年9月11日判決】
株主総会による承認の手続をしていないというのであるから、これによっても、本件営業譲渡契約は無効である。…譲渡会社、譲渡会社の株主・債権者等の会社の利害関係人のほか、譲受会社もまた右の無効を主張することができる。
10-2 組織変更
1【組織変更】
1.定 義(会法2①二十六)
持分会社の組織変更手続
株式会社の組織変更手続
組織変更とは、以下の会社がその組織を変更することにより、それぞれの会社となることをいう。
①株式会社が、持分会社(合名会社、合資会社または合同会社)へ
株
式
会
社
合
名
会
社
種類の変更
合
資
会
社
種類の変更
合
同
会
社
組織変更計画の作成(会法743)
組織変更計画に関する書面等の備
置きおよび閲覧等
総社員の同意
総株主の同意
債権者保護手続
①組織変更の旨等の通知・公告
②新株予約権の買取請求
③債権者保護手続
②持分会社(合名会社、合資会社または合同会社)が、株式会社へ
組織変更
2【手続と効果】
1.組織変更をする株式会社(会法745①②③⑤)
組織変更をする株式会社は、効力発生日に持分会社となり、組織変更計画の定めに従い、定款を変更したものとみなされる。
組織変更をする株式会社の株主は、効力発生日に、組織変更計画に従い、原則として組織変更後の持分全社の社員となる。また、組織変更をする株式会社の新株予約権は、効力発生日に、消滅する。
①組織変更計画の作成(会法743)
②組織変更計画に関する書面等の備置きおよび閲覧等(会法775①③)
③総株主の同意(会法776①)
効力発生(会法745、会法747)
組織変更の登記(会法920)
④組織変更をすること等の通知・公告(会法776②③、会法777③④)
⑤新株予約権買取請求(会法777①⑤)
⑥債権者保護手続(会法779)
⑦効力発生(会法745)
⑧組織変更の登記(会法920)
※ 組織変更には総株主の同意が必要であるので、「反対株主の株式買取請求権」はない。
2.組織変更をする持分会社(会法781①)
組織変更をする持分会社は、定款に別段の定めがある場合を除き、組織変更計画について総社 員の同意を得なければならない。
また、債権者保護手続も必要である(会法781②、会法779)。
10-3 合 併
1【意 義】
合併とは、2個以上の会社を1個の会社に統合せしめる、会社法上の契約である。
持分会社の合併手続
株式会社の合併手続
合併契約の締結(会法749、会法751、会法753、会法755)
合併契約に関する書面等の備置き
および閲覧等
合併契約についての同意
合併承認決議
債権者保護手続
①合併をする旨等の通知・公告
②反対株主の株式買取請求
③債権者保護手続
合併には、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後に存続する会社に承継させる吸収 合併(会法2①二七)と、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させる新設合併(会法2①二八)とがある。
株式会社
合名会社
合資会社
合同会社
VS(すべての会社類型でOK)
株式会社
合名会社
合資会社
合同会社
2【効 果】
1.当事会社の解散(会法471①四、会法641①五、会法475①一括弧書、会法644①一括弧書)
吸収合併の場合には当事会社の一部が、新設合併の場合には当事会社の全部が、解散する。ただし、一般の解散の場合と異なり、清算すべきものは何もないので、清算は行われない。
2.合併対価の取得(会法749①、751①、768①、770①等)
消滅会社の株主は、存続会社または新設会社の株式、持分、社債、新株予約権、新株予約権付 社債を取得し、あるいは金銭その他の存続会社の株式等以外の財産の交付を受ける。会社法では、合併対価として消滅会社の株主に与えられる財産の種類に制限がなくなり、存続会社の親会社株 式も、合併対価として与えること(いわゆるxx合併や交付金合併)が可能となった。
他方、新設型の組織再編行為の場合は対価の柔軟化は認められておらず、必ず新設会社の株式を交付しなければならない(会法753①、763①、773①)。
3.権利義務の包括承継(会法750①、752①、754①、756①)
存続会社または新設会社は、消滅会社の権利義務を包括的に承継する。したがって、消滅会社の権利義務は、すべて一括して法律上当然に移転され、個々の権利義務につき個別の移転行為を 要しない(包括承継または一般承継)。
合併登記(会法921、会法922)
しかし、移転されるものは実質的な財産であって計算上の数額である資本金や準備金ではないので、存続会社の増加資本金額は、解散会社の承継純資産額の範囲内で決められる。
【吸収合併】 【新設合併】
(株主) (株主) (株主) (株主)
A B C α β γ A B C α β γ
効力発生(会法750①③、会法752①③、会法754①②、会法756①②)
合併書面等の備置き | |||
X 社
Y 社
X 社
Y 社
存続 権利・義務 消滅 消滅 権利・義務 消滅
X 社
合併対価
Z 社
合併対価 新設
合併対価
3【株式会社の手続】
1.合併契約の締結(会法748)
合併をするには、まず当事会社が合併契約を締結しなければならず、この合併契約に定めるべき事項は法定されている(会法749、751、753、755)。
2.合併契約に関する書面等の備置きおよび閲覧等
(1) 吸収合併の場合(会法782①③、会法794①③)
合併の各当事会社は、吸収合併契約等備置開始日から吸収合併契約の効力発生日後6ヶ月を 経過する日まで、吸収合併契約等の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面(または記録した電磁的記録)を本店に備置いて、事前に開示しなければならない。
合併の各当事会社の株主および債権者は、営業時間内は、いつでも、この書面等の閲覧・交付等の請求をすることができる。
(2) 新設合併の場合(会法803①②③)
新設合併消滅株式会社は、新設合併契約等備置開始日から新設合併設立会社の成立の日まで、新設分割契約の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面(または記録した電磁的記録) を本店に備え置いて、事前に開示しなければならない。
消滅株式会社の株主および会社債権者は、営業時間内は、いつでも、この書面等の閲覧・交付等の請求をすることができる。
3.合併承認決議
(1) x x(会法783①、会法795①、会法804①、会法309②xx)
合併の各当事会社は、株主総会の特別決議により、合併契約について承認を得なければならない。吸収合併の場合は、合併の効力発生日の前までに承認を得ることが必要である。
(2) 特別な手続が必要となる場合
①吸収合併消滅株式会社が種類株式発行会社ではない場合で、合併対価の全部または一部が持分等であるとき(会法783②)
吸収合併契約について吸収合併消滅株式会社の総株主の同意が必要
②新設合併設立会社が持分会社である場合(会法804②)
新設合併契約について新設合併消滅株式会社の総株主の同意が必要
③吸収合併消滅株式会社または新設合併消滅株式会社が公開会社である場合で、合併対価の全部または一部が譲渡制限株式等である場合(会法309③二、三)
株主総会の特殊決議が必要
④吸収合併消滅株式会社または新設合併消滅株式会社が種類株式発行会社である場合で、合併対価の全部または一部が譲渡制限株式等であるとき(会法783③、会法804③)
譲渡制限株式等の割当を受ける種類の株式(譲渡制限株式を除く)の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議が必要
ただし、種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存しない場合は、この決議は不要
⑤吸収合併消滅株式会社が種類株式発行会社である場合において、合併対価の全部または一部が持分等であるとき(会法783④)
持分等の割当てを受ける種類の株主の全員の同意が必要
⑥吸収合併存続株式会社が種類株式発行会社である場合において、合併対価が吸収合併存続株式会社の譲渡制限株式であるとき(会法795④)
その譲渡制限株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議が必要
※ その譲渡制限株式について会法199④の定めがある場合、
またはその種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存しない場合
⇒ この決議は不要
4.合併をすること等の通知・公告
株主および新株予約権者に、「差止め」と「株式買取請求権の行使」の機会を与えるために、以下の通知等をしなければならない。
(1) 吸収合併消滅会社
①株 主(会法785③④)
効力発生日の20日前までに、吸収合併をする旨、吸収合併存続会社の商号および住所を、通知しなければならない。ただし、
・吸収合併消滅株式会社が公開会社である場合 ⇒ 公告でよい
・株主総会の決議により合併契約が承認された場合
∴
また、吸収合併消滅株式会社が種類株式発行会社である場合において、合併対価等の全部または一部が持分等であるときは、通知等は不要( 総株主の同意を得ている)である。
②吸収合併消滅株式会社の全部の新株予約権者(会法787③④)
効力発生日の20日前までに、吸収合併をする旨、吸収合併存続会社の商号および住所を、通知または公告しなければならない。
(2) 吸収合併存続株式会社
①株 主(会法797③④)
効力発生日の20日前までに、吸収合併をする旨、吸収合併消滅会社の商号および住所(承継する消滅会社の資産の中に存続会社の株式があるときは、その株式に関する事項)を通知しなければならない。ただし、
・吸収合併存続会社が公開会社である場合 ⇒ 公告でよい
・株主総会の決議により合併契約が承認された場合
(3) 新設合併消滅株式会社
①株 主(会法806③④)
株主総会の決議の日から2週間以内に、新設合併をする旨、他の新設合併消滅会社および設立会社の商号および住所を、通知または公告しなければならない。
ただし、設立会社が持分会社である場合は、通知等は不要である。
②新設合併消滅株式会社の全部の新株予約権者(会法808③④)
株主総会の決議の日(新設合併設立会社が持分会社である場合で、新設合併契約について新設合併消滅株式会社の総株主の同意を得なければならないときは、その同意を得た日)から2 週間以内に、新設合併をする旨、他の消滅会社および設立会社の商号および住所を通知または公告しなければならない。
5.反対株主の株式買取請求権および債権者保護手続後記
6.効力発生
(1) 吸収合併(会法750①③、会法752①③、会法749①六、会法751①七)
合併契約で定められた合併の効力発生日に、消滅会社の権利義務の存続会社への承継および消滅会社の株主・社員への存続会社の株式等の発行が効力を生じる。
なお、消滅会社の解散は、吸収合併の登記の後でなければ、第三者に対抗できない(会法750
②、会法752②)。
(2) 新設合併(会法754①②、会法756①②)
設立会社の成立の日に、消滅会社の権利義務の設立会社への承継および消滅会社の株主・社員への設立会社の株式等の発行が効力を生じる。
7.合併書面等の備置き
(1) 吸収合併の場合(会法801①③④)
吸収合併存続株式会社は、効力発生日後遅滞なく、吸収合併により吸収合併存続株式会社が承継した吸収合併消滅会社の権利義務その他の吸収合併に関する事項として法務省令で定める事項を記載した書面(または記録した電磁的記録)を作成し、効力発生日から6ケ月間、本店に備え置かなければならない。
吸収合併存続株式会社の株主および債権者は、吸収合併存続株式会社に対して、営業時間内は、いつでも、この書面等の閲覧・交付等の請求をすることができる。
(2) 新設合併の場合(会法815①③④)
新設合併設立株式会社は、その成立の日後遅滞なく、新設合併により新設合併設立株式会社が承継した新設合併消滅会社の権利義務その他の新設合併に関する事項として法務省令で定める事項を記載した書面(または記録した電磁的記録)を作成し、設立株式会社の成立の日から6 ケ月間、本店に備え置かなければならない。
新設合併設立株式会社の株主および債権者は、新設合併設立株式会社に対して、営業時間内は、いつでも、この書面等の閲覧・交付等の請求をすることができる。
8.合併の登記
(1) 吸収合併(会法921)
吸収合併の効力が生じた日から2週間以内に、その本店の所在地において、吸収合併により消滅する会社については解散の登記をし、吸収合併後存続する会社については変更の登記をしなければならない。
(2) 新設合併(会法922)
会法922①各号の定める一定の日から2週間以内に、その本店の所在地において、設立会社については設立の登記をし、新設合併により消滅する会社については解散の登記をしなければならない。
4【持分会社の手続】
1.社員の同意(会法793①一、会法813①一)
持分会社が消滅会社となる吸収合併または新設合併をする場合は、効力発生日の前日までに、合併契約について持分会社の総社員の同意を得なければならない。
また、持分会社が存続会社となる吸収合併のうち、消滅会社の株主または社員が存続会社の社員となる場合には、吸収合併契約について持分会社の総社員の同意を得なければならない(会法 802①一)。
2.債権者保護手続(会法793②、会法789、会法813②、会法810)
吸収合併において、持分会社が消滅会社となる場合は、消滅する持分会社においても債権者保護手続をとる必要がある。
新設合併において、持分会社が消滅会社となる場合は、消滅する持分会社においても債権者保護手続をとる必要がある。
6【吸収合併に関するその他の問題】
(1) 合併に際して資本金または準備金として計上すべき額は、法務省令で定めるとされている。
(会法445⑤)
(2) 存続会社が消滅会社の債務の一部を承継しない吸収合併は許されない。合併は包括承継を生 じる一種特別の契約だからである。債務の一部を承継しない旨の記載が合併契約書にある場合、合併契約書全体が無効になるわけではなく、その記載だけが無効になるにすぎないとする立場 と合併無効の訴えの無効原因となるとする立場がある。
7【合併の本質】
合併は法律的にいかなる本質を有するか。これは、債務超過会社を吸収することができるか、という問題に関わってくる。
人格合一説(通説) | 現物出資説 | |
本 質 | 合併とは、2つ以上の会社という団体の合一という組織現象を生じる、一種特別の契約である。 | 合併は、消滅会社から新設・存続会社に対する現物出資である。 |
理 由 | 従来の契約理論では、合併の特別の効果を説明できない以上、特別の契約とxxに認めるべきである。 | 現物出資の手続と類似するからである。 |
批 判 | 「一種特別」では本質の説明になっていない。 | 出資者と株式の割当てを受ける者が異なる以上、現物出資とはいえない。 |
10-4 会社分割
1【意 義】
会社分割とは、会社の事業の全部または一部を、新設会社または承継会社に承継させることを目的とする会社の行為である。
会社分割には、株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割後他の会社に承継させる吸収分割(会法2①二九)と、1または2以上の株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割により設立する会社に承継させる新設分割(会法2①三十)がある。
- 合名会社、合資会社は不可 -
無限連帯責任を信じた債権者に損害を与える可能性があるため
株式会社
合名会社
合資会社
合同会社
合同会社
株式会社
2【効 果】
1.権利義務の包括承継(会法759①、会法761①、会法764①、会法766①)
承継会社または設立会社は、分割契約書または分割計画書の記載に従い、分割会社の権利義務を包括承継する。従って、債務も、原則として、債権者の承諾なくして免責的に承継される。
2.分割対価の取得(会法759④、会法761④、会法764④、会法766④)
分割会社は、承継会社または設立会社の株式、持分、社債、新株予約権、新株予約権付社債を取得し、あるいは金銭その他の承継会社または設立会社の株式等以外の財産の交付を受ける。
【吸収分割】 【新設分割】
(株主) (株主) (株主)
X 社
分割
X Y Z
X 社
吸収
α β γ
Y 社
分割対価
A B C α β γ A B C
Y 社
X 社
A B C
社
X
Y社
分割対価 新設
3【株式会社の手続】
1.吸収分割契約の締結(会法757)または新設分割計画の作成(会法762)
吸収分割をするには、まず当事会社が吸収分割契約を締結しなければならず、この吸収分割契約に定めるべき事項は法定されている(会法758、会法760)。
また、新設分割の場合には新設分割計画書を作成しなければならず、新設分割計画に定めるべき事項も法定されている(会法763、会法765)。
2.吸収分割契約および新設分割計画に関する書面等の備置きおよび閲覧等
(1) 吸収分割の場合(会法782①③、会法794①③)
吸収分割の各当事会社は、一定の日(吸収合併契約等備置開始日)から吸収分割契約の効力発 生日後6ヶ月を経過する日まで、吸収分割契約の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面(または記録した電磁的記録)を本店に備置いて、事前に開示しなければならない。
吸収分割の各当事会社の株主および債権者は、営業時間内は、いつでも、この書面等の閲覧
・交付等の請求をすることができる。
(2) 新設分割の場合(会法803①③)
新設分割株式会社は、一定の日(新設合併契約等備置開始日)から新設分割設立会社の成立の日後6ヶ月を経過する日まで、新設分割計画の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面(または記録した電磁的記録)を本店に備え置いて、事前に開示しなければならない。
新設分割株式会社の株主および会社債権者は、営業時間内は、いつでも、この書面等の閲覧
・交付等の請求をすることができる。
3.分割承認決議
(1) x x(会法783①、会法795①、会法804①、会法309②xx)
吸収分割の各当事会社は、株主総会の特別決議により、吸収分割契約について効力発生日の前までに、承認を得なければならない。
また、新設分割の分割会社も、株主総会の特別決議により新設分割計画について承認を得なければならない。
(2) 特別な手続が必要となる場合(会法795④)
吸収分割承継株式会社が種類株式発行会社である場合で、分割対価が吸収分割承継株式会社の譲渡制限株式であるときは、その譲渡制限株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議が必要である。
ただし、その譲渡制限株式について会法199④の定めがある場合またはその種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存しない場合は、この決議は不要である。
4.会社分割をすること等の通知・公告
株主および新株予約権者に差止めと株式買取請求権の行使の機会を与えるために、以下の通知等をしなければならない。
(1) 吸収分割株式会社
①株 主(会法785③)
効力発生日の20日前までに、吸収分割をする旨、吸収分割承継会社の商号および住所を通知しなければならない
ただし、吸収分割株式会社が公開会社である場合および株主総会の決議により分割契約が承認された場合は、公告でよい(会法785④)。
②吸収分割契約新株予約権および吸収分割契約新株予約権以外の新株予約権であって、吸収分割をする場合において、当該新株予約権の新株予約権者に吸収分割承継株式会社の新株予約権を交付することとする旨の定めがあるものの新株予約権者(会法787③④)
効力発生日の20日前までに、吸収分割をする旨、吸収分割承継会社の商号および住所を通知または公告しなければならない。
(2) 吸収分割承継株式会社
株主に対し、効力発生日の20日前までに、吸収分割をする旨ならびに吸収分割会社の商号および住所(承継する吸収分割会社の資産の中に吸収分割承継会社の株式があるときは、その株式に関する事項)を通知しなければならない(会法797③)
ただし、吸収分割承継会社が公開会社である場合および株主総会の決議により分割契約が承認された場合は、公告でよい(会法797④)。
(3) 新設分割株式会社(会法806③④)
①株 主
株主総会の決議の日から2週間以内に、新設分割をする旨ならびに他の新設分割会社および設立会社の商号および住所を通知または公告しなければならない。
ただし、設立会社が持分会社である場合は、通知等は不要である。
②設立会社が株式会社である場合における新設分割株式会社は、株主総会の決議の日から2週間以内に、新設分割計画新株予約権または新設分割計画新株予約権以外の新株予約権であって、新設分割をする場合において当該新株予約権の新株予約権者に新設分割設立株式会社の新株予約権を交付することとする旨の定めがあるものの新株予約権者に対し、新設分割をする旨ならびに他の新設分割会社および設立会社の商号および住所を通知または公告しなければならない(会法808③④)
5.反対株主の株式買取請求権および債権者保護手続後記
6.効力発生
(1) 吸収分割(会法758①七、会法760①六、会法759①④、会法761①④)
吸収分割契約で定められた分割の効力発生日に、分割会社の権利義務の承継会社への承継および分割会社への承継会社の株式等の発行が効力を生じる。
(2) 新設分割(会法764①④、会法766①④)
設立会社の成立の日に、分割会社の権利義務の設立会社への承継および分割会社への設立会社の株式等の発行が効力を生じる。
7.分割書面等の備置き
(1) 吸収分割の場合(会法791①②③、会法801②③④⑤)
吸収分割株式会社および吸収分割承継株式会社は、効力発生日後遅滞なく、吸収分割により吸収分割承継会社が承継した分割会社の権利義務その他の吸収分割に関する事項として法務省令で定める事項を記載した書面(または記録した電磁的記録)を作成し、効力発生日から6ヶ月間、本店に備え置かなければならない。
吸収分割株式会社および吸収分割承継株式会社の株主、債権者その他の利害関係人は、分割会社および承継会社に対して、営業時間内は、いつでも、この書面等の閲覧・交付等の請求をすることができる。
(2) 新設分割の場合(会法811①②③、会法815②③⑤)
新設分割株式会社および新設分割設立株式会社(合同会社のみが新設分割をする場合に限る)は、新設分割設立会社の成立の日後遅滞なく、新設分割により新設分割設立会社が承継した新設分割株式会社の権利義務その他の新設分割に関する事項として法務省令で定める事項を記載した書面(または記録した電磁的記録)を作成し、新設分割設立会社の成立の日効力発生日から
6ヶ月間、本店に備え置かなければならない。
新設分割株式会社および新設分割設立株式会社の株主、債権者その他の利害関係人は、設立会杜に対して、営業時間内は、いつでも、この書面等の閲覧・交付等の請求をすることができる。
8.分割の登記
(1) 吸収分割(会法923)
吸収分割の効力が生じた日から2週間以内に、その本店の所在地において、分割会社および承継会社については変更の登記をしなければならない。
(2) 新設分割(会法924)
会法924①各号の定める一定の日から2週間以内に、その本店の所在地において、設立会社については設立の登記をし、分割会社については変更の登記をしなければならない。
4【合同会社の手続】
1.総社員の同意(会法793①、会法813①、会法802①)
合同会社が分割会社となる吸収分割または新設分割をする場合は、効力発生日の前日までに、吸収分割契約または新設分割計画について合同会社の総社員の同意を得なければならない。
持分会社が承継会社となる吸収分割のうち、分割会社が承継会社の社員となる場合には、吸収分割契約について持分会社の総社員の同意を得なければならない。
2.債権者保護手続(会法793②、会法813②、会法810)
吸収分割、新設分割を問わず、合同会社が分割会社となる場合は、分割会社である合同会社においても債権者保護手続をとる必要がある。
10-5 株式交換
1【定 義】
株式交換とは、株式会社がその発行済株式(株式会社が発行している株式をいう)の全部を他の株式会社または合同会社に取得させることをいう(会法2①31号)。
2【効 果】
1.完全子会社のすべての株式の取得(会法769①、会法771①)
株式交換により、完全親会社となる会社が、完全子会社となる会社の株主の有する株式のすべてを取得する。
2.交換対価の取得(会法769③、会法771③)
完全子会社となる会社の株主は、完全親会社となる会社の株式、持分、社債、新株予約権、新株予約権付社債を取得し、あるいは金銭その他の完全親会社となる会社の株式等以外の財産の交付を受ける。
【株式交換】
(株主) (株主 or 出資) (株主 or 出資)
Y 社
X 社
A B C α β γ A B C α β γ
Y 社
株式or合同 ⇒
X 社株式
3【株式会社の手続】
1.株式交換契約の締結(会法767)
株式交換をするにはまず当事会社が株式交換契約を締結しなければならないが、この株式交換契約に定めるべき事項は法定されている(会法768、会法770)。
2.株式交換に関する書面等の備置きおよび閲覧等(会法782①③、会法794①③)
株式交換の各当事会社は、一定の日(株式交換契約等備置開始日)から株式交換の効力発生日後
6ヶ月を経過する日まで、株式交換契約の内容その他法務省令で定める事項を記載し、または記録した書面または電磁的記録を本店に備え置いて、事前に開示しなければならない。
株式交換完全子会社の株主および新株予約権者、また、株式交換完全親会社の株主(一定の場合 には債権者)は、営業時間内は、いつでも、この書面等の閲覧・交付等の請求をすることができる。
3.株式交換契約承認決議
(1) x x(会法783①、会法795①、会法309②xx)
株式交換の各各当事会社は、効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議により株式交換 契約について承認を得なければならない(効力発生日の前までに承認を得ることが必要である)。
(2) 特別な手続が必要となる場合
①株式交換完全子会社が種類株式発行会社ではない場合において、その株主に対して受付する金銭等(交換対価)の全部または一部が持分等であるとき(会法783②)
株式交換契約について株式交換完全子会社の総株主の同意
②株式交換完全子会が公開会社であり、かつ、交換対価の全部または一部が譲渡制限株式等である場合(会法309③二)
株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上であって、その株主の議決権の3分の2以上に当たる多数による承認決議(株主数、議決件数についてこれを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)
③株式交換完全子会社が種類株式発行会社である場合において、交換対価の全部または一部が譲渡制限株式等であるとき(会法783③)
譲渡制限株式等の割当を受ける種類の株式(譲渡制限株式を除く)の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議が必要
ただし、種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存しない場合は、この決議は不要
④株式交換完全子会社が種類株式発行会社である場合において、交換対価の全部または一部が持分等であるとき(会法783④)
持分等の割当てを受ける種類の株主の全員の同意
⑤株式交換完全親会社が種類株式発行会社である場合において、交換対価が株式交換完全親会社の譲渡制限株式であるとき(会法795④)
その譲渡制限株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議が必要
ただし、その譲渡制限株式について会法199④の定めがある場合またはその種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存しない場合は、この決議は不要
4.株式交換をすること等の通知・公告
株主および新株予約権者に差止めと株式買取請求権の行使の機会を与えるために、以下の通知等をしなければならない。
(1) 株式交換完全子会社
①株 主(会法785③④)
効力発生日の20日前までに、株式交換をする旨、株式交換完全親会社の商号および住所を通知しなければならない。ただし、株式交換完全子会社が公開会社である場合および株主総会の決議により株式交換契約が承認された場合は、公告でよい。
また、株式交換完全子会社が種類株式発行会社である場合において、合併対価等の全部または一部が持分等であるときは、通知等は不要である。
②株式交換完全親会社が株式会社である場合における株式交換完全子会社は、効力発生日の20日前までに、株式交換契約新株予約権および株式交換契約新株予約権以外の新株予約権であって、株式交換をする場合において当該新株予約権の新株予約権者に株式交換完全親株式会社の新株予約権を交付することとする旨の定めがあるものの新株予約権者に対し、株式交換をする旨ならびに株式交換完全親会社の商号および住所を通知または公告しなければならない(会法787③三④)。
(2) 株式交換完全親会社(会法797③④)
①株 主
効力発生日の20日前までに、株式交換をする旨、株式交換完全子会社の商号および住所を通知しなければならない。
ただし、株式交換完全親会社が公開会社である場合および株主総会の決議により分割契約が承認された場合は、公告でよい。
5.反対株主の株式買取請求権および債権者保護手続後記
6.効力発生
株式交換契約で定められた株式交換の効力発生日(会法768①六、会法770①五)に、株式交換完全親会社の株式交換完全子会社の発行済株式全部(株式交換完全親会社が有する株式を除く)の取得および株式交換完全子会社の株主への株式交換完全親会社の株式等の発行が効力を生じる
(会法769①、会法771①、会法769③、会法771③)。
7.交換書面等の備置き(会法791①②④、会法801③⑥)
株式交換完全子会社および株式交換完全親会社は、効力発生日後遅滞なく、株式交換により株式交換完全親会社が取得した株式交換完全子会社の株式の数その他の株式交換に関する事項として法務省令で定める事項を記載した書面(または記録した電磁的記録)を作成し、効力発生日から
6ヶ月間、本店に備え置かなければならない。
株式交換の効力発生日に株式交換完全子会社の株主または新株予約権者であった者および株式交換親会社の株主(一定の場合は債権者)は、株式交換完全子会社または株式交換完全親会社に対して、営業時間内は、いつでも、この書面等の閲覧・交付等の請求をすることができる。
4【合同会社の手続】
(1) 社員の同意(会法802①)
持分会社が株式交換により株式会社の発行済株式の全部を取得する場合は、効力発生日の前日までに、株式交換契約について総社員の同意を得なければならない。
(2) 債権者保護手続(会法802②、会法799)
合同会社が株式交換完全親会社となる場合は、株式交換完全親会社である合同会社においても債権者保護手続をとる必要がある。
10-6 株式移転
1【定 義】
株式移転とは、1または2以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることをいう(会法2①xx)。
【株式移転】
Y 社
X 社
Y社(新設)
株式
X 社
株式
(株主) (株主) (株主) A B C A B C
⇒
2【効 果】
株式移転により、新設される完全親会社となる会社が、完全子会社となる会社の株主の有する株式のすべてを取得する(会法774①)。完全子会社となる会社の株主は、新設される完全親会社となる会社の株式、持分、社債、新株予約権、新株予約権付社債を取得する(会法774②③)。
株式移転の効力は完全親会社の成立の日に生ずる(会法774①)。
3【株式会社の手続】
1.株式移転計画の作成(会法772)
株式移転をするには、まず当事会社が株式移転計画を作成しなければならないが、この株式移転計画に定めるべき事項は法定されている(会法773)。
2.株式移転に関する書面等の備置きおよび閲覧等(会法803①③)
株式移転完全子会社は、一定の日(吸収合併契約等備置開始日)から株式移転設立完全親会社の 成立の日後6ヶ月を経過する日まで、株式移転契約の内容その他法務省令で定める事項を記載し、または記録した書面または電磁的記録を本店に備え置いて、事前に開示しなければならない。
株式移転完全子会社の株主および新株予約権者は、営業時間内は、いつでも、この書面等の閲覧・交付等の請求をすることができる。
3.株式移転計画承認決議
(1) x x(会法804①、会法309②xx)
株式移転完全子会社は、効力発生日の前日までに株主総会の特別決議により株式移転計画について承認を得なければならない。
(2) 特別な手続が必要となる場合
①株式移転完全子会社が公開会社であり、かつ、移転対価の全部または一部が譲渡制限株式等である場合(会法309③三)
株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上であって、その株主の議決権の3分の2以上に当たる多数による承認決議(株主数、議決件数についてこれを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)
②株式交換完全子会社が種類株式発行会社である場合において、移転対価の全部または一部が譲渡制限株式等であるとき(会法804③)
譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式(譲渡制限株式を除く)の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議が必要
ただし、その種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存しない場合は、この決議は不要
4.株式移転をすること等の通知・公告
株式移転完全子会社は、株主および新株予約権者に差止めと株式買取請求権の行使の機会を与えるために、以下の通知等をしなければならない。
(1) 株 主(会法806③④)
株主総会決議の日から2週間以内に、株式移転をする旨、他の株式移転完全子会社および株式移転設立完全親会社の商号および住所を通知または公告しなければならない。
(2) 株式移転完全子会社は、株主総会決議の日から2週間以内に、株式移転計画新株予約権および株式移転計画新株予約権以外の新株予約権であって、株式移転をする場合において当該新株予約権の新株予約権者に株式移転設立完全親会社の新株予約権を交付することとする旨の定めがあるものの新株予約権者に対し、株式移転をする旨ならびに他の株式移転完全子会社および株式移転設立完全親会社の商号および住所を通知または公告しなければならない(会法808③三
、④)。
5.反対株主の株式買取請求権および債権者保護手続後記
6.株式移転の登記(会法925)
会法925各号の一定の日から2週間以内に、株式移転設立完全親会社について、その本店の所在地において、設立の登記をしなければならない。
7.効力発生(会法774①、会法774②③)
株式移転により、株式移転設立完全親会社の成立の日に、株式移転完全子会社の株主の有する株式のすべてを、株式移転設立完全親会社が取得する。
また、株式移転により、株式移転設立完全親会社の成立の日に、株式移転完全子会社の株主は、株式移転設立完全親会社の株式、社債、新株予約権、新株予約権付社債を取得する。
8.移転書面等の備置き(会法811①②④、会法815③④⑥)
株式移転完全子会社および株式移転設立完全親会社は、株式移転設立完全親会社の成立の日後遅滞なく、株式移転により株式移転設立完全親会社が取得した株式移転完全子会社の株式の数その他の株式移転に関する事項として法務省令で定める事項を記載し、または記録した書面または電磁的記録を作成し、効力発生日から6ヶ月間、本店に備え置かなければならない。
株式移転設立完全親会社の成立の日に株式移転完全子会社の株主または新株予約権者であった者および株式移転設立完全親会社の株主および新株予約権者は、株式移転完全子会社または株式移転設立完全親会社に対して、営業時間内は、いつでも、この書面等の閲覧・交付等の請求をすることができる。
10-7 略式組織再編行為
1【略式組織再編行為(事業の譲受けを含む)が認められる場合】
1.特別支配会社
特別支配会社とは、ある株式会社の総株主の議決権の10分の9(定款で引上げ可)以上を他の会社及び当該他の会社が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人が有している場合における当該他の会社をいう。
2.事業の譲渡等(会法468①)
契約の相手方が特別支配会社である場合、被支配会社では株主総会の特別決議は不要である。
※ 特別支配会社では、株主総会の特別決議が必要。
3.吸収合併
(1) 存続会社が消滅会社の特別支配会社である場合(会法784①)消滅会社における株主総会の特別決議は不要である。
(2) 消滅会社が存続会社の特別支配会社である場合(会法796①)存続会社における株主総会の特別決議は不要である。
4.吸収分割
(1) 承継会社が分割会社の特別支配会社である場合(会法784①)分割会社における株主総会の特別決議は不要である。
(2) 分割会社が承継会社の特別支配会社である場合(会法796①)承継会社における株主総会の特別決議は不要である。
4.株式交換
(1) 完全親会社となる会社が完全子会社となる会社の特別支配会社である場合(会法784①)完全子会社となる会社における株主総会の特別決議は不要である。
(2) 完全子会社となる会社が完全親会社となる会社の特別支配会社である場合(会法796①)完全親会社となる会社における株主総会の特別決議は不要である。
2【趣 旨】
被支配会社の株主総会の特別決議が成立するのはほぼ確実であり、それにもかかわらず、多くの時間や費用を投じて株主総会を開くことに合理性がないからである。
3【株主総会の承認決議が必要となる場合】
吸収合併または株式交換における合併対価等の全部または一部が譲渡制限株式等である場合であって、消滅会社または株式交換により完全子会社となる会社が公開会社であり、かつ、種類株式発行会社でないときは、株主総会の特別決議による承認が必要である(会法784①但書)。これは、株式譲渡制限を新たに設ける定款変更の手続との均衡を図るためである。
また、吸収合併消滅株式会社もしくは株式交換完全子会社の株主、吸収合併消滅持分会社の社員または吸収分割会社に対して交付する金銭等の全部または一部が存続株式会社等の譲渡制限株式である場合であって、存続株式会社等が公開会社でないときは、株主総会の特別決議による承認が必要である(会法796①但書)。
4【差止請求権】
以下の場合には、披支配会社の株主に、略式組織再編行為に対する差止請求権が認められている。
(1) 被支配会社の株主が略式組織再編行為によって不利益を受ける恐れがあること(会法784②)
(2) 略式組織再編行為が法令定款に違反している場合または合併対価・分割対価・株式交換対価の種類、内容および割当に関する事項が消滅会社・分割会社・完全子会社となる会社または存続会社・承継会社・完全親会社となる会社の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当である場合(会法796②)
10-8 簡易な組織再編行為
1【簡易な組織再編行為(事業の譲受けを含む)が認められる場合】
1.他の会社の事業全部の譲受(会法468②)
他の会社の事業の全部の対価として交付する財産の帳簿価額の合計額が、譲受会社の純資産額 の5分の1(定款で引下げ可)を超えないときは、譲受会社における株主総会の特別決議は不要である。
2.吸収合併(会法796③)
消滅会社の株主等に対して交付する以下の財産の金額の合計額が、存続会社の純資産額の5分の1を越えないときは、存続会社における株主総会の特別決議は不要である。
①存続会社の株式の数に一株当たり純資産額を乗じて得た額
②存続会社の社債、新株予約権または新株予約権付社債の帳簿価額の合計額
③存続会社の株式等以外の財産の帳簿価額の合計額
ただし、合併差損が生じるとき、合併対価が存続会社の譲渡制限株式であって、存続会社が公開会社でないときはこの限りでない(会法796③但書)。
3.会社分割
(1) 分割会社(会法784③、会法805)
承継会社(または設立会社)に承継させる資産の帳簿価額の合計額が、分割会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1(これを下回る割合を吸収分割株式会社の定款で定めた場合、または新設分割株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えないとき
分割会社における株主総会の特別決議は不要である。
2【趣 旨】
1.株主総会の特別決議による承認を得なくてもよいとされる趣旨
これらの場合、株主への影響は極めて小さいので、株主総会の特別決議による承認を得なくても、株主の保護に欠けることはない。
また、株主総会の招集には時間と費用がかかるが、株主への影響が極めて小さい場合に、多くの時間や費用を投じて株主総会を開くことに合理性がない。
2.例外の趣旨
(1) 合併差損等が生じるときに株主総会の決議による承認が必要なのは、差損を生じるような組織再編行為を行う必要性を株主に説明させるためである。
(2) 合併対価が存続会社の譲渡制限株式であって、存続会社が公開会社でないとき等に株主総会の決議による承認が必要なのは非公開会社における募集株式の発行の際に、株主総会の特別決議を要することとの均衡を図るためである。
3【株主総会の承認決議が必要となる場合】
上記の要件に当てはまる場合でも、法務省令で定める数の株式(承認株主総会において議決権を行使することができるものに限る)を有する株主が、他の会社の事業全部の譲受、合併、会社分割または株式交換をする旨の通知・公告日から2週間以内にそれらの行為に反対する旨を会社に対 し通知したときは、会社は、効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議によって承認を受けなければならない(会法468③、会法796④、会法309②十一、十二)。
ただし、会社分割における分割会社については、上記の要件に当てはまる場合でも、常に株主総会の承認決議は不要である(会法784③、会法805参照)。
(2) 承継会社(会法796③)
分割会社に対して交付する以下のものの金額の合計額が、承継会社の純資産額の5分の1を越えないときは、承継会社における株主総会の特別決議は不要である。
①承継会社の株式の数に一株当たり純資産額を乗じて得た額
②承継会社の社債、新株予約権または新株予約権付社債の帳簿価額の合計額
③承継会社の株式等以外の財産の帳簿価額の合計額
ただし、合併差損が生じるとき、分割対価が承継会社の譲渡制限株式であって、承継会社が公開会社でないときはこの限りでない。
4.株式交換(会法796③)
完全子会社となる会社の株主に対して交付する以下のものの金額の合計額が、完全親会社とな る会社の純資産額の5分の1を越えないときは、完全親会社となる会社における株主総会の特別決議は不要である。
①完全親会社となる会社の株式の数に一株当たり純資産額を乗じて得た額
②完全親会社となる会社の社債、新株予約権または新株予約権付社債の帳簿価額の合計額
③完全親会社となる会社の株式等以外の財産の帳簿価額の合計額
ただし、交換差損が生じるとき、交換対価が完全親会社となる会社の譲渡制限株式であって、完全親会社となる会社が公開会社でないときはこの限りでない。
10-9 株式買取請求権・新株予約権買取請求権
1【株式買取請求権】
1.趣 旨
組織再編行為(事業の譲渡等を含む)に反対する株主に投下資本回収の手段を与え、経済的に救済するためである。
2.株式買取請求権が認められる場合
以下の場合には、組織再編行為に反対する株主は、会社に対し、自己の有する株式をxxな価格で買い取ることを請求することができる。
(1) 株主総会の承認を要する場合
①組織再編行為を承認する株主総会において議決権を行使できる株主
株主総会に先立って反対する旨を会社に通知し、かつ株主総会において反対した以下の株主事業譲渡をする株式会社(会法469①②一イ)
吸収合併、吸収分割、株式交換をする当時会社(会法785①②一イ、会法797①②一イ)新設合併をする消滅会社、新設分割をする会社、株式移転完全子会社(会法806①②一)
②組織再編行為を承認する株主総会において議決権を行使できない株主事業譲渡をする株式会社(会法469①②一ロ)
吸収合併、吸収分割、株式交換をする当時会社(会法785①②一ロ、会法797①②一ロ)新設合併をする消滅会社、新設分割をする会社、株式移転完全子会社(会法806①②二)
(2) 株主総会の承認を要しない場合
全ての株主(会法469①②ニ、会法785①②二、会法797①②ニ)
3.反対株主の株式買取請求権が認められない場合
(1) 営業全部を譲渡する場合において、株主総会の承認決議と同時に会社の解散の決議がされたとき(会法469①但書)
(2) 吸収合併、新設合併、株式交換において総株主の同意あるいは種類株主全員の同意が必要な場合(会法785①一、会法785②括弧書、会法806①一)
(3) 会社分割における分割会杜について簡易組織再編行為ができる場合(会法785①二、会法806①二)
4.株式買取請求権の行使
(1) 事業譲渡等、吸収合併、吸収分割、株式交換の場合
それらの行為の効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類および種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない(会法469⑤、会法785⑤、会法797⑤)。
(2) 新設合併、新設分割、株式移転の場合
それらの行為をする旨等の通知・公告をした日から20日以内に、その株式買取請求に係る株 式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない(会法806⑤)。
2【新株予約権の買取請求権】
1.趣 旨
新株予約権の発行事項の定めと異なると、取扱を受ける新株予約権の新株予約権者に、投下資本回収の手段を与え、経済的に救済をするためである。
2.新株予約権の買取請求権が認められる場合
以下の場合には、新株予約権者は、消滅会社、分割会社または完全子会社となる会社に対し、自己の有する新株予約権をxxな価格で買取ることを請求することができる。
(1) 吸収合併(会法787①一)
消滅会社の新株予約権のうち、吸収合併契約書における消滅会社の新株予約権の取扱いに関する定めが、消滅会社の新株予約権の発行事項における新株予約権の承継に関する定めに合致する新株予約権以外の新株予約権
(2) 新設合併(会法808①一)
消滅会社の新株予約権のうち、新設合併契約書における消滅会社の新株予約権の取扱いに関する定めが、消滅会社の新株予約権の発行事項における新株予約権の承継に関する定めに合致する新株予約権以外の新株予約権
(3) 吸収分割(吸収分割承継会社が株式会社である場合に限る)(会法787①二)
吸収分割契約新株予約権および吸収分割契約新株予約権以外の新株予約権であって、吸収分割をする場合において、当該新株予約権の新株予約権者に吸収分割承継株式会社の新株予約権を交付することとする旨の定めがあるもののうち、吸収分割契約書における分割会社の新株予約権の取扱いに関する定めが、分割会社の新株予約権の発行事項における新株予約権の承継に関する定めに合致する新株予約権以外の新株予約権
(4) 新設分割(新設分割設立会社が株式会社である場合に限る)(会法808①二)
新設分割計画新株予約権および新設分割計画新株予約権以外の新株予約権であって、新設分割をする場合において当該新株予約権の新株予約権者に新設分割設立株式会社の新株予約権を交付することとする旨の定めがあるもののうち、新設分割計画における分割会社の新株予約権の取扱いに関する定めが、分割会社の新株予約権の発行事項における新株予約権の承継に関する定めに合致する新株予約権以外の新株予約権
(5) 株式交換(株式交換完全親会社が株式会社である場合に限る)(会法787①三)
株式交換完全子会社の新株予約権であって、株式交換契約新株予約権および株式交換契約新株予約権以外の新株予約権であって、株式交換をする場合において当該新株予約権の新株予約権者に株式交換完全親株式会社の新株予約権を交付することとする旨の定めがあるもの
(6) 株式移転(会法808①三)
株式移転計画新株予約権および株式移転計画新株予約権以外の新株予約権であって、株式移転をする場合において当該新株予約権の新株予約権者に株式移転設立完全親会社の新株予約権を交付することとする旨の定めがあるもののうち、株式移転計画における株式移転設立完全親会社の新株予約権の取扱いに関する定めが、完全子会社となる会社の新株予約権の発行事項における新株予約権の承継に関する定めに合致する新株予約権以外の新株予約権
10-10 債権者保護手続
1【債権者保護手続の対象となる債権者】
1.吸収合併
(1) 消滅会社の債権者(会法789①一)
(2) 存続会社の債権者(会法799①一)
2.新設合併
(1) 消滅会社の債権者(会法810①一)
3.吸収分割
(1) 分割会社(会法789①二)
吸収分割後、分割会社に対して債務の履行(当該債務の保証人として承継会社と連帯して負担する保証債務の履行を含む)を請求することができない分割会社の債権者
ただし、分割会社が、全部取得条項付株式の取得(対価は会社分割により取得した承継会社または設立会社の株式)または剰余金の配当(配当財産は会社分割により取得した承継会社または設立会社の株式)を行う場合にあっては、吸収分割株式会社の債権者
(2) 承継会社の債権者(会法799①二)
4.新設分割
(1) 分割会社(会法810①二)
新設分割後、分割会社に対して債務の履行(当該債務の保証人として設立会杜と連帯して負担する保証債務の履行を含む)を請求することができない分割会社の債権者
ただし、分割会社が、全部取得条項付株式の取得(対価は会社分割により取得した承継会社または設立会杜の株式)または剰余金の配当(配当財産は会社分割により取得した承継会社または設立会杜の株式)を行う場合にあっては、吸収分割株式会社の債権者
5.株式交換
(1) 完全子会社となる会社(会法789①三)
株式交換契約新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権である場合には、新株予約権付社債の社債権者
この場合は、社債の債務者が交替するので、新株予約権付社債の社債権者に影響がある。
(2) 完全親会社となる会社
完全子会社となる会社の株主に対して交付する金銭等が完全親会社となる会社の株式その他これに準ずるものとして法務省令で定めるもののみである場合以外の場合または完全親会社となる会社が完全子会社となる会社の新株予約権付社債を承継する場合には、完全親会社となる会社の債権者(会法799①三)
この場合は、完全親会社となる会社の財産が減少し、あるいは完全親会社となる会社は、社債の債務を承継するので、全債権者に影響がある。
6.株式移転(会法810①三)
株式移転計画新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権である場合には、新株予約権付社債の社債権者
この場合は、社債の債務者が交替するので、新株予約権付社債の社債権者に影響がある。
2【債権者保護手続の内容】
1.x x
債権者が異議を述べることができる場合は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者(同項の規定によりを述べることができるものに限る)には、各別にこれを催告しなければならない(会法789②、会法799②、会法810②)。
(1) 吸収合併(会法789②)
①吸収合併をする旨
②消滅会社または存続会社の商号および住所
③消滅株式会社および存続株式会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
④債権者が一定の期間(1ヶ月以上)内に異議を述べることができる旨
(2) 新設合併(会法810②)
①新設合併をする旨
②他の消滅会社および設立会社の商号および住所
③消滅株式会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
④債権者が一定の期間(1ヶ月以上)内に異議を述べることができる旨
(3) 吸収分割(会法799②)
①吸収分割をする旨
②分割会社または承継会社の商号および住所
③分割株式会社および承継株式会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
④債権者が一定の期間(1ヶ月以上)内に異議を述べることができる旨
(4) 新設分割(会法810②)
①新設分割をする旨
②他の分割会社および設立会社の商号および住所
③分割株式会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
④債権者が一定の期間(1ヶ月以上)内に異議を述べることができる旨
(5) 株式交換(会法799②)
①株式交換をする旨
②完全親会社となる株式会社または完全子会社となる株式会社の商号および住所
③完全親会社となる株式会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
④債権者が一定の期間内(1ヶ月以上)に異議を述べることができる旨
(6) 株式移転(会法810②)
①株式移転をする旨
②他の完全子会社となる会社および設立会社の商号および住所
③完全子会社となる株式会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
④債権者が一定の期間(1ヶ月以上)内に異議を述べることができる旨
2.催告の不要(会法789③、会法799③、会法810③)
会社が上記の公告を、官報のほか、会法939①の規定による定款の定めに従い、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法または電子公告に掲げる方法によりするときは、知れている債権者に対する各別の催告は不要である。
ただし、この場合でも、吸収分割をする場合には、不法行為によって生じた吸収分割株式会社の債務の債権者に対しては、催告しなければならない(会法789③括弧書)。
3.債権者の異議
(1) 債権者が異議を述べることができる期間内に異議を述べなかったときその債権者は、その組織再編行為について承認をしたものとみなす
(会法789④、会法799④、会法810④)。
(2) 債権者が異議を述べることができる期間内に異議を述べたとき(会法789⑤、会法799⑤、会法 810⑤)
会社は、その組織再編行為をしても債権者を害するおそれがないときを除き、その債権者に対し、弁済し、もしくは相当の担保を提供し、またはその債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。
4.会社分割において各別の催告を受けなかった分割会社の債権者の権利
(1) 分割会社に対して(会法759②、会法761②、会法764②、会法766②)
吸収分割の効力発生日または設立会社の成立の日に有していた財産の価格を限度として債務 の履行を請求することができる。
(2) 承継会社・設立会社に対して(会法759③、会法761②③、会法764③、会法766③)分割会社から承継した財産を限度として債務の履行を請求することができる。
債 権 | 者 保 護 | 株式買取請求 | ||
対 象 | x x | |||
事業譲渡 | なし (免責的債務引受は債権者の同意が必要なため、 規定されていない) | 譲渡会社:○ (例外あり) 譲受会社:× | ||
合 | 併 | すべての債権者 | ①組織変更の旨 ②他の当時会社等の住所・商号 ③他の当時会社等の計算書類等 ④1ヶ月以内に異議を申し立てることができる旨 | ○ |
分 | 割 | 債権が移転する債権者 | ||
株式交換 | 新株予約権付社債の社債権者 | |||
株式移転 |
10-11 瑕疵ある組織再編行為の効力を争う方法
1【特別の訴えの制度】
組織再編行為の手続に違反があった場合、それによって利益を害される者を保護するために組織再編行為は無効になるのが原則である。しかし、民法・民事訴訟法の一般原則によって組織再編行為を無効としたのでは、法的安定性を害するし、法律関係の画一的確定も図れない。
そこで、会社法は組織再編行為の無効に関し特別の訴えの制度を設け、無効主張の可及的制限
・無効の遡及効阻止・法律関係の画一的確定の要請を満たすようにしている。
2【提訴期間・提訴権者】
1.吸収合併(会法828①七)
「合併無効の訴え」を吸収合併の効力が生じた日から6ヶ月以内
(1) 吸収合併の効力が生じた日において吸収合併をする会社の株主等もしくは社員等であった者
(2) 吸収合併後存続する会社の株主等、社員等、破産管財人
(3) 吸収合併について承認をしなかった債権者(会法828②七)
2.新設合併(会法828①八)
「合併無効の訴え」を新設合併の効力が生じた日から6ヶ月以内
(1) 新設合併の効力が生じた日において新設合併をする会社の株主等もしくは社員等であった者
(2) 新設合併により設立する会社の株主等、社員等、破産管財人
(3) 新設合併について承認をしなかった債権者(会法828②八)
3.吸収分割(会法828①九)
「分割無効の訴え」を吸収分割の効力が生じた日から6ヶ月以内
(1) 吸収分割の効力が生じた日において吸収分割契約をした会社の株主等もしくは社員等であった者
(2) 吸収分割契約をした会社の株主等、社員等、破産管財人
(3) 吸収分割について承認をしなかった債権者(会法828②九)
4.新設分割(会法828①十)
「分割無効の訴え」を新設分割の効力が生じた日から6ヶ月以内
(1) 新設分割の効力が生じた日において新設分割をする会社の株主等もしくは社員等であった者
(2) 新設分割をする会社もしくは新設分割により設立する会社の株主等、社員等、破産管財人
(3) 新設分割について承認をしなかった債権者(会法828②十)
5.株式交換(会法828①xx)
「株式交換無効の訴え」を株式交換の効力が生じた日から6ケ月以内
(1) 株式交換の効力が生じた日において株式交換契約をした会社の株主等もしくは社員等であった者
(2) 株式交換契約をした会社の株主等、社員等、破産管財人
(3) 株式交換について承認をしなかった債権者(会法828②xx)
6.株式移転(会法828①xx)
「株式移転無効の訴え」を株式移転の効力が生じた日から6ケ月以内
(1) 株式移転の効力が生じた日において株式移転をする株式会社の株主等であった者
(2) 株式移転により設立する株式会社の株主等(会法828②xx)
3【判決の効力】
1.認容判決の効力が及ぶ者の範囲(会法838)
上記の訴えについての請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有する(対世効)。
2.無効判決の効力(会法839)
上記の訴えについての請求を認容する判決が確定したときは、その判決において無効とされた行為(その行為によって会社が設立された場合にあってはその設立を含みその行為に際して株式または新株予約権が交付された場合にあってはその株式または新株予約権を含む)も将来に向かってその効力を失う(将来効)。