渥美雅之・松田誠司弁護士 NBLNo.1243(2023.6.1) 78頁
~共同研究契約を中心に~
知的財産法実務研究会 定例研究会
2023/07/20(木) 18:00~
弁護士・弁理士
x x xxx
1 知財実務研「知的財産契約の実務 理論と書式 特許権」の目次
第1章 秘密保持契約
第2章 開発契約:開発契約、技術開発委託契約第3章 共同出願契約
第4章 職務発明
第5章 特許権の経済的利用を内容とする契約:ライセンス契約等
第6章 知財信託第7章 取引契約
2 ごく最近の関連論文等の例(情報入手に事欠かない)
・「裁判例からみた契約条項と知的財産権」
xxxxx 日弁連ライブ実務研修 2022/11/01
・「連載 知的財産契約の実務(第36回)」
xxxxxx学院大特別招聘教授 知財ぷりずむ 2023年7月号53頁
・「連載 知的財産権と独禁法①-共同研究開発・ライセンス契約」
xxxx・xxxx弁護士 NBLNo.1243(2023.6.1) 78頁
1 政府の「スタートアップ育成5か年計画」
2 【大学等との関係では】
★TLO:Technology Licensing Organization(技術移転機関)
大学の研究者の研究成果を特許化し、それを企業へ技術移転する法人
★アントレプレナーシップ:entrepreneurship
「起業家(企業家)精神」
(依頼者との打ち合わせ時の雑学として)
1 明治2年制定の出版条例
2 明治10年第1回内国勧業博覧会最優秀賞受賞:xxxx(ガウンタツムネ)の臥雲式綿紡績機械
【参考】xx(xx)xxx入力織機: | |||
明治28発明⇒ | 明治 | 18専売特許条例 |
★ 2002年xx内閣:知財立国宣言
知的創造時代を築くために
(特許庁 2015.12)
知xxフォーラム
Vol.104 34頁
(木) xx法律特許事務所
2023/07/20 6
【おまけ】 リンカーン特許
【特許請求の範囲】
【参考】
1★話し合いによる紛争解決(侵害 事案の発見⇒提訴は日本2.7%,アメリカ45.6%)
525,242件(専利は31618件)←
2 中国では,2021年、全国の中国地方人民法院で新たに受理された知的財産権民事第xx事件は
あしたのxxx(知財の質と量)
3 この頃は、海外への技術流出も
多い
・新日鉄住金 vs. ポスコ事件等
(訴訟に時間がかかる,裁判をしても殆ど勝てない,勝っても賠償
額小さい,か? ⬅NO)
日本の知財裁判
H26~R3
(他に和解25件)
認容判決=30件
Cf.1億円以上の
★ IPは企業成長戦略のコア!
xxxxxx「なぜ,日本の知財は儲からない」
1980年代に入り,アメリカが,「経済の価値基準をハードからソフトに置き換えてしまえば,悪循環を断ち切れる」,「日本企業の弱点がみつかった。法廷闘争だ!」,「米国が目指した経済基準の転換(ハードからソフトへ),その中心的役割が知財」
★産学(官)連携でこそ、素晴らしい発明等ができ、 国際競争力もできる!!
【参考】大学等における知的財産活動
(特許行政年次報告書2022年版「第4章」:抜粋)
【本論】 共同研究(開発)契約
★ まずは、契約書の雛形の入手が肝要(今は楽!)
①昔は、知財関係の書式集が殆どなく、(英語も不得手なので)随分と苦労した
②例えば、「解説実務書式大系知的財産権」(Ⅰ~Ⅲ:一部を執筆担当した)三省堂1996年は、たいへん重宝した
③もちろん、知財実務研の「知的財産契約の実務 理論と書式」が一番便利
④安心?できる「共同研究(開発)契約書の雛形」の入手方法
・多くの大学のサイトから入手可能
・例えば、東京大学では「共同研究契約書条文解説」まで公表している
・また、特許庁が、
「共同研究開発契約書(大学・大学発ベンチャー)」(事例想
定と条文解説付きの19条)を公表⬅これを素材にしよう
共同研究開発契約書(大学・大学発ベンチャー)の検討
紹介されている【想定シーン】
(スタートアップが大学 と共同研究開発を行うにあたって締結する契約例)
1. 教授Aの研究室のゼミ生Cは、X社を設立した。X社はY大学とライセンス契約を締結し、教授Aの発明した新素材および当該素材が添加された樹脂組成物の基本技術については自社単独で実施できるようになった。
2. しかし、当該素材をヘッドライトカバーに応用するにあたっては、技術の改良・深化が必要であり、また、大学の研究活動の中で生まれたこれらの発明をそのまま実施するだけでは、実用的な観点からの課題の検討が不足し、量産化等の実用に耐えられない状態であった。そこで、X社は、独自に調査・検討してきた実用化に向けての課題やその解決手法のアイディアを活かしつつ、基本技術を改良・深化さ せるべく、基本技術を発明したY大学に対して共同研究開発を行いたい旨を申し出た。Y大学としても、大学の研究活動の中で生まれた発明が実用化されることは望ましいため、X社からの共同研究開発の申し出に応じることとした。
1 契約当事者の力関係の把握等の重要性
・「雛形」を作っておくことは、交渉の際にも有効(優位に進められる&条項の漏れを極小化できる等)
・当事者の力関係を把握しないままに条文案にコメントすると(時として、その弁護士自身のコメントが了解なく相手に開示される場合もある)、それだけで破談になるおそれがある(依頼者の立場が弱く、譲歩してもよい部分か、どうしても譲歩できない部分かをある程度見極めておく必要がある。契約交渉の過程で、無理難題の要求と思われる問題に直面することが多い)
・時々は、相手から提示された契約書案を弁護士に丸投げしてくることがあるが、
「日本語のチェックだけで済むはずがないでしょう」、と諭すことが大事
2 用語・構文解釈等のチェックが重要(あたりまえ)
・まずは、経験上、面倒くさがらないで、自分から先に契約書原案を提供したほう が勝ち!= door in the faceの功罪
・判例等を勉強しておくだけでなく、「公用文 用字用語の要点」などを用意すべき
【例1】 ①「Aその他B]と「Aその他のB](「の」の有無)で結論に影響した事案を経験したことがある、
②開発品の実施化との関係で、当該特許実施品以外には「競合する」製品は作らない、という条項の意味の不理解、等
【例2】 知財高裁平成23年9月7日判決(切り餅事件控訴審中間判決):特許請求の範囲の記載全体の構文-「載置底面又は平坦上面ではなく」と「この小片餅体の・・・側周表面に」とが,読点 なく続いている点をどのように評価するか=控訴審:読点が付されることなく続いているという構文を重視し、1審とは異なり、「載置底面又は平坦上面ではなく」を「側周表面」の修飾語と位置づけると解釈。
【例3】 「通知・承諾」等については、常に、「書面による事前の同意」の表現を徹底する
(17条)
3 契約書で取り決めるべき事項
共同研究開発契約書=前文、1条(目的)、2条(定義)、3条(役割
分担)、4条(スケジュールの作成)、5条(経費負担) 、6条(情報の開示等) 、7条
(知的財産xxの帰属および成果物の利用)、8条(名称使用)、9条(公表)、10条(第三者との間の紛争) 、11条(秘密保持義務)、 12条(権利義務譲渡の禁止)、 13条(解除) 、14条(期間)、 15条(存続条項)、 16条(損害賠償) 、17条
(通知) 、18条(準拠法および紛争解決手続き)、19条(協議解決)
★秘密保持契約・同出願契約・学術指導契約との一体性に留意
4 共同研究(開発)契約は「非課税文書」(組合的、準委任的? 請負契約になると課税?)
「X社(以下「甲」という。)とY大学(以下「乙」という。)は、第1条で定める研究開発を共同で実施することについて、以下のとおり合意したので、共同研究開発契約(以下「本契約」という。)を締結する。」
第1条(目的)
「甲および乙は、共同して下記の研究開発(以下「本研究」という。)を
行う。
記
本研究のテーマおよび目的:乙が開発した新素材および当該素材が添加された樹脂組成物に関する技術(以下「本件技術」という。)の改良・深化 」
① 「前文」「第1条(目的)」等は、共同研究の成果について、単独発明になるか等に大きく影響する。
② したがって、割と詳しく、明確に記載しておくべき。
② 参考までに、共同研究開発では関係しないが、ライセンス契約等の諸条項について、独禁法上の優越的地位等の懸念がある場合には、例えば、前文で、知財重視の必要性等を明記することを勧めている(権利満了とロイヤルティの支払期限等)
第2条(定義)
「本契約において使用される用語の定義は次のとおりとする。
① バックグラウンド情報 本契約締結日に各当事者が所有しており、本契約締結後30日以内に、当該当事者が他の当事者に対して書面でその概要を特定した、本研究に関連して当該当事者が必要とみなす知見、データおよびノウハウ等の技術情報を意味する。
② 本単独発明 特許またはその他の知的財産権の取得が可能であるか否かを問わず、本研究の実施の過程で各当事者が、相手方から提供された情報に依拠せずに独自に創作した発明、発見、改良、考案その他の技術的成果を意味する。
③ 本発明特許またはその他の知的財産権の取得が可能であるか否かを問わず、本研究の実施の過程で開発または取得した発明、発見、改良、考案その他の技術的成果であって、前号に定める本単独発明に該当しないものを意味する。」
★バックグランド情報とフォアグランド情報
① 定義規定では、例えば、大学の共同研究契約雛形で、「「発明等」とは、特許権の対象となるものについては発明、実用新案権の対象となるものについては考案、意匠権、商標権、回路配置利用権及びプログラム等の著作物の対象となるものについては創作、育成者権の対象となるものについては育成並びにxxxxの対象となるものについては案出をいう。」等と定められていることが多い。
② 新たな知財保護対象として認められることとなった、例えば、不正競争防止法上の利益の「限定提供データ」(不競法2条7項:IoT,ビッグデータ、AI等)等を定義しておくことも有用⇒相手から提案された原案が相手の「雛形」である場合には、修正要請が難しいことがあるので、その場合は「特則」、「覚書」で対象を明記する等を検討する
「甲および乙は、本契約に規定の諸条件に従い、本研究のテーマについて、
次に掲げる分担に基づき本研究を誠実に実施しなければならない。
① 甲の担当:本件技術をヘッドライトカバーに適用する際の課題(以下
「本件課題」という。)の調査・検討
② 乙の担当:研究施設の貸出、本件課題の改良・深化のための研究・開
発」
★ 「第3条(役割分担)」関係コメント(5条(経費負担)とリンク)
① 役割分担条項も重要であるが、開発の過程で、想定していない(費用負担を伴う)課題が発生することもある。
したがって、「役割分担について疑義が生じた場合は、原則としては甲が分担することを前提に双方協議して決定する」とかいうような工夫をすることも有用
第4条(スケジュールの作成)
「甲および乙は、本契約締結後速やかに、前条に定める役割分担に従い、本研究テーマに関する自らのスケジュールをそれぞれ作成し、両社協議の上これを決定する。
2 甲および乙は、前項のスケジュールに従い開発を進めるものとし、進捗状況を逐次相互に報告する。また担当する業務について遅延するおそれが生じた場合は、速やかに他の当事者に報告し対応策を協議し、必要なときは計画の変更を行うものとする。」
第●条 甲および乙は、本研究の効率化および甲乙間の合意形成を容易にするため、甲乙各々から
選ばれた委員からなる協議会を設ける。
2 甲および乙は、自らが選任した協議会の委員の変更・追加・削減を行う場合は、その変更・追加・削減に関わる委員の名前と共にその旨を相手方当事者に連絡する。
3 協議会での決定は、全委員の合意により行われる。協議会において全委員の合意が得られず決定ができなかった問題は、甲および乙の最高責任者間の協議により決められる。
4 協議会は、次の事項について決定を行う。
① 本研究の具体的な遂行方法
② 本研究の遂行方法またはスケジュールの変更
③ 本研究が事業化した際の当事者の権利
④ 本研究の内容変更または中止
⑤ その他協議会が定める事項
5 甲および乙は、本契約の目的を達成するために、別途定める頻度で定期的に協議会を開催し、各当事者の担当業務の進捗状況および本研究の成果の報告を受けると共に、前項に挙げられた事項について協議決定する。さらに、甲および乙は、甲または乙が必要と認める場合は協議会を随時開催するものとする。
6 協議会の議事は、その都度、議事録その他の書面により合意する。
共同研究開発契約書の留意事項
★ 「第4条(スケジュールの作成)」関係コメント(特に 、オプション条項と
しての「協議会」の設定との関係)
① xxの経験上、単独発明か共同発明かについて、いざというときの立証不足によく直面する (単独出願できるか、共有者として自己実施できるか、等の場面)。
★「発明者性」が問題となったときにも役立つ「ラボノート等」の記録の作成と保管
② 「協議会の設置」をオプション条項としているが、紛争予防のためには、「定期的会
議」と「議事録の作成・共有」の条項と実施が不可欠
ex.追加条項例
(研究途上の実績の確認)「第●条 甲及び乙は、この契約期間中、定期的に研究開発会議を開催し、毎回その議事録を作成して各研究責任者が記名押印し保管しなければならない。」(開発途上での問題点が残される。時々は、議事録の記載内容で揉めることがある。重要な会議では、テープに残すとかも要検討)
「本研究を行うにあたって生じた経費のうち、甲の書面による承諾を得たものについては、甲が全て負担する。ただし、甲は、本研究に必要であると合理的に考えられる経費については、不当に承諾を拒否しないものとする。」
【変更オプション条項:各自負担】
「2 甲および乙は、本研究を行うにあたって自己に生じた経費を、書面によって別途合意しない限り、甲乙各自が負担しなければならない。」
「甲および乙は、本契約締結後30日以内に、各自のバックグラウンド情報を書面で相手方に開示等し、特定しなければならない。
2 甲および乙は、本契約の有効期間中、自己が担当する業務から得られた技術情報を速やかに相手方当事者に開示等する。ただし、第三者との契約により当該開示等を禁止されているものについては、この限りではな い。」
2 本発明にかかる知的財産権は、甲乙の共有とする。共有持分の割合は、本発明の創出にあたっての寄与度に応じて決定するものとする。ただし、甲は、乙に対し、甲の新株予約権●個(新株予約権 1 個の目的である株式の数は1株とする)を対価として、乙の共有持分の全部を買い取ることができるものとする。
3 甲が単独または乙と共同して本発明にかかる知的財産権を取得するべく、出願等(知的財産権の取得、維持および保全をいう。)を行うときは、当該出願等の費用は甲が負担するものとする。
4 本契約の有効期間中、乙は、本発明にかかる特許権の権利存続期間満了までの間、本発明を自ら実施せず、また、甲以外の第三者に対し、本発明の実施許諾を行わないものとする。ただし、甲が正当な理由なく●年間 本発明を実施しなかった 場合にはこの限りではない 。
5 本契約の有効期間中、甲は、乙の事前の承諾を得ることなく、第三者へ本発明の実施許諾を行うことができるものとする。
6 前項の場合、甲は、乙に対し、当該第三者への許諾により得られたライセンス料の●%(以下「乙ライセンス報酬」という。)を支払うものとする。ただし、本条2項ただし書に基づき、甲が乙の共有持分を買い取った場合には、同支払義務は発生しないものとする。
7 甲は、乙に対し、乙ライセンス報酬の算定のため、本契約締結日以降、
[期間]毎に、当該期間の本発明の第三者への実施許諾の状況(許諾先、許諾条件 その他ライセンス料の計算に必要な情報を含む。)を当該期間の末日から15日以内に書面で報告するとともに、同30日以内に当該期間に発生した 乙ライセンス報酬を、乙の指定する銀行口座に振込送金する方法により支払うものとする。振込手数料は乙が負担する。
8 前項の支払いが遅延した場合の遅延損害金は年14.6%とする。
9 本契約の有効期間中、甲は、乙を含む学術または研究機関による、研 究・開発・教育のいずれかの目的による本発明の実施について、本発明にかかる知的財産権を行使しないものとする。
10 本契約の有効期間中、甲および乙は、本研究の遂行の過程で発明等を取得した場合は、速やかに相手方にその旨を通知しなければならない。相手方に通知した発明が本単独発明に該当すると考える当事者は、相手方に対して、その旨を理由とともに通知するものとする。
11 甲および乙は、相手方の同意なくして、相手方から開示等を受けた技術情報(バックグラウンド情報を含む。)およびサンプル、本研究の遂行の過程で相手方が創作した本単独発明、考案またはその他の相手方が取得した技術情報もしくはノウハウについて、日本を含めたいかなる国にも特許、実用新案、商標、著作権またはその他のいかなる知的財産権も出願または登録してはならず、いずれかの当事者がこれに違反した場合は、その違反した当事者に当該出願または登録に関する権利またはその持分を無償で譲渡すべき旨を請求することができる。
★ 「第7条(知的財産xxの帰属および成果物の利用定義)」関係コメント(特に 「成果としての知財の帰属」と「発明者」)
①共同(開発)研究の成果物の帰属が時として問題となる。
②例えば、7条1項では、「その発明等をなした当事者に帰属する」としているが、 ときどきは、
「帰属について協議する」で止まっているものがあり、特許出願ができなかったり(特許法38条)、等の紛争となり得る。
★「協議が整わなかった場合」の規定の必要性:知財高裁令和2年8月20日判決(共同 出願契約事件)
③そもそも「発明者」(「発明の完成に寄与した者」等)を定義付けておくべきではないか。
④一方が、出資のみする場合もあり、発明者でなければ共有者になれないとすると問題が生じ、「冒認問題」にも発展しかねない。
⑤7条2項では、いきなり「本発明にかかる知的財産権は、甲乙の共有とする。」としており、有効な規定と思われる(そもそも単独発明か共同発明かの線引きはなかなか難しい)。
★ (a)発明者の有無に関係なく一方に単独帰属、(b)全て共有、(c)発明者に帰属、(d)都度 協議、等のパターンがある。
⑥共有割合の協議については、あまり気にしなくて良いであろう(特許法73条2項で単独実施か、許諾実施かのパターンのみ)。
★ 「第7条(知的財産xxの帰属および成果物の利用定義)」関係コメン
ト(特に 「不実施補償」との関係)
⑦この雛形には、大学からしばしば要求される不実施補償のxx規定がない。
⑧不実施補償=成果物に関する特許が共有⇒単独実施可能(特許法73条2項)、 しかし大
学は自己実施しない⇒その補償を要求⬅企業の不満多い。
⑨契約交渉の範囲内なので、合意すれば有効。
⑩この契約案では、「不実施補償としての対価は発生させず、代わりに、成果物に関する権利帰属を共有としつつも 2 項)、 出願費用および研究開発費用の全てをスタートアップが負担することとした 3 項)」とされている。
➃6.7項関係で、ライセンス料については、 「if-useとall-over」がある。独禁法との関係にも留意
第8条(名称使用)
「乙は、甲に対し、乙の名称、略称、マーク、エンブレム、ロゴタイプ、標章、乙の本研究担当者等の氏名等(以下「乙名称等」という。)を甲の製品の広告の目的その他の営利目的に使用することを許諾する。
2 甲は、前項の許諾に基づき乙名称等を使用する場合、以下の各号に定め
る事項遵守するものとする。
① 乙の信用・ブランド等を毀損する態様で乙名称等を使用しないこと
② 乙名称等について、乙の事前の書面による承諾なく商標出願を行わない
こと]
第9条(公表)
「甲および乙は、相手方の事前の同意を得ることなく、本研究開始の事実として、別紙●●に定める内容を 開示等、発表または公開することができる。
2 甲および乙は、本研究にかかる成果の公表(以下「本公表」という。)を行う場合は、その内容および時期について事前に協議し、相手方の合意を得なければならない。
3 前条の定めに関わらず、乙は その学術的使命を果たすため、本研究期間中および本研究終了日から6ヶ月以内に行われる本公表については、以下の各号に規定する事項を遵守することを条件に行うことができるものとする。
① 本公表にあたっては第11条(秘密保持義務)を遵守すること
② 甲に対し、本公表の予定日の30日前までに、その内容を通知するこ
③ 甲が本発表の内容に第11条(秘密保持義務)に規定される秘密情報等が含まれていると判断したときまたは甲が本研究に関して特許出願を行うに際してその準備期間を要すると判断したときは、甲は、当該通知後15日以内に、乙に対し、当該部分につき合理的な範囲で内容修正または本公表の延期を求めることができ、この場合、乙は、甲と協議の上対応する こと 」
第10条(第三者との間の紛争)
「本研究に起因して、第三者との間で権利侵害(知的財産権侵害を含
む。)および製造物責任その他の紛争が生じたときは、甲および乙は協力して処理解決を図るものとする。
2 甲および乙は、第三者との間で前項に定める紛争を認識した場合には速
やかに他方に通知するものとする。
3 第1項の紛争処理に要する費用の負担は以下のとおりとする。
① 紛争の原因が、専ら一方当事者に起因し、他方当事者に過失が認められ
ない場合は当該一方当事者の負担とする。
② 紛争が当事者双方の過失に基づくときは、その程度により甲乙協議のxxx負担割合を定める。
③ 上記各号のいずれにも該当しない場合、甲乙協議のxxx負担割合を定
める。」
第11条(秘密保持義務)
「甲および乙は、本研究の遂行のため(以下「本目的」という。)、文書、口頭、電磁的記録媒体その他開示等(以下「開示等」という。)の方法お
よび媒体を問わず、また、甲または乙が相手方(以下「受領者」とい
う。)に開示等した一切の情報およびデータ、素材、機器およびその他有
体物、本研究のテーマ、本研究の内容および本研究によって得られた情報
(別紙●●に列挙のものおよびバックグラウンド情報を含む。以下「秘密情報等」という。)を秘密として保持し、秘密情報等を開示等した者(以下「開示者」という。)の事前の書面による承諾を得ずに、第三者に開示等または漏えいしてはならない。
2 前項の定めにかかわらず、次の各号のいずれか一つに該当する情報については、秘密情報等に該当しない。
① 開示者から開示等された時点で既に公知となっていたもの
② 開示者から開示等された後で、受領者の帰責事由xxxxに公知となっ
たもの
③ 正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負わずに適法に開示等されたもの
第11条(秘密保持義務)
④ 開示者から開示等された時点で、既に適法に保有していたもの
⑤ 開示者から開示等された情報を使用することなく独自に取得し または創出したもの
3 受領者は、秘密情報等について、事前に開示者から書面による承諾を得ずに、本目的以外の目的で使用、複製および改変してはならず、本目的のために合理的に必要となる範囲でのみ、使用、複製および改変できるものとする。
4 受領者は、秘密情報等について、開示者の事前の書面による同意なく、
秘密情報等の組成または構造を特定するための分析を行ってはならない。
5 受領者は、秘密情報等を、本目的のために知る必要のある自己の役員および従業員(以下「役員等」という。)に限り開示等するものとし、この場合、本条に基づき受領者が負担する義務と同等の義務を、開示等を受けた当該役員等に退職後も含め課すものとする 。
第11条(秘密保持義務)
6 本条第1項および同条第3項ないし第5項の定めにかかわらず、受領者は、次の各号に定める場合、可能な限り事前に開示者に通知した上で、当該秘密情報等を開示等することができる。
① 法令の定めに基づき開示等すべき場合
② 裁判所の命令、監督官公庁またはその他法令・規則の定めに基づく開示等の要求がある場合
③ 受領者が、弁護士、公認会計士、税理士、司法書士等、秘密保持義務を
法律上負担する者に相談する必要がある場合
④ 甲が、甲の株式 または 新株予約権の取得を検討する第三者に対し、当該検討にあたって秘密情報を開示等することが必要な場合(ただし、当該第三者に守秘義務を課すものとする。)
第11条(秘密保持義務)
7 本研究が完了し、もしくは本契約が終了した場合または開示者の指示があった場合、受領者は、開示者の指示に従って、秘密情報等(その複製物および改変物を含む。)が記録された媒体、ならびに、素材、機器およびその他の有体物を破棄もしくは開示者に返還し、また、受領者が管理する一切の電磁的記録媒体から削除するものとする。なお、開示者は受領者に対し、秘密情報等の破棄または削除について、証明する文書の提出を求めることができる。
8 受領者は、本契約に別段の定めがある場合を除き、秘密情報等により、開示者の知的財産権を譲渡、移転、利用許諾するものでないことを確認する。
9 本条は、本条の主題に関する両当事者間の合意の完全なる唯一の表明であり、本条の主題に関する両当事者間の書面または口頭による提案その他の連絡事項の全てに取って代わる。
10 本条の規定は、本契約が終了した日からさらに5年間有効に存続するものとする。
①営業秘密漏洩問題がしばしば(刑事事件も含め)紛争に発展している。
②問題となる情報が、そもそも「営業秘密か」、「保持義務の対象か」等で問題となる。
③例えば、
・ 「営業秘密であると明示した情報」と特定することが有用(ファイル一式ならどう表示するか等)、
・口頭の場合はどうフォローするか(例えば、「口頭、デモンストレーション等、無形にて開示されたもののうち、開示者より開示の際に秘密である旨の表明があり、開示から30日以内にその内容を簡明に表す文書とともに秘密情報である旨が受領者に通知されたもの」
・さらにきついものとして、「次の各号の一に該当する情報(但し、被開示者がその事実を客観的に証明した場合に限る。)は、秘密情報に含まれないものとする。」
④時々は、違約罰の条項をどうするかの議論がなされることがあるが、一般的なNDAでは、大抵は設定しないことで着地する。
第12条(権利義務譲渡の禁止)
「甲および乙は、互いに相手方の事前の書面による同意なくして、本契約上の地位を第三者に承継させまたは本契約から生じる権利義務の全部もしくは一部を第三者に譲渡し、引き受けさせ、もしくは担保に供してはならない。」
第13条(解除)
「甲または乙は、相手方に次の各号のいずれかに該当する事由が生じた場合には、何らの催告なしに直ちに本契約の全部または一部を解除することができる。
① 本契約の条項について重大な違反を犯した場合
② 支払いの停止があった場合または競売、破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、特別清算開始の申立てがあった場合
③ 手形交換所の取引停止処分を受けた場合
④ その他前各号に準ずるような本契約を継続し難い重大な事由が発生した場合
2 甲または乙は、相手方が本契約のいずれかの条項に違反し、相当期間を定めてなした催告後も、相手方の債務不履行が是正されない場合は、本契約の全部または一部を解除することができる。」
【追加オプション例】「他の法人と合併、企業提携あるいは持ち株の大幅な変動により、経営権が実質的に第三者に移動したと認められた場合」、「本発明の移転について外国為替及び外国貿易法における規制に違反した場合」
第14条(期間)
「本契約の有効期限は本契約締結日から1年間とする。本契約は、当初期間や更新期間の満了する60日前までにいずれかの当事者が更新しない旨を書面で通知しない限り、さらに1年間、同条件で自動的に更新される。
2 乙は、本研究が技術的に見て成功する可能性が低いと合理的に判断されるまたは事業環境が変化し本研究の事業化が困難であると合理的に判断される等の合理的理由がない限り、前項に定める更新を拒絶することができない。」
第15条(存続条項)
「本契約が期間満了または解除により終了した場合であっても第7条(知的財産xxの帰属および成果物の利用)1項ないし3項および6項ないし
8項および11項、第8条(名称使用)、第9条(公表)、第10条(第三者との間の紛争)、本条、第16条、第18条(準拠法および紛争解決手続き)ならびに第19条(協議解決)の定めは有効に存続する。」
第16条(損害賠償)
「甲および乙は、本契約の履行に関し、相手方が契約上の義務に違反しまたは違反するおそれがある場合、相手方に対し、当該違反行為の停止または予防および原状回復の請求とともに損害賠償を請求することができ
る。」
第17条(通知)
「本契約に基づく他の当事者に対する通知は、本契約に別段の規定がない限り、すべて、他方当事者に書面または各種記録媒体(半導体記録媒体、光記録媒体および磁気記録媒体を含むが、これらに限らない。)を直接交付し、郵便を送付しまたは他方当事者が予め了承する電子メールもしくはメッセージングアプリを利用して電磁的記録を送信することにより行うものとする。」
第18条(準拠法および紛争解決手続き通知)
「本契約に関する紛争については、日本法を準拠法とし、●地方裁判所を第xxの専属的合意管轄裁判所とする。」
【変更オプション条項:知財調停・仲裁】
「本契約に関する知的財産権についての紛争については、日本国法を準拠法とし、まず[東京・大阪]地方裁判所における知財調停の申立てをしなければならない。
2 前項に定める知財調停が不成立となった場合、前項に定める地方裁判所を第xxの専属的合意管轄裁判所とする。
3 第1項に定める紛争を除く本契約に関する紛争については、日本国法を準拠法とし、第1項に定める地方裁判所を第xxの専属的合意管轄裁判所とする。」
・「本契約に関する一切の紛争については、日本国法を準拠法とし、(仲裁機関名)の仲裁規則に従って、(都市名)において仲裁により終局的に解決されるものとする。」
共同研究開発契約書の留意事項
★ 「第18条(準拠法および紛争解決手続き通知)」関係コメント
①例えば、東京・大阪以外の地方裁判所を専属合意管轄とした場合の有効性
★大阪高裁令和4年9月30日判決
②知財調停と管轄合意書、改正民訴法、訴訟になったときの裁判官等
第19条(協議解決)
「本契約に定めのない事項または疑義が生じた事項については、xxxxに協議の上解決する。」
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