(FA)
〈不動産取引紛争事例等調査研究委員会(第292回)検討報告〉
売買契約書記載の当該物件の賃貸借契約の説明内容に誤りがあったとして、買主の売主に対する売主の表明保証義務違反による損害賠償請求が認められた事例
<損害賠償請求事件>
◎東京地裁 平成26年1月21日判決 平24(ワ)106号 (請求一部認容)ウエストロー・ジャパン
調査研究部
(調査研究部長:xxxx)
はじめに
第292回の委員会では、信託受益権売買により事務所ビルの信託受益権を取得した買主が、受託者が売主より引継いだ信託不動産のテナントとの賃貸借契約の内容に関して、売主が誤った説明を行ったことが、表明保証違反にあたるとして、収受できなかった賃料等について、売主に対し損害賠償請求を行った事案(東京地裁 平成26年1月21日判決)を取り上げた。
本件は、事務所ビル(以下「本件建物」という。)の一部(以下「本件賃貸借部分」という。)について定期建物賃貸借契約(以下
「本件C定借契約」という。)を締結したY(被告 売主)が、Yを当初委託者、D信託を受託者として、本件建物及びその敷地(以下「本件土地」といい、本件建物と併せて「本件不動産」という。)について不動産信託契約(以下「本件信託契約」という。)を締結し、その信託受益権をX(原告 買主)に譲渡したところ、本件C定借契約は転借人において平成25年10月1日以降にしか中途解約をすることができないとのYの表明保証に反し、転借人より平成24年10月1日をもって同契約が解
約されたことから、XがYに対し、平成24年 10月2日から平成25年10月1日までの間の賃料等を得ることができなくなったとして、信託受益権売買契約上の表明保証違反による損害賠償請求権に基づき、上記期間分の賃料等相当損害金又は解約金相当損害金4億7640万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。
裁判所は、Yの表明保証違反を認めたうえで、損害額は転借人退去後の後継テナントからの賃料収入等を控除した2億4316万円余と認定し、同額を損害賠償額として認容した。なお、X・Yとも控訴はせず、平成26年2
月5日に判決が確定した。
委員会では、表明保証についての性格や表明保証よって生じる義務等について意見交換が行われた。詳細は「委員会における指摘事項」を参照していただきたい。
また、委員会に先立ち行われたワーキンググループ(不動産事業者、行政等で構成)において、表明保証がどの程度行われているか等について報告されたので一部紹介する。
<ワーキング意見>
○表明保証が実務上どの程度行われているか等について
・表明保証は、信託受益権売買契約(金融商品取引法の対象)では通常入れられているが、一般の不動産売買契約や賃貸借契約においては、いわゆる「暴排条項」を除き、入れられることはほとんどない。
・表明保証は、外資系企業が取引の際に入れることを求めたことから見られるようになったと思われるが、信託受益権売買以外で国内企業同士の取引において表明保証を入れるケースはまず見られない。また、今後増えていくものとも思えない。
・表明保証条項が設けられたことがあるのは、現物の不動産売買契約では、もともと受益権だった不動産を売買するケースや当事者の要請によるケース、賃貸借契約では、賃借人が法人としての適格性や賃料等の支払能力の表明保証が求められるケースがあった。
○表明保証義務違反によるトラブル・表明保証の責任の範囲等について
・信託受益権売買の媒介では、媒介業者が作成する物件概要説明書を売買契約書の物件概要書に流用するケースが大半であるが、これが誤っていたことにより紛争に発展したケースは聞いたことがない。
・表明保証においては「売主の知る限り」と記載し、その保証の限界を明示することが重要であるとした意見がある一方、信託受益権売買の媒介において仲介業者は「信託会社・アセットマネジメント会社」より「これを表明保証とするように」と指示されたものを契約書に盛り込むのみで、その内容について変更・修正等の意見ができる立場・状態にないとの意見もあった。
○賃貸条件一覧xxの記載ミスによるトラブ
ルについて
・かつて、売買金額を吊り上げるため、売主が虚偽の賃貸条件一覧(空室部分にテナントが存在するように記載)を買主に提示してトラブルになったケースがあるが、最近は、賃貸条件一覧の誤記などによるトラブルは聞いた事がない。
・物件概要書ではないが、賃貸契約内容一覧
(レントロール)の記載を誤ったことが以前あり、それ以来必ずWチェックをすることにした。
<事務局意見>
本事案は、信託受益権売買契約において、賃貸借契約上の賃借人からのノーペナ解約が可能となる時期について、売主が誤った説明を買主にしたことにより、買主に損害が生じたと認められたものである。売主もその賃貸借契約は、他社が締結した賃貸借予約契約の内容に基づいて締結したものであり、賃借人の意向や交渉内容について充分認識しておらず、契約書の文言について誤った理解をしてしまった可能性が高いことも推測される。
また、本事案は信託受益権売買の表明保証違反という形での争いとなったものではあるが、賃貸借契約の定めについて売主が誤った認識を買主に伝えることによって紛議に繋がってしまうということは、現物不動産の売買においても起こり得るものであろう。仮に本事案が現物不動産の売買であったとしても、同様の判断になったものと思われる。
本件紛争のそもそもの原因は、賃貸借契約の定めについて、複数の解釈ができるような文言になっていたことにあるとも考えられる。契約内容については、後日複数の解釈ができないようにxx的に定める必要があり、弁護士に契約書の作成や確認を依頼する場合でも、その契約において当事者が取り決めた
い内容をしっかり伝えないと意図せざる結果を招きかねない、という委員会意見は、当然のことではあろうが、実務において心掛ける必要のあることと言えよう。
1 .委員会資料
<当事者>
原告:X 買主 法人(合同会社)
被告:Y 売主 法人(大手建設会社)
(関係者) A:Xのアセットマネージャー B:Aの全額出資子会社
本件不動産のマスターリース会社 C:退去した本件賃貸借部分の転借人 D信託:信託銀行 E:Aのフィナンシャルアドバイザー
(FA)
F:本件不動産について、XとYが売買契約を締結する以前にYと売買契約を締結した合同会社
<判決の内容>
[主文]
1 Yは、Xに対し、2億4316万6515円及びこれに対する平成24年1月26日から支払済みに至るまで年6分の割合による金員を支払え。
2 Xのその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを5分し、その2をXの負担とし、その余をYの負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
[請求]
Yは、Xに対し、4億7640万円及びこれに対する平成24年1月26日から支払済みに至るまで年6分の割合による金員を支払え。
[前提事実(一部略)]
1 本件受益権売買契約の約定
ア 第11条(Yによる表明・保証)
(ア)3項(抜粋)
Yは、Xに対し、「本件不動産表明保証事項」及び「本件物件概要書」の記載事項が本件受益権売買契約締結日及び譲渡実行日においてxxかつ正確であることを表明し、保証する
(以下、この表明保証を「本件表明保証」という。)。
(イ)4項(抜粋) Yは、Xが、本条におけるYの表明及び保
証に依拠して本件受益権売買契約を締結するものであることを了解している。Yは、本条に定める表明及び保証に関し誤りがあり又は不正確であったことが判明した場合には、直ちにXに対しその旨書面により報告するものとし、かかる表明保証違反に起因して、又は、これらに関連してXが損害等を被り又は負担する場合には、かかる損害等を補償する。
イ 本件不動産表明保証事項
(ア)10.本件受益権売買契約の正確性
本件受益権売買契約に記載される本件不動産に関する情報は重要な事項に関し全てxxかつ正確である。
(イ)13.重要な文書の交付、正確性(抜粋) a ⑵ Yが交付した文書は原本又はそのxxかつ正確な写しであり、またYの提供した情報はxxかつ正確なものである。
b ⑶ 本件受益権売買契約又は本件信託契約の締結及び履行に際して交付された物件概要書の記述は、虚偽の記載を含んでおらず、記載すべき重要な事項又は誤解を生じさせないために必要な事実の記載を欠いていない。
(ウ)14.賃貸借契約関連(抜粋)
⑴ 本件不動産に関して有効に存在する賃貸借契約は既存テナント賃貸借契約が全てであり、かつ既存テナント賃貸借契約の内容及び
その当事者は、本件受益権売買契約の締結に先立ちYがXに対して書面により報告した通りである。
ウ 本件物件概要書 16.特記事項(抜粋)
1.本件受益権売買契約締結時の占有及び賃貸借契約の承継等に関する事項について
⑴ 既契約の賃貸借契約等について
① Yは貸主として、付属書類「賃貸借契約一覧表(本件一覧表)記載の賃借人と本件一覧表記載の条件で本件建物において建物賃貸借契約を締結し、付属書類「駐車場使用契約一覧表」記載の賃借人と同一覧表記載の条件で本件建物内の駐車場において駐車場使用契約を締結しており、当該賃借人が本件建物及び駐車場を占有、使用しています。詳細は、付属書類の各建物賃貸借契約及び駐車場使用契約をご参照下さい。(以下、「16.特記事項
1.⑴①」の条項を「本件条項」という)
2 本件一覧xxの本件C定借契約に関する記載
ア 賃料起算日
平成22年4月1日イ 契約解約可否
賃料起算日から2.5年間は解約不可、以降は12か月前予告にて解約可(違約金なし)(→賃料起算日から3.5年間は退去不可)(以下、
「→賃料起算日から3.5年間は退去不可」の記載を「本件記載」という。)
3 本件C定借契約の約定ア 16条1項
Cは、賃料の起算日の2年6か月後の応当日まで(以下、「中途解約禁止期間」という。)は本件C定借契約を解約することができないものとする。中途解約禁止期間経過後においては、Cは、Yに対し、同契約終了予定日の
12か月前(以下、「解約予告月数」という。)までに書面による通知をすることにより、賃貸借期間中においても本件C定借契約を解約することができるものとする。
イ 16条2項 Cが解約予告月数に満たない予告期間をも
って本件C定借契約を解約しようとする場合、Cは、Yに対し、解約予告月数からその予告期間を差し引いた期間分の賃料相当額及び共益費555万8000円を解約金として支払うものとする(以下、16条1項、2項の約定を
「本件解約規定」という。)。
[判決の要旨]
1 認定事実
前提事実、証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
⑴ Yは、Xのアセットマネージャー(投資用不動産を実際の所有者・投資家に代行して管理・運用する事業者)であるAとの間で、平成22年9月頃、本件不動産の売買に関する交渉を開始した。
Yは、Aから、投資家に対する本件建物の説明資料として各賃貸借契約の概要を要約した一覧表の作成を要請され、同月30日、Aに対し、「レントロール資料」と題する書面を交付した。
その後、Yは、Aから、もう少し詳しい情報が必要であるとの要請を受け、Aに対し、同年10月9日、テナント賃貸借契約一覧を交付した。なお、同一覧には、「契約解約」及び「契約解除」についての記載はなく、本件記載と同旨の記載もなかった。
さらに、Yは、Aからの要請を受け、Aに対し、同年11月17日、「契約解約」及び「契約解除」についても記載されたテナント賃貸借契約一覧をメールで送信した。なお、同一覧中の本件C定借契約の「契約解約 可否」
の欄には「2.5年間不可、以降12か月前予告にて可」との記載があるのみで、本件記載と同旨の記載はなかった。
⑵ Yは、Aに対し、同月19日、本件建物における各賃借人との間の賃貸借契約書の写しを全て交付し、Aは、同賃貸借契約書の写しに基づいて法務デューデリジェンス等を行い、その内容を確認・検討した。
Aは、本件賃貸借部分の賃料等収入の本件建物の賃料等総収入に占める割合等から本件 C定借契約の賃貸借期間が重要であると考えた。そこで、Aは、Yに対し、同年12月2日、 QAシートを送付し、「Cの定借期間中の途中解約について、条項には、「賃貸借開始から2.5年間は不可、その後は12か月前通知により可」とございます。これは、解約通知も賃貸借開始から2.5年間できないということですか。それとも解約通知自体は2.5年間の中でも実施できるということですか。※Cから賃料保証されている期間の確認です。」等と質問した。
これに対し、Yは、同月6日、QAシートに「契約書に「中途解約禁止期間経過後においては、」と記載の通り、中途解約禁止期間経過後(2.5年後)において、初めて手続きが可能になります。従いまして、2.5年以内に解約通知はできません。」と記載してメールで返送した。
また、同日に行われたAとYとの打合せにおいて、Yは、Aに対し、本件C定借契約の中途解約期間に関し、「Cは、2.5年経過しないと退去通知を出せないうえ、退去通知は退去の12か月前までに出さなければならない。したがって、3.5年は退去できないということになる。」という旨の説明をした。
なお、Yは、本件C定借契約の賃貸人の地位を承継するに当たり、Cから本件解約規定に関する見解を聞いたことはなく、また、上
記回答をするに当たっても、Cに対してその確認をしなかった。一方、Xも、Yに対し、 Cに確認をするよう求めることはなかった。
⑶ X側のFAであるEは、Aに対し、平成 23年1月28日、「C等とのリース契約の中で、解約通知を出すことのできるタイミング(最短で、いつ退去できるのか)については、テナントには聞けないと思いますが、物件概要書の特記事項として、Yに記載してもらう前提で、Yに確認してください」等と記載したメールを送信した。
⑷ Eは、Yに対し、同月31日、「受益権売買契約及び信託契約のドラフトをご提示させて頂きますので、ご確認の程お願い致します。」等と記載したメールを、本件受益権売買契約の契約書案等を添付の上送信したが、同契約書案11条3項には、本件物件概要書の記載事項を表明保証の対象とする旨の記載はなかった。
Aは、Yに対し、同日、電話で、テナント賃貸借契約一覧にCが少なくとも3年6か月間は解約により契約を終了することができない旨を記載するよう要請したところ、Yは、同日、テナント賃貸借契約一覧に本件記載を追記した上、Aにこれをメールで送信した。
Aは、同日、本件記載が追記されたテナント賃貸借契約一覧を、A及びEの各関係者にメールで送信し、併せて、「本資料をベースにしたものを付属資料として物件概要書に添付することで、表明保証していただく旨、Yには了承を得ております」との報告をした。
⑸ Xは、同年2月9日、Aにより組成され、合同会社として設立された。
⑹ Eは、Aに対し、同月16日、「添付あらためてご確認を頂けますでしょうか。宜しければ、Yへご提示します。」と記載したメールを、本件受益権売買契約の契約書案を添付した上で送信した。なお、同契約書案11条3
項には、本件物件概要書の記載事項を表明保証の対象とする旨記載されていた。
Aは、Eに対し、同月21日、「内容についてはYに了承いただいておりますので、ご確認願います。」等と記載したメールを、関係者送付用の物件概要書を添付して送信した。 Eは、Aに対し、同日、Yのコメントが記 載された本件受益権売買契約の契約書案が添付されたメールを送信した。なお、Yは、本件物件概要書の記載事項を表明保証の対象とする旨加筆された同契約書案11条3項については、何らの修正等のコメントをしていなか
った。
⑺ Eは、Aに対し、同月24日、「物件概要書の特記欄に添付ファイルが添付されるという理解でよろしいですか?」、「CとFの解約可能時期が3.5年であることをYに表明保証してもらいたいという主旨です」等と記載したメールを、テナント賃貸借契約一覧とともに送信した。
そこで、Aは、Eに対し、同日、「ご認識の通り、物件概要書の付属書類として、先ほどの添付ファイルが添付されることとなっています。」等と記載したメールを送信した。
さらに、Eは、Aに対し、同日、「下記メール添付ファイルを特記事項の中で、●年●月●日時点のテナントとの賃貸借契約大要であることを記載してもらってください(売買契約書11条3項の中でYに表明保証してもらう対象になっているとの認識です)」等と記載したメールを送信した。
Eは、Aに対し、同月28日、本件受益権売買契約のセミファイナル版をメールで送信した。
⑻ Aは、Yに対し、同日、物件概要書を添付したメールを送信した。なお、同概要書には「詳細は、付属書類の各建物賃貸借契約および駐車場使用契約をご参照ください。」と
の記載(Y追記載)はなかった。 Yは、一覧表に関する最終的な内容の確認
に当たっては、原契約書の内容を直接参照してもらいたいと考え、同概要書に「詳細は、付属書類の各建物賃貸借契約および駐車場使用契約をご参照ください。」との記載(Y追記載)を追加し、Aに対し、同年3月1日、「本文(特に特記事項)を加筆していますので、ご確認ください。」等と記載したメールを送信するとともに、同日午後に、「物件概要書を送付いたします。」等記載したメールを、物件概要書を添付して送信した。
⑼ Yは、Aとの間でその後も物件概要書等の記載について何度かやり取りをした後、Aに対し、同月11日、「その他修正はございません。」等と記載したメールを、本件記載のあるテナント賃貸借契約一覧を添付して送信した。
Xは、Aに対し、同月13日、「本日製本に入る予定です。宜しくご査収下さい。」等と記載したメールを、Yが修正を加えた本件受益権売買契約の契約書及び物件概要書等を添付して送信した。
⑽ Xは、Yとの間で、同月18日付けで、本件受益権売買契約を締結した。
なお、本件記載のある上記テナント賃貸借契約一覧と同じ一覧表が本件一覧表として、本件受益権売買契約で本件表明保証の対象となっている本件物件概要書の付属書類とされた。
2 争点①(表明保証違反の有無)について
⑴ 本件受益権売買契約11条3項は、Yは、 Xに対し、本件物件概要書の記載事項が本件受益権売買契約締結日及び譲渡実行日においてxxかつ正確であることを表明し、保証すると規定しており、本件物件概要書には、Yは貸主として、本件一覧表記載の賃借人と本
件一覧表記載の条件で本件建物において建物賃貸借契約を締結しており、当該賃借人が本件建物を占有、使用していると規定されている。
本件物件概要書が、随所で付属書類を引用し、又は付属書類を参照するように指示していることからすれば、本件物件概要書の各号の記載と付属書類の内容とは不可分一体のものとして観念され、結合していることは明白であり、本件受益権売買契約において、本件 物件概要書の本文各号に記載された事項及びこれにより引用された本件一覧表を含む付属書類に記載された事項が本件表明保証の対象となっているというべきである。
そうすると、本件一覧表には本件記載が明記されている以上、Yは、本件受益権売買契約上、Xに対し、本件C定借契約が賃料起算日から3.5年間はCにおいて退去することが できないという内容であることを表明保証したものと認めるのが相当である。
⑵ ア Yは、本件一覧表の記載内容を本件表明保証の対象とするやり取りなど行われていなかった以上、本件一覧表の記載内容は本件表明保証の対象とならないという旨の主張をする。
確かに、本件一覧表は、そもそもAから、投資家への説明資料としてYに対して作成が要請されたものであることは認定事実のとおりであり、また、本件全証拠によっても、本件一覧表の記載内容を本件表明保証の対象とすることに関して直接的に何らかのやり取りがXY間で行われたという事実は認められない。
しかしながら、本件物件概要書及び本件一覧表の記載内容についてAの担当者とYの担当者との間で何度もやり取りが繰り返されたことは認定事実のとおりであり、かつ、前提事実のとおりの内容の本件受益権売買契約の
契約書について、Yにおいて、法務担当者や顧問弁護士らがチェックした上、社内の稟議にかけられ、代表取締役の決裁を経たことは Xの担当者証言から認められる以上、Yの上記主張を採用することはできない。
イ Yは、本件条項中のY追記載の解釈及び同記載が追記された経緯からすれば、本件一覧表の記載内容が原契約書とは無関係に独立して本件表明保証の対象となることはないという旨の主張をする。
しかしながら、本件記載が本件一覧表に明記された経緯は、認定事実のとおりであり、 Aが、本件受益権売買契約において本件C定借契約の賃貸借期間が重要であると考えたことから、Aの担当者がYの担当者にQAシートでその旨の質問をし、平成22年12月6日に行われた打合せにおいてもYに対して口頭でもこれを確認し、X側のFAであったEも、これを重要視していたからこそ、本件物件概要書の特記事項にYに記載させるようAに対して要求したのであり、それを受けてAの担当者がYの担当者に対して本件記載を本件一覧表に明記するよう要請したことからすれば、Yの担当者において、本件条項にY追記載を追記したからといって、Yにおいて本件一覧表は本件表明保証の対象外であると明示的にX側に伝えていない以上、本件一覧表の記載内容の一つである本件記載が本件表明保 証の対象とならないなどと解するのは相当ではない。
よって、Yの上記主張を採用することはできない。
ウ Yは、XY間において、本件記載の内容がYの認識を記載したものであることを前提としていた以上、本件記載をもって、Cとの客観的な合意内容のxx性をYが表明保証するなどという合意は存在していないという旨の主張をする。
しかしながら、証拠によれば、AはYに対し、本件受益権売買契約に関して秘密を保持すべき義務を負っていたのであり、本件受益権売買契約の締結前に、AがCに対して本件 C定借契約の賃貸借期間を確認することは認められていなかったというべきであり、Aとしては、本件C定借契約の貸主であるYに確認するより術がなかった以上、Yの上記主張に理由がないことは明らかである。
⑶ そして、証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件C定借契約は、賃料起算日より2.5年間経過後はCにおいて違約金等の支払なく退去することができるという内容であったことが認められる。
そうすると、上記⑴のとおり、Yは、Xに 対し、本件C定借契約が賃料起算日から3.5年間はCにおいて退去することができないという内容であることを表明保証していた以上、Yに表明保証違反が認められる。
3 争点②(Xの損害額)について
⑴ 本件受益権売買契約11条4項によれば、 Yに表明保証違反があった場合、YがXに対し、当該表明保証違反に起因又は関連して生じた損害等を補償する旨規定するところ、本件においては、上記2で判示したとおり、Yに表明保証違反が認められるので、Xに損害が生じた場合には、XはYに対し、その生じた損害の賠償を求めることができる。
そこで、Xの損害額を検討する。
⑵ ア この点、Xは、要するに、本件賃貸借部分の平成24年10月2日から平成25年10月
1日までの1年分の賃料等相当額又は解約金相当額である4億7640万円がXの損害であるという旨の主張をする。
しかしながら、本件表明保証の対象は、あくまで本件C定借契約が賃料起算日から3.5年間はCにおいて退去することができないと
いう内容であることであり、Cから3.5年間分の賃料等収入が確実に確保されることを表明保証したものではないことに加え、そもそもXは、本件受益権売買契約の受益者であって、Cから賃料等又は解約金を直接収受すべき賃貸人の立場にはないこと、からすれば、 Xの上記主張を直ちに採用することはできない。
イ 一方、Yは、本件受益権の評価額下落相当額がXの損害であるが、仮に本件記載に齟齬があったとしても、それをもって自動的に本件受益権の価値が影響を受ける性質のものではないから、Xに損害が発生しているとはいえないという旨の主張をする。
しかしながら、本件受益権のような収益不動産の受益権の価値は、受益権売買時点の賃借人の入居状況や賃借人から得られる賃料収入等の事情だけで決まるものではなく、建物の仕様、床面積、立地等の不動産自体の価値の他、不動産市況の動向、将来の賃貸予測等多種多様な不確定要素を前提に、専門的見地から一定の幅をもって判断されるものである以上(現に、証拠によれば、わずか2か月の間に本件受益権の価格が約10億円も減額されていることが認められる。)、Yの表明保証違反によって生じた損害として、直ちに本件受益権の評価額下落相当額と考えることは適切ではないというべきであり、Yの上記主張を採用することもできない。
⑶ ア そこで、検討するに、表明保証条項の機能が契約当事者間のxxなリスクの分配にあることに照らせば、本件においてXに生じた損害とは、端的に、本件C定借契約において、Cが賃料起算日から3.5年間は退去で きない場合にXが本件受益権に基づき取得することができた信託配当と、Cが賃料起算日から2.5年で退去することができた場合(なお、Cは2.5年経過を待たずに退去している。)
にXが本件受益権に基づき取得することができた信託配当との差額(以下「本件差額」という。)が、Yの表明保証違反によりXに生じた損害と考えるのが合理的である。
イ 前提事実、証拠及び弁論の全趣旨によれば、①本件C定借契約の平成24年10月2日から平成25年10月1日までの1年分の賃料等相当額又は解約金相当額は4億7640万円であること、②本件マスターリース契約においては、サブリース賃料の金額がそのままマスターリース賃料となる、いわゆるパススルー型が採用されているところ、C等テナントからの賃料等は信託口座に入金されることになっており、そこから管理費用等の必要経費が控除されると、賃料等の7割ないし8割の金額となり、そこからさらに借入金の金利が控除されてXに配当される仕組みであること、③本件賃貸借部分について、平成24年10月2日から平成25年10月1日までの間に、後継テナントから支払を受けた賃料等は合計7112万2475円であったこと、④本件賃貸借部分の後継テナントは、契約期間中に賃貸借契約を解約するとフリーレント期間に係る賃料等損害金を違約金として支払う義務を負っていること、以上の事実が認められる。
以上の事実を総合考慮すると、本件差額は、少なくとも2億4316万6515円((4億7640万円-7112万2475円)×6割)であると認めるのが相当である。
ウ (ア) Xは、後継テナントからの賃料等の支払を控除すべきではないという旨の主張をするが、上記③のとおり、Cの退去後に後継テナントから現に賃料等が収受されており、これに基づいてXは信託配当を受けている以上、係る金員分については重ねてXの損 害となるわけではなく、Xの主張を採用することはできない。
(イ) また、Xは、本件建物は平成22年1月
22日新築の建物であり、賃料等収入に占める必要経費の割合は5%前後であった旨の主張をするが、これを認めるに足りる証拠はない。エ なお、Yは、フリーレント期間中の賃料等を0円と算定するXの主張は失当である旨主張するところ、確かに、フリーレントの設定の仕方によって、Xの損害額が左右されることになるのは相当ではないというべきであることに加え、上記④のとおり、本件賃貸借部分の後継テナントは、契約期間中に賃貸借契約を解約するとフリーレント期間に係る賃料等損害金を違約金として支払う義務を負っており、同期間の賃料等相当額の支払義務を終局的に免れているとはいえないことからすれば、Yの主張を直ちに排斥することはできないというべきであるので、この点は、上記イのとおり、減額割合(6割)において考慮した。
⑷ 以上より、Yの表明保証違反によりXに生じた損害は、少なくとも2億4316万6515円と認められる。
4 争点③(過失相殺の有無)について
⑴ Yは、X側に対して早い段階で賃貸借契約書の写しを交付していたこと、X側においても詳細なデューデリジェンスに基づき、本件記載についてYと同一の認識を有していたこと、X側が不動産取引に精通したプロであること、X側が本件一覧表を本件表明保証の対象とすることをYに示していなかったこと、本件賃貸借部分の空き室損害等はXの責任であることを主たる理由に、過失相殺をすべきであるという旨の主張をするので、以下検討する。
⑵ 認定事実によれば、Aは、賃貸借契約書の写しを基に、法務デューデリジェンスを行ったが、なお本件C定借契約の賃貸借期間について確認するために、Yに質問し、その結
果、Yから本件記載と同旨の回答を受けて、 その旨の認識を有するに至ったというべきであり、加えて、既に上記1⑵アで判示したとおり、本件受益権売買契約の契約書には本件記載が明記された本件一覧表が本件物件概要書の付属書類として添付されていたところ、 Yはこれを法務担当者らにおいてチェック等した上、本件受益権売買契約の締結に至っている以上、Yが主張する上記各事実をもっても、Xに過失があったと評価することはできない。なお、本件賃貸借部分の空き室損害等がXの責任であったとしても、このことは、 Yの表明保証違反に関し、直ちにXの過失の評価根拠事実とはならないというべきである。
⑶ 以上より、Yの過失相殺の主張を採用することはできない。
第4 結論
以上の次第であり、Xの請求は主文の限度で理由があるから認容し、その余は理由がないので棄却することとし、主文のとおり判決する。
2 .委員会における指摘事項
[表明保証の法的性質について]
・「表明」した事項について、契約上の拘束力を持たせるために「保証」を行うもの。
・xx法の考え方では、合意事項に拘束力を生じさせるためには、対価性がなければならない。つまり、対価性があれば「表明」するのみで拘束力が生じるが、対価性があるかどうかの争いを回避するために、契約時に全て「保証」させてしまおうということで、様々なものが「表明保証」事項とされていると考えられる。
・ある事象について、損失を受けるリスクを誰に帰せしめるかを定めるための条項と言
える。
・表明保証の法的性質については、①瑕疵担保責任の特約、②債務不履行責任の一種、
③売買契約とは別個の損害担保契約、という考え方があるが、これらは並列的に並ぶものではなく、その内容による。今回の事案は①か②で、M&A契約でよく用いられる財務状況の保証は③にあたるものであろう。
[表明保証事項の誤りに関し、相手方が悪意、もしくは過失がある場合について]
・相手方が悪意、もしくは重過失があれば、責任を負う必要はないだろう。一方で、単なる過失があった程度ということであれば、責任を負う必要があると考えられる。
・今後、改正民法が施行されても考え方は変わらないであろう。
[本件において表明保証がなくても売主の責任が認められたかについて]
・売主の誤った説明によるキャッシュフローにより、買主の購入価格が決定されたものであることから、売主の責任は認められるものと思われる。
[媒介業者の契約作成の責任について]
・本事案の別訴において、本件定借契約の借主都合による解除が可能になる時期について争点となった。もし賃貸人に、賃料発生後3年6か月間は賃借人が退去できない内容にしてほしいとの意向があり、それを踏まえて媒介業者がこの内容の契約書を作成したということであれば、媒介業者に責任が生じた可能性も考えられる。
・弁護士に契約書のチェックを依頼したとしても、契約書で約定したい内容をきちんと伝えないと意図せざる結果になることは十
分あり得る。関係者間で異なる解釈がなされないよう、特に期間や金額はxx的に定める必要がある。
3 .参考資料
[参考裁判例]
<Ⅰ> 積極
1.平成21年12月11日東京地裁 信託受益権売買 事務所・住宅ビル ウエストロー・ジャパン
⑴ 事案の概要
・信託建物につき、第一種住居地域の制限により住居又はxxx事務所として使用しなければならない6~8階部分について、事 務所として使用(賃貸)されている用法違反(当該部分の固定資産税等について、xx事務所より非住宅扱いとされた)があったことは売主の表明保証違反であるとして損害賠償を請求した事案。
⑵ 表明保証条項の内容
・本件不動産が、建築基準法、都市計画法、消防法等の適用法令(条例、ガイドラインを含む。)にしたがって建築・管理されており、担当行政機関、裁判所その他の第三者からかかる適用法令に違反がある又は違反するおそれがある旨の通知を受けたことはなく、売主が知る限りかかる通知の原因となるような事実もない。
・本件売買契約に際して作成された物件概要書の記述は、全てxxかつ正確であり、虚偽の記載を含んでおらず、記載すべき重要な事項又は誤解を生じさせないために必要な事実の記載を欠いていない。
・本件売買契約に記載の情報及び企図される取引に関連して売主が買主に提供した資料又は情報は、全ての点においてxxかつ正確であり、かかる資料又は情報について誤解を生ぜしめ又は不正確にならしめるよう
な事実の省略はなされていない。
⑶ 買主請求
・本件不動産の売買価格と、表明保証違反ないし瑕疵が存在することを前提とした本件不動産の評価額との差額4億4千万円余が買主の損害である。
⑷ 裁判所の判断
①表明保証違反の有無
・本件住居部分の賃借人の事務所使用は、使 用目的違反があった点において、本件物件概要書の記載はxxに反しており、売主は表明保証違反に基づく損害賠償責任を負う。
②結論(損害賠償額の認定)
・住居の事務所使用による固定資産税等の税 額の差額300万円、及び用途制限違反の是正のための、退去交渉、新賃借人募集費用、入替えの間の空室負担等による損害額946万円余(家賃3か月分)、計1246万円余を損害額と認める。
2.H27.6.22 東京地裁 事業譲渡契約(半導体製造工場) 判例時報2275-68
⑴ 事案の概要
・全株式譲渡契約により購入した会社の主要な営業資産である半導体製造工場において、危険物管理に消防法違反がありその是 正に多額の費用等を要したとして、買主が売主の表明保証違反を理由とする損害賠償を請求した事案。
⑵ 表明保証条項の内容
・新会社の営業の継続に重大な影響を及ぼす欠陥、瑕疵、その他の不具合は存在しない。
・表明保証の違反が発生又は判明した場合、これに起因して買主に発生した損害(第三者からの請求の結果生じたものか否かを問わず、合理的な弁護士費用を含み、これに限定されない。)を売主は買主に対し補償
する。
⑶ 買主請求
・同工場の危険物管理についてシステム化を採用し、実際にかかった改修工事費用、設備エンジニア等の人件費、弁護士費用、計
3億4千万円余を請求。
⑷ 裁判所の判断
①表明保証違反の有無
・消防法違反は、表明保証条項における「重 大な影響を及ぼす欠陥、瑕疵、その他の不具合」に該当し、同条項に基づき損害を補償する義務がある
②表明保証の意義
・表明保証とは、契約を締結する際、一方当事者が、一定の時点における契約当事者自身に関する事実、契約の目的物等に関する事実について、当該事実がxxかつ正確である旨を明示的に表明し、相手方に保証するものである
③本件表明保証の範囲
・本件表明保証条項は、営業資産の一部である当該工場について、営業の継続に重大な影響を及ぼす欠陥、瑕疵その他の不具合がないこと、当該工場で契約当時行っていた事業を行うために必要な行政当局の許認可等を適法に取得していることを保証するものであるから、被告の補償もその保証内容の実現に必要な限度にとどまる
④結論
・買主請求のうち、システム化工事費用は否認し、手運び供給を採用した場合の工事費 用、設備エンジニア等の人件費、弁護士費用、計1億5千万円余を認める。
<Ⅱ> 消極
3.H24.3.27 東京地裁 信託受益権売買店舗ビル ウエストロー・ジャパン
⑴ 事案の概要
・信託受益権売買において、売主が5・6階テナント(ライブハウス)との合意書(今後、上下階に入居するテナントからライブハウスからの騒音があることの確認書を徴求する内容)の存在について、買主に開示 せずに売買したことは表明保証義務違反にあたるとして買主が売主の元取締役ら(売主は清算結了済み)に損害賠償を請求した事案
⑵ 表明保証条項の内容
・売主は、本件不動産及びこれに付随する一切の権利に関し、次の各事項が取引実行日においてxxかつ正確であることを表明し保証する。
(a)本件不動産について、売主が第三者のために受益者の権利を制約し若しくは受益者の権利に損害を及ぼし又はそのおそれのある処分を行う義務を負っていない。営業の継続に重大な影響を及ぼす欠陥、瑕疵、その他の不具合は存在しない。
(b)本件不動産にその運営・管理又は価値に悪影響を及ぼす瑕疵はない。
(c)本件建物を賃借する賃借人とは、買主に交付した契約書類に係るもの以外に当該賃借人との間の契約及び合意(口頭によるものを含む。)は存在しないこと。
⑶ 買主請求
・5・6階テナントの騒音等により本件建物の4階及び7階部分について、入居者が決まらず、見込まれていた賃料収入の減少額
2億3千万円余の損害がある。
⑷ 裁判所の判断
①表明保証違反の有無
・本件覚書を買主に告げていなかったことは、文言上は表明保証条項違反に該当する。
・しかし、ライブハウスの上下階に入居するテナントに騒音発生の可能性を告知するこ とは格別不当なものではなく、確認書の徴
求も後日の紛争回避の観点から合理性があ る。
②表明保証による損害・結論
・買主は、ライブハウスが入居していること を知って本件信託受益権を購入したのであるから、買主主張の損害が生じているとは認められない。
4.H23.6.14 東京地裁 信託受益権売買区分所有建物 判例時報2148-69
⑴ 事案の概要
・購入した信託受益権おいて、対象建物(区分所有建物1階店舗)の大部分が元所有者により駐車場部分を違法に店舗へ用途変更
(建築基準法違反)されたものであり、表明保証違反があったとして、売主に対し売買契約の解除を、信託銀行に対し信託契約上の受託者の注意義務違反による損害賠償を、仲介業者に対し不法行為による損害賠償をそれぞれ求めた事案。
⑵ 表明保証条項の内容
・売主は、本件信託受益権について、適法かつ有効であることを表明保証する。
・本件売買契約には、瑕疵担保免責特約が設けられている。
⑶ 買主請求
・売主に対し売買契約の解除を、信託銀行に対し信託契約上の受託者の注意義務違反による損害賠償を、仲介業者に対し不法行為による損害賠償を求める。
・損害賠償額は、本件不動産と同等の収益を生じる代替物件取得のための費用+係争想定期間の賃料収入(履行利益)、1億4 千万円余である。
⑷ 裁判所の判断
①表明保証違反の有無
・瑕疵担保免責特約もあることから、建築基 準法違反を知らなかった売主が、契約解釈
により同違反を看過することなく売却すべ き債務を負っていたとまでは解せない。
・本物件は、H3.10、H8.8、H21.3、の3回、区より行政指導がされただけで、違反是正措置命令はされず放置されていたのであるから、今後、違反是正措置命令がなされ店舗としての使用が不可能になるとは考え難い。
・信託銀行・仲介業者らが当該瑕疵を知っていたとか、注意すべき義務があったとは認められない。
②結論
・買主の解除原因等は認められないことから、その請求には理由がない。
<Ⅲ> 和解事例
5.H25.3.14 某社プレスリリースより
⑴ 紛争内容
・平成20年5月20日、売主と買主は、売主が買主の意向に従い土地を取得し建物を建築して引き渡す条件にて、売買代金2,865百万円の信託受益権売買契約を締結(その後現物売買に変更)した。
・平成21年2月20日、売主が平成20年12月期決算短信及び有価証券報告書における継続 企業の前提に関する事項について、注記する決議を行った旨発表したところ、買主は、同注記が本件売買契約における売主の表明保証事項に抵触し、取引前提条件を欠くとして本件売買契約の履行を拒絶した。
・売主は、事業再生ADR手続(平成21年6月~10月)と平行し、平成22年7月8日、買主に対し、売買代金2,865百万円及び遅延損害金の支払を求め訴訟を提起した。
・同訴訟において売主は、同注記に係る事実は、平成21年2月27日(売買決済予定日)において、本件売買契約における売主の表明保証条項に抵触する事象には該当しな
い、また、買主は同注記公表前に既に売主に対し本件売買契約解除を希望する申出を行っており、売主は同注記に藉口して本売買契約の履行を拒絶したと思われるなどと主張した。
⑵ 和解概要
・売主・買主は、裁判所からの和解提示案を
受け入れ、買主が売主に対して9億円の解 決金を支払うことで和解が成立した。
(参考:本件売買契約の違約条項に基づく違約金は5億6千万円)
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