Contract
(様式4)
日本NGO連携無償資金協力 完了報告書
1. 基本情報 | |
(1)案件名 | カフエ郡チサンカーネ地域における母子保健サービス強化事業(第 2年次) Maternal and Child Health Project in Chisankane Area, Kafue District |
(2)贈与契約締結日及び事業期間 | ・贈与契約締結日:2017 年 3 月 2 日 ・事業期間:2017 年 3 月 11 日~2018 年 3 月 10 日 |
(3)供与限度額 及び実績(返還額) | ・供与限度額:491,532 米ドル ・総支出:466,813.43 米ドル(返還額:24,718.57 米ドル、利息:0米ドル含む。) |
(4)団体名・連絡先、事業担当者名 | (ア) 団体名:特定非営利活動法人 難民を助ける会 Association for Aid and Relief, Japan (AAR Japan) (イ) 電話:00-0000-0000 (ウ) FAX:00-0000-0000 (エ) E-mail:xxxxx@xxxxxxxx.xx.xx (オ) 事業担当者名:xxxxx |
(5)事業変更の有無 | 事業変更承認の有無:無 |
2.事業の概要と成果 | |
(1)上位目標の達成度 | カフエ郡チサンカーネ地域のチサンカーネ・ヘルスセンター(以下、ヘルスセンター)に出産待機所を建設し、必要な備品を供与したことで遠隔地に住む妊産婦と家族が出産予定日前に来院し、安心して分娩日まで待機できる環境を整備した。第 1 年次に建設したオールドカブウェザ・ヘルスポスト(以下、ヘルスポスト)にはスタッフ用宿舎をさらに 1 棟建設した。これにより、ヘルスポストで勤務する医療従事 者が追加で 2 名派遣され、合計 3 名が勤務することとなった。増員により地域住民はヘルスポストで安定した医療サービスを受けることができるようになった。 また、ヘルスセンターおよびヘルスポストで施設分娩が促進され、かつ巡回診療での診療内容を充実させるため、血糖測定器やマニュアル型吸引機、グルコメーター、産科内診用ライト、妊産婦健診用ベッドなどの供与を行った。 第 2 年次は巡回診療地を 2 ヵ所追加し、それにともない、6 つの地域保健委員会(Neibourhood Health Committee、以下 NHC)を組織し、組織運営能力強化研修を実施した。また、第 1 年次に組織した NHC を含め、9 つの NHC に対し巡回診療補佐技能補完研修を実施したほか、 NHC から選出したメンバー47 名に対し、母子保健推進研修を実施し、安全なお産推進グループ(Safe Motherhood Action Group、以下 SMAG)の育成を開始した。 以上の活動により、カフエ郡チサンカ―ネ地域で妊娠、出産、また 5 歳未満児の健康に係るリスク低減に向けての活動体制を強化することができた。 |
(2)事業内容 | (ア)ヘルスポスト建設およびヘルスセンター産科棟の設備強化を通 じた施設分娩の促進 ○ヘルスセンター出産待機所 設計の段階において、カフエ郡議会がヘルスセンター敷地内の給水タンク設置を決定したことに伴い、カフエ郡保健局から当初計画していた汲み取り式トイレではなく水洗トイレへと変更する旨要請があり、設計を一部変更した。2017 年 7 月に着工し、2017 年 10 月に竣工、翌月にカフエ郡保健局に譲渡した。井戸からの水供給が不十分であったため出産待機所の使用開始を見合わせていたが、カフエ郡の関係者による協議の結果、新たな井戸の掘削を進めながら出産待機所を使用する旨合意がなされ、2018 年 2 月から使用を開始した。使用開始から 2018 年 3 月までの利用者数は、母親 10 名、家族 2 名、計 12 名であった。 ○ヘルスポストスタッフ用宿舎 2017 年 7 月に着工し、11 月に竣工、12 月にカフエ郡保健局に譲渡した。カフエ郡保健局から棚を備え付けた設計にするよう要請を受け、また電力を必要以上に消費しないようソーラーパネルによる電力で稼働する冷蔵庫を備え付けの備品として供与することとなった。2018 年 1 月より 2 名の看護師が入居し、利用を開始している。 ○医療資器材供与 当会が派遣した母子保健専門家によるザンビア共和国母子保健ガイドラインの確認およびヘルスセンターおよびヘルスポストの医療資器材評価の結果、追加で血糖測定器やマニュアル型吸引機、新生児用ベッド、産科内診用ライトなどの医療資器材を供与した。 (イ)巡回診療活動強化を通じた母子診察サービスの改善 2017 年 8 月に巡回診療地 5 ヵ所(ナンカンガ、チフエマ、カニャン ジャ、シャチボンドウェ、ムワマクサ)のほか、巡回診療には参加しないもののオールドカブウェザとマホポのヘルスポストで診療補助を |
行っている NHC、計 9NHC(カニャンジャ地域にはマリテータ、マチレンガ、カコテの 3NHC があるため)38 名を対象に 3 日間の巡回診療補佐技能補完研修を実施した。研修内容は 2017 年 7 月まで行ったモニタリング結果をもとに再指導が必要な項目に重点をおいて構成した。研修内容量が多いこと、新規の NHC メンバーが参加することを考慮し、研修期間を予定していた 2 日間から 3 日間に延長し、知識の定着を図った。研修で学んだ手法に関しては、毎月の巡回診療に当会職員が出向し、習得したことを適切に実施できているかを確認し、改善策の指導を行った。また NHC 月例会議においても、巡回診療の課題改善指導と第 1 年次に作成した巡回診療の準備・実施を記載した手順書通りに活動が実施できているか確認を行った。また、乳幼児体重計や妊婦健診用ベッド、バイク、自転車などの巡回診療用器材供与を実施した。 (ウ)NHC の組織強化を通じた住民の母子保健知識の向上 2017 年 7 月にxxxx、xxx、シカベタ、xxxの 4NHC メンバー7 名を加え、シャチボンドウェ、xxxxxの 2NHC メンバー12 名、計 19 名を対象に組織運営能力強化研修を実施した。NHC の役割、NHCグループ内における問題発生時の解決方法やリーダーの役割、チームとして目的に向かい協働するためのチーム・ビルディングの方法などを教授した。 第 3 年次以降巡回開始を予定していた新規巡回診療地について、ヘルスセンターおよびヘルスポストと協議の結果、新たにシャチボンドウェとチプワルで巡回診療を開始し、ムワマクサで NHC の育成を開始した。チプワルは既存のNHC を活用し、シャチボンドウェおよびムワマクサは両地域の長らとともに、伝統的産婆を含めた NHC メンバーそれぞれ 7 名、5 名を選出した。 また、対象巡回診療地の一つであったマホポ巡回診療地がルサカ郡保健局の管轄となり、医療従事者が常駐するようになったため巡回診療を中止した。その結果、巡回診療地はナンカンガ、チフエマ、カニャンジャ、シャチボンドウェ、ムワマクサ、チプワルの計 6 ヵ所となった。 2017 年 11 月と 12 月の両月、NHC メンバーのうち、地域内で母子保健推進の担い手としての役割を果たせる安全なお産推進グループ (Safe Motherhood Action Group:以下 SMAG)47 名を対象に、母子保健推進研修が行われた。同研修では、NHC メンバーが妊娠時の危険兆候や母乳育児、新生児の体調不良の兆候や対処法、母子保健全般にかかる知識、技能を習得した。同時に、NHC メンバーが担当地域特有の母子保健課題を把握、分析し、解決策を見出す方法も学んだ。毎月実施されている各 NHC の定例会議であげられた地域の保健課題について は適宜当会職員が助言と指導を行っている。 | |
(3)達成された成果 | (ア)ヘルスポスト建設およびヘルスヘンター産科棟の設備強化を通 じた施設分娩の促進 ○ヘルスセンター出産待機所 2017 年 10 月に出産待機所の建設を完了し、必要備品を整備した。 2018 年 2 月から利用を開始している。遠隔地に住む妊産婦と家族が出産予定日前に来院し、安心して分娩日まで待機できる環境を整備した。 ○ヘルスポストスタッフ用宿舎 2017 年 11 月にスタッフ用宿舎が竣工し、必要備品を整備した。2018年 1 月に 1 名、同年 2 月より 1 名の看護師がxxxxxxにそれぞれ着任し、ヘルスポスト常駐の医療従事者は計 3 名となった。スタッフ用宿舎稼働前の 2017 年 1 月から同年 12 月までの 5 歳未満児健診、産後健診、産前健診、家族計画、施設分娩数の総受診数の月平均は 209 件、スタッフ用宿舎稼働後の 2018 年 1 月から同年 3 月までの同月平均 |
は 340 件となり、受診者数は増加した。 2017 年 1 月のヘルスポスト稼働開始から 2018 年 3 月末までの外来 受診者数は 3,529 名、産前健診受診者数 343 名、産後健診受診者数 168 名、5 歳未満児健診者数 2,041 名、施設分娩数 70 件となっている。 ○医療器材供与 母子保健専門家による医療器材モニタリングの後、ザンビア共和国の母子保健ガイドラインに基づき、ヘルスセンターとヘルスポストともに不足していた追加医療器材を供与した。供与した新生児用アンビューバッグやマニュアル型吸引機、縫合セットなどは新生児の呼吸停止や産後の母親の会陰裂傷などのリスクに対応できる基盤を整え、テントはプライバシーが守られる環境での健診が可能となるなど健診環境を整備した。 施設分娩件数においては2015 年56 件だったところ、2016 年110 件、 2017 年には 208 件となり、著しく変化があった。 (イ)巡回診療活動強化を通じた母子診察サービスの改善 合計38 名のNHC メンバーを対象に巡回診療補佐技能補完研修を開催し、ヘルスセンターおよびヘルスポスト職員が巡回診療時の手順、記録方法の技術を指導した。研修の成果として、NHC メンバーが適切な乳幼児体重測定や 5 歳未満児および産前産後健診時などに必要な記録のとり方を習得し、巡回診療時の補佐技能の範囲が広がり、医療従事者が診療に充てられる時間が増加した。 現在巡回診療において、各診療地平均 10 名の NHC メンバーが巡回診療を補助している。NHC メンバーが自ら、事前に巡回診療開催日を掲示して住民に周知したり巡回診療当日の役割分担を決めたり、巡回診療時に健診を受ける場所を特定するなどして、効率よく実施することを心掛け、検診の待ち時間短縮につながった。 各地域における長の協力や NHC 活動活発化、新規メンバー参加に伴い、NHC メンバーの人数が増加した。2018 年 3 月末現在、メンバーは 14NHC160 名となった。研修後しばらくして、仕事が見つかったり家庭の事情でやむを得ず活動を休止したりするメンバーがいたが、精力的に活動しているメンバーが以前のメンバーに継続的に声をかけることにより、再び活動するメンバーも現れた。 また、巡回診療用に妊婦健診用ベッドや診療用テーブルや椅子などの必要な器材をカフエ郡保健局に供与したことにより、巡回診療に訪れた住民がより整備された環境で診療を受けられるようになった。 2017 年 3 月から 2018 年 3 月までの間に、6 ヵ所の巡回診療地にて産前健診受診者数は 425 名、産後健診受診者数は 72 名、5 歳未満児健診を受診した子どもの数は 6,384 名となり、事業開始時に比べ、第 2 年次の月平均受診者数は 58.72%増加した。また、避妊薬処方など家族計画を受診した女性の数も 1,033 名にのぼった。NHC や医療従事者による巡回診療地や家庭訪問時を通じた日々の啓発活動が一因となっていると考えられる。 (ウ)NHC の組織強化を通じた住民の母子保健知識の向上 組織運営能力強化研修を 6NHC(シャチボンドウェ、ムワマクサ、xxxx、xxx、xxxx、xxx)のメンバー19 名を対象に実施したことで、NHC メンバーが自主的に保健課題を定例会で挙げ、問題解決に地域全体を巻き込んで取り組む姿勢が見られた。特に産前産後健診時の家族の協力姿勢と交通手段問題について、話し合いが行われるようになった。 また、第 1 年次に研修を受けたNHC メンバーから 47 名を対象に母子 保健推進研修を行い、母子保健全般にかかる知識・技能を習得した。 |
研修後は NHC の活動計画に沿って、妊産婦がいる世帯に対し家庭訪問をし、カウンセリングや産前産後健診の啓発活動を行い、巡回診療時には母子保健問題に関するヘルストークを展開している。 NHC は第 1 年次に作成した年間活動計画をもとに、半年に 1 回会議を開き、振り返りを行っている。年間計画の内容は当会職員とヘルスポストスタッフ、ヘルスセンタースタッフが確認し、計画通り NHC が活動しているかフォローアップをしている。 また、母子保健推進研修を受けた NHC メンバー47 名を対象に、管轄地域での母子保健課題についての二つの課題とその解決策を打ち出すことができるか調査を行ったところ、課題と解決策をすべて答えることができた NHC メンバーは 41 名(87.23%)となり、不十分ではあるが少なくとも一つの課題、もしくは解決策を答えられた NHC メンバーは 6 名(12.77%)となった。とりわけ最終生理日や検診日を把握していないなど母子保健知識の欠如、医療機関までの移動手段の欠如や道 路の未整備などのアクセスに関することが主な課題として挙がった。 | |
(4)持続発展性 | (ア)ヘルスポスト建設およびヘルスセンター産科棟の設備強化を通 じた施設分娩の促進 第 2 年次で建設した出産待機所、スタッフ宿舎およびヘルスセンターとヘルスポストに供与した医療資器材の維持・管理についてカフエ郡保健局が行う旨譲渡に関する覚書に明記し交わした。当会職員が定期的に管理状況をヘルスポストスタッフ、ヘルスセンタースタッフとカフエ郡保健局員と共有し、随時協議をしている。今後は当会職員主導ではなくカフエ郡保健局がモニタリングをすることで持続性を高めていく。 (イ)巡回診療活動強化を通じた母子診察サービスの改善 各 NHC の月例会議において巡回診療の振り返り・反省会を行い、改善に向けて当会職員が適宜助言をしている。また、メンバー間で 5 歳未満児、産前産後健診時の記録のとり方などを教え合う様子も確認できている。供与した医療器材はカフエ郡保健局とともに当会職員が使用状況、保管状況を確認しており、今後は NHC メンバーとヘルスポストスタッフ、ヘルスセンタースタッフが主体となってモニタリングを行えるよう指導する。 (ウ)NHC の組織強化を通じた住民の母子保健知識の向上 NHC の定例会は月に一回程度継続して開催され、当会職員とヘルスポストスタッフ、ヘルスセンタースタッフが毎回出席し、NHC メンバーに対して助言を行っている。また、郡保健局が毎年開催する年間活動計画会議で当会の取組みや成果、課題を報告している。今後はカフエ郡保健局の職員が NHC の定例会をモニタリングできるよう指導する。また、地域の首長とも協力し、NHC メンバー、SMAG メンバーの増員をさらに促進するとともに、巡回診療がさらに円滑に進むよう、ヘルスポストスタッフ、ヘルスセンタースタッフとNHC メンバーの情報 共有を進めていく。 |
3.事業管理体制、その他 | |
(1)特記事項 | 特記事項なし。 |
完了報告書記載日:2018 年 6 月 8 日団体代表者名: 理事x x(志邨) xxx(印)
【添付書類】
① 事業内容、事業の成果に関する写真
② 参考:巡回診療地、オールドカブウェザ・ヘルスポストおよびチサンカ―ネ・ヘルスセンター受診者数
③ 参考:指標に関するデータ
④ 日本NGO連携無償資金収支表(様式4-a)
⑤ 日本NGO連携無償資金使用明細書(様式4-b)
⑥ 人件費実績表(様式4-c)
⑦ 一般管理費等支出集計表(様式4-d)
⑧ 外部監査報告書
⑨ 銀行通帳の出入金記録の写し