AGS 医療経営情報 2018
AGS 医療経営情報 2018
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自由診療トラブルを防止
診療契約書の作成ポイント
❶ 自由診療トラブルを防止する診療契約
❷ 診療契約作成上の留意点
🅔 診療契約書等の書式例
➍ 診療トラブル事例と対応策
株式会社 AGS コンサルティング
AGS 税理士法人
自由診療トラブルを防止する診療契約
歯科医院では、治療中に自由診療から保険診療への変更があった場合や、治療後の診療費の値引き要求など、診療費に係るトラブルが起こるケースがあります。患者と歯科医院との間で「診療契約書」を交わすことで、これらのトラブルは防止可能ですが、多くの歯科医院では、治療計画書や治療申込書等に署名することはあっても、「診療契約書」を用意して署名押印いただくことはほとんどありません。
本レポートでは、自由診療を行う前の「診療契約」について解説します。
1│書面による診療契約の必要性
歯科診療は、補綴を含め、患者の学術的や機能的な状態から治療方法を決定するという特性があるため、歯科診療上の債務は適切とされる医療行為を行うこととされています。
そのため歯科医師は、歯科診療に関して、患者に対する善管注意義務を負うことになります。この善管注意義務とは、下記のように定義されます。
■善管注意義務
【善良な管理者の注意義務の略】
業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務のこと。
注意義務を怠り、履行遅滞・不完全履行・履行不能などに至る場合は民法上過失があると見なされ、状況に応じて損害賠償や契約解除などが可能となる。
[補説]民法第 644 条に「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」とある。
(コトバンク デジタル大辞泉の解説より)
自由診療においては、高額な治療費に対して、保証を付けることがほとんどです。また、インプラント等を含む最新医療・高度医療となるため、治療期間が長いとともに技術の高さが求められます。
そのためクレームも多くなりがちであり、口頭での診療契約ではなく、診療契約書を取り交わし、細かな条項を設定することによってリスク回避を図る必要があります。
細かな条項とは、例えば、保証期間や診療費の支払い方法、中途解約に関する取り決め、準委任契約の明示などで、これらの内容をきちんと説明することが重要です。
■診療契約の必要性
●保証:自由診療に対する保証を付けるのであれば、保証期間や保証内容を明示する
●診療費:総額の他に手付金や中間金、残金の他、違約金や損害賠償金まで明示する
●中途解約:中途解約の通知方法や解約後の違約条項、免責等の条項を記載
●準委任契約:xxを保証するものではなく、治療方法の選択とそれを実施する契約であることを明示する
2│診療契約は準委任契約
(1)準委任契約
準委任契約とは、法律行為以外の行為を委任する契約です。例えば医療は、必ず病気を治すことを確約できません。治療をすることを委任されているだけであり、このような契約を準委任契約といいます。結果を出すことは受託者の義務ではなく、必ず治癒させることを目的とするものではないのです。また、受託した業務(仕事)を完成させることを目的とした請負契約がありますが、患者は医療を請負契約と勘違いするケースが多いようです。
つまり準委任契約では、高度な注意義務を持って誠実に治療を行えば、治療費を返す義務はありません。
(2)診療契約の成立とは
診療契約は、患者が病院や診療所を訪れて口頭その他の方法により窓口で診療を申し込み、これに受付が応じてカルテへの記載を開始した時点で成立したものと解されています。
つまり診療契約書を取り交わさなくとも、口頭での申込(実際は保険証の提示や問診票への記載提出、再診の場合は診察券の提示等の行為はある)だけで診療契約が成立しています。
■準委任契約の立場に立脚するという裁判事例
【東京地方裁判所平成 6 年 7 月 判時 1520 号 117 頁】
原告は、請求原因において、義歯の製作及び装着を目的とした診療契約の法的性質を準委任契約であるとする立場に立脚することを明示しており、被告もこの点を特に争わず、裁判所も右立場を前提として判決を下している。
学説上においても、通説的見解は請負契約ではなく準委任契約であると解している。
3│自由診療の取扱いについて
厚生労働省では、「療養の給付と直接関係ないサービス等の取り扱いについて」という通達を出しています。医師法や歯科医師法の法律においては、患者から同意を取ることまでは強制していません。
また、療養担当規則には、「保険外併用療養費制度を使う場合には、あらかじめ患者に対し、その内容及び費用に関しての説明を行い、その同意を得なければならない」と記載されていますが、文書による同意までは規定されていません。
通達は法律を補完する役割を担っていますので、厚生労働省の見解として、実質上は強制となっていると解釈されます。
■厚労省通達「療養の給付と直接関係ないサービス等の取り扱いについて」
患者からの費用徴収が必要となる場合には、そのサービスの内容や料金等について明確かつ懇切に説明し、同意を確認の上徴収すること。この同意の確認は、徴収に係るサービスの内容及び料金を明示した文書に患者側の署名を受けることにより行うものであること。なお、このような場合でも、以後別途費用を徴収する事項が生じた時は、その都度、同意書により確認すること。また、徴収する費用については、社会的にみて妥当適切なものとすること。
■厚労省通達からみる自由診療契約のポイント
●治療方法やサービスの内容、料金等を明確にし、丁寧に説明し、同意を確認する
●治療方法やサービスの内容、料金等を明示した書類に、患者側の署名を受ける
●有床診・病院の場合、自由診療の都度ではなく、入院時の説明で具体的な内容及び料金を明示した書類により、包括的に行うことを確認する
●包括的に行う確認後に、別な自由診療を行うことになった場合には、その都度同意する書類が必要であること
●自由診療の料金は、一般的社会的にみて妥当であり適切であること
なお、「療養の給付と直接関係ないサービス等」とは、新薬、新医療機器、先進医療等に係る費用として、保険適用となっていない治療方法(先進医療を除く)等が含まれます。
診療契約作成上の留意点
患者が来院して診療を申込み、受付でカルテ記載を始めた時点で書面を取り交わさなくても契約自体は成立しています。しかし実際は、カルテ記載を始めた時点では、どんな病状か、それに対してどのような治療を行うかまでは、患者も歯科医院側でもわかりません。
またこの段階では、保険診療を行うのか、あるいは自由診療になるのかに関しても決定していません。特に自由診療になる場合、診療中断や保険診療に戻す他、治療後にクレームを受けたり、医療訴訟にまで発展することもあります。
そのため、診療費用の支払い方法や患者の都合によって診療中断となった場合の違約金や損害賠償など、細かな規定を決めておくことが重要です。
1│診療契約書の記載事項
歯科口腔外科治療やインプラント治療等は、一般の歯科治療と比較しても病状の程度も進んでいて、治療リスクが高く、費用も高額となります。
そのため、事前に患者と診療契約書を取り交わしたうえで、患者から診療申込み書を提出してもらうことは必須とすべきでしょう。
一般的には、治療内容や料金については契約書、また治療内容の説明やそれに対する同意については説明書・同意書・治療計画書といった名称の書面があります。
■診療に当たっての書面(内容が同等のものを含む)
●診療計画書
●自費承諾書
●保証書
●治療説明書
●同意書
●自費治療契約書
●診療申込
2│契約書面の内容
契約書等に記載する具体的な内容には、まず費用が挙げられます。治療に要する総額費用の他、支払い方法(一括・分割)やその手法(現金・クレジットカード・ローン申し込み等)、中途で解約した場合の費用計算方法、違約金等を詳細に規定することが重要です。 ただし、「支払われた治療費は、診療中に解約された場合、理由の如何を問わず一切返金致しません。」というような内容は、消費者保護を目的とする消費者契約法違反に該当し、無効とされるケースも考えられるので、注意が必要です。
■契約内容
●費用
・総額
・支払い方法(手付金、残金等の分割支払い、一括支払い)
・支払い手法(現金、クレジットカード、ローン)
●治療内容
・病状
・治療方法
・治療部位
・担当歯科医師(主治医、補助医師)
●治療に対するリスク
●治療期間(予想)
●中途解約(解約の状況と方法)
●解約時の違約金・損害賠償金
●解約時の返金規定
●保証人(連帯保証人)
●同意欄(説明書面と同一の書式内で同意欄に署名押印の方が明確)
●治療保証:結果を約束する契約ではないため、記載しないことをお勧めします。
※治療計画書や説明書、同意書、契約書等を各書面で作成し、一式にすることもあります。
治療計画書や同意書、契約書等の説明は、主治医もしくは院長が行います。治療に携わる歯科医師の善管注意義務に基づく説明となるため、契約締結の際に最も重要であると認識すべきです。
3│中途解約時のポイント
準委任契約においての契約解除権は、当事者どちらも有するとされています。また口頭での契約も書面による契約のいずれも解除権があります。
ただし、当事者の一方に不利益が生じる場合は、相手方に対する損害賠償責任が生じます。書面による契約の場合、違約金条項が記載されている場合もあります。
また違約金ではなく、用意していた診療材料代金や技工物を発注していた場合の技工物費用については請求できる場合もあります。
■中途解約時のポイント
●解約通知方法・・・口頭による解約を受けるのか、書面による提出を義務付けるのかを記載
●無償解約の時期・・・無償で解約できる期間を記載
●違約金・・・中途解約の場合、違約金を設けるかを記載
●損害賠償・・・どういう場合に損害賠償を請求するかを記載
●その他の負担金・・・用意した診療材料や発注済みの技工物代金の負担を記載
【解約理由が自由診療から保険診療へ移行した場合の注意点】
金額負担への考え方が変わり、自由診療から保険診療へ移行するために中途解約する場合は、違約金等の金額の問題の他、混合診療にならないかどうかを注意しなければなりません。
■保険診療移行時の注意点
●ファイバーコアを設置した後、保険適用のクラウンセットは混合診療
●メタルボンドクラウンをセットする時に、保険適用のコアを設置し、報酬算定した場合は混合診療
●保険診療でもマイクロスコープを使用している場合、マイクロスコープ使用料の請求は混合診療
※治療途中で保険診療に変えて欲しいと依頼された場合、移行できる時期はありますが、それまでの治療が無駄になることがあります。
混合診療になってしまう可能性があるため、治療開始前の説明と同意が重要なポイントです。治療ユニット上での説明ではなく、カウンセリングルーム等で説明をし、同意を得ることが
最大のポイントです。
診療契約書等の書式例
1│自費治療承諾書
自費治療を希望する患者には承諾書に署名してもらい、写しを交付します。この書式を「契約書」に変えても大丈夫です。
■自費承諾書例
次に、自費治療保証規約を作成します。
法的に保証期間を設けることは義務ではありませんが、他院との差別化のために、また患者とのトラブルを防止するために保証期間を定める歯科医院は多くあります。
保証期間を設けた場合の保証内容については、歯科医師が自由に決定できますので、保証期間を治療時から1ヵ月間や1年間、あるいは 10 年間と設定することも自由です。回数についても、修理は何度でも無料、また3回まで無料など、どのように決めても構いません。
次に紹介する規約例では、年2回の定期メンテナンスを義務付けるなどのリスク回避を行っています。
■自費治療保証規約例
第 1 条(本規約の目的)
本規約は、○○会○○歯科医院(以下甲)が表面記載の患者さま(以下乙)に対して行う自費治療の保証内容を規定する。
第 2 条(定義)
本規約に掲げる用語の定義は以下による。
(1)本保証規約による保証
当院における無料での再治療のことであり、金銭の返還や他の医院での再治療費を負担するものではない。
(2)被保証者
甲にて自費手術を受けた患者で、甲が発行する有効な保証書の交付を受けた者。
(3)自費治療
表面に記載の年月日に実施した、記載の部位と使用した材料による治療。
(4)保証期間
表面に記載の、当院が保証を行う期間。
(5)クラウンまたはブリッジ
甲にて自費で装着した単独または連結した歯の被せ物。
(6)インレー
甲にて自費で装着した歯の詰物。
(7)義歯
甲にて自費で制作した部分義歯または総義歯。
(8)インプラント
甲にて埋入した人口歯根。
(9)アバットメント
甲にて埋入したインプラントの土台。ただし、材料によっては土台と一体のものもある。
(10)上部構造
インプラントに被せる人口の歯
(11)インプラント手術
歯を喪失した部分に人工歯根を埋め込む手術。
(12)補助手術
インプラント手術を行うために骨を造成したり移植するなどの手術。
(13)承諾書
乙が自費治療を受ける際に、甲の医師が必要と認める治療や処置を受けることに同意する承諾書。
(14)定期メンテナンス
乙は原則として年 2 回の定期的なメンテナンスを受診す
る義務を負う。その場合は次に掲げる項目を受ける。
①再検査とその評価
自費治療をした部位と周囲の軟組織と硬組織の検査・咬合のチェック、X線検査および被保証者のプラークコントロールの評価。
②メンテナンス処置
被保証者への再教育、被保証者によるプラークコントロールの強化、歯石除去、自費周囲の研磨および咬合調整。
③自費に対する不具合の対応
インプラントは土台のネジの締め直し、交換、上部構造の修理、メタルフレームの変形や破折の処理。
➃自費周囲の軟組織、硬組織の処置
クラウン・ブリッジの支台歯、ポンティックおよび付近の清掃、インプラントの土台や上部構造の清掃。
第 3 条(保証内容)
甲は乙が情報提供書に署名し、甲による自費治療を受けた場合、その当日から次の保証を行う。
(1)脱落の場合は当院にて再装着または埋入を行う。
(2)破折や変形の場合は、当院にて再制作または修理を行う。
(3)再治療においては乙の身体状況などに応じて、相応の待機期間を設けることがある。
第 4 条(免責)
以下の場合は免責とし本保証規約の対象としない。
(1)乙の故意または重過失による事由発生の場合
(2)戦争、暴動その他の事変による事由発生の場合
(3)地震、津波、洪水、積雪、風災などの天候による事由発生の場合。
(4)第三者による加害行為および事故などによる口腔内変化事由の場合。
(5)乙が 1 年間以上にわたり定期メンテナンスを受けなかった場合。
(6)審美的な変化および乙の都合で行われた事由による場合。
(7)咬合が強くナイトガード装着などを義務づけられたにもかかわらず指示に従わず破折した場合。
(8)甲の医院以外で行われた処置に起因して事由が
発生した場合。
第 5 条(手続き)
乙は保証書を甲に提示することで保証を求めることができる。
第 6 条(解除)
甲は、次の各号の一つに掲げる事由があったときは本保証契約を解除することができる。
(1)乙の詐欺行為または未遂があったとき。
(2)自費治療やメンテナンスにあたり、乙が正当な事由なく書類の提出を拒んだり、必要な調査を妨げた場合、既往症などの事実を告げず、あるいは不実のことを告げた場合。
(3)乙が本保証書を改ざんしたり、改ざんされた保証書を提示した場合。
第7条(保証請求権の消滅)
乙の本自署保証契約による権利は、保証発生事由の生じた日から1年間請求がない場合には消滅する。
第8条(本契約に定めのない事項)
本契約に定めのない事項については、当院が誠意をもって取扱いを決定する。 以上
2│治療計画説明書
■治療計画説明書
自費治療を勧める際に、主訴(患者が医者に申し立てる症状のうちの主要なもの)部分だけでなく、口腔内全体の治療計画を説明する必要があります。
このような場合には、説明書を使用し、署名を得てコピーを交付しておくと、説明と同意の記録になります。
3│インプラント同意書
インプラントに対する患者説明の証拠として、同意書を受け取ることをお勧めします。
■インプラント治療に関する同意書
診療トラブル事例と対応策
自由診療を行う上で、料金が高額かつ治療期間が長期にわたるようなインプラント等の場合は、診療契約もしくは同意書を取り交わすことはありますが、保険対象外の補綴物を使用する場合等ではこうした対応はほとんどありません。
一般の自由診療だけでなく、契約を取り交わした自由診療でさえも治療結果へのクレームや治療中断の材料費の請求や違約金等の支払いに関するトラブルが生じています。
以下に、トラブル事例と対応策について解説します。
1│説明義務に関するトラブル事例
本事例は、歯科医師の説明義務に関するトラブル事例です。患者の初診時に過去の破折した治療跡を発見したものの、主訴の部位ではないことから現状を説明せず、主訴の部位のみ治療を行いました。
しかし再発した際に患者は他院に通院し、当院の治療に問題があると指摘され、損害賠償請求をされてしまった事例です。
【事例A】
下顎7番の自発痛で来院した初診患者のデンタルを撮影したら、下顎6番大臼歯のxx頬側根に破折したリーマーの留置を発見した。根充はされて安定しているようであり、また主訴の部位ではないので、そのまま説明を行わずに治療した。
その後、他院で診療した際に破折留置に関して説明を受けたところ、治療ミスとして当院が損害賠償の請求を受けた。
《結果》
初診時に X 線撮影したデータやカルテを提示し、破折留置はその前の治療でのことと説明を行ったが、治療当時に発見しながら説明を怠ったとして説明義務違反とされてしまい、結果的に和解によって解決したが、SNS でこの件が広まり、患者数も減少してしまった。
歯科医師には、診療の際の説明義務があります。歯科治療は治療方法選択の幅が広く、自由診療の種類も多数存在するため、患者自身が決定することが多くなり、選択肢を提供する歯科医院側の説明義務の範囲は多岐にわたります。
病状について、それに対する治療方法の概要だけでなく、前治療の状況、治療に使用する材質や材料、医薬品が多種ある場合には、その材料や手法、見た目への関係性や効果、副作用や危険性、自由診療や治療費について説明する必要があります。
《対応策》
●口腔内の状況については、注意義務の上でも十分に把握し、文書により詳細に説明を行う
●説明を受けたことに対し診療方針説明書を作成して、受領印もしくは署名を受ける
●説明内容のカルテへの記載
●診療方針説明書、診療計画書、同意書等の書面を用意する
2│自由診療の中断と保険診療移行の事例
この事例は、自由診療で治療開始後、治療の途中で患者から保険診療に変更を依頼され、保険診療のみの請求となってしまったトラブル事例です。
口頭での概略の説明だけで治療を開始したことが、大きな要因であったといえます。
【事例B】
xxxxx・xxxxとマイクロスコープによる根管治療を依頼した患者が、根管治療をしたところで「やはり保険診療で」といってきました。口頭での説明だけで治療開始していたので、断ることができず、保険適用のクラウンに変更して治療しました。
《結果》
xxxxx・xxxxとマイクロスコープによる根管治療は自由診療となり、その後の保険診療分の双方を請求すると混合診療になるため、保険診療分だけ請求しました。
自由診療を行う際には、書面による説明と同意書もしくは診療契約書を取り交わし、中途解約や変更といったリスクに対応できるように、違約金や損害賠償といった条文を入れておくことがポイントです。
《対応策》
【自由診療契約を取り交わす】
●条文:中断時には、違約金もしくは損害賠償金を支払う
●契約中途解除での違約金請求とし、診療終了以降に新たな保険診療を開始
3│治療後の不具合による治療費不払いの事例
事例Cは、過去に自由診療で治療した患者が、不具合を理由に無償で治療のし直しを要求して来たトラブル事例です。
診療は準委任契約であり、診療行為への約束事です。準委任契約の法律知識を持ち、診療契約を取り交わすことがリスク回避のポイントです。
【事例C】
3年前にxxxxx・xxxxを入れた治療を行った患者が、不具合が起き、痛みが出たと来院。治療を行った後で、不具合による痛みは以前の治療が悪かった歯科診療所の責任なので、治療費は支払わない、と言ってきた。
《結果》
不具合の状況は診察上大きくなかったのと、今回の痛みが違う原因と説明し、また、当時の治療後には患者から患部の状態は問題ないとのことだったので、今回の治療費の請求は妥当だと説明しましたが、納得せず、支払ってもらってはいません。
《対応策》
【診療行為は準委任契約:結果を出すことまでの義務はなし】
●治療に関してxxの約束:治療結果に対する責任が発生
●不適切な治療やクラウンの形状が不正:債務不履行ないし不法行為で歯科医師の責任
【診療契約書を取り交わし、保証書を発行する】
●条 文:治療結果の責任免除もしくは治療への契約とすることを明示治療後の不具合に対することまで記載
●保証書:定期健診受診者のみとする
材質等への保証
治療後の患部への保証ではない旨を記載する
保証書は準委任行為であることを前提に作成することが重要ですが、保証期間を定めることや保証内容について、法的に義務付けられた事項はありません。
保証書は歯科医院側の定める内容で作成できます。過度にならない内容で、治療のxxを約束するものではないことを前提に作成することが重要です。