契約の相手方が、当該譲渡対象となる特許権を保有している「権利者」なのか否かは、必ず「特許原簿」で確認する。多くの場合、まずは「J- PlatPat」2にて登録情報や特許公報を、もしくは
ライセンス契約だけじゃない!知的財産関連契約(第1回)
特許権譲渡契約
第1 はじめに
中之島シティ法律事務所弁護士・法学博士 xx xx
(大阪弁護士会知的財産委員会所属)
今日、事業者は、自社の技術的競争力を獲得し市場優位性を得るため、はたまた自社の事業活動の防衛のため、知的財産権を取得し、多様な知財戦略を検討して、日々対応に追われている。ここでいう知的財産権の取得方法としては、典型的には、自社で発明、考案、創作等したもの が挙げられる。しかし、もちろんこればかりではなく、第三者の知的財産権を有償無償で譲り受けたり、M&Aなどにより事業とともに承継したりと、第三者からの取得場面も少なくないこと
は周知のとおりである。
ところで、特許庁の「平成28年知的財産活動調査結果の概要」1によれば、同年の知的財産権の譲渡・譲受の状況は、特許権がそのほとんどを占めると報告されている。具体的にみるに、特許権は、譲渡数が「3,471」件、譲受数が「17,042」件であり、2番目に多い商標権の譲渡数「768」件、譲受数「169」件を大きく上回る件数である(同15頁目)。
そこで、本稿では、第三者へ知的財産権を譲渡する(又は第三者から譲り受ける)場面、特に特許権の譲渡契約にフォーカスを当て、主に譲受人の立場から、その留意点について確認する。
第2 特許権譲渡契約を締結するにあたっての留意点
1 権利者と譲渡対象の特許権の確認
⑴ 権利者の確認
契約の相手方が、当該譲渡対象となる特許権を保有している「権利者」なのか否かは、必ず「特許原簿」で確認する。多くの場合、まずは「J-PlatPat」2にて登録情報や特許公報を、もしくは
1 特許庁「平成28年 知的財産活動調査結果の概要」(平成28年)
(xxxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxxxxx/xxxxxxxxxx/xxxxxx_xxxxxx/x00/xxxxx.xxxx)(最終閲覧日:2021 年
5月27日)。
2 独立行政法人工業所有権情報・研修館「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」ウェブサイト
(xxxxx://xxx.x-xxxxxxx.xxxxx.xx.xx/)(最終閲覧日:2021年5月28日)。
Vol. 19 No. 228
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知財ぷりずむ 2021年9月