タイは、日本の民法相当する「民商法典」第3部第6章(第575条~第586条)で雇用契約の基本的な事項を規定していますが、さら 「労働者保護法v 」
海外法務ニューズレター Vol.10 | |
2015 年 1 月 |
1 タイの主な労働関係法令
タイは、日本の民法相当する「民商法典」第3部第6章(第575条~第586条)で雇用契約の基本的な事項を規定していますが、さら 「労働者保護法v 」
(以下「法」)を定め、民商法典上の規律を労働者保護の視点から修正・補完しています。その他、「労働関係法」(以下「関係法」)viで労働組合の設立や団
体交渉の手順などを、「労働裁判所設置及び労働裁判
訴訟法」(以下「労働裁判法」)viiで労働裁判関す
る手続きをそれぞれ定めております。その他も、多くの労働関係法令が立法化されております。
2 就業規則等
(1)就業規則
使用者が10人以上労働者を使用する場合、就業規則を作成して労働者へ公示し、あわせて労働者保護
(1) 労働日、通常労働時間および休憩時間
(2) 休日および休日 関する規則
(3) 時間外勤務および休日勤務 関する規則
(4) 賃金 関する事項
(5) 休暇日および休暇 関する規則
(6) 規律および罰則
(7) 苦情申立て
(8) 解雇、解雇補償金および特別解雇補償金
福祉局長(以下「局長」)へ提出することが義務付けられます(法第108条)。就業規則で定めなければならない事項は以下のとおりです。
(2)労働者登録簿、賃金台帳
タイは、周辺諸国と比較して進学率が高くi、イン
フラが充実していること、中国、インドネシア等の大市場と近いことなどの理由から海外進出先として高い人気を誇っています。その一方で、若年労働者の不足
iiや低い失業率iii、最低賃金の急激な上昇ivから、労働
紛争が頻発しており、労働法がタイでも重要視されてきております。
そこで、本稿では、タイで事業をする あたり知っ
ておくべき労働関係法令のうち、労働者保護法を日本法との比較を交えながら説明していきます。
タイの労働者保護法 ついて
また使用者は、労働者が10 人以上 なった場合、就業規則加え、労働者登録簿と賃金台帳を 作成し備えなければなりません(法第112条、第
114条)。
また、10人以上の労働者を使用する使用者は、毎年、雇用状況を局長または局長の委任する者報告しなければなりません(法第115/1条)。
(3)雇用条件協約
使用者は、20人以上労働者を有する事業所となった場合、労働者の代表者と交渉し雇用条件協約を定
めなければなりません。一定程度以上の規模の会社で、日本でいうところの就業規則代替する位置づけとなるのは、実質本協約となります。協約で定める事項は以下のとおりです(関係法第10条、第11
条)。
(1) 雇用または労働の条件
(2) 労働日および労働時間の規定
(3) 賃金
(4) 福利厚生
(5) 解雇
(6) 苦情申立て
(7) 当該協約の改正または有効期限
本協約が定められると、協約で定めた事項より不利な雇用契約は無効とされます(同法第20条)。また協約を変更するときは、改めて労働者の代表者と
交渉し合意するなど関係法所定の手続きを経なければならなくなり、日本での就業規則の不利益変更以上の労力が必要とされます(同法第13条)。
雇用条件協約を定めなかった場合やその事業所
雇用条件協約があるか疑わしい場合は、既定められている就業規則が雇用条件協約とみなされること なります(同法第10条第3項)。
3 雇用契約
(1)契約締結義務
雇用契約を書面で取り交わすことを義務づける規定はありません。しかし実務上は雇用条件を巡るトラブルを防ぐため、雇用契約書を交わし予め雇用条
【監修者】パートナー 弁護士 xx xx xxxx://xxx.xxxxxxxx.xx.xx/xxxxxxx/xxxxxx.xxx?xxxxxxxx_xxxX YO20131105000000046 【執筆者】弁護士 xx xx xxxx://xxx.xxxxxxxx.xx.xx/xxxxxxx/xxxxxx.xxx?xxxxxxxx_xxxX YO20131105000000035 | 〘大 阪〙xx法律事務所・外国法共同事業 x000-0000 xxxxxxxx 0-0-00 xxxxxxxxx TEL 00-0000-0000(代)/FAX 00-0000-0000・1130・9550 〘東 京〙弁護士法人xx法律事務所東京事務所 x000-0000 xxxxxxxxxx 0-0-00 サピアタワー14F TEL 00-0000-0000(代)/FAX 00-0000-0000 〘福 岡〙弁護士法人xx法律事務所福岡事務所 x000-0000 xxxxxxxx 0-0-00 xxxxxxx・xxxxxxxxxx4F TEL 000-000-0000/FAX 000-000-0000 |
本ニューズレターは法的助言を目的するものではなく、個別の案件につい ては当該案件の個別の状況に応じ、弁護士の助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的見解であり、当事務所又は当事務所のクライアントの見解ではありません。本ニューズレターの発送中止のご希望、ご住所、ご連絡先の 変更のお届け、又は本ニューズレターに関する一般的なお問合せは、下記までご連絡ください。 xx法律事務所・外国法共同事❹ ニュースレター係 (TEL: 00-0000-0000 E-mail: xxxxxxxxxx@xxxxxxxx.xx.xx) |
件を明確しておくことが望ましいでしょう。
(2)競業避止義務
タイは競業避止義務を直接規制するxx上の規定はありません。したがって競業避止義務を就業規則や雇用契約で定めることは可能です。また退職 後一定期間競合業種への就業を禁止する合意も有効です。しかし、不xx契約法や労働者不当不利
な条項は無効とされる保護法第14/1条 よる規制
があるため、労働者の就業が禁止される業務範囲、地理的範囲、就業が禁止される期間等ついて合理的限定しなければ無効と判断される可能性がありますのでご留意ください。
4 労働時間、休憩
労働時間は原則として1日8時間、1週間48時間の範囲で使用者が定めて公示しなければなりません(法第 23条)。
使用者は1日のうち1時間の休憩を定めなければな
らず、連続して5時間以上の労働をさせることは禁止されています(法第27条)。
5 休日
(1)週休、祝祭日
労働者は、1週間1日以上の週休を付与しなければなりません(法第28条)。
祝祭日は、13日以上で使用者が定めることとなっており(ただ、メーデーの5月1日は必ず祝祭日としなければなりません。)、祝祭日が週休と重なった
場合は、翌労働日代休を与えなければなりません(法第29条)。
(2)年次休暇
使用者は、満1年以上継続して就業した労働者対し、1年6日間以上年次休暇を与えなければなりません(法第30条第1項)。また、就業日数が1年未満の労働者対しても、勤続期間比例した年次
休暇を与えることもできます(法第30条第4項)。使用者が事前定めるか、労使間で合意すること で休暇時期を指定することができます(法第30条第
1項)。
未消化の年次休暇は、労使間合意で翌年繰り越せます(法第30条第3項)。
労働者が離職するとき年次休暇がまだ残ってい
た場合、使用者は未消化休暇日数相当する賃金を支払うことが義務付けられる場合がありますが、その休暇が生じた時期よって支払義務の有無が異なりますので注意が必要です(法第67条)。つまり、
(ア)労働者が離職した年生じ、その後離職まで
消化されなかった年次休暇は、非違行為を理由
しない解雇(普通解雇) 限り、使用者は賃金の支払いが義務付けられますが、他の離職理由の場合は賃金の支払いが義務付けられません。他方、(イ)離職する年より前生じて翌年繰り越した年次休暇で、離職まで消化されなかったものは、離職理由かかわらず、賃金支払いが義務付けられます。整理すると以下の表のようなります。
( ア) その年の未 消化年次休暇 | (イ) その年より前 生 じ繰り越した年次休暇 | |
非違行為 基づかな い解雇(普通解雇) | ○ (支払い義務あり) | ○ |
退職 | × (支払い義務なし) | ○ |
非違行為 基づく解 雇(懲戒解雇) | × | ○ |
(3)休暇
タイでは主以下の休暇が法定されています。
傷病休暇:使用者は、労働者が病気の場合休暇を付与しなければならず、年間30日までは有給扱い
としなければなりません。労働者が3労働日以上休
暇を取得する場合、労働者医師の診断書を提出するよう要求することができます(法第32条、第57条第1項)。
兵役休暇:タイでは兵役休暇があり年間最大60日
まで有給扱いしなければなりません(法第35条、第58条)。
出産休暇:産休は1回つき最大90日とされてお
り、少なくともそのうち45日間は有給扱いしなければなりません(法第41条、第59条)。
避妊手術休暇:避妊手術のための休暇制度もあります。医師が手術のため必要と診断書で記載した日数が有給扱いの休暇とされます(法第33条、第
57条第2項)。
研修休暇:研修のための休暇も定められており、有給扱いするかどうかは使用者の判断で決められます(法第36条)。ただし、未xx労働者対して
研修のための休暇を与える場合、最低30日間は有給
としなければなりません(法第52条)。
また、タイでは仏教の影響で男性が一時的出家する習慣があることから、これ備え「出家休暇」を就業規則で定めている例も多く見受けられます。
6 賃金
(1)総論
保護法第5条は、賃金を詳細定義していますが概ね雇用契約基づき使用者と労働者の間で合意さ
れ、通常の労働時間おいて労働した時間または通常の労働時間労働者が生産した成果 基づき支払われる労働の対価とされています。
賃金の支払方法 ついては、現金・タイ通貨で支払うこと(法第54条)、就業場所で支払うこと(法
第55条)、月1回以上支払うこと(法第70条第1項第1号)などが定められています。なお、書面で労
働者の承諾があれば外国通貨や振込送金よる支払いも可能です(法第77条)。また、賃金の支払い際して、税金等法律で定められた一定の例外を除い
て控除することも許されず、全額支払うことが義務付けられます(法第76条)。
賞与関しては、保護法上支払いを義務付ける規
定はありませんが、多くの会社で設けられているのが実情です。
(2)最低賃金
最低賃金関しては、賃金委員会が決定するとされています(法第79条第1項)。最低賃金は技能別
と職種関係ない最低賃金の2種類あります。職種
関係ない最低賃金ついては、近年まで地域ごと 異なる金額が定められていましたが、2013年1月より、全国一律300バーツとなりましたviii。
(3)時間外・休日労働、割増賃金
タイでは日本の三六協定相当するものがなく、使用者が労働者対して一方的時間外労働を命じることはできません。時間外労働を求める場合、書
面で労働者から同意を得ることが義務付けられています(法第24条、第77条)。
使用者は、時間外労働・休日労働を行った労働者
対し割増賃金を支払わなければなりません。使用者は、割増賃金として、時間外労働の場合は、通常の労働日の賃金額の1.5倍以上の(法第61条)、休
日労働の場合は2倍以上の(法第62条)、休日時間
外労働の場合は3倍以上の(法第63条)割増賃金をそれぞれ支払う義務を負います。
なお、時間外労働時間の計算方法ついて日本と違いがありますのでご注意ください。日本の場合、法定労働時間を超えない限り、使用者割増賃金の支払義務は生じませんが(いわゆる法定内残業、労
働基準法第37条)、タイでは使用者が定めた労働時
間を越えれば、それが法定労働時間より少なかったとしても、割増賃金の対象となりますix。
(4)管理監督者の例外
日本の管理監督者のよう、タイでも「雇用、報奨の支給、または解雇ついて使用者を代理して行う権限のある者」対しては、特段の合意がない限り、時間外、休日、休日時間外の割増賃金の支払いは義務付けられません(法第65条第1項第1号、第
66条)。ただ、日本でも「名ばかり管理職」が問題
なったようx、タイ おいても、どのような場
合がこの例外該当するか争われることが多く、使用者がこの例外の適用を主張する際は、本当こ
の要件を満たすのか慎重 検討することが求められますxi。
(5)休業手当
使用者が、事業重要な影響を与える何らかの理由より、事業の一部または全部を行うことができず休業する場合、休業する3日以上前労働監督官
と労働者へ書面で通知した上で休業することができ
ますが、この場合、労働者対して75%の休業手当を支払わなければなりません(ただし不可抗力よる休業の場合は不要、法第75条)。
7 雇用契約の終了
(1)解雇事前通告
期間の定めなき雇用契約を非違行為基づかず解雇する(いわゆる普通解雇)場合、次の給料支払日解雇する旨の事前通告を、その前の給料支払日以前通知する必要があります(すなわち、事前通告日と解雇日の2回の給料支払日をまたぐことな
ります。法第17条2項)。なお、事前通告をしない
場合でも、事前通告より雇用終了の時まで支払わなければならない賃金を即時支払うことで解雇することもできます(法第17条第3項)。
他方、期間の定めある雇用契約は期間満了と同時
契約も終了し(法第17条第1項)、この場合解雇事前通告は必要ありません。
(2)解雇補償金
上記事前通告加え、期間の定めなき雇用契約の労働者で、就業期間が120日以上の場合、解雇補償金を支払う必要があります(法第118条第1項)。
解雇補償金額は以下の表のとおり、実際労働した期間応じて金額が増えていきます。
雇用期間 | 解雇補償金額 |
120日以上1年未満 | 30日分の賃金 |
1年以上3年未満 | 90日分の賃金 |
3年以上6年未満 | 180日分の賃金 |
6年以上10年未満 | 240日分の賃金 |
10年以上 | 300日分の賃金 |
なお、解雇補償金と会社任意で設けられる退職金制度とは性質が異なり、退職金を支払っていたからといって解雇補償金を支払ったことはなりませんのでご注意くださいxii。解雇を検討される場合は、
退職金以外も解雇補償金の支払いがあるというこ
とも念頭置いていただく必要があります。
なお、労働者が自己都合で退職したり、期間の定めのある雇用契約で期間満了より契約を終了したりした場合は解雇補償金の支払いは必要ありません
(法第118条第2項、第3項)。
(3)試用期間
タイの労働実務おいても、日本と同様試用期間が用いられています。試用期間を定めた場合、期間の定めなき雇用契約とみなされるので、解雇する際は解雇事前通告が必要なります(法第17条第
2項)。
また、試用期間は、不当長いものを除き、労使の合意で自由期間設定することができます。ただし、上記のとおり120日以上就業した者を解雇する
際、解雇補償金の支払いが必要となりますので、こ
の負担を避けるため試用期間を119日以内とするところが増えているようですxiii。
労働者の試用期間中のパフォーマンスが水準を満たしていないと判断される場合の解雇は通常の解雇の場合と比べゆるやか認められていますxiv。
(4)定年退職
タイでは多くの会社が60歳定年制度を採用しています。しかし一方、タイでは、私企業関する定年退職制度を認める法律がないこともあり、定年退
職は法的は解雇と理解されていますxv。したがっ
て、タイで労働者を定年退職させる場合、解雇と同じ扱いなり、解雇事前通告および解雇補償金の支
払いが必要なります。なお、労働者保護法では男女差別が禁止されていることから(法第15条)、合理的な理由がないもかかわらず男女で異なる定年
制度を設けると、不xxな解雇と判断される可能性がありますので、ご留意くださいxvi。
(5)整理解雇
事業の合理化伴う解雇(いわゆる整理解雇)をする場合、60日以上前解雇理由と労働者名を、労働監督官と解雇される本人通知しなければなりません。60日以上前通知をしなかった場合は、60 日分の賃金を支払うことで解雇することもできます
(法第121条)。
また解雇する労働者が6年間を超えて継続して勤
務している場合、雇用期間応じた特別解雇補償金を通常の解雇補償金上乗せして支払わねばなりません。この特別解雇補償金は雇用期間が1年を超え
るごと15日(上限360日分)となります(法第
122条)。
(6)事業所移転伴う離職
事業所を移転し、労働者の通常の生活影響がある場合、移転の30日以上前、労働者通告する必要があります。このとき、労働者は、新しい事業所での労働を望まない場合は雇用契約を終了するこ
とを選択できます。厳密言えば、この場合、労働者の自主的な退職なので解雇ではないのですが、労働者保護法は、使用者 、解雇した場合 同法118
条1項の(上記(2)で計算される)解雇補償金の金額以上の特別解雇補償金を労働者 支払うよう義務付けています(法第120条)。
(7)懲戒解雇
(1)職務上の不正を行い、または使用者対して故意刑事犯罪を犯した場合
(2)使用者 対し故意 損害を与えた場合
(3)過失 より使用者重大な損害を与えた場合
(4)就業規則、規律または使用者の法 かなった、正当な命令
違反し使用者が文書で警告を行った場合。ただし、重大な違反の場合 は警告を要しない。
(5)合理的な理由なく、間休日があるかないか かかわらず3
日間連続して職務を放棄した場合
(6)最終判決 より懲役刑を受けた場合
労働者法律上定められた非違行為がある場合、使用者は労働者を解雇することができます(いわゆる懲戒解雇)。法律上定められている懲戒事由は以下の表のとおりです(法第119条)。
この場合、解雇事前通告および解雇補償金の支払いは不要です(法第17条第4項)。ただし、解雇通知書記載がない解雇理由は、後追加することは許されません(法第119条第3項)。したがって、解雇通知書作成あたっては解雇理由を網羅的記載
しておくことが重要です。
就業規則違反が発見された場合の懲戒解雇の一般的な解雇の手順としては、上枠の(4)の懲戒事由 基づいて警告書を労働者交付します。その後1
年以内再度就業規則違反が発見された場合もしくは違反状態が改善されない場合、労働者解雇通知書を交付して解雇することなります。
(8)その他xxの解雇規制
その他xxの解雇規制として、妊娠を理由とした解雇(法第43条)、労働組合員であることを理由とした解雇(関係法121条第2号)、労働者委員会委員の活動を理由とした解雇(ただし、労働裁判所の
許可がある場合は除く、同法第52条)は禁止されています。
(9)不当解雇規制
以上個別の規制を説明しましたが、これ以外も日本でいうところの解雇権濫用の法理のよう、法律xxxで定められている手続を遵守した場合でも
その解雇が「不当解雇」であると判断され無効とされるという規制もあります(労働裁判所法49条)。したがって、解雇踏み切る際は、後同条で解雇が無効と判断されないよう、(ア)上記法律で
定められた手続加え、解雇理由を明確示し、弁明の機会を付与するなどといった手続保障を付与すること、そして、(イ)解雇の判断を下すことを裏付けるだけの実質的・合理的な理由があること(非違行為 基づかない解雇であれば、能力不足や不適格性を裏付ける客観的な証拠が存在するか、整理解
雇であれば、解雇対象は合理的選任されている等の整理解雇を裏付ける事情を備えているか等、非違行為基づく解雇であれば、その非違行為が解雇値するほど重大なものといえるか。)を事前十分 検討し、後立証できるよう証拠化しておくことが重要です。
8 労働者派遣
(1)総論
タイおいて労働者派遣は、実務的多くの製造業で利用されているところですが、日本のいわゆる労働者派遣法のよう派遣労働関係を網羅的規制する法律はなく労働者保護法一部規制があるのみです。
(2)派遣労働者と派遣先との関係
派遣労働者は、原則として派遣元と雇用契約関係 あり、派遣元が使用者とされ、賃金も派遣元から支払われます。しかし、派遣労働者が担当する業務 よって、派遣先が使用者として義務を負う場合もあります。すなわち、派遣先が責任を負う生産工程
またはサービス派遣労働者が従事する場合、派遣先も派遣労働者の使用者とみなされます(法第11/
1条第1項)。
つまり、派遣先が責任を負わない業務(製造業おける掃除や警備)を派遣労働者が担当する場合は派遣先が使用者とみなされることはありませんが、他方で、派遣先が自社で責任を負う工程派遣労働者を用いた場合(たとえば、自動車製造業おける
期間工など) は、派遣先が使用者として責任を負う可能性がありますxvii。
(3)派遣労働者の権利
また、派遣先は、直接雇用契約を締結する労働者と同じ性質で労働する派遣労働者対し「xxな権
利および利益ならび福祉」を差別なく与えることが義務付けられています(法第11/1条第2項)。
この点、近年の裁判例おいて、裁判所は、直接
雇用の労働者と派遣労働者が同一の労働をしている場合、生活手当、交通費、賞与おいて同一水準の支払いをしなければならないと判示し、派遣先対して、直接雇用の労働者が受領している金額と派遣労働者が派遣元から支払われている額との差額分の支払いを命じ、産業界大きなインパクトを与えましたxviii。
そこで、このような責任が生じるのを避けるため 、直接雇用の労働者と派遣労働者の仕事内容を予め区別して差をつけておき、派遣労働者と直接雇用の労働者との間で賃金が異なることを合理的説明できるような状況 しておく必要があります。
9 xxxx・xxxx
労働者保護法16条では、使用者、xx、監督者、または管理者、性的侮辱する行為、威嚇する行為、
迷惑な行為をすることを禁止しています。性的な行為以外の行為も禁止されておりますので、セクハラだけでなくいわゆるパワハラも本条で違法とされます。被害者は「労働者」と規定されているので、これらの行
為の被害者は女性限定されません、男性もセクハラが生じる可能性がありますxix。また違反した者は2万バーツ以下の罰金課せられます(法第147条)。
i xxxx「東南アジア諸国間の違いを考える(第2回):教育水準」トピックス インド・ASEAN ビジネスガイド 2012 年 12 月 6 日 xxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxx/xxxxxx/xxxxxx/0000/#0
これよると高等教育就学率が、タイが他の ASEAN 各国を大きく引
き離していることがわかる。
ii xxxxx「タイで深刻化する労働力不足」アジア・マンスリー 2011 年 7 月号 xxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxx.xxx?xxx00000
iii 世界銀行の発表よると 2011 年以降 0.7%
xxxx://xxxx.xxxxxxxxx.xxx/xxxxxxxxx/XX.XXX.XXXX.XX?xxxxxxxxxxx_xxx a_value_2013+wbapi_data_value+wbapi_data_value-last&sort=asc
iv 三菱東京 UFJ 銀行 経済調査室「経済情報 タイの最低賃金の大幅引き上げの影響ついて」2013 年 5 月 14 日 xxxx://xxx.xx.xxxx.xx/xxxxxx/xxxxxx0000/xxxxxx_Xxxx_00000000.xxx
x xxx訳は下記労働保護福祉局ホームページ て閲覧可能 xxxx://xxx.xxxxxx.xx.xx/xx/xxxxx.xxx/0000-00-00-00-00-00
xx xxx訳は下記労働保護福祉局ホームページ て閲覧可能 xxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxx/xxxxxxx/xxxxx/xxxxxx/xxxxx/xxxxxxXxxxxxxx 2518_en.pdf
xxx xxx訳(非公式) xxxx://xxxxxxxx.xxx/xxx/x_xxxx/xxxx0000.xxx
viii 2012 年 10 月 1 日付告示 xxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxx/xxxxxxx/xxxxx/xxxxxxxxx/xxx/Xxxx_0000_ Eng.pdf
ix xxxx著『タイビジネス必携 第 3 版』(Global Internet Partner
Utopia Co., Ltd.)74 頁
x 近年下された裁判例として東京地判平成 20 年 1 月 28 日(日本マ
クドナルド事件)等
xi xx・前掲注 IX 77 頁
xii xxxxx著『タイ労働法研究序説』(xx書房)355 頁
xiii xxxx公認会計士事務所・株式会社東京コンサルティングファーム著『タイの投資・M&A・会社法・会計税務・労務』(TCG 出 版)375 頁
xiv xx・前掲注 XII 347 頁
xv xx・前掲注 XII 344 頁
xvi xx・前掲注 XII 348 頁
xvii xxxxx「タイの労働保護法改正-2008 年改正法の翻訳と解説
―」立命館法学 2009 年 2 号(324 号) 153 頁
xviii タイ最高裁判決 22326-22404/2555、同判例 コメントするも
のとして、xxxxx「タイ:労働者派遣の利用関する最新動向」商事法務ポータル 2014 年 8 月 26 日、三菱東京 UFJ 銀行 国際業務部「2.タイ:派遣社員対する待遇ついて」BTMU Global
Business Insight Asia & Oceania 2014 年 9 月 14 日 4 頁 http://xxx.xx.xxxx.xx/report/insasean/AW20140919.pdf#search='% E6%9C%80%E9%AB%98%E8%A3%81+2232622404%2F2555+%E3%82%
xix xx・前掲注 XVII 155 頁