☆「モデル就業規則」(厚生労働省ホームページ) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_ roudou/roudoukijun/zigyonushi/mod el/index.html
【令和4 年3 月更新】
16 就業規則
※本項では、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」を「パートタイム・有期雇用労働法」と表記。
1 就業規則の作成・届出
使用者は労働者を雇用し、労働者は使用者の管理(労務管理)のもとで働くが、使用者が労働者の労働条件を画一、xxに処理し、企業秩序を維持するためには何らかのルールを決め、それに基づいて労務管理を行う必要が生じる。このような目的で作成される、労働者が職場で守るべき規律や労働条件について定めたルールが「就業規則」である。
労働基準法では、正社員、パートタイム労働者、アルバイト等を含めたすべての労働者の数が常時 10 人以上である事業場の使用者(派遣労働者の場合は派遣元事業主【昭61.6.6 基発333 号】)に就業規則の作成と管轄の労働基準監督署への届出を義務づけており、その内容には、必ず記載しなければ
ならない「絶対的必要記載事項」と、使用者がその制度等を定めている場合に記載しなければならない「相対的必要記載事項」がある【労働基準法第89 条】。
[労働条件の明示については「№3」参照]
(1)絶対的必要記載事項(必ず記載しなければならない項目)
ア 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
※一定の場合(パートタイム労働者等で本人希望有り等)に、基本となる始業及び終業時刻を定め「具体的には個別の労働契約等で定める」旨の委任規定も認められている【昭63.3.14 基発 150 号、平11.3.31 基発168 号】。
イ 賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切及び支払の時期並びに昇給に関する事項
ウ 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
(2)相対的必要記載事項(使用者が制度等を定めている場合に記載しなければならない項目)
ア 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定・計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
イ 臨時の賃金等(退職手当を除く)及び最低賃金額に関する事項ウ 食費・作業用品その他の労働者の負担に関する事項
エ 安全及び衛生に関する事項オ 職業訓練に関する事項
カ 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項キ 表彰及び制裁の種類・程度に関する事項
ク その他事業場のすべての労働者に適用される定めに関する事項
☆「モデル就業規則」(厚生労働省ホームページ) xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxx/xxxxxxxxxxxxxxx/xxxxx/xxxxx_xxxxxx/xxxxxxxxxxx/xxxxxxxxxx/xxx el/index.html
※別規則の許容
就業規則の一部を「賃金規程」などとして別規則とすることも可能であるが、別規則としても就業規則の一部であることには変わりないため、その作成手続(労働基準法第 89 条の届出義務、第
90 条の意見聴取義務)も効力も、本体の就業規則と同様となる。
※テレワークと就業規則
テレワーク勤務(在宅勤務、サテライトオフィス勤務及びモバイル勤務)において、労働の場所、労働時間や労働者における費用負担など、通常勤務と労働条件が異なる場合は、就業規則の変更(またはテレワーク等に係る規程等)が必要となる。
◇ パートタイム・有期雇用労働者と就業規則
パートタイム・有期雇用労働法では、パートタイム・有期雇用労働者に対する労働条件の明示を義務づけており【パートタイム・有期雇用労働法第6 条第1 項】、正社員とパートタイム・有期雇用労働者等の就業規則は別個に作成することが望ましい。正社員の就業規則がパートタイム・有期雇用労働
者等に適用されるかについては、「同一事業場内の一部の労働者についてのみ適用される別個の就業規則を作成した場合は、就業規則の本則において当該別個の就業規則の適用の対象となる労働者に係る
適用除外規定または委任規定を設けることが望ましい【」昭63.3.14 基発150 号、平11.3.31 基発168号】とされている。
2 就業規則の作成・変更時の意見聴取
労働基準法では、就業規則の作成・変更に当たり、使用者に従業員(労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労
働者の過半数を代表する者(※))からの意見聴取を義務づけており【労働基準法第90 条第1 項】、これに違反すると罰則の適用を受ける【労働基準法第120 条第1 号】。
使用者は必ずしもその意見のすべてを取り入れることまでは求められていない【昭25.3.15 基収第525号】が、意見を十分に尊重すべきこととされている。
(※)「労働者の過半数を代表する者」とは、次のいずれにも該当する者【労働基準法施行規則第6 条の 2 第1 項】でなければならない。
ア 事業の種類にかかわらず、監督もしくは管理の地位にある者でないこと。
イ 法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であって、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと。 また、使用者は、労働者が過半数代表者であることもしくは過半数代表者になろうとしたこと又
は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにしなければならない【労働基準法施行規則第6 条の2 第3 項】。
3 就業規則の周知義務と方法
労働基準法では、労働者に対する就業規則の周知を義務づけており【労働基準法第106 条第1 項】、これに違反した使用者は罰則の適用を受ける【労働基準法第120 条第1 号】。
周知については、次のいずれかの方法によって行うこととし【労働基準法施行規則第 52 条の 2】、労
働者が就業規則の開示を求めた場合、使用者はこれを拒否することはできない。ア 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
イ 書面を労働者に交付すること。
ウ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
また、労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に「周知させていた」場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとすると規定されている【労働契約法第7 条】。「周知させていた」とは、上記アから
ウ等の方法により労働者が知ろうと思えばいつでも就業規則の存在や内容を知り得るようにしておくこ
ととされ、このような場合には、労働者が実際に就業規則の存在や内容を知っているか否かにかかわらず、労働契約法第7 条に該当するとされている【平27.3.18 基発0318 第2 号、平30.12.28 基発1228
第17 号】。
4 法の要件を満たしていない就業規則の効力
就業規則の作成、変更については、従業員からの意見聴取義務【労働基準法第90 条第1 項】や労働基準監督署への届出義務【労働基準法第89 条】があるが、それらは行政上の取締規定にすぎず、就業規則
そのものの効力には関係しないとする考え方が有力で、最高裁は「(就業規則が合理的な労働条件を定めるものである限り)当該事業場の労働者は、就業規則の存在および内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然にその適用を受けるものというべきである」と判示している【秋北バス事件 最大判 昭43.12.25】。
しかし、周知義務【労働基準法第106 条第1 項】については、最高裁が「就業規則が法的規範として
拘束力を生ずるためには、その内容を、適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する」と判示し、周知義務を果たしていない就業規則の効力を否定している【フジ興産事件 最二小判 平15.10.10】。
5 法等を下回る就業規則の内容の効力
就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならず、いずれかに反する就業規則は、その部分について無効とされている【労働基準法第92 条第1 項、労働契約法第13 条】。
また、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とす
る。この場合において、無効となった部分は就業規則で定める基準による【労働契約法第12 条】。