Contract
平成 30 年度 コンテンツ産業新展開強化事業
(我が国コンテンツの海外展開を図るための多様な資金調達手法に関する検証事業)
匿名組合契約 |
森・xxxx法律事務所 弁護士 xx xxxx xx xx xx |
目 次
1. はじめに
本匿名組合契約サンプル (以下「本サンプル」といいます。) は、経済産業省の「平成 30 年度コンテンツ産業新展開強化事業 (我が国コンテンツの海外展開を図るための多様な資金調達手法に関する検証事業)」の一環として、作成したものです。
コンテンツ事業の資金調達方法としては、これまで製作委員会方式が一般的でしたが、本サンプルは、このような製作委員会方式に代わる手法として、商法上の匿名組合によるファンド形式の資金調達を可能とするものです。
第2条の解説において詳細な説明を行いますが、匿名組合契約とは、投資家である匿名組合員が相手方 (営業者) の営業のために出資を行い、その営業から生じる利益を分配することを内容とする二当事者間の契約です。匿名組合においては営業者が事業を遂行し、出資金その他の事業に関する財産や事業に関する債務は営業者のみに帰属するため、製作委員会方式では複雑になりがちなコンテンツ事業に関する権利義務関係が明確となります。さらに、投資家としての匿名組合員は、事業に直接関与しない代わりに有限責任性を享受することができ、また、基本的に事業体 (営業者) レベルでの課税を受けずに済むので製作委員会方式と同様のリターンを享受することができます。このように匿名組合は、共同事業としての色彩が強かった製作委員会方式と異なり、純粋投資の性格を有するものであり、コンテンツ事業者が国内外から幅広く資金調達を行う際の手法のひとつとなることが期待されます。
他方で、匿名組合は、金銭消費貸借契約 (ローン) のように元本の返還が約束されているものではなく、事業が成功せずに損失が生じた場合には、出資金の返還がされない可能性もあります。コンテンツ事業に対する投資は、不動産投資等のようなキャッシュフローが読みやすい資産に対する投資に比べ、出資金の全額又は大部分が毀損するリスクがあるため、投資家は、匿名組合の特徴やコンテンツ事業のリスクを十分に理解し、自己責任において投資を行うことが求められます。
なお、本サンプルはあくまでもひとつの例であり、このまますべてのケースで使用できるものではありません。実際に契約交渉や取引を行う際には、弁護士などの専門家に相談のうえ、それぞれの事情を踏まえた契約書を作成して使用するようにしてください。
2. 前提となる情報
2-1. 前提条件
本サンプルでは、一般の事業法人である国内のコンテンツ事業者が、国内外の法人又は個人投資家から資金調達を行うことを想定しています。したがって、コンテンツ事業者が営業者、各投資家が匿名組合員となり、匿名組合契約を締結することとなります。
また、出資を行う投資家は、ファンド投資についての専門性を有する機関投資家のみに限定せず、(個人を含む) 一般投資家も対象として想定しています。なお、同一の事業について投資家が複数となる場合もあり得ますが、インターネット上のプラットフォームを用いて多数の投資家から資金を調達するいわゆるクラウドファンディングの形態に本サンプルを使用することは想定していません。
そして、匿名組合出資持分の取得の勧誘については、営業者が直接行わず、金融商品取引法 (以下「金商法」といいます。) に基づく登録を受けている第二種金融商品取引業者に私募の取り扱いを全て委託する形を想定しています。この点については、次の「私募の取り扱いに関する同意・確認事項」の解説にて詳述しています。
2-2. 契約書の構成
本サンプルは、① 主要条項 (以下「本主要条項」といいます。)、② 私募の取り扱いに関する同意・確認事項及び③ 匿名組合約款 (以下「本約款」といいます。) の 3 パートからなり、これらが一体となってひとつの匿名組合契約を構成しています。
① 主要条項
本主要条項は、投資家すなわち匿名組合員それぞれについて異なる内容となる事項 (匿名組合員の氏名/商号/名称、契約締結日、払込期日、出資金額、連絡先) や、個別の事業・資金調達ごとに異なり得る事項 (取扱手数料、対象コンテンツ、対象外事業、契約期間満了日、匿名組合分配割合、管理報酬、本匿名組合口座) を定めるものです。そのため、投資家ごと又は個別の事業ごとに、内容は異なることになります。
② 私募の取り扱いに関する同意・確認事項
私募の取り扱いに関する同意・確認事項は、匿名組合出資持分の取得の勧誘を、第二種金融商品取引業者に委託することに関する規定事項です。委託自体は、営業者及び金融商品取引業者の間の委託契約に基づき行われ、投資家は当該委託契約の当事者になるわけではありません。しかしながら、投資の勧誘自体を当該金融商品取引業者が行うことと関連して、営業者及び匿名組合員が認識し、又は同意すべき事項があるため、この点を明確にするべくひとつの独立したパートとしました。
なお、後述するとおり、第二種金融商品取引業者に私募の取り扱いを委託しないで営業者自ら匿名組合出資持分の取得の勧誘を行う場合には、このパートは必要ありませんが、その際には営業者が第二種金融商品取引業者の登録を受けている必要があります。
③ 匿名組合約款
本約款は、匿名組合員である投資家と営業者であるコンテンツ事業者との間の権利義務を定める中心的なパートになります。雛形としての利便性・汎用性を高める観点から、匿名組合員ごと又は個別の事業ごとに異なり得る事項は上記①の本主要条項に極力規定するようにしており、本約款部分を個別に変更することは基本的に想定していません。そのため、本約款の中で個別の
事業ごとに異なり得る事項がある場合 (例えば、計算期日、書類の提出期限等) は、当該事項については本主要条項に規定することも考えられます。
3. 匿名組合契約書サンプルとその解説
[事業名称] 匿名組合契約書サンプル
以下に記載される匿名組合員 (以下「本匿名組合員」という。) 及び《営業者の商号・名称を 記入》 (以下「営業者」という。) は、営業者が、本事業 (以下に定義される。) を行い、本匿名組合員がこれに出資することに関し、① 以下の主要条項 (以下「本主要条項」という。)、②以下の私募の取り扱いに関する同意・確認事項及び③ 以下の匿名組合約款 (以下「本約款」という。) を一体とした内容とする匿名組合契約 (以下「本契約」という。) を締結する。
主要条項
本匿名組合員の氏名/商号/名称 | 《匿名組合員の氏名、商号、名称を記入》 | ||
本契約締結日 | ●●●●年●●月●●日 | ||
本契約の有効期間 | 本契約締結日から●●●●年●●月●●日まで | ||
払込期日 | ●●●●年●●月●●日 | ||
出資金額 (取扱手数料を含む。) | 金●●●●円 | ||
取扱手数料 | 出資金額の●●%相当額 | ||
対象コンテンツ | 《対象となるコンテンツの内容について記入》 | ||
対象外事業 | 《対象外となる事業の内容について記入》 | ||
匿名組合員分配割合 | 本約款第7条に従い本匿名組合員に支払われた分配金の累積総額が出資金額相当額に満つるまでの間: | 100% |
本約款第7条に従い本匿名組合員に支払われた分配金の累積総額が出資金額相当額に達した後の計算期間から、当該累積総額が [出資 金額の●●%相当額] に満つるまでの間: | [80]% | |
本約款第7条に従い本匿名組合員に支払われた分配金の累積総額が [出資金額の●●%相当額] を超えた後の計算期間: | [65]% | |
管理報酬 | 金●●●●円 | |
本匿名組合員の連絡先 | 《郵便番号及び住所を記入》 電話番号:《電話番号を記入》 [FAX 番号:《FAX 番号を記入》] [e-mail:《メールアドレスを記入》] | |
匿名組合口座 | 銀行名 :《金融機関名及び支店名を記入》 口座種類:《口座種別 (普通、当座など) を記入》口座番号:《口座番号を記入》 口座名義:《口座名義を記入》 |
本主要条項は、既述のとおり、匿名組合員それぞれについて異なる内容となる事項と個別の事業・資金調達ごとに異なり得る事項を定めるものです。匿名組合契約は、営業者と匿名組合員との間の二当事者による契約のため、あるコンテンツ事業について複数の投資家から資金調達を行う場合には、実質的に同一の内容による匿名組合契約を複数締結する必要があります。そして、投資家ごとに、資金を拠出するタイミング・金額が異なることから、各投資家共通の事項が定められる本約款部分にはこれらの情報は規定せず、本主要条項において、匿名組合員の氏名/商号/名称・連絡先とともに、契約締結日・払込期日・出資金額を定めることになります。なお、事業者による資金調達自体は一定の期間にわたって複数の投資家から行われる場合であっても、各投資家による出資金の払込みは単一の期日に行われることから、本主要条項には「払込期日」として特定の期日を定める形としています。
また、本主要条項においては、対象コンテンツ、対象外事業、契約の有効期間、匿名組合員分配割合、管理報酬、取扱手数料、匿名組合口座といった、個別の事業・資金調達ごとに異なり得る事項についても規定しています。これらの事項は、同一の事業を目的とする限り、複数の投資家の間で内容は同一となることから、理論的には本約款部分に定めることも可能です。しかし、投資内容として最も重要な事項であり、投資家・事業者双方において特に注意すべきであることや、本約款部分の汎用性を高める趣旨で、本主要条項の規定事項としています。もっとも、本主
要条項にどのような範囲の事項を含めるかは、本サンプルの使用者自身の判断で柔軟に変更す
ることができます。
そして、匿名組合契約は、特定の事業から生じる利益を分配する契約であるため、対象となる事業を十分に特定することが重要となります。対象となる事業を特定する概念として、本主要条項において「対象コンテンツ」及び「対象外事業」という項目を設けました。対象コンテンツは、例えば作品名、内容 (概要)、主な関係者 (映画であれば監督・脚本・主演等)、完成・公表のスケジュールなどにより、他のコンテンツや事業と明確に区別できるよう特定する必要があります。これらに関する記載量が多くなる場合には、別紙として切り出すことも考えられます。
なお、本主要条項に定めている事項のうち、取扱手数料については私募の取り扱いに関する同意・確認事項の解説で、匿名組合員分配割合については本約款第6条の解説で、管理報酬については同第 11 条の解説で、それぞれ説明しています。
1. 本匿名組合員は、以下の各号について、同意及び確認する。
(1) 営業者が、《私募取扱者の商号・名称を記入》 (第二種金融商品取引業者関東財務局長 (金商) 第●●号)(以下「本取扱者」という。) に対し、本匿名組合の出資の持分 (以下「本匿名組合出資持分」という。) の私募の取り扱いの全部を委託しており、自らはその勧誘を一切行っていないこと
(2) 本契約に基づく出資の勧誘は本取扱者のみを通じて行われていること
(3) 本取扱者が、本契約に関して、以下の取引を行うこと
① 本契約に基づく本匿名組合出資持分について、本取扱者が営業者の委託を受けて行う取得の申込の勧誘
② 本契約の締結の媒介
③ 本契約の締結にあたり法令等による営業者又は本取扱者が本匿名組合員に対して行う書面等の交付
④ 本契約に基づく本匿名組合員の営業者に対する出資金の支払いについて、本取扱者が営業者から委託を受けて行う支払事務等の取り扱い
2. 本匿名組合員は、本匿名組合員が営業者との間で行う匿名組合に関する金銭の授受のうち、本取扱者が取り扱うのは出資金の払込みのみであり、分配金、清算金の支払い、出資の価額 (出資金の一部又は全部が損失によって減少したときはその減少に相当する額を控除した残額をいう。) の返還その他匿名組合に関する取引につき発生する出資金の払込み以外の金銭の授受は、営業者が直接行うものであることを確認する。
3. 営業者は、法令等 (自主規制機関の定める規則を含む。) に従い必要とされる場合又は本取扱者が合理的に要求した場合には、本取扱者に対して、本匿名組合出資持分及び本事業に関し、私募の取り扱いを行うための審査又は本事業のモニタリングのために必要な情報提供に協力する。
4. 本匿名組合員は、営業者が、本取扱者に対し、私募の取り扱いの委託契約に係る業務遂行の対価として本主要条項に記載の取扱手数料相当額を匿名組合財産から支払うことを、ここに同意する。
匿名組合のような組合型のファンド持分は、金商法上、「集団投資スキーム持分」として有価証券と位置付けられるため (金商法第2条第2項第5号)、金商法の規制対象となります。具体的には、投資家に対して匿名組合出資持分の取得を勧誘する行為 (いわゆる自己募集) は、金商法第2条第8項第7号ヘに掲げる集団投資スキーム持分の「募集又は私募」に該当するため、営業者が匿名組合出資持分について投資を勧誘する行為は、これを業として行う場合には、第二
種金融商品取引業 (金商法第 28 条第2項第1号) を行うものとして、原則として金融商品取引業の登録を行う必要があります (金商法第 29 条)。しかし、営業者自らが匿名組合出資持分の取得勧誘を行わず、これを第二種金融商品取引業の登録を有する金融商品取引業者に委託する場合 (「私募の取り扱い」の委託といいます。)、営業者自身は登録は不要となります (「金融商品取引法制に関する政令案・内閣府令案等」のパブリックコメントに対する金融庁の考え方 (平成 19 年 7 月 31 日) 103~110 参照)。
第二種金融商品取引業の登録は、最低資本金 1,000 万円や金融関連規制を含む法令遵守・内部管理のための様々な体制整備が求められるため、必ずしも金融事業者ではない通常のコンテンツ事業者が容易に取得できるものではありません。そこで、本サンプルでは、営業者が自ら第二種金融商品取引業の登録を取得するのではなく、第二種金融商品取引業者に匿名組合出資持分の私募の取り扱いを全部委託するという前提で、本「私募の取り扱いに関する同意・確認事項」を設けています。第1項及び第2項では、委託を受けた第二種金融商品取引業者を「本取扱者」と定義し、本契約に基づく匿名組合出資持分の取得の勧誘について、営業者自らがこれを行わず、本取扱者が行うことを明確にしています (第1項 (1) 及び (2))。併せて、本取扱者の役割が明確になるよう、本取扱者の取り扱う取引を具体的に規定しています (第1項 (3) ①から
④)。なお、本取扱者は投資の入り口の段階で資金調達に関与するものであり、匿名組合出資が行われた後の分配金の支払事務等には関与しません (第2項)。
本取扱者として想定される第二種金融商品取引業者は、自主規制機関である一般社団法人第二種金融商品取引業協会に加入していることが大半です。同協会においては、有価証券等の投資ではなく事業のために出資するファンドを対象に「事業型ファンドの私募の取扱い等の規則」 (以下「事業型ファンド規則」といいます。) を定めており、第二種金融商品取引業者に、資金調達を行う事業者 (私募の取り扱いの委託元、本サンプルにおいては営業者) に対する適正な審査やモニタリングを行うことを求めています。そのため、第3項においては、事業型ファンド規則を念頭に、営業者が本取扱者による審査やモニタリングのために必要な情報提供に協力する義務を定めています。
また、事業型ファンド規則については一定の適用除外が定められています (同規則第3条)。適用除外となるケースのひとつに、対象となる顧客すなわち投資家を一定の要件を満たすプロ投資家 (「対象除外顧客」と定義されています。) に限定する場合があり、金融実務としては、多く用いられています。対象除外顧客としては、金融機関、上場企業、資本金又は純資産が 5,000万円以上の法人、外国法人、投資性金融資産1億円以上であると見込まれる個人等 (正確な対象除外顧客の定義については同規則別表第1第2項参照) が該当します。そのため、本取扱者の運用次第では、事業型ファンド規則の適用を排除するために、投資家を対象除外顧客に限定することが求められることもあり得ます。この場合、匿名組合出資持分の勧誘対象が適用除外顧客に限定されることが、営業者と本取扱者の間の私募の取り扱いにかかる委託契約で合意されるだけでなく、匿名組合出資持分が適用除外顧客以外に譲渡されないように本サンプルの修正対応が必要となります。
なお、既述のとおり、営業者が匿名組合出資持分の取得勧誘を業として行うためには第二種金融商品取引業の登録を受けることが原則ですが、コンテンツ事業者が当該登録を受けることは容易ではありません。そこで、本サンプルのように、私募の取り扱いの全部を第二種金融商品取引業者に委託する以外に、営業者自身が登録を受けることを要しない場合として、適格機関投資家等特例業務の例外を用いることも考えられます。これは、ファンド持分の取得勧誘の相手方を一定のプロ投資家 (適格機関投資家及び特例業務投資家) に限定することで、登録ではなく届出のみでファンド持分の取得勧誘を行うことができることを認める制度です (金商法第 63 条第
1項)。本サンプルをベースに適格機関投資家等特例業務の例外を利用する場合には、本「私募の取り扱いに関する同意・確認事項」パートは不要となりますが、匿名組合員を適格機関投資家及び特例業務投資家に限定するための本サンプルの修正対応が必要となります。
本契約締結の証として、本書1通を作成し、本匿名組合員及び営業者が記名又は署名捺印の上、営業者がこれを保有し、本匿名組合員が写しを保有する。
20●●年●●月●●日
(本匿名組合員)
《住所を記載》
《企業・団体名を記載》
《代表者役職・氏名を記載》
(営業者)
《住所を記載》
《企業・団体名を記載》
《代表者役職・氏名を記載》
[事業名称] 匿名組合約款
第1条 本約款中の以下の用語は、それぞれ以下の各号に定める意味を有するものとする。
(1) 「金融商品取引法」とは、金融商品取引法 (昭和 23 年法律第 25 号。その後の改正を含む。) を意味する。
(2) 「金商業等府令」とは、金融商品取引業等に関する内閣府令 (平成 19 年内閣府令第 52 号。その後の改正を含む。) を意味する。
(3) 「計算期間」とは、直前の計算期日の翌日 (同日を含む。) から計算期日 (同日を含む。) までの期間を意味する。但し、① 最初の計算期間は、払込期日から直後に到来する計算期日までとし、② 最終の計算期間は、直前の計算期間の翌日から本契約の終了日までとする。
(4) 「計算期日」とは、本事業に係る決算及び本匿名組合員に対する分配金額の計算を行う基準日をいい、本約款においては毎年3月末日及び9月末日を意味する。
(5) 「出資金」とは、本契約に基づき、本匿名組合員より本事業のために出資された金銭を意味する。
(6) 「出資金額」とは、本匿名組合員が本契約に従い出資する金額として、本主要条項に定める出資金額を意味する。
(7) 「出資割合」とは、本契約及び他の匿名組合契約に基づく出資金の合計に占める、本匿名組合員又は他の匿名組合員それぞれの出資金の割合を意味する。
(8) 「商法」とは、商法 (明治 32 年法律第 48 号。その後の改正を含む。) を意味する。
(9) 「対象コンテンツ」とは、本主要条項に定める対象コンテンツを意味する。
(10) 「知的財産権」とは、知的財産基本法 (平成 14 年法律 122 号。その後の変更を含む。) 第2条第2項に規定する知的財産権を意味する。
(11) 「他の匿名組合員」とは、他の匿名組合契約における匿名組合員である第三者を意味する。
(12) 「他の匿名組合契約」とは、営業者が自らを営業者とし、第三者を匿名組合員として現在締結しており又は将来締結する本約款に基づく匿名組合契約を意味する。
(13) 「匿名組合口座」とは、営業者が出資金及び匿名組合財産を管理するための口座として、本主要条項に定める口座をいう。
(14) 「匿名組合財産」とは、本事業に関連して営業者が取得し、保有する財産及び権利
(出資金及び対象コンテンツに係る知的財産権を含む。) を意味する。
(15) 「匿名組合員分配割合」とは、本事業における匿名組合員及び他の匿名組合員に対する利益分配の割合として、本主要条項に定める匿名組合員分配割合を意味する。
(16) 「法令等」とは、本契約及び本契約に基づく取引又は営業者及び本匿名組合員その他の当事者に適用される法律、命令、政令、省令、規則若しくは通達、事務ガイド
ライン、行政指導、ガイドライン又は裁判所の判決、決定、命令、仲裁判断その他の公的機関の定める一切の規定、判断、指導等 (自主規制機関の規則及び規定を含む。) を意味する。
(17) 「本事業」とは、以下に定める事業を意味し、本事業には本主要条項に定める対象外事業を含まない。
① 対象コンテンツの制作
② 対象コンテンツの複製、上映、公演、公衆送信その他の利用 (対象コンテンツの複製物の譲渡、貸与及び展示を含む。)
③ 対象コンテンツに係る知的財産権の管理
④ 上記に附帯する事業
(18) 「本匿名組合」とは、本契約により本匿名組合員と営業者の間で組成される匿名組合を意味する。
第1条は、本契約で用いられる主な用語を定義するもので、その多くは、本主要条項において記載される事項を指す旨の形式的な定義や、法令の名称など頻出の用語を明確化する目的の定義となっています。
匿名組合契約は、特定の事業単位で締結され、当該事業から生じた利益を分配する契約です (商法第 535 条)。そのため、当該事業を特定する概念である「本事業」や投資家のリターンの原資となる「匿名組合財産」の定義は特に重要と言えます。本サンプルにおいて、「本事業」の定義は、コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律第2条第3項に定義される「コンテンツ事業」と同様のものとし、コンテンツ事業として一般的に想定される事業内容を広くカバーするものとしました。実質的に重要なのは、コンテンツ自体を特定する「対象コンテンツ」や、事業からの除外を定める「対象外事業」であり、これらは本主要条項において特定することが想定されています。また、「匿名組合財産」の定義も対象コンテンツの具体的な内容にかかわらず使用できるものとなっていますが、例えば対象コンテンツが映画である場合に原版が含まれることを明記するなど、事業内容に応じて修正することも考えられます。
本サンプルは、製作会社などのコンテンツ事業者自身が営業者になることを想定していますが、営業者が従来型の製作委員会のメンバーとして製作費を拠出する主体になる場合も考えられます。その場合は、「本事業」の内容など本サンプルの関連する箇所の修正が必要となります。また、従来型の製作委員会方式は民法上の任意組合の形式によることが多いですが、当該組合が集団投資スキーム (有価証券) として金商法の規制対象とならないためには、組合員全員がコンテンツ事業に従事するなど一定の要件を充足する必要があります (金融商品取引法施行令第
1条の3の3第6号、金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第7条第1項第
3号)。そのため、営業者による製作委員会への出資が集団投資スキームに該当すると、本匿名組合の金商法上の位置付けも異なることとなり、自己運用の規制や開示規制を受けることとなりますので、製作委員会が集団投資スキーム (有価証券) に該当しないことも重要な前提とな
ります。
なお、「計算期間」及び「計算期日」については第6条の解説において、「他の匿名組合員」及び「他の匿名組合契約」については第2条の解説において、それぞれ説明します。
第2条 本匿名組合員は、本契約の定めるところに従い、本事業のために営業者に対して出資を行い、営業者は、本事業から生じる利益及び損失を本匿名組合員に分配する。
2 本匿名組合員は、本契約が商法第 535 条から第 542 条に規定される匿名組合契約であること、及び営業者と本匿名組合員の関係が本契約の条項に従うほか商法第二編第四章に規定される営業者と匿名組合員の関係であることを確認するものとする。本匿名組合員は、本契約が同法の匿名組合契約としての性格を失わせないことを条件として、本契約の各条項が同法の任意規定に優先して適用されることに同意する。
3 本契約は、営業者と本匿名組合員との間に、代理、民法 (明治 29 年法律第 89 号。その後の改正を含む。) 上の組合、資産の共有若しくは合有又はその他これらのいずれかと類似の法律関係を生じさせるものではない。
4 営業者は、本事業の遂行のために他の者との間で、本事業を目的とし、本約款に基づく他の匿名組合契約を締結することができる。この場合、これらの他の匿名組合契約と本契約はそれぞれ独立した匿名組合契約とする。なお、営業者は、本匿名組合員及び他の匿名組合員を、本契約及び他の匿名組合契約の締結日、払込期日、出資金額、出資割合及びこれらに関する条項の違いによって生ずる差異を除き、本契約及び他の匿名組合契約に従って、平等かつ公平に取扱わなければならない。
本条第1項から第3項は、本契約が商法第 535 条に規定する匿名組合契約であることを記載することによって、本契約の法的性質を確認するものです。本契約について、本契約に記載される内容のほか、商法第2編第4章の規定や関連する判例が適用されることを明確にしています。
匿名組合は、当事者の一方 (匿名組合員) が相手方 (営業者) の営業のために出資を行い、その営業から生じる利益を分配することを内容とする二当事者間の契約です (商法第 535 条)。経済的・実質的には共同事業の側面を有しますが、出資者である匿名組合員は営業者の背後に隠れ、対外的な行為は営業者が単独で行うことになります。そして、匿名組合における事業は、営業者が自己の名を持って遂行し、当該事業に関して、営業者のみが第三者に対する権利又は義務を有することになり、匿名組合員は第三者に対する権利及び義務を持ちません (商法第 536 条第4項)。そのため、本事業に関する権利義務関係は明確であり、また、民法上の任意組合とは異なり、匿名組合員は有限責任であることが法的に確保されていることから、匿名組合員である投資家は、出資の範囲を超えて事業に対する損失を負担することはありません。
その一方で、匿名組合員が払い込んだ出資金は営業者の財産に属し (商法第 536 条第1項)、
匿名組合員はその財産に対して優先的な権利を有するわけではありません。営業者に法的倒産
手続が開始した場合に、匿名組合員が営業者に対して有する権利は出資払戻請求権のみであり、倒産債権として他の債権者と同順位で取り扱われることになります。したがって、対象となる事業について、当該事業以外の事業の影響を排除し、いわゆる倒産隔離性を確保するためには、例えば対象となる事業のみを行う特別目的会社 (SPC) を設立し、単一の事業のみを行うものとしたうえで匿名組合による資金調達を行うといった、ストラクチャー上の工夫が必要となります。また、匿名組合の事業に関する利益又は損失は、営業者の利益又は損失として取り扱われま
す。もっとも、営業者が利益又は損失を匿名組合員に分配する場合、その利益又は損失の額は、営業者において損金の額又は益金の額に算入されます。そのため、匿名組合は、実質的には課税上パススルー性が確保されていることになり、基本的に事業体 (営業者) レベルでの課税を受けずに済むので、株式会社に対する出資などに比べて投資に際しての税務上のメリットがあると言えます。また、製作委員会方式 (民法上の任意組合) と同様のリターンを享受することができます。なお、上記のパススルー課税を確保するためには、営業者レベルで法人税が課税されないように、営業者の事業年度末日と匿名組合の計算期間末日 (計算期日) を揃える必要があることに注意してください (第6条の解説参照)。
既述の通り、匿名組合契約は匿名組合員と営業者の二当事者間の契約です。そのため、営業者が、あるコンテンツ事業のために複数の投資家から資金調達を行うために匿名組合を利用する場合には、営業者と複数の投資家との間で、それぞれ匿名組合契約が締結されることになります。それぞれの匿名組合契約は、独立した別個のものであり、他の匿名組合契約の効力は本契約の効力に影響を及ぼしません。一方で、同一の事業のための資金調達であることから、各匿名組合契約は、原則として平等に取り扱うべきであり、「他の匿名組合契約」の定義においては、「本約款に基づく」ことを明記し、第4項でも「他の匿名組合契約」における匿名組合員である「他の匿名組合員」と本契約の匿名組合員 (本匿名組合員) を平等かつ公平に取り扱うべきことを明記しています。
第3条 本匿名組合員は、本主要条項において指定される払込期日において、本取扱者が別途指定する方法により、出資金額の支払いを行う。なお、振込みにかかる費用は本匿名組合員の負担とする。
2 前項に規定する金銭の出資は、払込期日において、本契約につき、営業者による表明保証違反若しくは義務違反、又は解除事由その他本契約の終了事由が生じていないことを条件とする。但し、本匿名組合員は、自己の裁量において、係る条件を放棄することができる。
3 営業者は、第1項に従い払い込まれた出資金を、本事業の遂行に関連する目的にのみ使用する。
4 本匿名組合員は、第1項に定めるほかに、追加して出資する義務を負担しない。
本条は、投資家である匿名組合員が、出資金額の払込を行うことで、出資を行う旨を定める条項です。出資は、匿名組合において、匿名組合員が負担する義務の代表格ですが、その前提を確保するため、第2項においては営業者に表明保証や義務違反がないことを条件とする旨を規定しています。
また、本条は、投資家である匿名組合員からの出資金額が一括して当初出資されることを前提とした、シンプルな規定としています。このような規定は、営業者側からすると、必要な資金を早期に確保できるというメリットがあります。しかしながら、コンテンツ事業においては、調達した資金を初期段階ですべて使用するということはあまり想定されず、事業が進捗するにつれて、企画開発費、制作費、配給費、広告宣伝費などの各種費用を段階的に拠出することが多く見られます。そのため、出資金額を一括して当初出資する場合、出資された資金は必要な費用の支出までの期間、営業者においてプールされることになり、投資家としては資金効率が悪くなるというデメリットの懸念があり得ます。
上記の懸念を解消するためには、投資家が、一定の出資約束金額の出資を約束しておき、営業者が資金需要を踏まえて請求 (コール) したときに、必要な資金を出資するというキャピタルコールの仕組みをとることも考えられます。このようなキャピタルコールの仕組みを取り入れる場合には、本サンプルの出資に関する各種条項について、修正対応が必要となります。
第4条 営業者は、その裁量に従い、本事業の目的を達成するために必要又は有益と考える行為をすることができる。
2 本匿名組合員は、営業者による本事業の運営に関与しない。本匿名組合員は、本契約又は法令等において認められる場合を除き、本事業の遂行に関し、意思決定その他のいかなる形においても関与することができず、かついかなる権限も有しない。
3 営業者は、善良なる管理者の注意義務をもって本事業を遂行する。
4 営業者は、必要に応じ、自己の裁量をもって、匿名組合財産の費用により、本事業の業務の一部を第三者に委託することができる。
5 営業者は、必要に応じ、自己の裁量をもって、匿名組合財産の費用により、弁護士、公認会計士、税理士、コンサルタントその他の専門家を起用し、本事業又は本匿名組合の管理に必要な事務を代理又は代行させることができる。
6 営業者は、本事業と類似し、競合し得る事業を営むことができる。
7 匿名組合財産 (出資金及び対象コンテンツに係る知的財産権を含む。) の一切は営業者に帰属し、本事業に関して負担する第三者に対する義務及び債務は、営業者のみが負担する。
8 本匿名組合員は、匿名組合財産 (出資金及び対象コンテンツに係る知的財産権を含む。)
の一切について所有権、知的財産権その他のいかなる権利も持たない。また、本匿名組合
員は、第6条及び第7条に従い損益の分配を受け又は分配金の支払を受けるほかは、本事業から得られる収益及び費用について、いかなる権利又は持分も持たない。
9 営業者は、匿名組合財産を営業者のその他の財産又は第三者の財産と分別して管理する。なお、出資金及び匿名組合財産である金銭については、金融商品取引法第 40 条の3
及び金商業等府令第 125 条の規定に従い、匿名組合口座にて管理するものとし、自己の財産又は自己が行う他の事業に係る財産と分別して管理する。また、営業者は、出資金及び匿名組合財産を営業者の固有財産と適切に区分して経理する。
10 営業者は、本匿名組合の損益分配及び分配金並びに清算金の分配その他の計算において、その裁量により端数処理をすることができる。
匿名組合においては、営業者のみが業務執行を行う権限を有します (商法第 535 条及び第 536条第3項参照)。第1項はこの点を確認するとともに、その裏返しとして、第2項においても、本匿名組合員が事業運営に一切関与しないことを明確にしています。
一般的に、匿名組合において営業者は善良な管理者の注意をもって営業を遂行しなければならないと解釈されています (民法第 671 条、第 644 条類推適用)。そのため、第3項では、この点を確認的に規定しています。なお、営業者は、この義務に違反しない限り、事業遂行に必要な範囲で本事業の一部を第三者に委託し、又は代理若しくは代行させることができるため、この点についても確認的に第4項及び第5項に規定しています。
なお、営業者が匿名組合事業と同種の営業を行わない義務 (競業避止義務) を負うかどうかについて、営業者は、その営業を善管注意義務をもって行うべき地位にあるため、反対の特約の無い限り、一般的に競業避止義務を負うと解されています。本サンプルの営業者の場合は、事業会社として本匿名組合の対象となっている本事業に限らず、他のコンテンツ事業も営む可能性があることを前提としているため、第6項では、競業避止義務を排除する特約を設けています。
また、既述のとおり、匿名組合では、営業から生じた財産及び債務の一切は営業者のみに帰属し、匿名組合員は、原則として、利益の分配・出資金の返還を受ける権利等を除いて、事業に関する資産・債務の帰属主体となりません (商法第 536 条第1項、第4項参照)。このことは、民法上の任意組合の形式をとる従来の製作委員会方式においては、その財産及び債務が構成員全員に帰属するものとされていたことと対比されます。そこで、第7項及び第8項においてこの点について明記しています。
匿名組合等のファンド (集団投資スキーム) については、投資家から出資された資金と当該資金を用いて事業を行う者の固有財産等とが分別管理されていない限り、金融商品取引業者等は、集団投資スキーム持分について私募の取り扱い等の業務を行ってはならないとされています (金商法第 40 条の3)。そのため、この分別管理の要請を確保するために、第9項においてこの点を明示的に営業者の義務としています。なお、分別管理の具体的な方法として、金商業等府令第 125 条では、匿名組合出資を受ける営業者に対して、出資された資金が営業者の固有財産等と分別して管理されるために、当該営業者の定款 (事業にかかる規約その他の権利又は有価証
券にかかる契約その他の法律行為を含みます。) により、所定の基準を満たすことを義務付けています。ここでいう所定の基準とは、① 営業者による当該金銭を充てて行われる事業の対象及び業務の方法が明らかにされるとともに、当該事業にかかる財産がそれぞれ区分して経理され、かつ、それらの内容が投資者の保護を図る上で適切であること、並びに、② 当該金銭が、(i) 他の金融商品取引業者等への預託 (当該他の金融商品取引業者等が有価証券等管理業務として受けるものに限ります。) 又は外国の法令に準拠し、外国において有価証券管理業務を行う者への預託、(ii) 銀行等への預金又は貯金 (当該金銭であることがその名義により明らかなものに限ります。)、又は(iii) 信託業務を営む金融機関等により適切に管理されていることとされています。本サンプルでは、本主要条項記載の本匿名組合口座にて分別管理を行うように規定しており、上記 (ii) の方法で金商業等府令第 125 条を充足する形としています。
そして、第 10 項は、匿名組合の損益分配等の計算においては、出資割合に応じた按分計算等が必要になることが多いため、営業者において、端数処理を裁量により行うことができる旨を規定しています。
第5条 営業者は、本事業から得られる収益の分配、匿名組合財産の運用実績、本事業の成功又はその他の本事業から生ずるいかなる結果について、また本匿名組合員の出資が経済的、法的、税務上その他いかなる結果をもたらすのかについて、明示、黙示を問わずなんらの約束又は保証をするものではない。
2 営業者は、本匿名組合員に出資金相当額の返還を保証しない。本事業に関する当事者及び業務委託先の債務不履行のリスク及び倒産手続開始その他の信用状態悪化のリスク、著作権その他の知的財産権に関する紛争等のリスク、その他の本事業に伴うリスクは、本匿名組合員が負担する。但し、本匿名組合員の損失の分担額は、出資金の額を限度とする。
3 本匿名組合員は、本契約の締結及び本契約に基づく営業者への出資に関して、営業者から提供された情報及び自ら入手した情報に基づいて、自らの責任において、調査を行い、リスク判断を行い、本契約の締結及び本契約に基づく営業者への出資を行うものとする。本匿名組合員は、本契約の締結及び本契約に基づく営業者への出資に係る投資判断に関して、営業者に対して一切責任を追及しない。
4 本匿名組合員は、本契約上の本匿名組合員の権利の流動性が極めて低いことについて、ここに了解する。
匿名組合契約は、金銭消費貸借取引 (ローン) のように決められた利息の支払や元本の返還を約束する取引ではなく、事業から利益が生じた場合にこれを分配する契約であり、事業に損失が生じた場合にはその分出資元本が毀損します。そのため、対象となっているコンテンツ事業が失敗に終わった場合には、匿名組合員は十分な投資リターンを得られないおそれがあります。と
りわけ、コンテンツ事業は不動産投資等と異なり、安定的なキャッシュフローを生む資産に対す
る投資ではないことから、最終的に匿名組合財産がゼロになり、匿名組合出資の全額又は大部分が毀損する可能性も否定できません。したがって、投資家は、投資リスクを十分に認識したうえで、コンテンツ事業に対する匿名組合出資を行う必要があります。
以上を念頭に置いて、本条は、匿名組合員が投資リスクを認識していることを確認するための規定です。第1項及び第2項では、投資リターンが保証されておらず、匿名組合員は様々な事業リスクにさらされることを明記し、第3項において、当該投資リスクを認識し、自らの判断で投資したことを確認しています。
加えて、匿名組合出資は株式や債券等と異なり流動性が低いため、投資家は、期中において匿名組合出資を第三者に譲渡することにより投資回収を図ることができるとは限りません。そのため、第4項において、この点も明示的に確認することとしています。
なお、コンテンツ事業に関する投資リスクは、本サンプルに掲げるものに限定されないため、本事業の具体的な内容に応じて条項を修正することも検討してください。また、匿名組合出資持分の私募の取り扱いの委託を受けた本取扱者が投資家に対して交付する契約締結前交付書面においても投資リスクは記載事項とされており (金商法第 37 条の3第1項第5号、同項第7号、金商業等府令第 82 条第1項5号等参照)、投資家は、これらを判断材料に、投資判断をすることが求められます。
第6条 本事業より各計算期間に営業者に生じた本事業の利益又は損失は、本条の規定に従い、営業者又は出資割合に応じて本匿名組合員及び他の匿名組合員に対して帰属する。
2 本事業の利益及び損失とは、日本における一般に公正妥当と認められる会計原則 (但し、会計原則が税法に定められる会計処理の方法と相違する場合には、税法に定められる基準を適用するものとする。以下同じ。) に従い計算された、営業者による本事業の遂行から生じた利益及び損失を意味し、主として以下の収益と費用から構成されるものとする。
(1) 収益
① 対象コンテンツの使用若しくは利用の許諾 [又は譲渡] によって得られる収益
② 匿名組合財産の運用益
③ 本事業から生じるその他の収益
(2) 費用
① 営業者が本事業に基づき負担する企画開発費、制作費、配給費、広告宣伝費その他の諸費用
② 本事業に関する業務委託先に支払う費用
③ 本匿名組合の管理のために必要な費用 (弁護士、公認会計士、税理士、コンサルタントに支払う費用を含む。)
④ 第 11 条に定める管理報酬
⑤ 分配金の支払に要する費用
⑥ 租税公課
⑦ 本事業に関し営業者に帰属するその他の費用
3 営業者は、各計算期日において、当該計算期間の① 純利益 (当該計算期間の収益が費用を超える場合) 又は② 純損失 (当該計算期間の費用が収益を超える場合) を計算する。
4 前二項の計算の結果、当該計算期間につき純利益が計上される場合、営業者は、当該計算期間の末日である計算期日において、その純利益に本主要条項に定める匿名組合員分配割合を乗じた金額を、出資割合に応じて本匿名組合員及び他の匿名組合員に対して分配し、残余につき営業者に対して分配する。但し、次項に基づく損失の分配があり、損失累計額が存在する場合には、当該純利益は、当該損失累計額がゼロとなるまでその填補に充当された後 (次項に基づく営業者への損失の分配が行われた場合、先に営業者に対する損失の填補を行う。)、係る純利益の分配を行う。
5 第2項及び第3項の計算の結果、当該計算期間につき純損失が計上される場合、営業者は、当該計算期間の末日である計算期日において、その純損失を、本匿名組合員及び他の匿名組合員のそれぞれの出資割合に応じて本匿名組合員及び他の匿名組合員に対して分配する。但し、本匿名組合員に分配された純損失の累計額が出資金の額を超過する場合においては、本匿名組合員は出資金の額の範囲内でのみこれを負担し、超過額については営業者が負担する。
6 営業者の本事業に係る損益分配の計算について、会計上の損益に、営業者の法人税法上の所得を計算する上で調整が必要な場合 (営業者の法人税申告期限後に判明したものを含む。) には、会計上の分配すべき損益に以下の調整項目のうち①については {実効税率
÷(1-実効税率)} を乗じた金額を減算し、②についてはその金額を加算又は減算して分配する。
① 法人税法及び租税特別措置法 (以下「法人税法等」という。) の規定に基づき申告調整を行う項目のうち、交際費、寄付金、その他法人税法等に基づく社外流出項目に係る申告調整すべき金額 (法人税法等に基づく、資本金等の額を構成するもの、受取配当等の益金不算入額及び特別控除項目を除く。)
② 上記①に規定する社外流出項目以外で法人税法等の規定により申告調整すべき金額
本条は、匿名組合の損益分配に関する規定です。第1項は、匿名組合の会計処理として、第2 項以下に従い、計算期間毎に損益を匿名組合員らに分配する旨の総則的な規定を定めています。そして、第2項及び第3項は、損益の計算方法及び時期等について規定するものです。匿名組
合が組成された場合には、匿名組合に関する損益の計算と営業者に関する損益の計算の 2 つの
損益の計算がなされることになります。このうち、匿名組合における損益の計算についての会計処理は、原則として匿名組合契約に定められたものが採用され、その中で一般に公正妥当と認められる会計原則に準拠するとされるケースが多いことから、第2項は冒頭でこの点を明らかにしています (ただし、会計と税務の取り扱いに差異がある場合は税務上の取り扱いによることとしています。この点については本条最後段の解説参照)。なお、収益・費用についてはコンテンツ事業を投資対象とする匿名組合として典型的な項目と思われるものを列挙していますが、これはわかりやすさの観点から例示列挙するものであり、項目を限定する趣旨ではありません。また、事業の具体的な内容に応じて、列挙されている項目を修正することも考えられます。
本サンプルでは、匿名組合の損益計算の時期に関して、匿名組合一般の実務を踏まえて、「計算期間」及び「計算期日」の概念を設けています。具体的な内容は第1条の定義規定において定めていますが、本サンプルにおいては、(直接の規制対象ではないものの) 投資運用業を行う金融商品取引業者等に課される運用報告書の対象期間が6カ月を超えてはならないとされていることも踏まえて (金商業等府令第 134 条第3項参照)、計算期間を6カ月間ごととしています。また、本サンプルにおいては、営業者が 3 月決算であることを前提に、毎年 4 月 1 日から 9 月末
日まで、10 月 1 日から翌年 3 月末日までの各半年間を計算期間として設定しています。第2条の解説のとおり、匿名組合を用いるひとつのメリットとして、税務における実質的なパススルー性の確保が挙げられますが、匿名組合の損益について、営業者の段階で法人税が課税されないようにするためには、営業者の事業年度の末日と匿名組合の計算期間の末日を一致させるようにしなければなりません。そのため、例えば営業者が 12 月決算である場合には、「計算期日」の定
義を毎年 6 月末日及び 12 月末日にする修正対応が必要となります。
続く第4項は、利益の分配方法を定めるものです。本サンプルでは、従来の製作委員会の実務や海外のコンテンツファンドにおける実務を参考に、匿名組合員が当初出資した出資金をリクープ (回収) するまでは、原則として営業者に利益が帰属しないものとしています。そして、リクープ後は、匿名組合員と営業者の間で純利益を 80:20 で分配するものとし、投資家に対するリターンが一定の金額を超えた場合には、分配比率を 65:35 として、営業者に対する成功報酬の意味合いをもたせることとしています。ただし、80:20、65:35 という割合は仮のものであり、具体的な分配割合については、事業ごとにケースバイケースで決められるものであるため、本主要条項における「匿名組合員分配割合」において具体的に定めることを想定しています。
そして、第5項は、損失の分配方法を定めるものです。損失の分配方法としては、出資金の額の範囲内においては匿名組合員が負担し、超過額については営業者にて負担することを定めています。なお、その後の計算期間において純利益が発生した場合、当該純利益は、営業者、匿名組合員の順に分配済みの損失の填補に用いられることになります (第4項但書参照)。
匿名組合員が複数存在する場合、他の匿名組合員との関係では、損益は出資割合 (出資金額の割合) に応じて按分されることになります。本サンプルにおいては「出資割合に応じて」とのシンプルな記載のみとしていますが、計算期間中に出資割合が変動した場合に関して詳細な規定を設けることも可能です。
なお、会計上の取り扱いと税務上の取り扱いには差異があることから、この差異は税務上の調整項目となります。会計上の取り扱いに基づいて匿名組合の利益の分配又は損失の負担を計算すると、調整項目について営業者の段階で課税が生じ、これにより資金がショートする可能性があります。そこで、上記のような不都合が生じないように、第2項括弧書の規定を設け、会計と税務で取り扱いが異なる場合には税務上の取り扱いに従って匿名組合の損益分配の計算を行うことを明らかにした上で、第6項の規定を設け、① 社外流出項目による申告調整が生じる場合はこれにより営業者が負担する税額相当額を匿名組合員に負担させ、② 内部留保項目による申告調整が生じる場合は申告調整額の加減算を行うこととしています。
第7条 本事業の分配原資は、各計算期間において本事業の収益として受領した金額から前条第2項 (2) の費用を控除した金額とする。営業者は、各計算期日から [3カ月] 以内に、当該計算期日において終了した計算期間の分配原資に匿名組合員分配割合を乗じた金額を、本匿名組合員及び他の匿名組合員に対してそれぞれの出資割合に応じて分配する。係る分配金のうち、既に終了している計算期間において本匿名組合員に分配された本事業の利益及び損失の累計額から既に分配金として支払済みの金額を控除した残額を上回る金額については、本匿名組合員に対して出資金の返還があったものとみなす。なお、営業者は、本匿名組合員に分配した後の分配原資の残余について、これを収受することができる。
2 営業者は、前項に定める現金分配を行う場合には、分配金の額及び分配を行う日を本匿名組合員に対して書面により事前に通知するものとする。営業者は、当該分配日において、匿名組合財産に帰属する金銭の残高から、当該分配金を、本匿名組合員が別途指定する預金口座に振込送金する方法により支払う。なお、振込みにかかる費用は営業者の負担とする。
3 営業者が、税法その他の法令等により、本契約に基づく本匿名組合員に対する支払について、何らかの金額 (源泉税を含む。) を減額又は控除しなければならない場合、営業者は分配金から当該金額を控除又は減額する。
本条は、現金の分配について規定するものです。
匿名組合における現金の分配は、会計上の損益分配 (第6条参照) とは区別されるものであり、必ずしも利益の分配と連動させる必要はありません。しかし、本サンプルでは使用者のわかりやすさを考えて、利益の分配と現金の分配は基本的に同様の内容としています。もっとも、計算上利益が発生する場合であっても、利益と同額の金銭の支払を行ったときに本事業に支障が生じることが見込まれる場合には、そのような事態が生じないような規定にする必要があるため、事業に応じた検討が必要となります。その際の規定の方法としては、匿名組合財産に帰属す
る金銭から営業者が合理的に認める留保金を分配に充てる旨を定めたり、現金の分配を営業者
の裁量に委ねたりする例などが存在しています。
なお、上記にかかわらず、匿名組合員が当初出資した出資金をリクープ (回収) するまでは、匿名組合員 (のみ) に対する現金分配が優先的に行われる必要があります。そのため、利益が生じていない場合であっても、出資金の返還として匿名組合員に対する支払が認められることも確認的に規定しています。
また、第3項は、法令等により営業者が支払額からの控除等を求められる場合にかかる控除等が認められる旨を明らかにした規定です。この点に関して、営業者による匿名組合員に対する利益の分配の際には、匿名組合員が法人であるか個人であるかを問わず、また税法上の日本の居住者であるか非居住者であるかを問わず、原則として支払時に 20.42%の源泉徴収税が課されます (所得税 20%、復興特別所得税 0.42%)。ただし、日本の非居住者については、租税条約の適用により源泉徴収税が免除される場合があります。営業者は、利益分配をする際に、源泉徴収税額を控除して匿名組合員に控除後の金額を支払い、源泉徴収税額をその翌月 10 日までに税務署に納付しなければなりません。さらに、営業者は源泉徴収に関して支払調書の作成・税務署への提出義務があり、また、匿名組合員に対する支払調書の交付や、匿名組合員が非居住者である場合の租税条約の適用や本国での外国税額控除に関して一定の対応を求められる場合があります。
第8条 営業者は、日本の一般に公正妥当と認められる会計原則に基づいて本事業に関する全ての取引に関する正確な帳簿及び記録を作成し、かつ、保持するものとする。
2 営業者は本匿名組合員に対して、各計算期日から [3カ月] 以内に、営業者が必要と認める場合は関連する証憑の写しを添えて、当該計算期日に終了する計算期間に関する以下の事項を含む報告書を本匿名組合員に交付する。
(1) 当該計算期間の本事業の概況 (運用状況の経過及び出資金の使途を含む。)
(2) 当該計算期間に係る分配金及び償還金 (中途解約を含む。以下同じ。) に関する次の事項
① 当該計算期間に係る分配金及び償還金の有無
② 当該計算期間に係る分配金及び償還金の金額
(3) 当該計算期間末時点における本匿名組合の財務状況 (貸借対照表、損益計算書に記載すべき内容をいう。以下同じ。) 又は貸借対照表、損益計算書等に記載される財務情報 (総資産、総負債、純資産、売上高、営業損益、経常損益、当期純損益額などの主な経営・財務指標など。)
(4) 営業者 [及び重要な業務委託先] の直近の計算期間における財務状況又は貸借対照表、損益計算書、税務申告書等に記載される財務情報 (資本金、総資産、総負債、純資産、売上高、営業損益、経常損益、当期純損益額などの主な経営・財務指標など。)
(5) 当該計算期間末日における分別金の額及び分別管理の方法 (金商業等府令第 125 条第2号に掲げる方法をいう。)
(6) 本匿名組合につき、監査を行った者の氏名又は名称並びに当該監査の対象及び結果の概要 (該当する場合のみ)
(7) 事業計画の大幅な修正、[重要な業務委託先の変更、] 営業者 [及び重要な業務委託先] の財務状況の著しい悪化等、本事業に重大な影響を生じる事由が発生した場合はその旨及びその要因
3 営業者は、本匿名組合員の要求に従い、本匿名組合員における財務上の報告及び租税申告に使用するための計算書を作成する。
営業者は、商法第 19 条において、その営業のために使用する財産につき、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従って、適時に、正確な商業帳簿を作成・保存しなければならないとされています。また、匿名組合における事業は、営業者自身の事業であり (商法第 535 条)、通常、匿名組合の貸借対照表は営業者の貸借対照表の一部と整理されているため、営業者は、本事業に関する取引についても、一般に公正妥当と認められる会計原則に従って正確な帳簿及び記録を作成・保存する必要があり、第1項はこの点を確認的に規定しています。
第2項は、営業者が、匿名組合の損益の分配、現金分配や本事業の状況について、投資家である匿名組合員に報告書を交付することを規定するものです。既述のとおり、本サンプルによる匿名組合は、一般社団法人第二種金融商品取引業協会の自主規制規則である事業型ファンド規則の適用を前提にしています。そのため、報告書の記載内容も、事業型ファンド規則で事業者に作成が求められている内容を参考にしています (事業型ファンド規則第4条第2項第2号、別表
2)。
第9条 営業者は、本匿名組合員から書面による請求があった場合には、その営業時間内に、前条第1項に係る帳簿及び記録を閲覧させ、写しを交付しなければならない。
2 本匿名組合員は、匿名組合財産及び本事業の状況につき、商法第 539 条の規定に従い検査を行うことができる。
3 前各項に要する費用は、本匿名組合員の負担とする。
匿名組合において、匿名組合員は、自ら業務執行権限や営業者を代表する権利を有しませんが、事業の状況については重大な利害関係を有するため、商法上、一定の監視権が認められています。すなわち、匿名組合員は、事業年度の終わりにおいて、貸借対照表の閲覧を求め、営業者の業務・財産の状況を検査することが認められています (商法第 539 条第1項)。また、重要な事由があるときは、いつでも裁判所の許可を得て、営業者の業務・財産の状況の検査を検査することができます (商法第 539 条第2項)。
本条は、このような法令上認められている匿名組合員の監視権を、確認的に規定するものです。
第 10 条 営業者は、第三者の権利 (著作権その他の知的財産権を含む。) を侵害することのないように本事業を遂行し、また、本事業の遂行に必要な一切の著作権、著作者人格権、著作者隣接権その他の知的財産権、その他本事業に関する全ての権利を確保するために必要な権利処理を営業者の責任において行う。
2 営業者は、本契約に基づく営業者としての義務を履行するために許可、承認、届出その他の手続が必要とされる場合、当該手続を行うものとし、かつその効力を維持する。
3 営業者は、本匿名組合員から書面による請求があった場合には、自らが負う秘密保持義務に違反しない範囲で、以下の各号に定める情報を合理的な範囲内で当該本匿名組合員に提供する。
(1) 対象コンテンツの制作スケジュールの達成状況並びにこれに重要な影響を及ぼす事由が生じた場合にはその旨及びその内容
(2) 制作予算の使用状況
(3) 回収計画の達成見込み並びにこれに重要な影響を及ぼす事由が生じた場合にはその旨及びその内容
(4) 制作委託契約、共同事業契約、保険契約その他本事業に関する重要な契約が締結された場合には、係る契約書の写し
(5) その他本事業に関して生じた重要な事項
既述のとおり、営業者は、原則として、自己の裁量により事業を遂行することとなります (第
4条参照)。それに際して、営業者の善管注意義務 (第4条第3項参照) や匿名組合員の監視権 (第9条参照) はありますが、これらに加えて、匿名組合員の利益を保護するための一定の義務を営業者に課すことが考えられるため、本条ではいくつかの条項を規定しています。
第1項は、営業者が著作権その他の必要な権利処理を自己の責任をもって行うことを定めています。匿名組合の性質上、営業者が業務執行の一環としてこれを行うべきことは当然と言えますが、従来型の製作委員会方式において、制作会社等が権利処理に関する業務を行っており、その旨が明記されていたことを踏まえて、わかりやすさを重視してあえて規定しています。
また、第2項は、営業者が業務を遂行する上で、必要な許認可等の手続を行うことを明記しています。これも確認的な規定ではありますが、匿名組合出資持分は、集団投資スキームとして金商法における「有価証券」と位置付けられており、既述の自己募集に関する点を含め、規制等に気を配る必要があることから明記するようにしています。
そして第3項は、本事業に関する情報提供を営業者に義務付ける規定です。情報提供に関して
は、第8条第2項や第9条においても規定を設けており、これらの規定でカバーされていると整
理することも考えられます。しかしながら、これらの規定は匿名組合一般に共通するものであり、コンテンツ事業に特化した情報提供の規定として別に条項を設けることも有益と考えられることから、本サンプルにおいては別途定めています。なお、具体的にどのような資料・情報を列挙するかは、事業の内容に応じて定めるべきです。また、第三者との契約書などについては、相手方との間で秘密保持義務を負担することもあるため、当該義務に反しない限度で情報提供を求める規定としています。
第 11 条 営業者は、各計算期間につき、本契約に基づく匿名組合を管理する報酬として、本主要条項に定める管理報酬を、匿名組合財産より収受することができる。
本条は、営業者の管理報酬を定めるものです。製作委員会方式においては、コンテンツの製作等において中心となる幹事会社が、製作委員会のメンバー間の意見や利害調整、制作管理、製作委員会の収支の管理及び分配業務、さらには製作委員会の外部の監督、プロデューサー、脚本家との折衝や、契約締結業務など、プロジェクト全体に関する管理運営を担当することから、製作委員会契約において一定の幹事会社手数料をとることができるとするものが多く見られます。また、投資のために用いられる一般的な匿名組合契約の実務においても、営業者が、ファンドの管理運営に関して一定の管理報酬を匿名組合に帰属する財産から収受できるとすることが多く見られます。そこで、これらを踏まえて、本サンプルでは、営業者が、本匿名組合の管理運営業務の対価として、一定の管理報酬を匿名組合財産から収受できる旨を定めています。
なお、管理報酬を具体的にどのように定めるのか (例えば、固定金額で定めるのか、出資金額の●●%という形で定めるのか等) については、本主要条項において個別に合意することを想定しています。
第 12 条 以下のいずれかの事由が発生した場合、本契約は終了する。
(1) 本主要条項に定める本契約の有効期間が満了した場合
(2) 本事業が成功した場合又はその成功が不能となった場合。この場合、営業者は、本匿名組合員に書面により通知する。
(3) 営業者又は本匿名組合員が破産手続開始の決定を受けた場合
(4) 営業者及び本匿名組合員が別途書面により合意した場合
(5) 次項又は第 16 条第4項に従い、本契約が解除された場合
2 本契約の当事者に以下のいずれかの事由が発生した場合、相手方当事者は、当該事由が発生した当事者に対して書面による通知を行うことにより、本契約を解除することができる。
(1) 営業者が支払停止の状態になった場合、又は手形交換所若しくは電子債権記録機関の取引停止処分を受けた場合
(2) 営業者が破産手続、民事再生手続、会社更生手続、特別清算その他の法的整理手続若しくは私的な整理手続の開始の申立を行った場合、又はこれらについての申立を受けた場合
(3) 営業者が解散の決議を行い、又は、解散命令を受けた場合
(4) 営業者の財産の全部又は一部について、仮差押え、保全差押え又は差押えがあった場合
(5) 営業者に本契約の重大な違反 (表明保証違反を含む。) があり、催告後相当期間が経過するまでに義務違反が治癒されない場合
(6) 本匿名組合員が第3条第1項に従い出資金額の支払を行わない場合
(7) いずれかの当事者につき、商法第 540 条第2項に規定するやむを得ない理由が生じた場合
本条は、本契約が終了する場合を規定しています。
第1項は、本契約の終了事由について規定しています。匿名組合においては、各匿名組合員が営業者との間で締結する契約はそれぞれが別個の独立した契約であるため、契約の終了についても、匿名組合契約ごとに終了事由の発生の有無が判断され、また、終了の効果が発生することになります。もっとも、営業者、本匿名組合員及び他の匿名組合員は、本事業全体について共通の利害関係を有していることから、契約の終了事由についても、① 本契約のみを対象とする終了事由と② 本事業にかかるすべての匿名組合契約に共通する終了事由の2種類に区分することができます。本サンプルにおいては、第1項 (4) 及び (5) が本契約のみを対象とする終了事
由であるのに対して、第1項 (1) から (3) までは、本事業にかかるすべての匿名組合契約に共通する終了事由を規定しています。
このうち第1項 (1) から (3) までについては、法定の匿名組合の終了事由である商法第 541条各号を踏まえたものです。法令に反しない範囲で同条項の適用を排除する旨等を定めている実務例もありますが、本サンプルにおいては基本的に商法上の当然終了事由をそのまま規定しています。なお、商法第 540 条第2号は、営業者の死亡又は後見開始の審判を受けたことを終了事由として定めていますが、本サンプルは営業者が法人である場合を想定しているため、本条ではこの点は規定していません。
また、第2項は、本契約の解除事由を規定するものであり、解除権者による解除通知をもって本契約が終了する旨を定めています。第2項 (1) から (5) までは、営業者の信用状態の悪化や本契約の義務違反を解除事由として、本匿名組合員による解除権を認めるものです。解除事由については、営業者及び本匿名組合員のそれぞれについて定めることも考えられますが、匿名組合の特徴を踏まえると、出資者としての関与しか持たない本匿名組合員に関する信用状態悪化等を広く解除事由として規定する必要はないとも言えます。そのため、本サンプルにおいては、
本匿名組合員に関する解除事由としては、第2項 (6) に定める出資義務の不履行を規定するの
みとしています。もっとも、何らかの理由で本匿名組合員を固定する要請が強い場合には、第 14条の譲渡禁止だけでなく、本匿名組合員の信用状態の悪化も広く解除事由に含めておき、例えば差押え等によって本契約上の権利が意図せずに第三者に移転することを可能な限り防止することも考えられますし、そのような実例も珍しくありません。第2項 (7) は、商法第 540 条第2項に基づく解約権と同じものですが、わかりやすさの観点から確認的に明記しています。なお、
「やむを得ない事由」としては、匿名組合員の出資義務の懈怠や営業者の営業遂行義務・利益分配義務等の懈怠が該当すると解されていますが、第2項 (1) から (6) までで規定されているものでカバーされる場合も多いと考えられます。
第 13 条 本契約が終了した場合で、かつ他の匿名組合契約が全て終了した場合には、営業者は、金銭以外の匿名組合財産を処分した上で、本事業に関する一切の債務を弁済し、本事業を清算するものとする。但し、営業者は、匿名組合財産を処分することに替えて、匿名組合財産を評価する専門性を持つ第三者が算定した評価額をもって、匿名組合財産を自ら買い取ることができる。
2 前項に定める場合、営業者は、第6条に従い、最終の計算期間に関する利益及び損失の計算を行い、匿名組合財産から清算手続に要する費用その他の残余財産から支払われるべき費用を控除した金銭を、出資の価額の返還及び利益の配当 (もしあれば) として、本匿名組合員及び他の匿名組合員に対し、出資割合に応じて支払う。
3 前条により本契約が終了した場合したにもかかわらず、他の匿名組合契約及び本事業が継続している場合で、本契約に基づく本事業の清算手続を進めることが他の匿名組合契約上の本事業の遂行に支障を来すおそれがあると合理的に認められるときは、営業者は、他の匿名組合契約が終了するまで当該清算手続を延期することができる。
4 本契約が終了した場合で、かつ他の匿名組合契約のいずれかが存続している場合には、営業者は、第6条に準じて、最終の計算期間に関する利益及び損失の計算を行い、本匿名組合員に支払うべき出資の価額の返還及び利益の配当 (もしあれば) の金額を確定する。営業者は、当該金額に満つるまで、第7条及び本条第2項に従い、他の匿名組合員に支払を行う各時点において、本匿名組合員に対し、係る金銭を支払う。
5 本匿名組合員に出資の価額の返還として分配されるべき金額が出資金の額又は本契約終了時に本匿名組合員の会計上出資として計上されている金額を下回る場合であっても、本匿名組合員は、営業者に対して、その差額の支払いを求めることはできないものとする。
本条は、本契約が終了した後の匿名組合の処理について規定するものです。匿名組合契約が終了したときは、営業者は、匿名組合員にその出資の価額を返還しなければならないため (商法第
542 条)、その具体的な手続を定めています。
第 12 条の解説で述べたとおり、匿名組合契約の終了事由については、① 本契約のみを対象とする終了事由と② 本事業にかかるすべての匿名組合契約に共通する終了事由の2種類に区分することができます。第1項及び第2項は、後者の場合すなわち本契約が他の匿名組合契約とともに終了した場合の清算手続を定めており、原則的なプロセスとなります。
本匿名組合員は、投資家として金銭を出資し、通常は投資の回収 (リターン) についても金銭で受領することを想定しているため、まず第1項では、清算手続にあたり、金銭以外の匿名組合財産がある場合に、これを換価処分することを定めています。もっとも、コンテンツ事業における資産は流動性を有しないものが多いと考えられ、必ずしも第三者に対して売却処分することが容易又は適切でないことも想定されます。そのため、但書では、第三者に対する匿名組合財産の処分をせずに、匿名組合財産を評価する専門性を持つ第三者が算定した評価額をもって、営業者が自らの固有勘定により匿名組合財産を買い取ることを認めています。
そして、第2項は、第1項に従い本事業を清算する場合に、最終の損益計算を行い、本匿名組合員及び他の匿名組合員に対する残余財産の分配内容を確定する手続を定めています。これにより、本匿名組合員及び他の匿名組合員は、本契約の終了に伴う出資の価額の返還及び利益の配当を受領する権利を有することになります。
また、匿名組合契約の終了事由は上記の通り①②の2種類に区分することができますが、第3項及び第4項は、①の場合、すなわち他の匿名組合契約及び本事業が存続するにもかかわらず、本契約のみが終了する場合の規定です。このようなケースにおいて、出資金を本事業遂行のための費用に充てている場合には、匿名組合財産に本匿名組合員に対して出資の価額の返還を行うだけの金銭が存在しないことも想定され、これを無理に行うと本事業に悪影響が生じる可能性があります。そこで、本サンプルでは、他の組合契約及び本事業が継続している場合において、清算手続を進めることが他の匿名組合契約上の本事業の遂行に支障を来すおそれがあると合理的に認められる場合には、清算手続の延期を認める旨を定めています。
そのうち第4項は、本契約が終了するものの、他の匿名組合契約が終了しない場合において本契約のみの清算手続が行われる場合における、本匿名組合員に対する残余財産の分配内容を確定する手続について定めています。本項の適用場面においては、本事業自体は終了しておらず、匿名組合財産の換価処分を行うことも想定されていないため、匿名組合財産に本匿名組合員に対して出資の価額の返還を行うだけの金銭が存在しないことが想定されます。そのため、本匿名組合員に対する金銭の支払時点を、他の匿名組合員に対して金銭が支払われる時点と揃えています。
なお、第5項は、本匿名組合員に返還される金額が、当初出資金の金額又は会計上の出資額に満たない場合があり得ることを確認的に規定するものです。匿名組合は、金銭消費貸借取引 (ローン) のように元本の返還を約する契約とは異なり、出資が損失により減少したときは、残額を返還すれば足りるという性質を有することからの帰結です (商法第 542 条但書)。投資家である本匿名組合員は、元本が毀損するリスクがあることを認識したうえで、本匿名組合に対する投資を行わなければなりません。
第 14 条 本匿名組合員は、営業者の承諾を得ない限り、本契約上の地位又は権利義務を第三者に譲渡し、担保設定その他の処分をすることはできない。
2 前項の規定にかかわらず、本匿名組合員が死亡した場合、本匿名組合員の法定相続人より、相続の事実を営業者又は営業者が指定する者に書面にて届け出ることにより、本契約上の地位及び権利義務を承継することができる。
本条は、本匿名組合員による、本契約上の地位又は権利義務の第三者への譲渡、担保設定その他の処分にかかる手続を規定するものです。
第1項は、本匿名組合員による本契約上の地位又は権利義務の第三者への譲渡、担保設定その他の処分については、営業者の承諾を必要としています。匿名組合において、匿名組合員は、営業者の業務及び財産状況を検査する権利 (商法第 539 条) を有し、事業内容を知り得る立場にあることなどに照らし、営業者の承諾なくその地位の譲渡をできないと解されており、本サンプルでも、匿名組合員の地位の譲渡等については営業者の承諾が必要であることを明示的に定めています。
本契約においては、本匿名組合員の主導によって本契約を終了させられる場面は限られているため (第 12 条参照)、本契約上の地位の譲渡は、本匿名組合員にとって、投下資本の回収のための重要な手段となります。本サンプルにおいては、(第2項の場面を除き) 営業者が承諾するかどうかについては営業者の完全な裁量に委ねることにしていますが、営業者は不合理に承諾を拒絶しない旨の規定を設けることや、一定の条件を満たした場合に必ず譲渡を承諾する旨の規定を設けることも考えられます。
なお、本サンプルは、匿名組合出資持分の私募の取り扱いを第二種金融商品取引業者である本取扱者に委託し、また、事業型ファンド規則の適用を受ける前提で作成されています。この前提とは異なり、(私募の取り扱いの委託に代えて) 適格機関投資家等特例業務の届出を行う場合には、投資家を適格機関投資家及び特例業務投資家に限定する必要があります (私募の取り扱いに関する同意・確認事項の解説参照)。また、本取扱者に私募の取り扱いを委託しつつ、事業型ファンド規則の適用を受けないようにする場合には、投資家を事業型ファンド規則における対象除外顧客に限定する必要があります。このような場合には、本条についても、譲渡先を適格な投資家に限定するような形で修正する必要があります。
また、第2項は、本匿名組合員が死亡した場合の処理について規定するものです。本サンプルでは、本匿名組合員が死亡した場合において法定相続人が被相続人の本契約上の地位及び権利義務を承継できるものとしていますが、営業者が誰を匿名組合員として取り扱うべきかを把握するために、相続時の届出を要する旨を定めています。なお、相続に伴う匿名組合出資持分の散逸を防止する観点から、匿名組合員の死亡を本契約の終了事由として定めることも考えられます。
第 15 条 営業者は、本匿名組合員に対して、以下の事項が本契約締結日及び払込期日において真実かつ正確であることを表明し、かつ、保証するものとする。
(1) 行為能力
営業者は、日本法に基づき適法に設立され、有効に存続する法人である。営業者は、本契約を締結し、これに基づく権利を行使し、義務を履行する権利能力及び行為能力を有する。
(2) 社内手続
営業者は、本契約を締結し、これに基づく権利を行使し、義務を履行するために、法令及び定款、社内規則に基づき必要な一切の内部手続を適法かつ適正に完了している。
(3) 許認可等
本契約の締結及びその義務の履行ならびに本契約により企図される取引の実行について、政府機関その他の第三者の許認可、登録、承諾若しくは同意等又はそれらに対する通知が必要である場合には、それらが適法に本契約締結日までに完了している。
(4) 適法性
営業者が本契約を締結し、又は営業者がこれに基づく権利を行使し、若しくは義務を履行することは、営業者に対して適用される一切の法令、定款、社内規則又は営業者を当事者とする契約の違反又は債務不履行事由とはならない。
(5) 有効な契約
本契約は、その締結により、営業者につき適法、有効かつ拘束力のある義務を構成し、その条項に従い執行可能なものとなる。
(6) 倒産事由等
営業者は、支払不能又は支払停止の状態になく、かつ営業者について、破産手続開始、会社更生手続開始、特別清算手続開始、民事再生手続開始又は日本国外におけるこれらに準じる倒産手続開始の申立ては行われておらず、かつ、いずれの原因となる事由も存在しない。
(7) 提出書類・情報の真実・正確性
営業者が本匿名組合員に対して開示又は提供した全ての情報及び提出書類が、その開示又は提出時点において真実かつ正確であり、当該情報及び提出書類に記載されるべき事項について欠落がない。
2 前項に定める営業者の表明及び保証に関し、誤りがあり又は不正確であったことが判明した場合には、営業者は、直ちに本匿名組合員に対しその旨を書面により通知し、係る表明・保証違反により本匿名組合員に生じた相当因果関係の範囲内の損害、損失又は費用等を補償する。
本条は、営業者が自己に関する一定の事実について真実かつ正確である旨を表明及び保証する、いわゆる表明保証条項です。
匿名組合は、営業者のみが本事業を遂行する権限を有し、また、営業者による業務の遂行能力によっては、投資家である匿名組合員の出資が返還されないおそれもあるため、投資家が本匿名組合に出資を行う前提として、営業者の行為能力等の保持、社内手続の完了、許認可等の取得・履践、適法性、信用状態等に問題がないことについて、表明保証をさせる内容としています (第
1項 (1) から (6) まで)。なお、これらの基礎的な事項にとどまらず、営業者がどのような事項に関して表明保証すべきかについては、本サンプルの使用者の実情に応じてケースバイケースで検討してください。
また、第1項 (7) においては、営業者が本匿名組合員に提供する書類及び情報の真実性及び正確性を表明保証の対象としています。投資対象の客観的な価値算定が比較的容易な不動産投資等と異なり、コンテンツ事業では、投資対象に関する情報は、専ら営業者により提供を受けた資料・情報に依拠することになり、その内容も専門性が高いことが想定されます。そのため、投資家による投資の自己責任原則を全うさせるためには、営業者から真実かつ正確な情報が提供されることが不可欠の前提であるため、このような表明保証事項を設けています。
なお、本匿名組合員は出資者としての関与しか持たないため、本サンプルにおいて、匿名組合員による表明保証条項は設けていません。もっとも、第1項 (1) から (6) までに規定されている事項は基礎的な事項であるため、本匿名組合員が営業者に対して同様の表明保証を行う規定を追加することも考えられます。また、本匿名組合員が表明保証すべき事項として、匿名組合による投資リスクについて認識したうえで投資判断をしていることを定めることも考えられますが、この点については、第5条において実質的にカバーされていることから、本サンプルにおいては特段の規定を設けていません。
既述のとおり、本サンプルは、匿名組合出資持分の私募の取り扱いを第二種金融商品取引業者である本取扱者に委託し、また、事業型ファンド規則の適用を受けるという前提で作成されています。この前提とは異なり、(私募の取り扱いの委託に代えて) 適格機関投資家等特例業務の届出を行う場合には、投資家を適格機関投資家及び特例業務投資家に限定する必要があります (私募の取り扱いに関する同意・確認事項の解説参照)。また、本取扱者に私募の取り扱いを委託しつつ、事業型ファンド規則の適用を受けないようにする場合には、投資家を事業型ファンド規則における対象除外顧客に限定する必要があります。このような場合には、本匿名組合員が、適格な投資家に該当することを表明保証事項として定めることが必要と考えられます。
また、第2項は、営業者が本契約上の表明保証等の違反が生じた場合の通知義務及び補償義務を定めるものです。表明保証は契約実務として取り入れられているものの、法律で何らかの効果が定められているわけではなく、違反時の効果は契約において明確にしておかなければなりません。表明保証事項の真実性・正確性は本匿名組合員による出資の大前提であることから、本サンプルにおいては、表明保証違反の効果として、第2項の補償のほか、出資義務履行のための条
件の不充足 (第3条第2項) 及び本契約の解除事由 (第 12 条第2項 (5)) を構成するものとしています。
第 16 条 営業者及び本匿名組合員は、相互に、本契約締結日及び払込期日において、暴力団員等 (暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等、その他これらに準ずる者をいう。以下同じ。) 又は次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。
(1) 暴力団員等が経営を支配していると認められる関係を有する者
(2) 暴力団員等が経営に実質的に関与していると認められる関係を有する者
(3) 自己、自社若しくは第三者の不正の利益を図る目的又は第三者に損害を加える目的をもってするなど、不当に暴力団員等を利用していると認められる関係を有する者
(4) 暴力団員等に対して資金等を提供し、又は便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有する者
(5) 役員又は経営に実質的に関与している者が暴力団員等と社会的に非難されるべき関係を有する者
2 営業者及び本匿名組合員は、相互に、自ら又は第三者を利用して、次の各号のいずれにも該当する行為を行わないことを確約する。
(1) 暴力的な要求行為
(2) 法的な責任を超えた不当な要求行為
(3) 取引に関して、脅迫的な言動をし、又は暴力を用いる行為
(4) 風説を流布し、偽計を用い又は威力を用いて相手方の信用を毀損し、又は相手方の業務を妨害する行為
(5) その他前各号に準ずる行為
3 営業者及び本匿名組合員は、相手方が暴力団員等若しくは第1項各号のいずれかに該当し、若しくは前項各号のいずれかに該当する行為をし、又は第1項の規定に基づく表明に関して虚偽の申告をしたことが判明した場合には、当該違反により相手方が被った損害、損失及び費用等を補償する。
4 営業者及び本匿名組合員は、相手方が暴力団員等若しくは第1項各号のいずれかに該当し、若しくは前項各号のいずれかに該当する行為をし、又は第1項の規定に基づく表明に関して虚偽の申告をしたことが判明した場合には、何ら催告することなく、本契約を解除することができるものとし、相手方はこれに異議を申し出ない。
5 前項の規定により本契約が解除された場合、本契約を解除された当事者に損害が生じたとしても、当該当事者は相手方に何らの請求をしない。
本条は、反社会的勢力排除条項について規定するものです。金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針や、一般社団法人第二種金融商品取引業協会の規則等において反社会的勢力の排除のための措置が求められることから、第二種金融商品取引業者が関与する本サンプルにおいては、反社会的勢力の排除にかかる営業者及び本匿名組合員の表明、確約、損害賠償、解除等を規定しています。
金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針において、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である『反社会的勢力』をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標榜ゴロ、政治活動標榜ゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である (平成 23 年 12 月 22 日付警察庁次長通達「組織犯罪対策要
綱」参照)」とされています (同監督指針Ⅲ-2-11)。そこで、本サンプルでは、平成 23 年 6 月 2日付で全国銀行協会が公表した、「銀行取引約定書に盛り込む暴力団排除条項参考例」を参考に、反社会的勢力の排除にかかる各種の規定を置いています。
第 17 条 営業者及び本匿名組合員は、相手方が本契約に違反し、その違反により損害、損失及び費用等を被ったときは、相当因果関係の範囲内でその補償を求めることができる。
第 17 条から第 23 条までは、いわゆる一般条項を定めるものです。匿名組合契約は、営業者と本匿名組合員の間の相対の契約であり、通常の金融取引において定められることの多い一般条項を本サンプルにおいても規定しています。
第 18 条 営業者が本契約に基づく分配金額その他の金銭の支払いを怠った場合には、支払期限の翌日から完済にいたるまで、年●●%の割合による遅延損害金を本匿名組合員に対して支払う。
第 19 条 営業者及び本匿名組合員は、① 法令等により開示が義務付けられる場合、② 行政官庁、裁判所その他の公的機関若しくは自主規制団体の要請により必要とされる場合、③営業者による資金調達に関して営業者が必要とする場合、④ 弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人その他の法令等に基づく守秘義務を負う専門家等への開示その他正当な理由のある場合、及び⑤ その他営業者と本匿名組合員との間で別途書面で合意する場合を除き、本契約に関して知り得た相手方に関する情報 (財務数値、
本契約の内容、本事業の内容、相手方から提供された一切の情報。但し、次の各号に掲げる情報を除く。) について、第三者に開示せず、かつ、本契約の目的以外に利用しない。
(1) 開示された時点で、すでに公知となっている情報
(2) 開示された後に、自らの責に帰すべき事由によらず公知となった情報
(3) 開示された時点で、すでに自ら保有していた情報
(4) 正当な権限を有する第三者から開示された情報
第 20 条 本契約は、本匿名組合員及び営業者の書面による合意がなされた場合に限り、変更することができる。
第 21 条 本契約に基づく通知は全て書面によるものとし、かつ、手交、郵便、[ファクシミリ]又は [電子メール] によって、下記の連絡先宛に行うものとする。なお、本匿名組合員及び営業者は、本条に基づく相手方への書面による通知により、連絡先の変更を行うことができる。
記
営業者宛の場合 | 《郵便番号及び住所を記入》 電話番号:《電話番号を記入》 [FAX 番号:《FAX 番号を記入》] [e-mail:《メールアドレスを記入》] |
本匿名組合員宛の場合 | 本主要条項に記載の連絡先 |
以上
2 前項なお書による届出がないか、又は届出が遅延したことにより、本匿名組合員に損害等が生じた場合には、営業者はこれにつき責を負わない。
3 本匿名組合員宛になされた諸通知が、転居、不在その他本匿名組合員の事情により延着し又は到達しなかった場合、営業者は通常到達すべき時点をもって到達したものとして取扱うことができるものとする。
第 22 条 本契約の準拠法は、日本法とする。
2 本匿名組合契約に関する一切の紛争については、●●地方裁判所を [非] 専属的合意管轄裁判所とする。
第 23 条 本契約に定めのない事項又は本契約に基づく権利義務について疑義を生じた事項については、営業者及び本匿名組合員が誠実に協議の上解決を図るものとする。
以 上