Contract
平成24年度
包括外部監査結果報告書
「業務委託契約に関する財務事務について」
平成25年3月
和歌山県包括外部監査人
公認会計士 xxxx
目次
第1 包括外部監査の概要 1
【1】外部監査の種類 1
【2】選定した特定の事件(テーマ) 1
【3】特定の事件(テーマ)を選定した理由 1
【4】監査対象部署 1
【5】包括外部監査対象期間 2
【6】外部監査の方法 2
1.監査の要点及び視点 2
2.主な監査手続 3
【7】外部監査の実施時期 3
【8】外部監査人補助者の資格と名称 3
【9】利害関係 3
第2 和歌山県契約事務の概要 4
【1】業務委託契約の概要 4
1.本報告書における委託契約 4
2.地方公共団体の契約において求められる原則 4
3.地方自治法における委託契約締結に関する定め 5
4.委託業務の分類 9
【2】委託契約に係る県の状況 11
1.委託料(一般会計)の推移 11
2.委託契約に係る県の取組み 12
【3】県の契約事務 13
1.契約方法(調達選定方法)の検討・決定 13
2.受託業者の選定から委託契約までの流れ 15
3.契約の履行確認・支払手続 17
【4】監査対象とした業務委託契約 19
1.監査対象選定基準 19
2.監査対象として選定した個別業務委託契約(選定結果) 19
第3 監査の結果及び意見の総括 26
【1】全般的事項(委託契約の管理方法等)に係る監査の結果及び意見の総括 26
1.業務委託契約に関する契約管理のあり方について 26
2.随意契約情報の公表について 28
3.情報システム調達ガイドラインの運用について 28
4.検査調書の作成及び回付について 29
【2】個別委託契約事務に係る監査の結果及び意見の総括 29
【2-1】契約事務に共通する監査の結果及び意見の総括 29
1.主な監査の結果 29
2.主な意見 30
【2-2】外郭団体との契約事務に係る監査の結果及び意見の総括 33
1.外郭団体との契約事務について 33
2.主な監査の結果 33
3.主な意見 33
【2-3】施設管理に関する契約事務に係る監査の結果及び意見の総括 34
1.施設管理に関する契約事務について 34
2.主な監査の結果 35
3.主な意見 35
【2-4】情報システムに関する契約事務に係る監査の結果及び意見の総括 36
1.情報システムに関する契約事務について 36
2.主な監査の結果 36
3.主な意見 36
【3】監査の結果及び意見の一覧 38
第4 委託契約の管理方法等、全般的事項に対する結果及び意見 41
1.業務委託契約に関する契約管理のあり方について 41
2.随意契約情報の公表について 43
3.情報システム調達ガイドラインの運用について 45
4.検査調書の作成及び回付について 46
第5 個別委託契約事務に対する結果及び意見 47
【1】外郭団体との契約事務 47
1.和歌山県広域災害・救急医療情報システムの管理及び運営業務(健康局医務課) 47
2.地域医療支援センター運営事業(健康局医務課) 48
3.コスモパーク加太維持管理業務委託契約(企画部企画政策局企画総務課) 50
4.地場産業の販路開拓事業(企業政策局企業振興課) 51
5.海外販路コーディネーターの新設事業(企業政策局企業振興課) 53
6.和歌山国際経済サポートデスク運営委託(企業政策局企業振興課) 54
7.紀の川流域下水道の維持管理委託契約(河川・下水道局下水道課) 55
8.紀の川中流流域下水道の維持管理委託契約(河川・下水道局下水道課) 56
9.和歌山県地域がん登録業務委託契約(保健福祉部健康局 健康推進課) 58
10.和歌山県営住宅及び共同住宅施設の管理代行に関する業務等に係る協定(都市住宅局建築住宅課) 59
11.平成 23 年度認知症疾患医療センター運営事業実施業務委託契約(福祉保健政策局障
害福祉課) 61
12.人権相談事業委託契約(人権局人権政策課) 63
13.人権啓発推進事業委託契約(人権局人権施策推進課) 64
14.和歌山県職員定期健康診断等業務委託契約(総務管理局人事課) 65
15.和歌山県北部栽培漁業センター及び和歌山県南部栽培漁業センター施設管理運営業務及び種苗生産業務委託契約(水産局水産振興課) 66
16.畜産経営指導事業委託契約(農業生産局畜産課) 67
17.和歌山県国際交流センターの指定管理に係る業務委託(企画政策局文化国際課) 69
18.和歌山県臓器移植連絡調整者設置事業(健康局薬務課) 70
19.勤労福祉会館管理運営委託業務(商工労働政策局労働政策課) 71
20.公有地取得あっせん等委託業務(県土整備政策局用地対策課) 72
【2】施設管理に関する契約事務 74
1.和歌山県障害児(者)・高齢者歯科口腔保健センター運営委託契約(健康局医務課)
.......................................................................................................................................... 74
2.和歌山県庁舎及び構内清掃業務委託契約(総務管理局管財課) 75
3.和歌山県庁舎電話交換機保守及び常駐対応業務委託契約(総務管理局管財課) 76
4.和歌山県庁舎南別館管理運営業務委託契約(総務管理局管財課) 77
5.和歌山県庁舎南別館管理運営業務委託契約(総務管理局管財課) 78
6.県立学校浄化槽保守点検等業務委託契約(北部2)(教育総務局総務課) 80
7.和歌山県立若xxの管理及び運営(福祉保健政策局障害福祉課) 81
8.和歌山県発達障害者支援センター運営事業委託契約(福祉保健政策局障害福祉課)
.......................................................................................................................................... 82
9.和歌山県立情報交流センターの管理及び運営に関する業務(企画政策局情報政策課)
.......................................................................................................................................... 83
10.和歌山県植物公園緑花センター及びxx山げんきの森の管理業務委託契約(森林・林業局森林整備課) 84
11.護摩壇山森林公園管理業務委託契約(農林水産部森林・林業局森林整備課) 86
12.和歌山県体力開発センター運営管理に関する年度協定(生涯学習局スポーツ課) 87
13.和歌山県立体育館及び和歌山県立武道館の運営管理に関する年度協定(生涯学習局スポーツ課) 90
14.和歌山県民交流プラザ和歌山ビッグ愛・ビッグホエール運営管理に関する協定(生涯学習局スポーツ課) 92
15.紀三井寺公園等維持運営管理委託契約(都市住宅局都市政策課) 95
16.紀三井寺公園等維持運営管理委託契約(都市住宅局都市政策課) 96
17.xx緩衝緑地維持運営管理委託契約(都市住宅局都市政策課) 98
18.和歌公園維持運営管理委託契約(都市住宅局都市政策課) 99
19.xx体育館維持運営管理委託契約(都市住宅局都市政策課) 101
20.和歌山県民文化会館の本館維持管理業務(企画政策局文化国際課) 102
21.和歌山県総合庁舎等警備業務(那賀)委託契約(総務管理局管財課) 103
22.和歌山県総合庁舎等警備業務(xx)委託契約(総務管理局管財課) 105
23.和歌山県総合庁舎等警備業務(xx)委託契約(総務管理局管財課) 106
24.和歌山県総合庁舎等警備業務(西牟婁)委託契約(総務管理局管財課) 107
【3】情報システムに関する契約事務 108
1.和歌山xxxくにe-ねっと(総合防災情報システム対応)の設営委託及び通信機器等の賃貸借(企画政策局情報政策課) 108
2.きのくにe-ねっと管理運用支援業務(企画政策局情報政策課) 110
3.ハウジングビル内預かり保守業務(企画政策局情報政策課) 111
4.電子計算組織運用管理業務(企画政策局情報政策課) 112
5.人事給与システム維持管理業務(企画政策局情報政策課) 114
6.和歌山県地理情報システム導入及び賃貸借(企画政策局情報政策課) 115
7.行政事務支援システム(職員ポータル等)仕様変更委託業務(企画政策局情報政策課) 116
8.情報交流センター情報システム構築・運用保守委託及びサーバ等の賃貸借(企画政策局情報政策課) 118
【4】その他の契約事務 119
1.地域医療再生をめざす保健医療連携の推進・運営事業(健康局医務課) 119
2.地上デジタルテレビでの新しい防災情報受発信自動提供システムの構築と情報提供そして活用促進活動業務(河川・下水道局河川課) 120
3.県政広報ラジオ番組制作放送(知事室広報課) 122
4.和歌山県ホームページ管理事業委託契約(知事室広報課) 123
5.「県民の友」配布委託契約(知事室広報課) 124
6.障害福祉サービス事業所等の商品開発とネット通信販売事業(福祉保健政策局障害福祉課) 125
7.障害福祉サービス事業所等の商品開発と移動販売による販売促進事業(福祉保健政策局障害福祉課) 126
8.障害者社会参加促進事業委託契約(福祉保健政策局障害福祉課) 127
9.きのくに医・科学サポート事業業務委託(生涯学習局スポーツ課) 129
10.自主防災組織活性化事業委託契約(危機管理局総合防災課) 130
11.文化振興事業委託業務(企画政策局文化国際課) 131
12.農業新規参入者育成業務委託契約(商工労働政策局労働政策課) 132
13.就業能力育成支援プログラム委託契約(商工労働政策局労働政策課) 134
14.介護人材育成事業委託契約(商工労働政策局労働政策課) 135
15.医療関連人材育成委託契約(商工労働政策局労働政策課) 136
16.就業能力育成事業委託契約(商工労働政策局労働政策課) 137
17.ツーリズム産業人材育成委託契約(商工労働政策局労働政策課) 138
18.働く人のためのメンタルヘルスケア推進事業委託契約(商工労働政策局労働政策課)
........................................................................................................................................ 139
19.産業人材確保推進事業(商工労働政策局労働政策課) 140
20.高卒未就職者等支援事業(商工労働政策局労働政策課) 141
21.紀州へら竿後継者育成委託契約(商工労働政策局労働政策課) 143
22.高齢者講習委託(和歌山県警察 運転免許課) 144
23.県営住宅xx団地他昇降機保守点検業務(都市住宅局建築住宅課) 145
【5】監査の結果・意見として記載すべき事項のない契約事務 146
第1 包括外部監査の概要
【1】外部監査の種類
地方自治法第 252 条の 37 第 1 項及び第 2 項に基づく包括外部監査
【2】選定した特定の事件(テーマ)
業務委託契約に関する財務事務について
【3】特定の事件(テーマ)を選定した理由
県の財政状況は厳しく、平成 24 年3月に改定公表された「新行財政改革推進プラン
(改定版)」の中において、「事務事業の一層の見直し」の一環として、「予算執行段階における経費節減努力」を行うことを掲げている。平成 23 年度における県の委託料決
算額は約 207 億円(一般会計)となっており、歳出総額 5,522 億円に占める割合も大きいことから、「予算執行段階における経費節減」を実現するためには、業務委託契約の管理体制・管理方法のあり方を検討するとともに、個別業務委託契約の財務事務についての適切性を検討することは有意義なことであると考える。
また、近年において情報システムに対する投資の重要性が増してきている中、高度な専門性を必要とする情報システムに関する契約事務が適正に行われているか、という点や、外郭団体への業務委託契約に関して競争性の確保や契約金額の妥当性等について十分な検証が行われているか、といった点について、外部の専門家による視点で監査を行うことは有用であると考える。
以上より、「業務委託契約に関する財務事務について」を特定の事件として選定した。
【4】監査対象部署
(1)業務委託契約の管理方法等、全般的事項に対する検討は、次の部署を対象とした。
会計課 総務事務集中課 情報政策課
(2)個別業務委託の監査対象部署は、次の通りである。具体的な監査対象契約の抽出方法は、第2【4】監査対象とした業務委託契約を参照されたい。
医務課 | 河川課 | 管財課 |
企画総務課 | 企業振興課 | 教育総務局総務課 |
下水道課 | 健康推進課 | 建築住宅課 |
広報課 | 砂防課 | 障害福祉課 |
商工観光労働総務課 | 情報政策課 | 人権政策課 |
人権施策推進課 | 人事課 | 森林整備課 |
水産振興課 | スポーツ課 | 青少年・男女共同参画課 |
税務課 | 総合防災課 | 畜産課 |
道路保全課 | 都市政策課 | 文化遺産課 |
文化国際課 | 薬務課 | 労働政策課 |
用地対策課 | 警察運転免許課 |
【5】包括外部監査対象期間
平成 23 年度(自平成 23 年4月1日 至平成 24 年3月 31 日)
ただし、必要に応じて過年度及び平成 24 年度の一部についても監査対象とした。
【6】外部監査の方法
1.監査の要点及び視点
Ⅰ 業務委託契約の管理体制、管理方法の適切性
○ 各課で行われている業務委託契約の管理体制は十分なものか
○ 県全体における業務委託契約管理方法は適切か
○ xx管理を行う場合のメリット及び有効な活用方法はどのようなものか
○ xx管理を行うための管理体制の整備をどのようにして行うか
Ⅱ 個別業務委託契約に関する財務事務の合規性
○ 契約手続(契約相手先の選定を含む)が法令、条例及び規則等に基づいて適正に行われているか
○ 契約業務の履行確認は適正に行われているか
Ⅲ 個別業務委託契約に関する財務事務の経済性、効率性、有効性
○ 契約業務の目的は明確になっており、県民の福祉増進に寄与しているか
○ 契約金額(予定価格)の積算は、十分な根拠に基づいて行われているか
○ 契約相手先の選定は競争性が機能し、経済性・有効性を追求するものとなっているか
○ 同種業務の一括発注や、複数年契約の可能性は十分に検討されているか
○ 契約業務の実績・成果に対する契約時点での期待効果との比較検証が行われているか
○ 単独随意契約1について、随意契約とする理由が合理的か
○ 再委託が行われている場合、その理由は合理的か
○ 契約事務において不正・誤謬を防止・発見する仕組みが適切に構築されているか
1 特定の業者を指定して随意契約を締結する方法をいう。「特命随意契約」とも呼ばれる。
2.主な監査手続
○ 関連する法令・条例・規則等の閲覧
○ 業務委託契約の全般管理についてのヒアリング及び関連書類の閲覧
○ 個別業務委託契約についてのヒアリング及び関連書類の閲覧
○ その他、監査の実施過程で必要と認められた監査手続
【7】外部監査の実施時期
平成 24 年4月1日から平成 25 年3月 15 日まで
【8】外部監査人補助者の資格と名称
公認会計士 xxxx
公認会計士 xx x
公認会計士 xx x
公認会計士 xxxx
公認会計士 xxxx
公認会計士 xxxx
会計士試験合格者 xxxxxx弁護士 xxxx
【9】利害関係
包括外部監査の対象とした事件につき、地方自治法第 252 条の 29 に規定する利害関係はない。
なお、本報告書に記載した数値については、基本的には表示単位未満を切り捨てているが、入手した資料によっては四捨五入しているものをそのまま表記しているものもある。
第2 和歌山県契約事務の概要
【1】業務委託契約の概要
1.本報告書における委託契約
委託契約の形態には、一般に、民法で規定されている『委任』『準委任』『請負』といったものがあるが,これらに限定されるわけではなく,また,複数の性格を有する場合もある。
委任:当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによってその効力を生ずる契約のことをいう(民法 643 条)。
準委任:法律行為でない事務を委託する契約のことであり、委任に関する規定を準用したものをいう(民法 656 条)。
請負:当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによってその効力を生ずる契約のことをいう(民法 632 条)。
本報告書における「委託契約」とは、その歳出予算が「委託料」(一般会計)として区分される(地方自治法施行規則第 15 条第2項)委託契約をいう。
上記「請負」のうち、工事請負については、「委託料」とは異なる節区分である「工事請負費」とされるため、本報告書における「委託契約」の対象とはしていない。
2.地方公共団体の契約において求められる原則
地方公共団体の行う事務については、地方自治法や地方財政法の規定が適用される。それぞれの法律が規定する原則は、次のとおりである。
(1)地方自治法上の原則
原則 | 内容 |
住民福祉の増進・ 費用対効果の最大化 (第2条第 14 項) | 地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最 大の効果を挙げるようにしなければならない。 |
組織運営の合理化・規模の適正化 (第2条第 15 項) | 地方公共団体は、常にその組織及び運営の合理化に努 めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を図らなければならない。 |
地方自治法は、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的としている(地方自治法第1条)。この目的を達成するための地方自治行政の基本原則が、同法第2条で次のとおり定められている。
法規の遵守 (第2条第 16 項) | 地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。なお、市町村及び特別区は、当該xx府 県の条例に違反してその事務を処理してはならない。 |
(2)地方財政法上の原則
地方財政法は、地方公共団体の財政を規律する主要な法であり、地方財政の健全性を確保し、地方自治の発達に資することを目的としている。
規定 | 内容 |
予算の編成 (第3条第1項) | 地方公共団体は、法令の定めるところに従い、且つ、合理的な基準によりその経費を算定し、これを予算に計上しな ければならない。 |
予算のxxx (第4条第1項) | 地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且 つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。 |
地方財政法は、予算の編成と執行について、次の規定を遵守することを求めている。特に契約事務にあたっては、予算執行における費用対効果の最大化を規定する第4条第1項の趣旨を遵守しなければならないことに留意が必要である。
3.地方自治法における委託契約締結に関する定め
地方自治法における発注業務に係る主な契約締結方法及び落札者(委託先)の決定方法をまとめると次のとおりとなる。
【契約締結方法】 | 【落札者(委託先)決定方法】 | |||
競争入札 | ||||
一般競争入札 | 価格競争方式 | |||
or | ||||
指名競争入札 | 総合評価方式 | |||
随意契約 | ||||
随意契約 | 企画提案方式 | |||
or 相見積り | ||||
or 単独随意契約 |
(1)契約締結方法
地方公共団体の契約締結方法は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法によるが(地方自治法第 234 条第1項)、契約先を限定しない一般競争入札が原則的な方法である(同条第2項参照)。
これらの契約のうち、地方公共団体において多く用いられる契約形態である、一般競争入札、指名競争入札、随意契約の詳細は、次のとおりである。
① 一般競争入札
一般競争入札は、入札の内容を公告して一定の資格を有する不特定多数の参加を募り、その中から予定価格の制限の範囲内で最低の価格(売払い契約の場合は最高の価格)で入札した者を契約の相手方とする契約方法である。ただし、契約の性質または目的から判断し、予定価格の制限の範囲内の価格をもって申込みをした者のうち、価格その他の条件が当該普通地方公共団体にとって最も有利なものをもって申込みをした者を落札者とすることもできる(地方自治法第 234 条第3項、同法施行令第 167 条
の 10 の2)。
② 指名競争入札
指名競争入札は、資力、信用その他についての基準を満たした特定多数の者を通知によって指名し、その中から予定価格の制限の範囲内で最低の価格(売払い契約の場合は最高の価格)で入札した者を契約の相手方とする契約方法である。ただし、契約の性質または目的から判断し、予定価格の制限の範囲内の価格をもって申込みをした者のうち、価格その他の条件が当該普通地方公共団体にとって最も有利なものをもって申込みをした者を落札者とすることもできる(地方自治法第 234 条第3項、同法施行令第 167 条の 12)。
指名競争入札は、地方公共団体の例外的な契約形態の一つであるため、地方自治法施行令第 167 条により、実施要件が次のとおり限定列挙されている。
<地方自治法施行令第 167 条>
一 工事又は製造の請負、物件の売買その他の契約でその性質又は目的が一般競争入札に適しないものをするとき。
二 その性質又は目的により競争に加わるべき者の数が一般競争入札に付する必要がないと認められる程度に少数である契約をするとき。
三 一般競争入札に付することが不利と認められるとき。
なお、県においては、【3】2(1)に記載しているとおり、平成 21 年1月より条件付き一般競争入札を導入しており、指名競争入札制度は利用されていない。
③ 随意契約
随意契約は、競争入札の方法によることなく、地方公共団体が任意に指定した者と契約を締結する形態である。
随意契約は、地方公共団体の例外的な契約形態の一つであるため、地方自治法施行令第 167 条の2各号により、実施要件が次のとおり限定列挙されている。
<地方自治法施行令第 167 条の2 各号の要約>
一 予定価格が一定金額以下の少額契約の場合
二 不動産の買入れ、物品修理等その他の契約で、その目的又は性質が競争入札に適さない場合
三 障害者自立支援法その他特定の法令等に基づく場合
四 総務省令で指定された新商品の生産により新たな事業分野の開拓を図る者から地方公共団体の規則により買入れをする場合
五 緊急の必要により競争入札が実施できない場合六 競争入札に付することが不利と認められる場合
七 時価に比して著しく有利な価格で締結できる見込がある場合八 入札者がいない、又は再入札での落札者がいない場合
九 落札者が契約を締結しない場合
(2)一般及び指名競争入札における落札者の決定方法
一般及び指名競争入札における落札者の選定基準としては、価格競争方式・総合評価方式の2通りがあり、それぞれの内容は、次のとおりである。
評価方法 | 説明 |
価格競争方式 | 金額のみを判断基準とする評価方法。 |
総合評価方式 | 金額のほかに、対象業務に関する運営理念・企画案・人員配置など基本的な提案を求め、金額・業務内容を 総合的に判断する評価方法。 |
価格競争方式は、選定基準が価格のみであり最も低価格を提示した者が契約先として選定される。そのため、価格競争原理は十分に作用するが、業務の水準を考慮することはできない。
総合評価方式は、金額だけでなく提案内容も含めて総合的に評価する方式であり、必ずしも提案価格が低い者が選定されるのではない。そのため、価格競争原理は価格競争方式ほど作用しないものの、業務の水準も考慮して契約先を選定することができる。
(3)予定価格・最低制限価格の設定
① 予定価格
予定価格とは、地方公共団体側の予算執行の際の上限額としての性格を持つものであり、議会の議決を受けた予算を計画的に執行するために必要となる個別契約の上限金額である。
予定価格の積算方法については、各地方公共団体の財務規則等により定められるが、予定価格の作成に当たっては、市場価格や需給の状況、履行の難易度、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して、適正に定められるべきである。
② 最低制限価格
普通地方公共団体は、契約先の選定に際して、あらかじめ最低制限価格を設けることができる。最低制限価格とは、契約内容に適合した履行を確保するため、予定価格の制限の範囲内で設定する価格のことで、この価格を下回った場合は入札において自動的に失格となる。したがって、予定価格の制限の範囲内の価格で最低制限価格以上の価格をもって申込みをした者のうち最低の価格をもって申込みをした者を落札者とする(地方自治法施行令第 167 条の 10 第2項)。
最低制限価格は、業務の適切な履行を確保するために設けられる。
たとえば庁舎内清掃業務、警備業務等の業務について、最低制限価格を設けずに一般競争入札(価格落札方式)を実施し、著しく低廉な価格での落札があった場合、その落札価格は不当なダンピングにより設定された可能性がある。不当なダンピングの結果としての低廉な価格での契約であった場合、業務の適正な履行が確保できなくなる事態を招くおそれがある。このような事態を回避するための制度が、最低制限価格である。
(4)指定管理契約、長期継続契約
委託業務の契約形態には、地方自治法上の特別な規定として、指定管理契約、長期継続契約がある。
① 指定管理契約
普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するために必要があると認めるときは、条例の定めるところにより指定管理者を指定し、当該公の施設を管理させることができる(地方自治法第 244 条の2第3項)。
指定管理者制度は、契約先を地方公共団体及びその出資団体等に限定した管理委託制度(平成 15 年6月の地方自治法改正で廃止)に代わって創設された制度である。
この制度は、民間のノウハウを活用し、住民サービスの向上と効率的な施設運営を同時に達成することを目的としている。そのため指定管理契約は、施設の単なる維持管理業務ではなく、利用者増加のためのサービスを企画・提供する等の総合的な管理契約となることが多い。
② 長期継続契約
長期継続契約は、各年度の予算の範囲内で給付を受けることを条件として、議会に おける債務負担行為の予算承認なしに複数年度にわたる契約を締結することができる。単年度ごとに契約を締結することは、事務処理上不合理であるため、後年度にわたり 契約を締結することの特例を定めたものが、長期継続契約制度である。
長期継続契約の対象となるのは、電気、ガス、水道、通信及び不動産の賃借その他政令に定めるものに限られる(地方自治法第 234 条の3)。政令で定めるものは、物品の借入れ及び役務提供の契約で、条例で定めるものとなっている。
このように長期継続契約は、経常的なものとして後年度にわたり契約を締結しなければ事務に支障を及ぼすもので、安定的な契約となるようなものに限定されている。
4.委託業務の分類
業務類型 | 内容 | 契約例 |
定型業務 | 業務マニュアル等に従い、定められた業務を処理する業務。 | 調査依頼業務、計算・入力業務、配送業務、窓口サー ビス業務等 |
専門的業務 | 県が保有しない専門的な知識や技術が必要となる業務。 | 設計・測量業務、精密機器保安業務、システム開発・運用・保守業務、技術相談 業務等 |
委託契約は、受託者が委託者の指揮監督下には置かれずに、事業主として独立に業務を処理する契約である。契約の対象となる委託業務は、次のような類型に区分することができる。
一時的な業務 | 業務の発生が一時期に集中するため、常時職員を配置する必要 のない業務。 | 定期健康診断、イベントや研修会の企画・運営、アン ケート調査業務等 |
施設等の維持管理業 務 | 施設・設備等の機能を維持する ために必要な管理業務。 | 清掃、除草、維持管理業務 等 |
民間提案を活用する業務 | 民間が提案する事業のうち、県が住民福祉の向上に資すると判 断し、当該事業を委託する業務。 | ふるさと雇用特別再生基金を活用した事業等(【4】 2参照) |
【2】委託契約に係る県の状況
1.委託料(一般会計)の推移
過去3年間の部局別の委託料は、次のとおりである。
単位:千円
部局 | 区分 | 平成21年度 | 平成22年度 | 平成23年度 |
県土整備部 | 金額 | 7,862,532 | 9,368,180 | 9,865,832 |
構成割合 | 48.5% | 49.5% | 47.7% | |
商工観光労働部 | 金額 | 1,121,796 | 2,635,236 | 3,843,926 |
構成割合 | 6.9% | 13.9% | 18.6% | |
教育委員会事務局 | 金額 | 1,354,735 | 1,176,857 | 1,304,394 |
構成割合 | 8.4% | 6.2% | 6.3% | |
総務部 | 金額 | 696,053 | 653,131 | 568,094 |
構成割合 | 4.3% | 3.5% | 2.7% | |
福祉保健部 | 金額 | 992,775 | 1,072,149 | 1,201,634 |
構成割合 | 6.1% | 5.7% | 5.8% | |
警察本部 | 金額 | 969,437 | 926,053 | 969,622 |
構成割合 | 6.0% | 4.9% | 4.7% | |
農林水産部 | 金額 | 951,507 | 919,194 | 901,453 |
構成割合 | 5.9% | 4.9% | 4.4% | |
企画部 | 金額 | 953,695 | 652,790 | 581,823 |
構成割合 | 5.9% | 3.4% | 2.8% | |
環境生活部 | 金額 | 370,302 | 462,556 | 554,373 |
構成割合 | 2.3% | 2.4% | 2.7% | |
知事室 | 金額 | 276,735 | 278,041 | 278,659 |
構成割合 | 1.7% | 1.5% | 1.3% | |
危機管理 | 金額 | 531,505 | 641,046 | 339,626 |
構成割合 | 3.3% | 3.4% | 1.6% | |
その他 | 金額 | 123,840 | 142,552 | 278,024 |
構成割合 | 0.8% | 0.8% | 1.3% | |
合計 | 金額 | 16,204,914 | 18,927,785 | 20,687,459 |
構成割合 | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
過去3年間において、県土整備部の業務委託費が、全体の過半近くを占めており、平成 23 年度については、商工観光労働部とあわせるとおよそ7割となっている。平成
23 年度における県土整備部の主な委託料は、施設等の維持管理業務、測量調査設計業
務、工事委託に係るものである。
なお、県は、財務会計システム、公共工事等入札情報システム、役務調達公開システム、随意契約ガイドラインに基づく報告等により、それぞれにおいて契約件数、契約金額等を把握しているが、県全体としての契約情報を一括して管理する情報システムは有しておらず、契約情報は各部署別に書面で管理している。そのため、県全体としての総契約件数、部局別契約件数などの詳細な情報は一元管理により集計されていない状況にある。
2.委託契約に係る県の取組み
(1)委託事務適正化への取組み
① 契約に係る規則等の見直し
県では、契約事務に関する一連の業務についてのマニュアルである「支出事務の手引」を策定し、委託契約事務の適正化に取り組んでいる。また、平成 20 年度より、「和歌山県役務の提供等の契約に係る条件付き一般競争入札(事前審査)実施要領」「和歌山県役務の提供等の契約に係る条件付き一般競争入札(事後審査)実施要領」等を制定し、条件付き一般競争入札・簡易公開調達制度を導入することで、委託契約の競争性・公平性・透明性の確保を図っている。
また、平成 24 年度からは、随意契約の適用にあたって厳正な運用を実施し、その透明性の確保等を図ることを目的として「随意契約ガイドライン」を策定している。
② 情報システム調達ガイドラインの整備
地方公共団体における情報システムの重要性は増してきており、ITを活用することで行政サービスの高度化や業務の効率化・迅速化を図る必要がある一方、一度システム化すれば多額かつ継続的なコスト発生を伴うことから、適正かつ効率的な投資により、最少の費用で最大の効果(業務効率の向上)を発揮するようなシステム導入が求められているところである。
特に、システム調達については専門的・技術的であることや、事務手続きが煩雑であることから委託業者等へ依存してしまう等の課題がある。
このため、調達業務の基本的な考え方や事務手順を可視化し、標準化・明確化する必要性があるため、県は平成 19 年3月に「情報システム調達ガイドライン」を策定し、
平成 21 年1月に最新の改定を行った。
(2)委託料等の経費削減への取組み
① 新行財政改革推進プランに基づく経費削減
新行財政改革推進プラン(平成 20 年3月)では、事務事業の見直しにより、平成 20
年度からの5年間で 150 億円の事業費の改善を計画していた。
県によると、平成 20 年度においては、事務事業評価による見直しを行い、21 億円の改善を行ったとのことである。また、平成 21 年度には「新行財政改革推進プランの実施方針について」を策定し、県有施設、外郭団体、補助金について見直し方針を定め、平成 21 年度以降は各年度約 10 億円の削減を行っている。その結果、平成 23 年度まで
に新行財政改革推進プランの目標額 100 億円に対し、累計 142 億円の改善を達成しているとのことであった。
さらにその後、新行財政改革推進プラン(改定版、平成 24 年3月)に基づき、「予算執行段階における経費削減努力」に取り組んでいるところである。
【3】県の契約事務
1.契約方法(調達選定方法)の検討・決定
(1)契約方法について
県における契約先の選定方法の主な類型は、次のとおりである。
<県の委託契約方法の主な類型>
契約方法の類型 | 説明 | |
条件付き一般競争入札による契約 | 最低価格落札方式 | 入札条件を限定した上で、価格が最も低い入札者を業務委託者に選定し、契 約する方法。 |
総合評価落札方式 | 入札条件を限定した上で、金額だけではなく、実施する業務の提案内容も含めた評価委員会での総合的な評価から業務委託者を選定し、契約する方 法。 | |
随意契約 | 相見積り方式又は単独見積りによる方式 | 随意契約によることが認められた場合に、契約当事者間の金額合意のみに よって契約する方法。 |
企画提案方式 | 随意契約によることが認められた場合に、企画提案により金額を含めた業務の実施内容を評価委員会で審査し た上で契約者を決定し契約する方法。 | |
簡易公開調達 | 参加条件を限定した上で、当該契約の予定価格が随意契約の限度額以下であり、かつ一定の業務である場合に、見積書を提出させて落札者を決定し 契約する方法。 |
(2)契約方法の決定について
県における契約方法決定の基本的な考え方は、次のとおりである。
検討開始
地方自治法施行令の随意契約事由に該当するか?
YES
企画提案方式により契約の
相手方を特定するか?
NO
NO
※少額随契については、条件付き一般競争入札制度導入により
簡易公開制度による調達で行うため使用せず。
YES
価格及び価格以外の要素を含め
た総合的判断が必要?
YES
NO
NO
予定価格が100万円以下の
役務の提供か?
YES
条件付き一般競争
入札(最低価格落札方式)
簡易公開 調達(最低
価格落札方式)
条件付き一般競争入札
(総合評価落札方式)
随意契約 (企画提案
方式)
随意契約(相見積り又は
単独見積りによる方式)
※提案を受けた後、地方自治
※条件付き一般競争入札、簡易公開調達は、一般競争入札に 法施行令の随意契約事由に該
よる調達も可能 当することが前提
県内に本店又は支店等を有する者による調達か?(Noの場合は、県外に本店がある者も加える。)
契約方法の決定にあたっては、まず、条件付き一般競争入札か随意契約かの検討を行い、随意契約の方針とした場合には、その要件を満たすかの検討を行う。
随意契約の要件を満たしている場合、業務内容までを考慮した企画提案方式とするか、価格のみを考慮した相見積り契約(特別な場合は、単独見積りによる契約)かを
決定する。
なお、予定価格が 100 万円以下で、契約の相手方を県内に本店又は支店等を有する者とする場合には、簡易公開調達方式を採用することが原則である。
一般競争入札(条件付き一般競争入札)では、価格以外の要素までを考慮する必要がある場合には総合評価方式を採用し、価格のみを考慮する場合であれば最低価格落札方式を採用する。
2.受託業者の選定から委託契約までの流れ
受託業者の選定から委託契約を締結するまでの県の契約事務の主な流れは、次の図のとおりである。
契約方式検討・確定
随意契約
相見積り又は単独見積り
随意契約
企画提案方式
一般競争入札(条件付
き一般競争入札)総合評価落札方式
一般競争入札(条件付
き一般競争入札)最低価格落札方式
簡易公開調達
最低価格落札方式
競争入札参加資格者名簿の事前登載
調達準備(仕様書又は提案依頼書、契約書(案)の作成)
見積書提出依頼の作成 入札公告準備(入札説明書、業者選定基準、予定価格の積算)評価委員会の設置準備
執行伺(起案、決裁)
見積書提出の依頼
公告(HP等による)・説明書交付
提案書提出者の選定
資格審査説明会の開催(※1)
見積書の受理
提案書の受理
入札参加資格者の審査・確認
資格審査結果の通知
入札説明会の開催(※1と併せて実施も可)
見積り合わせ
入札
開札
相手方の決定
提案書の評価・相手方の決定
(評価委員会等の開催)
落札(相手方の決定)
支出負担行為起案・決裁
契約締結
(1)一般競争入札
一般競争入札の契約手続きにあたっては、始めに仕様書又は提案依頼書、契約書(案)の様式を作成し、入札の公告を実施する。これと同時に、予定価格の積算や、総合評価方式の場合は選定基準の確定及び評価委員会の設置準備等が行われる。
入札の準備が整うと、これらの書類等に基づき入札事務を実施することについての執行伺を起案し、県として入札を実施することの意思決定を行う。
入札実施の意思決定後、公告及び申込みに係る説明書を交付し、資格審査説明会を実施する。資格審査を実施し審査結果を通知した後、入札説明会を開催し、入札又は提案書の評価が実施される。この結果、委託契約の相手方が決定され、その後の支払に係る事務手続き等についての内部承認を得た後、契約締結に至る。
なお、県においては、受注意欲のある者の入札参加機会を確保するとともに、競争性及び入札に係る透明性の向上を図るため、入札参加資格に条件を付した「条件付き一般競争入札」を平成 21 年1月より導入しており、指名競争入札は利用されていない。
(2)随意契約
随意契約も、一般競争入札と同じく、まず契約方式の検討・決定を行い、仕様書又は提案依頼書、契約書(案)の様式を作成する。
執行伺を起案し、県として発注を実施することの意思決定を行うが、価格競争方式
(相見積りまたは単独見積り)の場合は同時に、契約予定者から見積書を徴取することについての決裁を得る。
その後、財務規則第 109 条にしたがって、原則として2人以上の者から見積書を徴取する。企画提案方式の場合は提案内容の評価を実施し、契約予定者との契約を締結することについて内部の承認を得た後、契約締結に至る。
随意契約の限度額については、和歌山県財務規則第 108 条に次のとおり定められている。
<随意契約によることができる場合の予定価格の限度額>
区 分 | 金額(万円) | |
1 | 工事又は製造の請負 | 250 |
2 | 財産の買入れ | 160 |
3 | 物件の借入れ | 80 |
4 | 財産の売払い | 50 |
5 | 物件の貸付け | 30 |
6 | 上記に掲げるもの以外のもの | 100 |
(3)簡易公開調達
和歌山県役務の提供等の契約に係る簡易公開調達実施要領によると、簡易公開調達とは、一定の予定価格の範囲内の業務を対象として、定められた資格を有する不特定多数の者に見積書を提出させ、最も有利な条件を提供した者との間に締結する契約方法をいう。
簡易公開調達(公開見積り合わせ)は随意契約の一形態であるが、一般競争入札と同じく、仕様書又は提案依頼書、契約書(案)の様式を作成し、その後、執行伺を起案し、県として公開見積り合わせを実施することの意思決定を行う。
その後、簡易公開調達の公告を行い、原則として県内に本店を有する者(地方機関にあっては、その管内に本店を有する者)から見積書の提出を受け落札者(契約の相手方)を決定する。
3.契約の履行確認・支払手続
契 約 締 結
契約締結後から支払に至るまでの一連の流れは次の通りである。
検 査
相手方の履行
支 払
請 求
効果的・効率的な契約方式の検討により、契約時点での最適な契約を締結したとしても、委託料の支払にあたっては、契約時点で予定されていた業務が適切に遂行されたかを確認する必要がある。この点について、県では、次のような業務管理を行っている。
【検査調書等による履行確認】
工事若しくは製造その他についての請負契約又は物件の買入れその他の契約を締結した場合において、契約の適正な履行を確保するため必要な検査を行う必要があり(地方自治法第 234 条の2第1項)、当該検査を実施した職員は、当該検査終了後直ちに、
検査調書又は検収調書を作成しなければならないことが、和歌山県財務規則第 97 条に規定されている。
【支出票の作成】
和歌山県財務規則第 54 条において、支出決定権者は、支出の命令をしようとするときは、当該支出負担行為に係る債務が確定しているかどうか、その他法令又は契約に違反する事実がないかどうかを調査して、支出票により支出の決定をしなければなら
ない。
また、同規則第 55 条において、支出決定権者は、支出票に、請求書、契約書又は請書及び検査調書その他支出の正当性を証明するに足りる書類を添付し、支出決定の理由を明らかにしなければならないとされている。
【4】監査対象とした業務委託契約
1.監査対象選定基準
本報告書において、監査対象とした業務委託契約の選定基準は、次のとおりである。なお、県は、財務会計システム、公共工事等入札情報システム、役務調達公開シス テム、随意契約ガイドラインに基づく報告等により、それぞれにおいて契約件数、契約金額等を把握しているが、全ての契約を網羅しているわけではなく、また予定価格や応募業者数等の情報はシステム上は管理していない。そのため、監査人の依頼により県が作成した「平成 23 年度委託料総額が2億円以上の部署(課)で5百万円以上の委託契約及び全部署(全課)の1百万円以上の外郭団体への委託契約の一覧」を基に
監査対象業務を選定した。
また、測量調査設計業務、工事委託に関する業務委託契約は、工事関連の業務委託であるため、本報告書における監査対象の個別業務委託契約からは除外している。
<監査対象の選定基準>
・外郭団体に対する1百万円以上の業務委託契約
・施設管理関係の主要契約(庁舎関係すべて及び 10 百万円以上の契約)
・情報システム関係の主要契約(10 百万円以上の契約)
・その他(以下の要件のいずれかを満たす業務委託契約) 30 百万円を超える入札契約
20 百万円を超える随意契約
落札率に一定の傾向がみられるもの(落札率 100%、70%未満の契約等)再委託契約を締結している契約
昭和暦から契約を継続しているもの
選定基準
2.監査対象として選定した個別業務委託契約(選定結果)
上記の選定基準に基づき選定した個別業務委託契約は次の通りである。 94 件 平成 23 年度委託料金額合計:4,232 百万円
No | 課 名 | 契 約 名 | 平成23年度契約金額 (千円) | 該当ページ |
1.外郭団体との契約事務 | ||||
1 | 医務課 | 和歌山県広域災害・救急医療情報システムの管理・運営業務委託契約 | 105,877 | 47 |
2 | 医務課 | 地域医療支援センター運営事業 | 93,380 | 48 |
3 | 企画総務課 | コスモパーク加太現場維持管理業務委託契約 | 25,080 | 50 |
4 | 企業振興課 | 地場産業の販路開拓事業 | 8,914 | 51 |
5 | 企業振興課 | 海外販路コーディネーターの新設事業 | 7,606 | 53 |
6 | 企業振興課 | 和歌山国際経済サポートデスク運営委託 | 8,041 | 54 |
7 | 下水道課 | 紀の川流域下水道の維持管理業務に関する協定 | 331,300 | 55 |
8 | 下水道課 | 紀の川中流流域下水道の維持管理業務に関する協定 | 174,212 | 56 |
9 | 健康推進課 | 和歌山県地域がん登録業務委託契約 | 8,405 | 58 |
10 | 建築住宅課 | 和歌山県営住宅及び共同住宅施設の管理代行に関する業務等に係る協定 | 327,356 | 59 |
11 | 障害福祉課 | 平成23年度認知症疾患医療センター運営事業実施業務委託契約 | 6,605 | 61 |
12 | 人権政策課 | 人権相談事業委託契約 | 2,948 | 63 |
13 | 人権施策推進課 | 人権啓発推進事業委託 | 19,986 | 64 |
14 | 人事課 | 和歌山県職員定期健康診断等業務 | 23,973 | 65 |
15 | 水産振興課 | 平成23年度和歌山県北部栽培漁業センター及び和歌山県南部栽培漁業センター施設管理運営業務及び種苗生産業務委託契約 | 51,571 | 66 |
16 | 畜産課 | 畜産経営指導事業委託契約 | 4,000 | 67 |
17 | 文化国際課 | 和歌山県国際交流センターの指定管理に係る業務委託 | 40,800 | 69 |
18 | 薬務課 | 和歌山県臓器移植連絡調整者設置事業 | 5,469 | 70 |
19 | 労働政策課 | 勤労福祉会館管理運営委託業務 | 19,652 | 71 |
20 | 用地対策課 | 公有地取得あっせん等委託業務 | 104,969 | 72 |
2.施設管理に関する契約事務 | ||||
1 | 医務課 | 和歌山県障害児(者)・高齢者歯科口腔保健センター運営 | 15,580 | 74 |
2 | 管財課 | 和歌山県庁舎及び構内清掃業務 | 7,665 | 75 |
3 | 管財課 | 和歌山県庁舎電話交換機保守及び常駐対応業務 | 8,925 | 76 |
4 | 管財課 | 和歌山県庁舎南別館管理運営業務 | 64,750 | 77 |
5 | 管財課 | 和歌山県庁舎南別館管理運営業務 | - | 78 |
6 | 教育総務課 | 県立学校浄化槽保守点検等業務(北部2) | 14,047 | 80 |
7 | 障害福祉課 | 和歌山県立若竹園の管理及び運営 | 24,106 | 81 |
8 | 障害福祉課 | 和歌山県発達障害者支援センター運営事業 | 27,537 | 82 |
9 | 情報政策課 | 情報交流センターの管理及び運営 | 80,964 | 83 |
10 | 森林整備課 | 和歌山県植物公園緑花センター及び根来山げんきの森の管理業務 | 69,000 | 84 |
No | 課 名 | 契 約 名 | 平成23年度契約金額 ( 千円) | 該当ページ |
2. 施設管理に関する契約事務 | ||||
11 | 森林整備課 | 護摩壇山森林公園管理業務 | 5,000 | 86 |
12 | スポーツ課 | 和歌山県体力開発センター運営管理に関する年度協定 | 44,618 | 87 |
13 | スポーツ課 | 和歌山県立体育館及び和歌山県立武道館の運営管理に関する年度協定 | 49,384 | 90 |
14 | スポーツ課 | 和歌山県民交流プラザ和歌山ビッグ愛・ビッグホエール運営管理に関する協定 | 87,319 | 92 |
15 | 都市政策課 | 紀三井寺公園等維持運営管理委託 | 58,000 | 95 |
16 | 都市政策課 | 紀三井寺公園等維持運営管理委託 | 36,707 | 96 |
17 | 都市政策課 | 河西緩衝緑地維持運営管理委託 | 141,321 | 98 |
18 | 都市政策課 | 和歌公園維持運営管理委託 | 58,908 | 99 |
19 | 都市政策課 | 橋本体育館維持運営管理委託 | 69,302 | 101 |
20 | 文化国際課 | 和歌山県民文化会館の本館維持管理業務 | 14,018 | 102 |
21 | 管財課 | 管委第9-2号 和歌山県総合庁舎等警備業務( 那賀) | 1,197 | 103 |
22 | 管財課 | 管委第9-4号 和歌山県総合庁舎等警備業務( 有田) | 1,442 | 105 |
23 | 管財課 | 管委第9-5号 和歌山県総合庁舎等警備業務( 日高) | 1,197 | 106 |
24 | 管財課 | 管委第9-6号 和歌山県総合庁舎等警備業務( 西牟婁) | 1,159 | 107 |
3. 情報システムに関する契約事務 | ||||
1 | 情報政策課 | きのくにe- ねっとの設営委託 | 35,070 | 108 |
2 | 情報政策課 | きのくにe- ねっと管理運用支援業務 | 43,470 | 110 |
3 | 情報政策課 | ハウジングビル内預かり保守等業務 | 16,209 | 111 |
4 | 情報政策課 | 電子計算組織運用管理業務 | - | 112 |
5 | 情報政策課 | 人事給与システム維持管理業務 | 19,278 | 114 |
6 | 情報政策課 | 和歌山県地理情報システム導入及び賃貸借業務 | 8,820 | 115 |
7 | 情報政策課 | 行政事務支援システム(職員ポータル等) 仕様変更委託業務 | 15,509 | 116 |
8 | 情報政策課 | 和歌山県情報交流センター情報システム構築・運用保守委託及びサーバ等の賃貸借 | 81,334 | 118 |
4. その他の契約事務 | ||||
1 | 医務課 | 地域医療再生をめざす保健医療連携の推進・運営事業 | 31,220 | 119 |
2 | 河川課 | 地上デジタルテレビでの新しい防災情報受発信自動提供システムの構築と情報提供そして活用促進活動業務 | 45,383 | 120 |
3 | 広報課 | 県政広報ラジオ番組制作放送 | 26,984 | 122 |
4 | 広報課 | 和歌山県ホームページ管理事業 | 5,935 | 123 |
5 | 広報課 | 「県民の友」配布 | 14,913 | 124 |
6 | 障害福祉課 | 障害福祉サービス事業所等の商品開発とネット通信販売事業 | 6,215 | 125 |
No | 課 名 | 契 約 名 | 平成23年度契約金額 ( 千円) | 該当ページ |
4. その他の契約事務 | ||||
7 | 障害福祉課 | 障害福祉サービス事業所等の商品開発と移動販売における販売促進事業 | 7,350 | 126 |
8 | 障害福祉課 | 障害者社会参加促進事業 | 9,759 | 127 |
9 | スポーツ課 | きのくに医・科学サポート事業業務委託契約 | 14,721 | 129 |
10 | 総合防災課 | 自主防災組織活性化事業 | 23,394 | 130 |
11 | 文化国際課 | 文化振興事業委託 | 48,500 | 131 |
12 | 労働政策課 | 農業新規参入者育成事業 | 57,878 | 132 |
13 | 労働政策課 | 就業能力育成支援プログラム事業 | 178,277 | 134 |
14 | 労働政策課 | 介護人材育成事業 | 55,014 | 135 |
15 | 労働政策課 | 医療関連人材育成事業 | 35,185 | 136 |
16 | 労働政策課 | 就業能力育成事業 | 20,838 | 137 |
17 | 労働政策課 | ツーリズム産業人材育成事業 | 142,698 | 138 |
18 | 労働政策課 | 働く人のためのメンタルヘルスケア推進事業 | 21,548 | 139 |
19 | 労働政策課 | 産業人材確保推進事業 | 25,973 | 140 |
20 | 労働政策課 | 高卒未就職者等支援事業 | 41,134 | 141 |
21 | 労働政策課 | 紀州へら竿後継者育成事業 | 6,653 | 143 |
22 | 運転免許課 | 高齢者講習委託 | 122,690 | 144 |
23 | 建築住宅課 | 県営住宅西浜団地他昇降機保守点検業務 | 5,266 | 145 |
5. 結果・意見のない契約事務 | ||||
1 | 河川課 | 和歌川河川公園管理 | 7,900 | - |
2 | 管財課 | 管委第2号 和歌山県庁舎警備委託業務 | 16,339 | - |
3 | 企業振興課 | 元気企業技術データベース構築事業委託 | 12,683 | - |
4 | 教育総務課 | 県立紀伊コスモス支援学校児童生徒等送迎業務委託 | 23,075 | - |
5 | 教育総務課 | 県立紀北支援学校第二号スクールバス運行等業務委託 | 9,576 | - |
6 | 広報課 | 県広報テレビ番組制作放送 | 158,397 | - |
7 | 砂防課 | 河川砂防情報システム雨量観測設備保守点検業務 | 10,480 | - |
8 | 砂防課 | 和歌山県河川砂防情報提供業務 | 7,086 | - |
9 | 商工観光労働総務課 | 和歌山県立わかやま館施設等統括管理業務委託契約 | 14,276 | - |
10 | 情報政策課 | 和歌山県インターネットサーバ整備及び機器賃貸借 | 10,747 | - |
11 | 森林整備課 | 平成23年度 第17号 治山航空写真撮影・測量業務 | 72,104 | - |
12 | 森林整備課 (有田振興局) | 平成23年度保育第4号-1森林整備調査業務委託 | 2,973 | - |
13 | 青少年・男女共同参画課 | リレー式次世代健全育成事業委託 | 3,826 | - |
No | 課 名 | 契 約 名 | 平成23年度契約金額 ( 千円) | 該当ページ |
5. 結果・意見のない契約事務 | ||||
14 | 税務課 | 平成23年度県税運営システム等業務委託 | 286,514 | - |
15 | 総合防災課 | 総合防災情報システム運用保守業務 | 137,747 | - |
16 | 道路保全課 | 道路情報提供業務委託契約 | 14,391 | - |
17 | 文化遺産課 | 平成23年度和歌山県埋蔵文化財関連資料整理業務委託契約 | 5,213 | - |
18 | 文化国際課 | 和歌山県美術展覧会本展、マスターズ展及び地方展の開催に係る梱包、輸送、展示、撤去等委託 | 5,040 | - |
19 | 都市政策課 | 秋葉山公園県民水泳場建築工事監理業務 | 14,379 | - |
上記の業務委託契約には、「ふるさと雇用再生特別基金を活用した事業」「緊急雇用創出事業臨時特例基金を活用した事業」が複数含まれている。当該事業の概要については次の通りである。
●ふるさと雇用再生特別基金を活用した事業
該当委託契約:【1】4、5 【4】1、2、6、7、18、19
ふるさと雇用再生特別基金を活用した事業は、厚生労働省が、地域の雇用失業情勢が厳しい中で、離職した失業者等の雇用機会を創出するため、各都道府県に「ふるさと雇用再生特別交付金」を交付し、都道府県がこれに基づく基金を造成し、地域の実情や創意工夫に基づき、雇用の受け皿を創り出す事業である(平成 20 年度~平成 23年度)。
本契約書の対象となる委託契約に対して、この事業の占める金額的重要性が高いので、当該事業について詳細を記載する。
<ふるさと雇用再生特別基金事業の事務の流れ>
契約候補者と協議し、委託業務に係る仕様を確定させた上で
契約を締結する。
労働政策課が、庁内各課へ募集の周知、関係団体への周知依頼団体等への周知(NPO等)を行う。
提案者から提案書の提出を受ける。
審査会はプレゼンテーション方式により行う。
審査項目に基づき、提出書類及び提案者のプレゼンテーション内容の審査を行い企画提案の内容、事業の実施能力等を評価、採点し審議のうえ選定する。
審査会にて決定された契約候補者へその旨を通知する。
失業者の雇用・研修
委託契約事業の実施
(委託内容、委託額)
知
テーション方式)
提案書の提出
事業内容の協議・契約
契約候補者の決定
通
審査会(プレゼン
事業提案の募集
説 明
提案者
労働政策課
ふるさと雇用再生特別基金を活用した事業のうち、事業会社等から労働政策課に対して直接に事業の提案がある契約については、労働政策課が事業実施の決定と契約先の選定までの事務を行う。契約先の選定は、企画提案方式により行われる。
労働政策課が事業の実施を決定し契約先を選定した後は、事業の種類により各所管課が契約管理を引き継ぐことになる。
また、各所管課が当基金を利用して新たに実施する事業の場合には、事業内容を労働政策課が審査し、事業の採択と予算上限を各所管課に通知する。各所管課は、これに基づいて事業を実施する。
●緊急雇用創出事業臨時特例基金を活用した事業
該当委託契約:【4】10、12、13、14、15、16、17、21 【5】17
緊急雇用創出事業臨時特例基金を活用した事業は、厚生労働省が、現下の雇用失業情勢に鑑み、都道府県に対して「緊急雇用創出事業臨時特例交付金」を交付し、都道府県がこれに基づく基金を造成し、離職を余儀なくされた非正規労働者、中高年齢者等の失業者に対して、次の雇用までの短期の雇用・就業機会を創出・提供する事業である(平成 20 年度~平成 23 年度)。
緊急雇用創出事業臨時特例基金事業の事務の流れについては、ふるさと雇用再生特
別基金を活用した事業と同様であるため、上記ふるさと雇用再生特別基金を活用した事業を参照されたい。
第3 監査の結果及び意見の総括
本報告書において指摘した内容については、地方自治法第 252 条の 38 第6項の規定に基づき、一定の措置がとられることとなるが、適切な措置がとられているのかどうかを県が自ら事後的に検証することは重要である。そうした事後的な検証を容易にするために、本報告書では次のように「監査の結果」及び「意見」の記載区分を取り扱っている。
「監査の結果」と「意見」
監査の結果 | 「財務に関する事務の執行」における合規性(適法性と正当性) の観点から、是正・改善を求めるもの。 |
意見 | 監査の結果には該当しないが、合理性や能率性の観点あるいは経済性、効率性、有効性の観点から見て、不合理もしくは不能率な事項を発見した場合に、県の組織及び運営の合理化に資するため に述べる見解のこと。 |
結論部分の記載において、「監査の結果」と「意見」に見出しを付け、次のように区分した。
【1】全般的事項(委託契約の管理方法等)に係る監査の結果及び意見の総括
1.業務委託契約に関する契約管理のあり方について
① 委託先選定結果(入札結果)情報の公開漏れについて【監査の結果】(第4 1
(2)参照)
県は、役務に関する委託契約について募集(入札公告)情報及び選定結果(入札結果)情報を対外的に公開することを目的として条件付き一般競争入札及び簡易公開調達に「役務調達公開システム」を導入しているが、平成 23 年度における役務調達公開システムにおける入札結果公開状況を確認したところ、各課担当者の処理失念により、委託先選定結果(落札結果)が公開されていないものが条件付き一般競争入札 525 件
中 24 件、簡易公開調達 1,532 件中 60 件あることが判明した。
結果公開の実施は、契約事務手続きの透明性を確保するための重要な手続きであり、適時かつ網羅的に実施すべきものである。各課への結果公開手続きの周知徹底を図るとともに、結果公開の状況について、管轄部署である総務事務集中課によるモニタリングを実施することが必要である。
② 全庁的な契約管理の実施について【意見】(第4 1(3)参照)
役務調達公開システムに入力される業務委託契約は条件付き一般競争入札及び簡易公開調達の契約に限定されているとともに、落札率や応募業者数の計算・集計や一覧
表作成を目的としたものとはなっておらず、全庁的な契約情報の一元管理は行われていない。
近隣府県を見ると、2府県において一定金額以上の予定価格のものを対象とした応札処理や発注処理機能を有した「契約管理システム」を導入している事例がある。
全庁的な契約管理の実施により、次のような効果が期待される。
【全庁的な契約管理の実施によって期待される効果】
●契約事務の経済性・効率性に対する適切なモニタリング 現在は各課で管理している契約締結状況(契約締結方法別の件数や応募業者数、落札率等)の情報を一元管理してモニタリングすることにより、各課における契約締結状況を契約管理を行う課が把握することができ、契約事務の経済性・効率性について有効な検討に繋がることが期待される。 例えば、競争性のない随意契約の見直しや、応募者数を増加するための取り組み、 予定価格決定方法の再検討に繋がることが期待される。 |
●網羅的な情報公開 全ての委託契約を一元管理することにより、応募情報や落札情報の公開を網羅的かつ正確に実施することができる。 |
●監査委員監査用資料作成の効率化 現在、監査委員監査のための準備資料として、一定金額以上の委託契約については各課が手作業でリストを作成しているが、契約管理システム等のデータベースから資料を出力作成することで、正確かつ迅速な資料の作成が可能となり業務の効率化を図ることができる。 |
契約管理システムを導入することができれば、全庁的な契約情報を正確かつ迅速に管理することが容易になると考えられる。
しかし、委託契約の一元管理には管理部署の見直しに伴う大幅な組織運用体系の見直しが必要であり、システム導入には多額のコストと長期の開発期間を要するほか、財務会計システムとの連携の可能性等の将来に向けた先行投資の選択など、多くの検討すべき事項がある。
既存の役務調達公開システムをカスタマイズする(例えば、予定価格や応募者数を入力できるようにする)等により、限定的ではあるが上記効果を得ることも考えられる。費用対効果を勘案しつつ、全庁的な契約管理の実施の有用性について検討されたい。
2.随意契約情報の公表について
① 随意契約に関する情報の公表の実施について【意見】(第4 2(3)参照)
県は、会計課において平成 24 年4月に「随意契約ガイドライン」を策定している。当ガイドラインの趣旨は、随意契約を行う場合の運用の厳正化と随意契約手続きの透明性を図ることである。
随意契約の適用にあたっての厳正な運用を図り、その透明性を確保するため、当ガイドラインに基づく運用・モニタリングは重要な意義があると考える。現時点では、ガイドラインの策定後間もないこともあり、随意契約締結状況に関する情報については会計課への報告にとどまっており、県民への公表は検討している段階である。
将来的に、県民に対する情報の公表を念頭に置いた場合、正確かつ網羅的に情報を公表するだけでなく、適時に随意契約締結の事実や理由等を公表できる仕組みを構築していく必要がある。
3.情報システム調達ガイドラインの運用について
① 情報システム調達ガイドラインの適用の不徹底について【監査の結果】(第4 3
(2)参照)
県は、情報システムの調達業務の基本的な考え方や事務手順を可視化し標準化・明確化することの必要性から、平成 19 年3月に「情報システム調達ガイドライン」を策定している。当ガイドラインは、調達に先立っての現状分析の実施、適切な企画設計の実施、運用後の評価の実施等、一般的に情報システムの調達に重要とされるプロセスへの対応を明確に示したものとなっている。
現時点における運用状況について確認したところ、別途規定されている「システム導入事前協議要領」に基づく情報政策課と予算要求部署との事前協議の過程で、現状分析の実施や費用対効果の事前検証は実施されているが、ガイドラインで要求されている所定の資料は作成されておらず、ガイドラインに従った事後的な評価(システム構築目的の達成状況、費用対効果の達成状況)は行われていない。
ガイドラインの周知と運用の徹底が十分になされていない状況は、県としても課題として認識しているとのことであり、平成 24 年度においてガイドラインに係る説明会を開催して、周知徹底を図る等の取り組みに着手している。
早急に、県が管理する情報システムについて、ガイドラインに従った運用を行っていくことが必要である。
4.検査調書の作成及び回付について
① 検査調書作成の徹底と、前金払のケースにおける会計課への回付について【監査の結果】(第4 4(2)参照)
「検査調書」は、委託契約の履行確認を実施したことを示す重要な資料であるが、一部の委託契約において、「検査調書」が作成されていないものがあった。
これは以下の理由によるものである。
・担当者が「検査調書」作成義務を承知していなかったこと
・一部の契約では前金払のケースがあるが、当該ケースにおいては「検査調書」の作成は不要であると誤解していたこと
「検査調書」作成の趣旨を適切に理解し、作成を徹底するとともに、支払を行う会計課においても適切に確認を行う必要がある。
また、前金払のケースにおいては、「検査調書」が作成されたとしても、支払を行う会計課には回付される仕組みとはなっていない。
事後的にではあるが、支払の妥当性を会計課が確認するように、前金払のケースにおいても「検査調書」を必ず会計課に回付する仕組みに変更する必要がある。
【2】個別委託契約事務に係る監査の結果及び意見の総括
【2-1】契約事務に共通する監査の結果及び意見の総括
監査対象となった契約事務に共通する結果及び意見は次のとおりである。
1.主な監査の結果
① 変更事業計画の未承認について(第5【2】10、11 参照)
監査対象とした施設管理に関する契約事務の中で、年度中に事業計画の変更の申請があったが、これについて決裁権限者である担当課長は書面の確認は実施しているものの、正式な決裁を経て承認通知文書の発行を行っていない委託契約があった。
これは、変更内容が自主事業においての一時的なイベントの追加実施等であったことから、正式な文書通知を省略したとのことであったが、事業計画の変更は重要な事項であり、正式な決裁を経た上で承認について文書通知すべきである。
② 検査調書の未作成について(第5【1】17、【2】8、12、13、14、20、【4】
9、11 参照)
県では、「財務規則第 97 条」において、履行確認の結果として「検査調書又は検収調書」を作成しなければならないとしているが、「検査調書」が作成されていない委託契約があった。「検査調書」作成の趣旨を適切に理解し、作成を徹底する必要がある。
③ 収支計算書の正確な記載について(第5【2】12、13、14 参照)
県は、基本協定書に基づき、年度終了後に、委託先から「収支計算書」を入手しているが、収支差額が0となるように、「その他の経費」に実際に支出されていない金額を含めて記載している委託契約があった。
このように、現状の収支計算書では、実際に支出されていない金額が支出されたように読み取れる記載となっており、指定管理業務の実態を把握するための資料として適切ではない。基本協定書によると、指定管理業務の実施による剰余金はインセンティブとして指定管理者の利益とすることとされているため、「収支計算書」上は収支差額として計上したうえで、指定管理者の利益として処理することが適切である。
県は、基本協定書を前提とした正確な収支計算書を入手し、指定管理業務の実態を適切にモニタリングする必要がある。
2.主な意見
① 予定価格の算出方法について(第5【2】21、22、23、24 参照)
振興局の警備業務委託契約において、予定価格を、前回の契約の予定価格から一定の割合を減額して算出している委託契約があった。当該算出方法には具体的な根拠はなく、委託先選定に先立っての予定価格の算出上、好ましいものではない。明確な根拠のもと、予定価格の積算を行うことが必要である。
② 複数業者の見積書による予定価格の算出について(第5【2】5、【3】7、【4】
4参照)
監査対象とした一般競争入札契約において、予定価格の算出時に、業者より見積書を徴取しているが、現在契約している委託先1者のみからしか見積書を徴取していない委託契約があった。1者のみの見積書では、金額の比較ができず、妥当な価格かどうかの判断ができない。見積書は複数の業者から徴取し、金額の妥当性を判断した上で、これを基に予定価格を算出することが必要である。
③ 一括発注の可能性の検討について(第5【3】1、2、3参照)
きのくに e-ねっと関連の3契約は、本来的には一体として取り扱われるべき業務内容であるにもかかわらず、それぞれ分割して発注されている。県によると、各契約を分割して発注した理由としては、発注単位を細分化することにより、中小企業の応募を促すため、とのことであった。
しかし、結果としては同一の大手業者が3契約の委託先となっている。仮に一部の業務を中小企業に委託することとなっても、契約後の各業者間の連携に課題が生じることが予想される。また、一括発注することにより、契約事務手続きの効率化が図られると考える。
以上を踏まえ、当該契約については一括して発注することを検討すべきである。
④ 剰余金の取扱いについて
(第5【2】1、13 参照)
監査対象とした指定管理契約の中で、利用料金制度の採用により、施設の利用料金収入はすべて指定管理者の収入となるが、指定管理者募集要項及び基本協定書に、剰余金の使途を特定するような記載がある指定管理契約やその取り扱いが曖昧な指定管理契約があった。利用料金制度の趣旨は、指定管理者に収入インセンティブを与え、経営努力を促すことにより、サービスの向上を図る点にあると考えられる。剰余金の使途を特定するような指定管理者募集要項及び基本協定書の記載は、利用料金制度の意義を損なうものである。
指定管理者応募段階での業者参入の妨げとなっている可能性も否定できないことから、利用料金制度の採用により生じた剰余金に関する取扱いについて、事業者にインセンティブを与える方策を再検討し、指定管理者募集要項及び基本協定書の記載内容を見直す必要がある。
⑤ 契約書における精算に関する取り決めについて(第5【1】2、15 参照)
監査対象とした随意契約において、契約書上は精算に関する取り決めがないことから、実際に要した金額が契約金額を下回る場合に、別途、変更契約書を締結している委託契約があった。契約書において精算の取扱いについて規定しておき、当該規定に基づき精算を行うことが効率的であると考える。
⑥ 備品の所有権の明確化について(第5【1】7、8【2】15、16、17、18 参照)監査対象とした指定管理契約の中で、基本協定書に、指定管理者が備品を購入し た際の所有権の取扱いについての規定がないため、指定管理者により購入された備品の所有権が県と指定管理者のどちらにあるか分からない指定管理契約があった。指定管理者の交代の際にも継続的にサービスの提供が行えるように、指定管理業
務に必要な備品であるならば所有権は県とするよう基本協定書において明記する必要がある。
⑦ 修繕費に関する基本協定書への記載について(第5【1】7、8参照)
施設の維持管理業務に係る修繕費の負担関係(県と指定管理者との間での負担区分に関する取り決め)が明確になっていない指定管理契約があった。
修繕費の負担関係について、基本協定書に記載し、両者の負担区分について明確にしておく必要がある。
⑧ 事業効果の把握実施の明文化について(第5【4】12、13、14、15、16、17、 21 参照)
緊急雇用創出事業臨時特例基金を活用した事業の一部においては、毎月業務日報の提出を求め、雇用者の研修内容等を把握されている。また、契約期間終了時には雇用者から感想文等のコメントの提出を受け、どのような能力が向上したかについて把握されている。
しかし、これらの業務日報や感想文等の提出については仕様書等で特に記載がなく明文化されていない。適切に提出を受けるために、これらの提出について仕様書等で明確にしておくことが必要である。
⑨ 支出実績の確認について(第5【1】6、9、10、11、12、13、18、【2】11、
【4】2参照)
契約締結方法が随意契約又は単独随意契約によるにもかかわらず、支出実績の提出を求めておらず、委託金額の妥当性の検討がなされていない委託契約があった。随意契約又は単独随意契約は、委託金額の決定時に競争性が十分に作用しているとは言いがたいため、県は事後的に委託業務の実績及び委託金額の妥当性をモニタリングする必要がある。
⑩ 再委託の実績確認について(第5【2】1、4、9、12、13、14 参照)
委託先が再委託を行う場合には事前に県の承認が必要とされており、事前に県は承認を行っているが、事後的な実績の確認までは実施されていない委託契約があった。
再委託に対する承認の趣旨は、再委託の範囲の妥当性・必要性の判断を行うことにあるが、当該趣旨の達成のためには、事前承認だけでなく、事後の実績確認まで行うことが必要である。再委託に関する実績を入手し、収支報告との整合性を確認することにより、事前申請のない再委託が行われていないことも確認する必要がある。
⑪ 再委託実績の記載内容について(第5【2】15、16、17、18、19 参照)
委託先が再委託を行う場合、県は事前承認だけでなく実績についても再委託に関する一覧表を入手しているが、当該一覧表に、実際の再委託金額の記載がないため、事前承認の内容との照合や再委託金額の妥当性の判断ができない委託契約があった。当該一覧表に実際の再委託金額が記載できる欄を設ける等の見直しを行うべきである。
⑫ 収支予算書・収支決算書の項目追加について(第5【2】12、17 参照)
指定管理契約において、県は、委託先より収支決算書の提出を受けているが、支出項目の一部の項目について詳細な内容を把握していない指定管理契約があった。当該項目の内容は、再委託料の一部や自主事業に係る経費等であったが、収支予算・収支
決算の内容を明確にするために、当該項目のうち主要な項目については別項目として記載を行うことを検討されたい。
⑬ 審査の評価表の改善について(第5【1】4、5【4】2、6、7、10、12、 13、14、15、16、17、18、19、20、21 参照)
企画提案方式による事業提案時の審査において、採点表に評価点の数値が記載されているのみで、審査を行った各委員の業者選定に対するコメントが記載されていない委託契約があった。数値のみの採点結果だけでは、評価の理由が不明瞭であるため、必要に応じてコメント等を記載できる様式とすることを検討されたい。
【2-2】外郭団体との契約事務に係る監査の結果及び意見の総括
1.外郭団体との契約事務について
外郭団体は、地方公共団体の外部に存在していながら、地方公共団体の機能を補完・補強し、一体となってまたは連携して一定の役割を担うという側面もあり、県とは密接な関係を有している。したがって、外郭団体への業務委託契約に関して、競争性の確保や契約金額の妥当性等について十分な検証が行われていない可能性が考えられるため、監査にあたっては、以下の視点を重視して実施した。
⮚ 契約金額(予定価格)の積算は、十分な根拠に基づいて行われているか
⮚ 契約相手先の選定は競争性が機能し、経済性・有効性を追求するものとなっているか
⮚ 単独随意契約について、随意契約とする理由が合理的か
⮚ 再委託が行われている場合、その理由は合理的か
2.主な監査の結果
① 再委託の未承認について(第5【1】1、7、8 【2】10 参照)
委託先が再委託を行う場合には事前に県の書面による承諾が必要であるとされてい るにもかかわらず、県の書面による承諾を得ずに再委託が行われているものがあった。契約書等に基づき、再委託に関する事前の申請を求め、その是非について判断する 必要がある。また、再委託の合理性を判断するという再委託事前承認の趣旨から判断すると、事後的にも再委託の実績を把握し、事前承認のない再委託が行われていない
こと及び再委託金額の妥当性を検討することが必要である。
3.主な意見
① 単独随意契約理由の根拠の明確化について(第5【1】11、16 参照)
契約締結方法が単独随意契約であるものにおいて、単独随意契約とする理由が契約
締結時の決裁書類に明確に記載されていない委託契約があった。
契約締結の決裁時に単独随意契約の妥当性を判断するために、決裁書類に、随意契約理由をより詳細に記載すべきである。
② 再委託承認手続きが不十分であることについて(第5【1】19 参照)
県では、再委託を行う場合には事前に書面による県の承認を得ることとしているが、その記載内容について、再委託先・再委託金額等の詳細な記載がなく、業務内容の列挙にとどまっているものがあった。
再委託について県が承認する際の判断材料として十分なレベルの申請・承認の実施のために、記載内容を含む再委託の承認手続きについてルール化し運用する必要がある。
また、再委託の合理性を判断するという再委託事前承認の趣旨から判断すると、事後的にも再委託の実績を把握し、事前承認のない再委託が行われていないことの確認を行うことも検討する必要がある。
③ 収支報告の方法について(第5【1】1参照)
委託業務終了後に委託先から提出される「実績報告書」において、委託先が委託料の枠外で負担した費用が収支報告に記録されず、委託料財源に対応する費用支出のみが記録されている委託契約があった。
県として当委託業務の実施状況をモニタリングするうえでは、委託先の自己財源で賄ったコストを含めた委託業務全体のコストを把握する必要がある。このため、収支報告の様式を変更する等により、委託先の自己財源を用いて事業を実施する場合でも、委託業務全体の状況を把握し、今後の契約手続きに活用していくことが望まれる。
【2-3】施設管理に関する契約事務に係る監査の結果及び意見の総括
1.施設管理に関する契約事務について
県が実施する施設管理には、庁舎および県営施設等の保守点検、清掃等の業務がある。これらの業務委託にあたっては、効率化の観点より、関連施設で共通する業務については一括発注が、複数年の委託が想定されるものについては複数年契約が有効と考えられるが、これらについて十分に検討されていない可能性が考えられる。また、委託業務が適切に履行されない場合、施設の利用者等が適切にサービスの提供を受けることができない可能性も生じる。
施設管理にあたっては、特殊な業務を含むものがあることから、随意契約または単独随意契約による場合があるが、起案の段階で随意契約とする理由が明確でない恐れがあるため、監査にあたっては、以下の視点を重視して実施した。
⮚ 同種業務の一括発注や、複数年契約の可能性は十分に検討されているか
⮚ 単独随意契約について、随意契約とする理由が合理的か
2.主な監査の結果
1.に記載している重視する視点に該当する主な結果はなかった。
3.主な意見
① エリアごとの一括発注の検討について(第5【2】21、22、23、24 参照)
振興局の警備業務委託契約においては、県内に7箇所ある振興局ごとに条件付き一般競争入札により、事業者を選定している。競争入札に要する事務の効率化等を図るために、振興局ごとに契約手続きを行うのではなく、紀北と紀南を分けたエリアごとで発注を行う等、一括発注の効果について検討し、発注業務の効率化に積極的に取り組むべきである。
② 予定価格の算定における事業規模縮小の加味について(第5【2】6参照)
前年度と比較して事業規模が縮小しているにもかかわらず、予定価格の算定にあたって、前年度実績を基準とし、事業規模の縮小を加味していない委託契約があった。
過年度の実績を考慮して予定価格を算定する場合、事業内容の変更や事業規模の拡大・縮小も加味して予定価格を算定する必要がある。
③ 指定管理者を非公募とする際の決裁について(第5【2】7、14 参照)
県の非公募による指定管理者の選定において、決裁文書における指定管理者を非公募とする理由が不十分であった委託契約があった。
非公募による選定を行う際には、適切な時期・理由に基づき事務手続きを進めていくことが必要である。
④ 備品管理状況のモニタリングについて(第5【2】12、13、14、15、16、17、 18、19 参照)
施設管理の指定管理契約において、指定管理者による備品の管理状況に関する県への報告及び県によるモニタリングが行われていないものがあった。
県の財産である当該備品の管理状況については、定期的に管理状況の報告を求めるとともに、適切なモニタリングを行うことが必要である。
【2-4】情報システムに関する契約事務に係る監査の結果及び意見の総括
1.情報システムに関する契約事務について
県では、平成 20 年度から平成 24 年度までを計画期間として、和歌山県情報システム全体最適化計画を策定している。計画の目標として、情報システム導入効果の向上、利用者の立場に立った情報システムの構築およびトータルコストの抑制が挙げられている。これらを達成するための具体的な方策の一つとして、情報システム調達ガイドラインの整備・制度化があり、これによって、情報システムの調達における業務の簡素化や効率化が図られる。したがって、当該ガイドラインが実際に業務委託契約において適用されているかどうかが重要である。また、システムに関連する委託業務は高度な専門性が必要なことから随意契約による場合があるが、起案の段階で随意契約とする理由が明確であるかといったことも重要である。よって、監査にあたっては、以下の視点を重視して実施した。
⮚ 契約金額(予定価格)の積算は、十分な根拠に基づいて行われているか
⮚ 契約業務の実績・成果に対する契約時点での期待効果との比較検証が行われているか
⮚ 単独随意契約について、随意契約とする理由が合理的か
2.主な監査の結果
① 情報システム調達ガイドラインの適用の不徹底について(第5【3】6、7、
8参照)
平成 19 年3月に策定された「情報システム調達ガイドライン」が十分に適用されていない状況であることは、上記【1】3でも記載したとおりであるが、監査対象とした個別業務委託契約においても、ガイドライン策定後の導入事例であるにもかかわらず、ガイドラインで要求されている所定の資料等は作成されていなかった。
「ガイドライン」の周知と運用の徹底が十分になされていない状況は、県としても課題として認識しているとのことであるが、早急に、現在県が管理する情報システムについて、「ガイドライン」に要求される関連資料を整備し、その状況をモニタリングする必要がある。
3.主な意見
① 予定価格の見直しについて(第5【3】4参照)
情報システムに関する運用管理業務において、予定価格を、前回契約時の予定価格をそのまま用いており改めての算定を行っていない委託契約があった。前回契約時の予定価格と契約金額との乖離や、今回仕様書に新たに追加された内容等を考慮し、改めて予定価格を算定する必要があったと考える。
② 複数年契約の検討について(第5【3】5参照)
情報システムの維持管理業務において、当該システム開発会社と単独随意契約を締結しているが、契約期間は1年間とされており、毎年契約を締結しているものがあった。情報システムに特に不具合や改善要望がなく再構築の予定が具体化していない中では、複数年契約を行うことに支障はないと考えられ、それにより事務手続きの効率化が図れるとともに、場合によっては委託契約金額削減の可能性も考えられる。
このような契約については、複数年契約の導入について検討すべきである。
【3】監査の結果及び意見の一覧
監査対象となった個別委託契約事務における監査の結果及び意見は次のとおりである。
No | 結果/意見 | タイトル | 該当する個別委託契約 |
1 | 結果 | 再委託の未承認について | 第5【1】1、7、8、【2】10 |
2 | 結果 | 事業計画書の未入手について | 第5【1】2 |
3 | 結果 | 仕様書変更手続の不備について | 第5【1】11 |
4 | 結果 | 契約金額変更承認書類の記載内容の不備について | 第5【1】11 |
5 | 結果 | 検査調書の未作成について | 第5【1】17、【2】8、12、13、 14、20、【4】9、11 |
6 | 結果 | 適切な契約の締結について | 第5【1】18 |
7 | 結果 | 変更事業計画の未承認について | 第5【2】10、11 |
8 | 結果 | 収支計算書の正確な記載について | 第5【2】12、13、14 |
9 | 結果 | 情報システム調達ガイドラインの未適用について | 第5【3】6、7、8 |
10 | 意見 | 収支報告の方法について | 第5【1】1 |
11 | 意見 | 委託料の対象となる人件費の明確化について | 第5【1】2 |
12 | 意見 | 契約書における精算に関する取り決めについて | 第5【1】2、15 |
13 | 意見 | 事務費の計算方法について | 第5【1】3 |
14 | 意見 | 審査の評価表の改善について | 第5【1】4、5、【4】2、6、 7、10、12、13、14、15、16、17、 18、19、20、21 |
15 | 意見 | 支出実績の確認について | 第5【1】6、9、10、11、12、13、 18、【2】11、【4】2 |
16 | 意見 | 備品の所有権の明確化について | 第5【1】7、8、【2】15、16、 17、18 |
17 | 意見 | 修繕費に関する基本協定書への記載について | 第5【1】7、8 |
18 | 意見 | 単独随意契約理由の根拠の明確化について | 第5【1】11、16 |
19 | 意見 | 業務の効率化について | 第5【1】14 |
20 | 意見 | 再委託承認手続きが不十分であることについて | 第5【1】19 |
21 | 意見 | 委託料に含まれる公社職員の超過勤務手当の取扱いについて | 第5【1】20 |
No | 結果/意見 | タイトル | 該当する個別委託契約 |
22 | 意見 | 再委託の実績確認について | 第5【2】1、4、9、12、13、14 |
23 | 意見 | 剰余金の取扱いについて | 第5【2】1、13 |
24 | 意見 | 衛生消耗の出庫票における記載項目及び在庫管理について | 第5【2】2 |
25 | 意見 | 仕様書への実績報告に関する記載の追加について | 第5【2】3 |
26 | 意見 | 入札参加者の経営状況等に関する評価結果の保存について | 第5【2】4、5 |
27 | 意見 | 総合評価における基礎点及び加算点の公表時期について | 第5【2】5 |
28 | 意見 | 複数業者の見積書による予定価格の算出について | 第5【2】5、【3】7、【4】4 |
29 | 意見 | 予定価格の算定における事業規模縮小の加味について | 第5【2】6 |
30 | 意見 | 指定管理者を非公募とする際の決裁について | 第5【2】7、14 |
31 | 意見 | 説明会出席者の未応募理由の把握について | 第5【2】10 |
32 | 意見 | 収支予算書・収支決算書の項目追加について | 第5【2】12、17 |
33 | 意見 | 備品の管理状況のモニタリングについて | 第5【2】12、13、14、15、16、17、 18、19 |
34 | 意見 | 再委託実績の記載内容について | 第5【2】15、16、17、18、19 |
35 | 意見 | 再委託先のモニタリングを行う必要性について | 第5【2】19 |
36 | 意見 | エリアごとの一括発注の検討について | 第5【2】21、22、23、24 |
37 | 意見 | 予定価格の算出方法について | 第5【2】21、22、23、24 |
38 | 意見 | 一括発注の可能性の検討について | 第5【3】1、2、3 |
39 | 意見 | 予定価格の見直しについて | 第5【3】4 |
40 | 意見 | 委託先からの個人情報保護教育に関する実施報告書の決裁について | 第5【3】4 |
41 | 意見 | 複数年契約の検討について | 第5【3】5 |
42 | 意見 | 入札金額と予定価格との構成区分別比較について | 第5【3】6 |
43 | 意見 | 管理費について | 第5【4】1 |
44 | 意見 | 他府県の価格調査について | 第5【4】3 |
45 | 意見 | 競争性の確保について | 第5【4】4 |
No | 結果/意見 | タイトル | 該当する個別委託契約 |
46 | 意見 | 他自治体の配布単価調査について | 第5【4】5 |
47 | 意見 | 実態に即した積算の実施について | 第5【4】8 |
48 | 意見 | 緊急雇用創出事業として新規雇用者の要件具備の確認について | 第5【4】10 |
49 | 意見 | 財務状況の評価について | 第5【4】11 |
50 | 意見 | 企画提案方式の評価項目の再検討について | 第5【4】11 |
51 | 意見 | 事業効果の把握実施の明文化について | 第5【4】12、13、14、15、16、17、 21 |
52 | 意見 | 正規雇用状況のフォローアップについて | 第5【4】18 |
53 | 意見 | 契約金額の妥当性確認について | 第5【4】22 |
54 | 意見 | 長期契約の検討について | 第5【4】23 |
第4 委託契約の管理方法等、全般的事項に対する結果及び意見
1.業務委託契約に関する契約管理のあり方について (1)概要
対象 | 対象外 | |
業務内容 | 役務調達関係 | 物品購入、公共工事請負工事関係は別システム(物品電子調達システム、公共工事等入札情報 システム)で管理 |
契約締結方法 | 条件付き一般競争入札、簡易公 開調達 | 政府調達、企画提案型公募、随 意契約(簡易公開調達を除く。) |
管理対象部署 | 本庁各課室、各出先機関 | 警察 |
県は、役務調達に関する募集(入札公告)情報と選定結果(入札結果)情報を公表するための情報システムである「役務調達公開システム」を平成 21 年1月より導入している。当システムの対象となる契約の範囲は次のとおりである。
当システムの目的は、上記のとおり募集情報と選定結果情報を公表することにあるため、応募業者数や予定価格までは必ずしも登録されていない。そのため、当システムには落札率や応募業者数の計算・集計や一覧表作成の機能を有しない。
当システムを管轄する会計局総務事務集中課は、登録された情報に基づき、以下のように、そのシステム機能の不足を補いながら当システムを活用している。
1)業務種目の把握と見直しの実施
システムに登録する業務種目が明確かつ実情に応じたものとなるよう、発注実績を分析し、3年ごとに要綱を改正し、直近の平成 24 年1月には、35 の業務種目を増設している。
2)県内業者育成のための入札参加要件等の適切性の確保
条件付き一般競争入札及び簡易公開調達の地域要件区分(県内業者、準県内業者、県外業者)ごとの発注状況を把握し、競争性・公平性・透明性の確保や県内業者育成・品質の確保・不良不適格業者の排除という観点から地域要件・人材要件・実績要件の設定基準の適切性を検討し、所要の改善を続けている。
3)調達事務の効率化の推進
月別及び年度別の入札件数を手集計し、県全体の調達事務量やその進捗を把握するとともに、一時期に集中する入札について、複数年契約等による効率的な調達事務の可能性について、財務規則等の見直しを検討し、その推進に努めている。
(2)監査の結果
① 委託先選定結果(入札結果)情報の公開漏れについて
平成 23 年度における役務調達公開システムにおける入札結果公開状況を確認したと
ころ、条件付き一般競争入札 525 件中 24 件、簡易公開調達 1,532 件中 60 件について委託先選定結果(落札結果)が公開されていないことが判明した。
結果公開が漏れた理由としては、各課担当者によるシステム上の処理操作を失念していたことによる、とのことである。
また、その他にも委託先が実際に決定されてから結果が公開されるまでに1ヶ月以上の期間を経ているものも見受けられた。
結果公開の実施は、契約事務手続きの透明性を確保するための重要な手続きであり、適時かつ網羅的に実施すべきものである。各課への結果公開手続きの周知徹底を図るとともに、結果公開の状況について、管轄部署である総務事務集中課によるモニタリングを実施することが必要である。
(3)監査の結果に添えて提出する意見
① 全庁的な契約管理の実施について
(1)概要に記載したとおり、役務調達公開システムに入力される業務委託契約は一部の契約に限定されている。また、落札率や応募業者数の計算・集計や一覧表作成を目的としたものではなく、あくまで募集(入札公告)情報及び選定結果(入札結果)情報を対外的(県民に対して)に公開することを目的としている(平成 20 年度システム開発費用2百万円)。
県における平成 23 年度の委託料決算額は 20,688 百万円と非常に大きく、その経済性・有効性・効率性を管理することの必要性は高い。近隣府県を見ると、2府県において一定金額以上の予定価格のものを対象とした応札処理や発注処理機能を有した
「契約管理システム」を導入している事例がある。
全庁的な契約管理の実施により、次のような効果が期待される。
【全庁的な契約管理の実施によって期待される効果】
●契約事務の経済性・効率性に対する適切なモニタリング 現在は各課で管理している契約締結状況(契約締結方法別の件数や応募業者数、落札率等)の情報を一元管理してモニタリングすることにより、各課における契約 |
締結状況を契約管理を行う課が把握することができ、契約事務の経済性・効率性について有効な検討に繋がることが期待される。 例えば、競争性のない随意契約の見直しや、応募者数を増加するための取り組み、 予定価格決定方法の再検討に繋がることが期待される。 |
●網羅的な情報公開 全ての委託契約を一元管理することにより、応募情報や落札情報の公開を網羅的かつ正確に実施することができる。 |
●監査委員監査用資料作成の効率化 現在、監査委員監査のための準備資料として、一定金額以上の委託契約については各課が手作業でリストを作成しているが、契約管理システム等のデータベースから資料を出力作成することで、正確かつ迅速な資料の作成が可能となり業務の効率化を図ることができる。 |
契約管理システムを導入することができれば、全庁的な契約情報を正確かつ迅速に管理することが容易になると考えられる。
しかし、委託契約の一元管理には管理部署の見直しに伴う大幅な組織運用体系の見直しが必要であり、システム導入には多額のコストと長期の開発期間を要するほか、財務会計システムとの連携の可能性等の将来に向けた先行投資の選択など、多くの検討すべき事項がある。
代替的な方法としては、既存の役務調達公開システムをカスタマイズする(例えば、予定価格や応募者数を入力できるようにする)こと等の方法により、限定的ではあるが、上記効果を得ることができるとも考えられる。
費用対効果を勘案しつつ、契約管理システムの導入等による全庁的な契約管理の実施の有用性について検討されたい。
2.随意契約情報の公表について (1)概要
県は、会計課において平成 24 年4月に「随意契約ガイドライン」を策定している。当ガイドラインの趣旨は、地方自治法上、契約は一般競争入札が原則であるが、経済性よりも優先すべき客観的な事情がある場合に例外的に採用できる契約方法である随意契約について、運用の厳正化と随意契約手続きの透明性を図ることである。
当ガイドライン内において「随意契約の報告」という項が設けられており、随意契約の締結状況について、会計課に対して以下の要領で報告を行うことが定められている。
報告の目的 | ●県における随意契約内容の状況を把握し、当ガイドラインの遵守状況を確認するとともに、今後の社会情勢の変化等によるガイドライン見直しの資料とするため ●今後、随意契約の状況等を広く県民に公表することを検討するため の準備を行うため | ||||
報告の対象 | 県が締結した支出の原因となる契約で、第2号随意契約から第9号随意契約までに該当する契約 (以下除く) ・用地取得に係る公有財産購入契約及び補償契約等 ・契約書を作成していない契約 | ||||
報告の内容 | 随意契約理由(地方自治法施行令第 167 条の2第1項各号のいずれに該当するか)、契約相手先、企画コンペ方式・企画提案方式実施の有 無 等 | ||||
報告の流れ | 本庁各課 | → | 取りまとめ課(各部局主管課) | → | 会計課 |
報告の期日 | 一年度の契約状況について、当該翌年度の8月 31 日までに報告 |
上記規定に基づき、平成 24 年度において平成 23 年度における随意契約の締結状況に関する会計課に対する報告が行われている。
(2)監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)監査の結果に添えて提出する意見
① 随意契約に関する情報の公表の実施について
随意契約の適用にあたっての厳正な運用を図り、その透明性を確保するため、当ガイドラインに基づく運用・モニタリングは重要な意義があると考える。現時点では、ガイドラインの策定後間もないこともあり、上記「報告の目的」に照らした会計課への報告にとどまっており、県民への公表は検討している段階である。
平成 24 年度はガイドライン策定後の初年度の運用であったため、報告は一年度まとめての情報を取り纏めた形で行われている。
将来的に、県民に対する情報の公表を念頭に置いた場合、正確かつ網羅的に情報を公表するだけでなく、適時に随意契約締結の事実や理由等を公表できる仕組みを構築していく必要がある。
当該仕組みの構築にあたっては、前述した「契約管理システムの導入」(1(3)①参照)と合わせて、その方法を検討されたい。
3.情報システム調達ガイドラインの運用について
(1)概要
県では、情報システムに関する毎年度の予算要求に先立って、その必要性を判断するため、「システム導入(変更・委託)事前協議要領」(平成 18 年4月)を規定しており、情報システム投資の適切性について情報政策課と予算要求部署との間で事前協議を行うこととされている。
また、県は、情報システムの調達業務の基本的な考え方や事務手順を可視化し標準化・明確化することの必要性から、平成 19 年3月に「情報システム調達ガイドライン」
(以下、「ガイドライン」という。)を策定している。当「ガイドライン」は、調達に先立っての現状分析の実施、適切な企画設計の実施、運用後の評価の実施等、一般的に情報システムの調達に重要とされるプロセスへの対応を明確に示したものとなっている。
(2)監査の結果
① 情報システム調達ガイドラインの適用の不徹底について
現時点における運用状況について確認したところ、「システム導入事前協議要領」に基づく事前協議の過程で、現状分析の実施や費用対効果の事前検証は実施されているが、「ガイドライン」で要求されている所定の資料は作成されておらず、「ガイドライン」に従った事後的な評価(システム構築目的の達成状況、費用対効果の達成状況)は行われていない。
「ガイドライン」の周知と運用の徹底が十分になされていない状況は、県としても課題として認識しているとのことであり、平成 24 年度において「ガイドライン」に係る説明会を開催して、周知徹底を図っている。
また、平成 25 年度からは、システム導入協議に合わせて、事前協議書の提出2ヶ月前から段階的に「ガイドライン」所定の様式による各種資料を提出させることにより、
「ガイドライン」の運用定着を図っていくことを予定している。さらに、既存システムについても「ガイドライン」で要求されている事後的な評価を実施する予定とのことである。
上記の通り、定着に向けた取り組みに着手されているが、「ガイドライン」が制定されてから5年以上が経過しており、迅速な対応がなされていない。
上記取り組みを確実に遂行し、早急に、県が管理する情報システムについて、「ガイドライン」に従った運用を行っていくことが必要である。
4.検査調書の作成及び回付について (1)概要
県では、委託契約の履行確認を実施したことを示す資料として、「財務規則第 97 条」に基づき「検査調書」を作成しなければならないこととしている。
会計課が委託料を支払う際には、履行確認が完了していることを確認する必要があることから、「検査調書」は各担当課が作成した後、支出票に添付し会計課まで回付されている。
(2)監査の結果
① 検査調書作成の徹底と、前金払のケースにおける会計課への回付について
「検査調書」は、委託契約の履行確認を実施したことを示す重要な資料であるが、一部の委託契約において、「検査調書」が作成されていないものがあった。これは担当者が「検査調書」作成義務を承知していなかったこと、または、前金払のケースにおいては「検査調書」の作成は不要であると誤解していたこと、といった理由によるものである。
「検査調書」作成の趣旨を適切に理解し、作成を徹底するとともに、支払を行う会計課においても適切に確認を行う必要がある。
また、委託料の後払いのケースにおいては、会計課が支払を行う前提として委託契約の履行確認が完了していることを「検査調書」により確認を行っているが、前金払のケースにおいては、委託料は既に支払われているため、「検査調書」が作成されたとしても、支払を行う会計課には回付される仕組みとはなっていない
事後的にではあるが、支払の妥当性を会計課が確認するように、前金払のケースにおいても「検査調書」を必ず会計課に回付する仕組みに変更する必要がある。
第5 個別委託契約事務に対する結果及び意見
【1】外郭団体との契約事務
1.和歌山県広域災害・救急医療情報システムの管理及び運営業務(健康局医務課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 単独随意契約 | ||||
委 | 託 | 先 | 公益財団法人 和歌山県救急医療情報センター | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 105,877 | 予 | 定 | 価 | 格 | 105,877 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 和歌山県救急医療情報センターは、救急医療情報システムを管理運営するために設立された公益財団法人であり、当法人を除いて委託先は存在しないことから、単独随意契約を締結している。(地 方自治法施行令第 167 条の2第1項第2号) |
① 契約内容
和歌山県広域災害・救急医療情報システムの利用実態の把握や情報提供業務のほか、住民に対する当該システムの普及啓発等を行うものである。
② 委託金額の決定過程
過年度の実績や委託先からの見積書に基づき、予定価格を決定する。当該予定価格を委託先に提示し、委託先から受託の了承を受けることにより、予定価格をもって委託契約金額が確定する。
なお、当初契約金額は 104,997 千円であったが、県の都合により救急医療情報センターが移転する必要性が生じたため、880 千円の増額変更を行っている。
(2)監査の結果
① 再委託の未申請について
再委託については、契約書第 12 条において、原則として禁止であるが、事前に県の書面による承諾を得た場合は可能とされている。当契約において、システムメンテナンス業務が県医師会及び歯科医師会に再委託されているが、県の書面による承諾は行われていなかった。
契約書に基づき、再委託に関する事前の申請を求め、その是非について判断する必要がある。
(3)意見
① 収支報告の方法について
平成 23 年度においては、当業務に関する費用のうち、一部分については委託先が委
託料の枠外で負担している(予定価格決定段階では 7,692 千円を委託先が負担することとなっている)。
このように平成 23 年度における当業務は、委託料以外にも委託先の自己財源を用いて実施されているものの、委託業務終了後に委託先から提出される「実績報告書」に記載される収支報告では、委託料財源に対応する費用支出のみが記録されており、当業務全体におけるコストが把握できない状況となっている。
県として当委託業務の実施状況をモニタリングするうえでは、委託先の自己財源で賄ったコストを含めた当業務全体でのコストを把握する必要があると考えられる。このため、収支報告の様式を変更する、もしくは、委託先の決算書を添付する(和歌山県救急医療情報センターは当業務のみを実施する団体であるため。)ことにより、今後、委託先の自己財源を用いて事業を実施する場合でも、当業務全体の状況を把握し、契約手続きに活用していくことが望まれる。
2.地域医療支援センター運営事業(健康局医務課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 単独随意契約 | ||||
委 | 託 | 先 | 公立大学法人 和歌山県立医科大学 | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 93,380 | 予 | 定 | 価 | 格 | 93,380 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 和歌山県立医科大学は県内唯一の医師養成機関でり、県内公的病院等に多数の医師を派遣しており、また今後、県民医療枠・地域医療枠医師の卒後研修等を行っていくこととされている。以上のことから、和歌山県立医科大学は当該事業を受託できる唯一の機関であり、単独随意契約を締結している。(地方自治法施行令第 167 条の2第1項第2号) |
① 契約内容
医師の地域偏在を解消するため、県内の医師不足の状況等を把握・分析し、医師のキャリア形成支援と一体的に医師不足病院の医師確保の支援等を行うものであり、事業内容は以下のとおりである。
⮚ 医師不足状況等の把握・分析
⮚ 医師不足病院の支援
⮚ 医師のキャリア形成支援、地域医療従事医師の養成
⮚ 情報発信と相談への対応
⮚ 運営委員会の開催
② 委託金額の決定過程
過年度の実績や委託先からの見積書に基づき、予定価格を決定する。当該予定価格を委託先に提示し、委託先から受託の了承を受けることにより、予定価格をもって委託契約金額が確定する。
なお、当初契約金額は 101,821 千円であったが、人件費の減少、年度末時点の精算
により、二度の契約変更を行い、当初契約金額より計 8,441 千円の減額となっている。
(2)監査の結果
① 事業計画書の未入手について
委託契約書第8条において、「委託事業開始時点には、委託者は県に対して事業計画書、収支予算書等を提出する」こととされているが、実際には事業計画書等の入手は行われていなかった。
委託事業終了時点においては実績報告書を入手しているものの、事業計画書がないことから計画と実績との比較が行うことができず、適切な履行確認が出来ていないと考えられる。
委託事業開始時点において事業計画書を入手し、その妥当性について検証したうえで、委託事業終了時点では実績との比較を行うことにより、委託業務実施状況に対する評価を含めた履行確認を適切に実施することが必要である。
(3)意見
① 委託料の対象となる人件費の明確化について
県は、当委託事業に関連して委託先が雇用した医師の人件費のうち、3分の2を委託料の一部として支払っている。
この「3分の2」の根拠としては、和歌山県立医科大学の医師は「診療・教育・研究」の3種類の業務を平均的に実施しており、診療については、診療報酬による負担が行われるものとして、残り2種類の業務(教育・研究)部分について委託料として負担する、という考えがあるとのことであった。
しかし、当該「3分の2」に関するルールは、仕様書、契約書等には特に記載されておらず、委託先との間で明確に取り交わされたものではない。
実務上は当該「3分の2」のルールに基づき、委託先からの報告・精算が行われていることから、当該基準の妥当性について再検討するとともに、その考え方について明確にした上で、委託先との間で明文化しておくことが必要と考える。
② 契約書における精算に関する取り決めについて
当契約においては、委託先の実際に要した金額が契約金額を下回る場合には、精算を行い、最終的には委託先の実際に要した金額を支払っているが、契約書上は精算に関する取り決めがないことから、別途、変更契約書を締結している。
あらかじめ精算を行うことが決まっているのであれば、契約書において精算の取扱いについて規定しておき、当該規定に基づき精算を行うことが効率的であると考える。
3.コスモパーク加太維持管理業務委託契約(企画部企画政策局企画総務課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 単独随意契約 | ||||
委 | 託 | 先 | 和歌山県土地開発公社 | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 25,080 | 予 | 定 | 価 | 格 | 25,447 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 本件管理契約の対象となる土地は、県がコスモパーク加太の一部を県土地開発公社(以下「公社」という。)から賃借しているものである。 水管理や水質検査などの管理業務はコスモパーク加太全体の維持管理と密接不可分であること、管理業務には公社の保有する排水プラントなどを使用する必要があること、公社は過去の経緯から土地の管理業務について特別な知見を有していることから、その業務の性質上、公社でなければ履行できないと判断し単独随 意契約を締結した。 |
① 契約内容
県は、公社が所有するコスモーパーク加太の一部を賃借している。本委託契約は、県が賃借している部分の維持管理を公社に委託する契約である。具体的な維持管理業務の内容は、調整池の水中ポンプなどの施設管理、水質検査、除草および場内の点検整備などである。
公社は、県が賃借している部分を含めたコスモパーク加太全体の管理業務を、競争入札により選定した業者に再委託している。再委託先の業者による作業に対しては、公社職員が定期的に巡回監視を行っている。
県は本契約の管理のために、公社から月次で提出される業務実施状況の報告と、年度末に提出される本契約にかかる支出一覧表のチェックを実施している。
② 委託金額の決定過程
県企画総務課が県の基準に従って積算した金額で契約をいったん結んでいるが、この時点では、公社による再委託業者選定の競争入札での落札率を反映して契約金額を変更する旨の条件が付されている。
県が算定した賃借地の再委託に係る積算金額を予定価格として公社は競争入札を実施し、落札率は 84.96%であった。これを受けて、公社の再委託先を管理するための事務費を含めた積算金額から、予定単価が設定されている項目に落札率 84.96%を乗じて算出した金額に変更している。この変更金額に、電気機器交換などのメンテナンス経費を加算して、県と公社は金額変更契約を交わしている。
(2)監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)意見
① 事務費の計算方法について
本契約の事務費は、県の積算基準に従って、再委託金額と光熱水費の合計額に 93 分の7を乗じて算定している。
県は年度末に本契約の支出内容をチェックしており実態を把握しているのであるから、工事委託の内容を問わず一般に適用される事務費率を用いて算出した金額よりも、実態に基づいて算出した金額を用いた方がより適切な金額での契約が可能になると考えられる。以上より、事務費の算出に当たっては、実態に基づいた算出をすべきである。
4.地場産業の販路開拓事業(企業政策局企業振興課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 随意契約(企画提案方式) | ||||
委 | 託 | 先 | 公益財団法人 わかやま産業振興財団 | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 8,914 | 予 | 定 | 価 | 格 | 9,597 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 平成 22 年度に労働政策課が広く民間企業やNPO等への雇用創出のアイデアを募り、ふるさと雇用再生特別基金事業企画提案事業審査会により採択されたものであり、平成 23 年度も引き続き継続することが審査会で決定された。 当該審査会で選定された事業者である公益財団法人わかやま 産業振興財団(以下「財団」という。)との随意契約を締結した。 |
① 契約内容
本委託業務は、ふるさと雇用再生特別基金を利用した事業であり、県内中小企業への個別訪問による販路開拓の具体的なニーズ把握、企業ニーズに合致する展示会出展やマッチング又は売れる製品づくりのためのブラッシュアップなどが主な事業内容である。
企業訪問については、県で毎年 500 回程度は県内の事業者を訪問してそのニーズを聴取しているが、3,000 者を超える県内事業者数への訪問回数としては不足しているため、本契約を利用しその訪問回数の増加を図った。
② 委託金額の決定過程
企業振興課は、ふるさと雇用再生特別基金事業のテーマの一つとして「地場産業の販路開拓事業」を労働政策課に提案した。このテーマを提案する時に、県内の中小企業をもっとも熟知していると県が考える財団から見積を徴取し、この金額を予算要求額とした(9,597 千円)。
同テーマの応募者は2社あり、最終的に見積金額 9,597 千円で財団が事業を実施することが、ふるさと雇用再生基金提案事業審査会で認められた。この決定の後、企業訪問の計画出張回数の減少などを理由として委託金額の変更契約が交わされ、変更後の契約金額は 8,914 千円となった。
(2)監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)意見
① 審査の評価表の改善について
プロポーザル審査会での提案事業の審査は、6つの項目について5段階で評価されている。採点表には、1から5までの数値が記載されているのみで、審査を行った各委員の業者選定に対するコメントが記載されていない。数値のみの採点結果だけでは、評価の理由が不明瞭であるため、必要に応じてコメント等を記載できる様式とすることを検討されたい。
5.海外販路コーディネーターの新設事業(企業政策局企業振興課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 随意契約(企画提案方式) | ||||
委 | 託 | 先 | 公益財団法人 わかやま産業振興財団 | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 7,606 | 予 | 定 | 価 | 格 | 7,869 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 平成 22 年度に労働政策課が広く民間企業や NPO 等への雇用創出のアイデアを募り、ふるさと雇用再生特別基金事業企画提案事業審査会により採択されたものであり、平成 23 年度も引き続き継続することが審査会で決定された。当該審査会で選定された事業者である公益財団法人わかやま産業振興財団(以下「財団」と いう。)との随意契約を締結した。 |
① 契約内容
本契約は、ふるさと雇用再生特別基金を利用した事業である。その業務内容は、県内企業の海外販路開拓を支援する者(海外販路開拓コーディネーター)を雇用し、県内企業の海外見本市等への出展のアテンド、商談に関するアドバイス及び貿易取引に関する実務、手続き等に関する相談への対応等である。特にわかやま産品販促支援事業に関する業務(海外展示会集団出展支援、海外商談会開催支援等)等を担当している。一方、毎年度、和歌山国際経済サポートデスク運営委託事業として、民間企業出身のアドバイザーを配置しているが、海外ビジネスに関する相談、国際ビジネスセミナーの開催等を担当しており、海外販路開拓に関する支援を充実すべく、ふるさと雇用再生特別基金を活用し、実施したものである。
② 委託金額の決定過程
産業振興財団から本業務の見積書を徴取し、この見積金額 7,869 千円を当初の契約
金額としている。事業完了後に実費精算を行い、その精算後の金額 7,606 千円が本委託契約の金額である。
(2)監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)意見
① 審査の評価表の改善について
プロポーザル審査会での提案事業の審査は、6つの項目について5段階で評価され
ている。採点表には、1から5までの数値が記載されているのみで、審査を行った各委員の業者選定に対するコメントが記載されていない。数値のみの採点結果だけでは、評価の理由が不明瞭であるため、必要に応じてコメント等を記載できる様式とすることを検討されたい。
6.和歌山国際経済サポートデスク運営委託(企業政策局企業振興課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 単独随意契約 | ||||
委 | 託 | 先 | 公益財団法人 わかやま産業振興財団 | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 8,041 | 予 | 定 | 価 | 格 | 8,041 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 公益財団法人わかやま産業振興財団(以下「財団」という。)は、中小企業支援法第7条に基づき中小企業支援センターとして指定され、県に代わり経営の診断や助言、情報の提供等を行うことができる唯一の団体である。 また、新産業創出促進法に基づき、産官学が一体となって総合的な支援を図るために策定された「きのくにベンチャーランド構想」においても、県内の主な支援機関である学術研究機関、産業経済団体、金融機関、公設試験研究機関及び行政機関からなる「わかやま地域産業総合支援機構」の中核的支援機関として認定されており、県内企業支援のための総合窓口である。 このように、財団は、本委託業務における貿易投資相談窓口としての機能と外国進出への企業育成支援を併せて実施できる県 内唯一の団体であることから、単独随意契約を締結している。 |
① 契約内容
本委託業務は、県内企業の国際的な進出を支援するために、和歌山国際経済サポートデスクを財団内に設けて県内企業の支援を行うものである。なお、支援にあたっては、財団が会員として所属している独立行政法人日本貿易振興機構(以下「ジェトロ」という。)のコンサルティングノウハウを活用している。
② 委託金額の決定過程
企業振興課は、本事業を実施するに当たり、県内の中小企業をもっとも熟知していると県が考える財団からの見積を徴取した。
県と財団は、この金額で事業を実施することで合意し、本契約を締結した。
(2)監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)意見
① 支出実績の確認について
本委託契約では、支出実績の提出を求めておらず、委託金額が妥当であったかどうかの検討がなされていない。本委託契約は単独随意契約であり、委託金額の決定時に競争性が十分に作用しているとは言いがたいため、県は事後的に委託金額の妥当性をモニタリングする必要がある。
7.紀の川流域下水道の維持管理委託契約(河川・下水道局下水道課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 単独随意契約(非公募による指定管理) | ||||
委 | 託 | 先 | 財団法人 和歌山県下水道公社 | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 331,300 | 予 | 定 | 価 | 格 | 380,132 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 現時点では流入水量・水質が不安定であり民間業者に委託できる段階ではないため、県と関連市町が流域下水道を運営することを目的として設立した公益法人である下水道公社を指定管理者と して選定した。(地方自治法施行令第 167 条の2第1項第2号) |
① 契約内容
県が所有する紀の川流域下水道伊都浄化センターの維持管理業務を委託するものである。伊都浄化センターは平成 13 年に供用が開始され、紀の川流域における宅地の建設等により現在は水量・水質が不安定であるため、維持管理費等の複数年にわたっての将来予測が困難であるとの理由により契約期間が1年間となっている。水量・水質が安定すれば、将来的には公募での指定管理者の選定を予定している。
② 委託金額の決定過程
過年度の実績、県の基準による積算に基づき、予定価格を算定している。実際の委託契約金額は、予定価格の範囲内において、指定管理者の提示金額(収支予算)に基づき決定される。委託料は概算払いであり、上表の契約金額は、精算後の金額である。
(2)監査の結果
① 再委託の未承認について
再委託については、基本協定書第7条において、県の承認が必要とされている。現在、汚泥の最終処理業務等を再委託しているが、これに関して内部での決裁が取られておらず、県の承認がなされていない。また、事後的な再委託の実績確認についても実施されていない。今後、再委託について事前承認を行うとともに再委託の実績を把握し、事前承認のない再委託が行われていないこと及び再委託金額の妥当性を検討するために、実績確認を行う必要がある。
(3)意見
① 備品の所有権の明確化について
基本協定書には、指定管理者が指定管理料で備品を購入した際の所有権の取扱いについての規定がない。そのため、平成 23 年度に指定管理者が指定管理料で水質測定器等の備品を購入した実績があるが、現状ではどちらに所有権があるか分からない状況である。指定管理者の交代の際にも継続的にサービスの提供が行えるように、当管理委託業務に必要な備品であるならば所有権は県とするよう協定書において明記する必要がある。
② 修繕費に関する基本協定書への記載について
基本協定書には、当該維持管理業務にかかる修繕費の負担関係(県と指定管理者との間での負担区分に関する取り決め)についての文言がない。実際には、大規模修繕については、指定管理料とは別に県が予算を組み負担することとなっているとのことである。
修繕費の負担関係について、基本協定書に記載し、両者の負担区分について明確にしておく必要がある。
8.紀の川中流流域下水道の維持管理委託契約(河川・下水道局下水道課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 単独随意契約(非公募による指定管理) | ||||
委 | 託 | 先 | 財団法人 和歌山県下水道公社 | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 174,212 | 予 | 定 | 価 | 格 | 231,618 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月 1 日~平成 24 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 現時点では流入水量・水質が不安定であり民間業者に委託できる段階ではないため、県と関連市町が流域下水道を運営することを 目的として設立した公益法人である下水道公社を指定管理者と |
して選定した。(地方自治法施行令第 167 条の2第1項第2号)
① 契約内容
県が所有する紀の川中流流域下水道那賀浄化センターの維持管理業務を委託するものである。那賀浄化センターは平成 20 年に供用が開始され、紀の川中流流域における宅地の建設等により現在は水量・水質が不安定であるため、維持管理費等の複数年にわたっての将来予測が困難であるとの理由により契約期間が1年間となっている。水量・水質が安定すれば、将来的には公募での指定管理者の選定を予定している。
② 委託金額の決定過程
過年度の実績、県の基準による積算に基づき、予定価格を算定している。実際の委託契約金額は、予定価格の範囲内において、指定管理者の提示金額(収支予算)に基づき決定される。委託料は概算払いであり、上表の契約金額は、精算後の金額である。
(2)監査の結果
① 再委託の未承認について
再委託については、基本協定書第7条において、県の承認が必要とされている。現在、汚泥の最終処理業務等を再委託しているが、これに関して内部での決裁が取られておらず、県の承認がなされていない。また、事後的な再委託の実績確認についても実施されていない。今後、再委託について事前承認を行うとともに再委託の実績を把握し、事前承認のない再委託が行われていないこと及び再委託金額の妥当性を検討するために、実績確認を行う必要がある。
(3)意見
① 備品の所有権の明確化について
基本協定書には、指定管理者が指定管理料で備品を購入した際の所有権の取扱いについての規定がない。そのため、平成 23 年度に指定管理者が指定管理料で濁度計等の備品を購入した実績があるが、現状ではどちらに所有権があるか分からない状況である。指定管理者の交代の際にも継続的にサービスの提供が行えるように、当管理委託業務に必要な備品であるならば所有権は県とするよう協定書において明記する必要がある。
② 修繕費に関する基本協定書への記載について
基本協定書には、当該維持管理業務にかかる修繕費の負担関係(県と指定管理者との間での負担区分に関する取り決め)についての文言がない。実際には、大規模修繕については、指定管理料とは別に県が予算を組み負担することとなっているとのこと
である。
修繕費の負担関係について、基本協定書に記載し、両者の負担区分について明確にしておく必要がある。
9.和歌山県地域がん登録業務委託契約(保健福祉部健康局 健康推進課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 単独随意契約 | ||||
委 | 託 | 先 | 公立大学法人 和歌山県立医科大学 | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 8,405 | 予 | 定 | 価 | 格 | 8,405 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 以下の理由により、地方自治法施行令第 167 条の2第1項第2号に基づき和歌山県立医科大学(以下「県立医大」という。)と単独随意契約を締結している。 ・厚生労働省が指定するがん診療連携拠点病院のうち、都道府県に1か所だけ指定される都道府県がん診療連携拠点病院であること。 ・地域がん登録の基礎となるデータである院内がん登録を実施しており、他の院内がん登録実施医療機関に対して助言する立場にあり、地域がん登録事業実施についても中心となる医療機関である。 ・大学病院であり、地域がん登録業務を行ううえで、相談・協力を必要とする専門医師と連携が図れるなど、地域がん登録事業を 円滑に実施できる体制が整っていること。 |
① 契約内容
本委託業務は、国立がん研究センターの主導で全国的に実施されている業務であり、がん患者の罹患率、生存率、治療状況を分析するためのデータを収集して、今後のがん治療に役立てようとするものである。
県唯一の都道府県がん診療連携拠点であり、本委託業務のために必要な診療情報管理士が配置されているなど、効果的かつ効率的に本業務を実施できる県立医大に単独随意契約で業務を委託している。
② 委託金額の決定過程
健康推進課は、本事業に要する人件費等を積み上げて算出した見積委託金額 8,405千円を県立医大に提示し、県立医大から事業を受託する旨の意思表示を得た後に内諾
書を徴している。
この内諾金額で、和歌山県立医科大学と本契約を締結している。
(2)監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)意見
① 支出実績の検証について
県は、委託先から本事業の支出明細を入手しておらず、支出内容の詳細な検証を実施していない。本契約は単独随意契約であるから、委託金額が効率的な業務の実施を前提とした合理的な金額であることを事後的に確かめる必要がある。したがって、県は委託先から本事業の支出明細を入手し支出内容を検証すべきであった。
10.和歌山県営住宅及び共同住宅施設の管理代行に関する業務等に係る協定(都市住宅局建築住宅課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 単独随意契約 | ||||
委 | 託 | 先 | 和歌山県住宅供給公社 | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 327,356 | 予 | 定 | 価 | 格 | 327,356 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 公営住宅法第47 条第1項及び和歌山県営住宅条例第57 条の規定により、入居者決定等の管理権限行使も含めて管理の代行をさせることができる団体は市町村と和歌山県住宅供給公社(以下 「公社」という。)のみである。市町村または公社に包括的管理委託をすれば、効果的で効率的な管理が可能となる。 対象地域の市町との協議の結果、市町は業務を受託しない意向であったため、実質的な委託先は公社に限定される。 また、特定公共賃貸住宅等には、公社が管理している県営住宅等と設備を共用しているものがあり、これらを一体的に管理させることにより、入居者の利便性向上や、管理業務の効率化を図る ことができるため、公社との随意契約とした。 |
① 契約内容
本契約は、県営住宅等 3,459 戸に係る管理及び使用料の収納業務、特定公共賃貸住
宅等 34 戸の管理業務を、県から住宅供給公社へ委託するものである。
県営住宅の入居許可、退去の督促及び使用料徴収事務等を包括的に委託するためには、公営住宅法に規定される「管理代行者制度」に則らなければならず、同法の既定により管理代行者は市町村又は住宅供給公社に限定されている。県は県営住宅等の包括的委託について対象地域の市町と事前協議をしたが、市町は業務を受託しない意向であり、住宅供給公社と本契約を締結している。
② 委託金額決定までの経過
契約金額は、和歌山市の市営住宅1戸あたり委託費用に県営住宅等の委託戸数を掛けた金額と、県の積算基準に基づいた積算金額とを比較し、より安価である積算金額を委託価格として公社に提示している。
公社は、提示された金額で委託内容が遂行できる旨を県に回答し、本契約の締結に至っている。
(2)監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)意見
① 支出実績の確認について
随意契約であり価格競争原理が作用しない本契約においては、県が契約金額の妥当性を事後に検討する必要がある。
県は公社から委託料収支明細書を入手しているが、同明細書は費目ごとの支出金額を記載しているのみであり、支出内容が不明である。そのため、同明細書を閲覧しても、本契約業務に関連した支出であるかが判断できない。県担当者によれば、公社へのヒアリングと詳細な支出内容が記載された資料の閲覧により、委託料収支明細書に記載された金額の妥当性を確かめているとのことである。しかし、その検討内容を記録した調書は保管されていなかった。
契約金額が妥当であったことは、担当者レベルでの判断に留めるのではなく、その上席者である本契約業務の管理責任者が判断すべきである。また、支出内容の妥当性を検討した調書は、翌期の契約金額を設定するための有用な情報となる。
したがって、契約金額の妥当性を検討した調書は、検査調書に添付するなどして上席者に回付し、保管しておくことが必要であった。
11.平成 23 年度認知症疾患医療センター運営事業実施業務委託契約(福祉保健政策局障害福祉課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 単独随意契約 | ||||
委 | 託 | 先 | 公立大学法人 和歌山県立医科大学 | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 6,605 | 予 | 定 | 価 | 格 | 6,850 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | |||||
厚生労働省の補助金事業であり、事業実施要綱に定められた設置 | |||||||||
( 条件付き一般競争入 | 基準を満たす必要がある。県内の紀北地域で設置基準を満たす団 | ||||||||
札でない場合)その理由 | 体は、和歌山県立医科大学のみであったため。(地方自治法施行 | ||||||||
令第 167 条2第1項第2号) |
① 契約内容
和歌山県認知症疾患医療センターの運営事業実施業務の委託であり、事業にかかる委託金額のうち2分の1は厚生労働省管轄の国の補助金を財源としている。
認知症疾患医療センター運営事業実施要綱に定められたセンターの設置基準に合致する和歌山県立医科大学に平成 22 年度の途中から委託を行い、平成 23 年度も引き続き委託契約を締結している。
また、平成 23 年度においては、事業内容のひとつである研修の開催回数が、台風の影響により減少したため、該当分の委託金を減額する契約変更を行っている。
② 委託金額の決定過程
報償費については、県の単価に基づいて算出しており、その他の項目については、平成 22 年度の実績に基づいて予定価格を算出し、徴取した見積書に基づいて予定価格の範囲内で委託金額を算出している。
(2)監査の結果
① 仕様書変更手続の不備について
業務仕様書の「5.業務内容(4)かかりつけ医等への研修の開催」において、「研修に要する費用のうち、特別旅費、需用費、使用料及び賃借料については、金 102 千円を限度として研修の受講者又は受託者が負担するものとする」と記載されている。しかし、委託業務として実施する研修において受託者が費用を負担する合理的な理由がないとして、年度内に県が費用を負担することを決定し、契約金額を変更しているが、仕様書の変更手続きを経ることなく委託料を増額している。
業務内容が当初の仕様書から変更となる場合は、仕様書の正式な変更手続きを行う
必要がある。
② 契約金額変更承認書類の記載内容の不備について
県では、平成 23 年9月に発生した台風の影響により、仕様書に記載された認知症疾患医療連携協議会及びかかりつけ医等への研修の開催回数が減少したことに伴い、平成 24 年3月において再度見積りを徴取し委託費の契約金額を変更している。しかし、変更内容には、県全域協議会開催回数の減少による委託料の減額だけではなく、通常の事業運営の中で予算と乖離した、需用費の増額等が含まれているが、承認書類には委託料減額以外の変更内容は記載されていないまま決裁されている。
契約金額の変更については、変更理由や変更内容を承認書類に明確に記載し、変更理由が合理的であるか、また、変更内容が妥当であるかについて慎重な検討を行った上で決裁する必要がある。
(3)意見
① 単独随意契約理由の根拠の明確化について
県では、和歌山県立医科大学が国の補助金事業としての要件を満たす唯一の病院であるため、単独随意契約となっているが、その理由について検討過程が示されていない。
補助金事業としての要件を満たす病院が他にないことは、医師会への問い合わせ等による検討の結果とのことであるが、検討の過程を示した上で単独随意契約での契約締結について決裁を行うことが必要である。
② 支出実績の確認について
県では、委託先からの請求書に基づいて委託料の支払いを行っているが、請求内訳を入手していない。
請求内訳を入手し、各業務毎の実際の支出額を把握することで事業実績の経済性を的確に分析することができる。また、県では委託料の予定価格の算定を過年度実績に基づいて実施しているため、詳細な実績を把握することでより精緻な翌年度以降の予定価格を算定することが可能となる。
以上より、委託事業の業務ごとの支出実績を確認することが必要である。
12.人権相談事業委託契約(人権局人権政策課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 単独随意契約 | ||||
委 | 託 | 先 | 財団法人 和歌山県人権啓発センター | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 2,948 | 予 | 定 | 価 | 格 | 2,948 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 財団法人人権啓発センターは人権啓発や人権侵害に係る問題の対応を専門的に行うために県が設立した団体である。継続的に専任相談員による相談業務にあたる事が可能で、県の広報誌である 「県民の友」において人権相談機関として周知を図っている団体であり、県内にこのような団体は他にないため単独随意契約を締 結している。(地方自治法施行令 167 条の2第1項第2号) |
① 契約内容
和歌山県人権啓発センターに人権相談員を配置し、人権に関わる様々な相談に対し、相談者自身による主体的な問題解決を支援するため、電話相談を中心とした助言、専門機関の紹介、法律相談への切替等必要な対応を行う業務を委託するものである。
また、月2回(各3時間)の範囲内で一般相談では対応が難しい法律的知識等を要する相談に対し、弁護士が専門的な立場から助言等を行う。
② 委託金額の決定過程
相談員報酬は、県において相談業務を行っている他の非常勤職員と同等の単価、弁護士費用は過年度の実績単価、その他は前年度と事業内容に変更がないことから前年度当初予算を参考に積算を行った結果として予算を算出し、委託金額は契約先より入手した収支予算書に基づいて予算の範囲内で決定している。
(2)監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)意見
① 収支実績の確認について
県では、実績報告にあたって収支計算書を報告させているが、収支計算書は各費目毎の収支結果であり、実績単価や消耗品費の内訳等の内容については把握していない。また、収支計算書において収支予算書との乖離があった場合にも具体的な内容を把握していない。本年度においては、需用費(消耗品費)の予算額 13 千円に対
し、決算額 51 千円と金額的には少額ではあるが割合としては大きく乖離しているにもかかわらず、予算額と実績額が乖離した理由について把握していなかった。
過年度実績を参考に予定価格を算出しているため、収支実績の把握は経費削減の観点から有用であり、収支計算書の内訳の入手や、予算との乖離についての内容把握が必要である。
13.人権啓発推進事業委託契約(人権局人権施策推進課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 単独随意契約 | ||||
委 | 託 | 先 | 財団法人 和歌山県人権啓発センタ- | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 19,986 | 予 | 定 | 価 | 格 | 19,986 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 人権啓発センターは、人権問題に関する情報の収集と提供、効果的な人権啓発の研究を行い、様々な人権について総合的に取り組んでおり、県が実施する人権啓発事業の委託先として最適であり、かつ他に適切な委託先は存在しないため、単独随意契約を締 結している。(地方自治法施行令第 167 条の2第1項第2号) |
① 契約内容
地域住民の人権問題に対する正しい認識を広めるために、以下の啓発活動を委託するものである。
⮚ 講演会の開催
⮚ 資料の作成・配布
⮚ スポット広告放送の提供
⮚ 新聞広告の掲載
⮚ 研修会の開催
⮚ 地域人権啓発活動活性化事業の実施
⮚ その他上記に準ずる啓発活動で知事が相当と認めるもの
② 委託金額の決定過程
過年度の実績、県の基準による積算に基づき、予定価格を算定している。委託契約金額は、予定価格の範囲内において、県の提示金額に基づき決定される。
(3)意見
① 実績報告における支出内容の確認ついて
契約期間終了後に委託先より提出される実績報告に委託事業ごとの委託費の内訳明細が添付されている。この内訳明細には各事業ごとの予算額と決算額が記載されているが、さらに詳細な決算額の支出内容までは把握できるものではない。少なくとも、予算額と決算額が大きく乖離している以下のものについては、詳細な内容を把握し、使途に問題がないことを確認しておく必要がある。
(単位:円)
事 業 | 予算 | 決算 | 差額 |
啓発作文・ポスター・人権の詩募集 | 1,992,000 | 1,327,148 | 664,852 |
ふれあい人権フェスタ 2011 | 9,564,000 | 10,592,930 | -1,028,930 |
啓発資料作成 | 339,000 | 1,246,220 | -907,220 |
14.和歌山県職員定期健康診断等業務委託契約(総務管理局人事課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 約 締 結 方 法 | 条件付き一般競争入札(価格競争方式) | ||
委 託 先 | 財団法人 和歌山県民総合健診センター | ||
契 約 金 額 | 単価契約(最終支払 額は 23,973 千円) | 予 定 価 格 | 25,736 |
契 約 期 間 | 平成 23 年5月 10 日~平成 24 年3月 31 日 | ||
( 条件付き一般競争入 札でない場合)その理由 |
① 契約内容
県職員の定期健康診断、特殊業務従事者健康診断及び成人病健康診断の実施を委託するものである。
② 委託金額の決定過程
単価契約であり、予定価格は診察料等については過年度実績、血液検査料については、他の医療機関で実施した実例に基づいて算出し、委託金額は1団体による入札の結果、予定価格の範囲内で決定している。
(3)意見
① 業務の効率化について
県では、健康診断業務のうち、一部の健康診断(特殊業務従事者健康診断のうち、「有機溶剤等業務健康診断」)についてのみ、健診対象者の所属部署(果樹試験場、農業試験場、環境衛生研究センター、工業技術センター)で予算を決定し支払いも実施している。当該健康診断のみについて契約締結部署とは別の部署で別途支払業務を行う特段の必要性はなく、事務手続きが非効率となっているため、一括して総務管理局人事課での支払業務を行うことを検討すべきである。
15.和歌山県北部栽培漁業センター及び和歌山県南部栽培漁業センター施設管理運営業務及び種苗生産業務委託契約(水産局水産振興課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 約 締 結 方 法 | 単独随意契約 | ||
委 託 先 | 財団法人 和歌山県栽培漁業協会 | ||
契 約 金 額 | 51,571 | 予 定 価 格 | 51,571 |
契 約 期 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | ||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 和歌山県栽培漁業協会は、昭和 60 年発足当時から県の施設を使用し、常に県と一体となって種苗生産を行ってきており、大量生産の技術、豊富な経験を有した専門職員により、疾病対策、遺伝的多様性、系群等生態にも配慮した責任ある種苗生産を推進している。民間で生産されている種苗は、選抜育種や交配を重ねた養殖用種苗であり、このような種苗を自然海へ放流することは、生態系へ影響を及ぼすことが考えられる。 上記に加え、漁業者との密接な関係により、スムーズな連携を行うことが期待されることから、和歌山県栽培漁業協会と単独随意契約を締結している。(地方自治法施行令第 167 条の2第1項第 2号) |
① 契約内容
和歌山県北部栽培漁業センター(加太)と和歌山県南部栽培漁業センター(串本)の管理を行うとともに、平成 23 年度水産種苗生産計画に掲げる水産種苗の生産、配布を行うものである。
② 委託金額の決定過程
委託先から入手した見積書に基づき、委託先に対してヒアリングを行い、その後財政課による精査の後、予定価格が決定される。当該予定価格を委託先に提示し、委託先から受託の了承を受けることにより、予定価格をもって委託契約金額が確定する。
なお、当初契約金額は 50,557 千円であったが、和歌山県栽培漁業協会における人事異動により、人件費について当初予定契約額では不足が生じることとなったため、 1,014 千円の増額変更を行っている。
(2)監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)意見
① 契約書における精算に関する取り決めについて
当契約においては、過年度からの実態として、委託先の実際に要した金額が契約金額を下回る場合には、精算を行い、最終的には委託先の実際に要した金額を支払うこととなっている(平成 23 年度は委託先の実際に要した金額が契約金額を上回ったため精算は行われていない)。
しかし、契約書上は精算に関する取り決めがないことから、精算が必要となった年度においては、変更契約書を締結しているとのことである。あらかじめ精算を行うことが決まっているのであれば、契約書において精算の取扱いについて規定しておき、当該規定に基づき精算を行うことが効率的であると考える。
16.畜産経営指導事業委託契約(農業生産局畜産課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 約 締 結 方 法 | 単独随意契約 | ||
委 託 先 | 社団法人 畜産協会わかやま | ||
契 約 金 額 | 4,000 | 予 定 価 格 | 4,000 |
契 約 期 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | ||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 社団法人畜産協会わかやま(以下「畜産協会わかやま」という。)は、畜産農家に対して経営指導等を実施するために国の指導により県や市町村等の支援を受けて設置された団体である。県内では、他に本委託契約を実施する団体がないことから、単独随意契 約を締結している。 |
① 契約内容
本委託契約は、県内の畜産経営体に対する経営指導を効果的かつ効率的に実施するために、専門家を中心とした畜産経営のノウハウを有する団体に経営指導事業を委託するものである。
経営指導事業の内容は次のとおりである。
ⅰ)畜産経営体支援指導研究会の開催
経営指導方針の検討を目的とした支援指導研究会の開催及び経営指導に必要な畜産関係情報の収集等
ⅱ)畜産経営技術の支援指導
ア 担い手支援指導 後継者を中心とした担い手育成を図るための支援指導イ 経営改善指導 経営改善が必要な経営体への支援指導
ⅲ)畜産関係情報の提供
ホームページを中心とした畜産経営体及び関係機関への情報提供
ⅳ)その他畜産経営指導に必要な取り組み
② 委託金額の決定過程
予定価格を事業の各内容ごとに過去の実績に基づいて積算している。
この予定価格を契約金額として、県と畜産協会わかやまは本契約業務を締結している。
なお、県によれば、随意契約に至った詳細な理由は、次のとおりである。
県内において、一般的な経営分析・診断を実施する団体が存在することは認識しているが、本業務は経営分析・診断のみならず、畜産経営の効率化を図るための家畜の飼養管理技術に関する指導や飼養管理状態の分析、飼料・資材の現状の把握と適正な情報提供を複合的に行うことを目的としている。また、他の道県では、こういった業務は農業改良普及センターやJAの営農指導員により実施されているが、本県では農業改良普及員及びJAの営農指導員に畜産を専門とする職員は皆無である。こうした状況を踏まえた上で、県内畜産農家の情報を掌握し、畜産業において公共性の高く、情報や技術を有した畜産協会わかやまに随意契約により委託している。
(2)監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)意見
① 随意契約理由の記載について
県は契約書締結の決裁書類に単独随意契約とする理由を、畜産協会わかやまは国の
指導に基づき県や市町村の支援を受けて設置された団体であり、また、本契約業務を実施できる他の団体がないため、と記載している。
この記載だけでは、(1)②に記載した詳細な随意契約理由のとおり、県が他の本業務を実施できる団体の有無を適切に調査・判断していることを読み取ることができない。
県は、契約書締結の決裁書類に、随意契約理由をより詳細に記載すべきである。
17.和歌山県国際交流センターの指定管理に係る業務委託(企画政策局文化国際課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 方 | 法 | 随意契約(公募による指定管理) | |||||
委 | 託 | 先 | 財団法人 和歌山県国際交流協会 | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 204,000 | 予 | 定 | 価 | 格 | 204,375 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 28 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 本契約は、和歌山県国際交流センターの指定管理業務であり、自主事業の開催等もその業務内容に含まれている。指定管理者の選定にあたり、提案された自主事業の内容が公共の福祉の増進にどれだけ寄与するかを検討することが必要である。そのため、事 業内容の検討も含めた企画提案型の公募とした。 |
① 契約内容
本契約は、県が保有する国際交流センターの指定管理者を選定し管理させるもので、指定管理期間は5年である。
金額だけでなく、どのように国際交流センターを有効活用するかも含めての企画提案型の公募であり、2者からの応募があった。結果として、総合評価で最も高い点数を獲得した和歌山県国際交流協会が指定管理者として選定されている。
② 委託金額の決定過程
予定価格の設定は、過去の国際交流センター委託管理経費を参考にして見積もっている。その後、公募による指定管理者の選定手続きを経て、契約金額は 204,000 千円
となった。なお、契約金額の内、平成 23 年度分は 40,800 千円である。
(2)監査の結果
① 検査調書の未作成について
県では、「財務規則第 97 条」において、履行確認の結果として「検査調書又は検収調書」を作成しなければならないとしているが、当該業務について検査調書が作成さ
れていなかった。履行確認を確実に実施するため、検査調書の作成が必要である。なお、当契約は委託料を前金払するものであり、検査調書が作成されたとしても、前金払のケースにおいては、検査調書は支払を行う会計課には回付される仕組みとはなっていない。後払いのケースでは、会計課が支払を行う前提として委託契約の履行確認が完了していることを検査調書により確認を行っているが、前金払のケースではそのような回付の仕組みがないため、委託契約の履行確認が完了していることを会計課が確認する機会がない。
事後的にではあるが、支払の妥当性を会計課が確認できるように、前金払のケースにおいても検査調書を会計課に回付するよう仕組みを変更する必要がある。
(3)意見
特に記載すべき事項はない。
18.和歌山県臓器移植連絡調整者設置事業(健康局薬務課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 単独随意契約 | ||||
委 | 託 | 先 | 財団法人 和歌山県角膜・腎臓移植推進協会 | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 5,469 | 予 | 定 | 価 | 格 | 5,469 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 委託団体は県内で唯一の角膜あっせん業務を行うことができる団体であり、県における角膜・腎臓等の移植に関する調査研究及び移植の知識の普及啓発を行っている。また現在、同協会には非常勤職員として和歌山県臓器移植連絡調整者が設置されており、日本で唯一の臓器あっせん機関である社団法人日本臓器移植ネットワークと連携のもと、臓器移植に関するコーディネート業務及び医療機関等との連携体制の構築を行っており、本事業を円滑に遂行できる唯一の団体である。 以上のことから、和歌山県角膜・腎臓移植推進協会(以下「角膜・腎臓移植推進協会」という。)と単独随意契約を締結してい る。 |
① 契約内容
本委託契約は、和歌山県臓器移植連絡調整者(コーディネーター)を設置し、日常業務における広報活動等や、臓器提供業務における連絡調整業務を通じ、県における臓器移植を円滑に実施するための事業である。
なお、角膜・腎臓移植推進協会は平成 24 年度から健康局薬務課の所管であるが、本
委託契約の締結当時である平成 23 年度は、健康局難病・感染症対策課の所管であった。
② 委託金額決定までの経過
委託金額は、県が、県積算基準に基づいて算出した積算価格を委託先である角膜・腎臓移植推進協会に提示し、その金額で業務を請け負うことができるかの問い合わせを行い、これに同協会が同意することで決定されている。
(2)監査の結果
① 適切な契約の締結について
県は、災害対策本部を、委託先である角膜・腎臓移植推進協会の入居している県庁南別館に設置することになり、同協会に移転を依頼した。県は、同協会に対してその引越し費用を負担したが、簡便的に支払いを行うために本委託契約の変更契約として引越し費用の負担契約をしているが、本契約と当引越し費用の関連性は無い。
正しい費目での支払いを行うために、県は、引越し費用について本契約とは別個の契約を締結すべきであった。
(3)意見
① 支出実績の確認について
本契約は単独随意契約であり、また県が委託金額を決定し通知する方法での委託であるため、事後に委託金額の妥当性を検討することが必要であるが、県は、本業務に関しての支出実績報告書の提出を受けていない。
県は、委託先から支出実績報告書を提出させ、その内容の妥当性を検討すべきである。
19.勤労福祉会館管理運営委託業務(商工労働政策局労働政策課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 随意契約(公募による指定管理) | ||||
委 | 託 | 先 | 財団法人 和歌山県勤労福祉協会 | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 99,495 | 予 | 定 | 価 | 格 | 101,020 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 28 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 公の施設に対する指定管理事業であり、公募による指定管理者選定を実施している。結果として、財団法人 和歌山県勤労福祉協会以外に応募がなく、指定管理者選定委員会による選定審査を経 て、委託先の決定に至っている。 |
① 契約内容
和歌山県勤労福祉会館の管理運営業務の委託であり、指定管理者制度を採用している。委託業務のうち、夜間機械警備や館内清掃業務等を再委託している。
② 委託金額の決定過程
県の基準単価や、過年度の実績推移を参考に予定価格を算出し、委託金額は、受託者が提出している収支予算書に基づいて予定価格の範囲内で決定している。また、契約金額の内、平成 23 年度分の金額は 19,652 千円である。
(2)監査の結果
記載すべき事項はない。
(3)意見
① 再委託承認手続きが不十分であることについて
県では、再委託について協定書第 18 条においてあらかじめ県の承認を得ることとしている。
これに基づき、県は年度事業計画の申請に含める形で再委託の内容、再委託先、再委託金額等に関する申請を受け、承認を行っているが、委託予定項目のみのものがあった。再委託については経済性や業務の確保の観点から事前の承認を規定しているものであり、現状の承認状況は不十分である。
再委託について県が承認する際の判断材料として十分なレベルの申請・承認が必要である。
また、承認が必要とされている再委託の業務について申請と異なる再委託が行われていないかの確認を行うことも検討する必要がある。
20.公有地取得あっせん等委託業務(県土整備政策局用地対策課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 単独随意契約 | ||
委 | 託 | 先 | 和歌山県土地開発公社 | ||||
契 | 約 | ※ | 金 | 額 | 66,311 19,710 18,946 | 予 定 価 格 | 66,311 19,710 18,946 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | |||
( 条件付き一般競争入 | 和歌山県土地開発公社(以下「公社」という。)は、これまで |
継続的に用地交渉を行っており、本契約業務を実施するノウハウ
を有しているため、単独随意契約を締結した。
札でない場合)その理由
※ 契約金額の欄に記載した金額は、上から海草建設部、伊都建設部及び西牟婁建設部の金額である。
① 契約内容
本契約は、公社の職員が、各建設部等に常駐する形態での用地交渉業務等の委託である。具体的には、海草建設部に7人、伊都建設部に2人及び西牟婁建設部に2人の公社職員を常駐させ、道路事業等のために必要な用地の買収を委託する事業である。
② 委託金額の決定過程
予定価格は、人件費及び1人あたりの用地買収に要する経費の合計額に、配置人員を乗じて算定している。人件費は県職員の単価を利用しており、その他の費用は過去の実績に基づいた見積りを行っている。
県は、公社から予定価格で本契約業務が実施できる旨の同意を得て、当該価格で契約を締結している。
(2) 監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)意見
① 委託料に含まれる公社職員の超過勤務手当について
平成 23 年度の契約金額の内訳において、土地開発公社職員の一人当たり平均給与等
に主任以上で 15 時間、主査は 20 時間の超過勤務手当が含まれている。
これについて、県は委託業務に要した超過勤務時間の実績を調査・把握しておらず、委託金額に含めることが適当であるかの判断を行っていない。
県は、この超過勤務手当の見込額を今後も委託料に含めることが妥当であるかを検討すべきである。
なお、本契約は単独随意契約であり、金額の妥当性には特に留意が必要である。
【2】施設管理に関する契約事務
1.和歌山県障害児(者)・高齢者歯科口腔保健センター運営委託契約(健康局医務課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 約 締 結 方 法 | 随意契約(公募による指定管理) | ||
委 託 先 | 社団法人 和歌山県歯科医師会 | ||
契 約 金 額 | 77,963 | 予 定 価 格 | 77,963 |
契 約 期 間 | 平成 23 年4月1日~平成 28 年3月 31 日 | ||
( 条件付き一般競争入 札でない場合)その理由 | 指定管理者制度の導入により、指定管理者を公募し選定する必要 があったため。(地方自治法施行令第 167 条の2第1項第2号) |
① 契約内容
平成 10 年に県が開設した「和歌山県障害児(者)・歯科口腔保健センター」の管理運営に関する業務、歯科診療業務、及び施設維持管理業務を委託するものである。
② 委託金額の決定過程
支出見込額から収入見込額を控除した金額を委託料としている。収入項目はほぼ利用料金収入であり、年間の診療日数に1日当たり見込み患者数及び1人当たり見込み収入を乗じて算出している。支出項目については、その約7割が人件費であり、積算は歯科医師、歯科衛生士、事務員の区分ごとに、単価に人数及び年間勤務日数を乗じて計算している。計算に用いられる単価は、同様の機能を持つ障害児者歯科診療所の日当等を参考に算出している。なお、契約金額の内、平成 23 年度分は 15,580 千円である。
(2)監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)意見
① 剰余金の取扱いについて
和歌山県障害児(者)・高齢者歯科口腔保健センターの指定管理にあたっては利用料金制度が採用されており、施設の利用料金収入はすべて指定管理者の収入となる。しかし、その一方で剰余金の取扱いについては、指定管理者募集要項及び基本協定書において特に記載がなく、平成 23 年度決算では 1,835 千円の剰余金が生じている。当該剰余金は、決算書上「運営積立金」として翌年度に繰り越されている。所管課によると指定管理業務において赤字が出た場合には当該積立金から補填することとしているとのことである。
利用料金制度の意義は、指定管理者に収入インセンティブを与え、経営努力を促すことにより、サービスの向上を図る点にあると考えられる。上記のように剰余金の使途を特定することは、利用料金制度の意義を損なうものである。
使途を含めた、剰余金の取扱いについて再検討し、その使途を制限する場合は、指定管理者募集要項及び基本協定書に剰余金の取扱いについて明記することが必要である。
② 再委託の実績確認について
再委託については、基本協定書第 23 条において、県の承認が必要とされており、本委託契約においては、指定管理者より診療報酬請求業務が再委託されている。これについては、当該規定に基づき、再委託についての事前承認が行われているが、事後的な再委託の実績確認を行っていない。
事前承認のない再委託が行われていないこと及び予算書に照らして収支報告書の金額の妥当性を検討するために、実績確認を行うべきである。
2.和歌山県庁舎及び構内清掃業務委託契約(総務管理局管財課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 約 締 結 方 法 | 条件付き一般競争入札(価格競争方式) | ||
委 託 先 | クリーン興商 株式会社 | ||
契 約 金 額 | 7,665 | 予 定 価 格 | 8,380 |
契 約 期 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | ||
( 条件付き一般競争入 札でない場合)その理由 | - |
① 契約内容
和歌山県庁舎北別館並びに議場及び構内屋外の日常清掃及び定期清掃、また、本館・東別館の定期清掃を委託するものである。本館・東別館の日常清掃については、外部への委託は行っておらず、県の職員が実施している。
② 委託金額の決定過程
予定価格は、労務数量や県の労務単価等に基づいて算出している。入札には 10 業者が参加し、入札結果に基づき、予定価格の範囲内において委託契約金額が決定されている。
(2)監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)意見
① 衛生消耗品の出庫票における記載項目及び在庫管理について
仕様書(4 費用等の負担の範囲)によると、「清掃に必要な資機材は、受託者の負担とする。ただし、衛生消耗品については特記がある場合を除き、県の負担とする。」とあり、トイレットペーパーや液体石鹸等の衛生消耗品については、県が負担している。
これらの衛生消耗品は、当該委託契約に含まれない本館・東別館の日常清掃(県の職員が実施)で使用するものとともに、庁舎内で保管されている。当該衛生消耗品については、出庫票を作成し、所管課担当者が払出日、払出数量及び使用場所等を記載されているが、受入数量及び在庫数量の記載欄がなく、あるべき在庫数量が分からない状況となっている。また、委託先に対する払出数量が委託業務の実施に適切な数量かどうかのモニタリングも実施されていない。
衛生消耗品は、資産流用の可能性がないとは言えないため、その在庫管理において は、少なくとも年に1度は棚卸を実施し、在庫票の在庫数と実際の在庫数の一致を確 認すべきである。そのためには、在庫票で在庫数量を把握できるように様式を見直す ことが必要である。さらに、日々の在庫管理として、委託先への払出数量が委託業務 を実施する上で適切な数量であることのモニタリングを実施することも検討されたい。
3.和歌山県庁舎電話交換機保守及び常駐対応業務委託契約(総務管理局管財課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 約 締 結 方 法 | 条件付き一般競争入札(価格競争方式) | ||
委 託 先 | 株式会社 井口通信 | ||
契 約 金 額 | 8,925 | 予 定 価 格 | 10,605 |
契 約 期 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | ||
( 条件付き一般競争入 札でない場合)その理由 | - |
① 契約内容
和歌山県庁内に設置している電話交換機及び電話設備の機能維持、保守点検を委託するものである。委託先の職員1名が常駐対応要員として、県職員と同じ勤務時間中、電話交換室に常駐している。
② 委託金額の決定過程
過年度の実績に基づき、予定価格を算出している。入札には2業者が参加し、入札結果に基づき、予定価格の範囲内において委託契約金額が決定される。
(2)監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)意見
① 仕様書への実績報告に関する記載の追加について
委託先からは、日々、保守点検等の実施内容を記載した業務日誌の提出を受け、管財課長までの決裁を受けている。また、半期ごとに実績報告書が提出されている。しかしながら、仕様書には当該業務日誌等の提出を含んだ実績報告に関する記載がなく、どのようにして委託業務の履行確認が実施されるかが明確となっていない。
実績報告資料が提出されなければ履行確認ができないため、委託業務の履行確認の方法について明確にするために、仕様書においてこれらの内容を記載しておくことが必要である。
4.和歌山県庁舎南別館管理運営業務委託契約(総務管理局管財課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 約 締 結 方 法 | 一般競争入札(総合評価落札方式) | ||
委 託 先 | 大揚興業-南北グループ | ||
契 約 金 額 | 194,250 | 予 定 価 格 | 278,223 |
契 約 期 間 | 平成 21 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | ||
( 条件付き一般競争入 札でない場合)その理由 | - |
① 契約内容
県庁舎の南別館の管理業務(設備管理業務、清掃及び環境衛生業務、施設警備業務)を一括で委託するものである。南別館は、県庁の分庁舎としての機能とともに、災害時における活動の中枢を担う防災センターとしての機能をもっており、365 日 24 時間体制で実施が必要な業務があるため、本館・東別館とは別に委託している。エレベーターの保守管理、消防設備及び電話設備の保守点検等については、特殊な技術が必要なため再委託している。
② 委託金額の決定過程
業者から徴取した見積書、県の基準による積算に基づき、予定価格を算定している。入札には3業者が参加し、入札結果に基づき、予定価格の範囲内において委託契約金額が決定される。なお、契約金額の内、平成 23 年度分は 64,750 千円である。
(2)監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)意見
① 入札参加者の経営状況等に関する評価結果の保存について
入札参加者に対しては、事前に資格審査を行っており、その審査内容の一つに、「契約の履行が困難であると認められる者でないこと」とある。県では、入札参加者から財務諸表等を入手し、専門家による判断を行っているが、この判断結果が書面で残されておらず、どのような判断が行われたかが不明瞭である。今後は、判断結果を議事録で明確にし、当該議事録は審査の結果資料として保管されることが必要である。
② 再委託の実績確認について
再委託については、契約書第5条において、県の承認が必要とされている。本委託契約においては、当該規定に基づき、再委託についての事前承認が行われているが、事後的な再委託の実績確認までは実施されていない。
事前承認のない再委託が行われていないこと及び再委託金額の妥当性を検討するために、実績確認を行う必要がある。
5.和歌山県庁舎南別館管理運営業務委託契約(総務管理局管財課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 約 締 結 方 法 | 一般競争入札(総合評価落札方式) | ||
委 託 先 | 大揚興業-南北グループ | ||
契 約 金 額 | 178,500 | 予 定 価 格 | 255,965 |
契 約 期 間 | 平成 24 年2月6日~平成 27 年3月 31 日 | ||
( 条件付き一般競争入 札でない場合)その理由 | - |
① 契約内容
県庁舎の南別館の管理業務(設備管理業務、清掃及び環境衛生業務、施設警備業務)を一括で委託している。南別館は、県庁の分庁舎としての機能とともに、災害時にお
ける活動の中枢を担う防災センターとしての機能をもっており、365 日 24 時間体制で実施が必要な業務があるため、本館・東別館とは別に委託している。エレベーターの保守管理、消防設備及び電話設備の保守点検等については、特殊な技術が必要のため再委託している。上記4.と同業務の次年度の委託契約である。
② 委託金額の決定過程
業者の見積りに基づき、予定価格を算出している。入札には3業者が参加し、入札結果に基づき、予定価格に範囲内において委託契約金額が決定されている。
(2)監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)意見
① 複数業者の見積書による予定価格の算出について
予定価格の算出時に、業者より見積書を徴取しているが、現行の業者1社のみからしか見積書を徴取していない。1社のみの見積書では、金額の比較ができず、妥当な価格かどうかの判断ができない。よって、見積書は複数の業者から徴取し、金額の妥当性を判断した上で、これを基に予定価格を算出することが必要である。
② 入札参加者の経営状況等に関する評価結果の保存について
入札参加者に対しては、事前に資格審査を行っており、その審査内容の一つに、「契約の履行が困難であると認められる者でないこと」とある。県では、入札参加者から財務諸表等を入手し、専門家による判断を行っているが、この判断結果が書面で残されておらず、どのような判断が行われたかが不明瞭である。今後は、判断結果を議事録で明確にし、当該議事録は審査の結果資料として保管されることが必要である。
③ 総合評価における基礎点及び加算点の公表時期について
総合評価点は、基礎点と加算点の合計点に入札価格を考慮して算出され、この総合評価点が一番高い業者が落札者となる。基礎点と加算点については、開札前にすでに決定されており、開札後、入札価格を反映した総合評価点が算出された後に落札者が決定される。
基礎点と加算点については、開札後の落札者の決定後、参加業者に対して公表されているが、これらの点数については開札前にすでに決定されていることから、透明性の確保の観点より、基礎点と加算点は開札前に公表することを検討する余地がある。
6.県立学校浄化槽保守点検等業務委託契約(北部2)(教育総務局総務課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 約 締 結 方 法 | 条件付き一般競争入札(価格競争方式) | ||
委 託 先 | 協同組合 中紀環境科学 | ||
契 約 金 額 | 14,047 | 予 定 価 格 | 18,769 |
契 約 期 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | ||
( 条件付き一般競争入 札でない場合)その理由 | - |
① 契約内容
和歌山県内を4つの区域に区分した内、北部2地域の県立学校の浄化槽保守点検等業務の委託であり、一般競争入札の結果、最低価格業者が落札した。委託業務には、県立学校の浄化槽保守点検業務のほか、定期検査業務、水質汚濁負荷測定業務が含まれている。
② 委託金額の決定過程
競争入札を開始した年度である平成 20 年度の金額を基準に、過年度実績の推移を加味して予定価格を算出し、10 業者による入札の結果、落札金額を委託金額として決定している。
(2)監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)意見
① 予定価格の算定における事業規模縮小の加味について
県では、予定価格の算定を過年度実績を考慮した結果として算定している。平成 23
年度は平成 22 年度に比して保守点検業務の対象となる学校が減少しているため事業規模の縮小分について減額が発生することが想定されるが、予定価格の算定上は当該減額を考慮していない。
過年度の実績を考慮して予定価格を算定する場合、事業内容の変更や事業規模の拡大・縮小も加味して予定価格を算定する必要がある。
7.和歌山県立若竹園の管理及び運営(福祉保健政策局障害福祉課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 約 締 結 方 法 | 単独随意契約(非公募による指定管理) | ||
委 託 先 | 社会福祉法人 琴の浦リハビリテーションセンター | ||
契 約 金 額 | 120,530 | 予 定 価 格 | 120,530 |
契 約 期 間 | 平成 23 年4月1日~平成 28 年3月 31 日 | ||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 医療行為を実施することが可能な人員を確保するため、社会福祉法人琴の浦リハビリテーションセンター(以下「リハビリセンター」という。)の隣接地に和歌山県立若竹園(以下「若竹園」という。)を建設した。その設立経緯から、本契約はリハビリセン ターとの随意契約となった。 |
① 契約内容
本契約業務は、平成 23 年度から平成 27 年度までの5年間にわたる若竹園の指定管
理事業である。平成 18 年度からリハビリセンターによる指定管理が開始され、平成 22
年度末で第1期指定管理期間が満了し、平成 23 年度からは第2期の指定管理となっている。
若竹園は通所療育型の施設であり、主たる対象は未就学の障害児である。また、同園は、県内で唯一の機能訓練・リハビリ等の医療行為を行うことができる医療型児童発達支援センターである。
そのため、医療行為を実施できる人員を確保することが必要であり、リハビリセンターに隣接して建設された。
なお、県は、保有する同種施設の民間譲渡を進めており、同園もその対象となったが、土地の処分方法についてリハビリセンターとの交渉がまとまらず、交渉をまとめる猶予期間として指定管理を平成 23 年度から1期間延長している。
② 委託金額の決定過程
本契約では、若竹園の運営経費から利用料収入を控除した経費不足額の過去実績を見積金額としている。この見積金額を契約金額として、リハビリセンターと随意契約を締結している。なお、契約金額の内、平成 23 年度分は 24,106 千円である。
(2)監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)意見
① 非公募理由の正確な記載について
標記施設(若竹園)の運営管理について、平成 21 年7月に「県立障害福祉施設のあり方検討委員会」を設置し民間譲渡に向けた方策等を検討したところですが、公有財産のうち土地の処分策について引き続き関係者と協議を行うため、平成 23 年4月1日以
降の運営管理については、非公募で指定管理を継続する必要があります。
指定管理者の選定にかかる決裁文書の中で、非公募の理由は次のように記載されている。
要約すれば、土地の処分方法を継続協議するために非公募とした、とのことである。しかし、土地の処分方法を決定するために指定管理期間を延長はしているが、これは非公募の理由ではない。非公募の理由はリハビリセンターに事業を委託する予定で若竹園を隣接地に建設した設立経緯にある。
県は、非公募に至った経緯を明確に記載した上で、決裁を受ける必要がある。
8.和歌山県発達障害者支援センター運営事業委託契約(福祉保健政策局障害福祉課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 約 締 結 方 法 | 単独随意契約 | ||
委 託 先 | 社会福祉法人 愛徳園 | ||
契 約 金 額 | 27,537 | 予 定 価 格 | 27,537 |
契 約 期 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | ||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 発達障害児の支援に関するノウハウを有し、有効かつ安定して事業を実施することのできる団体が県内で社会福祉法人愛徳園の みであるため。(地方自治法施行令第 167 条の2第1項第2号) |
① 契約内容
和歌山県発達障害者支援センター運営事業の委託契約であり、主な業務内容は、各分野において相当の経験及び知識を有する職員を配置して、発達障害者及びその家族に対する相談支援や発達支援の実施である。また、委託費の2分の1について国の補助金が充当されている。
② 委託金額の決定過程
主に過年度の実績を参考にして予定価格を算出し、委託金額は、業者より徴取した見積金額に基づいて予定価格の範囲内で決定している。
(2)監査の結果
① 検査調書の未作成について
県では、「財務規則第 97 条」において、履行確認の結果として「検査調書又は検収調書」を作成しなければならないとしているが、当該業務について検査調書が作成されていなかった。履行確認を確実に実施するため、検査調書の作成が必要である。
(3)意見
特に記載すべき事項はない。
9.和歌山県立情報交流センターの管理及び運営に関する業務(企画政策局情報政策課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 約 締 結 方 法 | 随意契約(公募による指定管理) | ||
委 託 先 | 特定非営利活動法人 和歌山 IT 教育機構 | ||
契 約 金 額 | 404,820 | 予 定 価 格 | 404,820 |
契 約 期 間 | 平成 19 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | ||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 公の施設に対する指定管理事業であり、公募による指定管理者選定を実施している。指定管理者選定委員会による選定審査を経 て、委託先の決定に至っている(応募業者は2社)。 |
① 契約内容
和歌山県立情報交流センターBig・U の管理及び運営業務を委託するものであり、設立時である平成 17 年 1 月から指定管理者制度を導入している。指定管理者の公募を行
った結果、従前からの指定管理者が選任された。(新たな指定管理期間は平成 23 年度までの5年間)。
また、本契約においては、施設・設備の維持管理業務、清掃業務、警備業務等の再委託を実施している。
② 委託金額の決定過程
過年度の実績に基づき、予定価格を算出し、指定管理者の募集要項に記載を行っている。実際の委託契約金額は、予定価格の範囲内において、指定管理者の提示金額(収支予算)に基づき決定される。なお、契約金額の内、平成 23 年度分は 80,964 千円である
(2)監査の結果
特に記載すべき事項はない。
(3)意見
① 再委託実績の確認について
指定管理者による再委託については、基本協定書第 21 条において、県の承認が必要とされている。これに基づき、県は契約当初に再委託の内容、再委託先等に関する申請を受け、承認を行っているが、事後的な実績の確認までは実施されていない。
再委託に対する承認の趣旨は、再委託の範囲の妥当性・必要性の判断を行うことにあるが、当該趣旨の達成のためには、事前承認だけでなく、事後の実績確認まで行うことが必要である。再委託に関する実績を入手し、収支報告との整合性を確認することにより、事前申請のない再委託が行われていないことも確認する必要がある。
10.和歌山県植物公園緑花センター及び根来山げんきの森の管理業務委託契約(森林・林業局森林整備課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 約 締 結 方 法 | 随意契約(公募による指定管理) | ||
委 託 先 | 特定非営利活動法人 根来山げんきの森倶楽部 | ||
契 約 金 額 | 345,000 | 予 定 価 格 | 347,905 |
契 約 期 間 | 平成 23 年 4 月 1 日~平成 28 年 3 月 31 日 | ||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 公の施設に対する指定管理事業であり、公募による指定管理者選定を実施している。結果として、根来山げんきの森倶楽部以外に応募がなく、指定管理者選定委員会による選定審査を経て、委託先の決定に至っている。(地方自治法施行令第 167 条の2第1項 第2号) |
① 契約内容
和歌山県植物公園緑花センター及び根来山げんきの森の管理について指定管理者制度を利用した運営業務の委託である。公募に対して根来山げんきの森倶楽部が応募したため、選定の結果、根来山げんきの森倶楽部を指定管理者として自主事業を含めた各施設の管理運営業務に係る契約を締結した。
利用料金制を採用しており、5年分の委託料について基本協定書で年度ごとの金額を定めている。
具体的な業務実施内容については、仕様書及び年度事業計画書に記載されており、リスク負担についても仕様書に記載されている。
また、管理業務の再委託については基本協定書第 17 条において、根来山げんきの森倶楽部があらかじめ県の承認を受けることと定めている。
② 委託金額の決定過程
過年度の臨時要因を除いた実績金額の平均により予定価格を算出し、指定管理に関して事前に提出される収支予算書の金額に基づいて予定価格の範囲内で委託金額を決定している。なお、契約金額の内、平成 23 年度分の金額は 69,000 千円である。
(2)監査の結果
① 再委託の未承認について
県では、再委託については基本協定書第 17 条において県の承認を得ることとしているが、再委託の申請は行われておらず、指定管理者選定時の事業計画において委託予定業務の内容が記載されているのみである。再委託については経済性や業務の質の確保の観点から事前の承認を規定しているものであり、現状の方法では不十分であると言える。
再委託については、県が承認する際の判断材料として十分なレベルの申請・承認が必要である。例えば、再委託業務について業務内容・再委託先・再委託金額等を示し、県の承認を得ることが考えられる。
また、実施に際して承認が必要とされている再委託の業務について実績の報告を入手していない。申請と異なる再委託が行われていないかの確認を行うことも検討すべきである。
② 変更事業計画の未承認について
年度中に根来山げんきの森倶楽部より事業計画の変更の申請があったが、これについて県では供覧として決裁権限者である担当課長まで閲覧しているが、正式な決裁を経て承認通知文書の発行を行っていなかった。
変更内容が自主事業の追加であり、また追加された事業が一時的なイベントの実施であったことから、正式な文書通知を省略したとのことであったが、事業計画の変更は重要な事項であり、正式な決裁を経た上で承認について文書通知すべきである。
(3)意見
① 説明会出席者の未応募理由の把握について
指定管理者選定過程において、募集説明会には3団体が出席していたものの、実際に応募した団体としては、前事業年度までの指定管理者である根来山げんきの森倶楽部だけであった。
今後、競争性が確保された中での指定管理者選定が行われるよう、説明会出席者に
対して応募しなかった理由についてアンケート等を行い、原因を把握することを検討されたい。
11.護摩壇山森林公園管理業務委託契約(農林水産部森林・林業局森林整備課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 単独随意契約(非公募による指定管理) | ||||
委 | 託 | 先 | 田辺市 | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 25,000 | 予 | 定 | 価 | 格 | 25,000 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 28 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 地域性などから近隣施設との連携により、来園者の増加が期待でき地域振興につながるため、近隣施設の管理を行っている田辺市を委託先に選定している。(地方自治法施行令第 167 条の2第1 項第2号) |
① 契約内容
護摩壇山森林公園の管理について指定管理制度を利用した運営業務の委託である。護摩壇山森林公園の管理業務については、施設の運営管理業務に加え、田辺市が一部財源を負担し施設の自主事業(利用者へのサービス向上、施設の運営効率化等)を行っている。
② 委託金額の決定過程
過年度の臨時要因を除いた実績金額の平均により予定価格を算出し、指定管理に関して事前に提出される収支予算書の金額に基づいて予定価格の範囲内で委託金額を決定している。なお、契約金額の内、平成 23 年度分の金額は 5,000 千円である。
(2)監査の結果
① 事業計画の変更の未申請について
平成 23 年度事業計画の提出当初は、自主事業としての食堂の運営を実施しない
としていたが、利用者の便宜を考慮して平成 23 年度中に食堂の運営を自主事業として実施することとなった。これについて口頭で田辺市から報告があったのみで、事業計画の変更申請を行っていなかった。
事業計画の変更については、変更申請及び承認の正式な手続を経る必要がある。
(3)意見
① 収支実績の確認について
県では、自主事業も含めた金額の収支報告書を入手しているが、指定管理業務に係る収支実績内訳を把握していない。指定管理事業の収支実績を適切に把握すると共に、指定管理料の算定の際にも過年度の実績を考慮しているため、経費節減の観点からも自主事業とは分離した指定管理業務のみに係る収支実績内訳の把握が必要である。
12.和歌山県体力開発センター運営管理に関する年度協定(生涯学習局スポーツ課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 随意契約(公募による指定管理) | ||||
委 | 託 | 先 | 財団法人 和歌山県スポーツ振興財団 | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 133,465 | 予 | 定 | 価 | 格 | 134,077 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 26 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 公の施設に対する指定管理事業であり、公募による指定管理者選定を実施している。結果として、財団法人和歌山県スポーツ振興財団(以下、「スポーツ振興財団」という)以外に応募がなく、指定管理者選定委員会による選定審査を経て、委託先の決定に至 っている。 |
① 契約内容
和歌山県体力開発センターの運営管理業務及び維持管理業務を委託するものであり、平成 18 年度から指定管理者制度を導入している。平成 23 年度において、指定管理者 の見直しを行い、従前からの指定管理者であるスポーツ振興財団との間で継続して協 定を締結している(新たな指定管理期間は平成 25 年度までの3年間)。
年度 | 委託契約金額 |
平成 23 年度 | 44,618 |
平成 24 年度 | 44,407 |
平成 25 年度 | 44,440 |
合計 | 133,465 |
また、本契約においては、清掃業務や消防点検業務等の再委託を実施している。
② 委託金額の決定過程
過年度の実績に基づき、予定価格を算出し、指定管理者の募集要項に記載を行っている。実際の委託契約金額は、予定価格の範囲内において、指定管理者の提示金額(収
支予算)に基づき決定される。
(2)監査の結果
① 収支計算書の正確な記載について
県は、「和歌山県体力開発センター運営管理に関する基本協定書」に基づき、年度終了後に、スポーツ振興財団から事業報告書を入手しており、この中には収支の状況を示した「収支計算書」が含まれている。
次の表は、当該「収支計算書」を一部抜粋したものである。
平成23 年度運営管理に係る収支計算書
(単位:円)
予算額 | 決算額 | 差異 | 備考 | ||
収入項目 | 運営管理委託料 | 44,618,000 | 44,618,000 | 0 | |
利用料金収入 | … | … | … | ||
自主事業収入 | … | … | … | ||
その他の収入 | … | … | … | ||
前期繰越 | … | … | … | ||
収入合計( A ) | 103 ,178 ,000 | 126 ,555 , 116 | △ 23 ,377 ,116 | ||
支出項目 | 人件費 | … | … | … | |
委託費 | … | … | … | ||
消耗品費 | … | … | … | ||
: | … | … | … | ||
(省略) | … | … | … | ||
: | … | … | … | ||
旅費 | … | … | … | ||
その他の経費 | 13,654,000 | 37,419,849 | △ 23,765,849 | ||
支出合計( B ) | 103 ,178 ,000 | 126 ,555 , 116 | △ 23 ,377 ,116 | ||
収支( A ) - ( B ) | 0 | 0 | 0 |
このように、収支差額が0となるように、「その他の経費」が収入と支出の差額とし て記載されているが、「その他の経費」の内容についての詳細は不明とのことであった。当監査での質問を受けて、県からスポーツ振興財団に対して当該「その他の経費」
の内訳について確認したところ、「その他の経費」の内訳は次の通りであった。
(単位:円) | ||
項目 | 予算額 | 決算額 |
報償費 | 2,427,000 | 3,116,825 |
燃料費 | 4,000,000 | 6,934,029 |
財団会計への繰入 | 0 | 16,762,705 |
租税公課 | 3,159,000 | 3,558,030 |
その他8項目 | 4,068,000 | 7,048,260 |
合計 | 13 ,654 ,000 | 37 ,419 ,849 |
上記の通り、内訳の中に「財団会計への繰入」16,762 千円が入っており、収支計算書の「その他の経費」の中には、実際に支出していない金額が計上されていることになる。「和歌山県体力開発センター運営管理に関する基本協定書」によると、指定管理業務の実施による剰余金はインセンティブとして指定管理者の利益とすることとされ
ている。そのため「収支計算書」上は収支差額として計上したうえで、指定管理者の利益として処理することが適切である。
このように、現状の収支計算書では、実際に支出されていない金額が支出されたように読み取れる記載となっており、指定管理業務の実態を把握するための資料として適切ではない。
県は、「和歌山県体力開発センター運営管理に関する基本協定書」を前提とした正確な収支計算書を入手し、指定管理業務の実態を適切にモニタリングする必要がある。
② 検査調書の未作成について
県では、「財務規則第 97 条」において、履行確認の結果として「検査調書又は検収調書」を作成しなければならないとしているが、当該業務について検査調書が作成されていなかった。履行確認を確実に実施するため、検査調書の作成が必要である。
(3)意見
① 再委託の実績確認について
指定管理者による再委託については、基本協定書第 24 条において、県の承認が必要とされている。これに基づき、県は契約当初に再委託の内容、再委託先等に関する申請を受け、承認を行っているが、事後的な実績の確認までは実施されていない。
再委託に対する承認の趣旨は、再委託の範囲の妥当性・必要性の判断を行うことにあるが、当該趣旨の達成のためには、事前承認だけでなく、事後の実績確認まで行うことが必要である。再委託に関する実績を入手し、収支報告との整合性を確認することにより、事前申請のない再委託が行われていないことも確認する必要がある。
② 備品管理状況のモニタリングについて
基本協定書(第 22 条、第 34 条)において、指定管理料によって購入した備品は県の所有に属するものであり、指定管理者は善良な管理者の注意を持って管理するとともに、物品台帳を作成することが義務付けられている。
県によると、指定管理者であるスポーツ振興財団は指定管理料で取得した備品について適切に台帳を作成しているであろう、とのことであったが、県としては実際にその管理状況については確認していないとのことであった。
県の財産である当該備品の管理状況については、定期的に管理状況を確認することが必要である。
③ 収支予算書・収支決算書の項目追加について
(2)監査の結果 ①で記載したとおり、収支予算書・収支決算書に記載されている
「その他の経費」は複数の項目で構成されているとともに、支出総額のうちかなりの
割合を占めている状況である。収支予算・収支決算の内容を明確にするため、「その他の経費」のうち主要な項目については別項目として記載を行うことを検討されたい。
13.和歌山県立体育館及び和歌山県立武道館の運営管理に関する年度協定(生涯学習局スポーツ課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 随意契約(公募による指定管理) | ||||
委 | 託 | 先 | 財団法人 和歌山県スポーツ振興財団 | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 149,832 | 予 | 定 | 価 | 格 | 165,231 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 22 年4月1日~平成 25 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 公の施設に対する指定管理事業であり、公募による指定管理者選 定を実施している。指定管理者選定委員会による選定審査を経て、委託先の決定に至っている(応募業者は2社)。 |
① 契約内容
和歌山県立体育館及び和歌山県立武道館の運営管理業務及び維持管理業務を委託するものであり、平成 21 年度以前は県直営による運営管理を実施していたが、平成 22
年度から指定管理者制度を導入している(指定管理期間は平成 24 年度までの3年間)。
年度 | 委託契約金額 |
平成 22 年度 | 50,870 |
平成 23 年度 | 49,384 |
平成 24 年度 | 49,578 |
合計 | 149,832 |
また、本契約においては、清掃業務や消防点検業務等の再委託を実施している。
② 委託金額の決定過程
平成 22 年度から 24 年度の指定管理期間における予定価格の算出にあたっては、県直営時の実績に基づき、予定価格を算出し、指定管理者の募集要項に記載を行っている。実際の委託契約金額は、予定価格の範囲内において、指定管理者の提示金額(収支予算)に基づき決定される。
(2)監査の結果
① 収支計算書の正確な記載について
上記 12 と同様、当契約においても、収支計算書の「その他の経費」の中には、実際に支出していない金額が計上されており、指定管理業務の実態を把握するための資料
として適切ではない。正確な収支計算書を入手し、指定管理業務の実態を適切にモニタリングする必要がある。
「その他の経費」の内訳
(単位:円) | ||
項目 | 予算額 | 決算額 |
財団会計への繰入 | 0 | 4,823,401 |
租税公課 | 0 | 2,292,542 |
その他9項目 | 403,000 | 1,299,410 |
合計 | 403 ,000 | 8 ,415 ,353 |
ただし、当指定管理事業においては、(3)意見 ①に記載のとおり、剰余金の使途が制限されていることから、収支差額については「財団会計への繰入」ではなく「次期繰越」として取り扱うことが適切である。
② 検査調書の未作成について
県では、「財務規則第 97 条」において、履行確認の結果として「検査調書又は検収調書」を作成しなければならないとしているが、当該業務について検査調書が作成されていなかった。履行確認を確実に実施するため、検査調書の作成が必要である。
(3)意見
① 剰余金の取扱いに関する指定管理者募集要項及び基本協定書の記載について
当施設の指定管理にあたっては利用料金制度が採用されており、施設の利用料金収入はすべて指定管理者の収入となる。しかし、その一方で指定管理者募集要項及び基本協定書には「利用料金の剰余金は、施設の設置目的に沿って指定管理者が自ら企画・実施する事業に充てなければならない」とされている。利用料金制度の意義は、指定管理者に収入インセンティブを与え、経営努力を促すことにより、サービスの向上を図る点にあると考えられる。上記の剰余金の使途を特定するような指定管理者募集要項及び基本協定書の記載内容は、利用料金制度の意義を損なうものである。
指定管理者応募段階での業者参入の妨げとなっている可能性も否定できないことから、利用料金の剰余金に関する取扱いについて再検討し、指定管理者募集要項及び基本協定書の記載内容を見直す必要がある。
なお、この点については、平成 21 年度包括外部監査において、同様の意見が記載さ
れており、平成 25 年度における更新協定時には、既に措置対応されている。
② 再委託の実績確認について
指定管理者による再委託については、基本協定書第 24 条において、県の承認が必要とされている。これに基づき、県は契約当初に再委託の内容、再委託先等に関する申請を受け、承認を行っているが、事後的な実績の確認までは実施されていない。
再委託に対する承認の趣旨は、再委託の範囲の妥当性・必要性の判断を行うことにあるが、当該趣旨の達成のためには、事前承認だけでなく、事後の実績確認まで行うことが必要である。再委託に関する実績を入手し、収支報告との整合性を確認することにより、事前申請のない再委託が行われていないことも確認する必要がある。
③ 備品管理状況のモニタリングについて
基本協定書(第 22 条、第 34 条)において、指定管理料によって購入した備品は県の所有に属するものであり、指定管理者は善良な管理者の注意を持って管理するとともに、物品台帳を作成することが義務付けられている。
県によると、指定管理者であるスポーツ振興財団は指定管理料で取得した備品について適切に台帳を作成しているであろう、とのことであったが、県としては実際にその管理状況については確認していないとのことであった。
県の財産である当該備品の管理状況については、定期的に管理状況を確認することが必要である。
14.和歌山県民交流プラザ和歌山ビッグ愛・ビッグホエール運営管理に関する協定(生涯学習局スポーツ課)
(1)契約の概要
(単位:千円)
契 | 約 | 締 結 | 方 | 法 | 単独随意契約(非公募による指定管理) | ||||
委 | 託 | 先 | 財団法人 和歌山県スポーツ振興財団 | ||||||
契 | 約 | 金 | 額 | 87,319 | 予 | 定 | 価 | 格 | 87,319 |
契 | 約 | 期 | 間 | 平成 23 年4月1日~平成 24 年3月 31 日 | |||||
( 条件付き一般競争入札でない場合)その理由 | 公の施設に対する指定管理事業であり、以下の理由より非公募による指定管理者選定を実施している。 (ⅰ)ビッグ愛・ビッグホエールと建設中の新体育館を一体管理することで、効率的・効果的な運営管理が可能となる。 (ⅱ)建設中の新体育館の供用開始予定が平成 24 年4月からとなる。 (ⅲ)新体育館が供用開始されてから一括管理させることで、事 業者が応募しやすくなり、十分な競争が期待できることから、当契約では暫定的に非公募での選定とする。 |
① 契約内容
和歌山県民交流プラザ和歌山ビッグ愛・ビッグホエールの運営管理業務及び維持管理業務を委託するものであり、平成 18 年度から指定管理者制度を導入している。平成
23 年度の指定管理者の見直しにあたっては、隣接地に建設予定の新体育館の関係から
(上記(ⅰ)~(ⅲ)の非公募とする理由参照)、従前からの指定管理者であるスポーツ振興財団を非公募で指定管理者として選定し、指定管理期間を1年間のみとしている。
また、本契約においては、清掃業務や消防点検業務等の再委託を実施している。
② 委託金額の決定過程
和歌山県民交流プラザ和歌山ビッグ愛・ビッグホエールの運営管理にあたっては、平成 18 年度から指定管理者制度を導入しており、スポーツ振興財団が継続して指定管理者となっている。
平成 18 年度~平成 21 年度における実績数値を基礎として、予定価格を算出しており、実際の委託契約金額は、予定価格の範囲内において、指定管理者の提示金額(収支予算)に基づき決定される。
(2)監査の結果
① 収支計算書の正確な記載について
上記 12 と同様、当契約においても、収支計算書の「その他の経費」の中には、実際に支出していない金額が計上されており、指定管理業務の実態を把握するための資料として適切ではない。正確な収支計算書を入手し、指定管理業務の実態を適切にモニタリングする必要がある。
「その他の経費」の内訳
(単位:円) | ||
項目 | 予算額 | 決算額 |
支払手数料 | 1,012,000 | 584,357 |
保険料 | 1,406,000 | 1,579,880 |
租税公課 | 4,600,000 | 5273977 |
財団会計への繰入 | 0 | 21,641,199 |
その他8項目 | 2,213,000 | 9,080,102 |
合計 | 9 ,231 ,000 | 38 ,159 ,515 |
② 検査調書の未作成について
県では、「財務規則第 97 条」において、履行確認の結果として「検査調書又は検収調書」を作成しなければならないとしているが、当該業務について検査調書が作成されていなかった。履行確認を確実に実施するため、検査調書の作成が必要である。