Contract
労 働 契 約 法
1 労働契約法成立の背景
近時、就業形態・就業意識の多様化等が進み、労働者ごとに個別に労働条件が決定・変更される場合が増え、個別労働関係紛争も増加傾向にあります。一方、個別労働関係紛争解決制度や労働審判制度など、紛争の事後的解決手続きの整備も進んでいます。
しかし、個別労働関係を規律する法律としては労働基準法しか存在しなかったため、体系的でわかりやすく、紛争の解決や未然防止に資するルールが欠けていました。そこで、労働契約が円滑に継続するための基本的なルールを法制化することが必要 とされていました。
2 労働契約法の概要
【 労 働 契 約 法 の目 的 】
労働契約の合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定または変更が円滑に行われるようにする
労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係に資する
【 労 働 契 約 の基 本 ルール 】
・ 労働契約の締結や変更に当たっては、労使の対等な立場における合意によるのが原則です。(第3条第1項)
・ 労働者と使用者は、労働契約の締結や変更に当たっては、均衡を考慮することが重要です。(第3条第2項)
・ 労働者と使用者は、労働契約の締結や変更に当たっては、仕事と生活の調和に配慮することが重要です。(第3条第3項)
・ 労働者と使用者は、xxに従い行動しなければならず、権利を濫用してはなりません。(第3条第4項・第5項)
・ 使用者は、労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにしましょう。
(第4条第1項)
・ 労働者と使用者は、労働契約の内容(有期労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面で確認しましょう。(第4条第2項)
・ 使用者は、労働者の生命や身体などの安全が確保されるように配慮しましょう。
(第5条)
【 労 働 契 約 を結 ぶ場 合 には・・・ 】
・ 労働者と使用者が、「労働すること」「賃金を支払うこと」について合意すると、労働契約が成立します。(第6条)
・ 労働者がと使用者が労働契約を結ぶ場合に、使用者が
① 合理的な内容の就業規則を
② 労働者に周知させていた(労働者がいつでも見られる状態にしていた) 場合には、就業規則で定める労働条件が、労働者の労働条件になります。
(第7条本文)
・ 労働者と使用者が、就業規則とは違う内容の労働条件を個別に合意していた場合には、その合意していた内容が、労働者の労働条件になります。
(第7条ただし書)
・ 労働者と使用者が個別に合意していた労働条件が、就業規則を下回っている場合には、労働者の労働条件は、就業規則の内容まで引き上がります。
(第12条)
・ 法令や労働協約に反対する就業規則は、労働者の労働条件にはなりません。
(第13条)
【 労 働 契 約 を変 える場 合 には・・・ 】
・ 労働者と使用者が合意すれば、労働契約を変更できます。(第8条)
・ 使用者が一方的に就業規則を変更しても、労働者の不利益に労働条件を変更することはできません。(第9条)
・ 使用者が、就業規則の変更によって労働条件変更する場合には、次のことが必要です。(第10条)
①その変更が、以下の事情などに照らして合理的であること。
・労働者の受ける不利益の程度
・労働条件の変更の必要性
・変更後の就業規則の内容の相当性
・労働組合等との交渉の状況
②労働者に変更後の就業規則を周知させること。
【 労 働 契 約 を終 了 する場 合 などには・・・ 】
・ 権利濫用と認められる出向命令は、無効となります。(第14条)
・ 権利濫用と認められる懲戒は、無効となります。(第15条)
・ 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、権利を濫用したものとして無効となります。(第16条)
【 有 期 労 働 契 約 を結 ぶ場 合 には・・・ 】
・ 使用者は、やむを得ない事情がある場合でなければ、契約期間が満了するまで、労働者を解雇することができません。(第17条第1項)
・ 使用者は、有期労働契約によって労働者を雇い入れる目的に照らして、契約期間を必要以上に細切れにしないよう配慮しなければなりません。
(第17条第2項)
3 企業の実務対応
① 労働契約書の整備
② 安全配慮義務の確認
③ 就業規則の周知の徹底
④ 現行就業規則の合理性の存否・内容の点検