Contract
労働契約法が施行されました
■施
策
就業形態が多様化し、労働者の労働条件が個別に決定・変更されるようになり、個別労働紛争が増えています。この紛争の解決の手段としては、裁判のほかに、平成13年から個別労働紛争解決制度が、平成18年から労働審判制度が施行されるなど、手続面での整備はすすんできました。
しかし、このような紛争を解決するための労働契約についての民事的なルールをまとめた法律はありませんでした。このような中で、昨年12月に「労働契約法」が制定され、労働契約についての基本的なルールがわかりやすい形
で明示され、本年3月1日から施行されましたので、その内容などについてご紹介いたします。
なお、本会ではこの法律の施行に伴い、普及セミナーの開催や専門アドバイザーによる相談等の支援事業を実施します。
■労働契約法における「労働者」とは
使用者の指揮・命令のもとに働き、その報酬として賃金を受けている場合には、「労働者」として労働契約法の対象になります。
→「請負」や「委任」という形式をとっていても、実態として、使用者の指揮・命令のもとに働き、その報酬として賃金を受けていれば、「労働者」になります。
労働契約法の基本ルール
1.労働契約の締結や変更に当たっては、労使の対等の立場における合意によるのが原則です。
2.労働者と使用者は、労働契約の締結や変更に当たっては、均衡を考慮することが重要です。
3.労働者と使用者は、労働契約の締結や変更に当たっては、仕事と生活の調和に配慮することが重要です。
4.労働者と使用者は、xxに従い誠実に行動しなければならず、権利を濫用してはなりません。
■労働契約は、使用者と労働者がお互いに守らなければならないものです。あとでトラブルになったりしないように、契約の内容をハッキリさせておくことが大切です。
5.使用者は、労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにしましょう。
→例えば、労働者に労働条件をきちんと説明することなどが考えられます。
6.労働者と使用者は、労働契約の内容について、できる限り書面で確認しましょう。
→例えば、労使で話し合った上で、労働条件を記載した書面を労働者に交付することが考えられます。
→有期労働契約の場合には、契約期間が終わったときに契約が更新されるかどうかや、どのような場合に契約が更新されるかなど、契約の更新についてもハッキリさせておきましょう。
7.使用者は、労働者の生命や身体などの安全が確保されるように配慮しましょう。
労働契約を結ぶには
■労働者と使用者が合意すれば、労働契約は成立します。
事業場に就業規則がある場合で、就業規則で定める労働条件が労働者の労働条件になる場合は、
2008.6
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■ measures
次のようになります。
1.労働者と使用者が、「労働すること」「賃金を支払うこと」について合意すると、労働契約が成立します。
⇒事業場に就業規則がある場合には、次のようになります。
労働者と使用者が労働契約を結ぶ場合に、使用者が①合理的な内容の就業規則を②労働者に周知させていた場合には、就業規則で定める労働条件が、労働者の労働条件になります。
→使用者が就業規則を机の中にしまっていて、労働者が見たくても見られない場合などは、労働者に周知されていませんので、その就業規則は労働者の労働条件にはなりません。
2.労働者と使用者が、就業規則とは違う内容の労働条件を個別に合意していた場合には、その合意していた内容が、労働者の労働条件になります。
→事業場に就業規則がある場合でも、労働者のそれぞれの事情に合わせて、労働条件を柔軟に決めることができます。
3.労働者と使用者が個別に合意した労働条件が、就業規則を下回っている場合には、労働者の労働条件は、就業規則の内容まで引き上がります。
4.法令や労働協約に反する就業規則は、労働者の労働条件にはなりません。
労働契約を変える場合
■労働者が働いていく中では、賃金や労働時間などの労働条件が変わることも少なくありません。労働条件の変更をめぐってトラブルにならないように、使用者と労働者で十分に話しあうことが大切です。
1.労働者と使用者が合意すれば、労働契約を変更できます。
2.使用者が一方的に就業規則を変更しても、労働者の不利益に労働条件を変更することはできません。
3.使用者が、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、次のことが必要です。
⑴その変更が、以下の事情などに照らして合理的であること。(①労働者の受ける不利益の程度②労働条件の変更の必要性③変更後の就業規則の内容の相当性④労働組合等の交渉の状況)、⑵労働者に変更後の就業規則を周知させること。
労働契約を終了する場合
■出向、懲戒や解雇については、労働者に与える影響が大きいことからトラブルになることが少なくありませんので、紛争とならないように気をつけましょう。
1.権利濫用と認められる出向命令は、無効となります。
2.権利濫用と認められる懲戒は、無効となります。
3.客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、権利を濫用したものとして無効となります。
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