《check !》 労働契約法における「労働者」とは・・・ ● 使用者の指揮・命令のもとに働き、その報酬として賃金を受けている場合には、「労働者」として労働契約法の対象になります。(第2条第1項)→ 「請負」や「委任」という形式をとっていても、実態として、使用者の指揮・命令のもとに働き、その報酬として賃金を受けていれば、「労働者」になります。
労働契約法のポイント
労働契約法がスタート! ~平成20年3月施行~
就業形態が多様化し、労働者の労働条件が個別に決定・変更されるようになり、個別労働紛争が増えています。この紛争の解決の手段としては、裁判制度のほかに、平成13年から個別労働紛争解決制度が、平成18年から労働審判制度が施行されるなど、手続面での整備はすすんできました。しかし、このような紛争を解決するための労働契約についての民事的なルールをまとめた法律はありませんでした。
このような中で、平成20年3月から「労働契約法」が施行され、労働契約についての基本的なルールがわかりやすい形で明らかにされました。これにより、紛争が防止され、労働者の保護を図りながら、個別の労
働関係が安定することが期待されます。
使用者と労働者の皆さまへ
このリーフレットでは、労働関係の主な場面ごとに、労働契約について特に気をつけることを労働契約法の条文に沿って、紹介しています。
労働契約法の趣旨や内容を踏まえ、使用者と労働者の皆さまでよく話し合っていただき、お互いの十分な理解と協力の下に、安心・納得して働けるようにしましょう。
《check !》 労働契約法における「労働者」とは・・・ | ||
● 使用者の指揮・命令のもとに働き、その報酬として賃金を受けている場合には、 「労働者」として労働契約法の対象になります。(第2条第1項) → 「請負」や「委任」という形式をとっていても、実態として、使用者の指揮・命令のもとに働き、その報酬として賃金を受けていれば、「労働者」になります。 |
労働契約の基本ルール
● 労働契約の締結や変更に当たっては、労使の対等の立場における合意によるのが原則です。(第3条第1項)
● 労働者と使用者は、労働契約の締結や変更に当たっては、均衡を考慮することが重要です。(第3条第2項)
● 労働者と使用者は、労働契約の締結や変更に当たっては、仕事と生活の調和に配慮することが重要です。(第3条第3項)
● 労働者と使用者は、xxに従い誠実に行動しなければならず、権利を濫用してはなりません。(第3条第4項・第5項)
◆ 労働契約は、使用者と労働者がお互いに守らなければならないものです。あとでトラブルになったりしないように、契約の内容をハッキリさせておくことが大切です。
● 使用者は、労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにしましょう。(第4条第1項)
→ 例えば、労働者に労働条件をきちんと説明することなどが考えられます。
● 労働者と使用者は、労働契約の内容(有期労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面で確認しましょう。(第4条第2項)
→ 例えば、労使で話し合った上で、労働条件を記載した書面を労働者に交付することなどが考えられます。
→ 有期労働契約の場合には、契約期間が終わったときに契約が更新されるかどうかや、どのような場合に契約が更新されるのかなど、契約の更新についてもハッキリさせておきましょう。
※ このほか、有期労働契約については、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」において、使用者は
① 契約期間満了後の更新の有無等を明示
② 3回以上更新された契約や1年を超えて継続勤務している労働者の契約を更新しない場合、契約期間満了の30日前までに雇止めを予告
③ 労働者の求めに応じ、雇止めの理由を明示
④ 契約更新の場合、契約期間をできる限り長くするよう配慮することとされています。
● 使用者は、労働者の生命や身体などの安全が確保されるように配慮しましょう。(第5条)
労働契約を結ぶ場合には・・・
◆ 労働者と使用者が合意すれば、労働契約は成立します。
事業場に就業規則がある場合で、就業規則で定める労働条件が労働者の労働条件になる場合は、次のような場合です。
● 労働者と使用者が、「労働すること」「賃金を支払うこと」について合意すると、労働契約が成立します。(第6条)
事業場に就業規則(労働条件などを定めた規則)がある場合には、次のようになります。
● 労働者と使用者が労働契約を結ぶ場合に、使用者が
① 合理的な内容の就業規則を
② 労働者に周知させていた(労働者がいつでも見られる状態にしていた)
場合には、就業規則で定める労働条件が、労働者の労働条件になります。(第7条本文)
→ 使用者が就業規則を机の中にしまっていて、労働者が見たくても見られない場合などは、労働者に周知されていませんので、その就業規則は労働者の労働条件にはなりません。
● 労働者と使用者が、就業規則とは違う内容の労働条件を個別に合意していた場合には、その合意していた内容が、労働者の労働条件になります。 (第7条ただし書)
→ 事業場に就業規則がある場合でも、労働者のそれぞれの事情に合わせて、労働条件を柔軟に決めることができます。
● 労働者と使用者が個別に合意していた労働条件が、就業規則を下回っている場合には、労働者の労働条件は、就業規則の内容まで引き上がります。(第12条)
● 法令や労働協約に反する就業規則は、労働者の労働条件にはなりません。(第13条)
労働契約を変える場合には・・・
◆ 労働者が働いていく中では、賃金や労働時間などの労働条件が変わることも少なくありません。労働条件の変更をめぐってトラブルにならないように、使用者と労働者で十分に話し合うことが大切です。
● 労働者と使用者が合意すれば、労働契約を変更できます。(第8条)
事業場に就業規則(労働条件などを定めた規則)がある場合には、次のようになります。
● 使用者が一方的に就業規則を変更しても、労働者の不利益に労働条件を変更することはできません。(第9条)
● 使用者が、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、次のことが必要です。(第10条)
① その変更が、以下の事情などに照らして合理的であること。
・ 労働者の受ける不利益の程度
・ 労働条件の変更の必要性
・ 変更後の就業規則の内容の相当性
・ 労働組合等との交渉の状況
※ 「労働組合等」には、労働者の過半数で組織する労働組合その他の多数労働組合
や事業場の過半数を代表する労働者のほか、少数労働組合や、労働者で構成されその意思を代表する親睦団体など労働者の意思を代表するものが広く含まれます。
② 労働者に変更後の就業規則を周知させること。
《check !》 就業規則の変更については、裁判で次のような考え方が示されています。
(労働契約法の内容は、これらの判例法理に沿ったものであり、これを変更するものではありません。)
・ 新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課すことは、原則として許されないが、当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者においてこれに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない。(秋北バス事件最高裁判決)
・ 賃金のような重要な労働条件の変更について、高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合には、その効力を生ずる。(xx市農業協同組合事件最高裁判決)
・ 定年を延長する代わりに給与が減額された場合において、その合理性の有無の判断に当たっては、①就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、②使用者側の変更の必要性の内容・程度、③変更後の就業規則の内容自体の相当性、④代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、⑤労働組合等との交渉の経緯、⑥他の労働組合又は他の従業員の対応、⑦同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである。(第四銀行事件最高裁判決)
・ 賃金体系の変更により大幅な不利益を生じさせる場合には、一方的に不利益を受ける労働者について不利益性を緩和するなどの経過措置を設けることによる適切な救済を併せ図るべきであり、それがないままに一部の労働者に大きな不利益のみを受忍させることには、相当性がないものというほかはない。
一部の労働者が被る不利益性の程度や内容を勘案すると、賃金面における変更の合理性を判断する際に労働組合の同意を大きな考慮要素と評価することは相当ではないというべきである。(みちのく銀行事件最高裁判決)
【事業場に就業規則がある場合には、労働者の労働条件は、次のように決まります】
労働契約を結ぶ場合 | |||
① 労働契約の成立(第6条) | |||
労働契約において労働条件を 個別の合意による労働 詳細に定めていなかった場合 条件の決定 ⅰ) 合理的な労働条件が定め ④ 就業規則の内容られている就業規則 と異なる労働条件の ⅱ) 就業規則を労働者に周知 合意 ② させていた No (第7条本文) (第7条ただし書) ③ yes 労働者の労働条件 にはならない 労働者の労働条件 |
① 労働契約は、「労働者が使用者に使用されて労働」することと「使用者がこれに対して賃金を支払う」ことについて、労働者と使用者が合意することにより成立します。
② 労働者と使用者の合意により労働者の労働条件が決定します。
③ 労働契約において労働条件を詳細に定めずに労働者が就職した場合において、「合理的な労働条件が定められている就業規則」であることに加え、「就業規則を労働者に周知させていた」ことという要件を満たす場合には、労働者の労働条件は、その就業規則に定める労働条件によることとなります。
④ ただし、「就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分」は、その合意が優先することとなります(合意の内容が
就業規則で定める基準に達しない場合を除きます) 。
労働契約を変える場合
就業規則の変更による労働条件の不利益変更
個別の合意による労働条件の変更
(第8条)
ⅰ) 変更後の就業規則を労働者に周知させた
ⅱ) 就業規則の変更が合理的なものである
(第10条本文)
No
労働者の労働条件にはならない
①
労働者の労働条件
③ 就業規則の変更によっては変更されない労働条件の合意
(第10条ただし書)
② yes
① 労働者と使用者の合意により、労働者の労働条件は変更されます。
② 就業規則の変更により労働条件を変更する場合には、原則として労働者の不利益に変更することはできません。
しかし、使用者が「変更後の就業規則を労働者に周知させた」ことに加え、「就業規則の変更が合理的なものである」ことという要件を満たす場合には、労働者の労働条件は、変更後の就業規則に定める労働条件によることとなります。
③ ただし、「就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分」は、その合意が優先することとなり
ます(合意の内容が就業規則で定める基準に達しない場合を除きます)。
労働契約を終了する場合などには・・・
◆ 出向、懲戒や解雇については、労働者に与える影響が大きいことからトラブルになることが少なくありませんので、紛争とならないように気をつけましょう。
● 権利濫用と認められる出向命令は、無効となります。(第14条)
→ 出向命令が権利濫用に当たるかどうかは、その出向が必要であるか、対象労働者の選定が適切であるかなどの事情を総合的に考慮して判断されます。
● 権利濫用と認められる懲戒は、無効となります。(第15条)
→ 懲戒が権利濫用に当たるかどうかは、懲戒の原因となる労働者の行為の性質や態様などの事情を総合的に考慮して判断されます。
● 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、権利を濫用したものとして無効となります。(第16条)
有期労働契約を結ぶ場合には・・・
● 使用者は、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了
するまでの間において、労働者を解雇することができません。
(第17条第1項)
● 使用者は、有期労働契約によって労働者を雇い入れる目的に照らして、
契約期間を必要以上に細切れにしないよう配慮しなければなりません。
(第17条第2項)
◆ 例えば、1年の契約期間を定めたパートタイム労働者など有期労働契約を結ぶ場合には、契約の終了場面における紛争が見られることから、あとでトラブルになったりしないように、次のことに気をつけましょう。
厚生労働省
厚生労働省ホームページ(xxxx://xxx.xxxx.xx.xx)でも最新情報を提供しています。
(H20.6)