Contract
労働契約法について考える
労働契約法とは
労働契約法とは、現在の労働基準法で規定されていない労働条件を決める際の基本的なルールや手続を定める新たな法律です。
※この法律は、最終的なとりまとめを経て、本年の通常国会で民法の特別法としての成立が予定されています。
今月は、労働契約法の制定が予想されるポイントと、その対策について取り上げてみたいと思います。
採用時に実施すること・・・
就業形態の多様化に伴い、個別の労使トラブルが増加していますが、トラブルとなる原因のほとんどは、採用、入社時における労働条件の説明不足によるものです。
● 採用時に「書面」で条件を通知する!
雇入通知書の交付に関しては、現在の労働基準法でも定められていますが、今後は通知のみではなく、充分に説明等を行ったうえで、労働契約書(署名・捺印等)を取り交わすことがポイントとなりそうです。
今後の対策:労働契約書、請負契約書、その他契約書の整備が必要です!
《参考》労働基準法で定められている書面による労働条件明示事項
・労働契約の期間
・就業の場所
・従事する業務内容
・労働時間(始業、終業時刻、時間外労働の有無、休憩時間等)
・賃金
・退職に関する事項(解雇についても含むこと)
● 試用期間に上限が出来る?!
「試用期間 1 年」という事業所について、その有効性が問われた裁判がありましたが、結論は「不当に長い試用期間を設定することは、公序良俗に反するもの」というものでした。あまりに長い期間を試用期間とするのは、労働者を不安定な立場におき続けることになります。労働契約法では、この試用期間に上限が設けられることになりそうです。また、試用期間中の解雇についても、通常解雇と同じような要件や手続きが必要(解雇予告手当の支払いなど)となることも考えられます。
今後の対策:就業規則における解雇規定を試用期間中と試用期間後に分けて定めるなどの対策が必要です!
労働条件を変更するときは・・・
「労働条件が変更になる!」ということは、労働者にとって大問題です。使用者側の都合のみで、勝手に労働条件を変更することは出来ません。
● 労働条件の変更は認めたくないが…、辞めさせられても困る!
会社が社員に労働条件の変更を申し出た時、働く側の選択肢として「変更は認めたくない」「でも辞めさせられるのも…」というのはよくある話です。そこで今回の労働契約法では、労働条件の変更に不満があっても、解決(和解)するまでは、一時的に労働条件の変更を受け入れ、解雇を防止しようという定めが規定されそうです。
今後の対策:就業規則などで労働条件の変更の有無や配置転換、出向、転籍などの定めをより具体的にしておく必要があります!
《事例》転勤が認められなくなる? ?
転居を伴う配置転換などの場合、労働者の同意がなければ転勤命令を出すことが出来なくなる可能性があります。また、労働者が家庭状況などにより転居が困難な場合は、労働者が被る不利益が最小限になるよう、使用者に配置を見直す義務が設けられそうです。
退職・解雇はどうなる・・・??
● 解雇に関する金銭解決も…
頻繁にあってはならないことですが、解雇係争後職場復帰が難しいときは、金銭による解決方法導入も予想されています。ただし、違法な解雇が金銭によって有効となる訳ではありませんのでご注意を…。
● 退職勧奨受け入れ…撤回??
使用者からの退職勧奨を一度は受け入れたものの、
「やっぱり辞めたくない」と労働者が思ったとき、一定期間であれば、クーリングオフのように撤回が認められることが検討されています。
今後の対策:勤務態度不良、協調性がない、出勤不良、能力不足などによる解雇を想定した解雇事由や手続きの方法を就業規則などで整備する必要が
あります!
《事例》遅刻ばかりの社員を解雇したいが…??
労働者の軽微な非違行為の繰り返しを理由として解雇を行う場合には、事前に一定の警告が必要であると定められる可能性があります。
その他、改正が予想されるポイント
■採
用
■就業規則
■休 職
■服務・懲戒
■降
採用内定取消事由を事前に明示すること
労働者に周知する手続き、方法等について明示すること
病気で休職中の者が、休職期間満了時に治癒していない場合、原職復帰は困難でも配置可能な業務があれば復帰させること
懲戒を行う場合は、対象労働者に対し、懲戒処分の内容、根拠、非違行為を書面で通知すること
格 降格については、資格等級制度規定等により明確な根拠を必要とす
ること
前月号でも述べましたが、ご紹介したような労働契約法が制定されると、使用者側
には、次のような対応が求められることになりそうです。①交渉相手が対個人となりますので、これまで以上に社員個々との労働契約が重要なポイントとなること、そして、②就業規則・賃金規定、諸規定などの会社のルールを明確にしておくことが重要なポイントとなりそうです。