Contract
平成18年10月19日
目 次
◇ 労働者 1
◇ 労働条件設定システム 2
◇ 労働契約 7
◇ 監督機関 10
◇ 賃金 11
◇ 労働時間、休憩、休日、休暇 13
◇ 解雇 14
◇ 懲戒 20
◇ 服務 22
◇ 労働組合 23
◇ 争議行為 24
◇ 労働委員会 25
労働者
労働基準法(昭和22年法律第49号)(以下「労基法」という)が適用される労働者とは、
①職業の種類を問わず、
②事業又は事務所に使用され、
産業別雇用者
③賃金を支払われる者をいう。(労基法第9条)
産業 | 雇用者数 | |||||||
産業別分類 | 農 | 業 ・ | 林 | 業 | ・ 漁 | 業 | 450,000 人 | |
鉱 | 業 | 30,000 人 | ||||||
建 | 設 | 業 | 4,430,000 人 | |||||
製 | 造 | 業 | 10,910,000 人 | |||||
電 気 ・ ガ ス ・ 熱 供 給 ・ 水 道 業 | 320,000 人 | |||||||
情 | 報 | 通 | 信 | 業 | 1,750,000 人 | |||
運 | 輸 | 業 | 3,060,000 人 | |||||
卸 | 売 | ・ | 小 | 売 | 業 | 9,760,000 人 | ||
x | x | ・ | 保 | 険 | 業 | 1,520,000 人 | ||
不 | 動 | 産 | 業 | 690,000 人 | ||||
飲 | 食 店 | ・ | 宿 泊 | 業 | 2,660,000 人 | |||
医 | 療 | ・ | x | x | 5,440,000 人 | |||
教 | 育 ・ | 学 | 習 | 支 援 | 業 | 2,540,000 人 | ||
複 | 合 サ | ー | ビ ス | 業 | 780,000 人 | |||
サ | ー | ビ | ス | 業 | 7,900,000 人 | |||
公 | 務 | 2,100,000 人 | ||||||
総 | 計 | 54,790,000 人 |
※ 総務省統計局「労働力調査 平成 18 年版 8 月分」をもとに作成。「雇用者」には、役員等の数値を含む。
※ 「サービス業」「公務」は、「他に分類されないもの」の数値となっている。また、総計は「分類不能」の数値を含む。
- 1 -
各労働条件設定システムの関係
(出典:厚生労働省「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」資料)
労働協約
就業規則
個別合意
(労働契約に係る)
※ 個別合意で定める労働条件が就業規則の基準を上回る場合の効力の問題は解釈・判例上は未解決。
○ 根拠条文:労働基準法93条 ○ 行政解釈 ○ 判例:秋北バス事件(最大判昭43.12.25)
就業規則で定める基準に達しない なし 「定型的に定められた就業規則は、……合理的な労労働条件を定める労働契約は、その 働条件を定めているものであるかぎり、……労働者は部分については無効とする。 ……当然にその適用を受けるものというべきである。」
※ 就業規則による労働条件の不利益変更で争われた事案は、事業場の統一的な労働条件に係る事案のみ。
就業規則の片面的拘束力
労働協約の両面的拘束力
労働協約の両面的拘束力?
※ 就業規則で定める労働条件が労働協約の基準を上回る場合の効力の問題は、解釈・判例上は未解決。
○ 根拠条文:労働組合法第16条
労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。
○ 行政解釈:昭32.1.14発労第1号
労働協約に定める労働条件が最低条件であると解される場合は別であるが、しからざる限り、労働協約の基 準を上廻る労働契約は、その部分において無効である。
○ 判例:朝日火災海上保険事件(xx・本訴)(最一小判平9.3.27)
「本件労働協約は、上告人の定年及び退職金算定方法を不利益に変更するものであり……これにより上告 人が受ける不利益は決して小さなものではないが……同協約に定められた基準の全体としての合理性に照ら せば、……その規範的効力を否定すべき理由はない。
○ 根拠条文:労働基準法第92条
就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。
○ 行政解釈なし
○ 判例:日本トラック事件(名古屋高判昭60.11.27)
「労働条件の基準が、就業規則と労働協約との間で食違う場合は、個々の労働者の労働条件は有利な方の基準に従って決定されるべきである」旨の主張につき、「労働条件に関し、就業規則と労働協約が競合する場合は、労働協約が就業規則に優先するとの取扱いをしてきたものであること」等を理由として否定したものである。
<労働協約の拡張適用>
○ 根拠条文:労働組合法第17条
一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の四分の三以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至つたときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする。
○ 行政解釈:昭29.7.20労発第209号
当該工業事業場に使用される他の同種の労働者は、別に労働組合を組織していると否とに拘らず、また他の労働協約の適用を受けていると否とを問わず、当然に当該労働協約の適用を受ける。
○ 判例:朝日火災海上保険事件 最三小判平8.3.26
未組織の同種の労働者の労働条件が一部有利なものであることの故に、労働協約の規範的効力がこれに及ばないとするのは相当でない。
※ なお、少数組合に対する拡張適用に関する最高裁判例はない。
現行の労働条件設定システムの概要
1 総論
「現行労働法においては、個別的労働関係は、当事者の合意によって内容を定められる契約関係として構成され、この契約関係を法律の諸規定と判例の諸ルールが規制し、また、労働協約と就業規則が規範的効力によって規律する、という構造になっている。」
(xxxx 労働法第6版)
2 法令
(1) 労働基準法や最低賃金法においては、法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約の部分は無効とし、無効となった部分については、法で定める基準によることとされ(労働基準法第13条、最低賃金法第5条)、労働契約に対する強行的、直律的な効力が定められている。
(2) 男女雇用機会均等法や高年齢者雇用安定法には、上記(1)のような直律的効力を定めた規定はないが、強行的な効力はあり、法の規定に反した労働契約は無効となる。
(3) なお、労働契約には民法の雇傭の規定が適用されうるほか、個別の労働者と使用者の合意に関して、「合意の内容を探求したり、合意が存在しない場合にそれを補充したり、著しく不合理な合意を抑制したりするうえで、一般法たる民法の規定と理論が用いられる。」(xxxx 労働法第6版)
3 判例法理(労働契約法理)
(1) 法令によって直接規律されていない労働関係の諸側面については、裁判例の積重ねや最高裁判例によって判例上の多数のルールが設定されている。
「これら判例法理は、労働関係上の諸問題の解決を一般法たる民法の契約理論にそのまま委ねないで、労働者の利益を考慮した独特の契約法理を樹立したもので、労働契約法理と総称できる。」(xxxx 労働法第6版)
(2) 「これらのなかには、男女平等取扱い法理、解雇権濫用法理、懲戒権濫用法理などのように強行法規的性格を有するものもあれば、採用内定、試用などに関する判例法理のように任意法規的性格を有するものもある。」(xxxx 労働法第6版)
4 労働協約
(1) 「労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによつてその効力を生ずる。」
(労働組合法第14条)
(2) 労働協約については、
① 労働協約に定める基準に違反する労働契約の部分は無効とし、無効となった部分については、労働協約で定める基準によること(労働組合法第16条)(規範的効力)
② 労働協約は、一定の要件に該当する場合、組合員以外の同種の労働者に関しても
適用されること(労働組合法第17条、第18条)(一般的拘束力)が定められている。
(3) また、労働協約で定める基準を上回る労働契約については、「労働協約に定める労働条件が最低基準であると解される場合は別であるが、しからざる限り、労働協約の基準を上廻る労働契約は、その部分において無効である」(昭和 32 年 1 月 14 日発労第 1 号)としている。
5 就業規則
(1) 「『就業規則』とは、労働者の就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について定めた規則類の総称である。」(厚生労働省労働基準局編 増補版労働基準法 下)
(2) 就業規則については、
① 就業規則は、法令又は労働協約に反してはならないこと(労働基準法第92条)
② 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とし、無効となった部分については、就業規則で定める基準によること(労働基準法第93条)(強行的、直律的な効力)
が定められている。
(3) また、判例法理において、
① 就業規則の性質については、「当該就業規則の規定の内容が合理的なものである限り、それが具体的労働契約の内容をなす」(電電公社帯広局事件 昭和 61 年 3 月 13 日最高裁第xx法廷判決、日立製作所武蔵工場事件 平成 3 年 11 月 28 日第xx法廷判決)
② 就業規則の不利益変更については「新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないと解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないと解すべき」(秋北バス事件 昭和 43 年 12 月 25 日最高裁大法廷判決)
と判示されている。
6 当事者の合意
「労働関係は、以上の規範に反しないかぎり、契約関係という基本的構成どおりに、当事者たる労働者と使用者間の合意によって内容を定められる。」(xxxx 労働法第6版)
また、労働契約は継続的な契約関係であるから、「労働協約、就業規則がいかに詳細に労働契約(労働関係)の内容を定めていても、労働関係の相当部分は後日にその都度労働者と使用者の合意や使用者の指揮命令などによって具体化されざるをえない性質をもつ。」(同) (出典:厚生労働省「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」資料)
第1章 x x
(目 的) 第1条
(適用範囲) 第2条
(規則の遵守)第3条
第2章 採用及び異動等
(採用手続き) 第4条
就業規則(東京労働局 就業規則作成例)
(技能・資格手当) 第30条 (皆勤手当) 第31条 (割増賃金) 第32条 (休暇等の賃金) 第33条 (欠勤等の扱い) 第34条
(賃金の計算期間及び支払日) 第35条
(採用時の提出書類) 第5条
(採用期間) 第6条
(労働条件の明示) 第7条
(人事異動) 第8条
(休職) 第9条
第3章 服務規律
(服務) 第10条
(遵守事項) 第11条
(セクシュアルハラスメントの禁止) 第12条
(出退勤) 第13条
(遅刻、早退、欠勤等) 第14条
第4章 労働時間、休憩及び休日
(労働時間及び休憩時間) 第15条
(休日) 第16条
(時間外及び休日労働等) 第17条
第5章 休暇等
(年次有給休暇) 第18条
(産前産後の休業等) 第19条
(母性健康管理のための休暇等) 第20条
(育児休業等) 第21条
(介護休業等) 第22条
(育児時間等) 第23条
(慶弔休暇) 第24条
第6章 賃 金
(基本給) 第26条
(家族手当) 第27条
(通勤手当) 第28条
(役付手当) 第29条
(賃金の支払いと控除) 第36条 (非常時払い) 第37条 (昇給) 第38条
(賞与) 第39条
第7章 定年、退職及び解雇
(定年等) 第40条
(退職) 第41条
(解雇) 第42条
第8章 退職金
(退職金の支給) 第43条
(退職金の額) 第44条
(退職金の支払方法及び支払時期) 第45条
第9章 安全衛生及び災害補償
(遵守義務) 第46条
(非常災害等の措置) 第47条
(衛生に関する心得) 第48条
(健康診断) 第49条
(安全衛生教育) 第50条
(就業禁止等) 第51条
(災害補償) 第52条
第 10 章 教育訓練
(教育訓練) 第53条
第 11 章 表彰及び懲戒
(表彰) 第54条
(懲戒の種類) 第55条
(懲戒の事由) 第56条附則
この規則は、平成○年○月○日から施行する。
労働協約の締結事項
(調査時点:2004年10月)
図表2-6:労働協約の締結事項(複数回答、%)<問4-④付問>
75.9
62.9
76.0
52.7
92.2
62.5
56.4
49.4
16.6
0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0
労働組合員の範囲安全衛生関係
賃金関係
配置転換・出向・転籍
労働時間関係福利厚生関係
解雇・人員整理関係紛争解決ルール
その他
労働組合のある企業のうち「労働協約あり」としている企業を対象に集計(n=847)
(出典:労働政策研究・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」)
○ 労働契約は、個人間の契約であるから、その内容については、労使の個別的な交渉によって定められる。
○ 現実には、労務提供の条件と報酬の内容をはじめとして、労働契約上の権利・義務は、法律、就業規則あるいは労働協約によって設定される仕組み。
○ 労基法は、その内容に一定の制約を課している。
※参照:xx x訷、xx xxx 著「労働法(第9版)」
労働契約
1.労基法違反の労働契約(労基法第13条)
労基法に定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となり、労基法に定める基準が適用される。
2.契約期間(労基法第14条)
① 期間の定めのない労働契約 労働者はいつでも解約できる。
② 有期労働契約の期間の上限
⑴ 原則として契約期間の上限は3年
⑵ 以下に該当する場合は、契約期間の上限を5年とすることが可能
・専門的な知識、技術又は経験(以下「専門的知識等」という。)であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約
・満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約
⑶ 一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約はその期間
③ 有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(告示)
有期労働契約満了時の労使間の紛争を防止するため、契約締結時の明示事項等を定める。
3.労働条件の明示(労基法第15条)
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金・労働時間その他の労働 条件(※)を明示しなければならない。明示された労働条件が事実と相違する場合は、労働者は即時に契約を解除することができる。
※(参考)労働基準法施行規則(昭和22年労働省令第23号)(抄)
第五条 使用者が法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。ただし、第四号の二から第十一号までに掲げる事項については、使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでない。
一 労働契約の期間に関する事項
一の二 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
二 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
三 賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
四 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
四の二 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
五 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
六 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項七 安全及び衛生に関する事項
八 職業訓練に関する事項
九 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項十 表彰及び制裁に関する事項
十一 休職に関する事項
2・3 (略)
採用等:就業規則の条文例
採 用
○就業規則(東京労働局 就業規則作成例)
(採用手続き)
第4条 会社は、就職希望者のうちから選考して、従業員を採用する。
(参考: xxxx「労働法」第7版補正版)
x x・・・
○ 企業組織における管理監督権限や指揮命令権限の上下関係における役職の上昇を意味する場合と、役職をも含めた企業内の職務遂行上の地位(職位)の上昇を意味する場合とがある。
○ 昇進人事は基本的には企業の裁量的判断(人事権)を尊重するべきことがらであり、法が介入するのは、昇進人事における一定事由による差別のみ。
○ 昇格は、個々の労働者の当該役職ないし職位に必要な能力・適正を十分に考慮して行う
降 格・・・
○ 人事権による役職・職位の降格
○ 職能資格の引き下げ措置としての降格
監督機関
1.労働基準監督署
労働基準監督署は、都道府県労働局の所掌事務のうち、次に掲げる事務を分掌する。
・ 労働契約、賃金の支払、最低賃金、労働時間、休息、災害補償その他の労働条件に関すること。
・ 労働能率の増進に関すること。
・ 労働基準監督官が司法警察員として行う職務に関すること。
・ 政府が管掌する労働者災害補償保険事業に関すること。
・ 労働者の保護に関すること。 等
(厚生労働省組織規則(平成13年厚生労働省令第1号)第790条)
2.労働基準監督官の権限等
○ 労働基準主管局、都道府県労働局及び労働基準監督署に労働基準監督官を置くほか、必要な職員を置くことができる。(労基法第97条)
○ 労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。
(労基法第101条)
○ 憲法27条2項は、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と規定。これは、賃金その他の勤労条件(労働条件)を法律で定めてしまうという趣旨ではなく、その最低基準を法律で定め、それ以上の条件は労使の交渉、とくに団体交渉に委ねるというもの。
○ 賃金額の決定については、その最低額が最低賃金法によって設定されるが、原則として、労働契約あるいは労働協約による労使間の自主的決定に委ね、それに基づいて労働者が受取るべき賃金がより確実に支給されることを保障しようとするもの。
※参照:xx x訷、xx xxx 著「労働法(第9版)」
賃 金
1.賃金の支払い(労基法第24条)賃金は、原則として
①通貨で
②直接労働者に
③全額を
④毎月1回以上
⑤一定の期日を定めて 支払わなければならない。
2.休業手当(労基法第26条)
使用者側の責に帰すべき事由による休業の場合は、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の6割以上の手当を支払わなければならない。
3.最低賃金(労基法第28条)
賃金の最低基準に関しては、最低賃金法(昭和34年法律第137号)の定めるところによる。
賃金:就業規則の条文例
○就業規則(東京労働局 就業規則作成例)
(賃金の構成)
第 25 条 賃金の構成は、次のとおりとする。
賃 金
(昇給)
基本給手 当
割増賃金
家族手当通勤手当役付手当
技能・資格手当皆勤手当
時間外労働割増賃金休日労働割増賃金 深夜労働割増賃金
第 38 条 1 昇給は、毎年○月○日をもって、基本給について行うものとする。
ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合には、この限りではない。
2 昇給額は、従業員の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する。
労働時間、休憩、休日、休暇
1.労働時間(労基法第32条)
原則として、使用者は労働者に、休憩時間を除き
①1週間について40時間
②1日について8時間
を超えて、労働させてはならない。
2.時間外及び休日の労働(労基法第36条)
「三六協定」
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、当該組合がない場合には労働者の過半数を代表する者との書 面による協定を締結し、これを所轄の労働基準監督署長に届け出た場合、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
3.年次有給休暇(労基法第39条)
・ 使用者は、その雇い入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し、その全労働日 の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
※ 労基法は、他に休憩、休日等について規定。
○ 解雇とは、労働契約を将来に向かって解約する使用者側の一方的意思表示。
○ 使用者の解雇権は、現在では法令・労働協約・就業規則等による種々の制約が課されている。
※参照:xx x訷、xx xxx 著「労働法(第9版)」
厚生労働省労働基準局編「労働基準法 下」
解 雇
1.解雇権濫用法理の明記(労基法第18条の2)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。
2.解雇制限(労基法第19条)
使用者は、労働者が業務上の負傷又は疾病の療養のために休業する期間及びその後の30日間並びに産前産後の女性が法第65条の規定により休業する期間及びその後の30日間は、原則として解雇してはならない。
3.解雇の予告(労基法第20条)
使用者は、原則として労働者を解雇しようとする場合は、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。
4.退職時等の証明(労基法第22条)
イ.労働者が、退職の場合において使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金、退職の事由等について証明書を請求した場合には、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
ロ.労働者が、解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、解雇の理由について証明書を請求した場合には、使用者は遅滞なくこれを交付しなければならない。
※ 最近の裁判例では、整理解雇の有効、無効につき、(1)その必要性が存在したかどうか、
(2)使用者が整理解雇を回避するための経営努力を行ったかどうか、(3)整理解雇基準がxx・合理的なものかどうか、(4)実施にあたって労働者・労働組合と誠実に協議をしたかどうか、などの判断基準を設け、これらの点から整理解雇の有効性をチェックしていこうとするものが圧倒的に多くなっている。
※参照:xxx訷、xxxxx 著「労働法(第9版)」
解雇:就業規則の条文例
○就業規則(東京労働局 就業規則作成例)
(解 雇)
第42条 1 従業員が次のいずれかに該当するときは、解雇することができる。
(1)勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等、就業に適さないと認められたとき
(2)勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、従業員としての職責を果たし得ないと認められたとき
(3)業務上の負傷又は疾病による療養の開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病が治らない場合であって、従業員が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき(会社が打ち切り補償を支払ったときを含む。)
(4)精神又は身体の障害については、適正な雇用管理を行い、雇用の継続に配慮してもなおその障害により業務に耐えられないと認められたとき
(5)試用期間中又は試用期間満了時までに従業員として不適格であると認められたとき
(6)第51条に定める懲戒解雇事由に該当する事案があると認められたとき
(7)事業の運営上のやむを得ない事情又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事情により、事業の継続が困難となったとき
(8)事業の運営上のやむを得ない事情又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事情により、事業の縮小・転換又は部門の閉鎖等を行う必要が生じ、他の職務に転換させることが困難なとき
(9)その他前各号に準ずるやむを得ない事情があったとき
労働関係の終了に関する判例・裁判例
1 解雇
(1) 解雇権の濫用の判断に係る基本的な判例
○ 日本食塩製造事件(昭和50年 最高裁第二小法廷判決)
使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になるとした。
○ 高知放送事件(昭和52年 最高裁第二小法廷判決)
寝過ごしによる2度の放送事故を起こした労働者に対する解雇について、悪意や故意によるものではなく、平素の勤務成績も別段悪くないこと等から、本件解雇を解雇権の濫用として無効とした原審の判断を認容した。
(2) 整理解雇
○ 東洋酸素事件(昭和54年 東京高裁判決)
整理解雇について、人員削減の必要性、人員削減の手段として整理解雇を選択することの必要性、解雇対象の選定の妥当性、解雇手続の妥当性が必要であるとした上で、これらの事情を認め解雇を有効とした。
○ xxx保育園事件(昭和58年 最高裁第xx法廷判決)
希望退職者募集などの措置をとることなくなした解雇は、労使間のxxに反し権利の濫用として無効となるとした原審の判断を認容した。
○ ナショナル・ウエストミンスター銀行(三次仮処分)事件(平成12年 東京地裁決定) いわゆる整理解雇の4要件は、解雇権濫用の判断の際の考慮要素を類型化したもので
あって、各々の要件が存在しなければ法律効果が発生しないという意味での法律要件ではなく、解雇権濫用の判断は、事案ごとの個別具体的な事情を総合考慮して行うほかないとした。
○ 三xx女子高校事件(平成12年 山口地裁決定)
整理解雇が有効となるためには、人員削減の必要性、解雇回避努力、解雇対象の選定基準の客観性・合理性、労働組合・労働者との誠意ある協議の各要件を、全ていずれも充足することが必要であるとした。
○ 労働大学(本訴)事件(平成14年 東京地裁判決)
解雇が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認できないときは、解雇は権利の濫用として無効になると解すべきであり、これは、使用者において人員削減の必要性があったかどうか、解雇を回避するための努力を尽くしたかどうか、解雇対象者の選定が妥当であったかどうか、解雇手続が相当であったかどうか等の観点から具体的事情を検討し、これらを総合考慮して判断するのが相当とした。
(3) 懲戒解雇
○ 日本経済新聞社事件(昭和45年 東京地裁判決)
使用者が懲戒解雇事由に当たるとした事実が、懲戒解雇事由に当たると評価し得ない場合でも、直ちに雇用関係消滅の効果が生じないと断定することなく、通常解雇としての効力が生じないかどうかを検討する必要があるとした。
○ 国鉄中国支社事件(昭和49年 最高裁第xx法廷判決)
職場外でされた職務遂行に関係のない行為であっても、企業秩序の維持確保のために規制の対象とすることが許される場合はあり、公務xxxの警察官に暴行を加えたことを理由とする本件免職処分が、裁量の範囲を超えた違法なものとすることはできないとした。
○ フジ興産事件(平成15年 最高裁第二小法廷判決)
使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則に懲戒の種別及び事由を定めておくことを要するとした。
(4) 解雇に関する手続ア 解雇の予告
○ xx服装事件(昭和35年 最高裁第二小法廷判決)
労働基準法20条所定の予告期間をおかず、または予告手当の支払をしないで解雇の通知をした場合、即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇を固執する趣旨でない限り、通知後30日を経過するか予告手当の支払をしたときから解雇の効力を生ずるものとした。
○ プラス資材事件(昭和51年 東京地裁判決)
解雇予告手当を支払わずに解雇の意思表示をした使用者は、解雇通知後30日を経過したこと等により雇用契約が終了した時点において、労働者に対し解雇予告手当を支払うべき公法上の義務を負うとした。
○ セキレイ事件(平成4年 東京地裁判決)
使用者が解雇予告手当を支払うことなく即時解雇の意思表示をし、労働者が雇用関係の即時終了を容認し解雇予告手当の支払を求めている場合には、労働者の意思表示によって雇用関係は即時に終了し、使用者は労働者に対して解雇予告手当を支払うべき義務が生じるとした。
○ xx労基署長(出雲商会)事件(平成14年 東京地裁判決)
解雇の効力は行政官庁による解雇予告除外認定の有無、内容に関わりないとした。
イ その他の解雇に関する手続
○ 大阪フィルハーモニー交響楽団事件(xxx年 大阪地裁判決)
会社と労働組合との間に、組合員の解雇に関して労使の協議等を規定する協定があるにもかかわらず、協議が整わないままなされた解雇について、解雇事由が解雇に相当す
る強度の背信性を持つ等の特段の事情も認められないことから、違法、無効であるとした。
○ 社会福祉法人さくら事件(平成14年 神戸地裁姫路支部判決)
解雇前日の段階では労働者に反省を促すつもりであったのであれば、事情聴取や口頭注意等の善後策を講じるべきであり、これらの措置を何ら講じることなく 翌日直ちに解雇を決断したという会社側の対応は理解し難く、解雇事由について合理性ないし相当な理由があるとは認められないとした。
(5) その他
ア 就業規則所定の解雇事由
○ 東芝xx工場事件(昭和49年 最高裁第xx法廷判決)
就業規則に解雇事由が明示されている場合には、解雇は就業規則の適用として行われるものであり、その効力も解雇事由の存否のいかんによって決せらるべきであるとした。
○ 大阪フィルハーモニー交響楽団事件(xxx年 大阪地裁判決)(再掲)
就業規則に列挙された解雇事由は、例示的なものと解するのが相当であるとした。
○ 茨木消費者クラブ事件(平成5年 大阪地裁決定)
会社の就業規則の規定は普通解雇事由を限定的に列挙したものと認められ、このように使用者が就業規則において普通解雇事由を限定的に列挙して規定している場合に は、普通解雇事由に該当する事実がなければ解雇しない趣旨に使用者自ら解雇権を制限したものと解するのが相当であるとした。
以 上
(出典:厚生労働省「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」資料)
民間企業におけるxx従業員の解雇(懲戒解雇除く)の状況
(調査時点:2004年10月)
図表5-14:xx従業員の解雇の有無(単一回答、%)
<問11-②>
0% 20% 40% 60% 80% 100%
計
50人未満
50~99人
100~299人
300~999人
1000人以上
労働組合あり労働組合なし
20.2
20.2
21.1
19.1
21.2
21.6
12.3
21.1
77.6
77.6
76.7
79.5
76.9
76.3
84.5
77.0
2.1
2.2
2.2
1.3
1.9
2.1
3.3
2.0
ある ない 無回答
n=2765
図表5-15:解雇の理由(複数回答、%) <問11-②―3>
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0
24.4
17.1
24.3
28.2
2.3
49.2
5.9
本人の非行頻繁な無断欠勤職場規律の紊乱
仕事に必要な能力の欠如
休職期間の満了経営上の理由
その他
ここ5年間において、xx従業員を解雇したことが「ある」と回答した企業を対象に集計 (n=529)
図表5-16:解雇理由(「普通解雇」と「整理解雇」の別、複数回答、%)<問
11-②-3>
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0
56.6
49.2
54.8
53.3
59.2
37.5
64.5
26.7
75.5
32.9
87.3
19.2
規模計
50人未満
50~99人
100~299人
300~999人
1000人以上
「普通解雇」 「整理解雇」
ここ5年間において、xx従業員を解雇したことが「ある」と回答した企業(n=529)を対象に、「普通解雇」を行った企業(「本人の非行」「頻繁な無断欠勤」「職場規律の紊乱」「仕事に必要な能力の欠如」「休職期間の満了」のいずれかを選択した企業)と「整理解雇」を行った企業(「経営上の理由」を選択した企業)にわけて集計(「普通解雇」を行った企業n=362、「整理解雇」を行った企業n=165)。
(出典:労働政策研究・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」)
○ わが国の多くの企業は就業規則で懲戒制度。従業員が就業規則所定の懲戒事由(業務命令違反、企業の名誉毀損等)に該当する行為を行った場合には、その行為に相当する処分(懲戒処分)が科される。
○ 労基法は、制裁の種類および程度に関する事項を、就業規則の相対的必要記載事項とし、また、就業規則で減給を定める場合の制限を規定。
※参照:xx x訷、xx xxx 著「労働法(第9版)」
懲 戒
懲戒:就業規則の条文例
○就業規則(東京労働局 就業規則作成例)
(懲戒の種類)
第55条 懲戒は、その情状に応じ、次の区分により行う。
① けん責 始末書を提出させて将来を戒める。
② 減 給 始末書を提出させて減給する。ただし、減給は1回の額が平均賃金の1日分の5割を超えることなく、また、総額が1賃金支払い期間における賃金の1割を超えることはない。
③ 出勤停止 始末書を提出させるほか、原則として○日間を限度として出勤を停止し、その間の賃金は支給しない。
④ 懲戒解雇 即時に解雇する。
(懲戒の事由)
第56条 1 従業員が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。
① 正当な理由なく無断欠勤○日以上に及ぶとき
② 正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退するなど勤務を怠ったとき
③ 過失により会社に損害を与えたとき
④ xx不良で会社内の秩序又は風紀を乱したとき
⑤ 第11条及び第12条に違反したとき
⑥ その他この規則に違反し、又は前各号に準ずる不都合な行為があったとき
2 従業員が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。この場合において、行政官庁の認定を受けたときは、労働基準法第20条に規定する予告手当は支給しない。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第42条に定める普通解雇又は減給若しくは出勤停止とすることがある。
(1) 重要な経歴を詐称して雇用されたとき
(2) 正当な理由なく、無断欠勤○日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき
(3) 正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、○回にわたって注意を受けても改めなかったとき
(4) 正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき
(5) 故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき
(6) 会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき(当該行為が軽微な違反である場合を除く。)
(7) xx不良で著しく会社内の秩序又は風紀を乱したとき
(8) 数回にわたり懲戒を受けたにもかかわらず、なお、勤務態度等に関し、改善の見込みがないと認められたとき
(9) 相手方の望まない性的言動により、円滑な職務遂行を妨げたり、職場の環境を悪化させ、又はその性的言動に対する相手方の対応によって、一定の不利益を与えるような行為を行ったとき
(10) 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用したとき
(11) 職務上の地位を利用して私利を図り、又は取引先等より不当な金品を受け、若しくは求め、又は供応を受けたとき
(12) 私生活上の非違行為や会社に対する誹謗中傷等によって会社の名誉信用を傷つけ、業務に重大な悪影響を及ぼすような行為があったとき
(13) 会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え、又は業務の正常な運営を阻害したとき
(14) その他前各号に準ずる程度の不適切な行為があったとき
3 第2項の規定による従業員の懲戒解雇に際し、当該従業員から請求のあった場合は、懲戒解雇の理由を記載した証明書を交付する。
○ 使用者は、就業規則に労働者が従うべき服務規程を定めることが多い。
服 務
○就業規則(東京労働局 就業規則作成例)
(服 務)
第10条 従業員は、職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行するとともに、会社の指示命令に従い、職場の秩序の維持に努めなければならない。
(遵守事項)
第11条 従業員は、次の事項を守らなければならない。
① 勤務中は職務に専念し、みだりに勤務の場所を離れないこと
② 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用しないこと
③ 会社の金品を使用に供し、他より不当に金品を借用し、又は職務に関連し て自己の利益を図り、若しくは贈与を受けるなど不正な行為を行わないこと
④ 酒気をおびて就業するなど、従業員としてふさわしくない行為をしないこと
⑤ 会社、取引先等の機密を漏らさないこと
⑥ 許可なく他の会社等の業務に従事しないこと
⑦ その他会社の内外を問わず、会社の名誉又は信用を傷つける行為をしないこと
(セクシュアルハラスメントの禁止)
第12条 相手方の望まない性的言動により、他の従業員に不利益を与えたり、就業環境を害すると判断される行動等を行ってはならない。
(出退勤)
第13条 従業員は、出退勤に当たっては、出退勤時刻をタイムカードに自ら記録しなければならない。
労働組合
1.労働組合とは(労働組合法(昭和24年法律第174号)(以下「労組法」という。)第
2条)
労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合体をいう。
※「労働者」:労働組合法が適用される労働者とは
①職業の種類を問わず、
②賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう。
(労組法第3条)
2.労働組合の取扱(労組法第5条)
労働組合は、労働委員会に証拠を提出して労組法に定める規定に適合する労働組合であることを立証しなければ、この法律に規定する手続きに参与する資格を有せず、かつ、この法律に規定する救済を与えられない。ただし、このことは、労組法第7条第1号の規定に基づく個々の労働者に対する保護を否定する趣旨に解釈されるべきではない。
3.不当労働行為(労組法第7条)
労働組合法は、使用者が、労働組合や労働者に対して行う以下に掲げる行為を、
「不当労働行為」として禁止した。
イ 労働組合員であること等を理由とする解雇その他の不利益扱いロ 正当な理由のない団体交渉の拒否
ハ 労働組合の運営等に対する支配介入及び経費援助ニ 労働委員会への申立て等を理由とする不利益扱い
争議行為
1.争議行為(労働関係調整法(昭和21年法律第25号)(以下「労xx」という。) 第7条)
○ 同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行う行為及びこれに対抗する行為であって、業務の正常な運営を阻害するものをいう。
2.争議行為の制限等
労xx
○ 工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又はこれを妨げる行為は、争議行為としてでもこれをなすことはできない。(第36条)
○ 公益事業に関する事件につき関係当事者が争議行為をするには、その争議行為をしようとする日の少なくとも10日前までに、労働委員会及び厚生労働大臣又は都道府県知事にその旨を通知しなければならない。(第37条)
○ 緊急調整の決定をなした旨の公表があったときは、関係当事者は、公表の日から50日間は、争議行為をなすことができない。(第38条)
法律第171号)
電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律(昭和28年
○ 電気事業の事業主又は電気事業に従事する者は、争議行為として、電気の正常な供給を停止する行為その他電気の正常な供給に直接に障害を生ぜしめる行為をしてはならない。(第2条)
○ 石炭鉱業の事業主又は石炭鉱業に従事する者は、争議行為として、鉱山保安法(昭和24年法律第70号)に規定する保安の業務の正常な運営を停廃する行為であつて、鉱山における人に対する危害、鉱物資源の滅失若しくは重大な損壊、鉱山の重要な施設の荒廃又は鉱害を生ずるものをしてはならない。(第3条)
労働委員会
1.労働委員会とは(労組法第19条)
・ 労働委員会は、使用者委員・労働者委員・公益委員各同数の3者構造からなる。
・ 労働委員会には中央労働委員会、船員中央労働委員会、都道府県労働委員会、船員地方労働委員会がある。
2.労働委員会の主な事務(労組法第20条)
① 不当労働行為事件の審査(調査、審問、命令)
② 労働争議の調整手続き(あっせん、調停、仲裁)
3.不当労働行為事件審査の流れ(下図)
緊急命令
申立て
確定判決
緊急命令
最高裁
高裁
地裁
命令確定
命令
審問
調査
再審査申立て
地裁提訴
命令
審問
調査
救済申立て
命令確定
行政訴訟(命令取消訴訟)
中央労働委員会(再審査)
都道府県労働委員会(初審)
4.労働争議の調整手続
①斡旋(労xx第2章)
労働委員会の会長が指名する斡旋員が関係当事者間をとりもって、双方の主張の要点を確かめ、事件が解決されるように努める手続。
②調停(労xx第3章)
労働委員会に設けられる調停委員会が関係当事者から意見を徴して調停案を作成し、その受諾を両当事者に勧告するという手続。
③仲裁(労xx第4章)
労働委員会に設けられる仲裁委員会が、両当事者に対し拘束力のある仲裁裁定を下す手続。
④緊急調整(労xx第4章の2)
内閣総理大臣は、事件が公益事業に関するものであるため、またはその規模が大きいため、もしくは特別の性質の事業に関するものであるため、争議行為により当該業務が停止されるときは、国民経済の運行を著しく阻害し、または国民の日常生活を著しく危うくするおそれがあると認められる事件について、そのおそれが現実に存するときにかぎり、緊急調整の決定をすることができる。内閣総理大臣は、この決定をしようとするときは、あらかじめ中央労働委員会(又は船員中央労働委員会)の意見を聴かなければならないとされている。