の影響を受けている。例えば,英文契約書は長く詳細である。言葉は,当事者を縛る道具と考え,できるだけ沢山表現しようとし,相手に対しては表された言葉で解釈しようと する。すなわち当事者は,信頼できない相手でも契約書でコントロールできると考える。何か問題があれば,すぐ訴訟を考える。長くて網羅的なのが英文契約書の特徴である。 英文契約書の当事者の関係は,「性悪説」に基づき,「対決」(confrontation)の関係である。
英文契約書の一研究
【研究ノート】
英文契約書の一研究
x x x x
x x
はじめに本 文
1.英文契約書に向き合う
⑴ 契約意識の相違
⑵ 日本文契約書と英文契約書との条項比較
⑶ 日本文契約書と英文契約書の内容比較
2.英文契約書に頻出する主要語句
⑴ 主要助動詞
⑵ 重要語句・表現
⑶ ラテン語とフランス語
はじめに
国際取引で使用される英文契約書には,売買契約書,販売店契約書,販売代理店契約書,合弁事業契約書などがある。本稿では実際に使用され,かつ筆者が相当に加筆修正し,独 自に編集し直した英文の技術援助契約を取り上げる。前半は,異文化コミュニケーション の観点から,短く簡単な日本文の技術援助契約書と比較してみる。後半は英文契約書に頻 出する主要語句を取り上げる。
本 文
1.英文契約書に向き合う
⑴ 契約意識の相違
国際的な場で使用される英文契約書と日本で使用される日本文契約書を比較してみると,一般的には英文契約書は西洋流そして日本文契約書は日本流と言えるほど文化
の影響を受けている。例えば,英文契約書は長く詳細である。言葉は,当事者を縛る道具と考え,できるだけ沢山表現しようとし,相手に対しては表された言葉で解釈しようとする。すなわち当事者は,信頼できない相手でも契約書でコントロールできると考える。何か問題があれば,すぐ訴訟を考える。長くて網羅的なのが英文契約書の特徴である。英文契約書の当事者の関係は,「性悪説」に基づき,「対決」(confrontation)の関係である。
一方日本文契約書は,一般に短く全部を書き尽くすようにはなっていない。書かれ ていないところが,それなりにあり,柔軟に対処できる余地が残されている。そして まずほとんどの場合,「別途協議条項」や「円満協議条項」があり,裁判にせず,当 事者同士で解決しようとし,対決を避けようとする。それでも駄目な時は,調停や仲 裁を選び,最後にどうしようもない時に,裁判をしようとする傾向にある。結局日本 人は,信頼できる相手と契約を結びたいと考えている。これは当事者が,できるだけ 長期に亘り関係を続けたいということである。その方が費用も安くなるとも言われる。日本文契約当事者は,「性善説」に基づき,「同化」(assimilation)の関係である。日 本文契約書にだけ慣れていると英文契約書に対して充分に対応することができない。これは高コンテクスト文化と低コンテクスト文化という文化の差で説明可能である。
しかし最近の特に若い人の中には,国際ビジネスに携わる人も少なくなく,また海外から日本に来るビジネスマンも益々多くなり,一昔前の日本のビジネス慣行とは,幾らか異なって来ていると思われるが,幾つかの契約書を見る限り,以前のものとさほど変わっていないと見られる。紛争も裁判で解決する方が後腐れがない,という考えもある。日本文の契約書の内容もこれまで通りで良いのか検討の余地が残されている。
⑵ 日本文契約書と英文契約書との条項比較
ここでは下の技術援助契約の実例の条項とその表題を比較してみる。それは以下の通りである。
・日本文<技術援助契約>
第1条 許諾 第2条 対価の支払 第3条 報告書の提出 第4条 開発技術の開示 第5条 秘密保持 第6条 譲渡の禁止 第7条 期間と終了 第8条 協議
・英文<技術援助契約>
第1条 定義 第2条 許諾の範囲 第3条 技術援助 第4条 商標権の実施許諾 第5条 ロイヤルティの支払 第6条 会計帳簿 第7条 税金 第8条 改良および戻し特許 第9条 技術特許の防止 第10条 侵害 第11条 不可争 第 12条 秘密保持 第13条 契約期間 第14条 不可抗力 第15条 譲渡 第16条通知 第17条 仲裁 第18条 完全合意 第19条 準拠法 第20条 分離 第21条解釈 第22条 条項の見出し
同じ条件でないので単純には比較できないが,上記の日本文<技術援助契約>が8 条項,同じく英文<技術援助契約>は22条項である。特に日本文<技術援助契約>は,契約書式集の見本なので,条項数が多少増減することはある。文章量の単純比較では,この英文契約書は日本文契約書のおよそ7.5倍である。また筆者が,アパート賃貸契 約書について日本語版(日本で入手)と英語版(アメリカで入手)を比較したところ,日本語版は15条項,英語版は24条項であった。文章量では,もっと差が広がる。過去 他にも売買契約書,合弁契約書なども比較したことがある。まず日本文契約書の条項 は少なく,英文契約書の条項は圧倒的に多いと言える。条項も多いが条項の中に詳細 に書かれている内容も多いのである。
⑶ 日本文契約書と英文契約書の内容比較
<日本文>技術援助契約書
第1条 許諾
技術援助契約書
都道府県市区町村番地 (甲)xxxx都道府県市区町村番地 (乙)xxxx
甲は,乙に対して,甲の発明にかかる□の製造技術(以下ノウハウという)を使用して製造および販売をなすことを承認する。
第2条 対価の支払
乙は,ノウハウの対価として,毎月末日現在乙の売上高を基準として,その売上の□%を,翌月□日までに甲に銀行振込によって支払う。
第3条 報告書の提出
乙は,毎月□日までに前月の販売数量,販売高,販売先など,ノウハウの実施状況を明記した報告書を甲に提出しなければならない。
前項の報告書に記載すべき事項の詳細については,甲乙別途協議のうえ決める。
第4条 開発技術の開示
甲乙双方は,この契約有効期間中,製品に関して,改善案ならびにこれに基づいて,特許権,実用新案権を取得したときは,相互にその技術資料ならびに実施権を,無償で提供する。
第5条 秘密保持
乙は,xxxxに関する機密を他に漏洩してはならない。
乙が,前項の規定に違反したものと甲が認めるときは,甲は直ちにこの契約を解除し,損害賠償を求めることができる。
第6条 譲渡の禁止
乙は,本契約に基づく一切の権利義務を第三者に譲渡してはならない。
第7条 期間と終了
本契約の存続期間は本契約成立の日から□年間とする。
ただし,期間満了□か月前迄に,甲または乙からの異議の申し出がなければ,本契約は,
その後□年自動的に延長され,その後もまた同様とする。
第8条 協議
甲および乙は,本契約書に定めがない事項および本契約書の条項の解釈について疑義が 生じた場合は,民法その他の法令及び慣行に従い,誠意を持って協議し,円満に解決する。
上契約の成立の証として,xxx通を作成し,甲乙各一通を保持する。平成□年□月□日 (甲)xxxx 印
(乙)xxxx 印
出典:xxxx『契約書式の作成全集』自由国民社,2012年,p.712。縦書きを横書きにし,若干加筆修正した。
<英文>技術援助契約
Technical Assistance Agreement
This Agreement, made and entered into on the 15th day of March, 20-- by and between XX Xx., Xxx., x corporation duly organized and existing under the laws of Japan, with its registered main office at Minato-ku, Tokyo, Japan(hereinafter referred to as Licensor), and BB Co., Inc., a corporation duly organized and existing under the laws of USA, with its registered main office at Minneapolis, USA(hereinafter referred to as Licensee)
WITNESSETH
Whereas, Licensor is experienced in the production of the Licensed Products in Japan and is in a position to furnish considerable technical advice and information; and Whereas, Licensee desires to construct and operate a plant in Minneapolis, USA for producing the products specified on the terms and conditions set forth in this Agreement and to have Licensor furnish Licensee with the technical information in this Agreement and Licensor is willing to furnish such technical advice and information on the terms and conditions set forth in this Agreement.
Now therefore, it is agreed by and between the parties as follows:
[訳例]
日本法により正式に設立存続し,登録上の主たる営業所を日本国xxx港区に有する法人であるAA株式会社(以下「ライセンサー」と称す)とアメリカ合衆国法により正式に設立存続し,登録上の主たる営業所をアメリカ合衆国ミネアポリスに有するBB株式会社
(以下「ライセンシー」と称す)により,両社の間で20—年3月15日に締結された本契約書は,以下のことを証する。
ライセンサーは,日本において許諾された製品の生産の経験があり,相当の技術の助言と情報を供与することができる。
ライセンシーは,本契約書に規定された条件で製品を生産するための工場をミネアポリスに設立し操業したいと願い,かつライセンサ-に本契約書に記載されたその製品を生産
するための技術情報と助力をライセンシ-に対して提供してもらいたいと願っている。またライセンサーは,本契約書で規定された条件でそのような技術の助言と情報を供与したいと思っている。
そこで,両当事者により,かつ両当事者の間で以下のように合意される。
Article 1. Definitions
For the purpose of this Agreement, the words and terms listed below shall have the following meanings:
⑴ “Licensed Products” shall mean ...
⑵ “Patents” shall mean patents, utility models and design rights, owned by the Licensor and relating to the Licensed Products or the Technical Information, issued by any government and applications therefor that are filed prior to or during the term of this Agreement.
⑶ “Trademarks” shall mean the trademarks and trademark applications owned by Licensor in Japan.
⑷ “Technical Information” shall mean presently existing technical information, knowhow, drawings, specifications, shop methods, processes, formulae and secrets of manufacture, and treatment of materials owned or controlled by Licensor at the date of hereof, pertinent to the manufacture and use of the Licensed Products.
⑸ “Improvement” shall mean any improvement, development, or modification of the Technical information.
⑹ “Export Territory” shall mean X, Y and Z; provided, however, that Licensor has the right to withdraw any of the above enumerated countries in the event an exclusive franchisee has been appointed in such countries or sales by Licensee is in Licensorʼs judgment faced with a reasonable certainty of disturbing the market, such as by possibility of dumping by Licenseeʼs customers.
⑺ “Effective Date” shall mean the date on which the approval by the Japanese Government of this Agreement required by Japanese laws or the approval by USA Government of this Agreement required by USA laws, whichever is later, have obtained in such form and substance as are acceptable to the both parties.
[訳例]
第1条 定義
本契約書の目的のため,以下に記載された単語または用語は,次のような意味を有する。
⑴ 「許諾製品」とは,〜を意味する。
⑵ 「特許権」とは,ライセンサーが所有するおよび許諾製品に関する,または「特許権」「実用新案権」および「意匠権」であって,いずれかの政府によって発行されたもの,および本契約書の期間前および有効期間中に出されるそれらに対する出願を意味する。
⑶ 「商標」とは,所有している商標および日本における商標出願を意味する。
⑷ 「技術情報」とは,「許諾製品」の製造および使用に関するもので,本契約書の締結日現在,ライセンサーが所有するか支配している現存の技術情報,ノウハウ,製図,仕様書,作業方法,工程,製造上の方式,および製造・材料の取扱いの秘密を意味する。
⑸ 「改良」とは,「技術情報」についての一切の改良,開発または変更を意味する。
⑹ 「輸出地域」とは,X, Y, Z国を意味する。ただし,ライセンシーにより一手販売業者がその国において任命された場合,またはその国におけるライセンシーによる販売が,ライセンサーの判断で,ライセンシーの顧客によってダンピングの可能性によるなど,市場撹乱の相当な確実性に面している場合には,ライセンサーは上記に列挙された諸国のいずれからも撤退する権利を有する。
⑺ 「発効日」とは,日本法により要求された本契約書の日本政府による承認またはアメリカ合衆国法により要求された本契約書のアメリカ合衆国政府による承認,どちらか遅い方が,両当事者に対して承認可能なような形式および内容によって取得された日を意味する。
Article 2. The Scope of License
⑴ Licensor hereby grants to Licensee a non-exclusive right to use the Patents and Trademarks in connection with the manufacture of the Licensed Products in USA and sale thereof in USA and the Export Territory. No Licensed Products shall be exported, or sold to others for export, to countries other than those in the Export Territory.
⑵ Licensor shall disclose to Licensee promptly after the Effective Date the Technical Information in order to permit Licensee to use the same as specified in Article 2 ⑴ hereof, and only for such purpose.
[訳例]
第2条 許諾の範囲
⑴ xxxxxxは,本契約書によってライセンシーに対して,アメリカ合衆国における
「許諾製品」の製造に関する,およびアメリカ合衆国と「輸出地域」におけるそれらの販売販売に関する「特許権」および「商標権」のについて,非独占的権利を付与する。「許諾製品」は,「輸出地域」の国々以外の諸国に対して輸出も,また輸出のための第三者に対する販売もしない。
⑵ ライセンサーは,xxxxxxに対して発効後迅速に「技術情報」を本契約書第2条
1項に記載されるものを使用するためにのみ開示する。
Article 3. Technical Assistance
⑴ Immediately after the Effective Date, Licensor shall transmit one complete set of copies of its Technical Information to Licensee. In addition, Licensor shall provide Licensee with additional copies of any drawings and documents relating to such Technical Information to Licensee upon request and at a cost to be agreed upon. All documents will be written in the English language and will employ such measures, weights and standards as are in customary use in Japan.
⑵ At the request of Licensee, Licensor shall send technical personnel to Licenseeʼs factory in USA. Licensee shall bear all of Licensorʼs costs for sending such technical personnel including without limitation the salaries of such personnel and fringe benefits, and shall furnish and pay for first-class travel between Japan and USA, and living expenses, including first-class accommodations and travel expenses, while in USA.
⑶ Licensor shall instruct and train technical personnel of Licensee sent to Licensor in Japan in order to acquire full manufacturing techniques and other information as to the Licensed Products. All expenses of such technical personnel shall be borne by Licensee, and Licensor shall be paid by Licensee a cost to be agreed upon for training such personnel.
[訳例]
第3条 技術援助
⑴ ライセンサーは,発効日後迅速に,ライセンシーに対して,「技術情報」の完全な部数を送付する。さらにライセンサーは,xxxxxxに対して,要求有り次第合意された費用で,そのような「技術情報」に関する図面および書類の追加の部数を供与する。全ての書類は,英語で書かれ,日本で慣用的に使用されている寸法,重量,基準が採用される。
⑵ xxxxxxの要求により,xxxxxxは,アメリカ合衆国におけるライセンシーの工場に技術要員を派遣する。xxxxxxは,要員の給料と付加給与に限定されないが,これらを含めて,技術要員を派遣するためのライセンサーの費用を全て負担する。さらに日本とアメリカ合衆国間のファーストクラスの旅費およびアメリカ合衆国滞在中のファースクラスの宿泊設備および旅費を負担する。
⑶ ライセンサーは,「許諾製品」に関する全ての製造技術およびその他の情報を修得す るために日本のライセンサーに派遣されたライセンシーの技術要員を教育し,訓練する。そのような技術要員の全費用は,xxxxxxによって負担される。そのような要員を 訓練するために合意された費用は,ライセンシーによりライセンサーに支払われる。
Article 4. Trademark License
⑴ The Licensed Products manufactured and sold by Licensee with any of the Trademarks hereunder shall conform in external appearance, component parts and function to Licensorʼs specifications and standards. Licensee shall not use any of the Trademarks unless a model of each such Licensed Product has first been prepared and approved by Licensor as prototype. Licensee shall immediately discontinue use of the Trademarks on or in connection with any Licensed Products which Licensor determines do not conform with Licensorʼs standards and specifications.
⑵ Licensee agrees no to make application to register, or to use any trademark or trade name confusingly to any of the Trademarks.
[訳例]
第4条 商標権の実施許諾
⑴ 本契約書に基づく「商標」のいかなるものを付してライセンシーによって製造され,販売された「許諾製品」は,外観,部品,機能においてもライセンサーの仕様および基準と一致する。ライセンシーは,各「許諾製品」のひな形を最初に用意し,原型としてライセンサーによって承認されるのでなければ,「商標」の一切を使用しない。xxxxxxは,xxxxxxがライセンサーの標準と仕様に一致しないと判断する「許諾製品」につく,または関連する「商標」の仕様を直ちに中止する。
⑵ ライセンシーは,「商標」の一切と紛らわしいいずれの商標または商号の登録を申請しないこと,また使用しないことに合意する。
Article 5. Payment of Royalty
⑴ In consideration of the license and disclosure provided for hereunder, Licensee shall pay to Licensor an amount equal to three percent (3 % ) of Ex Works selling price of the Licensed Products sold by Licensee during the term hereof. Such selling price shall be computed Ex Works on only the Licensed Products which are sold hereunder less all sales or excise tax, freight, insurance and other similar charges. In the event of use or transfer or other disposition by Licensee of the Licensed Products without compensation or for a price lower than the price charged to independent third party purchasers of such Licensed Products, then the selling price of Licensed Products so used, transferred or otherwise disposed of shall mean the price charged by Licensee at such time for sales of the products to independent third party purchasers.
⑵ The royalty based on the selling price shall be computed quarterly during the term hereof and shall be remitted within sixty (60) days after the end of each March, June, September and December. At the time of every such payment Licensee shall render to Licensor a written statement of computation for the royalty hereunder for the calendar quarter for which such payment is made.
⑶ Licensee shall guarantee that the amount of royalty under Article 5⑴ payable in each calendar year will be not less than the following minimum royalty:
⒜ For the first calendar year: None
⒝ For the second calendar year: JY_______
⒞ For each of the third and succeeding calendar years(To be prorated for a fraction of a year): JY_______
⑷ In the event that the amount of royalty for any calendar year computed under Article 5⑴ is less than the minimum royalty amount specified under Article 5⑶, the difference shall be paid together with the royalty payable within sixty (60) days after the end of each December, or for the calendar year during which this Agreement shall be terminated, together with the last royalty payment.
⑸ All payments to Licensor by Licensee under this Agreement shall be made in Japanese Yen.
[訳例]
第5条 ロイヤルティの支払
⑴ 本契約書に基づき記載された実施許諾および開示の対価として,xxxxxxは,ライセンサーに対して本契約書の有効期間中にライセンシーにより販売された「許諾製品」の工場渡し売価の3%に等しい価格を支払う。そのような売価は,すべての売上税または消費税,運賃,保険料,その他同様の諸費用を差引いて,本契約書に基づいて販売される「許諾製品」だけについて計算される。ライセンシーが,無償でまたは独立した第三者に課される「許諾製品」の価格より低い価格で,「許諾製品」を使用したり,譲渡したり,あるいはその他の処分をした場合には,そのように使用され,譲渡され,その他に処分された「許諾製品」の価格は,独立した第三者の購入者に対し製品の販売の時にライセンシーにより請求される価格を意味する。
⑵ 売価に基づくロイヤルティは,本契約書の有効期間中に3ヶ月毎に計算され,各3月,
6月,9月,12月の末から60日以内に送金される。そのような各支払時には,xxxxxxは,ライセンサーに対して,支払がなされる各3ヶ月間の本契約書に基づくロイヤルティの計算書を送付する。
⑶ ライセンシーは,各暦年毎に支払わなければならない第5条1項に基づくロイヤルティの金額が,以下の最少のロイヤルティを下回らないことを保証する。
⒜ 最初の暦年:なし
⒝ 第2暦年:_____日本円
⒞ 第3暦年以降(1年未満の期間については,これを比例配分した金額):
_____日本円
⑷ 第5条1項に基づいて計算された各暦年のロイヤルティの金額が,第5条3項に基づいて記載された最少ロイヤルティの金額を下回った場合には,差額は,各12月の月末後 60日以内に支払わなければならないロイヤルティと一緒に支払われ。または本契約書が終了する暦年においては,最後のロイヤルティの支払と一緒に支払われる。
⑸ 本契約書に基づくライセンシーのライセンサーに対する支払は,全て日本円とする。
Article 6. Account Book
Licensee shall keep complete and accurate account books regarding all orders for, production and sales of the Licensed Products. Such books shall, at any reasonable time, be open for inspection by Licensor or its designated representative or certified public accountant.
[訳例]
第6条 会計帳簿
ライセンシーは,「許諾製品」の一切の注文,製造および販売に関する完全かつ正確な会計帳簿を作成する。この帳簿は,妥当な時はいつでも,ライセンサーまたはその指定した代理人または公認会計士の調査のために,閲覧可能にする。
Article 7. Taxes
Any income tax imposed on payments to Licensor under this Agreement shall be
borne by Licensor and shall be computed and paid in accordance with the laws of USA and any convention, treaty or other agreement relating to taxation between Japan and USA.
In the event Licensee is required to withhold such tax from the amount to be paid to Licensor hereunder, and to pay the tax for the account of Licensor, Licensee shall provide Licensor with certificates of such withholding and payment.
[訳例]
第7条 税金
本契約書に基づいて,ライセンサーに支払うべきものとして課された一切の税金は,ライセンサーが負担し,アメリカ合衆国の法および日本とアメリカ合衆国間の課税に関する一切の協定,条約またはその他の合意に基づいて計算し,支払う。xxxxxxが,本契約書に基づいてライセンサーに対して支払われるべき金額からそのような税金を控除することを要求される場合には,xxxxxxは,ライセンサーに対して控除および支払に関する証明書を提供する。
Article 8. Improvement and Grant Back
⑴ Licensor shall grant to Licensee the right to use the improvement made or developed by Licensor for the manufacture of Licensed Products in USA and sale thereof in USA and the Export Territory. The right to use the Improvement made or developed by Licensee, including the right of sublicense and patent application based on such improvement shall be granted to Licensor without charge. The rights granted under this Article 8 ⑴ by Licensor to Licensee are also subject to all the terms and conditions of Article 2 and Article 12 of this Agreement.
⑵ In order to attain the purposes mentioned in Article 8⑴, each of the parties shall keep the other fully informed of the Improvement made or developed by each, and of the status of patents and patent applications based on such Improvement.
[訳例]
第8条 改良および戻し特許
⑴ ライセンサーは,アメリカ合衆国における「許諾製品」の製造,またはアメリカ合衆国および「輸出地域」における販売のためにライセンサーにより行われ,または開発された「改良」を使用する権利をライセンシーに供与する。xxxxxxによって作成され,または開発された「改良」を使用する権利は,そのような「改良」に基づく再実施権,特許申請を含め,無償でライセンサーに供与される。本第8条1項に基づいて供与される権利は,本契約書の第2条および第12条の全ての条件に従う。
⑵ 第8条1項に記載された目的を達成するために,各当事者は,それぞれが行い,または開発した「改良」,およびこのような「改良」に基づく特許および特許出願の状態を,相手方に完全に通知し続ける。
Article 9. Prevention of License
Anything in this Agreement to the contrary notwithstanding, neither Licensor nor
Licensee shall be obligated to:
⒜ disclose any inventions, improvements or new designs, or
⒝ grant a license under any patent or application for patent, if any of the parties so obligated to disclose or to grant such license hereunder is prohibited by law or by the agreement with a third party from making such disclosure or from granting such license.
[訳例]
第9条 技術許諾の防止
本契約書の中にそれに反対に規定があっても,ライセンサーもライセンシーも,本契約書に基づく技術許諾の開示または供与の義務を有する当事者のいずれでも,法律または第三者との間の契約によって,このような技術許諾の開示または供与が禁じられている場合には,
⒜ 一切の発明,改良,新デザインを開示すること,
⒝ 特許または特許出願に基づく実施許諾を承認すること,のいずれもその義務を負わない。
Article 10. Infringement
⑴ Licensor shall not guarantee that use of Patents, Trademarks, Technical Information and Improvement will not infringe upon the rights of others.
⑵ In the event that any suits are instituted against Licensee for infringement of patents solely on the practice by Licensee hereunder of Patents, Trademarks, Technical Information, or Improvements, Licensee shall notify Licensor of the institution of such suit(s) and permit Licensor to control the defense thereof with counsel of its own selection. Licensor shall thereupon assume the control thereof, it being agreed that all expenses for such defense will be for the account of Licensee. Licensee shall cooperate fully in the defense of such suits and to that end shall furnish all of the evidence in its control. Licensee shall also give Licensor immediate notice of any written claim of infringement.
⑶ In the event that Licensor and Licensee agree in writing that a suit should be brought for infringement of any of the Patents or Trademarks licensed to Licensee hereunder, such suit shall be brought promptly thereafter and be vigorously and diligently prosecuted by Licensee subject to joint control of Licensor and Licensee. Licensor and Licensee shall bear each one-half of all of the expenses arising out of such suit. Any sum of money which may be collected in any suit by judgment or by settlement shall be used first to reimburse the parties for the expenses incurred by them with respect to such suit, and any balance of the remaining amount shall be divided equally between the parties. Licensee shall make no settlement or other disposition of any such suit without the written consent of Licensor. Nothing herein shall preclude Licensor from bringing suit individually in the event Licensee elects
not to participate in any such suit.
[訳例]
第10条 侵害
⑴ ライセンサーは,「特許権」「商標」「技術情報」および「改良」が第三者の権利を侵害しないことを保証しない。
⑵ ライセンサーが,「特許権」「商標」「技術情報」または「改良」の本契約書のライセンシー による実施についてのみに基づいて,ライセンシーに対して訴訟が提起された場合には,xxxxxxは,直ちにライセンサーに訴訟の開始について通知し,xxxxxxが自 己の選択による弁護士と共にそれらの防御を計ることを許可する。ライセンサーは,そ の全ての費用がライセンシーによって負担されるという合意がされるなら,それらのx x統制を引受ける。xxxxxxは,xxxxxxに対して,それらの訴訟の防御に全 面的に協力し,その目的に対し,支配下にあるすべての証拠を提出する。xxxxxx は,xxxxxxに対し,書面による侵害訴訟請求の通知を直ちに送付する。
⑶ xxxxxxとxxxxxxは,本契約書に基づきライセンシーに対して許諾された一切の「特許権」または「商標」の侵害に対して,訴訟を提起すべきことを書面によって合意した場合には,この訴訟は,その後直ちに提起され,xxxxxxとライセンシーの共同管理に基づいて,ライセンシーによって精力的にかつ誠実に遂行される。そのような訴訟から生じた全ての費用は。ライセンサーとxxxxxxが折半し半額ずつ負担する。この訴訟において,判決または和解によって取立てられた一切の金額は,この訴訟に関して当事者が支出した費用の弁償に充てられ,残額は,当事者に等しく分配される。xxxxxxは,xxxxxxの書面による承諾がなければ,そのような訴訟の和解その他の処置をしない。xxxxxxが,一切の訴訟に関与しない場合には,本条の何ものも,ライセンサーが単独で訴訟を提起することを妨げない。
Article 11. Non-contestability
Licensee shall covenant not to contest, either directly or indirectly, the validity of any of the Patents or Trademarks, or aid others in doing so.
[訳例]
第11条 不可争
ライセンシーは,直接であると間接であるとを問わず,「特許」または「商標」の一切の効力を争ったり,あるいは争っている他者を援助しないことを約束する。
Article 12. Secrecy
Licensee shall keep in a confidential manner the Technical Information furnished by Licensor under this Agreement, and such information shall be used solely for the purpose stated herein. Licensee shall not disclose any of the Technical Information to others except those of employees who are actually engaged in the manufacture of the Licensed Products, and take such special precautions as in Licensorʼs opinion may be necessary to prevent inadvertent unauthorized disclosure of the Technical Information.
[訳例]
第12条 秘密保持
xxxxxxは,本契約書に基づいて,ライセンサーにより供与された「技術情報」を,秘密に取扱う。かつこのような「秘密情報」を,本契約書に記載された目的にのみ使用する。xxxxxxは,実際に「許諾製品」に従事している従業員を除く第三者に対して,一切 の「技術情報」を開示しない。かつライセンシーは,「技術情報」の一切を不注意な無許 可の開示を防ぐためにライセンサーが必要と考える,特別な予防手段を行使する。
Article 13. Terms
⑴ The term of this Agreement shall start from the Effective Date and remain effective for seven ⑺ years; provided, however, that Licensee may, by written notice to Licensor not less than six ⑹ months prior to such termination date, extend the term of this Agreement for an additional period of five ⑸ years, subject to validation by the Japanese and/or USA Government where necessary.
⑵ Notwithstanding the provision of Article 13 ⑴ , Licensor may terminate this Agreement forthwith upon written notice to Licensee in the event of the latterʼs insolvency or bankruptcy, or either voluntary or involuntary, assignment for the benefit of creditors, and either party may terminate this Agreement forthwith by written notice to the other in the event of a breach by other of any of the provisions contained herein if such breach remains unrectified for a period of ninety (90) days following written notice of breach.
⑶ In the event Licensee should have been controlled by any one who is engaged in business competition with business of Licensor, or who, in the reasonable judgment of Licensor, is feared adversely to affect Licensorʼs business, Licensor may terminate this Agreement by a written notice to Licensee.
⑷ The obligations provided for under Article 4 ⑵, Article 10 and Article 11 hereof shall survive the termination of this Agreement for any reason whatsoever.
[訳例]
第13条 契約期間
⑴ 本契約書の期間は,「発効日」に始まり,7年間効力を有する。ただし,以下のことを条件とする。xxxxxxは,終了日の6ヶ月前までにライセンサーに対し書面による通知により,必要ある場合は,日本政府とアメリカ合衆国政府の両方または片方の確認を条件として,5年間の追加期間本契約書の期間を延長できる。
⑵ 第13条1項の規定にも拘らず,ライセンサーは,ライセンシーの支払不能あるいは倒産の場合,または自発的であるとそうでないとを問わず,債権者に対して財産譲渡の場合,ライセンシーに通知次第直ちに,本契約書を終了することができる。さらにいずれかの当事者は,相手方の契約書の条項違反についての通知に続く90日間違反を修正しない場合には,相手方に書面で通知次第直ちに本契約書を終了することができる。
⑶ xxxxxxが,ライセンサーの事業と競合する当事者,またはライセンサーの妥当な判断において,ライセンサーの事業に好ましくない影響があると判断される当事者に
より支配されるに至ったときは,ライセンサーは,ライセンシーに書面による通知によって,本契約書を終了することができる。
⑷ 第4条2項,第10条および第11条の規定された義務は,理由の如何を問わず,本契約書の終了も効力を有する。
Article 14. Force Majeure
⑴ Neither Licensor nor Licensee shall be responsible for any failure in fulfillment of their obligations due to Acts of God, Governmental orders or restrictions, war, threat of war, warlike conditions, hostilities, sanctions, mobilization, blockage, embargo, revolution, riot, strike, lockout, plague, fire, flood, breakdown, accident or any other causes or circumstances beyond the control of both parties.
⑵ When one party cannot perform its obligation owing to “force majeure,” it shall immediately inform the other party of it by teletransmission and afterwards submit a document issued by the Chamber of Commerce or any other similar institute to certify such “force majeure” within a reasonably short period.
[訳例]
第14条 不可抗力
⑴ ライセンサ-もライセンシ-も,天災,政府命令・制限,戦争,戦争の脅威,戦争状 態,敵対行為,制裁,動員,封鎖,輸出禁制,革命,騒動,ストライク,ロックアウト,疫病,火災,洪水,故障,事故または両当事者の如何ともしがたいその他の原因または 状況による,義務の不履行に対しては,責任を負わない。
⑵ 一方の当事者が,「不可抗力」により自分の義務を履行できないときは,電信でその旨相手の当事者に直ちに通知し,その後それ相応の短期間内に,その「不可抗力」を証明するための,商業会議所または類似の機関が発行する書類を提出する。
Article 15. Assignment
⑴ This Agreement shall not be assigned by either party without the prior written consent of the other party, and Licensee shall not sublicense the license granted hereunder to others.
⑵ In the event Licensee should, without the prior written consent of the other party, have merged into any other corporation or amalgamated with any other corporation to form a new corporation, Licensor may terminate this Agreement.
[訳例]
第15条 譲渡
⑴ 本契約書は,事前の書面による相手方当事者の同意なくして譲渡されない。xxxxxxは,本契約書に基づいて供与された実施権を他者に再実施しない。
⑵ xxxxxxが,相手方の事前の書面による相手方の同意なくして,他の会社と吸収合併されたり,他の会社と合弁して新会社を設立したときには,ライセンサーは,本契約書を終了することができる。
Article 16. Notice
Any notice or report required or permitted to be given to the other party under this Agreement by one of the parties shall be deemed to have been sufficiently given for all purposes hereof if airmailed registered postage prepaid, addressed to such party with its address indicated above or to such other address as will hereafter be furnished by such party by written notice.
[訳例]
第16条 通知
本契約書に基づいて一方の当事者から他の当事者に通知されることを要求されたり許可される一切の通知や報告は,上記に示された住所または将来その当事者により書面による通知によって供されるようなその他の住所宛に,郵便料金前払いで,書留航空郵便で送付されたならば,本契約書のすべての目的のために十分に送付されたと見なされる。 Article 17. Arbitration
⑴ All disputes which may arise in connection with this Agreement and its interpretation shall be settled in an amicable way between both parties.
⑵ If the dispute cannot be resolved and settled in a friendly way, it will be finally settled by arbitration to be held in Japan in conformity with the Commercial Arbitration Rules of the Japan Commercial Arbitration Association. The award rendered by arbitration shall be final and binding upon the parties hereto.
[訳例]
第17条 仲裁
⑴ 本契約書およびその解釈に関連して生じるすべての紛争は,両当事者間において友好的方法で解決する。
⑵ もしその紛争が友好的方法で解決できないときは,国際商事仲裁協会の商事仲裁規則に則り日本で行われる仲裁により最終的に解決する。仲裁によって出された裁定は,最終的なものとし,両当事者を拘束する。
Article 18. Entire Agreement
This Agreement shall constitute the entire agreement between the parties, and supersedes all previous negotiations, representations, understandings and agreements heretofore made between the parties with respect to the subject matter.
[訳例]
第18条 完全合意
本契約書は,本件に関する完全合意を構成し,主題に関する当事者間でなされたこれまでの全ての交渉,表明,約束および合意に優先する。
Article 19. Governing Law
The formation, validity, construction, interpretation and performance of this Agreement shall be governed by the laws of Japan.
[訳例]
第19条 準拠法
本契約書の成立,効力,解釈および履行は,日本法に準拠する。
Article 20. Severability
If any provision, clause, or application of this Agreement is held unlawful or invalid by court or administrative decision, it shall be deemed severable, and such unlawfulness or invalidity shall not in any way affect any other provisions, clauses, or application of this Agreement, which can be remain effective without the unlawful or invalid provisions, clauses or application.
[訳例]
第20条 分離
本契約書のいずれかの規定,条項,適用が,裁判所または行政部門の決定によって違法または無効と判決されても,それは分離可能と見なされ,またそのような違法または無効は,本契約書のその他一切の規定,条項,適用に何らの影響を与えない。本契約書は,違法や無効の規定,条項,適用の部分がなくても有効であることが可能である。
Article 21. Interpretation
This Agreement is executed in two ⑵ counterparts in the English language, but which together constitute one and the same instrument. No translation into Japanese language shall be considered in the interpretation hereof.
[訳例]
第21条 解釈
本契約書は,英語で二通作成されるが,それらは共に全く同一の文書を構成する。日本語への翻訳は,本契約書の解釈においては考慮されない。
Article 22. Article Title
The headings to the Articles of this Agreement have been inserted only to facilitate reference and shall not be taken as being of any significance whatsoever in the construction or interpretation of this Agreement.
[訳例]
第22条 条項の見出し
本契約書の条項の見出しは,単に参照を容易にするために挿入されたものであり,本契約書の成立にも解釈にも,なんらの意味があると見なされない。
IN WITNESS WHEREOF, the parties hereto have caused this Agreement to be executed by their duly authorized officers or representatives on the day and year first above written.
[訳例]
以上の証として,本契約書の両当事者は,冒頭記載の年月日に適法に権限をもつ役員または代表者により本契約書を作成した。
AA Co., Ltd. BB Co., Inc.
By_______ By_______ President President
(訳省略)
*本契約書は,実際の契約書を大幅に加筆修正したものである。
2.英文契約書に頻出する主要語句
⑴ 主要助動詞
・shall
shallは,古英語では義務を表す動詞として使われていた。この原義を受けて,契約書では「義務」「強制」「将来の約束」を表す。法的強制力(enforceable by law)があるとされる。ほとんどmustの概念であるが,通常mustでなくshallが使用される。日本語に訳すとなると「〜しなければならない」「〜するものとする」「〜する」いずれでも結構であるが,これらを混同しないで統一するのがよい。否定形はshall notであるが,「〜してはならない」の意味となる。
・may
これは普通の文章では推量の意味を表し「〜かもしれない」と訳されるが,契約 書で使われると,許可または権利の意味で使われ「〜することができる」の意味と なる。これはほとんどcanの概念である。この否定形は,may notであるが,これは「〜 する権利がない」という意味で使用可能である。もっと強い禁止は上記shallの否 定形shall notが使われる。なおmayはto have the right toと書かれる場合があるが,意味はほぼ同じとなる。
・will
これは一般には「xx」を表すが,英文契約書の中では強制力がshallと同じとする説とshallほど強制力がないという説がある。相手方の義務にはwillが使われ自分側の義務にshallが使われている場合には,どうしてなのか聞いてみる必要がある。
・can
これはもちろん「可能」を表す。英文契約書で見ることは少なく,mayを使う方 がいいとされている。なおcanは古英語ではcunnanで「知る」という意味であった。すなわちcanとto knowは語源を共有する。
・must
これは「義務」「要件」を表す。mustを使うとshallより堅苦しくない印象は受ける。しかし慣用的にはshallの方がよい。
・should
これは一般的には「xx的責任」を意味し,法的強制力を表さない。この意味では,shallやmustより劣る。すなわちshouldは,xx的責任を表すにすぎないので, shallやmustの代用にならない。
⑵ 重要語句・表現
・arbitration「仲裁」
仲裁は,紛争解決方法の一つである。一般に仲裁と裁判は二者択一で,国際取引では,通常仲裁で解決するのが国際慣習である。仲裁とは,裁判所以外の場所で裁
判官以外の私人である仲裁人(arbitrator)が行う合法的な私的裁判である。仲裁人は,国際取引に充分な知識や経験を持っている専門家である。裁判の判決に相当する裁定(award)が出される。国際条約や二国間仲裁協定に基づき,国家権力が他国で出された裁定の強制執行を行う。裁判では国家権力を超えて強制執行ができない。
・commission or omission「作為または不作為」
まずcommissionには「命令」「任命」「代理xxの授与」「委員会」「手数料」「犯罪の実行」の意味があるが,ここでは最後の「犯罪の実行」という意味である。何が犯罪かというと,法律上または契約上してはいけないことをすることをいう。 omissionは,「不作為」の意味であるが,これは何もしないのではなく,するべきことをしないことである。結局全体で内容的には「してはいけないことを実行すること,あるいは,するべきことをしないこと」という意味である。これは韻を踏んでおり,語呂がよい。
・condition precedent「停止条件」「先行条件」
あることが満たされるまで法律行為の効力の発生を停止する条件である。「本契約書の発効は,当社取締役会の承認を条件とする」という場合の「当社取締役会の承認」である。
・condition subsequent「解除条件」「後行条件」
あることが派生することにより,すでに生じている法律行為の効力を失わせる条件である。「落第すれば奨学金の給費を中止する」という場合の「落第する」が該当する。
・consideration「約因」
アメリカ統一商法典第2編201条12項(UCC§1-201⑿)では,「契約(contract)とは,本法およびそれを補足するその他の適用ある法により決められたように当事者の合意から生じる法的義務の総体を意味し,合意(agreement)とは区別される。」と規定している。要するにcontractは,法的強制力がなければならない。contractがcontractになるためには,considerationの存在,書面性,合意の明確性の3点から判断される。
considerationは,「約因」と訳され,xx法特有の理論で,xx契約法上契約が有効に成立するためには,捺印証書(deed)によるか,さもなければ原則としてこの約因の存在が必要とされる。「約因」とは,契約上の債務を対価として供される作為,不作為,法律関係の設定,変更,消滅または約束を言う。やさしく言えば「対価」あるいは「見返り」となる。約因の代表は金銭的対価すなわち金銭による支払であるが,あることをしないでくれ,あることを言わないでくれ,という否定的なものでも約因になり得る。
・guaranty「保証」「保証契約」
他人の金銭債務不履行,債務不履行または義務違反に対して責任を負うことを約束する契約。このような保証の約束を受けた者がguarantee(被保証人),保証義務
を負う者がguarantor(保証人)である。
・ here-: hereafter, hereby, herein, hereof, hereto, heretofore, hereunder, hereunto, hereupon, herewith
この場合のhere-は,場所を意味するのではなく,thisまたはtheseの意味である。たとえばherebyは,文字通りには,“by this”である。契約書の場合,もっと具体的には,“by this writing” あるいは “by this agreement or contract” となる。あるいはhereto は文字通りには,“to this”であるが,契約書の場合,もっと具体的には,“to this writing” あるいは “to this agreement or contract” の意味である。
・hereinafter「以下」
これも上記のhere-の一つであるが,特に独立して取上げる。これは,日本語では「以下」という意味である。分解して意味が通るように単純に並べると,“after in this”となる。契約書の場合,もっと具体的には,“later in this writing” や “in the following part of this agreement or contract”という意味となる。
・indemnity「補償」「損失補償」「損害補填」「賠償金」「免責」
他人が被った,あるいは将来被る損害を補填する義務,または被害・損害を被った本人が補填を求める権利をいう。letter of indemnityは「補償状」である。もう一つの名詞indemnificationもほぼ同じ意味である。
・lawsuit; litigation「裁判」
上記arbitration「仲裁」の項で,国際取引では通常「仲裁」で紛争解決するのが国際慣習と述べた。裁判官や陪審員が必ずしも企業間取引の事情に明るいとは言えず,また裁判から出された判決(decree; judgment; decision)を他国に及ぼすことができないからである。例外的に裁判が行われることがあるが,それは裁判が行われる国に,原告(plaintiff)も被告(defendant)も充分な資産を有していて,結果がどちらに転んでも事実上強制執行できることが条件である。一般には裁判と仲裁は二者択一であるが,例外的にイギリスでは仲裁の結果を不服として裁判所に上訴できる制度がある。
・power of attorney「委任状」
・to reserve the right「権利を保留する」
あることをするのに他のことを放棄するのではないという場合に使われる。 without prejudice toも類似の意味である。
・subject to「〜を条件として」「〜に準拠して」「〜に従って」「〜に規定する場合を除き」
まずsub-は語源的に「下」という意味である。subject は,形容詞としては本来「服従する」「左右される」という意味である。
・there-: thereafter, thereby, therefor, therein, thereof, thereto, thereunder, thereupon, therewith
この場合のthere-は,場所を意味するのではなく,that または those の意味である。たとえば,thereof は “of that”のことである。契約書の場合,もっと具体的に “of
that writing” “of that agreement or contract” の意味となる。
・unless otherwise agreed「別段の合意がなければ」
otherwise=in another manner, differentlyで「別段に」「他の方法で」。他にはunless otherwise provided for「 他に規定がなければ」 やunless otherwise specified「別段の記載がなければ」などの類似の表現がある。
・whereas「〜という次第だから」「〜という事実から見れば」
これは,“since” “considering that” “because of the fact that”というような意味である。契約書の前文の中に説明条項に見られる複合接続詞である。契約書成立の理由を述べる文章の中で使われる。
・without prejudice to「〜の権利を犯すことなく」
上述のto reserve the right とほぼ同じで,あることをするのに他のことを放棄しないという場合に使われる。
・witnesseth「証する」
これは,witnessの三人称現在を表す古風な形である。現代用法では,witnessesとなるところである。英文契約書に古い英語が残っている例である。
⑶ ラテン語とフランス語
英文契約書には,時としてラテン語やフランス語が出てくることがある。英語でも表現できないことはないだろうが,慣用となっていること,一種の権威付けの意味もある。借用フランス語は,今や非常に少なく,ここでは1つだけ取り上げる(<F>で表示)。
・bona fide「善意の」「善意で」=in good faith
・consortium「共同体」=a combination of several companies, banks etc. working together
joint ventureは,複数の組織が全体の損益を共有するのに対して,consortiumは共同で事業を進めるものの複数の組織がそれぞれ自分の担当する部分についてのみ損益の責任を負う。
・force majeure<F>「不可抗力」=major force
forceは「力」,majeureは,英語のmajorに相当し,英語式に書くとmajor force
「(人間には及ばない)大きな力」という意味である。ただし英語式では使われない。 acts of godが主として自然災害を念頭におかれているが,これは範囲がもっと広い と考えられる。
・inter alia「とりわけ」=among other things
・memorandum「覚書」「協定書」
もはやラテン語というより既に英語になってしまっている。短縮形のmemoもよく使われる。
・mutatis mutandis「変更すべき点を変更して」「準用して」=changing what should be changed
・nil「皆無」「ゼロ」=nothing
英語のnil「無」「皆無の」やnull「ない」「ゼロに等しい」などからも推測がつく。
・per annum「1年につき」=per year
・pro rata「比例して」=proportional, proportionally, in proportion to
・ proviso「但書き」=a condition that must be accepted before an agreement can be made
・vice versa「逆もまた同じ」=The opposite is also true.
<参考文献>
Xxxxx, Xxxx and Xxxxxx X. Xxx, The Elements of Business Writing, New York: Collier Books, 1992(xxxx訳『ビジネス英語文章ブック』荒竹出版,1995年)
Xxxxxx, Xxxxx X., Legal Writing in Plain English, Chicago: Chicago Guides to Writing, 2001
Xxxxxx, Xxxx and Xxxxxxx Xxxxman, Modern Annotated Forms of Agreement,
Englewood Cliff: Prentice Hall Inc., 1980
Xxxxxxxxxx, Xxxxx, The Language of the Law, Boston: Little Brown Co., 1963
-----------------, Legal Writing: Sense & Nonsense, St. Paul: West Publishing Co., 1982 Xxxxxx, Xxxxxxx Xx. and E. B. Xxxxx, The Elements of Style, 4th ed., Boston: Allyn and
Bacon, 2000
xxxx『〔新版〕英文契約書を読みこなす』大修館書店,2011年
<参考辞典>
Xxxxxx, Xxxxx X., Black’s Law Dictionary, Standard ed., St Paul: West Publishing Co., 2009
『ジーニアス英和辞典<第4版>』大修館書店,2009年版
『xxx大辞典〔第6版〕』研究社,2007年版
『新編xxx活用大辞典』研究社,2003年版
『プログレシブ英和中辞典』小学館,2007年版 xxxx『xx法辞典』東京大学出版会,2001年