Season.9
Season.9
Vol.2
著作xxと著作権契約
今回は、著作権契約に関して特別に注意すべき事項を説明します。
契約は、いわば「法律」というxxに浮いている船のようなものです。船内では契約が優先されますが、船は空中に浮いて周囲の海との関係を断つことはできません。波もかぶるし、揺れることだってあります。著作xxと著作権契約の関係を一緒に考えてみましょう。
xxxxx、冒頭からさえてるね!
チ)前回は「契約」することによって互いに債権が発生するってハナシだったね。だから、著作権契約が結ばれれば、当事者間には契約によるルールができるってことだよね。
な)そう。まさに契約は当事者間に成立するルールだよ。 チ)でも、著作xxもいわば、公のルールでしょ? これら2
つのルール間で食い違いがあった場合、どうなるの?
な)うん! 良い質問だ。今回は、まずそこから説明しよう。
ときには食い違うこともあるよネ?
1. 契約>法律……しかし、契約<法律(強行規定)
民法91条(任意規定と異なる意思表示)
法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。
条文
な)原則を確認しよう。契約と法律との関係を規定する民法の規定があるんだよ。次の条文を読んでみて。
x)「法令中の規定と異なる意思を表示したら、その意思に従う」っていうのがこの条文の骨子だよね。つまり、契約で交わされたルール(意思)が著作xx等の法律のルール(規定)と異なる場合は、契約が優先されるってこと?
な)そういうこと。契約は法律に優先する、というのが原則なんだ。ちなみに、法律の規定を契約で変えることを「オーバーライド」というよ。
チ)うわ~、すごい決まりだねぇ。契約があったら、法律なんていらないじゃん! な)ハハハ。いや、いくら契約を交わしたとしても、民法の条文や著作xxの条文を
やっぱり契約書ってコワいものだね!
すべて契約に盛り込んだら、六法全書みたいな契約書になっちゃうでしょ? そんな契約書、誰も読めないよ。後で話すけど、この規定が意味するところは、契約書に書いていないxxxは、法律に従うということでもあるんだよ。
チ)そっか。でもサ、これだと、例えば一方に不利な条件を読み落として契約がいったん交わされてしまったら、法律は助けてくれないことになるよね?
やっぱり、契約書、コワいよ~!
な)そこでこの原則の例外が登場するわけだ。この条文の中に書いてあるよ。チ)条文の中に? ……「公の秩序に関しない規定」って書いてあるね。
18 The lnvention 2013 No.11
な)そう、まさにそれ。つまり、この原則が適用されるのは「公の秩序に関しない規定」というわけだから、「公の秩序に関する規定」についてはこの原則は適用されないんだ。契約でオーバーライドできない規定……これを強行規定※1というんだよ。
チ)えっ、「公の秩序に関する規定」ってナニ? 一体どんな規定がその強行規定に該当するの?
な)一般的に公序良俗違反や弱者保護の規定はこれに該当するといわれているんだ※2。つまり、規定の立法趣旨からいって、これに反する規定を有効にすることは、社会xx上、望ましくないというような規定のことをいうんだよ。
チ)でもサ、法律にどれが「公の秩序に関する規定」なのか、そうでないのかって、書いてないよネ。
な)そうなんだ。でも、各法のコメンタールなどを参照すれば分かる……カナ?チ)わッ、センセ、ハッキリしないなぁ。
2. その他の関係
※1)法令のうち、それに反する当事者間の合意のいかんを問わずに適用される規定をいう。なお、強制規定ではない、一般規定を任意規定という。
※2)弱者保護を目的とした法令において当事者間でその趣旨に反する合意があった場合、これを認めてしまうと、保護規定を置いた意味が減殺されてしまうからである。
チ)それじゃ、著作xxでいえば、どんな規定が強行規定なの?
著作xx59条(著作者人格権の一身専属性)
著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。
条文
な)確実な強行規定が「、著作者人格権は移転できない」と規定する著作xx59条だよ。
x)つまり、契約で「著作者Aが有する作品Xの著作者人格権は、Bに移転する」というような契約を結んでも、その部分については無効だということだね。
な)そのとおり。だから、その代わりに「AはBに対して、著作者人格権を行使しない」という、著作者人格権の不行使契約を結ぶことが一般的に行われているんだ※3。
チ)なるほど~。他に強行規定ってないの? 例えば、コンピュータにソフトをインストールする際に、「利用者は、私的使用のための複製(著作xx30条)も、引用(同 32条)もすることはできない」と書かれて同意した場合、それも有効なの?
な)う~ん、コンピュータに限れば、使用許諾の一面を有するからOKだと思うけど※4、個人的には30条や32条の権利制限規定が普遍的にオーバーライドできる任意規定だとはいい切れないと思うよ※5。
チ)わわ、なんだ、著作xxでもどれが強行規定なのかについては議論があるんだね。な)確実にいえることは、議論のある条文は裁判所でオーバーライドした法律は強行
規定であると判断される場合があるから、リスクがあるということだね。
チ)まぁ、そりゃそうだけどね。
な)さて、著作権契約の他の注意点を見ていこう。xxxxxは「作品Xの著作権者 Aは、作品Xのすべての著作権をBに譲渡する」という契約をどう思う?
※3)「Aは、BおよびBが指定する第 三者に対して、著作者人格権を行使しない」という表現も使用される。
※4)文化審議会著作権分科会/契約・利用ワーキングチーム検討結果報告(平成18年7月)では、プログラムインストール時の同意において、権利制限規定をオーバーライドできるとの見解が具体例とともに示されている。以下URLを参照。 xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/x_xxxx/xxxxxx/ bunka/gijiroku/013/06073103/002.htm
※5)権利者優位の下で契約が成立した場合、引用が制限されれば、表現の自由に影響を与えることもあるのではないかと思われる。
2013 No.11 The lnvention 19
さすがチョッキー。きちんと復習してるね!
チ)先月号のクイズにあった事例だね。これだと、「すべての著作権を譲渡する」って書きながら、現実は「すべての著作権は譲渡されない」ことになるんだよね。
著作xx61条(著作権の譲渡)
2項 著作権を譲渡する契約において、第27条又は第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。
条文
な)オッ! よく覚えていたね! 次の著作xx61条2項が効いてくるんだ。
x)著作xx27条、28条の権利は、xxxと契約書に書かないと元の著作権者に残ってしまうというわけだね。具体的に、契約書にはどう書いたらいいの?
な)「すべての著作権(著作xx27条、28条の権利を含む)を譲渡する」でいいんだ。チ)うわッ、拍子抜けするほど簡単だねぇ。
な)でも、このカッコ書きは重要だよ。著作xx27条は翻案権を、著作権28条は二次的著作物に関する権利を規定するから、例えば、ゆるキャラの絵柄を作ってもらって権利を譲り受ける場合には一大事に発展することもあるんだ。
チ)そうだよねぇ……。最悪、ゆるキャラのポーズも自由に変えられないし、アニメ化も絶望的になっちゃうもんね。
な)ここは著作権の譲渡契約で最も注意しなければならないポイントだよ。この関係は、つまり「著作xxに規定があったけど、著作権契約に規定しなかった」という法律が契約に勝ってしまう事項だね。逆に、「著作xxに規定はないけど、著作権契約で特別に規定する」という契約事項もあるんだよ。
ちゃんと知ってるよ~♪
チ)法律と関係なく、当事者間で独自のルールをつくれる、というのが契約だもんね。な)ところでチョッキー。今さらの質問だけど、コンピュータ・プログラムが著作物
だっていうのは問題ないよね?
チ)もちろんだヨ! 10条にも例示されているもんね。
な「)コンピュータ・プログラムを使用する権利」は著作xxの何条に規定されてるカナ?チ)え~と、複製権なんかの支分権は21 ~ 28条に書いてあるわけだから……。
アレレ? 「コンピュータ・プログラムの使用権」なんてどこにも書いてないね(汗)。
※6)なお、違法に複製されたプログラ ムを使用する行為は、これらの複製物を使用する権原を取得した時にその事情を知っていた場合は、著作権を侵害する行為とみなす、というみなし侵害規定がある(著作xx113条2項)。著作権侵害となる使用行為はこれだけである。
な「)コンピュータ・プログラムの使用権」は、著作xxが認める権利じゃないんだよ※6。
チ)え~ッ! でも、コンピュータ・プログラムをインストールする際に、「本プログラムは複数のコンピュータで使用してはいけません」とか、「日本国内での使 用に限ります」とか、使用に関することがたくさん書かれているよ。これらの規定って、著作権に基づくものじゃないの?
な)うん。それらの規定はみんな、著作xxに基づく許可ではなくて、単なるプログラム提供者とユーザー間の契約なんだよ。
チ)これに違反して使用したら著作権侵害になると思ってたヨ。ビビッて損したぁ~。
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な)いや、前回やったじゃない。法律に規定がなくても、契約してしまったらコンピュータ・プログラムの使用について債務が発生するのは一緒だよ。書籍や映画のDVD等だと購入するとき「契約」する状況がないけど、コンピュータ・プログラムは、インストール時の同意といった「契約」ができるので、特殊な著作物といえるね※7。
3. まとめ
※7)クリックオンライセンスという。もっとも、この「同意クリック」→「インストール」という行為によって、プログラムの提供会社とユーザー間に有効に契約が成立したか否かを判断した裁判例はいまだにない。
4つのパターンを覚えてね!
な)今まで見てきたように、著作xxと著作権契約との関係は4つのパターンに分類されるんだ。まとめると次のようになるよ。
まとめ
債権の発生
① 原則……法律<契約(民法91条)
ex.「いかなる場合でも本プログラムを改変できない(」著作xx47条の2のオーバーライド)
「実演家に対し、二次的利用時に使用料を支払う(」著作xx91条2項のオーバーライド)
② 例外……法律(強行規定)>契約(民法91条のただし書き)
ex.「著作者人格権を譲渡する」(著作xx59条違反)
「本件フィギュアは転売することができない」(著作xx26条の2第2項違反)
③ 法律に規定があり、契約に規定なし……法律>契約
ex.「著作権譲渡において翻案権や二次的著作物に関する権利の言及なしの場合の権利留保」(著作xx61条2項)、「出版権の存続期間の不設定時の3年限定」(著作xx83条2項)
④ 法律に規定がなく、契約に規定がある……法律<契約
ex.「本プログラムの使用は単一のPCに限る」「本プログラムの使用は日本国内に限る」
x)著作xxと著作権契約の関係は結構複雑なんだね~。
な)これは、著作権契約に限らず、借家法や借金をするときの金利などにおいて、いろいろな契約で発生する関係だよ。
チ)契約って結局、法律の影響を受けざるを得ないんだね。
な)そう。それに、著作権契約だからといって、著作xxだけを考えればいいわけじゃなく、独占禁止法※8、労働基準法、下請法なんかも考慮する必要があるんだよ。著作権について事業の中核になるような契約を行う場合は、弁護士、司法書士、弁理士といった専門家に相談するのがいいと思うよ。
チ)あとで、後悔したくないもんね!
※8)独占禁止法には、以下の3つの態様があり、それぞれ具体的に規定されている。契約書を作成するうえでは、特に注意が必要である。
① 私的独占
② 不当な取引制限(カルテルなど)
③ 不xxな取引方法(差別的対価、優位的地位の濫用、再販価格維持など)
次回は、
実際にxxxxxと共に著作権契約書を作成してみます。
裁判において、「著作権契約の対象が著作物ではない」との判決が示されました。この判決により、著作権契約自体も無効になる?
う~ ん。無効になっちゃうのカナ~?
※解答はp.74
筆者:xxxx
xx国際特許事務所 所長・弁理士
x000-0000
xxxxxxxx 0-0-0
xxxxxxx0xxxxx0x Tel:00-0000-0000
Illustrated by X. Sasaki
URL :xxxx://xxx.xx-xx.xxx/ E-mail:xxxxxxxx00@xxxxxxx.xx.xx
2013 No.11 The lnvention 21