この標準業務手順は北里大学病院における治験の実施に際し、GCP 省令およびその他の関連通知に基づいて治験を適正かつ安全に実施するために、治験責任医師又は医師主 導治験責任医師(以下、主導責任医師という。)が行うべき業務手順を定める。なお、厚労省令第 171 号(平成 16 年 12 月 20 日)で定めるところの製造 販売後臨床試験においては製造販売後臨床試験責任医師(以下、試験責任医師)における業務手順を定め、「治験」とあるのを「試験」と読み替えるものとする。
治験責任医師又は医師主導責任医師標準業務手順(医薬品)
第 1 条(目的)
この標準業務手順はxx大学病院における治験の実施に際し、GCP 省令およびその他の関連通知に基づいて治験を適正かつ安全に実施するために、治験責任医師又は医師主導治験責任医師(以下、主導責任医師という。)が行うべき業務手順を定める。なお、厚労省令第 171 号(平成 16 年 12 月 20 日)で定めるところの製造販売後臨床試験においては製造販売後臨床試験責任医師(以下、試験責任医師)における業務手順を定め、「治験」とあるのを「試験」と読み替えるものとする。
第2条(治験責任医師又は主導責任医師の要件)
1 履歴書の提出・治験(主導)責任医師の所属・職位
治験責任医師又は主導責任医師は、教育・訓練及び経験によって、治験を適正に実施しうる者でなければならない。又、治験責任医師又は主導責任医師は、このことを証明する最新の履歴書及びその他の適切な文書を、治験分担医師又は医師主導治験分担医師(以下、主導分担医師という。)を置く場合には氏名xxx(求めがあった場合には分担医師の履歴書)を、治験依頼者による治験の場合はこれらの書類を治験依頼者に、医師主導治験においては医療機関の長に提出するものとする。なお、治験責任医師又は主導責任医師はxx大学病院に席を有し、講師又は診療講師以上を原則とする。
2 治験責任医師は、治験依頼者と合意した治験実施計画書、最新の治験薬概要書、製品情報及び治験依頼者が提供するその他の文書に記載されている治験薬の適切な使用法に十分精通していなければならない。
3 モニタリング・監査の受け入れ
治験責任医師又は主導責任医師は、依頼者による治験の場合は治験依頼者、医師主導の治験の場合は主導責任医師が指名した者によるモニタリング・監査、治験審査委員会並びに国内外の規制当局による調査を受け入れなければならない。治験責任医師又は主導責任医師は、モニター、監査担当者、治験審査委員会又は国内外の規制当局の求めに応じて、全ての治験関連記録を直接閲覧に供しなければならない。
4 治験責任医師は、合意された募集期間内に必要数の適格な被験者を集めることが可能であることを過去の実績等により示すことができなければならない。
5 治験責任医師は、合意された期間内に治験を適正に実施し、終了するに足る時間を有していなければならない。
6 治験責任医師又は主導責任医師は、治験を適正かつ安全に実施するため、治験の予定期間中に十分な数の治験分担医師又は主導分担医師及び治験協力者等の適格なスタッフを確保でき、又適切な設備を利用しなければならない。
7 分担医師の要件
治験分担医師又は主導分担医師はxx大学病院に席を有し、臨床経験 5 年を超えることを原則とする。
8 分担医師・治験協力者xxxの作成
治験責任医師又は主導責任医師は、治験関連の重要な業務の一部を治験分担医師(又は主導分担医師)又は治験協力者に分担させる場合には、分担させる業務と分担させる者のリストを作成し、予め病院長に提出し、その了承を受けなければならない。
9 治験分担医師・治験協力者等の指導・監督
治験責任医師は治験分担医師、治験協力者等に、治験実施計画書、治験薬及び各人の業務について十分な情報を与え、指導及び監督しなければならない。医師主導治験の場合においても主導責任医師は同様である。
第3条(治験責任医師又は主導責任医師の責務)
1 被験者の選定
治験責任医師(又は主導責任医師)及び治験分担医師(又は主導分担医師)は、被験者の選定に当たって、人権保護の観点から及び治験実施計画書に定められた選択基準及び除外基準に基づき、被験者の健康状態、症状、年齢、性別、同意能力、治験責任医師(主導責任医師等)等との依存関係、他の治験への参加の有無等を考慮のうえ、治験に参加を求めることの適否について慎重に検討しなければならない。
2 被験者の同意の取得
治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、「xx大学病院治験実施要項(医薬品)」に従い、被験者又はその代諾者から、被験者の治験への参加について文書による同意を得なければならない。
3 被験者に対する医療
(1) 治験責任医師(又は主導責任医師)は、治験に関連する医療上の全ての判断に責任を負うものとする。
(2) 医療機関の長及び治験責任医師(又は主導責任医師)は、被験者の治験参加期間中及びその後を通じ、治験に関連した臨床上問題となる全ての有害事象に対して、十分な医療が被験者に提供されることを保証するとともに、有害事象に対する医療が必要となったことを知った場合には、被験者にその旨を伝えなければならない。
(3) 治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、被験者に他の主治医がいるか否かを確認し、被験者の同意のもとに、主治医に被験者の治験への参加について知らせなければならない。
(4) 被験者が治験の途中で参加を取り止めようとする場合、又は取り止めた場合には、被験者はその理由を明らかにする必要はないが、治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、被験者の権利を十分に尊重した上で、その理由を確認するための適切な努力を払わなければならない。
4 治験実施計画書の合意及びその遵守
(1) 治験責任医師は、治験依頼者による治験においては治験実施計画書について治験依頼者と合意する前に、治験を実施することの倫理的及び科学的妥当性について十分検討しなければならない。治験実施計画書が改訂される場合も同様とする。医師主導治験においては主導責任医師が別途定める「治験薬概要書作成に関する手順」および「治験実施計画書及び症例報告書の様式等作成に関する手順」に従い自ら治験薬概要書・治験実施計画書を作成する。
(2) 治験責任医師は、前項の検討の結果に基づき、治験依頼者による治験においては治験依頼者と治験実施計画書の内容に合意し、又、当該治験実施計画書を遵守することについて合意した旨を証するため、治験依頼者とともに治験実施計画書又はそれに代わる文書に記名押印又は署名し、日付を記入するものとする。治験実施計画書が改訂される場合及び治験審査委員会の意見に基づく病院長の指示により治験実施計画書が修正される場合も同様とする。
5 治験審査委員会への文書提出
治験責任医師又は主導責任医師は、治験実施前および治験期間を通じて、治験審査委員会へ提出すべき文書を最新のものにしなければならない。当該文書が追加、更新、改訂された場合は、その全てを速やかに病院長に提出するものとする。
6 治験審査委員会における説明
治験申請をしている治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、治験審査委員会の席上にて当該治験の説明を行うものとする。
(病院長の指示・決定)第4条
1 治験責任医師(又は主導責任医師)は治験審査委員会が治験の実施又は継続を承認し、又は何らかの修正を条件に治験の実施を承認しこれに基づく病院長の指示、決定が文書で通知された後に、その指示、決定にしたがって治験を開始しなければならない。
2 治験責任医師(又は主導責任医師)は治験審査委員会が実施中の治験に関して承認した事項を取り消し(治験の中止、中断を含む)、これに基づく病院長の指示、決定が文書で通知された場合には、その指示、決定に従わなければならない。
(治験薬の使用等)第5条
1 治験責任医師(又は主導責任医師)は治験実施計画を遵守した方法でのみ治験薬を使用すること。
2 治験責任医師(又は主導責任医師)、治験分担医師(又は主導分担医師)は治験薬の正しい使用法を各被験者に説明し、各被験者が説明された指示を正しく守っていることを確認すること。
(治験実施計画からの逸脱等)第6条
1 治験責任医師又は治験分担医師は、治験責任医師が治験依頼者との事前の文書による合意及び治験審査委員会の事前の審査に基づく文書による承認を得ることなく、治験実施計画からの逸脱又は変更を行ってはならない。ただし、被験者の緊急の危険を回避するためのものであるなど医療上やむを得ないものである場合、又は事務的事項のみに関する変更である場合には、この限りではない。
2 治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、治験実施計画書から逸脱した行為を全て記録しなければならない。
3 治験責任医師又は治験分担医師は、被験者の緊急の危険を回避するためのものである等医療 上やむを得ない事情のために、治験依頼者による治験においては治験依頼者との事前の文書に よる合意及び治験審査委員会の事前の承認なしに治験実施計画書からの逸脱又は変更を行う ことができる。その際には、逸脱又は変更の内容及び理由を早急に病院長及び病院長を経由し て治験審査委員会に提出してその承認を得るとともに病院長の了承及び治験依頼者の合意を 文書で得なければならない。医師主導治験においては上記と同様の場合において、治験審査委 員会の事前の承認なしに治験実施計画書からの逸脱又は変更を行うことができる。その際には、逸脱又は変更の内容及び理由を早急に病院長及び病院長を経由して治験審査委員会に提出し てその承認を得るとともに病院長の了承を文書で得なければならない。
4 治験責任医師(又は主導責任医師)は、無作為の手順が規定されている場合にはこれに従い、治験割り付け記号が治験実施計画書を遵守した方法でのみ開封されることを保証するものとする。盲検法による治験において予め定められた時期よりも早い段階での開封などを行った時は、治験責任医師はこれをその理由とともに速やかに文書に記録し、治験依頼者に提出しなければならない。
(症例報告等の記録および報告)第7条
1 治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、症例報告を治験実施計画書の規定に従って作成し、記名押印又は署名の上、治験依頼者による治験においては治験依頼者に提出し、医師主導の治験においては自ら治験を実施する者(主導責任医師等)が適切に保存する。又、治験依頼者に提出した症例報告書の写しを保存するものとする。
2 治験責任医師(又は主導責任医師)は、治験分担医師(又は主導分担医師)が作成した症例報告書について、それらが治験依頼者(医師主導治験においては規制当局等)に提出される前にその内容を点検し、問題がないことを確認した上で記名押印又は署名するものとする。治験責任医師(又は主導責任医師)は、治験分担医師(又は主導分担医師)が行った症例報告書の変更又は修正についても点検し、問題がないことを確認しなければならない。
3 治験責任医師(又は主導責任医師)は治験依頼者(又は規制当局等)に提出する症例報告書
およびその他全ての報告書のデータが、正確、完全で、読み易く、提出の時期が適切であること、及び被験者識別コードを用いることを保証するものとする。
4 症例報告書中のデータのうち、原資料に基づくものは、原資料と矛盾しないものでなければならない。原資料とのなんらかの矛盾がある場合には治験責任医師(又は主導責任医師)はその理由を説明する記録を作成して治験依頼者による治験においては治験依頼者に提出しその写しを保存しなければならない。
5 治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)による症例報告書は、症例報告書の変更又は修正にあたり、治験依頼者による治験においては治験依頼者から提出された、医師主導の治験においては所定の手引きに従わなければならない。症例報告書のいかなる変更、又は修正にも日付の記入および記名押印又は署名がなされ、重大な変更又は修正については説明が記されなければならない。又、変更又は修正が当初の記載内容を不明瞭にするものであってはならない。
6 治験責任医師(又は主導責任医師)は症例報告書の変更および修正の記録を治験依頼者による治験においては治験依頼者に、医師主導の治験においては当該治験における所定の場所に提出しその写しを保存しなければならない。
(治験中の報告等)第8条
1 治験責任医師(又は主導責任医師)は、治験審査委員会の継続審査を受けるために、治験の現況の概要を年に1回又は治験審査委員会の求めに応じてそれ以上の頻度で、病院長に文書で提出しなければならない。
2 治験責任医師(又は主導責任医師)は治験の実施に重大な影響を与え、又は被験者の危険を増大させるような治験のあらゆる変更について、治験依頼者による治験の場合は治験依頼者および病院長、又医師主導の治験の場合は病院長に提出し、さらに病院長を経由して治験審査委員会に速やかに報告書を提出しなければならない。
3 治験責任医師は治験実施計画書および治験薬概要書等の文書において緊急の報告が不要であると規定されている場合を除き、全ての重篤な有害事象を治験依頼者に、医師主導の治験の場合は主導責任医師が治験薬提供者に速やかに報告しなければならない。緊急報告の後に文書による詳細な報告を速やかに行うものとする。
4 治験責任医師は治験実施計画書において治験薬の安全性評価のために重要であると規定された有害事象について、治験実施計画書で規定された報告要件および期限を守って、治験依頼者に報告しなければならない。
5 治験責任医師(又は主導責任医師)はすべての重篤な有害事象を病院長に速やかに文書により報告しなければならない。この場合、治験責任医師(又は主導責任医師)は、報告する重篤な有害事象のうち、重篤で予測できない副作用を特定するものとする。
6 治験責任医師は報告した死亡例を含む重篤な有害事象又は副作用について、治験依頼者、病
院長、および治験審査委員会から要求された追加の情報を提出するものとする。
医師主導の治験において主導責任医師は報告した死亡例を含む重篤な有害事象又は副作用について、病院長および治験審査委員会から要求された追加の情報を提出するものとする。
(治験の中止又は中断)第9条
1 治験がなんらかの理由で中止又は中断された場合には治験責任医師(又は主導責任医師)は被験者に速やかにその旨を通知し、被験者に対する適切な治療および事後処理を保証しなければならない。
2 治験責任医師又は主導責任医師が治験を中止又は中断した場合には、治験責任医師又は主導責任医師は病院長に速やかにその旨を文書で通知するとともに、中止又は中断について文書で詳細に説明しなければならない。
3 医師主導の治験においてはモニタリング等により指摘を受けるなど、実施医療機関が改正G CP又は治験実施計画書に違反し、適正な治験に支障を及ぼしたと認める場合には、治験を中止しなければならない。なお、不遵守のため治験を中止した場合には、自ら治験を実施する者は規制当局に速やかに報告するものとする。
(治験の終了)
第10条 治験が終了した場合には治験責任医師又は主導責任医師は病院長にその旨を文書で通知し、治験結果の概要を文書で報告するものとする。
(記録の保存)
第11条 治験責任医師又は主導責任医師は治験の実施に係わる必須文書を病院長の指示に従って保存しなければならない。
(被験者の選定)第12条
1 治験実施計画書の被験者の選択・除外基準の設定及び治験を実施する際、個々の被験者の選定に当たっては、人権保護の観点から、及び治験の目的に応じ、症状、年齢、性別、同意能力、治験責任医師又は主導責任医師等との依存関係、他の治験への参加の有無等を考慮し、治験に参加を求めることの適否について慎重に検討されなければならない。
2 同意の能力を欠く者については、当該治験の目的上、被験者とすることがやむを得ない場合を除き、原則として被験者としない。
3 社会的に弱い立場にある者を被験者とする場合には、特に慎重な配慮を払わなければならない。
(インフォームド・コンセント)第13条
1 原則
(1) 治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、被験者が治験に参加する前に、被験者に対して被験者に対する説明事項(第 13 条-6)を記した同意文書及びその他の説明文書を用いて十分に説明し、治験への参加について自由意思による同意を文書により得るものとする。
(2) 治験責任医師(又は主導責任医師)は、被験者から治験への同意を得るために用いる同意文書を作成する。説明文書作成にあたっては治験依頼者による治験においては治験依頼者から、医師主導治験においては必要に応じ治験薬提供者から予め作成に必要な資料の提供を受ける。
当該文書の作成及び改訂にあたっては、薬事法第14条第3項(新医薬品の製造承認に関する事項)及び第80条の2(治験の取扱いに関する事項)に規定する基準並びに本基準、及びヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則を遵守しなければならない。
(3) 同意文書には、説明を行った治験責任医師又は主導責任医師又は治験分担医師(又は主導分担医師)、被験者が記名押印又は署名し、各自日付を記入するものとする。なお、治験協力者が補足的な説明を行った場合には、当該治験協力者も記名押印又は署名し、日付を記入するものとする。
(4) 治験責任医師又は主導責任医師又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、被験者が治験に参加する前に、前項の規定に従って記名押印又は署名と日付が記入された同意文書の写し及びその他の説明文書が改訂された場合は、治験責任医師又は主導責任医師又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、その都度、新たに前項の規定に従って記名押印又は署名と日付を記入した同意文書の写し及び改訂されたその他の説明文書を被験者に渡さなければならない。
(5) 治験責任医師又は主導責任医師、治験分担医師(又は主導分担医師)及び治験協力者は、治験への参加又は治験への参加の継続に関し、被験者に強制したり又は不当な影響を及ぼしてはならない。
(6) 同意文書及びその他の説明文書並びに説明に際して口頭で提供される情報には、被験者に権利を放棄させるかそれを疑わせる語句、又は治験責任医師又は主導責任医師、治験分担医師(又は主導分担医師)、治験協力者、医療機関、治験依頼者の法的責任を免除するかそれを疑わせる語句が含まれていてはならない。
(7) 口頭及び文書による説明並びに同意文書には、被験者が理解可能で、可能な限り非専門的な言葉が用いられていなければならない。
(8) 治験責任医師又は主導責任医師又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、同意を得る前に、被験者が質問をする機会と治験に参加するか否かを判断するのに十分な時間を与えなければならない。その際、当該治験責任医師又は主導責任医師、治験分担医師(又は主
導分担医師)又は補足説明者としての治験協力者は、全ての質問に対して被験者が満足するように答えなければならない。
(9) 被験者の同意に関連し得る新たな重要な情報が得られた場合には、治験責任医師又は主 導責任医師は、速やかに当該情報に基づき同意文書及びその他の説明文書を改訂し、予め 治験審査委員会の承認を得なければならない。又、治験責任医師(又は主導責任医師)又 は治験分担医師(又は主導分担医師)は、すでに治験に参加している被験者に対しても、当該情報を速やかに被験者に伝え、治験に継続して参加するか否かについて、被験者の意 思を確認するとともに、改訂された同意文書及びその他の説明文書を用いて改めて説明し、治験への参加の継続について被験者から自由意思による同意を文書により得なければな らない。
(10) 治験に継続して参加するか否かについての被験者の意思に影響を与える可能性のある情報が得られた場合には、治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、当該情報を速やかに被験者に伝え、治験に継続して参加するか否かについて被験者の意思を確認しなければならない。この場合、当該情報が被験者に伝えられたことを文書に記録しなければならない。
2 被験者の同意取得が困難な場合
(1) 同意の能力を欠く等により被験者の同意を得ることは困難であるが、当該治験の目的上それらの被験者を対象とした治験を実施することがやむを得ない場合(例えば、未xx者や重度の認知症患者を対象とする場合)には、治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、被験者の代諾者に治験の内容等を同意文書及びその他の説明文書を用いて十分説明し、治験への参加について文書による同意を得るものとする。この場合、同意に関する記録とともに代諾者と被験者との関係を示す記録を残すものとする。治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、この場合にあっても、被験者の理解力に応じて説明を行い、可能であれば被験者からも同意文書への記名押印又は署名と日付の記入を得るものとする。
(2) 同意文書には、説明を行った治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)、被験者の代諾者が記名押印又は署名し、各自日付を記入するものとする。なお、治験協力者が補足的な説明を行った場合には、当該治験協力者も記名押印又は署名し、日付を記入するものとする。
(3) 治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、被験者が治験に参加する前に、記名押印又は署名と日付が記入された同意文書の写し及びその他の説明文書を被験者及び被験者の代諾者に渡さなければならない。又、被験者が治験に参加している間に、同意文書及びその他の説明文書が改訂された場合は、治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、その都度、新たに記名押印又は署名と日付を記入し同意文書の写し及び改訂されたその他の説明文書を被験者及び被験者の代諾者に渡さなければならない。
(4) 治験責任医師(又は主導責任医師)、治験分担医師(又は主導分担医師)及び治験協力者は、治験への参加又は治験への参加の継続に関し、被験者及び被験者の代諾者に強制したり又は不当な影響を及ぼしてはならない。
(5) 同意文書及びその他の説明書並びに説明に際して口頭で提供される情報には、被験者に権利を放棄させるかそれを疑わせる語句、又は治験責任医師(又は主導責任医師)、治験協力者、医療機関、治験依頼者による治験においては治験依頼者の法的責任を免除するかそれを疑わせる語句が含まれていてはならない。
(6) 口頭及び文書による説明並びに同意文書には、被験者の代諾者が理解可能で可能なかぎり非専門的な言葉が用いられていなければならない。
(7) 治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、同意を得る前に、被験者の代諾者が質問をする機会と、治験に参加するか否かを判断するのに十分な時間を与えなければならない。その際、当該治験責任医師(又は主導責任医師)、治験分担医師(又は主導分担医師)又は補足説明者としての治験協力者は、全ての質問に対して被験者の代諾者が満足するように答えなければならない。
(8) 被験者の同意に関連し得る新たな重要な情報が得られた場合には、治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、すでに治験に参加している被験者についても、当該情報を速やかに被験者の代諾者に伝え、被験者の治験への参加の継続について、被験者の代諾者の意思を確認するとともに、予め治験審査委員会の承認を得て改訂された同意文書及びその他の説明文書を用いて被験者の代諾者に改めて説明し、被験者の治験への参加の継続について被験者の代諾者から文書による同意を得なければならない。
(9) 治験への参加の継続について被験者又は被験者の代諾者の意思に影響を与える可能性のある情報が得られた場合には、治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、当該情報を速やかに被験者の代諾者に伝え、被験者の治験への参加の継続について被験者の代諾者の意思を確認しなければならない。この場合にあっては、当該情報が被験者の代諾者に伝えられたことが文書に記録されなければならない。
3 非治療的治験(体内動態を主目的とする試験など)
(1) 第 13 条-3-(2)に掲げる場合を除き、被験者に対する直接の臨床的利益が予期されない非治療的治験においては、必ず被験者本人から同意を得なければならない。
(2) 非治療的治験において、次のイからニに掲げる事項が全て満たされる場合には、被験者の代諾者による同意を得て治療を行うことができる。このような治験は、例外が正当化される場合を除き、被験者の適応となることが意図された疾病又は症状を有する患者において行われるべきである。又、治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)は、このような治験における被験者に対しては、特に綿密な観察を行い、もし不当な苦痛を受けていると見受けられた場合には治験を中止しなければならない。
ア 治験の目的が、本人による同意が可能な被験者による治験では達成されないこと。
イ 被験者に対する予見しうる危険性が低いこと。
ウ 被験者の福祉に対する悪影響が最小限とされ、かつ低いこと。
エ 代諾者の同意に基づいて被験者を治験に組み入れる旨を明示した上で治験審査委員会に承認の申請がなされ、かかる被験者の参加を承認する旨が承認文書に記載されていること。
4 緊急状況下における救命的治験
(1) 緊急状況下における救命的治験であって、被験者から事前の同意を得ることが不可能である場合においては、被験者の代諾者からその同意を得るべきである。被験者の事前の同意が不可能で、かつ、被験者の代諾者と連絡が取れない場合には、被験者の人権、安全及び福祉を保護し、薬事法第14条第3項(新医薬品の製造承認に関する事項)及び第80条の2
(治験の取扱いに関する事項)に規定する基準並びに本基準の遵守を保証する方法が、治験実施計画書及びその他の文書並びに治験審査委員会の承認文書に記載されていなければならない。このような例外的な場合でも、被験者又はその代諾者に対し、できるだけ速やかに当該治験に関する説明を行い、治験の継続に係わる同意及びその他の適切な事項(第 13 条
-6 参照)について同意を求めなければならない。
(2) 緊急状況下における救命的治験において、被験者による事前の同意を得ることが不可能で、かつ、被験者の代諾者と連絡が取れない場合にも治験が行なわれることが計画されている場合には、治験審査委員会は、少なくとも次に掲げる事項を確認するものとする。
ア 治験薬が緊急状況下において救命的に使用されるものであり、利用可能な治療法が未承認であるか、十分なものではないこと。
イ 次に掲げる点から、被験者又はその代諾者から事前に同意を得ることが不可能であること。
(ア) 被験者の状態から被験者の同意を得ることができないこと。
(イ) 被験者の代諾者による同意が可能となる以前に救急的に治験が開始される必要があること。
(ウ) 当該治験の被験者となり得る者を予め特定することが困難であること。
ウ 被験者の身元が明らかでない者は治験の対象から除かれることが定められていること。エ 治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)が、被験者又はその代諾者に対し、できるだけ速やかに当該治験に関する説明を行い、治験への参加
の継続に係わる同意及びその他の事項(被験者又はその代諾者が治験への参加の継続を何時でも断ることができることを含む)について適切な同意を求めることが定められていること。又、治験責任医師(又は主導責任医師)は、その経過と結果を記録し、治験審査委員会に報告することが定められていること。
オ 次に掲げる点から、当該治験に参加することによる被験者への直接の利益が予見されること。
(ァ)適切な非臨床試験等から、当該治験に参加することによる被験者への直接の利益をも
たらす可能性を支持するデータが得られていること。
(ィ)当該治験への参加から生じ得る被験者に対する危険性が、利用可能な治療法のリスク・ベネフィットに照らして合理的であること。
カ 独立データモニタリング委員会が設置されていること。
5 被験者が同意文書等を読めない場合
(1) 少なくともある言語では治験の内容等(第 13 条-6 参照)を理解することができる被験者又はその代諾者が同意文書及びその他の説明文書を読むことができない場合は、説明に際してxxな立会人を要することとする。被験者又はその代諾者に対して、同意文書及びその他の説明文書が渡され、その内容が読み上げられ、説明され、被験者又はその代諾者が被験者の治験への参加に口頭で同意し、さらに被験者又はその代諾者が同意文書に記名押印又は署名し、自ら日付を記入した後に、立会人も同意文書に記名押印又は署名し、自ら日付を記入することにより、被験者又はその代諾者が治験の内容等を理解し、自由意思により同意を与えたものであることを証するものとする。
(2) 前項において、口頭及び文書による説明並びに同意文書には、xxな立会人が理解可能で、可能な限り非専門的な言葉が用いられていなければならない。
6 被験者に対する説明事項
同意文書及びその他の説明事項には、少なくとも以下の事項が含まれていなければならない。
(1) 治験が試験を目的とすること。
(2) 治験の目的。
(3) 治験の方法。
(4) 被験者の治験への参加予定期間。
(5) 予期される臨床上の利益及び危険性又は不便(被験者にとって予期される利益が無い場合には、被験者にその旨を知らせなければならない。)
(6) 患者を被験者にする場合には、当該患者に対する他の治療法の有無及びその治療方法に関して予測される重要な利益及び危険性。
(7) 治験に関連する健康被害が発生した場合に被験者が受けることのできる補償及び治療。
(8) 治験への参加は被験者の自由意思によるものであり、被験者又はその代諾者は、被験者の治験への参加を随時拒否又は撤回することができること。又、拒否・撤回によって被験者が不利な扱いを受けたり、治験に参加しない場合に受けるべき利益を失うことはないこと。
(9) モニター、監査担当者、治験審査委員会及び規制当局が原医療記録を閲覧できること。その際、被験者の秘密は保全されること。又、同意文書に被験者又はその代諾者が署名することによって閲覧を認めたことになること。
(10) 治験の結果が公表される場合であっても、被験者の秘密は保全されること。
(11) 治験責任医師(又は主導責任医師)又は治験分担医師(又は主導分担医師)の氏名、職名及び連絡先。
(12) 被験者が治験及び被験者の権利に関してさらに情報が欲しい場合又は治験に関連する健康被害が生じた場合に照会すべき又は連絡をとるべき医療機関の相談窓口。
(13) 治験に参加する予定の被験者数。
(14) 治験への参加の継続について被験者又はその代諾者の意思に影響を与える可能性のある情報が得られた場合には速やかに被験者又はその代諾者に伝えられること。
(15) 治験への参加を中止させる場合の条件又は理由。
(16) 被験者が費用負担をする必要がある場合にはその内容。
(17) 被験者に金銭等が支払われる場合にはその内容(支払額算定の取決め等)。
(18) 被験者が守るべき事項。
(19) 治験審査委員会に関する事項。
(20) その他、治験に係る必要な事項。
(改正)第14条
この手順書の改正は、治験審査委員会での議を経て、病院長の承認を得るものとする。
附則
1 この手順は平成 16 年 10 月 21 日から施行する。本手順の施行に伴い「責任医師心得」は廃止する。
2 この手順書は一部改訂のうえ、平成 16 年 12 月 24 日から施行する。
3 この手順書は第 1 条を一部改訂の上、平成 17 年 7 月 7 日から施行する。
4 この手順書は全国的な治験(試験)関連書式統一に伴い、一部追加・改訂し、平成 20 年 7
月 1 日より施行する。
5 この手順書は第 6 条第 13 条を一部改定の上、平成 21 年 4 月 1 日より施行する。
6 この手順書は第 2 条を一部改正の上、平成 24 年 4 月 1 日より施行する。
7 この手順書は第 2 条、第 13 条を一部改正の上、平成 25 年 10 月 1 日より施行する。