Contract
2020 年3 月26 日
各 位
会 社 名 日 本 郵 政 株 式 会 社代 表 者 名 代 表 執 行 役 社 長 xx xx
(コード番号:6178 東証第一部)問 合 せ 先 I R 室( T E L . 0 3 - 3 4 7 7 - 0 2 0 6 )
「かんぽ生命保険契約問題 特別調査委員会」からの報告について
日本郵政株式会社(xxxxxx区、代表執行役社長 xxxx)は、日本郵便株式会社(xxxxxx区、代表取締役社長兼執行役員社長 xxxx)および株式会社かんぽ生命保険(xxxxxx区、代表執行役社長 xxxx)とともに、「かんぽ生命保険契約問題 特別調査委員会(委員長:xxxx弁護士)」から調査報告書を受領いたしましたので、公表します。
以上
日本郵政株式会社 御中日本郵便株式会社 御中
株式会社かんぽ生命保険 御中
追加報告書
委 員 長 | 弁護士 | x | x | x | x |
委 員 | 弁護士 | 寺 | 𦚰 | 一 | 峰 |
委 員 | 弁護士 | x | x | x | x |
2020 年3 月26 日かんぽ生命保険契約問題 特別調査委員会
目次
はじめに 1
第1 編 追加調査の概要 2
第1 追加調査の経緯 2
第2 当委員会の体制 2
第3 追加調査の目的及び対象 3
第4 追加調査の方法 3
1 ヒアリングの実施 3
2 募集人ヒアリング 4
3 関係資料の精査・分析 4
4 デジタル・フォレンジック調査 4
第2 編 契約調査の範囲・方法等に関する検証及び調査結果 6
第1 契約調査の内容及び方法 6
1 全契約調査 6
2 特定事案調査 8
第2 範囲及び方法等の妥当性 11
1 全契約調査 11
2 特定事案調査 12
第3 契約調査の結果 13
1 全契約調査 13
2 特定事案調査 14
第3 編 特定事案調査結果の分析 15
第1 分析の対象及び方法等 15
第2 分析結果 17
1 「違反疑い事案」の数は、5 年平均で2,679 件(5 年平均の新規契約件数の約0.13%)であること 17
2 全募集人のうち、「違反疑い事案」に関与した募集人の割合は、5 年平均で約 3.1%であること 18
3 「違反疑い事案」を受理した郵便局数は、全体の約14.5%であること 19
4 「違反疑い事案」(1 万3,396 件)のうち、渉外社員である募集人が関与した件数の割合は、約85.5%(1 万1,456 件)であり、窓口社員である募集人が関与した件数の割合は、約14.5%(1,940 件)であること 20
5 「違反疑い事案」(1 万3,396 件)のうち、販売実績が「優秀」とされる募集人が関与した件数の割合は、約25.7%(3,442 件)であること 23
6 「違反疑い事案」に関与した同一の募集人の関与件数は、少ない者は 1 件(5,972 人)で、多い者は47 件(1 人)であるところ、関与件数が1 件から3 件の募集人が9 割近くを占め、4 件及び5 件の募集人を加えると約94%を占めていること 25
7 「違反疑い事案」である契約に加入した顧客の1 人当たりの加入件数は、1 件から14 件にわたっているところ、1 件の顧客が約 95.1%、2 件の顧客が約 3.8%であり、この合計で約98.9%を占めていること 26
8 「違反疑い事案」である契約に加入した顧客の加入年代は、10 代から90 代にわたっているところ、最も多いのが 60 代(約 32.8%)であり、60 代、70 代(約 25.9%)、80 代
(約6.1%)、90 代(約0.1%)の合計が6 割以上を占めていること 27
9 「違反疑い事案」である契約に加入した顧客の性別は、女性が約83.5%、男性が約16.5%であること 28
第1 | 分析の対象及び方法等 | 29 |
第2 | 分析結果 | 31 |
第4 編 特定事案調査等に係る不祥事件等判定結果の分析 29
1 全募集人のうち、不祥事件・不祥事故事案に関与した募集人の割合は、5 年平均で約0.5%であること 31
2 不祥事件・不祥事故事案を受理した郵便局数は、全体の約4.4%であること 32
3 不祥事件・不祥事故事案(2,206 件)のうち、渉外社員である募集人が関与した件数の割合は、約 91.7%(2,024 件)であり、窓口社員である募集人が関与した件数の割合は、約8.3%(182 件)であること 33
4 不祥事件・不祥事故事案(2,206 件)のうち、販売実績が「優秀」とされる募集人が関与した件数の割合は、約21.5%(474 件)であること 36
5 不祥事件・不祥事故事案である契約に加入した顧客の加入年代は、10 代から90 代にわたっているところ、最も多いのが60 代(約35.2%)であり、60 代、70 代(約 24.1%)、
80 代(約5.5%)、90 代(約0.0%)の合計が6 割以上を占めていること | 37 | |
第5 編 | 募集人ヒアリングの実施状況と結果等 ........................................ | 38 |
第1 | 募集人ヒアリングの目的及び実施方法 | 38 |
第2 | 募集人ヒアリングの結果 | 38 |
1 | 前回報告書における原因分析に関係するもの | 38 |
2 | 前回報告書において提言した改善策に関係するもの | 45 |
3 | 販売実績が高く、かつ、募集品質も良好な募集人の募集態様等の共通点 | 48 |
4 | 募集人調査への対応 | 52 |
5 | 小括 | 53 |
第6 編 | 郵政グループの不適正募集問題への取組みに関する事実経過等................... | 54 |
第1 | 当委員会の問題意識 | 54 |
第2 | 郵政民営化以前の不適正募集の発生状況等 | 58 |
第3 | 郵政民営化以降の不適正募集の発生状況等 | 58 |
第4 | 募集管理統括部の設置及び募集管理統括部による不適正募集防止に向けた施策の実施等 | |
61 |
第5 | 平成26 年改正保険業法の施行及びその対応状況 | 62 |
1 | 平成26 年改正保険業法の内容 | 62 |
2 | 平成26 年改正保険業法施行に係るかんぽ生命及び日本郵便の対応状況 | 63 |
第6 | 2016 年8 月に金融庁からヒアリングの可能性に関する示唆を受けた後の対応状況 | 63 |
1 | 金融庁監督局総務課郵便貯金・保険監督参事官室の概要 | 63 |
2 | 金融庁によるヒアリングの可能性に関する示唆に対するかんぽ生命及び日本郵便の対応 | |
64 | ||
3 | 評価 67 | |
第7 | 「かんぽ募集品質改善緊急対策本部」の設置及び「募集品質向上に向けた総合対策」の | |
策定経緯等 | 67 | |
1 | 「かんぽ募集品質改善緊急対策本部」の設置 | 67 |
2 | 「かんぽ募集品質改善緊急対策本部」における取組み状況等 | 68 |
3 | 「募集品質向上に向けた総合対策」の策定経過等 | 68 |
4 | 評価 | 71 |
第8 | 総合対策の内容及び実施状況 | 72 |
1 | 総合対策の内容 | 72 |
2 かんぽ生命及び日本郵便における募集実態の把握の状況及び総合対策の実施に関する検証の状況(2018 年4 月まで) 73
3 クローズアップ現代+(プラス)の放送を契機とする日本郵便による高齢者募集の停止
の提案及びこれに対する日本郵政グループの対応状況等 | 75 | |
4 | 評価 | 78 |
第9 | 多数契約募集への対応等 | 80 |
1 | 概要 | 80 |
2 | 2015 年度までの取組み | 80 |
3 | 多数契約募集に対する取組みの変遷 | 80 |
4 | 多数契約募集に係る不祥事件判定 | 82 |
5 | 新規と消滅を繰り返す事案に対する取組み | 83 |
6 | 深掘調査 | 85 |
7 | 評価 | 85 |
第10 | 金融庁から報告徴求を受けるまでの経緯 | 86 |
1 経済合理性に疑問のある乗換契約(特定事案の C 類型に相当)について、顧客の意向を確認するための「サンプル調査」を実施した状況 86
2 金融庁参事官室の指摘を受け、かんぽ生命が、乗換後の告知義務違反等により支払謝絶となった事案(特定事案のB 類型に相当)の件数等について回答した状況 91
3 金融庁参事官室の指摘を受け、かんぽ生命が、乗換時に新規契約が引受謝絶となった事案(特定事案のA 類型に相当)の件数等について回答した状況 91
4 金融庁参事官室から乗換契約に係る指摘を受け、追加対策等を検討した状況等 91
5 金融庁参事官室の乗換契約に係る追加指摘に対する対応等 94
6 金融庁の報告徴求の可能性に係る日本郵政グループの認識 95
7 | 評価 | 96 |
第11 | 金融庁の報告徴求及びかんぽ生命等の対応状況 | 98 |
1 | 金融庁のかんぽ生命に対する報告徴求の概要 | 98 |
2 | かんぽ生命における植平社長の指示 | 98 |
3 | 金融庁の本件報告徴求の趣旨を踏まえたかんぽ生命の対応 | 99 |
4 | 総務省から日本郵便に対する報告徴求 | 99 |
5 | 過去遡及対応の範囲に関する検討状況等 | 100 |
6 | 新聞報道を受けた過去遡及対応の範囲等の決定 | 100 |
7 | 本件報告徴求を受けてかんぽ生命が提出した報告書の概要 | 102 |
8 | 総務省の報告徴求に対する日本郵便の報告 | 103 |
9 | 過去遡及対応範囲の拡大及び特別調査委員会設置等の公表 | 103 |
10 | 契約調査の実施等の公表 | 103 |
11 | 当委員会による調査報告書の提出及び金融庁による行政処分等 | 104 |
12 | 評価 | 104 |
第12 | 日本郵政によるかんぽ生命株式の第二次売出しの概要 | 106 |
1 | 概要 | 106 |
2 | 日本郵政によるかんぽ生命株式の第二次売出しの経緯 | 106 |
3 | 第二次売出しの公表と条件決定等 | 108 |
4 | 金融庁参事官室による乗換契約に係る追加指摘の発覚 | 109 |
第7 編 | 不適正募集問題の実態に係る経営陣の認識 ................................... | 111 |
第1 | かんぽ生命 | 111 |
1 | 概要 | 111 |
2 | 植平社長 | 111 |
第2 | 日本郵便 | 112 |
1 | 概要 | 112 |
2 | xx社長 | 113 |
第3 | 日本郵政 | 113 |
第4 | 小括 | 114 |
第8 編 日本郵政グループ各社の経営陣の不適正募集に対する認識と今般判明した不適正募集の実態が乖離している原因 115
第1 特定事案調査等の調査規模、顧客の意識の変化及び不祥事件等判定の方法等の大幅変更による不祥事件等の判定件数の増加 115
第2 かんぽ生命及び日本郵便では、不適正募集の実態を正確に把握できていなかったこと116第3 不適正募集の実態把握につながり得る情報が経営陣等の出席する会議等において質量と
もに十分な報告がなされていなかったこと 116
1 かんぽ生命 116
2 日本郵便 117
3 日本郵政 118
4 日本郵政グループコンプライアンス連絡会 118
第4 | 小括 | 118 |
第9 編 | 当委員会の提言した改善策の検討及び実施状況等.............................. | 119 |
第1 | 募集状況の可視化(録音録画) | 119 |
1 | 提言の概要 | 119 |
2 | 検討及び実施状況等 | 119 |
第2 不適正募集のリスクがある契約をシステムにより営業のフロントで簡易に検知できる仕 | ||
組みの整備 | 120 | |
1 | 提言の概要 | 120 |
2 | 検討及び実施状況等 | 120 |
第3 | 新規契約の獲得に偏った手当及び人事評価の体系の見直し | 120 |
1 | 提言の概要 | 120 |
2 | 検討及び実施状況等 | 121 |
第4 | 不適正募集を行った募集人及び管理者に対する処分の徹底 | 121 |
1 | 提言の概要 | 121 |
2 | 検討及び実施状況等 | 122 |
第5 | 募集コンプライアンスに特化した通報制度の設置と通報内容の定期報告 | 122 |
1 | 提言の概要 | 122 |
2 | 検討及び実施状況等 | 123 |
第6 責任部署と実施時期を明記した具体的改善策とその実施計画を策定し、外部専門家により構成された第三者検証機関のモニタリング等を受けながら、その進捗状況を適時に各社の取締役会に報告し、定期的に公表すること 123
1 | 提言の概要 | 123 |
2 | 検討及び実施状況等 | 124 |
第7 | その他の改善策の提言 | 124 |
1 | 売上・利益重視の経営から真に「顧客本位の業務運営」を実行する組織への改革 | 124 |
2 時代や環境の変化に対応できるビジネスモデルへの転換と保障性商品の営業スキルの向 | ||
上 | 125 | |
3 | 営業の実力に見合った営業目標の設定と配算方法の見直し | 126 |
4 | 顧客本位の保険募集を実現するための研修・教育の充実化 | 126 |
第8 | その他の自主的な取組み | 127 |
1 | 適正な営業推進態勢確立のための取組み | 127 |
2 | 適正な募集管理態勢確立のための取組み | 127 |
3 | ガバナンス強化のための取組み | 128 |
第9 | 評価 | 128 |
第10 編 結語 129
はじめに
かんぽ生命保険契約問題特別調査委員会(以下「当委員会」という。)は、2019 年7 月24日、株式会社かんぽ生命保険(以下「かんぽ生命」という。)、日本郵便株式会社(以下「日本郵便」という。)及び両社の持株会社である日本郵政株式会社(以下「日本郵政」という。)の依頼を受け、約8 か月間にわたり調査(以下「本調査」という。)を行ってきた。
この間、本調査には、多数の調査補助弁護士及び当委員会事務局職員並びに日本郵政グループの関係社員が関与した。日本郵政グループは、当委員会に協力し、総力を挙げて、今回の不適正募集問題の調査等に取り組んできた。
このような関係者の努力により、不適正募集問題の全容は、概ね解明されたと考えている。しかしながら、調査全体としては、いまだ完了したとは言えない。被害者の救済も道半ば
であり、不適正募集に関与した募集人等の調査・処分も、完了していないのである。
詳細は本文中で述べるが、本調査の対象である不適正募集問題は、郵政民営化以前から、様々な対策の網を潜り抜け、伏流水のように存在し続けてきた。8 か月間に及ぶ調査によっても、調査全体が完了していないということ自体、不適正募集問題の深さと広がりを示していると言えよう。
ところで、このように、郵政民営化以前から今日に至るまで、不適正募集が存在し続けてきたのは、その時々の経営陣が、不適正募集の実態をよく把握できなかったために、これを根絶させるに足る対策をとり得なかったからである。
前回報告でも明らかにしているとおり、日本郵政グループでは、不適正募集の実態を正確に把握するための態勢が十分ではなかった。担当部署においては、不適正募集の実態把握につながり得る情報が活用されておらず、担当部署から経営陣らへは、不適正募集の実態把握に資する十分な情報が報告されていなかった。そのため、不適正募集の実態把握に至らず、適切な対応を取ることができなかったのである。
本調査報告書(以下「追加報告書」という。)では、前回報告後も継続実施された特定事案調査の結果、及び全契約調査の深掘調査として実施されている多数契約調査等の進捗状況等を踏まえ、日本郵政グループにおいて、不適正募集の実態把握が遅れた理由や背景に関わる事実経過等を明らかにし、不適正募集の実態等についての経営陣の認識なども可能な限り明らかにするよう努めた。なお、併せて、特定事案調査の結果を踏まえ、前回報告において明らかにした原因分析等につき、念のための検証を行ったが、改善策等の提言の前提となる分析結果等も含めて、特に変更等すべき点は見られなかった。
第1 編 追加調査の概要
この追加報告書は、当委員会が2019 年7 月24 日に設置された後に実施した調査のうち、
主に2019 年12 月18 日付け報告書(以下「前回報告書」という。)の提出後に実施した調査
(以下「追加調査」という。)の結果について報告を行うものである。
第1 追加調査の経緯
当委員会は、前回報告書提出後も、引き続き調査を行い、2019 年 3 月24 日まで、調査を実施した。
追加調査の結果を報告するための基準日(以下「追加調査基準日」という。)は、2020 年3
月24 日であり、追加報告書は、追加調査基準日までの間に判明した事項に基づき、追加調査の結果を取りまとめたものである。
第2 当委員会の体制
当委員会は、前回の調査時と同様、下記3 人の委員で構成されている。委員長 xxxx(xxxxx法律事務所 弁護士)
委員 xxxx(xxx法律事務所 弁護士)
委員 xxxx(xxxx法律事務所・外国法共同事業 弁護士)
いずれの委員もかんぽ生命、日本郵便及び日本郵政のいずれとも利害関係を有していない。
当委員会は、追加調査を実施するに当たり、xxxx法律事務所・外国法共同事業に所属する、いずれも上記 3 社と利害関係を有しない下記の弁護士 16 人を調査補助者として従事させた(以下、調査補助者である弁護士を「調査補助弁護士」という。)。
調査補助弁護士は、xxxx(総括担当)、xxx(顧問)、xxxxx、xxxxx、xxxx、xxxx、xxx、xxxx、xxxx、xxxx、xxxx、xxxx、xxxx、xxxx、xxx及びxxxxである。
また、当委員会は、追加調査を実施するに当たり、上記3 社と利害関係を有さず、かつ、会社法、金融商品取引法及びコーポレートガバナンス等を研究分野とする筑波大学ビジネス
サイエンス系教授xxxxx1(以下「xxxx」という。)から、2020 年1 月以降、定期的に助言を得た。
当委員会は、追加調査の独立性及び客観性を確保するため、日本弁護士連合会策定の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」の趣旨を踏まえ2、追加調査を実施した。
第3 追加調査の目的及び対象
追加調査の目的は、前回報告書の「はじめに」にも記載のとおり、かんぽ生命保険商品の募集に係る不適正募集問題について、主に
①かんぽ生命による「契約調査」(第 2 編参照)の範囲・方法等の妥当性を検証するとともに、その調査結果を分析・検討すること
②「特定事案」等を受理した保険募集人に対する個別的調査を実施すること
③不適正募集問題に係るグループ各社の経営陣の認識等を含めた事実経過などの調査を行うこと
④前回報告書において当委員会が提言した改善策に関して、日本郵政グループの実施状況及び検討状況に対する評価を行うこと
によって、不適正募集問題の実態、原因及び改善策を、より明確にすることである。
第4 追加調査の方法
1 ヒアリングの実施
当委員会は、追加調査として、日本郵政グループの役職員その他の関係者合計110 人に対してヒアリングを実施した(前回報告書5 頁記載のヒアリング実施対象者649 人と合わせて 759 人3)。上記110 人の内訳は、以下のとおりである。
①かんぽ生命、日本郵便及び日本郵政の執行役・執行役員以上の役員(前役員も含む。)28 人
②①を除く、かんぽ生命、日本郵便及び日本郵政の本社又は支社等の社員46 人
1 xxxxの略歴は以下のとおりである。
1986 年3 月 東京大学法学部 私法コース 卒業
1986 年4 月 東京大学法学部助手
1989 年5 月 筑波大学講師
1992 年1 月 筑波大学助教授
1992 年10 月 日本銀行 金融研究所 客員研究員
2002 年2 月 筑波大学教授(現在に至る)
2 本調査では、かんぽ生命による「契約調査」の範囲及び方法の妥当性の検証を含み、かつ、この調査結果にも依拠しつつ、当委員会も独自の調査を実施している。この点で、当委員会の調査は、調査自体が全て外部の第三者に委ねられる「第三者委員会」の調査とは性質を異にしている。なお、「企業等不祥事における第三者委員会ガイドラインの解説」(日本弁護士連合会 弁護士業務改革委員会編)」121頁では、「内部調査と第三者委員会がxx的に違うのは、その主催者である。企業等の不祥事について、事実調査を企業等が自らの手で行うのが内部調査であり、それを完全に外部の第三者に委ねるのが第三者委員会である。」とされている。
3 759 人の中には、重複する対象者も含まれている。
③郵便局員である保険募集人36 人(下記2 の募集人ヒアリングの対象者36 人である。)
2 募集人ヒアリング
当委員会は、追加調査として、2020 年1 月下旬から同年2 月中旬までの間、委員が分担して、13 の日本郵便支社のうち、沖縄支社を除く 12 支社に赴き、各支社管内の郵便局の保険募集人(以下「募集人」という。)を対象に合計36 人のヒアリング(以下「募集人ヒアリング」という。)を実施した。
当委員会が、前回報告書(101 頁)で指摘したように、顧客に不利益を生じさせる乗換契約その他の不適正募集については、渉外社員がその多くに関与していると認められ、かつ、その動機については、営業目標達成が理由となっている傾向があるものの、その動機付けとなっている要因は、年間販売実績が高い者については、営業手当欲しxx選奨等の個人的利得等であり、そうでない者については、上司等の叱責や指導を回避することなどであると認められた。
また、販売実績が高く、かつ、募集品質にも問題のない募集人も多数存在しているところ、どうしたらそれが可能かについても、検討してみる価値があると考えられた。
そこで、これらの点につき、追加調査では、より詳細な実態を把握することを目的として、主に単独マネジメント局4の金融渉外部に所属する募集人の中で、販売実績が比較的高い層の募集人を対象としたヒアリングを実施した。
3 関係資料の精査・分析
当委員会は、追加調査として、かんぽ生命、日本郵便及び日本郵政の関係部署及び関係者から提出を受けた書面及び電子データを精査・分析した。
4 デジタル・フォレンジック調査5
当委員会は、本調査及び追加調査として、デジタル・フォレンジック調査を実施し、各社の関係する会議体の議事録や関係部署におけるパーソナルコンピュータに対する必要な電磁的記録の調査のほか、送受信された電子メールを分析・検討し、事案の全体像を把握することを目的とした調査を実施した。なお、当委員会は、以下に述べる電子データの保全、復元、レビューなど、一連のデジタル・フォレンジック調査に当たっては、当該調査について専門的技術、知見及びシステムを有する外部ベンダーによる調査の補助を受けた。
当委員会は、2019 年 7 月24 日に設置された当初から、デジタル・フォレンジック調査の実施を視野に入れ、これに向けて外部ベンダーとの折衝などを含めた作業に取り掛かり、実施体制を構築した後に、同年8 月下旬から速やかにデジタル・フォレンジック調査を開始した。そして、かんぽ生命、日本郵便及び日本郵政の3 社につき、取締役会、経営会議、監査
4 単独マネジメント局とは、単独の郵便局で損益管理(損失や利益のバランスを管理すること)を行う郵便局をいう(前回報告書25 頁参照)。
5 デジタル・フォレンジックとは、不正や不祥事案の調査を行う際、コンピュータやサーバ内部に保存されたデータ、あるいは関係者間で送受信されたメールを調査対象として実施される電磁的記録の調査・分析に関する一連の調査手法・技術である。一般に、事案の全容把握と原因究明、類似不正及びその他の不正の有無を確認するためにデジタル・フォレンジックが用いられる。
役会(監査委員会)、コンプライアンス委員会及びその他関連する会議体の2014 年4 月から
不適正募集問題が発覚した 2019 年 6 月までの約 5 年間の議事録及び添付資料等の電子データ合計1 万2,203 件を取得し、保全した。
これと並行し、当委員会は不適正募集問題に関連する事項を所掌する、かんぽ生命、日本郵便及び日本郵政 3 社の役職員合計 2,174 人(内訳は、かんぽ生命 338 人、日本郵便61,802
人、日本郵政34 人)を対象として、これら対象者が現に利用し又は過去に利用していた社内業務用のパーソナルコンピュータ端末、及びメールサーバに保存されていた電子メールデータを取得し、削除されたデータについても可能な限り復元した上で、電子メールデータ(本文及び添付ファイルを含む。)合計890 万4,242 件(2,563.78GB)を保全した。
当委員会は、上記のデジタル・フォレンジック調査を通じて得られたデータについても、分析・検討を行い、追加調査の基礎資料とした。
6 支社及び郵便局に所属する者を含む。
第2 編 契約調査の範囲・方法等に関する検証及び調査結果
前回報告書第 3 編「本調査の結果明らかとなった事実」第 1「契約調査の内容及び方法」
(77 頁以下)で述べたように、かんぽ生命、日本郵便及び日本郵政は、2019 年7 月31 日付けで、「日本郵政グループにおけるご契約調査及び改善に向けた取組について」7を公表し、下記の「全契約調査」及び「特定事案調査」(以下、これらを併せて「契約調査」という。)を実施している。
なお、契約調査のほか、かんぽ生命募集管理統括部は、2019 年1 月から、一定の基準に該当する 48 件の多数契約について、顧客から苦情の申出等がなくともかんぽ生命の方から能動的に行う契約者調査及び募集人調査(以下「能動調査」という。)を開始しているが、これについては、第4 編第1 及び第6 編第9 の5(2)において詳述する。
第1 契約調査の内容及び方法
1 全契約調査
(1) 概要
全契約調査は、2014 年4 月から2019 年3 月までの過去5 年間分の消滅契約を含む、全てのかんぽ生命保険商品の契約者(顧客。特定事案を除く約 1,900 万人)について、顧客の意向に沿わず不利益を生じさせたものがないかを検証し、意見や要望、不満等がある場合には、可能な限り早期に、当該不利益を解消するなどの顧客対応を行う、というものである。全契約調査では、顧客の意向の確認をするとともに、顧客対応を行う。
かんぽ生命及び日本郵便では、2019 年 8 月下旬から10 月までの間に、上記の対象者に対し、連名で、返信用はがきを同封した書面を発送した。これにより、顧客の意向の確認を要請するとともに、意見や要望、不満等がある場合の返送を要請した。そして、かんぽ生命は、顧客の回答に含まれる意見や要望等に関し、訪問による説明、専用コールセンターからの電話による説明、さらに、保険契約に関する手続等の顧客対応を行っている。
また、かんぽ生命は、顧客からの回答内容等に照らし法令違反又は社内規則違反の疑いがあると判断される事案については、品質改善室からコンプライアンス統括部に引き継がれ、募集人に対する調査等を行うこととしている。
(2) 深掘調査
かんぽ生命は、全契約調査等における顧客からの回答・意見等の中には多数回にわたって契約の消滅・新規契約が繰り返されているなど、顧客の意向に沿ったものではない可能性が想定されるケースがあったことから、全契約調査の更なる深掘調査(以下「深掘調査」という。)として、2020 年 2 月から、かんぽ生命支店の社員による訪問等を優先順位の高いものからxx開始し、顧客の不満や意見等の確認、当時の募集状況の調査を行い、不利益が発生している顧客については、その解消を図っている。
7 xxxxx://xxx.xxxxxxxxx.xx/xxxxxxxxxxxx/xxx/0000/00000000000000.xxxx xxxxx://xxx.xxxx.xxxxxxxxx.xx/xxxxxxxxxxxx/xxxxxxxxxxxxxxxxxx/0000/0000_00.xxxx xxxxx://xxx.xx-xxxx.xxxxxxxxx.xx/xxxxxxxxxxx/xxxxx/0000/xxx_xxx_xx000000.xxxx
深掘調査においては、下記の区分の契約のうち、多数契約、多額契約8、被保険者を替えた乗換契約(乗換が複数回)、保険種類を替えた乗換契約(乗換が複数回)については、かんぽ生命支店の社員が対象契約者を訪問することにより、契約内容や募集状況の確認等を行う。また、被保険者を替えた乗換契約(乗換が1 回)、保険種類を替えた乗換契約(乗換が1 回)、 保険期間等短縮変更制度を利用した乗換契約については、対象契約者に契約内容の確認等を依頼する書面を送付し、専用コールセンター又は返信封筒の返送等により不満や意見等があった対象契約者に対して、かんぽ生命支店の社員が訪問することにより、契約内容や募集状
況等の確認等を行う。
深掘調査の対象(合計約 5.9 万人)は、その契約形態により、以下の 5 つに区分されている。
ア 多数契約
深掘調査の対象となる「多数契約」とは、2014 年4 月から2019 年3 月までの過去5 年間で新規契約に 10 件以上加入し、その 3 割以上が消滅(解約、失効、減額9又は保険料払済契
約への変更を指す。以下本(2)において同じ。)した契約形態を指す。対象契約者数は約0.6 万人である。
イ 多額契約
深掘調査の対象となる「多額契約」とは、2019 年12 月時点で65 歳以上の契約者が月額保険料10 万円以上の払込みを行っており、かつ短期消滅契約が1 件以上発生(2014 年4 月から2019 年12 月まで)している契約形態を指す。対象契約者数は約1.8 万人である。
ウ 被保険者を替えた乗換契約
深掘調査の対象となる「被保険者を替えた乗換契約」とは、2014 年4 月から2019 年3 月までの過去5 年間で契約者が同一で被保険者を変更した新規契約を締結し、その変更後契約が短期消滅している契約形態を指す。対象契約者数は約2.7 万人である。
エ 保険種類を替えた乗換契約
深掘調査の対象となる「保険種類を替えた乗換契約」とは、2014 年4 月から2019 年3 月までの過去5 年間で年金から保険への乗換があったもの、又は保険と年金との間で乗換の繰返しがあった契約形態を指す。対象契約者数は約0.4 万人である。
8 月額保険料 20 万円未満の場合は、郵便局担当者の訪問により、契約内容の確認を行い、不満や意見等があった対象契約者に対しては、かんぽ生命支店の社員が訪問することにより、契約内容や募集状況の確認等を行う。
9 減額とは、保険金額の減額変更のことであり、保険金額及び特約保険金額を減らすことにより、以後の保険料を少なくする制度をいう。
オ 保険期間等短縮変更制度を利用した乗換契約
深掘調査の対象となる「保険期間等短縮変更制度を利用した乗換契約」とは、2014 年4 月から 2019 年 3 月までの過去 5 年間で既契約の保険期間等を短縮変更し、新規契約の申込みをしているもののうち、新規契約が引受謝絶等に該当する契約形態を指す。対象契約者数は約0.4 万人である。
かんぽ生命では、上記アの多数契約のうち、2014 年4 月から2019 年3 月までの過去5 年間で新規契約に 15 件以上加入し、その半数以上が消滅している契約者(897 人)について、優先的に対応を開始する対象とし、2020 年2 月からかんぽ生命支店の社員の訪問により契約内容や募集状況の確認等を行っている(以下「多数契約調査(優先対応)」という。)。なお、多数契約の深掘調査のうち、多数契約調査(優先対応)以外の対象契約者は5,532 人である。
2 特定事案調査
かんぽ生命においては、全契約調査と並行し、顧客の意向に沿わず不利益が発生した可能性のある乗換契約のうち、特定の類型に分類が可能な事案を「特定事案」として、過去の契約データから、乗換後の契約状況が特定事案に合致する 2019 年 3 月以前の過去 5 年分の約
18.3 万件の保険契約(契約者数約15.6 万人)について、顧客に生じた不利益を解消するとともに、顧客の回答及び契約状況をもとに、乗換契約の際の保険募集に係る法令違反等の疑いがある事象を発見するための調査に連携させる対応を行った。
この特定事案調査の類型、調査対象事案と調査対象事案数は、以下のとおりである。
類型 | 調査対象事案 | 調査対象事案数 |
A | 乗換契約に際し、乗換前の契約は解約されたものの、乗換後の契約が引受謝絶となった事案 例:保険契約を解約して、新規に保険契約の申込みを受けた が、この新規保険契約が顧客の病歴等で成立しなかったため、保険契約(保障)がない状態となった場合 | 約1.8 万件 |
B | 乗換契約後、告知義務違反により乗換後の契約が解除となり、保険金が支払謝絶等となった事案 例:保険契約を解約した後に、顧客が新規に加入した保険契約において、その加入時に正しく告知がなされていなかったとして、保険契約が解除となり、保険金の支払いがなされな かった場合 | 約0.3 万件 |
C | 特約切替や保険金額の減額により、より合理的な提案が可能であった事案 例:顧客の医療保障を充実したいとの意向に対し、当該顧客が保険契約の基本契約と特約の双方を解約し、新規に保険契約に加入したものの、基本契約を解約せずに、特約の見直し のみで当該顧客の意向に沿えた可能性がある場合 | 約2.6 万件 |
D | 乗換契約前後で予定利率が低下しており、保障の内容・保障期間の変動がない等の事案 例:顧客が保険契約を解約した後、予定利率が低下し、かつ、 保障の内容及び保障期間が同じ新規の保険契約に加入している場合 | 約1.5 万件 |
E | 乗換契約の判定期間後(乗換後の契約の契約日の後7 か月から後9 か月)の解約により、保障の重複が生じた事案 例:顧客が新規に保険契約を契約した後に、乗換契約の判定 期間後(乗換後の契約の契約日の後7 か月から後9 か月)に解約したため、保障の重複が生じた場合 | 約7.5 万件 |
F | 乗換契約の判定期間外(乗換後の契約の契約日の前4 か月から前6 か月)の解約により、保障の空白が生じた事案 例:顧客が保険契約を解約した後に新規に保険契約に加入したもののうち、乗換契約の判定期間外(乗換後の契約の契約日の前4 か月から前6 か月)に解約を行っており、保障がな い期間が存在する場合 | 約4.6 万件 |
(1) 顧客の意向確認
特定事案調査においては、対象となる顧客に2019 年8 月上旬から書面を発送し、書面発送後、顧客に対して、かんぽ生命の専用コールセンターからの電話又はかんぽ生命社員による訪問等を通じて、乗換契約時の意向その他の状況、乗換前の契約への復元等に関する説明の希望の有無、及び(当該説明を希望した顧客に対しては)契約復元等の意向を確認している。なお、上記書面の発送は、同月下旬までに完了した。
かんぽ生命は、上記の顧客の意向確認をできる限り進めるため、連絡のとれない顧客に対しては、①繰返しの訪問、当該顧客の住所調査を行うことにより意向確認を実施し、こうした活動によっても顧客と連絡がとれない場合は、②特定記録郵便により顧客の意向を確認するための質問を記載したアンケート用紙等を顧客に送付し回答を依頼することにより意向確認を実施し、これによっても意向確認ができない場合は、③日本郵便の配達員が、配達の際に、顧客の都合の良い日時等を確認した上で、専用コールセンターからの電話、かんぽ生命社員による訪問等による顧客への意向確認を行うこと等の手段を講じてきた。
(2) 募集人調査等ア 募集人調査
かんぽ生命は、(1)の顧客への意向確認の結果、法令違反又は社内規則違反の疑いが生じた事案(以下「違反疑い事案」という。)については、募集態様に問題がなかったかを確認するため、募集人に対する調査を行っている(以下、不適正募集等の疑いのある保険契約を受理した募集人に対する調査を個別に又は総称して「募集人調査」という。)。
特定事案調査における募集人調査は、かんぽ生命エリアコンプライアンス室10が日本郵便コンプライアンス室と合同で行うものであり、支社等に面談室を設置し、募集人を支社等に召集して調査を行う。また、募集人調査の実施前に、募集人に調査用紙を送付して一般的な事項を書面により確認し、当該書面により確認した事項と顧客への聴き取り結果を踏まえて、募集人に対する聴取を行う。
加えて、かんぽ生命は、この募集人調査に当たっては、募集人が自ら違反行為を申告し、かつ、募集人調査に協力した場合は、下記イの不祥事件等判定の結果に基づいて当該募集人に対して行われる処分を、本来よりも軽減又は免除する(以下「処分減免制度」という。)こととしている11。特定事案調査において、この処分減免制度は、募集人に対して処分を予定している旨を通知(以下「処分予定通知」という。)した後に募集人が自認した場合においても適用されている。
なお、従来の募集人調査は、調査員が募集人の所属する郵便局を訪問して調査しており、また、原則として顧客への聴取と同様の内容を聴取するものであった。
イ 不祥事件等判定
募集人調査の結果を踏まえて、かんぽ生命コンプライアンス統括部が、法令違反又は社内規則違反の有無を判定している(以下、コンプライアンス統括部による法令違反(不祥事件
12)又は社内規則違反(不祥事故13)の有無の判定を「不祥事件等判定」という。)。
特定事案に対する不祥事件等判定は、以下の手続により行われる。
すなわち、かんぽ生命では、各事案に関し、コンプライアンス統括部の担当者が、「特定事案調査におけるお客さまの声」14における、募集態様等に関する顧客の主張内容及びその他追加調査の結果と、「申込受理状況調査用紙」15の記載内容、聴き取り調査の結果を記載した「調査用紙」等における募集人の供述内容を対照しながら、各類型につき作成されたチェックシートを用いて不祥事件等判定を行っている。
また、具体的方法について、かんぽ生命では、いずれの類型においても、①乗換契約が合理的な理由や動機に基づいて行われたか、②募集人の発言内容に関して、合理的理由に基づ
10 かんぽ生命エリアコンプライアンス室は、かんぽ生命本社直轄の部門であり、全国13 か所に設置されている。同室は、各受持ち地域内のコンプライアンスに関する総合的企画・調整、推進及び指導の統括並びに不祥事件対応の統括を所掌するものとされている。
11 かんぽ生命では「調査協力(自己申告)制度」と称している。この点、「社内リーニエンシー制度」とは、一般に、社内の不正行為について、社内調査開始前に自主申告・調査協力等を行った者には、懲戒処分の減免等を認めることを指すが、かんぽ生命の「調査協力(自己申告)制度」は、募集人が不適正募集について自主申告等を行った場合に、かんぽ生命が募集人に対して、その処分を減免するという点で「リーニエンシー制度」に類似する制度といえる。なお、この制度は、全契約調査における募集人調査にも活用される。
12 不祥事件とは、詐欺、横領等の犯罪や情報提供義務違反、意向把握義務違反、重要事項不告知など、保険業法施行規則85 条5 項に該当する旨、かんぽ生命コンプライアンス統括部が判定した法令等違反行為をいい、不祥事件と判定された場合、金融庁に届出を行う必要がある。
13 不祥事故とは、社内規則に違反する旨、コンプライアンス統括部が判定した行為をいい、追加報告書では、不祥事件に該当しないものを指す。
14 顧客への書面発送後の架電により聴取された顧客の申出内容等をいう。
15 募集人調査に先立って、募集人に対して事前にレター調査として送付する調査用紙をいう。
くものか、顧客の主張と募集人の主張に齟齬がないか、齟齬がある場合はいずれの主張に合理性があるかなどを、上記の申込受理状況調査用紙等の記載と「特定事案調査におけるお客さまの声」の記載等に基づき判断することにより、不祥事件等判定を行っている。
かんぽ生命は、この不祥事件等判定に当たっては、募集人が不適正募集の事実を否定した場合であっても、外形的に顧客に不利益と認められる契約形態や顧客からの回答内容及び信憑性の高い状況証拠等に基づき、不適正募集に関する事実認定・判定を行っている。
また、コンプライアンス統括部の担当者による不祥事件等判定の結果は、全件について、外部弁護士が確認・検証を行っている。
コンプライアンス統括部は、募集人調査の結果を踏まえて、上記の不祥事件等判定により、不祥事件・不祥事故への該当・非該当を判定するが、募集人調査から判明している事実関係によっても該当・非該当を判定できない事案については、コンプライアンス統括部が再調査の指示を行い、コンプライアンス統括部からの顧客への架電やかんぽ生命支店の社員の訪問による顧客への再調査を実施するほか、募集人に対しては、かんぽ生命エリアコンプライアンス室及び日本郵便コンプライアンス室による再調査を行うこととされている。
また、異議申立ての制度も導入され、これにより、処分予定通知に異議がある募集人は、その旨の申立てをかんぽ生命に行うことができることとされている。16
(3) 契約復元等
かんぽ生命は、(1)の顧客への意向確認の結果、契約復元等を希望した顧客に対しては、希望内容を確認し、顧客の要望に沿った形で再提案するなど、可能な限り顧客の意向・都合に合わせて契約復元等に向けた手続を進めている。17
第2 範囲及び方法等の妥当性
1 全契約調査
当委員会は、全契約調査に関し、かんぽ生命の担当部署から、その範囲及び方法等について、報告を受けた。
当委員会は、全契約調査は、過去5 年間分の消滅契約を含めてかんぽ生命保険商品の全ての契約者を対象とするものであり、その調査範囲の設定に関しては、網羅的に契約者保護を図るものとして相当なものと考える。
また、後記第3 の1 のとおり、全契約調査の対象となる顧客約1,900 万人のうち、2020 年 2 月29 日時点で回答があったのは約100.8 万件に過ぎないが、これは、全契約調査における返信用はがきの記載(「ご加入いただいている保険契約は、お客さまのご意向に沿ったものでしょうか」との質問事項等)が、契約内容が自らの意向に沿っていないと考える顧客やその他特に意見、要望、不満等がある顧客に対してのみ積極的に応答を求める形式となっていたことによるものであった。この点に関しては、契約内容が自らの意向に沿っていないと考え
16 上記の方法による、客観的な状況証拠等に基づく事実認定・判定、外部弁護士の確認・検証、再調査、異議申立ての制度は、全契約調査における募集人調査においても実施される。
17 契約乗換の復元等対応に係る総合的企画・調整は、2019 年7 月10 日付けでかんぽ生命の事務企画部内に設置された品質改善室(現在員数160 人)が行っている。
る顧客等の契約については、顧客の申出の内容等を確認した上で、無効処理、合意解除等の契約措置やコンプライアンス統括部による募集人調査の対象とされており、顧客救済及び事案の解決・解明につなげる適切な手続が設けられていると考える。
また、当委員会は、全契約調査の更なる深掘調査に関しても、外形的に見て顧客にとって経済合理性が乏しい契約形態や顧客の意向に沿ったものではない可能性がある契約形態について、優先順位の高いものから調査対象とするものであり、顧客に重大な不利益が生じうる形態の不適正募集に関して、顧客保護及び実態解明に資するものとして相当なものと判断した。
さらに、深掘調査では、特に多数契約、多額契約(月額保険料20 万円以上)、被保険者を替えた乗換契約(乗換が複数回)、保険種類を替えた乗換契約(乗換が複数回)といった顧客に対し、より重大な不利益が生じている可能性のあるものについては、通常の全契約調査におけるレター送付による確認に代えて、当初からかんぽ生命支店の社員が対象契約者を訪問することにより、契約内容や契約締結状況等の事実の確認等を行っており、この点で、顧客に特に重大な不利益が生じうる形態の不適正募集に関して、顧客保護及び実態解明のためにより有効な手法がとられているものと考える。
2 特定事案調査
特定事案調査は、乗換契約をその契約形態に応じて分類し、特定の類型に該当する事案を調査対象とするものであり、当委員会は、その調査範囲の設定に関しては、乗換契約のうち顧客の意向に沿わず不利益が発生した可能性のある契約形態を特定した上で契約者保護を図るものとして相当なものと考える。
なお、当委員会は、特定事案調査に関し、かんぽ生命の担当部署から、その範囲及び方法等について、進捗に応じて適時に報告を受け、意見を述べるなどしてきた。
例えば、当委員会では、特定事案の調査に関して、顧客からの回答の分類方法について、サンプルの提示を受け、法令違反の可能性のある事例の区分の見直しに関する指摘を行い、かんぽ生命においてこれを反映した。また、募集人調査においても、自認した募集人からその動機等について意識調査を行うこと等を提案し、これが実際の調査に取り入れられた。このように、当委員会の意見が適切に反映されていると評価できる。
次に、当委員会は、募集人調査の調査方法及び不祥事件等判定の方法等について、かんぽ生命から説明を受けたが、募集人調査の調査方法及び不祥事件等判定の方法は、2020 年2 月 29 日時点で募集人調査の対象事案とされる1 万3,396 件につき、意向把握義務(保険業法294
条の2)の違反、虚偽告知(保険業法300 条1 項1 号)、誤解告知(保険業法施行規則234 条
1 項 4 号)等の保険業法上の義務違反の有無を、可能な限り正確かつ迅速に認定することに資するものであり、乗換募集の場面において募集人の言動に虚偽等があったかどうかという観点に主眼が置かれがちではあるものの、これらの違反事由を認定するものとしては相当であると判断した。
加えて、当委員会は、前記第1 の2(2)イ記載の客観的な状況証拠等に基づく事実認定及び不祥事件等判定の方法については、従来の自認中心の認定・判定方法からの脱却を目指した、事案の解決・解明に資する有効なものと判断した。また、この点に関連して、当委員会は、前記第1 の2(2)アの処分内容の決定方法については、特に処分予定である旨の通知後に自認
した募集人も処分減免制度の対象とすることにより、一定程度の客観証拠が存在する場合において募集人の自認を促す効果が認められるなど、事案の解決・解明に資する有効な方法がとられているものと判断した。
さらに、特定事案調査においては、書面の発送、電話、訪問等により顧客の意向等を確認し、この確認結果を踏まえて募集人調査が行われているところ、前記第1 の2(2)イのとおり、募集人調査の結果に対しては再調査の手続が設けられていること、また、不祥事件等判定においては異議申立ての手続が設けられていることに関しても、当委員会は、事案の解明に資する慎重かつ有効な方法がとられているものと判断した。
なお、前記第1 の2(2)イのとおり、コンプライアンス統括部担当者による不祥事件等判定の結果は、全件について、外部弁護士が確認・検証を行っているとのことであり、当委員会は、その判断を尊重することとし、個々の事案の不祥事件等判定の結果の当否については、追加調査における検証の対象外とした。
第3 契約調査の結果
1 全契約調査
かんぽ生命によれば、全契約調査の対象となる顧客約1,900 万人のうち、2020 年2 月29 日
時点で約 100.8 万件の回答があった。そのうち、訪問による説明、専用コールセンターからの電話による説明、保険契約に関する手続などの顧客対応が完了しているものが約82.8万件、顧客対応の手続中であるものが約 14.7 万件、顧客からの回答内容を確認中であるものが約
3.3 万件であった。
上記の顧客対応については、2020 年3 月末を目途に完了する見込みとのことである。しかし、無効処理や合意解除等の契約措置が必要なものについては、2020 年4 月以降も対応を継続するとしている。
また、顧客対応が完了している事案のうち、法令違反又は社内規則違反の疑いがあると判断される事案については、2020 年4 月以降、コンプライアンス統括部による募集人調査が実施される予定とのことである。
かんぽ生命によれば、全契約調査の更なる深掘調査については、第1 の1(2)記載の多数契約調査の中で優先対応した対象契約者(897 人)のうち、2020 年2 月29 日時点で、契約内容
の確認が完了した契約者は727 人である。そのうち意向に沿う旨の確認がされた契約者が309人であり、意向に沿わない旨の確認がされた契約者が418 人であった。また、多数契約の深掘調査の対象契約者であって多数契約調査(優先対応)以外の対象契約者(5,532 人)については、2020 年2 月29 日時点で契約内容の確認が完了した契約者は882 人であった。
これらの多数契約の深掘調査については、かんぽ生命支店の社員による対象契約者への訪問により契約内容の確認等を 2020 年 4 月末終了を目途に進めるとのことである。また、かんぽ生命は、契約内容の確認後、不利益が発生している顧客については合意解除等の契約措置を行うとともに、募集人調査を行うとのことである。
さらに、多数契約以外の深掘調査(第1 の1(2)イからオ)については、かんぽ生命支店の社員による対象契約者への訪問、書面の送付等により契約内容の確認等を 2020 年 6 月末終
了を目途に進めるとのことである。かんぽ生命は、契約内容の確認後、不利益が発生している顧客については合意解除等の契約措置を行うとともに、募集人調査を行うとのことである。
2 特定事案調査
(1) 特定事案調査の進捗状況
2014 年度から2018 年度までの新規契約件数1,067 万1,058 件のうち、特定事案の事案数は
18 万2,912 件であった。特定事案調査における意向確認の対象となる顧客15 万6,452 人のうち、2020 年2 月29 日時点で、案内が終了している顧客は約15.4 万人(約99%)であり、そのうち意向確認が完了した顧客は約13.4 万人(約86%)であった。
この意向確認が完了した顧客の増加に伴って、2019 年 9 月 30 日に行われた中間報告の時点では、6,327 件と公表された違反疑い事案は増加し、現在、1 万3,396 件が募集人調査の対象となっている。
顧客への案内終了後に繰り返し架電をしても連絡がとれないなど、意向確認が未了の顧客については、今後も意向確認を引き続き実施していくことにしている。
(2) 募集人調査等の状況
2020 年 2 月 29 日時点で、募集人調査の対象とされた 1 万 3,396 件のうち、不祥事件等判
定がされたのは 8.772 件であり、そのうち、かんぽ生命が法令違反(不祥事件)と判定した事案は 174 件であり、社内規則違反(不祥事故)と判定した事案は 1,996 件であった(詳細は、第4 編記載のとおり。)。
上記 1 万 3,396 件のうち、不祥事件等判定が未了の事案については、募集人が病休等の理由により調査不能になっている事案や、一部の顧客への再確認が必要な事案等を除き、2020年3 月末までに不祥事件等判定を完了する予定とのことである。
(3) 契約復元等の状況
当委員会が、2020 年 2 月29 日時点でかんぽ生命から報告を受けたところによれば、契約
復元等については、契約復元等に関する説明を希望した顧客が4 万7,968 人であり、4 万3,013
人の顧客に対して契約復元等の手続の案内が完了している。
そのうち、3 万6,721 人の顧客が契約復元等の意向を示し、既に3 万5,564 人の顧客について契約復元等の措置が完了している。
契約復元等の措置が未了の顧客に対しては、顧客の都合による場合を除いて、2020 年3 月末までに契約復元等を完了させる予定とのことである。また、2020 年 4 月以降においても、顧客から契約復元等の要望があった場合は対応することにしている。
第3 編 特定事案調査結果の分析第1 分析の対象及び方法等
当委員会は、前回報告書(81 頁)記載のとおり、不適正募集全体の原因や対策を検討するため、特定事案調査結果の分析を行うこととし、どのような募集人が「違反疑い事案」に関与したかを中心に分析・検討することを試みた。
この「違反疑い事案」は、法令違反又は社内規則違反の「疑い」を有するにとどまる段階の事案であり、その後の不祥事件等判定の結果、法令違反又は社内規則違反と判定されるものは限られるが、顧客が当該契約の募集に対して不満を抱き、その旨の申告をしたことに間違いはない事案である。そして、当委員会は、不適正募集全体の原因や対策を検討するためには、まず、分析の対象をある程度広めに設定した方が良いと考えたため、この「違反疑い事案」を分析の対象とすることとした。
なお、前回報告書では、特定事案調査の進捗等の事情から、2019 年9 月27 日(以下「9 月末基準日」という。)時点における「違反疑い事案」(6,327 件)を分析対象とした。
特定事案調査は、前回報告書の分析対象であった9 月末基準日時点においては半分程度の進捗であったものの、追加報告書の分析対象である2020 年2 月29 日(以下「2 月末基準日」という。)時点においては概ね完了し、「違反疑い事案」は1 万3,396 件となった。
当委員会は、かんぽ生命から2 月末基準日のデータを基に集計等を行ったデータの提供を受け、これらを基に、前回報告書と同様の手法による特定事案調査結果の分析を行うことにより、前回報告書で示された分析結果について、調査の進捗に伴う母集団の増加によっても同様の傾向が認められるか否かを検証することとした。
まず、2 月末基準日のデータによれば、分析対象となる「違反疑い事案」の件数、新規契約件数、特定事案件数、意向確認済み件数等の年度別の推移及び合計は、表1 下段のとおりである。
表1:「違反疑い事案」の件数、新規契約件数、特定事案件数、意向確認済み件数等の年度別の推移及び合計
2019年9月末時点
特定事案調査件数 (2014年度から2018年度までの対象5年間) | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計 |
新規契約件数(*1) | 2,381,977件 | 2,397,286件 | 2,441,232件 | 1,739,153件 | 1,711,410件 | 10,671,058件 |
特定事案件数 | 30,283件 | 33,357件 | 41,780件 | 43,603件 | 33,889件 | 182,912件 |
意向確認済み件数 | 10,331件 | 12,175件 | 15,469件 | 16,931件 | 13,114件 | 68,020件 |
「違反疑い事案」の件数 | 789件 | 929件 | 1,208件 | 1,838件 | 1,563件 | 6,327件 |
「違反疑い事案」 に関与した募集人数 | 1,007人 | 1,141人 | 1,489人 | 2,155人 | 1,860人 | 5,797人(*2) |
特定事案調査件数 (2014年度から2018年度までの対象5年間) | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計(*2) |
新規契約件数(*1) | 2,381,977件 | 2,397,286件 | 2,441,232件 | 1,739,153件 | 1,711,410件 | 10,671,058件 |
特定事案件数 | 30,283件 | 33,357件 | 41,780件 | 43,603件 | 33,889件 | 182,912件 |
意向確認済み件数 | 23,908件 | 28,066件 | 35,999件 | 38,041件 | 29,732件 | 155,746件 |
「違反疑い事案」の件数 | 1,681件 | 1,929件 | 2,571件 | 3,899件 | 3,316件 | 13,396件 |
「違反疑い事案」 に関与した募集人数 | 1,886人 | 2,091人 | 2,818人 | 3,929人 | 3,284人 | 9,653人(*2) |
2020年2月末時点
(*1) ディスクロージャー誌による公表値。
(*2) 「違反疑い事案」に関与した募集人数に関しては、同一募集人が複数年度で関与したケースがあるところ、そのようなケースでは重複を除き、複数年度で関与した同一募集人は一人と計算している。
表1 上段のとおり、9 月末基準日のデータ(以下「9 月末基準日データ」という。)によれば、2014 年4 月から2019 年3 月までの5 年間に受理した特定事案に該当する契約に関して、顧客からの聴き取りに基づき、契約時の状況や意向を確認できた6 万8,020 件のうち、約9.3%に相当する 6,327 件が「違反疑い事案」として把握された。その後の調査により、各「違反疑い事案」に関与した募集人が特定され、その人数は 5 年間の合計で 5,797 人であることが判明した。
他方、表 1 下段のとおり、2 月末基準日のデータ(以下「2 月末基準日データ」という。)によれば、2014 年4 月から2019 年3 月までの5 年間に受理した特定事案に該当する契約に関して、顧客からの聴き取りに基づき、契約時の状況や意向を確認できた15 万5,746 件のうち、約8.6%に相当する1 万3,396 件が「違反疑い事案」として把握された。その後の調査により、各「違反疑い事案」に関与した募集人が特定され、その人数は5 年間の合計で9,653 人であることが判明した。
第2 分析結果
1 「違反疑い事案」の数は、5 年平均で2,679 件(5 年平均の新規契約件数の約0.13%)であること
表 2 上段のとおり、9 月末基準日データによれば、2014 年度から 2018 年度までの 5 年間の新規契約件数は合計約1,067 万件(5 年平均で約213.4 万件)であるところ、特定事案の件数は合計約 18.3 万件(5 年平均で約 3.7 万件)であり、そのうち顧客の意向確認が終了した件数は6 万8,020 件で、その結果、「違反疑い事案」とされたものは6,327 件(5 年平均で1,265件)であった。
他方、表 2 下段のとおり、2 月末基準日データによれば、顧客の意向確認が終了した件数は 15 万 5,746 件で、その結果、「違反疑い事案」とされたものは 1 万 3,396 件(5 年平均で
2,679 件)である。
すなわち、9 月末基準日から調査が進んだことで、顧客の意向確認が終了した件数が約2.3
倍となり、それに伴い「違反疑い事案」の件数も約2 倍となり、新規契約件数に占める「違反疑い事案」の件数の割合(5 年平均)も約2 倍となっている。
表2:新規契約件数に占める「違反疑い事案」の件数の割合(5 年平均)
2019年9月末時点
特定事案調査件数 (2014年度から2018年度 までの対象5年間) | 合計 | 5年平均 |
新規契約件数 特定事案件数 意向確認済み件数 「違反疑い事案」の件数 新規契約件数に占める 「違反疑い事案」件数の割合 | 10,671,058件 | 2,134,212件 |
182,912件 | 36,582件 | |
68,020件 | ‐ | |
6,327件 | 1,265件 | |
‐ | 0.059% |
2020年2月末時点
特定事案調査件数 (2014年度から2018年度 までの対象5年間) | 合計 | 5年平均 |
新規契約件数 | 10,671,058件 | 2,134,212件 |
特定事案件数 | 182,912件 | 36,582件 |
意向確認済み件数 | 155,746件 | ‐ |
「違反疑い事案」の件数 | 13,396件 | 2,679件 |
新規契約件数に占める 「違反疑い事案」件数の割合 | ‐ | 0.126% |
2 全募集人のうち、「違反疑い事案」に関与した募集人の割合は、5 年平均で約 3.1%であること
表3 上段のとおり、9 月末基準日データによれば、「違反疑い事案」に関与した募集人(以下「関与募集人」という。)は、かんぽ生命保険商品の募集実績のある全体人数(年度ごとに約 8 万 9,000 人から約 9 万 3,000 人)のうち、年度ごとに約 1.1%(1,007 人)から約 2.4%
(2,155 人)であり、5 年平均では全体人数(9 万 1,435 人)のうちの約 1.7%(1,530 人)であった。
他方、表 3 下段のとおり、2 月末基準日データによれば、関与募集人は、かんぽ生命保険商品の募集実績のある全体人数(年度ごとに約8 万9,000 人から約9 万3,000 人)のうち、年度ごとに約 2.1%(1,886 人)から約 4.3%(3,929 人)であり、5 年平均では全体人数のうちの約3.1%(2,802 人)である。
表3:関与募集人の人数と割合
2019年9月末時点
2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 5年平均 | |
「違反疑い事案」の募集人数 | 1,007人 | 1,141人 | 1,489人 | 2,155人 | 1,860人 | 1,530人 |
全体 募集人数(*1) | 91,984人 | 92,414人 | 93,167人 | 90,753人 | 88,855人 | 91,435人 |
割合 | 1.1% | 1.2% | 1.6% | 2.4% | 2.1% | 1.7% |
2020年2月末時点
2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 5年平均 | |
「違反疑い事案」の募集人数 | 1,886人 | 2,091人 | 2,818人 | 3,929人 | 3,284人 | 2,802人 |
全体 募集人数(*1) | 91,984人 | 92,414人 | 93,167人 | 90,753人 | 88,855人 | 91,435人 |
割合 | 2.1% | 2.3% | 3.0% | 4.3% | 3.7 % | 3.1% |
(*1) 全体募集人数:
当該年度に募集実績のあった募集人数。
3 「違反疑い事案」を受理した郵便局数は、全体の約14.5%であること
募集人の受け付けたかんぽ生命保険商品は、募集人の在籍する各郵便局で受理した扱いとされるところ、表4 上段のとおり、9 月末基準日データによれば、「違反疑い事案」の5 年間の受理局数は 1,841 局であり、簡易郵便局18を除く郵便局総数 2 万 0,156 局(2019 年 9 月 30日時点。以下同じ。)のうちの約9%であった。
他方、表4 下段のとおり、2 月末基準日データによれば、「違反疑い事案」の5 年間の受理局数は2,921 局であり、郵便局総数のうちの約14.5%である。
すなわち、9 月末基準日から調査が進んだことで「違反疑い事案」の件数が約2 倍となり、それに伴い「違反疑い事案」の5 年間の受理局数、及び「違反疑い事案」の受理局が郵便局総数に占める割合も増加している。
表4:「違反疑い事案」を受理した郵便局数
2019年9月末時点
2014年度~2018年度
「違反疑い事案」受理局数
1,841局
郵便局総数
20,156局
割合
9.13%
2020年2月末時点
2014年度~2018年度 | |
「違反疑い事案」受理局数 | 2,921局 |
郵便局総数 | 20,156局 |
割合 | 14.5% |
18 簡易郵便局とは、簡易郵便局法に基づき、日本郵便から委託された郵便窓口業務等の委託業務を行う施設をいう。かんぽ生命は、簡易郵便局(委託業務の受託者)に対し、かんぽ生命の生命保険契約の募集業務を委託しており、また日本郵便に対し、簡易郵便局に対するかんぽ生命の生命保険契約に係る教育・指導・管理を委託している(前回報告書24 頁参照)。
4 「違反疑い事案」(1 万3,396 件)のうち、渉外社員である募集人が関与した件数の割合は、約85.5%(1 万1,456 件)であり、窓口社員である募集人が関与した件数の割合は、約 14.5%(1,940 件)であること
表5 上段のとおり、9 月末基準日データによれば、「違反疑い事案」(6,327 件)のうち、渉外社員が関与した件数の割合は、約87%(5,507 件)であった。
他方、表5 下段のとおり、2 月末基準日データによれば、「違反疑い事案」(1 万3,396 件)のうち、渉外社員が関与した件数の割合は、約85.5%(1 万1,456 件)である。
また、表6 のとおり、9 月末基準日データによれば19、全募集人(5 年平均で9 万1,435 人)に占める渉外社員の割合は、5 年平均で約18%(1 万6,438 人)であり、窓口社員の割合は、 5 年平均で約82%(7 万4,996 人)である。
さらに、表7 のとおり、2 月末基準日データによれば、関与募集人(9,653 人)のうち、「違反疑い事案」に関与した渉外社員(以下「関与渉外社員」という。)の割合は、約73.7%(7,116人)であり、「違反疑い事案」に関与した窓口社員(以下「関与窓口社員」という。)の割合は、約26.3%(2,537 人)である。
加えて、表8 のとおり、2 月末基準日データによれば、全渉外社員(5 年平均で1 万6,438人)に占める関与渉外社員の割合は、5 年平均で約13.7%(2,250 人)であり、全窓口社員(5年平均で7 万4,996 人)に占める関与窓口社員の割合は、5 年平均で約0.7%(552 人)である。
すなわち、全募集人のうち約 18%に過ぎない渉外社員の中の約 13.7%の渉外社員が、「違反疑い事案」の約85.5%に関与したということである。
19 表6 は、2014 年度から2018 年度の全募集人、渉外社員、窓口社員の数及び全募集人のうち渉外社員と窓口社員の割合を記載したデータであるところ、このデータは 9 月末基準日からの調査の進捗により更新される性質のものではないため、追加報告書においても9 月末基準日データを用いた。
表5:「違反疑い事案」の関与件数の割合(渉外社員・窓口社員別)
2019年9月末時点
2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計 | |
「違反疑い事案」件数 | 789件 | 929件 | 1,208件 | 1,838件 | 1,563件 | 6,327件 |
渉外社員募集件数 | 707件 | 836件 | 1,041件 | 1,573件 | 1,350件 | 5,507件 |
割合 | 89.6% | 90.0% | 86.2% | 85.6% | 86.4% | 87.0% |
窓口社員関与件数 | 82件 | 93件 | 167件 | 265件 | 213件 | 820件 |
割合 | 10.4% | 10.0% | 13.8% | 14.4% | 13.6% | 13.0% |
2020年2月末時点
2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計 | |
「違反疑い事案」件数 | 1,681件 | 1,929件 | 2,571件 | 3,899件 | 3,316件 | 13,396件 |
渉外社員募集件数 | 1,436件 | 1,660件 | 2,184件 | 3,273件 | 2,903件 | 11,456件 |
割合 | 85.4% | 86.1% | 84.9% | 83.9% | 87.5% | 85.5% |
窓口社員関与件数 | 245件 | 269件 | 387件 | 626件 | 413件 | 1,940件 |
割合 | 14.6% | 13.9% | 15.1% | 16.1% | 12.5% | 14.5% |
表6:全募集人に占める渉外社員及び窓口社員の割合(*1)
2019年9月末時点
2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 5年平均 | |
全体募集人数 | 91,984人 | 92,414人 | 93,167人 | 90,753人 | 88,855人 | 91,435人 |
渉外社員数 (割合) | 17,664人 (19.2%) | 17,089人 (18.5%) | 16,718人 (17.9%) | 15,810人 (17.4%) | 14,910人 (16.8%) | 16,438人 (18.0%) |
窓口社員数 (割合) | 74,320人 (80.8%) | 75,325人 (81.5%) | 76,449人 (82.1%) | 74,943人 (82.6%) | 73,945人 (83.2%) | 74,996人 (82.0%) |
(*1) 全募集人に対する渉外社員と窓口社員の割合であるため数値の更新はなし。
表7:関与募集人に占める関与渉外社員及び関与窓口社員の割合
2020年2月末時点
2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計 | |
「違反疑い事案」に関与した 募集人数 | 1,886人 | 2,091人 | 2,818人 | 3,929人 | 3,284人 | 9,653人 |
「違反疑い事案」に関与した 渉外社員数 | 1,549人 | 1,690人 | 2,282人 | 3,065人 | 2,663人 | 7,116人 |
割合 | 82.1% | 80.8% | 81.0% | 78.0% | 81.1% | 73.7% |
「違反疑い事案」に関与した 窓口社員数 | 337人 | 401人 | 536人 | 864人 | 621人 | 2,537人 |
割合 | 17.9% | 19.2% | 19.0% | 22.0% | 18.9% | 26.3% |
表8:全渉外社員に占める関与渉外社員、全窓口社員に占める関与窓口社員の割合
2020年2月末時点
2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 5年平均 | |
渉外社員数 | 17,664人 | 17,089人 | 16,718人 | 15,810人 | 14,910人 | 16,438人 |
「違反疑い事案」に関与した 渉外社員数 (割合) | 1,549人 (8.8%) | 1,690人 (9.9%) | 2,282人 (13.6%) | 3,065人 (19.4%) | 2,663人 (17.9%) | 2,250人 (13.7%) |
窓口社員数 | 74,320人 | 75,325人 | 76,449人 | 74,943人 | 73,945人 | 74,996人 |
「違反疑い事案」に関与した 窓口社員数 (割合) | 337人 (0.5%) | 401人 (0.5%) | 536人 (0.7%) | 864人 (1.2%) | 621人 (0.8%) | 552人 (0.7%) |
5 「違反疑い事案」(1 万3,396 件)のうち、販売実績が「優秀」20とされる募集人が関与した件数の割合は、約25.7%(3,442 件)であること
表9 上段のとおり、9 月末基準日データによれば、「違反疑い事案」(6,327 件)のうち、販売実績が「優秀」とされる募集人が関与した件数の割合は、約25.9%(1,641 件)であった。
他方、表9 下段のとおり、2 月末基準日データによれば、「違反疑い事案」(1 万3,396 件)のうち、販売実績が「優秀」とされる募集人が関与した件数の割合は、約25.7%(3,442 件)である。
また、表 10 のとおり、9 月末基準日データによれば21、販売実績が「優秀」とされる募集人は、5 年平均で募集人全体の約1.4%(1,270 人)である。
すなわち、全募集人のうち約1.4%に過ぎない販売実績が「優秀」とされる募集人が、「違反疑い事案」の4 分の1 以上に関与したということである。
なお、表 11 のとおり、9 月末基準日データによれば22、販売実績が「優秀」とされる募集人は、2014 年度から 2018 年度までの新規契約全体のうちの約 8.9%に当たる合計約 95 万件
(5 年平均で約19 万件)の契約を募集している。
20 販売実績が「優秀」とされる募集人とは、年間販売実績 500 万円以上の渉外社員又は年間販売実績 200 万円以上の窓口社員であり、この販売実績額以上の実績である募集人は、最高優績者を含む成績トップ層のものとして扱われている。
21 表 10 は、2014 年度から2018 年度の全募集人及び販売実績が「優秀」とされる募集人の数並びに全募集人のうち販売実績が「優秀」とされる募集人の割合を記載したデータであるところ、このデータは 9 月末基準日からの調査の進捗により更新される性質のものではないため、追加報告書においても9 月末基準日データを用いた。
22 表11 は、2014 年度から 2018 年度の新規契約及び販売実績が「優秀」とされる募集人が募集した契約の件数並びに新規契約のうち販売実績が「優秀」とされる募集人が募集した契約の割合を記載したデータであるところ、このデータは 9 月末基準日からの調査の進捗により更新される性質のものではないため、追加報告書においても9 月末基準日データを用いた。
表9:「違反疑い事案」の件数に占める販売実績が「優秀」とされる募集人の関与件数の割合
2019年9月末時点
2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計 | |
①販売実績「優秀」とされる募集人が 関与した「違反疑い事案」件数 | 221件 | 246件 | 359件 | 463件 | 352件 | 1,641件 |
②「違反疑い事案」件数 | 789件 | 929件 | 1,208件 | 1,838件 | 1,563件 | 6,327件 |
割合(①/②) | 28.0% | 26.5% | 29.7% | 25.2% | 22.5% | 25.9% |
2020年2月末時点
2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計 | |
①販売実績「優秀」 とされる募集人が 関与した「違反疑い事案」件数 | 401件 | 499件 | 771件 | 1,020件 | 751件 | 3,442件 |
②「違反疑い事案」件数 | 1,681件 | 1,929件 | 2,571件 | 3,899件 | 3,316件 | 13,396件 |
割合(①/②) | 23.9% | 25.9% | 30.0% | 26.2% | 22.6% | 25.7% |
表10:全募集人に占める販売実績が「優秀」とされる募集人の割合(*1)
2019年9月末時点
2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 5年平均 | |
①販売実績「優秀」とされる募集人数 | 1,191人 | 1,539人 | 1,592人 | 1,200人 | 827人 | 1,270人 |
②全体募集人数 | 91,984人 | 92,414人 | 93,167人 | 90,753人 | 88,855人 | 91,435人 |
割合(①/②) | 1.29% | 1.67% | 1.71% | 1.32% | 0.93% | 1.39% |
(*1) 全募集人のうち、販売実績が「優秀」とされる募集人の割合であるため数値の更新はなし。
表11:新規契約件数に占める販売実績が「優秀」とされる募集人が募集した契約件数の割合(*1)
2019年9月末時点
2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計 | |
①販売実績「優秀」とされる募集人が 募集した契約件数 | 186,145件 | 236,998件 | 245,711件 | 157,227件 | 126,578件 | 952,659件 |
②新規契約件数 | 2,381,977件 | 2,397,286件 | 2,441,232件 | 1,739,153件 | 1,711,410件 | 10,671,058件 |
割合(①/②) | 7.8% | 9.9% | 10.1% | 9.0% | 7.4% | 8.9% |
(*1) 新規契約件数のうち、販売実績が「優秀」とされる募集人の割合であるため数値の更新はなし。
6 「違反疑い事案」に関与した同一の募集人の関与件数は、少ない者は1 件(5,972 人)で、多い者は47 件(1 人)であるところ、関与件数が1 件から3 件の募集人が9 割近くを占め、 4 件及び5 件の募集人を加えると約94%を占めていること
表12 左表のとおり、9 月末基準日データによれば、同一の関与募集人の関与件数は、少ない者は1 件(4,003 人)で、多い者は22 件(1 人)であったところ、関与件数が1 件から3 件の関与募集人が9 割以上を占め、4 件及び 5 件の関与募集人を加えると約97.1%を占めていた。
他方、表12 右表のとおり、2 月末基準日データによれば、同一の関与募集人の関与件数は、少ない者は1 件(5,972 人)で、多い者は47 件(1 人)であるところ、関与件数が1 件から 3 件の関与募集人が9 割近くを占め、4 件及び5 件の関与募集人を加えると約94%を占めている。
表12:同一の関与募集人の関与件数
2019年9月末時点 2020年2月末時点
同一の募集人が関与した「違反疑い事案」件数 | 「違反疑い事案」 募集人数 | 割合 |
1件 | 4,003人 | 69.1% |
2件 | 987人 | 17.0% |
3件 | 357人 | 6.2% |
4件 | 180人 | 3.1% |
5件 | 101人 | 1.7% |
6件 | 52人 | 0.9% |
7件 | 34人 | 0.6% |
8件 | 28人 | 0.5% |
9件 | 16人 | 0.3% |
10件 | 7人 | 0.1% |
11件 | 8人 | 0.1% |
12件 | 6人 | 0.1% |
13件 | 4人 | 0.1% |
14件 | 5人 | 0.1% |
15件 | 1人 | 0.0% |
16件 | 0人 | 0.0% |
17件 | 3人 | 0.0% |
18件 | 0人 | 0.0% |
19件 | 3人 | 0.0% |
20件 | 1人 | 0.0% |
21件 | 0人 | 0.0% |
22件 | 1人 | 0.0% |
合計 | 5,797人 | 100% |
同一の募集人が関与した「違反疑い事案」件数 | 「違反疑い事案」 募集人数 | 割合 |
1件 | 5,972人 | 61.87% |
2件 | 1,696人 | 17.57% |
3件 | 719人 | 7.45% |
4件 | 421人 | 4.36% |
5件 | 268人 | 2.78% |
6件 | 172人 | 1.78% |
7件 | 80人 | 0.83% |
8件 | 70人 | 0.73% |
9件 | 54人 | 0.56% |
10件 | 48人 | 0.50% |
11件 | 25人 | 0.26% |
12件 | 23人 | 0.24% |
13件 | 15人 | 0.16% |
14件 | 10人 | 0.10% |
15件 | 13人 | 0.13% |
16件 | 11人 | 0.11% |
17件 | 9人 | 0.09% |
18件 | 6人 | 0.06% |
19件 | 8人 | 0.08% |
20件 | 9人 | 0.09% |
21件 | 3人 | 0.03% |
22件 | 6人 | 0.06% |
23件 | 0人 | 0.00% |
24件 | 5人 | 0.05% |
同一の募集人が関与した「違反疑い事案」件数 | 「違反疑い事案」 募集人数 | 割合 |
25件 | 1人 | 0.01% |
26件 | 2人 | 0.02% |
27件 | 0人 | 0.00% |
28件 | 1人 | 0.01% |
29件 | 0人 | 0.00% |
30件 | 0人 | 0.00% |
31件 | 0人 | 0.00% |
32件 | 0人 | 0.00% |
33件 | 0人 | 0.00% |
34件 | 1人 | 0.01% |
35件 | 0人 | 0.00% |
36件 | 0人 | 0.00% |
37件 | 0人 | 0.00% |
38件 | 1人 | 0.01% |
39件 | 0人 | 0.00% |
40件 | 2人 | 0.02% |
41件 | 0人 | 0.00% |
42件 | 0人 | 0.00% |
43件 | 0人 | 0.00% |
44件 | 1人 | 0.01% |
45件 | 0人 | 0.00% |
46件 | 0人 | 0.00% |
47件 | 1人 | 0.01% |
合計 | 9,653人 | 100% |
7 「違反疑い事案」である契約に加入した顧客の1 人当たりの加入件数は、1 件から14 件にわたっているところ、1 件の顧客が約 95.1%、2 件の顧客が約 3.8%であり、この合計で約98.9%を占めていること23
表 13 左表のとおり、9 月末基準日データによれば、「違反疑い事案」である契約に加入した顧客の1 人当たりの加入件数は、1 件から5 件であったところ、1 件の顧客が約97.3%、2件の顧客が約2.3%であり、この合計で約99.6%を占めていた。
他方、表 13 右表のとおり、2 月末基準日データによれば、「違反疑い事案」である契約に加入した顧客の1 人当たりの加入件数は、1 件から14 件であるところ、1 件の顧客が約95.1%、 2 件の顧客が約3.8%であり、この合計で約98.9%を占めている。
表13:「違反疑い事案」の加入件数別の契約者数及び割合
2019年9月末時点 2020年2月末時点
同一契約者が加入した「違反疑い事案」件数 | 「違反疑い事案」 「違反疑い事案」契約者数(割合) 件数 |
1件 | 5,952人(97.3%) 5,952件 |
2件 | 142人(2.3%) 284件 |
3件 | 17人(0.3%) 51件 |
4件 | 5人(0.1%) 20件 |
5件 | 4人(0.1%) 20件 |
合計 | 6,120人(100.0%) 6,327件 |
同一契約者が加入した「違反疑い事案」件数 | 「違反疑い事案」契約者数(割合) | 「違反疑い事案」件数 |
1件 | 11,914人(95.1%) | 11,914件 |
2件 | 479人(3.8%) | 958件 |
3件 | 82人(0.7%) | 246件 |
4件 | 21人(0.2%) | 84件 |
5件 | 12人(0.1%) | 60件 |
6件 | 5人(0.0%) | 30件 |
7件 | 5人(0.0%) | 35件 |
8件 | 0人(0.0%) | 0件 |
9件 | 2人(0.0%) | 18件 |
10件 | 0人(0.0%) | 0件 |
11件 | 1人(0.0%) | 11件 |
12件 | 0人(0.0%) | 0件 |
13件 | 2人(0.0%) | 26件 |
14件 | 1人(0.0%) | 14件 |
合計 | 12,524人(100.0%) | 13,396件 |
23 「違反疑い事案」である契約ではなく、より広げて、特定事案調査の対象となった契約(合計約18.3
万件)で見た場合でも、同契約に加入した顧客の加入件数は 1 件から 23 件であるところ、1 件の顧客が約89.2%、2 件の顧客が約8.1%であり、この合計で約97.3%を占めている。
8 「違反疑い事案」である契約に加入した顧客の加入年代は、10 代から90 代にわたっているところ、最も多いのが 60 代(約 32.8%)であり、60 代、70 代(約 25.9%)、80 代(約 6.1%)、90 代(約0.1%)の合計が6 割以上を占めていること
表 14 左表のとおり、9 月末基準日データによれば、「違反疑い事案」である契約に加入した顧客の加入年代は、10 代から90 代にわたっているところ、最も多いのが60 代(約32.3%)であり、60 代、70 代(約29.3%)、80 代(約10.2%)、90 代(約0.1%)の合計が7 割以上を占めていた。
他方、表 14 右表のとおり、2 月末基準日データによれば、「違反疑い事案」である契約に加入した顧客の加入年代は、10 代から90 代にわたっているところ、最も多いのが60 代(約 32.8%)であり、60 代、70 代(約25.9%)、80 代(約6.1%)、90 代(約0.1%)の合計が6 割以上を占めている。
表14:「違反疑い事案」の年代別の契約者数(*1)及び割合
2019年9月末時点 2020年2月末時点
「違反疑い事案」契約者加入年代
契約者数(割合)
10代
3人 (0.0%)
20代
42人 (0.7%)
30代
174人 (2.8%)
40代
472人 (7.7%)
50代
1,023人 (16.7%)
60代
1,978人 (32.3%)
70代
1,793人 (29.3%)
80代
627人 (10.2%)
90代
8人 (0.1%)
合計
6,120人 (100.0%)
「違反疑い事案」契約者加入年代 | 契約者数(割合) |
10代 | 3人(0.0%) |
20代 | 119人(1.0%) |
30代 | 495人(4.0%) |
40代 | 1, 265人(10.1%) |
50代 | 2,514人(20.1%) |
60代 | 4,105人(32.8%) |
70代 | 3,246人(25.9%) |
80代 | 762人(6.1%) |
90代 | 15人(0.1%) |
合計 | 12,524人(100.0%) |
(*1) 契約者数:
1人の契約者が複数の「違反疑い事案」に加入し、その加入年代が異なる場合は、最初に加入した年代を集計対象とする。
9 「違反疑い事案」である契約に加入した顧客の性別は、女性が約83.5%、男性が約16.5%であること
表 15 上段のとおり、9 月末基準日データによれば、「違反疑い事案」である契約に加入した顧客の性別は、女性が約85%、男性が約15%であった。
他方、表 15 下段のとおり、2 月末基準日データによれば、「違反疑い事案」である契約に加入した顧客の性別は、女性が約83.5%、男性が約16.5%である。
表15:「違反疑い事案」の契約者の性別ごとの人数及び割合
2019年9月末時点
性別
「違反疑い事案」契約者数(割合)
女性
5,199人(85.0%)
男性
921人(15.1%)
合計
6,120人(100.0%)
2020年2月末時点
性別
「違反疑い事案」契約者数(割合)
女性
10,453人(83.5%)
男性
2,071人(16.5%)
合計
12,524人(100.0%)
第4 編 特定事案調査等に係る不祥事件等判定結果の分析第1 分析の対象及び方法等
本編では、特定事案調査及び第2 編の冒頭で触れた能動調査24(以下、両者を併せて「特定事案調査等」という。)に係る不祥事件等判定結果について分析し、どのような募集人が不祥事件・不祥事故事案に関与したかなどを明らかにする。なお、特定事案調査等の進捗等の事情から、2 月末基準日時点における不祥事件・不祥事故事案を分析の対象とした。
また、当委員会は、特定事案調査等に係る不祥事件等判定結果と、第3 編で示した特定事案調査結果とを比較・分析し、両者の間に同様の傾向が認められるか否かについても検討した。
なお、上記のとおり、本編では2 月末基準日時点における特定事案調査等に係る不祥事件等判定結果を分析対象としているところ、今後の特定事案調査等及び深掘調査の進捗に伴い、本編で示した不祥事件等判定結果に係る不祥事件・不祥事故事案の件数等の数値や傾向が変わり得ることを、念のため付言しておく。
24 かんぽ生命募集管理統括部は、2019 年1 月から、一定の基準に該当する48 件の多数契約について、顧客から苦情の申出がなくとも、かんぽ生命の方から能動的に契約者調査及び募集人調査を開始した
(能動調査)。そして、2 月末基準日時点において、この能動調査は概ね完了した。上記のとおり、能動調査は一定の基準に該当する多数契約を対象とする調査であり、乗換契約を対象とする特定事案調査とは異質ではあるものの、深掘調査の先駆けのような調査であり、追加調査基準日までに不祥事件等判定が一定数終了していることから、能動調査に係る不祥事件等判定結果についても本編で併せて検討を加えることとした。本編において分析・検討対象としている以下の各種データ中の「能動調査」のデータは、2 月末基準日時点における、能動調査に係る不祥事件等判定結果のデータである。なお、能動調査については、第6 編第9 の5(2)において詳述する。
まず、2 月末基準日データによれば、分析対象となる不祥事件・不祥事故事案の件数、不祥事件・不祥事故事案に関与した募集人の人数等の年度別の推移及び合計は、表A のとおりである。
表A:不祥事件・不祥事故事案の件数、不祥事件・不祥事故事案に関与した募集人の人数等の年度別の推移及び合計
特定事案調査等における不祥事件・不祥事故件数 (2014年度から2018年度 までの対象5年間) | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計 | |
不祥事件件数 | 39件 | 15件 | 15件 | 45件 | 96件 | 210件 | |
内訳 | 特定事案調査 | (10件) | (14件) | (15件) | (42件) | (93件) | (174件) |
能動調査 | (29件) | (1件) | (0件) | (3件) | (3件) | (36件) | |
不祥事故件数(*1) | 174件 | 229件 | 316件 | 604件 | 673件 | 1,996件 | |
合計 | 213件 | 244件 | 331件 | 649件 | 769件 | 2,206件 | |
特定事案調査等における 不祥事件・不祥事故募集人数 (2014年度から2018年度 までの対象5年間) | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計(*4) | |
不祥事件募集人数(*2) | 59人 | 64人 | 67人 | 95人 | 142人 | 273人 | |
内訳 (*3) | 特定事案調査 | (12人) | (16人) | (15人) | (50人) | (115人) | (203人) |
能動調査 | (47人) | (48人) | (52人) | (45人) | (28人) | (71人) | |
不祥事故募集人数(*1) | 169人 | 199人 | 272人 | 567人 | 666人 | 1,521人 | |
合計 | 228人 | 263人 | 339人 | 662人 | 808人 | 1,794人 |
(*1) 不祥事故事案は全て特定事案調査の対象事案である。
(*2) 同一募集人が不祥事件・不祥事故事案の両方に関与した場合は、不祥事件募集人数に計上した。
(*3) 各調査の対象事案ごとの不祥事件募集人数を表記した。なお、各調査の対象事案につき、重複して関与した 募集人がいるところ、そのようなケースでは同一の募集人を一人と計算して不祥事件募集人数に計上したたため、各調査の対象事案に関与した募集人の合算人数と不祥事件募集人数は異なる。
(*4) 募集人数に関しては、同一募集人が複数年度で関与したケースがあるところ、そのようなケースでは重複を除き、複数年度で関与した同一募集人は一人と計算している。
第3 編第1 の表1 下段のとおり、2020 年2 月末時点における「違反疑い事案」の件数は1
万3,396 件である。
他方、表A 上段のとおり、不祥事件・不祥事故事案の件数は2,206 件である。
なお、表A 上段のとおり、不祥事件事案210 件のうち、特定事案調査の対象事案が174 件、能動調査の対象事案が36 件であり、不祥事故事案1,996 件は、全て特定事案調査の対象事案である。
また、第3 編第1 の表1 下段のとおり、「違反疑い事案」に関与した募集人の人数は9,653
人である。
他方、表A 下段のとおり、不祥事件・不祥事故事案に関与した募集人の人数は1,794 人である。
なお、表A 下段のとおり、不祥事件事案に関与した募集人273 人のうち、特定事案調査の対象事案に関与した募集人が203 人、能動調査の対象事案に関与した募集人が71 人であり、
不祥事故事案に関与した募集人 1,521 人は、全て特定事案調査の対象事案に関与した募集人である。
第2 分析結果25
1 全募集人のうち、不祥事件・不祥事故事案に関与した募集人の割合は、5 年平均で約0.5%であること
第3 編第2 の2 の表3 下段のとおり、「違反疑い事案」においては、全募集人に占める「違反疑い事案」に関与した募集人の割合は、5 年平均で約3.1%(2,802 人)である。
他方、表B 上段のとおり、不祥事件・不祥事故事案においては、全募集人に占める不祥事件・不祥事故事案に関与した募集人の割合は、5 年平均で約0.5%(460 人)である。
表B:不祥事件・不祥事故事案に関与した募集人の人数と割合
不祥事件・不祥事故 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 5年平均 |
不祥事件・不祥事故募集人数 | 228人 | 263人 | 339人 | 662人 | 808人 | 460人 |
全体 募集人数 | 91,984人 | 92,414人 | 93,167人 | 90,753人 | 88,855人 | 91,435人 |
割合 | 0.25% | 0.28% | 0.36% | 0.73% | 0.91% | 0.50% |
不祥事件 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 5年平均 |
不祥事件募集人数 | 59人 | 64人 | 67人 | 95人 | 142人 | 85人 |
全体 募集人数 | 91,984人 | 92,414人 | 93,167人 | 90,753人 | 88,855人 | 91,435人 |
割合 | 0.06% | 0.07% | 0.07% | 0.10% | 0.16% | 0.09% |
不祥事故 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 5年平均 |
不祥事故募集人数 | 169人 | 199人 | 272人 | 567人 | 666人 | 375人 |
全体 募集人数 | 91,984人 | 92,414人 | 93,167人 | 90,753人 | 88,855人 | 91,435人 |
割合 | 0.18% | 0.22% | 0.29% | 0.62% | 0.75% | 0.41% |
25 以下、特定事案調査等に係る不祥事件・不祥事故事案合計のデータ(青色の表)と特定事案調査に係る「違反疑い事案」のデータ(いずれも2 月末基準日データ)とを比較・分析する。なお、参考のため、不祥事件事案のみのデータ(橙色の表)と不祥事故事案のみのデータ(黄色の表)も併せて示している。
2 不祥事件・不祥事故事案を受理した郵便局数は、全体の約4.4%であること
第3 編第2 の3 の表4 下段のとおり、「違反疑い事案」の5 年間の受理局数は2,921 局であり、簡易郵便局を除く郵便局総数2 万0,156 局(2019 年9 月30 日時点。以下同じ。)のうちの約14.5%である。
他方、表C 上段のとおり、不祥事件・不祥事故事案の 5 年間の受理局数は880 局であり、郵便局総数のうちの約4.4%である。
表C:不祥事件・不祥事故事案を受理した郵便局数
不祥事件・不祥事故 | 2014年度~2018年度 |
不祥事件・不祥事故受理局数(*1) | 880局 |
郵便局総数 | 20,156局 |
割合 | 4.4% |
不祥事件 | 2014年度~2018年度 |
不祥事件受理局数 | 194局 |
郵便局総数 | 20,156局 |
割合 | 1.0% |
不祥事故 | 2014年度~2018年度 |
不祥事故受理局数 | 829局 |
郵便局総数 | 20,156局 |
割合 | 4.1% |
(*1) 受理局数に関しては、同一の郵便局で不祥事件・不祥事故事案の両方を受理したケースが
あるところ、そのようなケースでは重複を除き、両方を受理した郵便局は一つの郵便局と計算している。
3 不祥事件・不祥事故事案(2,206 件)のうち、渉外社員である募集人が関与した件数の割合は、約91.7%(2,024 件)であり、窓口社員である募集人が関与した件数の割合は、約8.3%
(182 件)であること
第3 編第2 の4 の表5 下段のとおり、「違反疑い事案」のうち、渉外社員が関与した件数の割合は、約85.5%であり、窓口社員が関与した件数の割合は、約14.5%である。
他方、表D 上段のとおり、不祥事件・不祥事故事案のうち、渉外社員が関与した件数の割合は、約91.7%であり、窓口社員が関与した件数の割合は、約8.3%である。
また、第3 編第2 の4 の表7 のとおり、「違反疑い事案」においては、同事案に関与した募集人のうち、渉外社員の割合は、約73.7%であり、窓口社員の割合は、約26.3%である。
他方、表E 上段のとおり、不祥事件・不祥事故事案においては、同事案に関与した募集人のうち、渉外社員の割合は、約89.5%であり、窓口社員の割合は、約10.5%である。
さらに、第 3 編第 2 の 4 の表 8 のとおり、「違反疑い事案」においては、全渉外社員のうち、「違反疑い事案」に関与した渉外社員の割合は、5 年平均で約13.7%であり、全窓口社員のうち、「違反疑い事案」に関与した窓口社員の割合は、5 年平均で約0.7%である。
他方、表F のとおり、不祥事件・不祥事故事案においては、全渉外社員のうち、不祥事件・不祥事故事案に関与した渉外社員の割合は、5 年平均で約 2.55%(不祥事件事案に限れば約 0.49%)であり、全窓口社員のうち、不祥事件・不祥事故事案に関与した窓口社員の割合は、
5 年平均で約0.05%(不祥事件事案に限れば約0.01%)である。
表D:不祥事件・不祥事故事案の関与件数の割合(渉外社員・窓口社員別)
不祥事件・不祥事故 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計 |
合計件数 | 213件 | 244件 | 331件 | 649件 | 769件 | 2,206件 |
渉外社員関与件数 (割合) | 198件 (93.0%) | 227件 (93.0%) | 307件 (92.7%) | 583件 (89.8%) | 709件 (92.2%) | 2,024件 (91.7%) |
窓口社員関与件数 (割合) | 15件 (7.0%) | 17件 (7.0%) | 24件 (7.3%) | 66件 (10.2%) | 60件 (7.8%) | 182件 (8.3%) |
不祥事件 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計 |
合計件数 | 39件 | 15件 | 15件 | 45件 | 96件 | 210件 |
渉外社員関与件数 (割合) | 39件 (100%) | 12件 (80.0%) | 15件 (100.0%) | 40件 (88.9%) | 88件 (91.7%) | 194件 (92.4%) |
窓口社員関与件数 (割合) | 0件 (0%) | 3件 (20.0%) | 0件 (0%) | 5件 (11.1%) | 8件 (8.3%) | 16件 (7.6%) |
不祥事故 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計 |
合計件数 | 174件 | 229件 | 316件 | 604件 | 673件 | 1,996件 |
渉外社員関与件数 (割合) | 159件 (91.4%) | 215件 (93.9%) | 292件 (92.4%) | 543件 (89.9%) | 621件 (92.3%) | 1,830件 (91.7%) |
窓口社員関与件数 (割合) | 15件 (8.6%) | 14件 (6.1%) | 24件 (7.6%) | 61件 (10.1%) | 52件 (7.7%) | 166件 (8.3%) |
表E:不祥事件・不祥事故事案に関与した募集人に占める同事案に関与した渉外社員及び窓口社員の割合
不祥事件・不祥事故 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計 |
関与した募集人数 | 228人 | 263人 | 339人 | 662人 | 808人 | 1,794人 |
関与した渉外社員数 (割合) | 214人 (93.9%) | 243人 (92.4%) | 312人 (92.0%) | 592人 (89.4%) | 736人 (91.1%) | 1,605人 (89.5%) |
関与した窓口社員数 (割合) | 14人 (6.1%) | 20人 (7.6%) | 27人 (8.0%) | 70人 (10.6%) | 72人 (8.9%) | 189人 (10.5%) |
不祥事件 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計 |
関与した募集人数 | 59人 | 64人 | 67人 | 95人 | 142人 | 273人 |
関与した渉外社員数 (割合) | 59人 (100%) | 60人 (93.8%) | 66人 (98.5%) | 88人 (92.6%) | 131人 (92.3%) | 252人 (92.3%) |
関与した窓口社員数 (割合) | 0人 (0.0%) | 4人 (6.3%) | 1人 (1.5%) | 7人 (7.4%) | 11人 (7.7%) | 21人 (7.7%) |
不祥事故 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計 |
関与した募集人数 | 169人 | 199人 | 272人 | 567人 | 666人 | 1,521人 |
関与した渉外社員数 (割合) | 155人 (91.7%) | 183人 (92.0%) | 246人 (90.4%) | 504人 (88.9%) | 605人 (90.8%) | 1,353人 (89.0%) |
関与した窓口社員数 (割合) | 14人 (8.3%) | 16人 (8.0%) | 26人 (9.6%) | 63人 (11.1%) | 61人 (9.2%) | 168人 (11.0%) |
表F:全渉外社員に占める不祥事件・不祥事故事案に関与した渉外社員、全窓口社員に占める不祥事件・不祥事故事案に関与した窓口社員の割合
不祥事件・不祥事故 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 5年平均 |
渉外社員数 | 17,664人 | 17,089人 | 16,718人 | 15,810人 | 14,910人 | 16,438人 |
関与した渉外社員数 (割合) | 214人 (1.21%) | 243人 (1.42%) | 312人 (1.87%) | 592人 (3.74%) | 736人 (4.94%) | 419人 (2.55%) |
窓口社員数 | 74,320人 | 75,325人 | 76,449人 | 74,943人 | 73,945人 | 74,996人 |
関与した窓口社員数 (割合) | 14人 (0.02%) | 20人 (0.03%) | 27人 (0.04%) | 70人 (0.09%) | 72人 (0.10%) | 41人 (0.05%) |
不祥事件 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 5年平均 |
渉外社員数 | 17,664人 | 17,089人 | 16,718人 | 15,810人 | 14,910人 | 16,438人 |
関与した渉外社員数 (割合) | 59人 (0.33%) | 60人 (0.35%) | 66人 (0.39%) | 88人 (0.56%) | 131人 (0.88%) | 81人 (0.49%) |
窓口社員数 | 74,320人 | 75,325人 | 76,449人 | 74,943人 | 73,945人 | 74,996人 |
関与した窓口社員数 (割合) | 0人 (0.00%) | 4人 (0.01%) | 1人 (0.00%) | 7人 (0.01%) | 11人 (0.01%) | 5人 (0.01%) |
不祥事故 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 5年平均 |
渉外社員数 | 17,664人 | 17,089人 | 16,718人 | 15,810人 | 14,910人 | 16,438人 |
関与した渉外社員数 (割合) | 155人 (0.88%) | 183人 (1.07%) | 246人 (1.47%) | 504人 (3.19%) | 605人 (4.06%) | 339人 (2.06%) |
窓口社員数 | 74,320人 | 75,325人 | 76,449人 | 74,943人 | 73,945人 | 74,996人 |
関与した窓口社員数 (割合) | 14人 (0.02%) | 16人 (0.02%) | 26人 (0.03%) | 63人 (0.08%) | 61人 (0.08%) | 36人 (0.05%) |
4 不祥事件・不祥事故事案(2,206 件)のうち、販売実績が「優秀」とされる募集人が関与した件数の割合は、約21.5%(474 件)であること
第3 編第2 の5 の表9 下段のとおり、「違反疑い事案」においては、販売実績が「優秀」とされる募集人が関与した件数の割合は、約25.7%である。
他方、表G 上段のとおり、不祥事件・不祥事故事案においては、販売実績が「優秀」とされる募集人が関与した件数の割合は、約21.5%である。
表G:不祥事件・不祥事故事案の件数に占める販売実績が「優秀」とされる募集人の関与件数の割合
不祥事件・不祥事故 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計 |
①販売実績「優秀」とされる 募集人不祥事件・不祥事故件数 | 52件 | 60件 | 103件 | 144件 | 115件 | 474件 |
②不祥事件・不祥事故件数 | 213件 | 244件 | 331件 | 649件 | 769件 | 2,206件 |
割合(①/②) | 24.4% | 24.6% | 31.1% | 22.2% | 15.0% | 21.5% |
不祥事件 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計 |
①販売実績「優秀」とされる募集人不祥事件件数 | 21件 | 3件 | 4件 | 8件 | 13件 | 49件 |
②不祥事件件数 | 39件 | 15件 | 15件 | 45件 | 96件 | 210件 |
割合(①/②) | 53.8% | 20.0% | 26.7% | 17.8% | 13.5% | 23.3% |
不祥事故 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 合計 |
①販売実績「優秀」とされる募集人不祥事故件数 | 31件 | 57件 | 99件 | 136件 | 102件 | 425件 |
②不祥事故件数 | 174件 | 229件 | 316件 | 604件 | 673件 | 1,996件 |
割合(①/②) | 17.8% | 24.9% | 31.3% | 22.5% | 15.2% | 21.3% |
5 不祥事件・不祥事故事案である契約に加入した顧客の加入年代は、10 代から90 代にわたっているところ、最も多いのが60 代(約35.2%)であり、60 代、70 代(約24.1%)、80 代
(約5.5%)、90 代(約0.0%)の合計が6 割以上を占めていること
第3 編第2 の8 の表14 右表のとおり、「違反疑い事案」の顧客の加入年代は、10 代から90代にわたっているところ、最も多いのが60 代(約32.8%)であり、60 代、70 代(約25.9%)、 80 代(約6.1%)、90 代(約0.1%)の合計が6 割以上を占めている。
他方、表H 左表のとおり、不祥事件・不祥事故事案の顧客の加入年代は、10 代から90 代にわたっているところ、最も多いのが60 代(約35.2%)であり、60 代、70 代(約24.1%)、 80 代(約5.5%)、90 代(約0.0%)の合計が6 割以上を占めている。
表H:不祥事件・不祥事故事案の年代別の契約者数(*1)及び割合
不祥事件・不祥事故 契約者加入年代 | 契約者数 | 割合 | 不祥事件契約者 加入年代 | 契約者数 | 割合 | 不祥事故契約者 加入年代 | 契約者数 | 割合 |
10代 | 1人 | 0.0% | 10代 | 0人 | 0.0% | 10代 | 1人 | 0.1% |
20代 | 19人 | 0.9% | 20代 | 1人 | 0.5% | 20代 | 18人 | 0.9% |
30代 | 83人 | 3.9% | 30代 | 10人 | 4.7% | 30代 | 73人 | 3.8% |
40代 | 202人 | 9.4% | 40代 | 20人 | 9.4% | 40代 | 182人 | 9.4% |
50代 | 451人 | 21.0% | 50代 | 49人 | 23.0% | 50代 | 402人 | 20.8% |
60代 | 756人 | 35.2% | 60代 | 66人 | 31.0% | 60代 | 690人 | 35.6% |
70代 | 519人 | 24.1% | 70代 | 50人 | 23.5% | 70代 | 469人 | 24.2% |
80代 | 118人 | 5.5% | 80代 | 16人 | 7.5% | 80代 | 102人 | 5.3% |
90代 | 1人 | 0.0% | 90代 | 1人 | 0.5% | 90代 | 0人 | 0.0% |
合計 | 2,150人 | 100.0% | 合計 | 213人 | 100.0% | 合計 | 1,937人 | 100.0% |
(*1) 契約者数:
1人の契約者が複数の不祥事件・不祥事故事案に加入し、その加入年代が異なる場合は、最初に加入した年代を集計対象とする。
第5 編 募集人ヒアリングの実施状況と結果等第1 募集人ヒアリングの目的及び実施方法
当委員会は、2020 年1 月下旬から同年2 月中旬まで、13 の日本郵便支社のうち、沖縄支社を除く12 の日本郵便支社を訪問し、各支社ごとに3 人ずつ、合計36 人の募集人を対象にヒアリングを実施した。
募集人ヒアリングは、第1 編第4 記載のとおり、より詳細な募集実態を把握することを目的として実施した。また、販売実績が高い上に募集品質にも優れている募集人から、その秘訣を聞いてみたいという思いもあった。そこで、各支社における募集人を、①特定事案調査の対象とされ、かつ、かんぽ生命において法令違反(不祥事件)との判定がなされた者、②特定事案調査の対象とされたものの、かんぽ生命において法令違反(不祥事件)との判定はなされなかった者、③そもそも特定事案調査の対象にならなかった者、の3 類型に区分した上、各類型の中で販売実績が比較的高い者を抽出し、ヒアリングの対象者とした。
第2 募集人ヒアリングの結果
当委員会は、前回報告書において、調査の結果判明した事実(前回報告書89 頁以下)に基づき、本契約問題の原因分析を行った上で(前回報告書102 頁以下)、改善策の提案を行ったところ(前回報告書138 頁以下)、今回の募集人ヒアリングでは、前回報告書における不適正募集問題の原因分析に関して、当委員会の分析内容と軌を一にする供述が多く寄せられるとともに、前回報告書の原因分析の中では必ずしも明らかではなかった事項について新たな供述を得ることができた。
また、今回の募集人ヒアリングを通じて、現場の募集人から、前回報告書で当委員会が提言した改善策に対して賛否両論を含んだ率直な意見を聴取することができた。
以下、今回の募集人ヒアリングで得られた供述のうち、不適正募集問題の原因分析に関係するもの、不適正募集問題の改善策に関係するもの、その他不適正募集問題の分析・検討に当たって有益なものについて、それぞれ紹介する。
1 前回報告書における原因分析に関係するもの
今回の募集人ヒアリングでは、当委員会が前回報告書において指摘した原因分析に関して、新たな供述を得ることができた。これらの供述によってうかがい知ることができた事情は、以下のとおりである。
(1) 金融渉外部における営業目標達成のための募集の実情
ア 部門・部署単位の推進管理が不適正募集を誘発する要因となっていたこと
比較的規模の大きな単独マネジメント局で渉外社員が多数在籍している局の中には、渉外社員が3 人から5 人程度という比較的少ない人数で構成される班を単位として、班ごとの営業目標の設定と当該営業目標の達成に向けた推進管理を行っている例が見受けられた。この場合、班の営業推進管理の責任者は班長(課長代理)であったところ、この班長は、自身の
営業目標達成に加えて、班としての営業目標達成についても責任を負っていた。そのため、班長は、自分自身は個人目標を容易に達成できたとしても、班員の中に営業目標未達の者がおり、班としての営業目標の推進状況が遅滞していた場合には、班長としての職責上、管理者である金融渉外部長らから班の営業推進管理について厳しい指導を受ける場合もあった。そこで、班としての販売実績の向上を図るために、班長も含めた班員同士で後記イのような共同募集等の形態による募集が行われ、その中で後記(2)のような不適切な話法による募集が行われてそれが伝播する場合があった。
この点に関する募集人の供述は、以下のとおりである。
・「局の営業目標が達成されていない時は、私個人がある程度販売実績を挙げていたとしても、局全体として契約が取れない日が続くと、金融渉外部長から私が文句を言われ続けるということもあった。課長代理の中には金融渉外部長からの厳しい指導に耐えかねて、自らxxへの降格を申し出る者もいたほどである。」(金融渉外部総括課長)
・「局の営業目標の達成が困難な状況の中で、金融渉外本部長や金融渉外部長から、『局目標の数字を頼むぞ。』 などと言われていたので、できるだけ短期間で実績を挙げるため、お客様の初回訪問時に契約していただくように勧誘せざるを得ない事情があった。初回で契約を取らないと郵便局に帰れないため、強引な募集を行わなければならない場合もあり、その結果、私が募集を担当した契約について、撤回や未入金解約が多くなったことがあった。」(金融渉外部xx)
・「私と同じ局にいた募集人の中には、いわゆるヒホガエ26を多く発生させ、かつ苦情を多発させている募集人がいた。その募集人は、従前営業成績はそれほど高くはなかったが、営業推進リーダーという局の営業推進を行わなければならない立場になったことで、営業成績を挙げなければならないという責任感から、ヒホガエを多く行うなど無理な募集を行うようになった。」(金融渉外部課長代理)
・「ある金融渉外部長は、自分自身でも募集活動を行っていたところ、失効・解約率は局で最も悪い数値であり、局員の間では募集品質が悪いことで有名であった。とはいえ、その金融渉外部長は年間約 700 万円から 1,000 万円の販売実績を挙げており、その実績がなければ局の営業目標の達成が困難であったことも事実である。その金融渉外部長は、募集活動が好きであるという個人的な事情と局の営業目標達成のために自分がやらなければならないという責任感から自ら募集活動に従事し、無理な募集活動を行っていたのではないかと思う。」(金融渉外部課長代理)
イ 一部の地域の郵便局では、局及び班の営業目標を達成し、かつ、販売実績の低い募集人にも販売実績を配分するため、複数の渉外社員による共同募集が通常の募集形態となっていたこと
募集経験の豊富な渉外社員が若手社員と共同で顧客の自宅を訪問し、共同で募集を行うことは、若手社員の教育を目的として、従来から行われていた。しかしながら、年々、営業目標額が高額になっていたことを背景に、一部の共同募集についてはその目的が変質していった。すなわち、局や班の中に販売実績が低い渉外社員が存在した場合に、高い営業スキルを
26 「ヒホガエ」とは、契約者が同一で、被保険者を変更する多数の保険契約をいう。
持った班長等が、その販売実績の低い渉外社員に訪問先のアポイントメントを取らせた上で当該渉外社員と共に顧客を訪問して共同で募集を行い、そこで獲得した販売実績を当該渉外社員と配分することによって、その社員の営業目標未達分をできる限り補うという共同募集が、当該班や局の営業目標を達成するための効率的な方法と見なされるようになり、一部の地域の単独マネジメント局においてはそのような共同募集が通常の募集形態となっていた。
この点に関する募集人の供述は、以下のとおりである。
・「私の所属する郵便局が所在する地域では、複数の渉外社員が共同募集を行うのが通常の募集形態となっており、私自身も、募集のうち、約95%は共同募集を行っていた。というのは、局の渉外社員の中で個人の営業目標を達成できる者は全体の 3 分の 1 程度であったことから、販売実績が低く個人の営業目標を達成することが難しい渉外社員を抱えながら班や局の営業目標を達成するためには共同募集の方が効率が良かったのである。若手の渉外社員に実力をつけさせるために1 人で営業に行くように指導をすることもあったものの、そのような方法ではすぐに販売実績が上がることはないため、班や局の目標の達成ができなくなってしまっていた。そのため、班や局の営業目標達成のことを考えて、共同募集をさせることが多かった。」(金融渉外部課長)
・「高実績者の中には、いわゆるカバン持ちとして、他の募集人を同行させて専ら共同募集を行う者がいた。こうした共同募集を行う高実績者の中には、お客様からの解約等がなされるリスクに備えて、自分自身はお客様に対する説明だけを行い、契約を受理する時には立ち会わず、その後の契約手続は同行者のみにさせていたと聞いている。こうしておけば、もしお客様から解約等がなされても同行者の解約件数として計上されるので、自らは募集品質を落とすことを回避できる。」(金融渉外部課長代理)
ウ 既契約者を対象とした募集方法が不適正募集を誘発する要因となっていたこと
一部の郵便局では、効率的に販売実績を挙げるため、既契約者におけるかんぽ生命保険商品の加入状況等に加えて、既契約者と同一世帯の者の加入状況等についても一覧化して記載した「世帯シート」を参照し、訪問先の顧客の家族構成や保険の加入状況等の情報を事前に入手した上で、保険に加入する経済的余力のありそうな世帯を訪問するといった態様の募集が行われていた。上記の世帯シートで世帯構成員の加入状況等を把握し得たことにより、資金に余力のある高齢の既契約者のもとに複数の募集人が次々と訪問を繰り返すといった事態が助長されることになり、その結果として、不適正な乗換契約や多数契約につながるといった例が見受けられた。
この点に関する募集人の供述は、以下のとおりである。
・「世帯ごとの保険加入状況を示した情報がリスト化されたものが存在した。そのリストを用いることによって保険に加入してくれそうな世帯を見つけ出し、そこを訪問した上で、加入者の家族を被保険者として更に別の保険に加入させるという募集方法が行われていた。このようにして、一人の契約者に多数の保険契約をさせることができていた。」(金融渉外部総括課長)
(2) 不適切な話法の存在及び伝播経路ア 不適切な話法の存在
募集人が用いていた不適切な話法として、前回報告書(93 頁以下)において当委員会が指摘した 2 年話法や料済27話法のほか、「介護話法」(預貯金を保有している場合には介護施設への入所費用が高額になるので、預貯金を保険に代えておいた方が得であるなどと述べて、貯蓄性保険商品の募集を行うもの)や、「おまとめ話法」(顧客が複数の保険に加入している場合に、既契約を解約させた上で、管理を容易にするためと称して一つの保険に加入し直させた後、さらに、後日その保険を解約させて顧客の親族等を被保険者とする複数の保険に加入し直させるということを繰り返すもの)といった話法が存在した。
この点に関する募集人の供述は、以下のとおりである。
・「顧客が複数の契約に加入している場合に、例えば、長男にだけ掛けておけば良いなどと言って一つの保険にまとめさせた上で、その後の別の機会に、子どもたちには皆平等に保険を掛けておかなければ将来に子どもたち間で揉める原因となるなどと言って、他の兄弟等を被保険者とする保険に追加で加入させる。このように、複数の加入契約をいったん一つにまとめた後にそれを再度複数の契約に加入し直させることを繰り返すという手法は、募集人の間でよく用いられていた。この際、被保険者を変更するなどしていれば乗換契約と判定されることもなかった。」(金融渉外部課長)
・「私が聞いているところでは、『第三者話法』という話法が用いられていた。第三者話法とは、例えば、保険を利用して節税ができる可能性があるという一般論を説明した上で、『私は専門家ではないから断言できない』と言いながら、『他のお客様からは何も対策していなかったために相続税をたくさん取られてしまったというような話を聞いた』などとお客様にお話しし、保険への加入を暗に勧める話法である。このように、第三者の例として話をすることで、節税効果の明言は避けつつ、お客様自身が保険で相続税対策をした方が良いと考えるように誘導していた。第三者話法は、近所付き合いの深い田舎ほど、お客様自身が具体的な第三者を思い浮かべることができるので効果的であった。また、明言を避けて第三者を引き合いに出すような話法自体は、私が入社した当初に会社の研修で教わったと記憶している。」
(金融渉外部課長)
イ 不適切な話法の伝播経路
前述した、高実績者が販売実績の低い募集人と共同募集を行うことにより所属部署・組織
(班、課、局等)の営業目標の達成を図るという手法は、局をまたがる形でも行われていた。すなわち、地域によっては、高実績者が販売実績の低い郵便局に派遣され、当該郵便局の社員と共同募集をするという方法によって、支社管内全体の販売実績の向上を図るといったことが行われていた。
上記の共同募集においては、高実績者である募集人の中に不適切な話法や手法を用いる者が存在したために、その者に同行して共同募集が行われる過程で同行者が不適切な話法や手
27 料済とは、保険料払済契約への変更のことであり、保険料の払込みを中止し、それまで払い込んだ保険料に見合う額に保険金額を減額する方法である。顧客が将来の生活環境の変化等により保険料の払込みが難しくなった場合に活用される。
法を習得し、これにより、部署・組織(班、課、局等)内において、また支社管内において、不適切な話法や手法が伝播するといった例が見受けられた。
この点に関する募集人の供述は、以下のとおりである。
・「当エリアでは、販売実績が挙がっていない局に他局の優績者が 1 日だけ臨局して共同募集を行う『技術交流』という制度が存在した。これは、金融渉外本部長からの指示で行われていたもので、優績者が同行することで局の販売実績が挙がることが期待されていた。臨局する前にターゲットとするお客様の年齢層、既契約の種類、資産額を調べて準備をしてもらうので、募集方法は優績者それぞれながら、皆確実に数字を挙げていた。この制度は2013 年度より以前から存在したと思う。」(金融渉外部課長代理)
また、不適切な話法や手法が全国的に伝播した経路に関しては、上記の部内の社員xxの共同募集や営業インストラクター等との同行募集の場面で話法等が共有されていたことに加えて、かんぽ生命の広域インストラクターが全国で実施した研修や会議を通じて伝播していた例も見受けられた。
この点に関する募集人の供述は、以下のとおりである。
・「かんぽ生命の広域インストラクターが、自主研究会、地方の優績者会議や講演等の場で、
『ある地域のダイヤモンド優績者は〇〇話法を使っている。』などというように、優績者から聞いた不適切な話法を募集人に伝えていた。昨今はさすがに公の場で不適切な募集方法に関する大胆な発言はしなくなっていたが、研修後の懇親会や飲み会の場でそういった話がなされていた。また、広域インストラクターと各地の優績者会議の事務局とで打合せを行うことがあるが、不適正募集を行っている優績者がその事務局を運営しているため、そういう場を通じて不適切な話法が広まって浸透していくのだろうと感じていた。」
・「KIP28研修が2010 年度から開始されていたところ、ある地域のKIP 研修では、不適切な話法を自主研究会の場で広めていた広域インストラクターが講師を務めていた。その頃から不適正募集の数が多くなったように感じている。」(金融渉外部課長)
(3) 募集品質データに基づく募集実態の把握及び指導の現状と限界ア 募集品質データに基づく募集実態の把握の現状と限界
募集人に対する適正募集の確保に向けた指導は主に募集品質カルテに基づいて行われてい たところ、その募集品質カルテには、苦情、無効・合意解除、解約、撤回、乗換契約等とい った不適正募集の兆候となる事象の発生件数や発生率等の数値が記載されていたのみであり、これらの苦情、無効・合意解除事案の具体的内容等は判然としなかった。したがって、募集 品質カルテ上の募集品質データは、これらの事象がどのような経緯・理由によって発生した のかといった、これらの数値の背後にあって不適正募集につながる可能性のある募集実態を 把握するものとしては、必ずしも十分ではなかった。
28 XXX とは、「かんぽ育成プログラム」の略称で、かんぽ生命の広域エリアインストラクター又はエリアインストラクター、日本郵便の営業インストラクターが講師を務め、選抜された社員を対象にする集合研修のことをいう。
また、募集品質カルテに記載された募集品質データは、その計上方法に関して、募集人の募集実態を必ずしも正確に反映するものとはなっていなかった。例えば、乗換判定期間29(既契約解約が新契約締結時の前3 か月から後6 か月まで)を1 か月延長した期間(既契約解約が新契約締結時の前4 か月又は後7 か月)における解約・加入は、募集品質カルテ上、乗換契約として把握され月間発生件数として計上されていたが、当該期間を超える期間における解約・加入は計上されていなかった。また、解約や料済の計上は、常に、当該既契約を受理した募集人について行われるものとされていたため、既契約の解約や料済を他の募集人が行った場合であっても、募集品質カルテ上は、当該他の募集人ではなく、既契約を受理した募集人の解約や料済の件数としてデータ計上されていた。このため、募集品質カルテに記載されている募集品質データと募集実態との間には乖離が生じており、乗換契約や料済の件数を見ただけでは実際に誰が解約等の手続を行ったのかを判別することは不可能であった。
この点に関する募集人の供述は、以下のとおりである。
・「確かに私の募集品質カルテを見ると、料済の件数が多くなっているが、私自身はこれまで料済の手続をしたことはない。私が別の局に異動した後に私の後任になった募集人が、新規契約欲しさに、私が受理した契約について料済や解約の手続を行ったものであったが、そのために私が募集手当の返納を求められたことがあった。私の募集品質カルテに見られる料済の件数はこうして発生したものであると思う。」(営業インストラクター)
・「私の3 年間保有率30は85%であり、全国平均と比較しても低い数字になっていたのは、私が営業インストラクターに就任した後、契約の手続等を同行者に任せるようになったので、私自身でお客様のアフターフォローをすることができなくなっていたところに、私以外の誰かが私が受理した契約を解約等させたからだと思う。」(営業インストラクター)
イ 募集品質データに基づく指導の現状と限界
このように、募集品質データという数値で募集品質を管理することの限界に加えて、募集品質データが募集実態と乖離するものとなっていたという計上方法の不備は、募集品質データに基づいて指導をする側と指導をされる側の両方において、指導の有効性を減殺する要因となっていた。
まず、金融渉外部長や金融渉外本部長、あるいは募集品質指導専門役31が募集品質カルテに現れた募集品質データに基づいて募集人を指導する際、上記のとおり、募集品質データを見るだけでは不適正募集につながる可能性のある募集実態を把握することは困難であったために、不適正募集の疑いがある募集人を的確に指導対象として抽出した上で、その募集実態に迫って指導を行うことは容易ではなかった。これに加えて、前回報告書において指摘したように、金融渉外部長や金融渉外本部長には、募集品質よりも局の営業目標の推進率や営業目
29 乗換判定期間とは、その期間内に既契約の解約等がなされた場合に乗換契約(転換類似)と判定される期間のことをいい、2015 年 4 月以降は、新規契約の契約日より前 3 か月から当該新規契約の契約日の後6 か月までの期間とされていた。
30 保有率とは、成約後の保険契約が有効に維持保有されている割合をいう。
31 募集品質指導専門役は、日本郵便本社とかんぽ生命本社のそれぞれに配置され、沖縄を除く日本郵便の 12 の支社又はかんぽ生命の 12 のエリアコンプライアンス室に駐在している。これらの募集品質指導専門役は、募集品質を改善する必要があると認められる郵便局に臨局して、局員に対する指導及び管理者に対する指導を行う。
標を達成することを優先する傾向が見られたため、苦情件数や乗換件数が顕著に多いなど、募集品質データに異常値が認められる場合であっても、その募集人が高実績者であった場合には、募集品質カルテに見られる募集品質データには直接現れない個々の募集人の募集実態を把握しようと試みることは少なく、その点からも募集実態を踏まえた有効な指導を行うことはできていなかった。
この点に関する募集人の供述は、以下のとおりである。
・「金融渉外部長は、募集品質カルテを見て、短期解約などの件数が顕著に多い募集人に対して指導を行っていた。しかし、それ以外では、金融渉外部長が個々の募集人の募集実態を知るためには個々の募集人と会話をして聞き出すしか術はない。そして、金融渉外部長が個々の募集人と話しても、その募集人が話している内容の真偽まで確かめることはできないので、結局、金融渉外部長は募集実態をほとんど把握できていなかったのではないかと思う。」(金融渉外部課長)
・「契約形態や契約保険料を見ただけでは、不適正募集がなされているかを判断することは難しかったと思う。私の場合、高額な保険料で契約の申込みをしてくださるお客様が多く、かつ申込件数自体も多かったので、それだけを見た他の地域の募集人から、私の募集方法が怪しいと思われていたらしく、『〇〇(私の名前)はお客様と揉めて裁判沙汰になっている。』といった根も葉もない噂を流されていた。しかし、私はこれまで不適正募集を行ったことはなく、現に今回の特定調査事案でも1 件も該当していない。」(金融渉外部xx)
・「郵便局においては、局内に設置されている端末機器32により、個々の募集人の契約の受理状況や受理した契約の内容等がリアルタイムで把握できるようになっており、管理者はこの端末機器を通して個々人の販売実績等を確認できる環境にあった。それにもかかわらず、不適正募集が放置されてきたのは、管理者には営業目標達成への強いプレッシャーがかかる一方で、支社から端末機器で把握できる情報の確認を徹底するよう指示を受けていたわけではなかったことから、お客様から苦情の申し出さえされていなければ、多少不自然な契約が受理されていたとしても管理者はそれを看過してしまっていたからであると思われる。」(金融渉外部課長)
・「金融渉外本部長も不適正募集が行われていることは知っていたと思う。ただ、金融渉外本部長は営業目標の推進管理を行うべき立場にあるので、金融渉外本部長が臨局した際に言われたことは、『今週の残りがこれくらいだから頑張ってやってくれよ。』という営業推進に関することだけであった。」(金融渉外部xx)
また、募集品質カルテに記載された募集品質データが有する上記の限界は、既契約の加入時に不適正募集を実際に行っていたために事後に顧客から解約等をされるに至ったような、既契約を受理した募集人に実際に非があるケースにおいても、当該募集人に弁解の口実を与えることとなっていた。そのため、このことも不適正募集が疑われる募集人に対する指導を困難にする要因の一つとなっていた。
この点に関する募集人の供述は、以下のとおりである。
32 当該端末機器を通じて日本郵便社内のポータルサイトにアクセスして指示文書や各種マニュアルを閲覧したり、あるいは各募集人の日次及び週次の販売実績を確認することができた。
・「募集品質カルテのデータについては、3 年間の契約保有率は 90%を維持するように会社から求められていたが、私は80%台になってしまったことで金融渉外部長から指導を受けたことがあった。保有率が80%台になってしまった理由は、異動する前に獲得した契約が、私の異動後に別の募集人によって解約されることが続いたからであった。私がお客様に解約させて自分自身で解約を受理していたのであれば、指導を受けることも納得できるが、私の知らないところで別の募集人によって解約されたことが原因で私の保有率が下がっていると言われても、私が状況を把握しているわけではないので何ともしようがないというのが現状である。」(金融渉外部課長)
(4) 渉外社員と窓口社員別の不適正募集の発生割合
前回報告書(83 頁以下、90 頁以下)において当委員会は、特定事案調査の結果や募集人アンケートの結果を踏まえて、不適正募集に関与した募集人は窓口社員よりも渉外社員の方が割合としては多い旨を指摘したところであるが、今回の募集人ヒアリングにおいても同じ趣旨の供述をする者が多く見られた一方で、募集人の中には、渉外社員のみならず窓口社員の中にも不適正募集に関与している者が多数存在しているとの印象を抱いている旨を述べる者も見られた。
この点に関する募集人の供述は、以下のとおりである。
・「渉外社員が不適正募集の中心を担っているかのように報告書では記載されていたが、私の感覚では窓口社員の中にも不適正募集を行っている者は多くいると思う。その理由は二つある。一つ目の理由は、窓口では受理した契約に対して局長も含めて1 人か2 人からのチェックしかなされないことである。もう一つの理由は、小さい郵便局の窓口では来客する人数が限られている中で営業目標を達成しなければならないため、その限られたお客様の中で『契約を回す』ような営業スタイルになりがちなことである。窓口社員の中にも、お客様に何度も乗換契約をさせたり、ヒホガエを行わせていたりした者がいたという印象を持っている。」
(金融渉外部課長)
2 前回報告書において提言した改善策に関係するもの
今回の募集人ヒアリングでは、当委員会が前回報告書(138 頁以下)において提言した改善策に関して、現場の募集人から賛否を含めた多くの意見が寄せられた。その主なものは、以下のとおりである。
(1) 募集状況の可視化(録音録画)
当委員会は、募集人が顧客に対してかんぽ生命の保険商品の説明等を行う場面を録音録画することにより、後日の検証を可能とすることを提言した。これに対しては、顧客に対する自らの説明内容が証拠として残ることから募集人自身にとっても利点があるなどとして賛成する意見も多かった。
録音録画に賛成する募集人の供述は、以下のとおりである。
・「録音録画などによって、密室になりがちな保険募集活動の環境を『オープン』にするようなシステムを増やすことは良いことだと思う。」(金融渉外部課長)
・「保険募集状況の可視化には大賛成である。不適正募集を抑制できることに加えて、お客様自身も保険加入当初の目的を忘れていることがあるので、それを記録に残しておくことができることはお客様のためになる部分もあると思う。」(金融渉外部xx)
他方で、録音録画を実施することの現実的な実現可能性について懐疑的な意見を述べた募集人もいた。そのような募集人の供述は、以下のとおりである。
・「録音録画のシステムによって、保険募集がしにくくなると感じる。たしかに録音録画をすることによって募集人自身の身を守ることができる部分もあるのはそのとおりであるが、それ以上に、一言一句、間違ったことを言ってはいけないという大きなプレッシャーを感じると思う。また、録音録画されることをお客様が嫌がる場合もあると思うので、録音録画するということになれば募集人の販売実績は低下すると思う。私の周りの募集人に聞いても、皆、録音録画することを嫌がっている印象がある。」(金融渉外部課長)
・「録音録画をすると言っても、お客様に許可を得なければならないので、それが断られた場合にどうすれば良いのかが気になっている。」(金融渉外部課長代理)
・「録音録画をするとしても、どの段階から録音録画をするかの判断が難しいように思う。契約時だけを録音録画しても意味がないと思うし、他方で、最初の商品説明の時点から録音録画するとなると、営業目的で来宅しているものと警戒されてしまって、販売実績に影響することが懸念される。」(金融渉外部課長)
募集人の中には、顧客が録音録画を拒否すれば録音録画をしなくても良いのであろうと考えているように見受けられる者がいたことから、今後、録音録画を実施することになった際、高齢者における家族同席ルールの場合と同様に、ルールが骨抜きとされる懸念も感じられた。録音録画を実施する場合には、顧客が録音録画を拒否すれば例外の余地なく、募集人は契約を受理できないという制度にすることが必要である。
(2) 新規契約の獲得に偏った手当の見直し
顧客に不利益を生じさせる乗換契約を含めた不適正募集については、いわゆる募集手当の獲得が動機の一つとなっていた実態が見受けられ、「優績者」と呼ばれる高実績者の募集人には特にこの傾向が強いことがうかがわれたことを受けて、当委員会は、前回報告書(138 頁以下)において、新規契約の獲得に連動した現行の手当から、契約の保有率や顧客のアフターフォローなどの活動実績等をも加味した手当へと手当の体系を見直すことを提言した。これに対しては、顧客本位の保険募集活動に転換していくためには、手当の見直しが必要であるなどとして賛成する意見が聞かれたところ、この点に関する募集人の供述は、以下のとおりである。
・「2019 年4 月に募集手当の返納期間が2 年から3 年に延長されたが、私は、返納期間は10年であっても良いのではないかと思っている。お客様に保険契約を 10 年間継続してもらってこそ、お客様にとっても会社にとっても意味があるのであるから、10 年間継続してもらった後に初めて募集手当を支給するようにすべきである。」(金融渉外部課長)
・「手当の支給の仕方を変えた方がいいと思う。今は契約加入時に一括で手当てが支給されるようになっているが、これを何回かに分割して支給したり、何年か契約が継続された後に支
給することに変更すれば、募集人もお客様の契約の保有を大事にするようになり、継続を意識した募集活動をするようになるのではないかと思う。現状では、2 年ないし 3 年という募集手当の返納制度があることから、それを意識した募集活動にならざるを得ない状況になってしまっていた。」(金融渉外部xx)
・「募集人に手当を支給するに当たって、お客様の契約保有率を評価することに賛成である。募集人の評価が新規契約獲得に偏っており、契約保有率を評価してこなかったから、モラルのない募集人が簡単に募集手当を得るために乗換契約を繰り返していたのだと思う。」(金融渉外部xx)
他方で、募集人の中には、販売実績を挙げる上で現行の募集手当が存在することの積極的な意義に言及する者も見られた。この点に関する募集人の供述は、以下のとおりである。
・「優績者会議がマイナスなイメージで報道されているが、優績者に対する表彰を目標にしてモチベーションを高めて頑張っている社員も多くいるので、これまでのように販売実績を基準にして優績者を表彰し、募集手当を与えることが一概に悪い仕組みであるとは言えないと思う。もちろん、このことは適正な募集を行うことが前提での話である。」(金融渉外部xx)
(3) 営業の実力に見合った営業目標の設定と配算方法の見直し
現状、営業目標の設定及び配算に当たっては、保険募集の現場の実態が必ずしも適切に反映されておらず、また、一部において募集現場における営業実力に見合わない達成困難な営業目標が配算されていたとの実態を踏まえて、当委員会は、前回報告書(142 頁)で、営業目標の設定及び配算の在り方の見直しを提言した。これに対して、募集人の中からは、営業目標の見直しに賛同する声があった一方で、現在の営業目標は必ずしも負担になるほどのものではないとの意見も寄せられた。とりわけ、販売実績と募集品質がともに良好な募集人においては、営業目標を設定することは営利企業であるかんぽ生命及び日本郵便にとって必要であるなどとして、営業目標の存在を否定しない者も多く見受けられた。
この点に関する募集人の供述は、以下のとおりである。
・「営業目標は現実的に達成できる額ではなかったので下げた方が良いと思う。自局の社員の活動や数字を見ている中で言えば、1 人当たり200 万円くらいが妥当であろうと感じている。」
(金融渉外部xx)
・「営業目標額は下げるべきである。とはいえ、当社も営利企業である以上は、単純に営業目標額を下げてよいわけではないので、個々の社員の身の丈にあった個人別目標額を設定するようにすべきである。これまでは、人事評価のxx性の観点から全渉外社員に対して一律の営業目標額が設定されてきたが、これを、個々の渉外社員の能力に応じて、各人がぎりぎり達成できそうな目標額を設定することが有用である。そのようにすれば、現在は目標達成から程遠いレベルにある渉外社員であっても目標達成の喜びを味わうことができ、翌年のモチベーションの増加につながると思う。また、かんぽ生命の保険を販売することには不向きであっても、提携金融商品の販売には向いているといった社員も存在する。それぞれが自分の強みを生かして他の社員の不足分を補い合うという視点も大切であり、かんぽ生命の保険だけではなく、金融商品全体を見据えながら個々の渉外社員ごとの営業目標額を設定するようにすべきである。」(金融渉外部課長)
・「当社の社員の中には公務員時代の文化が残存しており、そもそも自分が受給している給与がどこの財源から支払われているのかを意識していない者も多いため、まずは社会人としてxx的なところから教育を施すことが必要だと思う。自分たちの給与が自分たちが獲得した保険の保険料から支払われているとの意識が浸透すれば、営業目標に対する意識の持ち方も変わり、例えば、『8 時間、職場にいるだけで基本給がもらえる』などと考えるような社員も減って、個々の社員の活動量の増加につながると思う。」(金融渉外部課長)
・「営業目標の設定の仕方に問題があるとは思うが、営業目標を設定することは必要なことであると思う。銀行などの中には営業目標自体を廃止した会社もあると聞くが、当社のようにこれだけ社員数が多い会社では、(中には怠けて営業をしない者もいるため)社員に営業をさせるためには営業目標を設定して管理することが必要である。」(金融渉外部xx)
3 販売実績が高く、かつ、募集品質も良好な募集人の募集態様等の共通点
今回の募集人ヒアリングにおいては、販売実績が高く、かつ募集品質も良好な募集人からもヒアリングを行った。これまで当委員会が行ってきた募集人ヒアリングの中で、販売実績を挙げるためには募集品質がある程度悪くなることもやむを得ないと供述する者も見られたことを踏まえて、販売実績と募集品質を両立させることができていた募集人、すなわち、昨年度の年間販売実績額が500 万円以上であり、かつ、募集品質データ上、撤回・未入金解除 33等の発生率、乗換潜脱発生率及び料済・減額発生率のいずれの数値も低く、さらに、3 年間の契約保有率が良好な募集人を対象にヒアリングを実施することで、販売実績と募集品質を両立させる秘訣を明らかにすることを企図した。
募集人ヒアリングの結果、販売実績を挙げつつ、良好な募集品質を維持していた募集人には、以下のような共通点があることがうかがわれた。
①常日頃から、保険の知識のみならず、それ以外の分野についても幅広く勉強を続けるなど、顧客にかんぽ生命保険の保険商品を勧奨する際に役立つ知識や経験を得るために、創意工夫を重ねていた
②顧客のニーズに合致した保険商品を提案できるよう、顧客を訪問する際には事前に顧客の状況を入念に調べた上で赴いていた
③既契約者である高齢者のみならず、かんぽ生命の保険商品に加入したことのない青壮年層をも広く募集の対象としていた
④飛び込み営業も含めて顧客への訪問を多数かつ多頻度で行っており、一般の募集人よりも活動量が多かった
⑤活動量の多さに加えて、自らが契約を受理した顧客から、とりわけ青壮年層の家族、友人等の紹介を受けることを通じて新規顧客を増やしていくことが多かった
⑥顧客に対して募集を行う際は、顧客の話をよく聴き、顧客のニーズを把握した上で、そのニーズに合致する保険商品を提案することを心掛けていた。また、顧客に対して保険商品の提案を行った後は、最終的にその保険に加入するかどうかは顧客の判断に委ねることで、加入する保険が顧客ニーズに合致するよう留意していた
33 未入金解除とは、第 1 回保険料の払込みがないまま払込猶予期間を経過したことによる保険契約の解除をいう。
⑦かんぽ生命保険商品の商品性の魅力が乏しいことは、販売実績を挙げて営業目標を達成する上での障壁にはならないと考えていた
⑧顧客が保険に加入した後は、自筆で御礼状を書いて送るなどの丁寧なアフターフォローを行っていた
これらの点に関する募集人の供述は、以下のとおりである。
①常日頃からの心構えや準備について
・「私は、当社に入社する以前、民間企業で営業職に従事していた。前職時代は営業を行う上で昨今の経済情勢に関する知識が不可欠であったため、毎日、経済情勢を勉強していた。このことを通して経済情勢を勉強する習慣が自然に身についていたため、当社に入社してからも勉強を続けていた。そのおかげで、お客様に保険商品のお話をする際、商品の説明だけではなく、経済情勢についても幅広くお話しをすることができたことが私の強みであったと思っている。」(金融渉外部課長)
・「常々、保険を販売するに当たっては、お客様の信頼を得るために勉強をしておくことが必要だと感じていた。そこで、私は、自らの伝手を利用して民間の外資系保険会社の方にお会いして話を聞かせてもらったり、またあるときは、他の会社のセールスパーソン向けの研修用ビデオを入手して研究したりすることで、募集人としてのスキルやノウハウ、心構えなどを学ぶようにしていた。さらに、毎日の習慣として、営業に関係がありそうな分野の本や、自己啓発本を広く読むようにしており、営業活動に生かせそうな知識やスキルを取り入れるよう心掛けていた。読書をすることは保険の販売に有用であるので、私の部下の局員にも読書するように勧めていたものの、ほとんどの者は今のままでどうにかなると思っているようで、私の助言に従って読書をし始めた者は少なかった。」(金融渉外部課長)
・「積極的に保険に入りたいと考えているお客様というのはほとんどいないので、どのようにお客様に対して保険加入の動機付けをしていくかということが保険募集の難しさであると思っている。私は、入社 2,3 年目にファイナンシャル・プランナーの資格を取得し、その勉強の際に触れた周辺知識や、あるいは厚生労働省のホームページなどで入手した最新の知識を駆使しながら、お客様に動機付けを与える方法を常に模索していた。」(金融渉外部課長)
②顧客訪問時の事前準備について
・「昨年度に現在の局に異動になってからは、初めてお会いするお客様がほとんどであった。私は、かんぽ生命保険の契約履歴や世帯シートを見ながら、アポイントを入れるようにしていた。お客様宅を訪問するに先立って、保険の契約履歴や世帯シートを基にお客様の状況を想像し、ある程度、ご提案のイメージを作ってから訪問するようにしていた。そして、実際にお客様とお話をしながら、お客様の状況を聴き取り、お客様のお考えと擦り合わせていくように気を配っていた。」(金融渉外部課長)
・「私の場合は、他の社員と比べてお客様を大切にしたいという思いが強かったと思う。お客様のご自宅を訪問する前には、しっかりと準備を行い、かつ契約後のアフターフォローにも十分に気を配ってきたから保険の販売実績が伸びていたのだと思う。ご訪問前の準備としては、お客様が過去に加入していた保険や、家族構成などを世帯シートで必ず確認し、それを
踏まえて、そのお客様に必要と考えられる情報を準備するようにしていた。」(営業インストラクター)
③募集対象とする顧客層について
・「私の場合、基本的に70 歳以上の高齢者には募集を行わず、それより若い顧客層に対して募集を行うようにしていた。営業においては、身だしなみを整え、お客様への挨拶を欠かさないなど、営業マンとして当たり前のことを実践するよう心掛けていた。かんぽ生命の保険商品に魅力がないため販売実績を挙げることができないと嘆く募集人がいるとも聞いているが、商品を売るためには商品の魅力だけではなく、話し方や声の質といった要素も重要である。当社の募集人には、こういった点に配慮がない募集人が多いように感じている。」(金融渉外部課長代理)
・「地域性もあると思うが、私は看護師などの夜勤をする方のご自宅へ飛び込み営業をすることが多いので、昼間であっても青壮年層の方に会えることが多い。1 回飛び込み営業をしただけではどのような方が住んでいるのかは分からないので、複数回飛び込み営業を行い、どなたかが在宅されていた場合は、他の同居人が在宅している日を聞くようにしていた。在宅日が分かっている場合には、土日を活用してお客様に会いに行くこともあった。」(金融渉外部xx)
④活動量について
・「私は、2019 年 6 月下旬にお客様に対する積極勧奨が禁止されるまでは、毎日、午後 8 時か午後9 時頃まで郵便局外で営業活動を行っていた。このように活動量を増やすことにより、 1 か月で10 件から15 件、多いときには20 件くらいの契約を受理できていた。私の場合、他の渉外社員と比べて、活動量を増やすこと、つまり訪問先を増やすことによって、募集品質を維持しながら販売実績を挙げることができていた。」(金融渉外部課長)
⑤顧客からの新規顧客の紹介について
・「私は、現在の局に異動になる前は、エリアマネジメント局でかんぽ生命の保険を販売していたが、今の局でもその経験が活きていると感じていた。エリアマネジメント局ではお客様の数が少ないため、お客様から信用を得ることが大切であった。私の場合、お客様から信用を得られた結果、他のお客様を紹介いただくという形で販売実績を伸ばすことができていたため、募集活動で無理をする必要もなかった。このような経験を経て、今の局に異動してからも、お客様からの紹介でお客様を増やしていくという営業スタイルを続けることができていた。」(金融渉外部課長)
・「募集人になったばかりの頃は既契約のお客様を訪問して、追加で契約してもらうことが多かったが、次第に、自分で契約を受理したお客様から他のお客様を紹介していただけるようになり、新規契約をしていただくお客様が増えていった。これが、私が高い販売実績を挙げることができていた理由である。」(営業インストラクター)
⑥顧客ニーズに合致した募集方法について
・「高実績者と低実績者の募集方法の違いは、最初に発する言葉であると思う。低実績者は、保険を販売しなければと焦るあまり、初対面のお客様に対して最初から保険の話を始めてしまう。しかし、保険を販売するコツは、最初から保険を販売しようとせずに、ゆっくりと時間をかけてお客様のニーズを把握し、お客様との間で信頼関係を構築することである。そのため、私の場合、即決での成約はなく、少なくとも2、3 回は訪問を重ねて保険を受理するように心掛けていた。」(金融渉外部課長)
・「お客様宅への初回訪問時に保険商品の提案をすることはなく、2 回目の訪問の際に提案を行ってそのままご契約をいただくか、あるいは3 回目の訪問の際にご契約になることが多かった。指定代理請求制度や家族登録制度といった保険に関わる諸制度のご案内のために初回訪問を行い、そこでお客様から悩みや関心事を聴き取ってから、2 回目以降の訪問時に保険の提案をするという流れであった。」(金融渉外部課長)
・「かんぽ生命が募集人用に提供している営業販売マニュアルでは、まずお客様と保険以外の話で仲良くなって関係性を築いてから、『商品』ではなく『人』で保険を販売するようにと記載されている。つまり、お客様から『あなたに任せるから好きにして。』という言葉をお客様から引き出して保険を販売するようにせよということである。しかし、私の感覚では、お客様との関係性を利用してお客様に不必要な商品まで販売してしまっている場合もあるように感じており、会社の推奨する販売方法には違和感がある。私はお客様に、良い商品だと思ってもらえる商品を買っていただきたいという信念があることから、お客様宅を訪問したときは、最初から率直に保険商品の紹介をするようにしていた。多くの募集人は、保険の話に入るまで長々と世間話をしておきながら、いったん保険の契約を受理すればすぐにお客様宅から辞去してしまう。しかし、私の場合は、単刀直入に保険の話をして契約をいただいた後は、すぐに帰ることはせず、お客様と雑談や世間話をするようにし、そこでお客様との関係性を築くようにしていた。保険の話が終わった後であるので、お客様も緊張感から解き放されて、本音を述べてくださることが多かった。世間話をしているうちに、今しがた行った契約について実は不安を感じているなどといった事情を話していただくこともあり、更に保険内容のご説明をするということもあった。それでもお客様の方で最後まで不安を払拭できない場合には、作成したばかりの契約の手続書類を書き損じ扱いにして破棄し、契約を受理していなかったこととし、後日に再訪して、ご納得いただいてから契約をするということにしていた。こうしたことが、私の募集品質の良さにつながっていたのではないかと思う。実際、私の場合、これまで保険募集を 10 年間以上続けてきた中でお客様からクーリングオフをされたことは一度もない。」(金融渉外部課長代理)
・「私は、保険金額をどのくらいの額に設定して毎月の保険料をどのくらいの額にするかとい
った契約内容についてや、最終的に保険に加入するかどうかについては、お客様が迷っている時は、無理に勧めるようなことはせず、時間をかけてでもお客様に決めてもらうようにしていた。そのようにしておけば、お客様自身が選んだことなので後々に苦情につながるということもなかった。」(金融渉外部課長代理)
⑦かんぽ生命保険商品の商品性
・「かんぽ生命の貯蓄性保険商品は、昨今の低金利環境下では、確かに魅力が減退しているものの、少しずつ商品内容が変化してきた中で、私は、その時々に自分がお客様にとって一番良いと思う商品をお客様に勧めてきたのであり、そのような方法で高い販売実績を挙ることができていた。お客様との信頼関係があれば、商品性をごまかすようなことをすることなく、きちんと説明をした上で契約をいただくことができる。かんぽ生命の商品が他社に比べて劣っているからと言って、不適正募集に手を染めるということがあったとすれば、それは単なる言い訳にすぎないと思う。」(金融渉外部課長)
アフターフォローについて
・「アフターフォローをしっかり行うために、私は自分の名刺に自分の携帯番号を記載しておき、お客様には『何かあったら、すぐにこちらへ電話してください。』と伝えるようにしていた。お客様から電話をいただいた際には、すぐにお客様のところへ赴いていた。また、別件でお客様宅の近くを通りかかったときにも顔を出すように心掛けていた。」(金融渉外部xx)
・「私はお客様とのつながりを大事にしており、お客様のおかげで仕事をさせてもらえているという感謝の気持ちを持っていた。そのため、暑中見舞いや年末年始のご挨拶を欠かしたことはなかった。そのようなことを地道に続けているうちに、お客様の方から声を掛けてくださるようになり、ご家族やお知り合いの方を紹介してもらえる機会が増え、契約件数の増加につながっていた。」(営業インストラクター)
・「私はお客様を大切にしたいという思いを強く持っていたので、お客様に契約をしていただいた後は、お客様に感謝の気持ちを込めて絵葉書をお送りするようにしていた。私はこの絵葉書を自費で購入し、自筆でお客様への感謝の言葉を綴っていた。」(営業インストラクター)
・「私は、私が受理した契約者の方々の一人一人に御礼状をお送りすることで、契約内容の誤解等に起因する苦情が発生しないようにしつつ、お客様とのつながりを持ち続けるようにしていた。このような地道なことを続けていると、契約者のお子様などの若い方を紹介してもらうことができるようになり、新規契約の獲得につながっていった。」(金融渉外部課長)
4 募集人調査への対応
一部の地域においては、今回の特定事案調査等に基づく募集人調査や不祥事件等判定の実効性を失わせるような対策が、調査対象の募集人によって画策されていたようであった。例えば、一部の地域や局では、特定事案に関してかんぽ生命エリアコンプライアンス室が日本郵便コンプライアンス室と連携して募集人に対して行う募集人調査において、不利な不祥事件等の判定がなされることがないよう、募集人内で募集人調査での回答内容についてあらかじめ相談をして矛盾のない回答を作成し、それを募集人間で共有し合っていたことがうかがわれた。また、募集人が自認することによって不利な不祥事件等の判定がなされることがないよう、特定事案発生の原因はあくまで顧客側にあるとして自認を拒み続けるといった対応方針について、募集人間で広く共有されているという指摘もあった。
この点に関する募集人の供述は、以下のとおりである。
・「私は、特定事案調査に当たっては、基本的には顧客側の主張を全て否認するようにしていた。私の周りで、特定事案調査の対象者となって自認した募集人がいるとは聞いたことがな
い。また、私の局では募集人調査における回答を募集人全員で相談して、相互に矛盾が生じ ないようにしていたし、他局に異動した募集人と共同募集をした契約が調査対象となってい た場合には、その募集人とも相談をして一言一句矛盾の生じない回答をするようにしていた。」
(金融渉外部課長代理)
5 小括
以上のとおり、募集人ヒアリングの結果、不適正募集問題の実態、原因及び改善策に関し、より深度ある調査結果を得ることができた。併せて、これまであまり論じられることのなかった、販売実績が高く、かつ、募集品質も良好な募集人たちが、保険募集に関し、どのような心構えを持ち、また、事前準備をしているのか、さらに、その募集対象や方法はどのようなものかなどについてもある程度まとまった話を聞くことができ、極めて有用であった。これらは、当委員会だけでなく、全ての募集人が今後、実際に募集を行うに当たっても、大いに役立つはずである。同時に、その管理者、さらには、かんぽ生命及び日本郵便の幹部らにとっても、今後の指導等に当たって、参考とすべき点が多いと思料される。
第6 編 郵政グループの不適正募集問題への取組みに関する事実経過等第1 当委員会の問題意識
当委員会は、前回報告書第 6 編「日本郵政グループのガバナンスの問題点」第 2「かんぽ生命のガバナンスに係る問題点」の一つとして、「リスク感度の低さに起因し、リスク事象を探知した際、xxxxの追究と抜本的解決を先延ばしにし、問題を矮小化する組織風土であったこと」を挙げた。その要素の一つとして、「かんぽ生命においては、苦情等の不適正募集の疑いに係るリスク情報がもたらされても、これらの情報が問題点等の発見や実態の把握に活かされることなく、矮小化され、処理された結果、xx原因の解明に行き着かず、このことが本契約問題の発覚の遅れにつながった。」と指摘した(127 頁)。
また、「本来であれば、個別の不適正募集事案の疑いに関する情報を探知した際、十分な事実調査が行われて原因を特定し、これに対応する改善策が検討されるべきである。しかしながら、かんぽ生命では、顧客からの苦情等への対応を含め、不適正募集の疑いのある情報に触れた際も、これを契機に真因を把握し、これに対応する改善策を検討し、xx的な解決を図るという姿勢に乏しく、個別的な対応に終始していた。すなわち、不祥事件の件数や高齢者の苦情の件数などの不適正募集の徴表となる指標を減らすこと自体が目的化されており、これまでの不適正募集防止に向けた施策は抜本的な解決に直結していなかった。」と指摘した(127 頁)。
さらに、「総合対策についても、高齢者募集、多数契約及び乗換契約に係る各施策において、実効性が十分ではない部分的な変更等を内容とするものにとどまっており、このことからは、不適正募集の撲滅という課題を実現するため、組織を挙げて取り組むという姿勢に欠け、問題を先送りにしたと評価せざるを得ない。」と指摘した(127 頁)。
日本郵政グループは、不適正募集問題を金融コンプライアンスに関わる重大な問題として捉え、郵便局の募集の現場において行われていた不適正募集の正確な実態を把握した上で、その真因を探り、これに対応する改善策を検討し、スピード感をもって実行に移すことにより、抜本的な解決を図ることが求められていた。
今般、2019 年6 月に不適正募集問題が発覚するまでの間に、このような抜本的な解決に至らなかった主な原因の一つとして、それまでの日本郵政グループ、特にかんぽ生命及び日本郵便の取組みによっても、郵便局の募集の現場で行われてきた募集実態が正確に把握されないまま、適正募集の防止に向けた施策が「募集品質」という業務品質の要素を向上させるための包括的な対策である「募集品質向上に向けた総合対策」(以下「総合対策」という。)に取り込まれてしまい、指標により進捗管理がなされ、日々、顧客の苦情等としてもたらされていた不適正募集の疑いを含むリスク情報が募集実態の把握に十分活かされてこなかったことが挙げられる。
そこで、当委員会は、主にかんぽ生命と日本郵便の経営陣が、なぜ不適正募集の実態を正確に把握しないまま、2019 年6 月下旬の不適正募集問題発覚に至るまでの間、不適正募集の発生の防止に向けた対策を講じていたのかを、その当時の認識を含め、調査した。その結果、判明した事実を以下に記載する。
便宜上、まず、一連の関係時系列表を示した上で、時系列順に事実経過を示すこととする。
関係時系列
時期 | 事実関係 |
2005 年10 月 | 郵政民営化関連6 法案(郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の 整備等に関する法律案)成立 |
2006 年1 月 | 郵政民営化に向けた準備を行うための会社として日本郵政設立 |
2006 年9 月 | 日本郵政の全額出資により、郵政民営化に向けた準備を行う会社とし て、株式会社ゆうちょ34及び株式会社かんぽ35設立 |
2007 年10 月 | 郵政民営化に伴い、日本郵政が、郵便事業株式会社、郵便局株式会社、 ゆうちょ銀行及びかんぽ生命の4 社の総株式を保有する持株会社に |
2012 年6 月 | xxxxx(xx火災海上保険株式会社36出身)、かんぽ生命取締役兼 代表執行役社長に就任 |
2012 年10 月 | 郵便局株式会社、日本郵便株式会社に商号変更の上、郵便事業株式会 社を吸収合併 |
2013 年6 月 | xxxxx(株式会社東芝出身)、日本郵政取締役兼代表執行役社長に就任 xxxx(x政省出身)、日本郵便代表取締役社長兼執行役員社長に就任 xxxxx(郵政省出身)、日本郵政取締役代表執行役副社長に就任 |
2013 年7 月 | かんぽ生命、募集管理統括部を設置 |
2014 年2 月 | 日本郵政グループ、「中期経営計画~新郵政ネットワーク創造プラン ~2016~」(「2014 年中期経営計画」)策定 |
2015 年4 月 | 日本郵政グループ、「中期経営計画~新郵政ネットワーク創造プラン ~2017~」(「2015 年中期経営計画」)策定 かんぽ生命、養老保険の加入年齢上限の引上げ(普通養老保険:75 歳から80 歳、特別養老保険:5 歳ずつ引上げ) 甲常務執行役員(郵政省出身)、日本郵便金融業務部担当となる |
2015 年10 月 | かんぽ生命、終身保険の加入年齢上限の引上げ (定額型:65 歳から85 歳、その他:5 歳ずつ引上げ) |
34 現・株式会社ゆうちょ銀行である。
35 現・株式会社かんぽ生命保険である。
36 現・損害保険ジャパンxxxx株式会社である。
2016 年4 月 | かんぽ生命、「お申込み内容確認のご案内」発送開始日本郵便、本社金融業務部内に募集管理統括室を設置 xxxxx(株式会社日本興業銀行37出身)、日本郵政取締役兼代表執 行役社長に就任 |
2016 年5 月 | 平成26 年改正保険業法施行(平成26 年5 月成立) |
2016 年6 月 | A 氏(郵政省出身)、かんぽ生命執行役副社長(募集管理統括部、コンプライアンス統括部及びお客さまサービス統括部担当)に就任 xxxxx(株式会社住友銀行38出身)、日本郵便代表取締役社長兼執 行役員社長に就任 |
2016 年8 月 | かんぽ生命、保険料額改定(予定利率1.5%から1.0%) |
2016 年12 月下旬 | B 常務執行役(郵政省出身)、かんぽ生命募集管理統括部、コンプラ イアンス統括部及びお客さまサービス統括部担当となる |
2017 年1 月 | かんぽ生命及び日本郵便、「かんぽ募集品質改善緊急対策本部」設置かんぽ生命、「消滅等と新規を繰り返す契約に関する受理者ヒアリン グ」開始(2017 年3 月31 日まで) |
2017 年3 月 | 金融庁、「顧客本位の業務運営に関する原則」を発出 |
2017 年4 月 | かんぽ生命、保険料額改定(予定利率1.0%から0.5%) |
2017 年6 月 | 植xxxx(東京海上火災保険株式会社39出身)、かんぽ生命取締役兼代表執行役社長に就任 C 専務執行役(日本生命保険相互会社出身)、かんぽ生命募集管理統括部、コンプライアンス統括部及びお客さまサービス統括部の担当執 行役となる |
2017 年10 月 | かんぽ生命、「医療特約 その日からプラス」及び長寿支援保険の販 売開始 |
2017 年12 月 | かんぽ生命及び日本郵便、「募集品質向上に向けた総合対策」の策定 (2018 年1 月からxx、実施) |
2018 年4 月 | NHK、クローズアップ現代+(プラス)を放送 甲常務執行役員(郵政省出身)、日本郵便金融営業部及び物販ビジネス部担当となる乙執行役員(郵政省出身)、日本郵便金融業務部及び人事部(ダイバーシティ推進に関する業務に限る)担当執行役員とな る |
2018 年5 月 | 日本郵政グループ、「日本郵政グループ中期経営計画2020」(「2018 年 中期経営計画」)策定 |
2019 年1 月 | かんぽ生命、サンプル調査を開始 |
2019 年3 月 | かんぽ生命、サンプル調査結果を金融庁に報告 |
37 現・株式会社xxx銀行である。
38 現・株式会社三井住友銀行である。
39 現・東京海上日動火災保険株式会社である。
2019 年4 月 | 甲常務執行役員が、日本郵便金融業務部、金融営業部及び物販ビジネス部担当となる 日本郵政、かんぽ生命株式の売出しについて適時開示(公表日4 月4 日、受渡日4 月23 日) |
2019 年5 月28 日 | 金融庁、かんぽ生命に対し、「募集品質に係る諸問題にかかる報告に ついて」と題する報告徴求 |
2019 年6 月19 日 | 総務省、日本郵便に対し、「保険窓口業務等に関する日本郵便株式会 社法第16 条1 項に基づく報告について」と題する報告徴求 |
2019 年6 月24 日 | 朝日新聞、乗換契約問題について報道 |
2019 年6 月27 日 | かんぽ生命、特定事案調査においてA、B 及びC 類型とされた乗換契 約について乗換前の契約に復元する旨適時開示 |
2019 年6 月28 日 | かんぽ生命、金融庁に対し、「『募集品質に係る諸問題にかかる報告に ついて』に関する報告書」と題する報告書提出 |
2019 年7 月10 日 | かんぽ生命、復元する乗換契約の範囲を拡大する旨適時開示 日本郵便、総務省に対し、「『保険窓口業務等に関する日本郵便株式会 社法第 16 条 1 項に基づく報告について』に関する報告書」と題するする報告書提出 |
2019 年7 月14 日 | かんぽ生命及び日本郵便、保険商品の販売を自粛する旨適時開示 |
2019 年7 月24 日 | かんぽ生命、日本郵便及び日本郵政が、かんぽ生命保険契約問題特別 調査委員会(当委員会)を設置 |
2019 年8 月 | かんぽ生命、全契約調査及び特定事案調査開始 |
2019 年9 月 | 金融庁が、かんぽ生命、日本郵便及び日本郵政に対する立入検査開始 |
2019 年12 月18 日 | 当委員会、調査報告書提出 |
2019 年12 月27 日 | 金融庁、かんぽ生命に対し業務停止命令及び業務改善命令 総務省及び金融庁、日本郵便に対し、業務停止命令及び業務改善命令総務省及び金融庁、日本郵政に対し、業務改善命令 かんぽ生命、日本郵便及び日本郵政、2020 年1 月から役員報酬を減額 する旨公表 |
2020 年1 月5 日 | 植xxxx、かんぽ生命代表執行役社長を退任xxxx、日本郵便取締役会長を退任 xxxxx、日本郵便執行役員社長を退任 xxxxx、x本郵政代表執行役社長を退任 xxxxx、x本郵政代表上級副社長を退任 |
2020 年1 月6 日 | xxxxx(郵政省出身)、かんぽ生命代表執行役社長に就任xxxxx(x政省出身)、日本郵便執行役員社長に就任 xxxxx(建設省出身)、日本郵政代表執行役社長に就任 |
2020 年2 月 | かんぽ生命、深掘調査開始 |
第2 郵政民営化以前の不適正募集の発生状況等
郵政民営化前の簡易生命保険においても、保険募集を巡って不正行為が行われたり、不適正な話法が用いられたりすることは、比較的xxに行われていたようである。「簡易生命保険誕生100 周年史」(2017 年10 月かんぽ生命発行)には、「1937(昭和12)年の日中戦争勃発以降は、貯蓄奨励の国策が強化される一方で労働力の不足が顕著になったため、専業の募集員による募集競争が繰り広げられたが、その結果として大都市での不正募集が蔓延するようになった。そこで「募集専務員取締内規」を実施して、不正・不誠実な募集については取締りを徹底し、堅実な募集による『貯蓄報国』を目ざした。」、「団体組成を通じた活発な募集活動の過程で、外務員の総合的な販売テクニック強化策の一環としての『話法』が開発促進されていった。巧妙な話術によってコミュニケーションを図りながら、募集能力を身に付けることを目的として、さまざまな話法が研究・開発されていった。こうした現場における草の根の販売技術の向上策も、1960 年代後半における新契約の急伸をもたらす要因であった。しかし、契約数が急激に増加していく過程で、不適切な話法による勧誘や不明瞭な団体組成による割引の適用といった、積極的な販売促進策の行き過ぎた面が問題視されるようになった。こうした募集方法をめぐる行き過ぎの問題については、マスコミや国会でも取り上げられたこともあり・・・、団体払込制度の約款を改正することで規制を強化、同時に適切な募集に関する指導を行った。」などの記載がある。
さらに、1985(昭和60)年に発刊された内部告発本には、当時から、乗換話法、節税話法、トリック話法などが存在し、乗換は「畳返し」と呼ばれ、「局員達の募集手当稼ぎの手段のために、その保険終期、あるいは満期時期が、そのたびに引き延ばされている。」などと記載されている。
このように、郵便局における不適正募集は、極めて古い時代からの問題であった。
この不適正な保険募集問題は、民営化後も引き継がれたが、日本郵政グループ、とりわけ日本郵便にとっては、つい最近まで、業務品質の改善以前に部内犯罪を撲滅することが最大の関心事であった。ちなみに、2013 年度以降の郵便局における窃盗・詐欺・横領、郵便物放棄・隠匿等刑法犯の発覚件数をみると、2013 年度56 件(郵便業務36 件・窓口業務20 件)、 2014 年度35 件(郵便業務19 件・窓口業務16 件)、2015 年度31 件(郵便業務22 件・窓口業務 9 件)、2016 年度 24 件(郵便業務 20 件・窓口業務 4 件)、2017 年度 33 件(郵便業務 22件・窓口業務11 件)、2018 年度30 件(郵便業務21 件・窓口業務9 件)となっている。
第3 郵政民営化以降の不適正募集の発生状況等
2007 年の郵政民営化後、かんぽ生命は保険業法上の生命保険会社として金融庁の監督下に置かれ、保険業法等の法令違反に該当する不適正募集については、不祥事件として金融庁への届出を要することになった40。
40 郵政民営化以前は総務省に対する届出がなされていた。
この間、かんぽ生命保険商品の個人向け募集については、一貫して、郵便局において行われていたところ、保険業法違反により金融庁に届出を要する不祥事件の発覚件数の推移は、以下のとおりである。
すなわち、不祥事件のうち不適正募集に関する事案41の発覚件数は、2009 年度の77 件をピークに、2010 年度以降、30 件台ないし40 件台で推移し、2015 年度からは減少し、20 件前後で推移している。また、不祥事件のうち、乗換契約に係るもの(乗換契約時における不利益事項の不告知)の発覚件数については、2011 年度以降、0 件から6 件の間で推移し、2015 年度以降は0 件から3 件の間で推移している。かんぽ生命は、これらの不適正募集に関する不祥事件事案のうち、作成契約(架空、無断、名義借)42については、犯罪事案(窃盗、詐欺、横領等)に準ずるものとして、不適正募集の中でもより重点的に対処すべきものと捉えていた。この作成契約は、2013 年度の16 件をピークに、2014 年度は15 件発生し、その後、2015年度以降は3 件から6 件の間で推移している。
他方、保険事業に関する不祥事件のうち、不適正募集に関する事案以外の犯罪事案(窃盗、詐欺、横領等)は、2010 年度の13 件をピークに、2011 年度及び2012 年度は若干減少し、その後、2013 年度以降は、1 件から4 件の間で推移している。
年度 | 不適正募集に係る不祥事件及び不祥事故の発覚件数 ※各年度に発覚した不祥事故は全て不 適正募集に関する事案である。 | 不祥事件(発覚件数)の総数43 |
2007 年度 (2007 年 4 月から 2008 年3 月まで) | 不祥事件8 件 (うち作成契約0 件)不祥事故232 件 | 11 件 (うち犯罪事案3 件) |
2008 年度 (2008 年 4 月から 2009 年3 月まで) | 不祥事件52 件 (うち作成契約0 件)不祥事故572 件 | 58 件 (うち犯罪事案6 件) |
2009 年度 (2009 年 4 月から 2010 年3 月まで) | 不祥事件77 件 (うち作成契約1 件)不祥事故569 件 | 87 件 (うち犯罪事案10 件) |
2010 年度 (2010 年 4 月から 2011 年3 月まで) | 不祥事件33 件 (うち作成契約5 件)不祥事故698 件 | 46 件 (うち犯罪事案13 件) |
また、不祥事故については、2010 年度の698 件をピークに、2011 年度以降、400 件台ないし500 件台で推移し、その後、2015 年度から100 件台まで減少し、2018 年度以降は100 件を切っている。
41 保険料、解約返戻金、年金、保険金貸付金等の詐欺、横領等の犯罪事案を除いた事案である。
42 作成契約とは、実在しない者の名義を用いた保険契約(架空契約)、第三者の名義を無断で使用した保険契約(無断契約)及び第三者の名義を借りた保険契約(名義借契約)の総称であり、社内では、「偽造契約」と呼ばれることもあった。
43 顧客情報の漏洩等に関する事案を除く。
2011 年度 (2011 年 4 月から 2012 年3 月まで) | 不祥事件42 件 (うち作成契約7 件、乗換契約に係る不祥事件2 件)44 不祥事故568 件 | 49 件 (うち犯罪事案7 件) |
2012 年度 (2012 年 4 月から 2013 年3 月まで) | 不祥事件31 件 (うち作成契約4 件、乗換契約に係る不祥事件0 件) 不祥事故587 件 | 42 件 (うち犯罪事案11 件) |
2013 年度 (2013 年 4 月から 2014 年3 月まで) | 不祥事件47 件 (うち作成契約 16 件、乗換契約に 係る不祥事件6 件) 不祥事故456 件 | 50 件 (うち犯罪事案3 件) |
2014 年度 (2014 年 4 月から 2015 年3 月まで) | 不祥事件32 件 (うち作成契約 15 件、乗換契約に 係る不祥事件2 件) 不祥事故264 件 | 36 件 (うち犯罪事案4 件) |
2015 年度 (2015 年 4 月から 2016 年3 月まで) | 不祥事件16 件 (うち作成契約6 件、乗換契約に係る不祥事件0 件) 不祥事故191 件 | 18 件 (うち犯罪事案2 件) |
2016 年度 (2016 年 4 月から 2017 年3 月まで) | 不祥事件15 件 (うち作成契約4 件、乗換契約に係る不祥事件0 件) 不祥事故175 件 | 16 件 (うち犯罪事案1 件) |
2017 年度 (2017 年 4 月から 2018 年3 月まで) | 不祥事件20 件 (うち作成契約3 件、乗換契約に係る不祥事件3 件) 不祥事故167 件 | 21 件 (うち犯罪事案1 件) |
2018 年度 (2018 年 4 月から 2019 年3 月まで) | 不祥事件23 件 (うち作成契約6 件、乗換契約に係る不祥事件2 件) 不祥事故90 件 | 26 件 (うち犯罪事案3 件) |
44 民営化直後の時期である 2007 年度から 2010 年度までは、民営化後に受理した契約について乗換契約が発生しないことから、乗換契約に係る不祥事件についてはデータが存在しない。
第 4 募集管理統括部の設置及び募集管理統括部による不適正募集防止に向けた施策の実施等
かんぽ生命では、従前、「コンプライアンス統括部募集コンプライアンス室」や「募集管理部」において募集コンプライアンスに関する企画等を所管していたが45、求められるサービス水準の高度化等により、顧客保護態勢、特に苦情対応、高齢者保護という観点から募集品質を向上させることが喫緊の課題とされたことから、2013 年7 月に、募集品質の向上を図るため、営業部門から独立した組織として、「募集管理統括部」を設置した。以後、募集管理統括部は、募集業務の品質確保のための指導に関する企画や保険募集管理に関する業務改善の指示・指導等を担当することとなった46。
募集管理統括部は、2013 年10 月以降、高齢者募集47に関して、高齢者(満70 歳以上の者)を相手方とする保険契約の説明時に、その家族等の同席を原則として義務付けた。
また、かんぽ生命は、不祥事件の発生が相次いでいる状況に対し、2014 年度から「不適正募集ゼロチャレンジ宣言」48を行い、社員に対する適正募集確保のための研修、募集品質実績表による指導、営業品質指導専門役49による指導の導入等を開始した。
さらに、乗換契約に関しては、2015 年4 月以降、乗換判定期間を拡大し、従前は、既契約の解約等が新規契約の契約日より前1 か月から当該新規契約の契約日の後6 か月までの間に行われるものを、乗換契約と判定する取扱いであったところ、既契約の解約等が新規契約の契約日より前3 か月から当該新規契約の契約日の後6 か月までの間に行われるものを、乗換契約と判定する取扱いとした。
45 2007 年の郵政民営化当初はコンプライアンス統括部内の募集コンプライアンスの担当ラインが適正募集に関する企画等の業務を行っていたが、2008 年 7 月に、コンプライアンス統括部内に募集コンプライアンス室が設置され、以後、同室が適正募集に関する企画等を所管することとなった。
46 組織規程上、募集管理統括部は、保険募集管理に関する総合的企画・調整及び推進、保険募集管理に関する指導の統括、日本郵便向けの保険募集管理の指導の企画、エリア本部及び支店の生命保険募集人向けの保険募集管理の企画、適正募集に関する企画及び総合調整を所掌するものとされる。
47 高齢者募集とは、高齢者を対象とした、意向把握・確認等が必ずしも十分とはいえない形態による募集活動をいう。
48 「不適正募集ゼロチャレンジ宣言」とは、局の管理者が、ポータルサイトに掲出した「不適正募集ゼロチャレンジ宣言書」により、適正な営業活動を実践することの重要性等について、各局で勉強会を実施し、募集人にその内容を理解した旨の宣言書に署名・押印の上、提出を求めるといった取組みである。 2014 年度から開始され、2016 年度まで行われた。
49 営業品質指導専門役は、募集品質指導専門役の前身であり、営業品質を改善する必要があると認められる郵便局に臨局して、局員に対する指導及び管理者に対する指導を行う。営業品質指導専門役は、日本郵便又はかんぽ生命の本社に所属し、日本郵便に所属する者は支社等に駐在し、かんぽ生命に所属する者はエリアコンプライアンス室に駐在していた。
第5 平成26 年改正保険業法の施行及びその対応状況
1 平成26 年改正保険業法の内容
2014(平成26)年5 月23 日、「保険業法等の一部を改正する法律」(以下「平成26 年改正保険業法」という。)が成立し、保険募集の基本的ルールが創設されるとともに、募集人に対する規制が整備された(2016 年5 月29 日施行)。
この改正は、保険商品の複雑化・販売形態の多様化、「乗合代理店」(複数保険会社の商品 を販売する代理店)の出現等、保険会社をめぐる経営環境の大きな変化に対応するため、募 集規制を再構築することにより保険の信頼性を確保することなどを趣旨とするものであった。
保険募集の基本的ルール創設の主な内容は、①「情報提供義務」の導入、②「意向把握義務」の導入等であり、募集人に対する規制整備の主な内容は、③募集人に対する体制整備義務の新設等であった。
各概要は以下のとおりである。
(1) 情報提供義務
保険会社、保険募集人50は、保険契約の締結又は保険募集等に関し、「保険契約の内容その他保険契約者等に参考となるべき情報の提供を行わなければならない」(保険業法 294 条 1項)。
(2) 意向把握義務
保険会社、保険募集人は、保険契約の締結又は保険募集等に関し、「顧客の意向を把握し、これに沿った保険契約の締結等(保険契約の締結又は保険契約への加入をいう。以下この条において同じ。)の提案、当該保険契約の内容の説明及び保険契約の締結等に際しての顧客の意向と当該保険契約の内容が合致していることを顧客が確認する機会の提供を行わなければならない」(保険業法294 条の2)。
(3) 募集人に対する体制整備義務
所属保険会社51については、適切な保険募集管理態勢を確立し、「保険募集に関する法令等の遵守、保険契約に関する知識、内部事務管理態勢の整備(顧客情報の適正な管理を含む。)等について、社内規則等に定めて、保険募集人の育成、資質の向上を図るための措置を講じるなど、適切な教育・管理・指導」を行わなければならないとされていたところ(保険業法 100 条の2、保険業法施行規則53 条の7、同53 条の11、保険会社向けの総合的な監督指針Ⅱ
-4-2-1(4))、平成 26 年改正保険業法においては、保険募集人に対する体制整備義務が新設された。すなわち、保険募集人も、所属保険会社から委託を受けた保険募集に関する業務に関し、適切な保険募集管理態勢を確立し、「保険募集に関する法令等の遵守、保険契約に関する知識、内部事務管理態勢の整備(顧客情報の適正な管理を含む。)等について、社内規則
50 保険募集人とは、一般的には、保険会社のために保険契約の締結の代理又は媒介を行う者をいう。いわゆる保険代理店や保険会社の営業職員がこれに該当する。
51 追加報告書では、募集人が保険募集を行う保険契約の保険者となるべき保険会社を意味するものとする(保険業法上は「所属保険会社等」)。
等に定めて、保険募集に従事する役員又は使用人の育成、資質の向上を図るための措置を講じるなど、適切な教育・管理・指導」を行わなければならないとされた(保険業法294 条の
3 第1 項、保険会社向けの総合的な監督指針Ⅱ-4-2-9)。
2 平成26 年改正保険業法施行に係るかんぽ生命及び日本郵便の対応状況
金融庁は、2015 年2 月、平成 26 年改正保険業法に係る施行規則及び監督指針の案を公表
した。これを受け、かんぽ生命及び日本郵便では、平成26 年改正保険業法が施行される2016年5 月までに、同法により新設された意向把握義務、及び募集人に対する体制整備義務に適合した体制の構築が急務となった。
そこで、かんぽ生命及び日本郵便は、平成26 年改正保険業法施行に対応するため、意向把握義務につき、推定(又は把握)した顧客の意向をかんぽ生命の新契約システム52に入力することによる意向の記録・管理を行うこと、及び申込書類受理時に意向確認書を用いて当初意向と最終意向を比較の上、商品プランとの合致の確認等を行うことを決定した。
また、日本郵便は、募集人である日本郵便の体制整備義務に関する対応として、かんぽ生命保険商品の募集に当たり作成する顧客への提案書に、他社商品よりも優先的に勧奨することを明示すること、日本郵便本社の金融業務部内に、保険募集管理を統括する組織として「募集管理統括室」を設置すること、及び保険募集管理に関する内規である「保険募集管理基本規程」を制定すること等を決定した。
そして、2016 年4 月から、日本郵便において募集管理統括室が、保険募集管理の業務を統括するとともに、保険募集管理基本規程に基づく運用が実施されることとなった。
このようにして、かんぽ生命及び日本郵便は、2016 年 5 月以降、平成 26 年改正保険業法施行に対応することとなった。
第6 2016 年8 月に金融庁からヒアリングの可能性に関する示唆を受けた後の対応状況
1 金融庁監督局総務課郵便貯金・保険監督参事官室の概要
2007 年 10 月の郵政民営化の実施以降、かんぽ生命、株式会社ゆうちょ銀行(以下「ゆうちょ銀行」という。)、日本郵政及び日本郵便53における保険業務・銀行業務等の監督に関する事務は、金融庁監督局総務課郵便貯金・保険監督参事官室が所掌している(金融庁組織令19条1 項6 号レ、同号ネ)。同室は、保険業法上の保険会社であるかんぽ生命、銀行法上の銀行であるゆうちょ銀行、その金融持株会社としての日本郵政、及び保険募集人・銀行代理業者としての日本郵便に対し、適切な経営管理(ガバナンス)が行われているか、適切なリスク管理が行われ財務の健全性が確保されているか、コンプライアンス面を含め業務の適切性が確保されているか、といった観点から、監督を実施してきた。
すなわち、金融庁監督局総務課郵便貯金・保険監督参事官室は、かんぽ生命、ゆうちょ銀行、日本郵便及びその持株会社である日本郵政から成る日本郵政グループのみを対象に、監督を実施している組織である。
52 新契約システムとは、新契約の管理を行うシステムをいう。
53 2007 年10 月の郵政民営化当時は、郵便局株式会社であった。
以下、追加報告書においては、金融庁監督局総務課郵便貯金・保険監督参事官室を「金融庁参事官室」、同室の責任者を「金融庁参事官室責任者」、同室の担当者を「金融庁担当者」と記載することとする。
2 金融庁によるヒアリングの可能性に関する示唆に対するかんぽ生命及び日本郵便の対応かんぽ生命は、2016 年 8 月、金融庁から、平成 26 年改正保険業法の履行状況等の把握の ために、モニタリングの一環として郵便局へのヒアリングを 2017 年 1 月以降に行う可能性がある旨示唆された。これに対応すべく、かんぽ生命及び日本郵便では、不適正募集の防止に向けた取組みを実施することが必要であると考え、2016 年 8 月 29 日、それまで営業推進を主なテーマとしていた両社の社長同士の会合(以下「社長会合」という。)54に、募集品質を新たなテーマとして追加することとした。以後、社長会合には、両社の社長、営業推進部
門の担当役員等に加え、募集管理部門の役員等も出席するようになった。
この回の社長会合において、かんぽ生命xx社長から、かんぽ生命では、近時、高齢者からの苦情が増加していたことなどから、金融庁が生命保険会社における乗換契約の募集実態を注視しており、そのため、モニタリング結果を踏まえて金融庁から検査を受けることを念頭に対応していく旨の発言がなされるなど、かんぽ生命及び日本郵便において、金融庁対応として、不適正募集の防止に向けた取組みが必要であることが確認された。
このように、かんぽ生命及び日本郵便では、金融庁からモニタリングを行う可能性がある旨の示唆があったことを契機に、以後、両社間で、金融庁対応として、不適正募集の防止に向けた取組みについて協議等を行ったが、その概要は以下のとおりである55。
(1) 募集人処分の在り方
上記の2016 年8 月29 日開催の社長会合では、かんぽ生命xx社長が、不適正募集を行った募集人を退職にする処分を行う損害保険会社の例と比較して、日本郵便の場合は異動させるだけであり処分として甘い旨を指摘した。これを受けて、かんぽ生命は、不祥事件を発生させた募集人に対し、2017 年度以降は、原則として募集業務を廃止する処分を実施している。
(2) 高齢者苦情の発生状況と高齢者に対する不適正な乗換募集の防止策
日本郵政グループは、2015 年4 月、2015 年度から2017 年度までを対象期間とする「日本郵政グループ中期経営計画~新郵政ネットワーク創造プラン2017~」(以下「2015 年中期経営計画」という。)を発表した。2015 年中期経営計画では、新契約の獲得による保有契約の底打ち・反転という事業戦略、及び満期代替の早期取組み、既契約者訪問活動の展開などが営業・サービス戦略として掲げられ、また、顧客に対応した商品開発の具体策として養老保険及び終身保険の加入年齢引上げなどが掲げられた。
かんぽ生命では、2015 年4 月に、普通養老保険における被保険者の加入年齢上限を 75 歳から80 歳に引き上げ、2015 年10 月には、定額終身保険における被保険者の加入年齢上限を
54 社長会合は、2014 年 4 月から、かんぽ生命と日本郵便の社長間の情報共有を図る目的で実施されていた。
55 結局、当時は金融庁のかんぽ生命及び日本郵便に対するモニタリングは実施されなかった。
65 歳から 85 歳に引き上げた。その結果、高齢者苦情の発生件数が増加した。さらに、2016年4 月から、契約時における高齢者保護の取組みとして「お申込み内容確認のご案内」(いわゆる「高齢者レター」)56の発送を開始したことを機に高齢者苦情が顕在化し、その発生件数が増加していた。
このような状況の中、上記の2016 年8 月29 日開催の社長会合において、日本郵便のxx社長らは、乗換募集に関する高齢者苦情が多い実態を踏まえ、乗換契約は原則として顧客利益に反するという認識に基づき、乗換募集そのものを規制する必要がある旨の問題提起をした。
これに対して、かんぽ生命の営業推進部担当のD 専務執行役は、かんぽ生命では、満期のある保険商品が主力商品であり、満期代替営業が主な手法であることや、高齢者の乗換契約については家族から苦情を受けるケースも多いこと等を理由に、乗換募集そのものを規制するのではなく、家族同席の徹底により対応すべきである旨述べた。
こうした議論の末、かんぽ生命及び日本郵便は、不適正募集の防止に向けた取組みに関しては、乗換募集そのものを規制することに代えて、家族同席の徹底等により、高齢者に対する乗換募集の弊害を抑制するという方針を決定した。
(3) 苦情申出がなく、かつ、不祥事件と判定されていない事案への対応
かんぽ生命及び日本郵便では、苦情申出がなく、かつ、不祥事件と判定されていない事案について、多数契約、多額契約等の悪質な事案が含まれているという実態は把握していなかったものの、2016 年10 月18 日に開催された社長会合では、金融庁が郵便局の募集品質に強い関心を持っていることを踏まえ、かんぽ生命側から、仮に、上記のような悪質な事案が金融庁により発覚した場合には、グループ全体の信用が低下するおそれがあるため、かんぽ生命・日本郵便両社で危機感をもって対応していく必要がある旨指摘した。
(4) 多数契約募集57への対応等
かんぽ生命では、2016 年10 月中旬までには、A 副社長の主導のもと、募集管理統括部が、解約・新規申込を繰り返している契約者について10 年間の解約・加入履歴を調査し、過去5
年間で30 件以上の解約・新規契約を繰り返すなど、顧客に不利益を与えるおそれのある多数
契約の契約者が116 人存在することを把握し、同年10 月18 日に開催された社長会合では、顧客に不利益が生じているかなどを把握するために、当面、募集人のヒアリングを実施することを報告した(詳細は第 9 の 3(1)参照)。その後、かんぽ生命は、2017 年 1 月から、募集人に対するヒアリングを行い、さらに、同年5 月からは、過去5 年間の契約締結件数が30 件以上である契約者が新規申込を行った場合において、当該契約者に対する確認・調査を行うこととした。
56 保険契約者、被保険者、保険金、保険料、保険料払込期間などの契約内容が記載され、顧客が希望した契約内容と異なる時や契約を申し込んだ覚えがない場合にはかんぽ生命に対して連絡すべき旨が記載された書面のことをいう(前回報告書65 頁以下も参照)。
57 多数契約募集とは、同一人に対し、経済合理性の乏しい多数の保険契約を締結させる形態の募集活動をいう。
これらの多数契約に対する取組みは、その後の個別重篤事案の発生を受けた能動的調査及び深掘調査にもつながるものであることから、その検討状況、実施結果を含めて、別途後記第9 で詳述することとする。
(5) 募集品質向上に向けた取組み素案の作成とその対応状況
かんぽ生命では、2016 年 11 月中旬までには、募集管理統括部が、多数契約の実態に関する当面の調査方針案と、多数契約を含めた不適正募集の防止に向けた取組みとして、①渉外社員による解約手続の見直しを行うこと(コールセンターでの確認又は管理者による事後確認の導入)、②乗換判定期間を前12 か月・後12 か月に拡大すること、③転換制度の導入を検討すること、④事前面接の徹底及び事後面接の承認制を導入すること、⑤販売実績計上期間の見直しを行うこと、⑥短期失効・解約等が多い社員に対する個別指導を強化すること、⑦募集品質データに基づいた募集人指導を強化すること、表彰基準・選奨の見直しを検討すること、⑨多数契約者から新規契約の申込みがあった場合に、郵便局管理者から契約者・被保険者の双方に電話による意向確認を行うことにより説明責任を完遂すること、⑩多数契約者が申し込んだ契約についてかんぽ生命新契約部の新契約サービスセンター(以下「新契約 SC」という。)58で契約手続の処理を止める仕組みをシステム対応することにより導入すること、などを内容とする取組み素案を作成した。
この取組み素案は、かんぽ生命の社内及び日本郵便との調整可能性や実施可能性はさておいて、かんぽ生命内部で従来から議論され、不適正募集の防止の観点から効果があるのではないかと考えられてきた施策を総合的に盛り込んだものであった。
ここで作成された取組み素案の内容については、2016 年 12 月下旬に、募集管理統括部を所管する担当役員の A 副社長が交代したことに伴って、後任の B 常務取締役に引き継がれた。
しかしながら、かんぽ生命及び日本郵便は、この段階では、顧客に不利益を与える多数契約募集などの悪質な事案が、どのような規模や態様で行われているのかなど、その正確な実態については把握しておらず、あくまで少数の募集人が関与するにとどまっているものと考えていた。また、この素案は、かんぽ生命の社内及び日本郵便とのコンセンサスが得られていなかったこともあり、実施に向けた具体的な調整等はなされず、そのままの形では実施に至らなかった。
(6) 募集品質データに基づく募集人指導の開始
かんぽ生命では、2016 年11 月頃、募集品質指導専門役が、2015 年度に発覚した不祥事件
59(16 件)を発生させた募集人(16 人)の募集品質に関するデータを分析した結果、そのう
58 かんぽ生命による保険の引受けについては、かんぽ生命の新契約部が所管している。この新契約部は、仙台、東京、岐阜、京都、福岡に所在する①新契約SC と②かんぽ生命本社の企画部門から構成される。各地のSC(サービスセンター)は、郵政省時代の地方簡易保険局が改称された「簡易保険事務センター」を前身とし、郵政民営化後に「サービスセンター」と改称されたものである。各地SC において、事務、新契約、保険金等の所掌事務に対応し、事務SC、新契約SC、保険金契約SC 等が設置されている。
59 不適正募集に係るものに限る。
ち12 人について、①「締結前消滅の実績」、②「消滅と新規契約の繰り返し」及び③「苦情」の募集品質項目の数値が悪く、募集品質に関するデータ上、予兆が発生していたことが判明した。
そこで、かんぽ生命では、2016 年11 月30 日に開催されたパートナー会議(営業推進グループ)60において上記内容を報告し、以後、日本郵便との協議を経て、2017 年4 月以降、日本郵便において、募集品質データに基づく募集人指導を開始した。
もっとも、この段階では、かんぽ生命において、不適正募集は少数の募集人が引き起こす問題であるとの認識にとどまっていたため、募集品質データは、主として限定された対象募集人に対する指導のツールとして用いられていた。
3 評価
以上のとおり、かんぽ生命及び日本郵便は、2016 年8 月に金融庁からモニタリングを行う可能性がある旨の示唆があったことを契機として、高齢者募集、多数契約募集、乗換募集について、協議を経て、各種の取組みを実施した。また、かんぽ生命において作成された取組み素案において、不適正募集の防止に向けた包括的な施策が検討されたものの、これについては、かんぽ生命社内、さらに日本郵便におけるコンセンサスが得られたものでなかったため、実施に向けた具体的行動に移されることはなかった。
結局、金融庁からのモニタリングを行う可能性がある旨の示唆を受け、かんぽ生命と日本郵便では、郵便局での不適正募集が発見された場合の影響をも想定した危機感を共有していたにもかかわらず、その対策を検討する過程において、速やかに、募集実態について全体的な把握を行う必要があるとの発想を欠いたまま、かんぽ生命及び日本郵便において、実施可能な対策について検討し、合意するというプロセスを経て、各種施策が実施された。
この前提として、かんぽ生命と日本郵便の当時の経営陣が、不適正募集の実態について、少数の募集人が引き起こす例外事象であると認識していたことが挙げられる。
そのため、結果的に見れば、この時期の各種施策は、募集実態の把握を前提とした原因分析が行われないまま実施されたものという点で不十分であったと評価せざるを得ず、それゆえ不適正募集問題の抜本的な解決にはつながらなかった。
第 7 「かんぽ募集品質改善緊急対策本部」の設置及び「募集品質向上に向けた総合対策」の策定経緯等
1 「かんぽ募集品質改善緊急対策本部」の設置
かんぽ生命及び日本郵便では、2014 年10 月にいわゆる「不適正募集ゼロチャレンジ宣言」を行っていたにもかかわらず、前記第6 の2(2)のとおり、2015 年度以降、被保険者の加入年齢上限の引上げ等により高齢者苦情が増加しており、2016 年度に至っても、不祥事件が毎月のように発覚していた。
60 日本郵便及びかんぽ生命両社の営業部門と募集管理の役員及び実務担当者を構成員とし、営業推進状況及び不適正募集の防止に向けた取組みの進捗状況等について協議する会議であり、この会議での協議結果が社長会合において報告されていた。
これらの状況に対応するため、2016 年 12 月頃、かんぽ生命と日本郵便は、両社長の意向により、両社合同で、募集品質の向上を目的とする「かんぽ募集品質改善緊急対策本部」の設置を決定し、翌2017 年1 月11 日付けで同対策本部を設置した。
2 「かんぽ募集品質改善緊急対策本部」における取組み状況等
かんぽ募集品質改善緊急対策本部は、かんぽ生命と日本郵便の各社における募集品質を担当する役員(かんぽ生命においては募集管理統括部の担当役員、日本郵便においては金融業務部募集管理統括室の担当役員)を本部長とし、各社の募集管理部門、コンプライアンス部門及び営業推進部門の部長等を構成メンバーとしていた。
そして、同対策本部は、2017 年1 月以降、同年7 月までの間、計6 回の会合を開催した。同会合では、募集品質の向上に向けた取組みについて協議を重ね、各種の取組みについて決定した。これら協議事項及び決定事項については、社長会合等において、かんぽ生命及び日本郵便の各社長に報告された。
3 「募集品質向上に向けた総合対策」の策定経過等
(1) 募集品質データを活用した指導方法等
かんぽ生命では、前記第6 の2(6)のとおり、2016 年11 月30 日に開催されたパートナー会議(営業推進グループ)において、2015 年度の不祥事件を発生させた募集人について募集品質データに予兆が発生していた旨の報告がなされたことを機に、かんぽ募集品質改善緊急対策本部において、募集品質データに基づく募集人指導の方法について検討を始めた。
この時期の募集品質データは、主として個々の募集人に対する指導のためのツールであり、同対策本部においても、2017 年1 月以降、苦情が多発している郵便局の管理者に対する指導等についての検討を重ねていた。
他方、同対策本部は、達成を目指す募集品質に関する指標(KPI)として募集品質データを用いることについても検討を重ねており、2017 年1 月 24 日に開催された社長会合で、不祥事件件数と苦情件数を指標(KPI)として用いることにつき了承された。
(2) 総合対策における募集品質データを活用した募集品質管理
かんぽ生命では、2017 年6 月にxxxxに代わり、植平社長が就任した。かんぽ生命募集管理統括部は、その頃、①販売実績欲しさ等を動機とする不祥事件について金融庁に対して 15 件の届出を行ったこと、②募集態様に係る苦情は 2,861 件(うち高齢者苦情 2,180 件)発生したこと、③無効・合意解除は651 件発生したこと、④撤回等は10 万9,656 件、未入金解
除・1P 失解61は2 万7,249 件、料済・減額は5 万8,496 件、乗換は約36.6 万件発生したこと、などの 2016 年度末における募集品質に関する現状を示すデータを部内で算出した。その後の同年7 月4 日、かんぽ生命募集管理統括部は、植平社長に上記データの一部について報告を行ったところ、この報告を受けて、植平社長は、募集管理統括部に対して、募集品質向上は、経営上重要な課題であることから、募集品質の評価項目(KPI)について他社水準と比較
61 1P 失解とは、第1 回保険料の払込後、第2 回保険料の払込みがないまま、その保険契約が失効し(1P失効)、又は解約されること(1P 解約)をいう。
しながら目指すべき数値を設定し、募集品質向上のための取組みについて整理をするよう指示した。この社長指示以降、募集品質データに基づく推進管理が、総合対策における特徴的な手法となっていった。
この植平社長の指示を受けて、かんぽ生命と日本郵便は、総合対策の策定について、以下の協議等を行った。
すなわち、2017 年8 月7 日、かんぽ生命募集管理統括部は、2016 年度末におけるかんぽ生命の募集品質に関する現状を示す上記①から④までの全てのデータについて、いずれの指標も他社と比較して悪い数値であること62を、植平社長も出席する関係役員打合せにおいて説明した。
その後、同年 8 月 16 日、かんぽ生命及び日本郵便両社の募集管理部門担当者間の打合せにおいて、かんぽ生命募集管理統括部から日本郵便募集管理統括室に対し、上記の内容について説明がなされた。
さらに、その後の同年8 月24 日に開催された社長会合では、同月16 日の上記打合せの内容を踏まえ、募集態様に係る苦情が多いこと、締結前消滅・未入金解除が他社よりも多いこと、顧客のための制度である乗換・料済などを利用して、保障の提供といった保険本来の趣旨から外れる契約が行われているおそれがあるという実態に照らし、不適正募集が発生するリスクが増大していると考えられるため、顧客本位の業務運営の実現と会社(日本郵便・かんぽ生命)の収益性向上の観点から、かんぽ生命及び日本郵便の両社が協力して募集品質向上に向けた総合対策を進めていくことを合意した。
(3) 募集品質改善対策本部への改組及び施策の協議状況
緊急対策本部の設置期間は、当初、設置から当面の間とし、2017 年度第1 四半期終了後に KPI の進捗状況を確認の上、継続の可否を検討することとしていたが、緊急対策本部の設置以降も不祥事件が続発しているという状況を受けて、かんぽ生命及び日本郵便は、一時的・緊急的な体制整備としてではなく、募集品質の確保に向けた恒常的な体制整備の一環として、 2017 年10 月に、緊急対策本部を募集品質改善対策本部に改組した。
そして、募集品質に関する現況とその改善策については、2017 年 10 月 24 日から月次で、
「全国かんぽ募集品質改善対策本部会議」(以下「対策本部会議」という。)において、報告の上、協議することになった。
対策本部会議は、かんぽ生命と日本郵便の各社における募集管理部門及びコンプライアンス部門の担当役員等と営業推進部門の担当役員等を構成メンバーとし、月次の会議においては、①不祥事件件数、苦情件数、撤回等発生率、未入金解除等発生率、家族等同席率といった募集品質に関連するデータの推移の報告、②検討段階又は実施予定である取組みの内容等に関する報告、議論等がされていた。
62 具体的には、他の保険会社では、苦情の発生率が0.01%から0.14%であり、無効・合意解除はほとんど発生しておらず、撤回・被保険者不同意・面接期間経過の発生率は大半の会社で1%未満であり、未入金解除・1P 失解はほとんど発生していなかった。
(4) 選奨に当たっての募集品質の基準の見直し及び明確化
日本郵便xx社長から、遅くとも2017 年10 月頃までには、かんぽ生命に対し、募集品質が悪い社員は優績者としての選奨から除外するよう強い要請があった。これに対し、かんぽ生命植平社長も、上記の選奨基準の見直しにより、募集品質が悪いにもかかわらず不祥事件の判定がされず、募集活動を継続しているような募集人を選奨から除外することができ、また、選奨を目当てとして顧客に不利益を与える態様で募集をする募集人を大幅に減らすことができると考えた。そこで、かんぽ生命と日本郵便は、2017 年10 月25 日に開催されたパートナー会議及び同年10 月30 日に開催された社長会合での検討を経て、2018 年度におけるかんぽ営業最高優績等の選奨に当たり、募集品質に関する選奨基準を見直すこととした。
具体的には、選奨基準については、①保有率(3 年間)が80.0%超であること、②未入金解除等の発生率と撤回等発生率の合計が20.0%以下であること、③無効・合意解除の発生件数が2 件以下であること、④高齢者苦情の発生件数が4 件以下であることといった基準を追加することとした。
また、募集品質優良賞63の基準については、①保有率(1 年間)が 98.0%以上であること、
②保有率(3 年間)が 94.0%以上であること、③未入金解除発生率と撤回等発生率の合計が 4.0%未満であること、④無効・合意解除の発生件数が0 件であること、⑤乗換発生率が1.0%未満であることといった基準が定められた。
(5) 総合対策の実施に向けた方針の決定
かんぽ生命募集管理統括部は、2017 年12 月15 日、経営会議において、顧客本位の業務運営の実現に向け、既存の施策の強化(点検・調査対象の拡大、高齢者に対する意向確認の強化、無効・合意解除に対する指導の強化、募集品質カルテの導入)、及び評価体系等の見直し
(選奨基準の見直し、保有率による評価、乗換判定対象の拡大、営業推進管理の見直し)を内容とする「募集品質向上のための総合対策」を実施することについて、報告した。
その後、2017 年12 月27 日、かんぽ生命と日本郵便の社長会合で、総合対策を実施することにつき両社は最終的に合意するに至った。そして、総合対策の具体的な内容については、今後のパートナー会議(営業推進グループ)、対策本部会議等で更に協議することとされた。
(6) 合意解除事案を発生させたものの、不祥事件等の判定がなされていなかった募集人処分の在り方に関する検討状況
かんぽ生命と日本郵便は、総合対策の検討と並行し、不祥事件のような法令違反を防止するための施策を協議しただけでなく、不祥事件とは判定されなかったものの、顧客に不利益が生じている事案を生じさせた募集人の処分の在り方についても協議した。例えば、2017 年 12 月 27 日に開催されたかんぽ生命と日本郵便の社長会合では、被保険者を替えて解約と新規を繰り返している募集人の処分の在り方も議論された。その席で、日本郵便xx社長から、
63 2017 年4 月に、最高優績者の中から、特に募集品質が優れている社員を表彰することを目的に「募集品質優績」として設立され、その後、2017 年11 月に、「募集品質優良賞」に名称が変更されたものである。
不祥事件に該当しない合意解除事案を生じさせた募集人については、少なくとも2 回目以降は募集を行わせないようにできないかとの意見が示された。
上記のxx社長の意見に対し、植平社長は、不祥事件に該当しない限り、合意解除事案を発生させただけでは、募集人を処分できないこと、及び顧客と募集人の主張が食い違う場合は募集人が自認しない限り不祥事件等に該当する旨の判定がされず、募集人の責任を問う仕組みは不十分なものにとどまっている旨説明した。これは、かんぽ生命植平社長が、かんぽ生命の保険商品については募集人が保険代理店である日本郵便の社員であり、他の生命保険会社のように、自社の営業社員に募集を行わせる場合と比べて、募集人に対する厳しい調査や追及が困難であると考えていたためであった。
結局、上記の社長会合では、募集人に対する処分の在り方に関する議論については進展がなく、かんぽ生命募集管理部門担当執行役らからは、処分の厳格化ではなく、いわゆる「ヒホガエ」などを行う社員に対しては、今後の総合対策の一環として、指導や注意の対象とし、繰り返す場合は、評価に反映する仕組みを作るという方針が示された。
また、当時、かんぽ生命植平社長は、募集人が自認しないことにより不祥事件等に該当する旨の判定がされない合意解除等の事案の中には、顧客に重大な不利益が発生しており、募集態様に問題がある事案が含まれているのではないかと考えていた。
植平社長は、このように募集人が自認しないことにより不祥事件等に該当する旨の判定がされないものの顧客に重大な不利益が発生しているような事案については、募集人に対する処分という手段により不適正募集を排除することができなくとも、合意解除の対象とすることにより顧客救済が図られると考えていた。それと同時に、総合対策の実施によりこうした合意解除事案についても抑止され、数年内には件数が減少するものと見込んでいた。
このように、かんぽ生命では、不祥事件と判定されなかったものの合意解除事案等に含まれるような、顧客に重大な不利益が発生し募集態様に問題がある事案については、これを発生させた募集人に対する再発防止に向けた指導の徹底等、総合対策としての具体的施策の実施により対応が可能であると考えていた(後記第8 の1(4))。
4 評価
以上のとおり、2016 年 11 月 15 日に募集管理統括部から提示された当初の取組み素案は、その当時、スピード感を持って施策として検討及び実行されるには至らなかったが、かんぽ生命及び日本郵便では、それ以降も、募集品質の向上に向けて、緊急対策本部等における議論により合意に至った施策のうち、早期に着手可能なものから優先的に実施してきた。
また、かんぽ生命では、従前、募集実態を管理し、不適正募集防止施策の効果を検証するための有効な手段が存在しなかったところ、2017 年度以降、その手段として、募集品質カルテを用いた募集人への指導等の場面において、不祥事件、苦情、無効・合意解除、撤回等、未入金解除・1P 失解、料済・減額、乗換といった募集品質データを活用するようになった。
このような募集品質データに基づく品質管理の手法は、データ上異常値が認められる場合は、不適正募集の兆候や疑いを探知できる可能性があり、かつ、募集人に対しても不適正募集に対する牽制効果があったという点で、一定の効果は発揮したと認められる。
しかしながら、不適正募集の抜本的な解決を図るためには、本来、個々の募集人の話法を含めた募集の手法やこれまでに受けた苦情の内容等を始め、募集品質データには表れていな
い情報をも活用しながら、募集人からも事情を聴取するなどして、正確な募集実態を把握し、その上で、不適正募集の真因を分析し、これに対応する改善策を検討することが必要であった。
かんぽ生命及び日本郵便では、このような意味で、不適正募集の実態を把握することができていなかった。
また、総合対策の検討段階から既に、募集品質データ上問題があっても不祥事件とは判定されていない募集人に対して厳格な処分を行う必要性がある旨の意見が出されていた。しかし、募集人の自認が得られない限り、不祥事件と判定できず、処分もできないという従前からの慣行が存在し、また、2015 年中期経営計画で掲げた保有反転や営業目標の達成への影響も考慮する必要があったことなどから、かんぽ生命及び日本郵便は、募集人への指導や評価への反映等、既存の対策の延長や拡大により対処するという方針を維持した。
そのため、かんぽ生命及び日本郵便では、この時点で、不適正募集に対する抜本的な対策を講じるには至らなかった。
第8 総合対策の内容及び実施状況
1 総合対策の内容
かんぽ生命及び日本郵便は、2018 年1 月から、不適正募集の根絶、苦情リスクの低減、営業・業務効率の向上、契約維持を通じた保有契約の反転・成長といった形での募集品質の向上を目指して、総合対策(「募集品質向上に向けた総合対策」)を実施した。
総合対策における当初の施策は、概ね以下の8 つの項目から構成されていた。すなわち
A:点検・調査対象の拡大(下記(2)①)
B:高齢者に対する意向確認強化(下記(1)①②③) C:無効・合意解除に対する指導強化(下記(4)①) D:募集品質カルテの導入
E:選奨基準の見直し(前記第7 の3(4)) F:保有率による評価(下記(3)②) G:乗換判定対象の拡大(下記(3)⑤) H:営業推進管理の見直し(下記(4)②)であった。
その後、かんぽ生命は、日本郵便と共に、上記の各施策をxx拡大していったが、2018 年 1 月からの総合対策実施以降、不適正募集問題の発覚までに、総合対策の一環として実施された主要な施策を、高齢者募集、多数契約募集及び乗換募集に関する施策に分類すると、以下のとおりである。
(1) 高齢者募集に関する施策
かんぽ生命は、高齢者募集に関して、①保険契約者が満80 歳以上の高齢者であり、かつ被保険者が満 70 歳以上の高齢者である場合等における積極的な勧奨を停止すること(2019 年 4 月から)、②満 80 歳以上の高齢者に対する募集においては、契約申込み前の熟慮期間(シンキングタイム)を設け、募集人が契約内容を説明した日の翌日以降でなければ契約申込み
が受理されないシステムを導入すること(2019 年4 月から)、③満70 歳から満79 歳までの高齢者に対する募集において、管理者等が同行する方法及び管理者等から電話確認する方法を禁止すること(2019 年4 月から)、などの施策を総合対策として実施した。
(2) 多数契約募集に関する施策
かんぽ生命は、多数契約に関して、①過去5 年間で15 件以上の解約・新規契約を繰り返す契約者等からの新規契約申込みがあった場合における多数契約者に対する意向確認の対象を拡大すること(2018 年4 月から。後記第9 の3(3)で詳述)、②募集事前チェック機能64を導入すること(2019 年4 月から)、などの施策を総合対策として実施した。
(3) 乗換募集に関する施策
かんぽ生命は、乗換契約に関し、①解約の申込みに当たり「解約時ご留意事項確認書」65を交付すること(2018 年4 月から)、②保有率を日本郵便各支社の営業指標に設定すること(2018年4 月から)、③ありがとうコールによる契約後の顧客への架電の対象を、新規契約の契約日より前4 か月から6 か月の間で行われる既契約の解約等、又は新規契約の契約日の後7 か月から9 か月の間で行われる既契約の解約等を行った顧客に拡大すること(2018 年7 月から)、
④乗換判定対象を拡大すること(保険契約者又は被保険者のいずれかが同一である場合にも乗換契約と判定。2019 年4 月から)、⑤消滅率66(3 年間)を日本郵便各支社の営業指標に設定すること(2019 年4 月から)、⑥消滅率(3 年間)を募集人の選奨基準として設定すること
(2019 年4 月から)、⑦募集人に対して保有率を考慮して募集手当を支給すること(2019 年
4 月から)、などの施策を総合対策として実施した。
(4) その他の施策
かんぽ生命は、①無効・合意解除事案に関して、無効・合意解除を発生させた募集人への再発防止のための指導を徹底すること(2018 年 4 月から)、②募集人の販売実績計上のタイミングに関して、顧客からの申込受理時ではなく、それより後の面接観査や被保険者の同意完了時に販売実績を確定的に計上すること(2019 年 4 月から)、などの施策を総合対策として実施した。
2 かんぽ生命及び日本郵便における募集実態の把握の状況等(2018 年4 月まで)
2018 年1 月以降の月次の対策本部会議においても、総合対策で掲げた評価項目(苦情件数、不祥事件件数、無効・合意解除件数、撤回件数、未入金解除・1P 失解件数、料済・減額件数、乗換件数等)に着目して、それぞれの目標値(KPI)の達成状況の報告がされており、その達
64 募集事前チェック機能とは、不利益発生のおそれが類型的に高いと認められる一定の条件(顧客からの申出の内容から保険募集を控えるべきと判断される顧客、多数契約者、過去に無効・合意解除となった顧客)を満たす保険契約者からの新規契約の申込みに当たって、その申込みの受理前に、保障設計書及び申込書の作成手続を一時保留し、第三者(募集人の管理者又はかんぽ生命)の承認後に申込手続を再開するシステム機能をいう。
65 解約時ご留意事項確認書とは、解約請求時に不利益事項を顧客に理解してもらうために使用する書面をいう。
66 消滅率とは、成約後の保険契約が失効・解約等により消滅した割合をいう。
成状況如何により、総合対策による募集実態の改善の有無・程度が判断されていた。例えば、 その時々で報告される高齢者苦情の件数が会社が設定したKPI を達成したり、家族等同席率、締結前消滅や意向確認契約67の発生件数等が前月比や前年同期比で改善されたことをもって、高齢者募集対策を含めた不適正募集防止策が奏功していると判断されていた。この点につき、 2018 年1 月から4 月までの高齢者苦情の発生件数は、43 件(1 月)、45 件(2 月)、40 件(3 月)、48 件(4 月)と推移し、この期間における月間の高齢者苦情発生件数に関するKPI(79 件)を達成していた。また、この期間における家族等同席率は、62.7%(1 月)、63.9%(2 月)、 64.4%(3 月)、69.7%(4 月)と推移し、一貫して上昇傾向にあった。この期間における締結 前消滅の発生件数も、932 件(1 月)、927 件(2 月)、1,262 件(3 月)、140 件(4 月)と推移 しており、前年同期比68ではいずれの月も改善していた。さらに、この期間における意向確認 契約の発生件数は、2,403 件(1 月)、2,518 件(2 月)、2,484 件(3 月)、3,226 件(4 月)と推 移しており、前年同期比69ではいずれの月も改善していた。
そのほか、同対策本部会議では、高齢者苦情の概要(「書換え」という名目で被保険者を替える形で数年おきに契約に加入させているヒホガエ、税金対策を名目に意向に沿わない契約に加入させる相続話法等)や、そもそも加入の認識がないといった意向確認不十分による苦情が多いこと等が報告されていた。
このように、かんぽ生命及び日本郵便では、当時の募集実態及びその改善状況については、上記の募集品質に関する項目を切り口として把握していた。また、これらの募集品質項目には表れない高齢者募集における話法や手法、具体的な苦情の内容等については、どれだけの募集人が関与していたのか、その規模感については正確に把握できていなかったが、そのような話法・手法及び重大な内容の苦情が一定数存在すること自体は、上記の対策本部会議における報告を受けること等を通じて認識していた。
当時、かんぽ生命植平社長及び日本郵便xx社長も同様に、不適正募集の規模感について正確に把握できていなかったが、その理由は、モラルが欠ける募集人が大量には存在しないだろうと考えていたためであった。特に植平社長は、モラルが欠ける募集人により不適正募集が行われた事案において、実際には顧客に不利益が生じているにもかかわらず、顧客に対する意向確認において「契約内容は意向に沿っていた。」と回答がなされるほど顧客と募集人との関係が密接であるというのは、他の保険会社では通常想定されないことから、そのような事案は少数の稀なケースであると考えていた。
67 意向確認契約とは、過去における新規契約が、撤回、面接期間経過、被保険者不同意、短期失効、短期解約、料済、減額、未入金解除等のいずれかに該当していた場合に、当該新規契約と同一の契約者又は被保険者を契約関係者とする新規契約の申込みをいう。
68 2017 年の締結前消滅の発生件数は、2,069 件(1 月)、1,915 件(2 月)、2,707 件(3 月)、279 件(4 月)であった。
69 2017 年の意向確認契約の発生件数は、3,247 件(1 月)、3,869 件(2 月)、3,987 件(3 月)、3,421 件(4月)であった。
3 クローズアップ現代+(プラス)の放送を契機とする日本郵便による高齢者募集の停止の提案及びこれに対する日本郵政グループの対応状況等
(1) クローズアップ現代+(プラス)の放送
NHK は、2018 年4 月24 日夜、クローズアップ現代+(以下「クロ現プラス」という。)を放送したが、その番組内容は、大要、以下のとおりであった。
①高齢者に対して払込保険料総額が高額で当該額が保険金額を上回る保険に加入させていたこと、②高齢者募集に当たって高齢者の家族が同席を拒否したと書かせられた事案があったこと、③顧客から 4,000 件以上の苦情があり、また、そうした苦情の中には苦情から不適
正募集が発覚しないよう局長がその隠ぺいに関与した事案もあったこと、④7 年で17 件の不適正な契約に加入させた悪質な事案があったこと、⑤不適正募集の手法として、「緑の通帳が青に変わる」といった貯金と保険を誤認させるような説明、保険契約を短期(2 年)で解約し解約返戻金を保険料支払に充当することで新規契約に加入させるような募集、及び高齢者に対する強引な募集が行われていたこと、⑥営業目標の存在や上司からのプレッシャーによって、不適正募集をしてでも成績を挙げないといけないという現状があること等、不適正募集の一事例や現役郵便局社員の声が放送された。
(2) かんぽ生命及び日本郵便の対応
クロ現プラスの放送の翌日である2018 年4 月25 日、かんぽ生命植平社長及び日本郵便xx社長は、直ちに連名で、両社全従業員に対し、「『お客さま本位の営業の実践』について」と題する声明を出した。同声明は、高齢者顧客を中心に少なくない数の苦情が発生している旨の報道がされたこと、募集品質の向上については必要な対策を講じてきている最中であり、高齢者苦情の件数は減少していること、お客さま本位の営業を実践することで郵便局とかんぽ生命に対する信頼をこれまで以上に高めていくことなどを内容とするものであった。
当時、植平社長及びxx社長は、クロ現プラスの放送内容は、一部の募集人による、会社として既に把握して対応済みの事案であると考えており、また、この声明にも見受けられるように、不適正な高齢者募集等は、総合対策の対象に含まれており、総合対策を着実に実施していけば解消する問題であると考えていた。
クロ現プラス放送後、NHK のほか、新聞、週刊誌、経済雑誌等の多数のメディアが郵便局員による不適正募集に関する報道をし、また、金融庁も関心を抱き、かんぽ生命及び日本郵便にその実態や原因等の説明を求めるようになった。
(3) 日本郵便xx社長による高齢者募集停止の提案を契機とする日本郵政グループ内の検討経過等
ア 日本郵便による高齢者募集における不適正募集防止策の提言
クロ現プラスの放送日の2 日後の2018 年4 月26 日に社長会合が開催され、かんぽ生命か ら植平社長ら担当役員が、日本郵便からxx社長及び甲常務執行役員ら担当役員が出席した。日本郵便xx社長は、2016 年6 月の社長就任時から、かんぽ生命保険商品の募集方法につ いて高齢者への募集の在り方については、加入ニーズがあるかどうかが疑問であり、募集に当たって高齢者に不利益を被らせるおそれが高いことから、高齢者募集については抑制的に
行うべきと考えていた。また、2017 年1 月にかんぽ募集品質改善緊急対策本部の設置以降は、特に 80 歳以上の高齢者への募集について、募集を行うこと自体が不適正募集につながるのではないかとの問題意識のもと、積極勧奨を停止すべきであると考えていた。
そのため、xx社長は、クロ現プラスの放送を機に従来の高齢者募集の在り方を全面的に見直すことを意図して、上記の社長会合で、「80 歳以上の高齢者には販売しない、あるいは販売しても販売実績を計上しないこと、70 歳以上の高齢者については家族同席を必須とすること等、思い切った見直しが必要ではないか。」と発言し、高齢者募集について販売禁止、家族同席の必須化を内容とする対応策を提言した。
これらの対応策による営業推進への影響についても、日本郵便xx社長から、xxのカルチャーを変える必要があり、年度途中でも営業目標の水準を見直すことが必要であるとの意見が述べられた。
同社長会合での議論の結果、xx社長の上記提案に対して、かんぽ生命側で2018 年6 月の決算発表までに素案を作成した上、再度、かんぽ生命と日本郵便の両社で協議することとなった。
イ かんぽ生命と日本郵便との間の協議
2018 年5 月8 日、かんぽ生命募集管理統括部等担当のC 専務執行役、営業推進部担当のD専務執行役らと日本郵便の甲常務執行役員らとの間で、クロ現プラスの放送を受けた高齢者募集の在り方について打合せが行われた。同打合せでは、日本郵便からは80 歳以上の高齢者への保険販売は止めるべきである旨の意見が出される一方で、かんぽ生命のD 専務執行役らからは営業推進及び収益への影響の観点から消極的な意見が出され、両社の意見は一致しなかった。
ウ かんぽ生命営業企画部による代替案の検討
上記イの日本郵便との打合せを受けて、かんぽ生命では、2018 年 5 月10 日に植平社長、営業企画部及び募集管理統括部の間で打合せが行われた。植平社長は、経営判断として、募集品質の向上と収益確保の両立を図ることが必要と考えていた。
そこで、同打合せでは、かんぽ生命は、植平社長の意向を踏まえ、80 歳以上の高齢者への保険販売の停止については、かんぽ生命の業績に与える影響が大きいため、これを回避する方針に決めた。植平社長は、高齢者募集に関して、募集品質の向上と収益の確保を両立させた最適解を探るため、販売実績の低下と高齢者苦情の発生の双方を抑制できる代替案を検討するよう、営業企画部に指示した。その中には、青壮年層向けの営業推進についての施策も含まれていた。
営業企画部は、2018 年5 月中旬頃に、80 歳以上の高齢者への積極勧奨を停止した場合の営業推進への影響や、高齢者に代わる青壮年層への募集に関する取組み案等について、植平社長に説明を行った。営業企画部による取組み案の検討内容は、営業企画部から募集管理統括部にも報告されていた。
エ かんぽ生命と日本郵便の協議状況
その後、2018 年5 月29 日に、日本郵便とかんぽ生命の社長同士の打合せが行われた。 同打合せ以前の同月15 日に、日本郵政グループは、2018 年度から2020 年度までを対象期
間とする「日本郵政グループ中期経営計画2020」(以下「2018 年中期経営計画」という。)を発表した。2018 年中期経営計画では、「保有契約の反転・成長」に取り組むこと、及び「新たな顧客層の開拓」として未加入者・青壮年層を開拓することなどが基本方針・取組みとして示されていた。
かんぽ生命植平社長は、この 2018 年中期経営計画の着実な実施と適正募集の確保の双方の要請が満たされることを前提として、高齢者募集における対応策の内容を検討する必要があると考えていた。
そのため、上記打合せにおいて、かんぽ生命植平社長は、2018 年中期経営計画の実施への影響を最小化することを意図して、「売上の約 9%を占める 80 歳以上への募集を全て禁止する日本郵便の案を実施した場合は、2018 年中期経営計画で掲げる保有反転及び390 億円の年間営業目標を達成できず、24 億円の実績減少が見込まれるため、販売実績減少のインパクトを最小限とする案でまずは取り組みたい」旨の提案を行った。
これに対して、日本郵便xx社長は、80 歳以上の高齢者による契約締結は、正常な判断力で締結されたとは想像しがたいこと、募集管理が厳格な投資信託と同様に保険販売も厳しくすべきであることを理由に、従前同様、80 歳以上の高齢者への積極勧奨を無条件に停止する方針を維持した。
また、クロ現プラスの報道を契機とした不適正募集への対応については、かんぽ生命植平社長から、既存の総合対策の実施により対応可能であり、今後の総合対策でも保有率の概念を導入し、実績計上の方法も見直す予定である旨の発言がされていた。このように、かんぽ生命は、高齢者募集を含めた不適正募集については、基本的には、従前の総合対策及び今後実施予定の総合対策を実施することにより防止できるものと考えていた。
オ かんぽ生命営業企画部による代替案の策定と提示等
2018 年6 月、かんぽ生命営業企画部では、担当の執行役と協議しつつ、収益への影響について試算したところ、80 歳以上の契約者への積極勧奨を無条件に禁止した場合は約 24 億円の減収が見込まれること、このうち契約者が80 歳以上であっても被保険者が満70 歳以上の場合のみ積極勧奨停止とする場合は約7 億円の減収に収まることを把握した。
この試算をもとに、営業企画部は、80 歳以上の契約者への積極勧奨を無条件に禁止するのではなく、契約者が80 歳以上であっても被保険者が満70 歳未満の場合は、積極勧奨を禁止しない旨の代替案を作成した。この代替案の作成に当たって、植平社長は、販売実績の低下と高齢者苦情の発生の双方を抑制することを意図していた。その結果、この代替案には、契約者が80 歳以上であって被保険者が満70 歳未満のケースにおける苦情を抑制するために、高齢者側に契約締結前の熟慮期間(シンキングタイム)を確保する措置、及び契約者が満70
歳以上満79 歳以下の場合は、家族等同席、家族登録の取扱いを徹底する措置を導入することなどが盛り込まれることとなった。
カ かんぽ生命による代替案の提示と決定
2018 年6 月22 日、かんぽ生命植平社長と営業企画部は、80 歳以上の契約者への積極勧奨を無条件に禁止する日本郵便の案と、部分的にのみ禁止するかんぽ生命の代替案の両案を、日本郵政長門社長に説明し、かんぽ生命の案がその意向に沿っていることを確認した。
同年7 月4 日、かんぽ生命植平社長は、上記の日本郵政長門社長もかんぽ生命と同様の意向であることを日本郵便xx社長に伝えた。これに対し、同月19 日、日本郵便は、かんぽ生命案をベースに具体的な対策を検討したい旨回答した。
その後、同年7 月26 日に開催された社長会合において、かんぽ生命は、上記の代替案を日本郵便に提示したところ、結局この代替案の内容で、両社は合意に至った。
同日の社長会合では熟慮期間(シンキングタイム)を確保するための募集フロー等の取扱いが継続検討事項とされたところ、同年10 月22 日に開催されたパートナー会議では、80 歳以上の契約者からの申込みに対しては、同日に受理することができないようなシステム制御を実施することなどについて両社は合意し、これにより具体的な実施方法も含めて、かんぽ生命の代替案が採用されることとなった。こうして決定された取組みは、2019 年4 月から実施された。
4 評価
総合対策については、前回報告書第6 編第2 の1 で述べたように、「高齢者募集、多数契約及び乗換契約に係る各施策において、実効性が十分でない部分的な変更等を内容とするものにとどまっており、このことからは、不適正募集の撲滅という課題を実現するため、組織を挙げて取り組むという姿勢に欠け、問題を先送りしていたと評価せざるを得ない。」との指摘が妥当する(127 頁)。
総合対策は、2016 年度に判明した募集品質について改善の必要がある旨、かんぽ生命及び日本郵便間で共通の認識を有し、その後、募集品質を網羅的・包括的に改善すべく、指標化して進捗管理するというものであった。また、募集品質を指標化して管理することについては、営業推進管理と同種の手法により、KPI を掲げて、推進管理を行いながら進めていき、適宜、内容を充実させていった。当時においては、保有契約数の底打ち・反転に向けて、当然に求められる募集品質の底上げを図る上では、総合対策は一定の有効性があったことは否定できない。
しかしながら、総合対策の本質的な問題は、募集品質の向上のための施策であって、不適正募集の防止そのものを直接的な目的とするものではなかった点にある。
この点に関しては、前回報告書第6 編第2 の1 において、当委員会は、「本来であれば、個別の不適正募集事案の疑いに関する情報を探知した際、十分な事実調査が行われて原因を特定し、これに対応する改善策が検討されるべきである。しかしながら、かんぽ生命では、顧客からの苦情等への対応を含め、不適正募集の疑いのある情報に触れた際も、これを契機に真因を把握し、これに対応する改善策を検討し、xx的な解決を図るという姿勢に乏しく、個別的な対応に終始していた。すなわち、不祥事件の件数や高齢者の苦情の件数などの不適正募集の徴表となる指標を減らすことそれ自体が目的化されており、これまでの不適正募集防止に向けた施策は抜本的な解決に直結していなかった。」と指摘した(127 頁)。
また、総合対策の効果について、一部の指標が改善しているという傾向を見て、かんぽ生命及び日本郵便の経営陣は総合対策が奏功していると安易に判断してしまい、個別的な不適正募集事案の発生や募集態様に関わる苦情を受理したとしても、「総合対策により募集品質が向上しつつある中での特殊な事例」として理解する傾向に流れやすくなり、発生した不適正募集の個別事案を過少に評価するというリスク感度の低さにつながった側面も否定できないと思われる。
このことは、2018 年4 月下旬にクロ現プラスが放送された後も、グループ各社の役員の中には、一部の把握済みの例外的事案を一般化している偏向的な報道、という印象を受けた者が相当数存在したことに端的に表れている。
さらに、前記第8 の3 で述べたとおり、クロ現プラスの放送後、日本郵便xx社長の提案により、高齢者募集が有する不適正募集のリスクに鑑み、80 歳以上の高齢者に対するかんぽ生命保険商品の募集を積極的に行うことを差し控えるなど、不適正募集を抑止するための施策が検討されたが、最終的には、上場会社であるかんぽ生命として、中期経営計画で掲げた目標に与える影響も勘案しつつ、高齢者募集のリスクを低減する代替案を検討し、持株会社である日本郵政の長門社長らの意見も聞きながら、かんぽ生命及び日本郵便の両社で、現実的な対応策として妥結に至っている。すなわち、契約者が 80 歳以上であって被保険者が満 70 歳未満のケースにおける苦情を抑制するために、高齢者側に契約締結前の熟慮期間(シン
キングタイム)を確保する措置、及び契約者が満70 歳以上満79 歳以下の場合は、家族等同席、家族登録の取扱いを徹底する措置を導入することを盛り込んだ。これにより、高齢者募集のリスクを低減しつつ、業績に与える影響を可能な限り抑制した形で、2019 年4 月からこれら施策を現に実施している。
こうした対策は、かんぽ生命及び日本郵便が事業会社である以上、致し方のないところであり、その時点で不合理な判断であったとまでは言えない。
すなわち、当時、上記のとおり、かんぽ生命及び日本郵便において、郵便局における募集実態について正確に把握できていなかったため、両社の経営陣は、クロ現プラスで取り上げられた事例は既に把握済みの例外的な事象であり、総合対策の実施により、不適正募集を抑止することが可能であると考えていた。このようなかんぽ生命及び日本郵便の経営陣の認識に照らせば、クロ現プラスの放送を機に、不適正募集の実態把握のための取組みを行わないまま、高齢者募集の適正確保と業績に与える影響を抑制することの両立を図ろうとした経営判断について、合理性を欠くとまでは評価できない。
しかしながら、本来はクロ現プラスの放送後、この放送内容に表れていた高齢者募集や多数契約募集の問題について、日本郵政グループ一体として危機感を抱き、同様の事象が郵便局において広がっている可能性も想定しながら、まずは募集実態を正確に把握するために、相応の人員を投入するなどして、かんぽ生命と日本郵便が共同して、日本郵政にも適時に報告しながら、一定規模の調査を迅速に実施すべきであった。これがなされていれば、不適正募集の実態が早期に判明していた可能性があり、もう少し早い段階で、抜本的な解決方法を検討できていたかもしれない。
第9 多数契約募集への対応等
1 概要
第2 編第1 の1(2)「深掘調査」において記載したとおり、かんぽ生命では、2020 年2 月から「全契約調査」の更なる深掘調査の一環として、過去 5 年間で新規契約に 10 件以上加入
し、その3 割以上が消滅している契約形態を「多数契約」とし、優先順位の高いものからxx調査を開始している。
また、多数契約募集について、かんぽ生命が2019 年以前にも様々な取組みにより対策を講じてきたことは、既に前記第6 の2(4)や前記第8 の1(2)で触れたとおりである。
そこで、当委員会は、同一契約者につき、多数回にわたり消滅と新規契約締結を繰り返す形態の契約の募集を中心とする多数契約募集の問題に対し、これまでかんぽ生命が行ってきた対応について調査した。その結果、以下の事実が判明した。
2 2015 年度までの取組み
(1) 多数契約を受理した募集人への個別指導
かんぽ生命では、顧客からの苦情を契機として、2012 年1 月から3 月までの間、募集管理部において、同一の高齢者から10 件以上の契約を受理している募集人を抽出し、当時の郵便局株式会社の支社において、当該募集人に対する個別指導を実施した。
(2) 多数の契約を保有する顧客に対する調査
かんぽ生命では、2013 年度において、大量の作成契約という不適正募集が発覚したことを受け、類似の不適正募集が潜在していないかを確認することとした。その調査対象は、保有契約件数が20 件以上の契約者とされ、調査方針については、苦情やそれに伴う解約につながらないよう、段階的かつ慎重に対応することとされた。
その後、かんぽ生命では、まず、2014 年4 月から8 月までの間に、既に消滅している契約を含む保険契約が40 件以上ある契約者48 人に対し、かんぽ生命エリアコンプライアンス室
(前記第 2 編第 1 の 2(2)ア参照)の社員による調査を実施した結果、4 件の不祥事故が発覚したものの、作成契約の事案は認められなかった。
次に、かんぽ生命では、同年9 月から10 月までの間に、保有契約件数が28 件から39 件の契約者119 人を、同年12 月から2015 年2 月までの間に、保有契約件数が20 件から28 件の
契約者897 人をそれぞれ対象として、レター調査等を行った結果、いずれについても不祥事件及び不祥事故と判定される事案は認められなかった。
3 多数契約募集に対する取組みの変遷
(1) 多数契約募集の受理者に対するヒアリングの実施ア 検討状況
前記第6 の2 で述べたとおり、かんぽ生命では、2016 年8 月、金融庁から、平成26 年改正保険業法の履行状況等の把握のために、モニタリングの一環として郵便局へのヒアリングを行う可能性がある旨示唆された。これを受け、その頃、かんぽ生命のコンプライアンス統括部担当執行役であったA 副社長は、苦情申出がなく、かつ、不祥事件と判定されていない
事案であっても、高齢者を相手に高額の保険契約を募集し、乗換等で契約を消滅させているなどの悪質な事案につき実態の調査をしようと考えた。
そこで、かんぽ生命コンプライアンス統括部では、遅くとも2016 年10 月中旬までには、
2011 年6 月から2016 年5 月までの過去5 年間に30 件以上の失効・解約等による消滅と新規
契約締結を繰り返している形態の契約者116 人を抽出し、調査の実施方法等につき検討を始めた。
その上で、かんぽ生命のA 副社長は、2016 年10 月中旬、金融庁に対し、上記の多数契約について、受理者(募集人)に対するヒアリング(以下「受理者ヒアリング」という。)を実施し、実態の把握に努めるとともに、再発防止を図っていく旨報告した。
その後、A 副社長は、2016 年 11 月下旬、かんぽ生命xx社長及び日本郵便xx社長が出席する社長会合において、同一契約者を対象として、過去 5 年間に 30 件以上の消滅と新規契約締結を繰り返す契約を受理した募集人を対象に、受理者ヒアリングを実施する予定であることを報告し、両社長の了承を得た。
かんぽ生命では、改めて、2011 年10 月から2016 年9 月までの過去5 年間に30 件以上の消滅と新規契約締結を繰り返している契約者112 人(受理者295 人)を抽出し直した。
イ 実施結果
かんぽ生命では、2016 年12 月下旬にコンプライアンス統括部担当執行役がA 副社長から B 常務執行役に交代し、受理者ヒアリングは、B 常務執行役の下、2017 年1 月から同年3 月までの間に、エリアコンプライアンス室社員により実施された。調査方法については、まず受理者に対してヒアリングを行い、その結果、不適正募集の疑いが認められる場合は、契約者に対してもヒアリングを行う方法で実施された。
その結果、上記112 件(受理者295 人)のうち、3 件(受理者3 人)のみ不祥事故と判定された。
(2) 多数契約者に対する意向確認の実施
上記のとおり、3件の不祥事故が発覚したことを受け、かんぽ生命では、2017年5月からは、 多数の契約に加入している契約者に対して、新契約の申込み時における意向確認を実施した。これは、2012年4月から2017年3月までの過去5年間の契約締結件数が30件以上の契約者146
人から、新たに契約の申込みがあった場合に、新契約SC(前記第6の2(5)参照)の引受審査を一時中断し、エリアコンプライアンス室社員が、当該契約者に対し、新規契約に係る保険種類、保険金、月額保険料等の内容について認識しているかどうかなどについて、対面で聴き取りを行うというものであった。
なお、受理者ヒアリングは、過去に締結された契約を対象として顧客の救済を目的とする取組みであるのに対し、上記意向確認は、上記146人の契約者から新たに契約の申込みを受理した場合に、当該契約者に新たな不利益が生じることを防止する目的のものであった。
かんぽ生命では、2017年度末までに、52件につき上記意向確認を実施した結果、不祥事件が1件発覚し、4件が撤回処理となった。
(3) 多数契約者に対する意向確認の拡大
かんぽ生命では、2018 年 4 月から、総合対策の一環として、上記意向確認の対象範囲を、過去 5 年間の契約締結件数が 15 件以上あり、既契約に消滅契約が複数件ある契約者(対象約3,000 人)等70にまで拡大した。
また、従来確認を担当していたエリアコンプライアンス室では、業務及び人員の点で、拡大後の確認に対応できないこと、及び既に 2017 年 5 月からの取組みによって確認の手法が確立したことから、拡大後の確認は、かんぽサービスアシスタント(以下「かんぽSA」という。)71が実施することとされた。
その後、2018 年度末までの意向確認の結果、2,268 件の確認が完了したところ、3 件が無効取消処理となったものの、不祥事件及び不祥事故となる事案は発覚しなかった。
(4) 多数契約募集に関するかんぽ生命内での課題認識
かんぽ生命では、遅くとも2018 年7 月頃から、新規契約の申込みや苦情の申出などの契約者の行為を待つことなく、より能動的に調査を行う必要性が認識されるようになった。
例えば、2018年7月に開催された緊急案件対応部会72において、部会長であるお客さまサービス統括部長は、苦情がなければ調査にかからないという現在の仕組みについて再検討の必要がある旨発言した。
また、同年8月に開催されたお客さまサービス推進役員連絡部会73において、部会長たるC専務執行役は、多数回にわたり解約と新規契約締結を繰り返すことによって、顧客に重大な不利益を生じさせた募集人について、顧客からの申出がなくても、他にも同様の行為をしていないか積極的・能動的に調査し、顧客の不利益の回復を図る必要がある旨発言した。
4 多数契約募集に係る不祥事件判定
かんぽ生命では、2018 年6 月、ある郵便局の募集人について、苦情を受理し、調査を実施したところ、当該募集人の勧奨により、同一の契約者に対して62 件の契約を締結させていたことが判明した。
70 拡大後の確認対象は、①既契約(払込満了契約は除く)の合計払込保険料月20 万円以上で既契約に消滅契約が複数件ある、満70 歳以上の契約者からの新規契約、②払込保険料10 万円以上(締結した週ごとで合算)で払込方法が窓口払の満70 歳以上の契約者からの新規契約、③過去5 年間の契約申込件数が15 件以上あり、既契約に消滅契約が複数件ある契約者からの新規契約、④契約者貸付と新規契約申込の時期が近接している契約の消滅(満期・死亡を除く)後、同一契約者から消滅後1年以内に受理された新規契約とされた。
71 かんぽSA は、かんぽ生命の各支店に在籍し、本社の募集管理統括部、コンプライアンス統括部、かんぽ生命の各エリア本部に所属するエリアコンプライアンス部などからの調査依頼を受けて、点検・調査業務を担当している。通常は、保険募集業務に従事した人が、退職後の再雇用により従事している例が多い。
72 緊急案件対応部会とは、顧客からの苦情について、迅速かつ柔軟な解決策を、関係部署の協議により図ることを目的として、2010 年10 月に設置された会議体である。部会長はお客さまサービス統括部長が務め、新契約部、お客さま相談室、コンプライアンス統括部、募集管理統括部等関係部署の担当者及び社外弁護士が出席する。
73 お客さまサービス推進役員連絡部会とは、顧客からの苦情のうち、特に経営に重大な影響を与える可能性のあるものに対し、迅速かつ確実な対応策を協議することを目的として、2008 年に設置された会議体であり、お客さまサービス統括部担当執行役が部会長を務める。
この募集人が募集した他の契約者に係る契約は、前記3(1)の受理者ヒアリングや、前記3(2)の意向確認の対象となっていたにもかかわらず、いずれにおいても、不祥事件及び不祥事故のいずれにも該当しないと判定された。
かんぽ生命では、この事案につき、同年8 月下旬、募集人調査を実施した。
当初、当該募集人は適正募集であると主張し、不適正募集であることを自認しなかったが、同年9 月下旬、再度の調査が実施されたところ、当該募集人は不適正募集を自認するに至った。
そこで、かんぽ生命では、同月下旬、不祥事件と判定し、同年10 月下旬、金融庁に対する不祥事件届出を行った。
5 新規と消滅を繰り返す事案に対する取組み
かんぽ生命募集管理統括部では、上記事案を受けて、二つの側面から改善策を立案した。すなわち、契約者に新たな不利益が生じることを防止するための契約者意向確認の強化と、過去に遡って多数契約募集の実態を把握するための能動調査(前記第4 編第1 参照)である。
(1) 契約者意向確認の強化
かんぽ生命募集管理統括部では、上記事案の発生を受け、2018年11月中旬、2013年から2017年までの過去5年間に15件以上の契約が締結され、その半数以上が消滅しており、かつ、年間払込保険料額が600万円以上の契約者42人に係る契約を「経済合理性がない可能性が高い契約」と位置づけ、当該契約者から新たに契約の申込みがあった場合には、2019年4月に導入が予定されていた募集事前チェック機能(前記第8の1(2)参照)により、いったん保障設計書及び申込書を作成できないようにし、申込みの受理前に契約者の意向を確認することとした。また、締結した契約の半数以上が消滅しており、かつ、年間払込保険料額が高額となって いる契約については、保険料負担に必要な収入・資産など機微にわたる情報の確認を要するため、上記意向確認の際には、家族同席を求めるなど、前記3(3)の確認よりも更に慎重な確認
方法をとることとされた。
かんぽ生命では、2019年4月以降、募集事前チェック機能の運用を開始し、当該42件に係る契約者から新たに契約の申込みがあれば、上記方法により契約者の意向を確認する取扱いを実施している。
(2) 多数契約募集に関する能動調査ア 検討状況
かんぽ生命募集管理統括部では、2018年10月頃、上記事案の再発防止策として、より能動的な調査について検討を開始した。すなわち、上記42人の契約者に係る事案(受理者104人)については、当該契約者が新規契約申込みをせず、かつ、苦情を申し出ていなくても、かんぽ生命の方から契約者調査及び募集人調査を実施することとし(能動調査)、同年12月上旬、具体的調査方法等を検討するため、社員3人からなる特命チームを編成した。
募集管理統括部では、それまでの調査等の中で、多数契約募集事案では、往々にして募集人が契約者との間で親密な関係を構築しており、この関係性を利用して、かんぽ生命による
契約者に対する意向確認等の際に、契約者に依頼して意向どおりに加入した旨回答させるなどの事前対策を講じる場合があることを把握していた。
そこで、募集管理統括部では、このような募集人の行為を防止するため、事前に電話による面談予約を行うことなく、契約者の自宅を訪問した上で、契約者に調査の必要があることを対面で丁寧に説明し、さらに、家族同席を得て、契約者の意向を確認するという調査方法を検討した。
イ 実施状況
能動調査は、2019年1月から開始された。
かんぽ生命募集管理統括部では、募集人による上記事前対策を防止して契約者の真の意向を把握し得る調査方法を確立するため、同年2月から、上記42人の契約者のうち4人を対象として、試行的に調査を実施した。試行実施をした4件のうちの1件については、上記特命チームが、事前に電話による面談予約を行うことなく、契約者の自宅を訪問する方法により調査を行ったところ、当該契約者は契約の合意解除を希望した。なお、試行実施を行った4件のうち、事前に電話による面談予約を行おうとしたものについては、契約者から訪問を拒否された。
このように、苦情を申し出ていない契約者に対し、面談予約なしに訪問した上に、当該契約が契約者にとって不利益なものであることを説明する調査方法は、事前の入念な準備と高い調査能力を要するものであった。
募集管理統括部では、当初、2019年3月末までに能動調査を完了することを目指していたが、顧客の契約の加入と消滅状況が確認できる一覧表の作成や、上記の試行実施などに時間がかかったため、それまでに調査を終えることは断念せざるを得なかった。
また、上記のように、能動調査は高い調査能力を要するものであったことから、募集管理統括部は、実務経験の豊かな人材が多い募集品質指導専門役74等に能動調査を実施させることとし、2019年5月、募集品質指導専門役の会議において、能動調査の実施方法を説明した。
募集管理統括部では、2019年5月頃、既に全契約が消滅している契約者であっても、多数契約募集によって不利益を受けている可能性があり、その実態を把握する必要があるとの観点から、過去5年間の契約者の中で、契約件数が最も多かった54人のうち、それまで能動調査の対象となっておらず、かつ、早期の救済が求められる高齢者に係る6事案(受理者13人)についても、能動調査の対象とした。これにより、能動調査の対象事案は48事案(受理者116人75)となった。
能動調査の本格的な実施は2019年6月から開始され、募集品質指導専門役等76による契約者調査の結果、2020年2月29日現在、48事案のうち44事案について合意解除等により処理することが決定された。
また、募集人調査を経て行われた不祥事件等判定の結果、2020年2月29日現在、48事案のうち41事案(受理者116人中71人に対応する。)について、不祥事件と判定され、金融庁に対し、
74 前記第5 編第2 の1(3)イ参照。
75 42 事案の受理者104 人と、追加された6 事案の受理者13 人のうち、重複する受理者が1 人いた。
76 内訳は、かんぽ生命募集品質指導専門役21 人、エリアコンプライアンス室社員26 人を含む約70 人である。
36件77の届出がなされた。この結果については、既に前記第4編第1において分析したとおりである。なお、48事案のうち、金融庁に対する届出が完了していない7事案についても、調査が続行しており、今後も届出の件数は増加する見通しである。
6 深掘調査
前記第2編第1の1(2)ア記載のとおり、かんぽ生命では、2020年2月から、全契約調査の更なる深掘調査として、多数回にわたり消滅と新規契約を繰り返している契約者につき、かんぽ生命支店社員が契約内容の確認を行う取組みを行っている。
7 評価
消滅と新規契約締結を繰り返す形態の契約の募集は、支払済み保険料の総額と解約返戻金の総額に無用な差額が発生するなど、経済合理性を欠き、契約者に不利益を与える蓋然性が高い悪質な募集態様である。
このような多数契約募集については、一般的に、募集人が契約者との間で親密な関係を構 築しており、この関係性を利用して、かんぽ生命による契約者に対する意向確認等の際に、 契約者に依頼して意向どおりに加入した旨回答させるなどの事前対策を講じる場合があった。そのため、かんぽ生命が、通常の意向確認の方法によって、契約者の真の意向を把握するこ とは困難であった。
また、当時のかんぽ生命における契約者情報を管理するシステムでは、顧客の契約の加入や消滅の全体像を把握することができなかったため、この把握は手作業で行われるなど、手間を要していた。そして、上記のように、かんぽ生命による意向確認において、顧客が募集態様について不満等を表明することは稀であり、かつ、募集人が問題のある募集態様について通常、自認することはなかったため、募集人調査を通じて、不祥事件等に該当する旨の判定が行われていなかった。
かんぽ生命は、2017年1月から実施した受理者ヒアリング、同年5月に開始した多数契約者に対する意向確認の実施とその拡大、2019年4月に開始した、募集事前チェック機能を用いた契約者意向確認の強化、同年1月から実施した「能動調査」を通じて、上記のような多数契約募集の実態把握に努めてきたものの、現時点ですら、正確な実態把握には至っていない。
かんぽ生命において、多数契約募集の実態解明のために試行錯誤を繰り返してきたことが、今般の深掘調査における調査手法につながっており、この意味で、これまでの取組みの成果を否定するものでない。
しかし、かんぽ生命募集管理統括部では、遅くとも受理者ヒアリングの検討を開始した2016年10月頃までには、消滅と新規契約締結を繰り返す形態の契約の募集は、経済合理性を欠き、契約者に不利益を与える蓋然性が高い悪質な募集態様であることを認識していたのであるから、もっと早期に、より充実した調査態勢を構築して対応するという方針を示し、日本郵便と協力して、徹底的な調査を行うなどの対応を講じるべきであった。
77 不祥事件の届出は、原則として受理者単位で行われるが、例外的に、複数の受理者が同じ事案に関与している場合には、1 件として届け出られる取扱いが行われていた。能動調査に係る事案では、最大4人の受理者につき1 件の届出によって対応されていた。
2016年10月から3年以上が経過した現時点においても、かんぽ生命がいまだに正確な実態把握にまで至っていない点からすれば、上記のような多数契約募集調査の困難さを考慮したとしても、やはり対応にスピード感を欠いており、多数契約募集の問題を抜本的に解決しようとする熱意や姿勢が不十分であったと言わざるを得ない。
第10 金融庁から報告徴求78を受けるまでの経緯
かんぽ生命は、総合対策の実施以降、金融庁参事官室(前記第6 の1 参照)から、募集品質向上施策等についてヒアリングを受けていたところ、2018 年 11 月頃からは、過去の乗換契約についてヒアリングを受け、データ提供の要請等を受けるようになった。それ以降の事実経過は以下のとおりである。
1 経済合理性に疑問のある乗換契約(特定事案の C 類型に相当)について、顧客の意向を確認するための「サンプル調査」を実施した状況
(1) 金融庁参事官室から経済合理性に疑問のある乗換契約の存在について指摘された状況等
かんぽ生命募集管理統括部担当のC 専務執行役らは、金融庁参事官室からの説明要請を受け、2018 年 11 月上旬、日本郵便金融営業部担当執行役員らと共に、金融庁参事官室責任者らと面談し、総合対策の進捗状況及び 2019 年 4 月以降に実施予定の募集品質向上に向けた
78 金融庁は、保険業法 128 条 1 項に基づき、保険会社の業務の健全かつ適切な運営を確保し、保険契約者等の保護を図るため必要があると認めるときは、保険会社に対し、その業務又は財産の状況に関し報告又は資料の提出を求めることができる。同規定に基づく報告等の徴求を報告徴求という。報告徴求は、マネーロンダリングやテロ資金供与対策の実施状況や証券貸借取引に係るデータについてなど、金融庁が、保険会社に対して正式な情報の提供を求める手段として使用される場合がある。
一方で、金融庁が公表する「保険会社向けの総合的な監督指針」によれば、監督部局が行う主要な不利益処分(行政手続法2 条4 号所定の「不利益処分」)としては、①保険業法132 条に基づく業務改善
命令、②同法132 条に基づく業務停止命令、③同法133 条に基づく業務停止命令、④同法133 条に基づ
く免許取消し等があるが、これらの発動に関する基本的な事務の流れ」の例示として、まず、同法128条に基づく報告徴求が挙げられ、「①オンサイトの立入検査や、オフサイト・モニタリング(ヒアリング、不祥事件届出書など)を通じて、保険会社のリスク管理態勢、法令等順守態勢、経営管理(ガバナンス)態勢等に問題があると認められる場合」には、同法128 条に基づき、①「当該事項についての事実認識、発生原因分析、改善・対応策その他必要と認められる事項について、報告を求める」こととされ、②「報告を検証した結果、さらに精査する必要があると認められる場合においては、同法第128 条
に基づき、追加報告を求めることとする。」とされている。次に、同法128 条に基づき報告された改善・対応策のフォローアップとして、①「報告を検証した結果、業務の健全性・適切性の観点から重大な問題が発生しておらず、かつ、保険会社の自主的な改善への取組みを求めることが可能な場合においては、任意のヒアリング等を通じて…報告された改善・対応策のフォローアップを行うこととする」とされ、
②「必要があれば、法第128 条に基づき、定期的なフォローアップ報告を求める。」とされている。以上につきxxxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxx/xxx/xxxxx/xxx/00x.xxxx 参照。
改善策の準備状況79について説明した。その際、上記責任者から、かんぽ生命における乗換契約発生状況の評価に資するデータ分析を要請された。
そこで、かんぽ生命では、上記のデータ分析を行った上、2018 年 11 月中旬、募集管理統括部長らが金融庁担当者らに対し、乗換契約(転換類似)80の商品種類構成別の割合等について説明した。具体的には、かんぽ生命が2017 年10 月に販売を開始した新たな医療特約である「その日からプラス」及び「長寿支援保険」(以下、併せて「2017 年 10 月新商品」という。)の販売開始前後81で、乗換契約(転換類似)の件数のうち、同じ保険種類の乗換契約(転換類似)82が占める割合は、2017 年 10 月新商品販売開始前83は約 48%であったのに対し、 2017 年10 月新商品販売開始後84は約66%に増加していることなどを説明した。
これに関し、金融庁担当者からは、乗換契約(転換類似)の件数につき、顧客にメリットがないと考えられる商品の販売件数が多すぎる上、募集人本位の募集行為という意識が募集人にあると思われる旨の指摘を受け、経済合理性が認められない乗換契約について 2017 年
10 月新商品販売開始前後で傾向の変化等を分析するよう要請された。
これを受け、かんぽ生命募集管理統括部長は、2018 年 11 月末頃、植平社長及び関係役員の打合せにおいて、上記の金融庁参事官室の指摘等を報告した。
(2) 金融庁参事官室の要請に基づくサンプル調査の実施状況等ア 概要
かんぽ生命募集管理統括部長らは、2018 年12 月上旬、金融庁担当者らと面談した際、2017年10 月新商品販売開始後である2018 年7 月の乗換契約(転換類似)のうち約64%が保障性を高める内容の乗換契約と考えられる旨を説明した。これに対し、上記金融庁担当者からは、同一商品xxの乗換契約(転換類似)を含む残り約36%の契約の中からサンプルを抽出した上で、各契約者の加入意向を質問して確認する調査(以下「サンプル調査」という。)を実施するよう要請された。
これを受け、かんぽ生命は、2019 年1 月中に、金融庁担当者と協議し、サンプル調査に関し、大要、以下のとおりの対象及び方法で実施することとし、同年3 月中に調査結果の報告を行うことについて金融庁参事官室の了承を得た。
79 選奨基準の見直し(2018 年度から追加された募集品質基準項目に、3 年間保有率、無効・合意解除発生件数、未入金解除発生件数・撤回等発生率及び高齢者苦情発生件数を追加すること)、各募集人等への営業指標に対する保有率の導入の検討、乗換判定対象の拡大の検討等である。
80 当時の乗換契約(転換類似)は、既契約の解約を伴う新規契約への加入(乗換契約)のうち、①乗換契約と判定される一定の期間(「乗換判定期間」)の範囲内における乗換契約であること、②既契約と新規契約について、保険契約者と被保険者の双方が同一の者であること、③既契約と新規契約の内容を比較する書面(新旧比較表)を用いて、新旧契約の比較説明をすること、等の条件を満たすものであった。詳細については、前回報告書47 頁以下参照。
81 2017 年10 月新商品の販売開始以降、かんぽ生命においては乗換契約の件数が増加していた(前回報告書60 頁、70 頁参照)。
82 解約された契約の保険種類と新契約の保険種類がそれぞれ養老保険同士、終身保険同士及び学資保険同士というように同種である場合を指す。
83 対象期間は2017 年4 月から同年9 月までである。
84 対象期間は2017 年10 月から2018 年7 月までである。
イ サンプル調査の対象
サンプル調査の対象は、2018 年11 月中85に顧客から新規申込を受理した契約のうち、①終身保険から終身保険に乗り換えた契約(契約種類が同一のもの。ただし、「定額終身」以外は、払込済年齢も同一の契約)、②終身保険から養老保険に乗り換えた契約(ただし、払込済年齢が同一の契約)、③学資保険から学資保険に乗り換えた契約、のいずれかに該当する乗換契約
(転換類似)3,477 件86のうち、次の(ア)から(ウ)のいずれかに該当する422 件87(ただし、③学資保険から学資保険は(ア)から(ウ)に該当しないものを含む。)であった。
(ア)特約に関して以下のいずれかに該当するもの88
(a)既契約を維持したまま特約の切替が可能であったにもかかわらず、特約が付加された既契約を解約して、特約が付加された新規契約に乗り換えられたもの
(b)既契約は中途で特約を付加することが可能であったにもかかわらず、特約が付加されていない既契約を解約して、特約が付加された新規契約に乗り換えられたもの
(c)既契約は特約のみを解約することが可能であったにもかかわらず、特約が付加された既契約を解約して、特約が付加されていない新規契約に乗り換えられたもの
(d)既契約は特約が付加されていないにもかかわらず、既契約を解約して、特約が付加されていない新規契約に乗り換えられたもの
(イ)保険金額が乗換前後で同一金額となっているもの89
(ウ)払込保険料について、新規契約の保険料を前納しているもの(既契約の解約返戻金と同額相当のもの)90
かんぽ生命は、従前から、乗換契約件数が多いという金融庁参事官室の指摘に対して、他の生命保険会社が有している転換制度等がなく、乗換契約(転換類似)によらざるを得ないという特殊性に加え、顧客には、保障を高めたいというニーズ、保険料を下げたいというニーズ、あるいは一時的に資金が必要といったニーズがあり、通常、こうしたニーズに対応す
85 サンプル調査の対象が、2018 年11 月中に新規申込を受理した乗換契約とされたのは、調査開始時期から申込日が近い契約の方が、顧客の記憶が比較的鮮明であり、意向確認に適している旨をかんぽ生命が提案し、金融庁参事官室が了承したためであった。
86 2018 年11 月中に新規申込を受理した契約のうち、乗換契約(転換類似)に該当するのは新契約申込件数約16 万件中約2 万件であり、そのうち、同じ保険種類xxの乗換により、外形上保障性が増加していると考えることができない類型に該当する5,776 件中、既に調査歴があるものとかんぽ生命が認めた1,076 件を除いた4,700 件が母数である。当該4,700 件中、①が2,927 件、②が475 件、③が75 件で、その合計が3,477 件であった。なお、養老保険を解約して、新しい養老保険に乗り換える乗換契約(転換類似)が1,223 件存在したものの、当該類型については、顧客影響の大きい類型の調査を優先し、金融庁参事官室の了承の下、サンプル調査の対象から除外された。
87 乗換を前提として、かんぽ生命が新規申込を受理した契約(転換類似)のうち、乗換前契約の消滅事由が解約で、その解約が新契約の申込みと同時又はその前とするものであって、乗換時の新旧契約が1件対1 件のものが抽出対象となった。これは、例えば一つの契約を解約して、二つ新契約に加入する場合などは、以上の条件に該当するか明確に判断できず、分析が困難になることを避けるためであった。
88 (ア)の (a)ないし(d)は、いずれも、顧客において、保障性を高めるため特約を付加したいとのニーズや保険料額を減らすために特約を解約したいとニーズがあったとしても、経済合理性の観点から、旧契約を解約し、新契約に乗り換える合理性に疑問を生じさせる類型であった。
89 (イ)は、保険金額を減額したいという顧客の意向による乗換契約であることに疑問を生じさせる類型であった。
90 (ウ)は、旧契約を解約して乗り換えた理由について、顧客の資金ニーズが理由であることに疑問を生じさせる類型であった。
るために乗換契約(転換類似)が行われており、顧客の意向に沿ったものである旨の説明を行っていた。
そのため、かんぽ生命は、金融庁参事官室の意向により設定された基準に従って抽出された乗換契約(転換類似)を対象としたサンプル調査を実施することで、金融庁参事官室によってかんぽ生命の上記説明内容が検証されるものと考えていた91。
ウ サンプル調査の実施方法
サンプル調査は、かんぽ生命の各支店に所属しているかんぽ SA が、対象の顧客を訪問又は電話をかける方法で、「カスタマー確認表」92と題する質問表に基づき顧客の加入認識について質問する方法により行われた。
かんぽSA は、サンプル調査の際、所定の質問項目について契約者に質問し、それへの回答を聴き取って「カスタマー確認表」に記載した。
このサンプル調査は、かんぽ生命の募集管理統括部の依頼に基づき、かんぽSA(前記第9
の 3(3)参照)合計約230 人により、2019 年 1 月下旬から同年2 月中旬にかけて実施された。
(3) サンプル調査結果の金融庁参事官室に対する報告状況
かんぽ生命では、2019 年3 月 20 日、募集管理統括部長らが金融庁担当者らに対し、サンプル調査結果の最終的な報告を行った。
すなわち、サンプル調査を実施した422 件中、不在により連絡が取れないなどの理由によ
り顧客の意向が確認できなかった114 件を除いた308 件につき、①全ての顧客が新たに締結した保険契約の保険種類等を認識していた旨回答したこと、②「ご留意事項」について、説明を受けたかどうか分からないという回答が1 件あったものの、残り307 件は説明を受けた旨の回答であったこと、③既契約を解約した理由について、267 件(約87%)が自らの意思による旨の回答していること等93を報告した。
91 上記(ア)ないし(ウ)のいずれかの類型に該当する乗換契約(転換類似)のうち、かんぽ生命顧客の新規契約申込時に実施される「ありがとうコール」(契約成立後に顧客に架電して契約内容の確認等を行うサービス)や書面による「お申込内容確認のご案内」(いわゆる「高齢者レター」)の送付等により、顧客の意向に沿う契約であったことを確認済みの契約や、顧客から苦情を受領した契約など、かんぽ生命において既に意向を把握済みと認めた契約については、金融庁参事官室の了承を得て、調査対象から除外された。また、かんぽ生命において、1 件の調査対象契約について、調査を実施する部署への連絡漏れにより、調査が実施されなかったことが、当委員会による追加調査中に判明した。
92 「カスタマー確認表」の内容についても、かんぽ生命は調査開始前に金融庁参事官室との協議を経て、その了承を得ていた。
93 以上のほか、「ご留意事項」の各項目に対する顧客の認識については、「ご留意事項」の説明を受けたと回答した②の307 件のうち、「ご留意事項」に記載された全8 項目中、「新たなご契約は、保険金の免責事由などが異なる場合があります」という項目について自分が新たに申し込んだ契約が該当しているか「分からない」とする契約者が1 件、「現在のご契約と新たなご契約の予定利率が異なる場合があります。」という項目について自分が新たに申し込んだ契約が該当しているか「分からない」とする契約者が1 件それぞれあったことを除き、その他の全ての項目について、全ての契約者が、自分が新たに申し込んだ保険契約に「ご留意事項」の記載が当てはまることを「認識している」との回答した旨の調査結果であった。
他方、サンプル調査の結果に基づき、乗換契約(転換類似)の内容について、顧客が認識していたという回答を得たものの、大半の契約は乗換により予定利率が下がっていること94、及び特約切替や特約中途付加で顧客のニーズに応えられた可能性がある乗換が複数件あることなどについて報告した。
さらに、かんぽ生命は、乗換契約抑制を図るため、①標準型から引受基準緩和型商品95への 乗換契約(転換類似)につき、販売実績及び募集手当の対象としないことや、保有率を考慮 した募集手当の算出など募集人のインセンティブに着目した評価体系や制度設計とすること、及び②特約切替が可能な契約についても、既契約を解約して乗り換える事例を防止するため、一定の条件に該当する乗換契約については、システム上に新たなアラートメッセージが出力 されるようにすること等の各施策を講じる予定であり、これらによって、2019 年度は、前年 度と比較して乗換契約が大幅に減少する見通しである旨報告した。
募集管理統括部長は、金融庁参事官室を訪問した同日中に、かんぽ生命植平社長らに対し、金融庁担当者らに対する上記報告の概要に加え、金融庁担当者らから、仮に顧客が乗換契約
(転換類似)に伴う留意事項を認識していたとしても、顧客に不利益を生じさせる事案を抑 制するための追加対策が必要とするかんぽ生命の課題認識については積極的に評価されたが、かんぽ生命はPDCA96の「C」が弱く、乗換契約が発生する真因分析をしっかり議論した上で の対策の検討が不十分である旨の指摘を受けたこと、及び性急な対策による効果や施策の実 現可能性に疑問を呈された旨を説明した。
(4) サンプル調査の信用性
当委員会は、サンプル調査の信用性を判断するため、その抽出過程及び調査方法の妥当性を検討したが、その結果は、以下のとおりである。
前記のとおり、サンプル調査の対象は、金融庁参事官室との協議を踏まえ、客観的な基準により選定されたものと認められた。また、顧客の意向を確認した308 件及び調査中止となった 114 件の「カスタマー確認表」について、かんぽ SA による手書きの回答が記載された原資料を精査した結果、かんぽ生命が金融庁参事官室に報告した内容と一致したことを確認している。
なお、当委員会がかんぽ生命に対し、サンプル調査の対象となった422 件の契約について、特定事案調査における「違反疑い事案」への該当性や、募集人調査及び不祥事件等判定の結果を照会したところ、422 件のうち「違反疑い事案」に該当したのは合計 19 件97であったものの、募集人調査を経て、不祥事件又は不祥事故の判定がなされたものは1 件もなかった旨の報告を受けている。
94 「現在のご契約と新たなご契約の予定利率が異なる場合があります。」という項目について認識していると回答した306 件中、256 件は既契約と新既契約で予定利率が異なっていた。
95 引受基準緩和型商品とは、持病・既往症がある顧客の保険加ニーズに応じるため、通常販売している保険商品よりも引受基準を緩和した保険商品をいう。
96 PDCA とは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取ったもので、このPDCA サイクルを回すことが業務改善のフレームワークとして広く認知されている。
97 内訳は、A 類型1 件、B 類型2 件、C 類型14 件及びD 類型2 件である。
以上から、当委員会は、サンプル調査に関し、サンプル抽出過程及び調査方法は妥当であり、その調査結果の信用性に特に問題はないと思料した。
2 金融庁参事官室の指摘を受け、かんぽ生命が、乗換後の告知義務違反等により支払謝絶となった事案(特定事案のB 類型に相当)の件数等について回答した状況
かんぽ生命は、2018 年 11 月中旬以降、金融庁担当者から、支払謝絶等となった件数等のデータを提供するよう要請され、担当部門でデータ抽出や上記金融庁担当者からの照会の回答を検討するなどし、2019 年3 月までに、上記担当者に対し、乗換後に告知義務違反等で支払謝絶となった件数について、2018 年 4 月から同年12 月の間に乗換後に保険金支払いの請求を受け、支払謝絶等となった件数が合計 82 件(内訳は自殺免責982 件、告知義務違反解除 9917 件、責任発生前発病10063 件)であったこと等を報告した。
3 金融庁参事官室の指摘を受け、かんぽ生命が、乗換時に新規契約が引受謝絶となった事案(特定事案のA 類型に相当)の件数等について回答した状況
かんぽ生命は、2019 年1 月上旬以降、金融庁担当者から、乗換時に新規契約申込みについて引受謝絶となった事案のデータの提供要請を受け、担当部門でデータ抽出や上記金融庁担当者からの照会の回答を検討するなどし、2019 年3 月までに、上記担当者に対し、2018 年4月から同年6 月までの乗換契約(転換類似)に伴う新規契約申込み約6.8 万件のうち、約3,900件が旧契約締結期間に生じた疾病等を理由に引受謝絶101となり、また、その結果、無保険状態となった契約者が約580 人であったこと等を報告した。
4 金融庁参事官室から乗換契約に係る指摘を受け、追加対策等を検討した状況等
(1) 金融庁参事官室から乗換契約に係る指摘を受けた状況
かんぽ生命調査室102長らは、2019 年 2 月中旬、金融庁担当者らから、乗換契約に関して、以下のとおり改善策の検討を要請された。すなわち、金融庁参事官室から、①外形的に経済合理性のない乗換契約(転換類似)が発生している点に対し、実態解明が必要であり、それ
98 保険事故の発生にかかわらず、保険金の支払いがなされないこととなる約款・特約条項に定める免責事由のうち、被保険者が保険契約の責任開始の日から一定期間(例えば3年以内)に自殺した場合に関するものをいう。既契約を維持していた場合には、既契約に基づき保険金が支払われていた可能性がある。
99 保険契約者又は被保険者が、保険契約の締結又は復活の際、会社所定の質問表(告知書)の質問事項について故意又は重大な過失によって事実を告げず、又は事実でないことを告げたときに、保険会社の一方的な意思表示により保険契約を解除されることをいう。既契約の締結時には適切に告知義務を履行していた場合には、既契約に基づき保険金が支払われていた可能性がある。
100 責任開始時とは、保険会社に、契約上の保障(責任)が開始される時をいう。責任開始前発病とは、責任開始時より前に、保険事故である病気などが発症した場合をいう。既契約を維持していた場合には、既契約に基づき保険金が支払われていた可能性がある。
101 引受謝絶とは、顧客が新規に加入しようとした保険契約のうち全部又は一部が、顧客の病歴等で成立しなかった事案をいう。顧客が既に既契約を解約している場合には、保険契約(保障)がない状態となる。
102 かんぽ生命の調査室は、経営企画部に属し、監督官庁、生命保険協会等との連絡や交渉等を所掌業務している。
らを踏まえた上で、追加対策の要否を検討すること、②乗換契約(転換類似)に伴い、旧契約が解約され、新規に申込みが受理された契約について、引受謝絶となり、無保険状態や保険金の支払謝絶が発生しているとの点に対して、顧客保護に反していないか実態解明を行い、それらを踏まえた上で、引受謝絶、支払謝絶及び旧契約の告知義務違反解除が生じた場合の顧客調査及び募集人調査の仕組みの構築や旧契約の解約を無効とする制度の要否を検討することが必要と考えていること等を指摘された。
(2) 植平社長による対応に関する指示
かんぽ生命植平社長は、2019 年2 月下旬までには、上記金融庁参事官室の指摘事項等について報告を受け、仮に将来新商品の認可申請を行うこととした場合に影響が生じることを懸念し、金融庁から報告徴求を受けることは極力回避するため、その指摘事項に対しては、早期に追加対策を講じることにより、自主的な改善を図ることが必要かつ可能であると考え、調査室長を介して、メールにより、C 専務執行役、B 常務執行役及び募集管理統括部らに対し、かんぽ生命の今後の対応について、大要、以下のとおり指示した。
すなわち、①かんぽ生命には、他の生命保険会社が導入している転換制度等が存在しないため、乗換契約(転換類似)が多く、解約率も高くなっているものの、この点については、総合対策の実施により解消され、乗換契約(転換類似)は減少する見込みであり、現在はその途上と思われること、②経済合理性のない乗換契約(転換類似)については、顧客からの苦情がなかったとしても、断固として撲滅していく必要があると考えており、そのために必要な追加の対策を講じること、③金融庁参事官室から指摘を受けた引受謝絶や支払謝絶等の問題に対しては、顧客の保護を最優先に考え、真摯に対応すること、④金融庁参事官室から検討を要請された改善策については、全体像を示し、網羅的に対応策を洗い出し、実施時期を明確にすることにより、かんぽ生命の対応への理解を得る必要があること、⑤金融庁参事官室の指摘を踏まえ、問題点を全て明らかにして、問題を隠すことなく、スピード感をもって対応すること、の5 点である。
さらに、かんぽ生命では、2019 年3 月上旬、植平社長、C 専務執行役、B 常務執行役等関係役員及び募集管理統括部長らによる打合せにおいて、植平社長の意向を踏まえ、今後、①経済合理性の乏しい乗換契約に対して、例えば、資金繰りに窮した顧客が当面の資金確保のため、外形上の経済合理性に反した行動をとることなども想定した上、顧客の視点に立った評価を行うべきであること、②乗換契約(転換類似)に伴う新規契約の引受謝絶のうち、医的謝絶がなされた契約について優先的に対応するものの、その他に顧客の視点に立ち、顧客に不利益を生じさせていないか否かを含め網羅的な検討を行う必要があること、③金融庁参事官室から指摘された引受謝絶及び支払謝絶が今後生じないよう、2019 年4 月以降は、手続のフローを改善することとされた。なお、④乗換契約(転換類似)に伴う引受謝絶による無保険状態(特定事案におけるA 類型に相当)や保険金の支払謝絶等の発生(特定事案におけるB 類型に相当)に対して、無保険や免責等になった契約に対する調査を行い、顧客の意向に応じて旧契約の復元を実施すること(以下「過去遡及対応」という。)については、社内での態勢整備の点を含め、対象期間を検討することとなった。