海外法務・ニューズレター(米国)Vol.28 2018 年 10 月
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2018 年 10 月 |
1 事案の概要
本件では、労働者と使用者との間の雇用契約おいて、労使間で生じた一切の紛争ついて、クラスアクション(class action)訴訟や、xx労働基準法(Fair
Labor Standard Act , FLSA)上のコレクティブアクション
(collective action)(以下「集団訴訟」といいます。) よって争うことを禁じ、個人単位で仲裁手続を利用して争うことを求める条項(以下「本件仲裁合意」といいます。)が含まれていました。
しかし、労働者は、使用者が厚生労働基準法及び関連する州法違反して支払うべき賃金を支払っていない等と主張して、集団訴訟基づいて裁判所訴えを提起したことから、雇用契約含まれる本件仲裁合意の有効性が争われました。
2 本判決の内容
最高裁判所は、労使間の雇用契約の中含まれる上記のような本件仲裁合意は、労働者の団結する権利を認める全国労働関係法(National Labor Relations Act, NLRA)
違反するものではなく、連邦仲裁法(Federal
Arbitration Act, FAA) 基づき有効である(すなわち、連邦仲裁法上は、法律上根拠がある場合は、契約含まれる仲裁合意が無効となると規定されていますが、雇用契約含まれる本件仲裁合意ついては、全国労働関係法違反するものではなく、連邦仲裁法上仲裁合意を無効とする根拠該当しない)と判示しました。
本判決が出るまでは、雇用契約含まれる本件仲裁合意の有効性ついて、全国労働関係調整法基づいて保護される労働者の権利を侵害するものであるという考えもあり、下級審や労働関係局(National Labor Relations Board) おいて判断が分かれていました。しかし、最高裁判所よる本判決より、この争点関して、本件仲裁合意が有効であるとの判断が出されました。今後
は、本判決基づいて、使用者が本件仲裁合意を雇用契約入れる傾向が一層強まると考えられます。
雇用契約書 含まれる個別仲裁合意 関するアメリカ合衆国最高裁判所判決
アメリカ合衆国最高裁判所(以下「最高裁判所」といいます。)は、2018 年 5 月 21 日 、エピックシステムズ対ルイス事件(Epic Systems Corp. v, Xxxxx) おいて、雇用契約書含まれる個別仲裁合意条項 関して、重要な判決を下しました。米国で従業員を雇用する日系企業
とっても重要な判決となりますので、以下のご説明を踏まえ、このような仲裁合意を積極的 活用することを検討いただければと思います。
3 米国おけるクラスアクション及びコレクティブアクションついて
まず、米国おける集団訴訟ついて説明します。
(1)クラスアクション
米国おけるクラスアクションは、一定の共通点を有する一定範囲の人々(クラス)を代表して、一人又は数名の者がクラスの全員のため原告又は被告として訴訟を行う訴訟形態を言います。クラスアクションを提起するためは、クラスの代表者が、裁判所より、認証を受ける必要があり、クラス属する人々対してクラスアクションが提起されたことが通知さ れ、オプトアウトの機会が与えられます。クラス属する人が、クラスアクションからオプトアウトしない場合、クラスアクション訴訟おいて下された裁判所の判決は、勝訴敗訴かかわらず、クラス属するする人々全員対して効力を生じることなります(オプトアウト方式)。日本は現在このような訴訟形態は存在しません。
(2)コレクティブアクション
また、米国のxx労働基準法上のコレクティブアクションは、労働者が同様の状況ある労働者よる集団として提起するものであるが、前述のクラスアク ション訴訟とは異なり、コレクティブアクションを提起するは、対象となる個々の労働者の書面よる同意が必要となります(オプトイン方式)。
雇用・労働関係おいて集団訴訟は、賃金関する州法ないし連邦法違反、職場おける差別、不適切な労働環境、職場おいてハラスメントが広く行われていた場合など、多数の労働者の利益を代表して提起されることが多いといえます。
(写真)ワシントン D.C. あるアメリカの合衆国最高裁判所の建物(撮影:弁護士xx)
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4 集団訴訟を提起されることよる使用者側生じるデメリット
このような集団的な訴訟を提起された場合、使用者側
とっては以下のようなデメリットがあるといえます。
➀(集団的であることのデメリット)クラス属する人の数が多い場合、クラスアクションでの判決は、原則としてクラス属する人々全員対して拘束力を有することなるので、特使用者が敗訴した場合、影響が大きく、また、個々人の損害自体は少ない場合であっても、使用者はこれらをトータルして多額の損害賠償を支払わされることなる。
➁(訴訟を利用するデメリット)陪審員制度が利用されるため判決の見通しが立てづらい。訴訟手続おいて ディスカバリー(証拠開示手続)が利用されるため、負担が大きい。訴訟が長期化し、弁護士費用等のコストも増大する。
以上のよう、使用者としては、通常できる限り労働者からの集団訴訟の提起を避けたいと考える傾向あります。
5 雇用契約書おいて個別仲裁合意を盛り込むことの使用者側のメリット
そこで、使用者が雇用契約書おいて本件仲裁合意を
定め、労働者集団訴訟ではなく、個人単位でかつ仲裁
を利用した紛争解決を利用しようとされてきました。以上のような個別仲裁が行われることであくまで個別的紛争が問題となり、紛争の影響が他の従業員との関係も波及する可能性が低くなります。また、仲裁では米国の訴訟手続の中で採用されているディスカバリーよる証拠開示を行わないということを当事者が選択でき、この場合より限定された証拠基づいて判断が行われること なります。さら、仲裁判断ついては基本的上訴を行うことができないため、訴訟が提起された場合よりも、全体として手続が早期終了する可能性が高いと いったメリットを享受することができます。
6 まとめ
上記のようアメリカ合衆国最高裁判所の判決よ り、本件仲裁合意の有効性が確認されました。米国で雇用を行う日系企業は、上記判決を踏まえて、雇用契約書 仲裁合意を積極的活用することを検討されるべきといえます。
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【監修者】 xxx・xxxxxx パートナー 外国法事務弁護士・弁護士(IL 州) | 【執筆者】 xx xx パートナー 弁護士(日本・NY 州・CA 州) |
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