国内法規・国内手続への配慮. 発注者が、当該国の大統領令や調達委員会の通達等の国内法規との整合性を意識し、それらの文章表現に倣って契約約款自体を全面的に書き換えたり、多数の特別条件を添付することにより、契約約款を大きく修正してしまう例が少なくない。また、支払時の財政当局の承認や事業サイトがある自治体による住民移転、用地取得等、発注者以外の第三者が契約履行過程に関与することに配慮し、それらに関する発注者の義務を削除したり制限したりすることも多く見られる。国内法を理由とする修正の多くは、使用されている用語や表現が国内法のそれらと異なることから、標準契約約款を十分に理解しないまま、国内法や規定の文章を単純に追加したり、差し替えたりしていると考えられる。そもそも標準契約約款は、発注者と契約者の権利義務が広くカバーされ、バランスのとれた形となっていることから、大幅な変更は契約約款の基本的な構造を損なうものであり、片務性を生じやすく、安易に行うべきではない。FIDIC の標準契約約款は、個々の契約の状況に応じた特別条件による補足を認めているが、その際は法律的な助言を求め、契約約款全体の整合性を保持するべきである。また、発注者以外の第三者の関与に配慮した、発注者の義務の削除や縮小については、関係者との調整・合意を事前に行い、かかる事態の発生を防止するよう努めるべきであり、安易に片務的な条件変更を行うべきではない。 プロジェクト実施前に、国内法との相違点や国内手続を押さえた上で、標準契約約款を含む調達手続についての発注者の理解を深めておくことが重要である。