Contract
第2章 就職するときに
2-1
労働条件ははっきりと
労働契約を結ぶときには、毎月の賃金や労働時間、残業の有無など、あらかじめ決めておかなければならないことがたくさんあります。それらをすべて口頭で済ませてしまうと、後に「言った、言わない」のトラブルのもとになりかねません。
使用者は、労働契約を結ぶときには、賃金 · 労働時間その他の労働条件を、労働者に明示しなければなりません。
特に、次ページの表①から⑥の事項は非常に重要な情報であるため、書面の交付によって明示する必要があります。ただし、労働者が希望しており、かつ出力して書面を作成できる場合に限り、使用者はFAXや電子メール、SNSでも明示することができます(労働基準法第 15 条第1項、同法施行規則第5条)。また、書面の交付による明示が義務ではない事項についても、使用者はできる限り書面により確認するものとされています(労働契約法第
4条第2項)。
パートタイム(短時間)· 有期雇用労働者に関しては、これらに加えて、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」の4つの事項を、文書の交付(パートタイム · 有期雇用労働者が希望した場合は電子メールや FAX でも可能)により、速やかに、パートタイム · 有期雇用労働者に明示することが義務付けられています(パートタイム · 有期雇用労働法第6条、同法施行規則第2条)。
必ず明示しなければならない事項
○明示すべき労働条件
① 労働契約の期間
書面によらなければならない事項
② 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
③ 就業の場所・従事すべき業務
④ 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働(早出・残業等)の有無、休憩時間、休日・休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
⑤ 賃金の決定、計算・支払の方法、賃金の締切り・支払の時期
⑥ 退職に関する事項(解雇の事由を含みます。)
⑦昇給に関する事項
定めをした場合に明示
しなければならない事項
⑧ 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払の方法及び支払時期
⑨ 臨時に支払われる賃金、賞与等及び最低賃金額に関する事項
⑩ 労働者に負担させる食費、作業用品などに関する事項
⑪ 安全・衛生
⑫ 職業訓練
⑬ 災害補償・業務外の傷病扶助
⑭ 表彰・制裁
⑮ 休職
○パートタイム・有期雇用労働法による明示条件
・昇給の有無
・退職手当の有無
・賞与の有無
・相談窓口
厚生労働省は、労働基準法やパートタイム · 有期雇用労働法で明示を義務付けられている条件を含んだ「労働条件通知書」を公開しています。有期雇用契約の場合には、契約期間や業務内容等について、個々の労働者と具体的に決めることが多いため、これがモデル様式としても活用されています。
○労働条件通知書
※ 以上のほかは、当社就業規則による。
※ 本通知書の交付は、労働基準法第15条に基づく労働条件の明示及び「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」第6条に基づく文書の交付を兼ねるものであること。
※ 労働条件通知書については、労使間の紛争の未然防止のため、保存しておくことをお勧めします。
○網掛けの部分は、パートタイム・有期雇用労働法により、明示が義務づけられている事項です。
人手不足や労働者のニーズの多様化、季節的な需要の繁閑への対処等を背景として、パートタイム労働者やアルバイトを中心に、労働日や労働時間を一定期間ごとに調整し、特定するような働き方が取り入れられています。その時々の事情に応じて柔軟に労働日・労働時間を設定できるという点で契約当事者双方にメリットがあり得る一方、使用者の都合により、労働日がほとんど設定されなかったり、労働者の希望を超える労働日数が設定されたりすることにより、労働紛争が発生することもあります。
そこで、厚生労働省では、令和4年1月にこうした「シフト制」で労働契約を結ぶ場合の留意事項を作成しました。
◆シフト制労働契約の締結時に明示すべき労働条件
シフト制労働契約についても、労働契約の締結時に労働基準法所定の事項を明示しなければなりませんが、その中でも特に問題となりやすい「始業及び終業の時刻」や「休日」に関する事項については、以下の点に留意する必要があります。
①始業及び終業の時刻に関する事項
単に「シフトによる」と記載するのでは足りず、労働日ごとの始業及び終業時刻を明記するか、原則的な始業及び終業時刻を記載した上で労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフトxxをあわせて労働者に交付するなどの対応が必要です。
②休日に関する事項
労働基準法では、使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも 1 回または 4 週間を通じて 4 日以上の休日を与えなければならな
いこととされています(労働基準法第 35 条)ので、最低でもこうした内容を満たすような考え方を明示する必要があります。
○シフト制労働契約簡易チェックリスト
労働契約を締結する際の留意点 | 法 定事 項 | |
1.シフト制労働契約の締結時に、労働者に「始業・終業時刻」や「休日」などの労働条件を書面で伝えていますか。 ⇒1(1)労働条件の明示 | □ | ○ |
1-2.労働契約の締結時に、始業と終業の時刻を具体的に決めた日がある場合、どのように明示をしていますか。 a. その日の始業・終業時刻、原則的な始業・終業時刻や休日の設定の考え方を記載したり、最初の期間のシフト表を渡したりして書面などで伝えている。 b. 書面などで伝えているが、始業・終業時刻や休日は「シフトによる」とだけ記載している。 | bに該当 する場合、 aの方法 で明示を行ってください | ○ |
1-3.シフト制労働契約の締結時に、労働者の希望に応じて以下の内容についても定めていますか。 ⇒1(2)シフト制労働契約で定めることが考えられる事項 a. シフトが入る可能性のある最大の日数や時間数 b. シフトが入る目安の日数や時間数 c. シフトが入る最低限の日数や時間数 | a~cにつ | |
いて、労 | ||
働者の意 | ||
向も確認 | ||
してみま | ||
しょう | ||
1-4.シフト制労働契約の締結時に、以下を定めていますか。 ⇒1(2)シフト制労働契約で定めることが考えられる事項 | a~dについて、導入を検討してみましょう | |
a. シフトを作成するにあたり事前に労働者の意見を聞くなど作成に関するルール | ||
b. 作成したシフトの労働者への通知期限、通知方法 | ||
c. 会社や労働者がシフトの内容(日にちや時間帯)の変更を申し出る場合の期限や手続 | ||
d. 会社や労働者がシフト上の労働日をキャンセルする場合の期限や手続 | ||
2.いったん確定したシフト上の労働日、労働時間等の変更は、使用者と労働者で合意した上で行っていますか。 ⇒1(2)シフト制労働契約で定めることが考えられる事項 | □ | ○ |
シフト制労働者が就労する際の留意点 | 法 定事 項 | |
3.シフト制労働者の労働時間が1日8時間、1週40時間を上回る場合には、36協定を締結・届出していますか。 ⇒2(1)労働時間、休憩 | □ | ○ |
4.1日の労働時間が6時間を超える場合には、勤務の途中に一定時間以上の休憩を与えていますか。 ⇒2(1)労働時間、休憩 | □ | ○ |
5.要件を満たすシフト制労働者から年次有給休暇の請求があった場合、原則として労働者の請求する時季に年次有給休暇を取得させていますか。 ⇒2(2)年次有給休暇 | □ | ○ |
6.シフト制労働者を使用者の責に帰すべき事由で休業させた場合は、一定額以上の休業手当を支払っていますか。 ⇒2(3)休業手当 | □ | ○ |
7.シフト制労働者に、必要な安全衛生教育や健康診断を実施していますか。 ⇒2(4)安全、健康確保 | □ | ○ |
8.要件を満たすシフト制労働者を雇用保険、健康保険・厚生年金の被保険者としていますか。 ⇒4(3)社会保険・労働保険 | □ | ○ |
2-2
採用内定と試用期間
◆採用内定
会社に就職するまでの過程は、①使用者による募集、②労働者の応募、③採用内定、④就労開始、という経過を辿るのが一般的です。
募集から就労までの経過を法律的に言い換えると、募集は労働契約の申込みの誘引、応募 · 採用試験の受験は労働契約の申込みとされます。さらに、会社から応募者への採用内定通知書の送付は申込みに対する承諾とされ、一般的には応募者が承諾書や誓約書等を提出することによって労働契約が成立したとされます。
また、新卒採用の場合は、通常の労働契約と異なり、使用者と学生との間で「学校を卒業することを条件として4月1日から働き始める」といった、条件付きの労働契約を結ぶことが一般的です。
卒業見込みの学生に対して採用内定通知書を送付した後で会社の方から内定を取り消すという行為は「内定取消」と呼ばれますが、内定の段階で労働契約が成立している場合、使用者は、客観的に合理的な理由がなく採用内定を取り消すことは許されないとされています。
◆試用期間
入社後の一定期間を「試用期間」として、労働者を実際に就労させた上で本採用するかどうかを決める場合があります。これは、従業員としての能力や適格性について判断するために一定期間が必要なため、最終的な決定まで、労働契約の解約権を会社が留保している期間とされます。
すでに労働契約は成立していますので、雇用の継続が適当でないと使用者が判断して契約を解約することは、「本採用拒否」と呼ばれていても、法律的には解雇とみなされます。
試用期間内の解雇の合理性は、通常よりも広い範囲において認められるとされていますが、だからといって無制限に可能であるわけではありません。例えば判例では、採用前に知ることのできなかった重大な事実が判明した場合など、解約の趣旨や目的に照らして客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当と認められる具体的な事情がある場合にのみ許されるとされています(三菱樹脂事件 最大判昭和 48・12・12)。
なお、試用期間中であっても 14 日を超えて雇用された場合には、解雇予告制度の対象になります。
◆身元保証契約
企業によっては、売上金の着服等、労働者の行為によって企業が受けた損害を労働者だけでは賠償できない場合のために、入社時に「身元保証書」を提出させ、あらかじめ身元保証人を決めておこうとする場合もあります。
身元保証人と企業の間で結ばれるものが「身元保証契約」です。しかし、身元保証人が労働者の行為全てに対して責任を負うと
いうのでは、負担が重すぎるため、「身元保証ニ関スル法律」により、身元保証人の責任は限定的なものとされています。また、本契約書には極度額(損害賠償における上限額)を定めることが必要となります(改正民法第 465 条の2)。
2-3
採用選考に関して会社が守るべきルール
◆求職者等の個人情報の取扱い(職業安定法第5条の4)
労働者の募集を行う者は、その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者の個人情報を収集、保管、使用しなければならないことになっており、労働大臣指針の中で、以下のとおり収集してはならない個人情報を具体的に示しています。
労働大臣指針(平成 11 年労働省告示第 141 号)より
原則として、次に上げる個人情報を収集してはならない。
①人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
例:「本籍地・出身地」「家族状況(学歴、職業、収入等)」「生活環境・家庭環境」「住宅状況」「本人の資産(借入れ状況)」等
②思想及び信条
例:「思想」「宗教」「人生観」「生活信条」「支持政党」「購買新聞・雑誌」
「愛読書」「尊敬する人物」「社会運動(労働運動、学生運動、消費者運動) に関する情報」等
③労働組合への加入状況
例:労働組合(加入状況、活動歴等)に関する情報
上記個人情報を応募書類や面接等で尋ねることは、職業安定法第5条の4に抵触する違法行為につながります。
採用選考時、上記①~③のような本人の適性と能力に関係のない事項の質問をされたり、書類の記入を求められた場合は、最寄りのハローワークに相談しましょう。
※大学生の方は、東京新卒応援ハローワークに相談してください。
※高校生の方は、学校に報告、相談してください。
○xxな採用選考について
下記ホームページで詳細を掲載しています。
TOKYO はたらくネット:xxxxxxxx.xxxxx.xxxxx.xx.xx/xxxxxx/xxxxx/
職業紹介事業者等が職業紹介等を行う場合や求職者等を募集する場合にも、職業安定法第5条の4や指針の求職者等の個人情報の取扱いに関する規定は適用されます。なお、募集情報等提供事業(求人情報サイト、求人情報誌等)を行う者についても、労働者となろうとする者の個人情報の収集、保管及び使用を行うに当たっては、指針を踏まえ、個人情報の適正な管理を行うこととされており、相談窓口の明確化等、苦情(労働条件の相違・不適正な採用選考等)を迅速、適切に処理するための体制の整備及び改善向上を図ることとされています。
詳細は、求人情報適正化推進協議会のホームページ(xxxxxxxxx.xx/xxxx/)に掲載されている「求人情報提供ガイドラインと適合メディア宣言制度」及び「求人情報苦情窓口の手引き(2017 年2月発行)」をご確認ください。
2-4
不当な人身拘束の禁止
労働基準法では、事実上、使用者が労働者を強制的に労働させることが無いように、以下のような規定を定めています。
◆賠償予定の禁止(労働基準法第 16 条)
労働者が、契約期間の途中で会社を退職したときや、労働者の不注意で会社の備品を壊してしまったときには、ペナルティとしていくら支払う、というように、あらかじめ労働契約に賠償額を決めておくことは認められません。
◆前借金相殺の禁止(同法第 17 条)
使用者が、労働者に賃金を前貸しして、前借りした賃金を毎月の給料から返済させるようにし、借金が残っている間は退職することができないようにする、という行為は許されません。
◆強制貯金の原則禁止(同法第 18 条第1項、第2項)
使用者が、労働者に賃金の一部又は全部を強制的に会社に積立てさせる行為は、会社への不当な足止めにつながり、また賃金の全額払いの原則にも反し、認められません。
「社内預金」のように、使用者が労働者に委託されて賃金の一部を天引きして管理する場合は、使用者は、書面による労使協定を結び労働基準監督署長へ届け出るなど、必要な措置を取らなければなりません。
2-5
性別を理由とする差別の禁止
労働基準法は、性別を理由とする賃金の差別を禁止していますが(労働基準法第4条)、募集、採用から定年、退職に至るまでのさまざまな場面において、労働者が性別によって差別されることのないよう、均等な機会や処遇を確保することを目的に、男女雇用機会均等法が制定されました。
◆性別を理由とする差別の禁止(均等法第5条、第6条)
事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければなりません。
また、事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として差別的取扱いをしてはなりません。
1 配置(業務の配分・権限の付与を含む)、昇進、降格、教育訓練
2 福利厚生(例:住宅資金や生活資金の貸与、住宅の貸与など)
3 職種・雇用形態の変更
4 退職の勧奨、定年、解雇、労働契約の更新
◆間接差別の禁止(同法第7条)
形式的な理由が性別以外であっても、次の3つの措置については、実質的に性別を理由とする差別となるおそれがあることから、業務遂行上特に必要であるなどの合理的な理由がない場合には、間接差別として禁止されます。
1 募集又は採用にあたって、身長、体重又は体力を要件とすること
2 労働者の募集・採用・昇進・職種変更にあたって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること
3 昇進にあたり、転勤経験があることを要件とすること
◆ポジティブアクション(同法第8条)
女性労働者が男性と比較して相当程度少ない雇用管理区分等において、男女の均等な機会や待遇の確保の支障となっている事情を改善するため、募集、採用、配置、昇進、教育訓練、職種や雇用形態の変更等に関して、女性に有利な取扱いをすることは違法ではないとされています。「相当程度少ない」とは、全労働者に占める割合が4割を下回っていることを指すとされています。このように、性別や人種などを理由とする様々な格差を解消し、実質的な平等を実現するための積極的な措置を取ることを、ポジティブアクションといいます。
2-6
障害者への合理的配慮
◆障害者雇用促進法
障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)では、障害者に対する差別の禁止や、事業主による合理的配慮の提供義務が規定されています。
また、これらの具体的な内容について、差別禁止指針及び合理的配慮指針が策定されています。
差別禁止指針においては、募集 · 採用、賃金、配置、昇進、教育訓練などの各項目において、障害者であることを理由に排除することや、障害者に対してのみ不利な条件とすることなどが、差別に該当するとしています。ただし、積極的差別是正措置として障害者を有利に取扱うことや、合理的配慮を提供し、労働能力などを適正に評価した結果、異なる取扱いを行うことなどの措置を講ずることは、差別には該当しません。
合理的配慮指針においては、合理的配慮の事例として、視覚障害者に対する音声等の対応や、肢体不自由者に対する作業環境の改善、知的障害者に対する業務量の配慮など、多くの事業主が対応できると考えられる措置の例を挙げています。
また、合理的配慮の提供義務については、事業主に対して過重な負担を及ぼす場合を除くとされていますが、指針では、「過重な負担」を判断する上での要素についても示しています。加えて、合理的配慮の手続や、障害者からの相談に適切に対応するための体制整備や、相談したことを理由とする不利益取扱いの禁止などが定められています。
【障害者雇用促進法の対象となる障害者】
障害者とは、身体障害、知的障害又は精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な者をいいます。
障害者 | 身体障害者 | 障害者のうち、身体障害がある者(別表※ 1) |
知的障害者 | 障害者のうち、知的障害がある者であって省令で定める者(別表※ 2) | |
精神障害者 | 障害者のうち、精神障害がある者であって省令で定める者(別表※ 3) | |
その他障害者 | 先に該当しない ・発達障害者 ・難治性疼患患者 等 |
障害者雇用促進法の対象となる障害者は次のとおりです。
雇用義務の対象
実雇用率算定の対象
別表は次のページのとおり
(※1)障害者雇用促進法
一 次に掲げる視覚障害で永続するもの
イ 両眼の視力(万国式試視力表によって測ったものをいい、屈折異状がある者については、矯正視力について測ったものをいう。以下同じ。)がそれぞれ0.1以下のもの
ロ 一眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下のものハ 両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの
ニ 両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの 二 次に掲げる聴覚又は平衡機能の障害で永続するもの
イ 両耳の聴力レベルがそれぞれ70デシベル以上のもの
ロ 一耳の聴力レベルが90デシベル以上、他耳の聴力レベルが50デシベル以上のものハ 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50パーセント以下のもの
ニ 平衡機能の著しい障害
三 次に掲げる音声機能、言語機能又はそしやく機能の障害イ 音声機能、言語機能又はそしやく機能の喪失
ロ 音声機能、言語機能又はそしやく機能の著しい障害で、永続するもの四 次に掲げる肢体不自由
イ 一上肢、一下肢又は体幹の機能の著しい障害で永続するもの
ロ 一上肢のおや指を指骨間関節以上で欠くもの又はひとさし指を含めて一上肢の二指以上をそれぞれ第一指骨間関節以上で欠くもの
ハ 一下肢をリスフラン関節以上で欠くもの
ニ 一上肢のおや指の機能の著しい障害又はひとさし指を含めて一上肢の三指以上の機能の著しい障害で、永続するもの
ホ 両下肢のすべての指を欠くもの
ヘ イからホまでに掲げるもののほか、その程度がイからホまでに掲げる障害の程度以上であると認められる障害
五 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害その他政令で定める障害で、永続し、かつ、日常生活が著しい制限を受ける程度であると認められるもの
障害者雇用促進法施行令
(法別表第五号の政令で定める障害)
第二十xx x別表第五号の政令で定める障害は、次に掲げる障害とする。
一 ぼうこう又は直腸の機能の障害 二 小腸の機能の障害 三 ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害 四 肝臓の機能の障害
(※2)障害者雇用促進法施行規則
(知的障害者)
第1条の2 法第2条第4号の厚生労働省令で定める知的障害がある者(以下「知的障害 者」という。)は、児童相談所、知的障害者福祉法第9条第5項に規定する知的障害者更生相談所、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 第6条第1項に規定する精神保健 福祉センター、精神保健指定医又は法第19条の障害者職業センター(次条において「知的障害者判定機関」という。)により知的障害があると判定された者とする。
(※3)障害者雇用促進法施行規則
(精神障害者)
第1条の4 法第2条第6号の厚生労働省令で定める精神障害がある者(以下「精神障害者」という。)は、次に掲げる者であって、症状が安定し、就労が可能な状態にあるものとする。
一 精神保健福祉法第45条第2項の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者
二 統合失調症、そううつ病(そう病及びうつ病を含む。)又はてんかんにかかっている者
(前号に掲げる者に該当する者を除く。)
◆障害者雇用率制度
障害者雇用促進法は、事業主に対して、法定雇用率に相当する人数以上の障害者を雇用する義務を課しています。常用雇用労働者数が 43.5 人規模以上の民間企業には障害者を雇用する義務があり、さらに法定雇用率未達成の事業主から国が納付金を徴収し、障害者を多く雇用する事業主に対して、状況に応じて調整金や報奨金の支給を行うなどの制度があります(障害者雇用納付金制度)。
なお、平成 30 年 4 月からは、法定雇用率の算定基礎に、精神障害者が新たに加わっています。
◆法定雇用率(令和3年3月から)
区分 | 国・地方公共団体等 | 都道府県等の教育委員会 | 民間企業 |
率(%) | 2.6 | 2.5 | 2.3 |
2-7
労働契約期間の制限
労働契約の種類として、いわゆる正社員として期間を定めずに雇われる契約以外に、あらかじめ期間を定めて雇われる契約があり、これを有期労働契約といいます。
アルバイト、パートタイム労働者、契約社員、派遣労働者など、正社員以外の多様な働き方においては、この有期労働契約を結ぶことが多くなっています。
有期労働契約は、その期間中、原則的に労働者と使用者の一方だけの都合で解約することができません。その結果、非常に長い労働契約を結ぶことにより、労働者が長期にわたって拘束され、職業選択の自由を行使できない可能性が出てきます。そこで労働基準法は、労働契約の期間の上限を原則3年と定めています(労働基準法第 14 条)。
原則
期限の定めのある契約
期限の定めのない契約
労働契約
3年を超えてはならない
◆3年を超える有期労働契約の特例
例外として、厚生労働大臣が定める基準に該当する、高度な専門的な知識、技術又は経験を有する労働者が、それを必要とする業務に就く場合や、満 60 歳以上の労働者との間に締結される労働契約等について、3年を超える労働契約を締結することができます。
有期労働契約の特例(労働基準法第 14 条)
(1) 厚生労働大臣が定める基準に該当する高度の専門的知識等を有する労働者との間に結ばれる労働契約 ⇒ 上限5年
【例】 博士号取得者、公認会計士、医師、歯科医師、獣
医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士又は弁理士のいずれかの資格を有する者、システムアナリスト試験又はアクチュアリー試験に合格している者、特許発明の発明者など
(2) 満60歳以上の労働者との間に結ばれる労働契約
⇒ 上限5年
(3) 一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約
(有期の建設工事等) ⇒ 期間終了まで
1年を超える有期労働契約を結んだ場合、労働契約の初日から
1年を経過した日以降は、労働者は使用者に申し出ることで、いつでも退職することができます(労働基準法附則第 137 条)。
また逆に、いわゆる「細切れ契約」によって、労働者の生活が不安定になるなどの不利益を避けるため、使用者は必要以上に短い期間の有期労働契約を反復更新することのないよう、配慮しなければなりません(労働契約法第 17 条第2項)。
2-8
ユニオン・ショップ協定
「会社に入ったら、その会社にある労働組合にも加入しなければならない」と言われた場合はどうすれば良いでしょうか。
労働者が労働組合に加入しなかった場合、あるいは脱退したり除名された場合に、使用者がその労働者を解雇する内容を約束した労働協約のことをユニオン・ショップ協定といいます。
労働組合法では、使用者とユニオン · ショップ協定を結ぶことができる労働組合について「特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合」とされています(労働組合法第7条第1号ただし書)。
ユニオン · ショップ協定は、労働者個人の「労働組合に入らない自由」よりも、憲法が保障する団結権を全体として援護する立場から、判例等において一般的に認められているものです。そのため、ユニオン · ショップ協定がある場合には、労働組合に入らない労働者の解雇は認められると考えられます。
しかし、ユニオン · ショップ協定を締結している労働組合の組合員が、その組合を脱退して別の組合に加入した場合、あるいは新たに労働組合を結成した場合については、ユニオン · ショップ協定の効力はこれらの労働者には及ばず、解雇は無効となると考えられています。
2-9
労働条件が約束と違っていたら
労働契約を結んで実際に働き始めたところ、あらかじめ示された労働時間よりも長く働かされたり、安い賃金で働かされた、というように、労働契約の内容と実際の労働条件が違っていた場合はどうしたら良いでしょうか。
今後もその企業で働き続けることを希望しているのであれば、使用者に対して、労働契約の内容を誠実に守ってもらうように要求できます。
しかし、その企業で働き続けるつもりがないのであれば、労働基準法では、あらかじめ明示された労働条件が実際の労働条件と異なっていたことを理由に、ただちに労働契約を解除することを認めています(労働基準法第 15 条第2項)。この場合には、雇用期間をあらかじめ定めておく有期労働契約の契約期間途中であっても、退職することが認められています。
また、その企業に就職するために住居を移転した者が、契約内容と実際の労働条件が違っていたことを理由に退職し、その後 14 日以内に元の住居地に戻る場合に、労働基準法では、転居に必要な旅費を使用者が負担するよう義務付けています(同法第 15 条第3項)。