H25.4 H26.4 H27.4 H28.4 H29.4 H30.4 H31.4
Ⅶ 有期労働契約、パートタイム、派遣労働
1 有期労働契約
■契約期間の上限
有期労働契約の契約期間の上限は原則3年です。
ただし、次の3つの特例があります。①、②の1回の契約期間の上限は5年とされており、③の場合は、その契約期限までです。
① 専門知識等(専門的な知識、技術又は経験)で高度のものを有する労働者との労働契約(博士の学位を有する者、公認会計士、医師、弁護士、社会保険労務士等、厚生労働大臣が定める基準に該当する資格、専門知識等を有する者)
② 満60歳以上の労働者との労働契約
③ 一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約(例:有期の建設工事等)
■有期労働契約の解除
有期労働契約では、やむを得ない理由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間において、労働契約を解除することができません。
ただし、1回の契約期間が1年を超える有期労働契約を締結した労働者は、上記の3つの特例を除き、契約の初日から1年を経過した日以後において、使用者に申し出ることによっていつでも退職することができます。
■無期労働契約への転換(無期転換ルール)
同一の使用者との間で、有期労働契約が通算で5年を超えて(※特例あり。次ページ参照)反復更新された場合は、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換します。
《無期転換ルールの考え方》
【例:平成25年4月から、1年間の有期労働契約を更新し続けている場合】
H25.4
(2013.4)
H26.4 H27.4 H28.4
H29.4
H30.4
(2018.4)
H31.4
5年
無期転換申込権発生
1年
1年
1年
1年
1年 1年
無期労働契約
締 更 更 更 更
結 x x x x
更 申 x
x 込 換
①申込み
平成25年4月1日以後に開始した有期労働契約の通算契約期間が5年を超える場合、通算して5年を超えることになる契約の初日から末日までの間に、無期転換の申込みをすることができます。なお、書面により意思表示を行い、記録を残すことが後々のトラブル防止につながります。
②転換
無期転換の申込みをすると、使用者が申込みを承諾したものとみなされ、無期労働契約がその時点で成立します。無期に転換されるのは、申込み時の有期労働契約が終了する翌日からです。
③無期労働契約
無期労働契約の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)は、別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と同一となります。
④更新
無期転換を申し込まないことを契約更新の条件とするなど、あらかじめ労働者に無期転換申込権を放棄させることはできません。
⑤空白期間(クーリング期間)
有期労働契約とその次の有期労働契約の間に、契約がない期間が6か月以上あるときは、その空白期間より前の有期労働契約の契約期間は通算契約期間に算入されません。これをクーリングといいます。
■無期転換ルールの例外
①高度専門職の特例(有期雇用特別措置法)※
5年を超える一定の期間内に完了する業務に従事する、高収入かつ高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者は、その業務に従事する期間には無期転換申込権が発生しません(上限 10 年)。
②継続雇用の高齢者の特例(有期雇用特別措置法)※
定年(60歳以上のものに限る)に達した後引き続いて同じ事業主に雇用される有期雇用労働者は、定年後引き続いて雇用されている期間には、無期転換申込権が発生しません。
③大学等及び研究開発法人の研究者、教員等の特例(科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律、任期法)
無期転換申込権が発生するまでの期間は10年です。
※ ①②いずれの場合も事業主は雇用管理に関する計画を国の労働局長に提出し認定を受けなければなりません。
■雇止め
有期労働契約を使用者が更新しないことを雇止めと言います。下記のいずれかに該当する場合、使用者が雇止めをすることが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めが認められません。
① 過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの
② 労働者において、有期労働契約満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することに合理的理由があると認められるもの
■有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準
有期労働契約をめぐるトラブルを防止するため、国では以下の基準を設けています。
①雇止めの予告
使用者は、以下のいずれかに該当する有期労働契約(あらかじめ当該契約を更新しない旨が明示されているものを除く)を更新しない場合には、少なくとも契約の期間が満了する日の30 日前までに、その予告をしなければなりません。
・ 有期労働契約が3回以上更新されている
・ 1年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、最初に労働契約を締結してから継続して通算1年を超える場合
・ 1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合
②雇止めの理由の明示
使用者は、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。また、雇止めの後に労働者から請求された場合も同様です。
なお、明示すべき「雇止めの理由」は、契約期間の満了とは別の理由が必要です。
③契約期間についての配慮
使用者は、契約を1回以上更新し、かつ、1年を超えて継続して雇用している有期契約労働者との契約を更新しようとする場合は、契約の実態及びその労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければなりません。
■同一労働同一賃金(中小企業は令和3年4月~)
同じ企業で働く正社員と有期雇用労働者との間で、基本給や賞与、手当などあらゆる待遇(賃金・教育訓練、福利厚生施設の利用を含む)について、不合理な差を設けることが禁止されています。
事業主は、両者の働き方の違いに応じて、均衡な待遇(不合理な待遇差の禁止)と均等な待遇(差別的取扱いの禁止)の確保を図るための措置を講じる義務があります。
また、待遇の違いやその理由などについて労働者から説明を求められた場合は説明しなければなりません。説明を求めたことを理由とした解雇等の不利益な取扱いは禁じられています。
・均衡待遇(不合理な待遇差の禁止)
事業主は、次の3つの違いに応じた範囲内で、労働者の待遇を決定する必要があります。
① 職務内容(業務の内容及び責任の程度)
② 職務内容・配置変更の範囲
③ その他の事情
・均等待遇(差別的取扱いの禁止)
事業主は、次の2つが同じ場合、労働者の待遇について同じ取扱いをする必要があります。
① 職務内容(業務の内容及び責任の程度)
② 職務内容・配置変更の範囲
※単に「有期雇用だから」、「将来の役割期待が異なるから」という主観的、抽象的理由では待遇の違いの説明にはなりません。
■同一労働同一賃金ガイドライン
(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)
厚生労働省は、xx雇用労働者と非xx雇用労働者との間で待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差が不合理なものでないのか、原則となる考え方や具体例を示しています。
例1)基本給
労働者の「①能力又は経験に応じて」、「②業績又は成果に応じて」、
「③勤続年数に応じて」支給する場合は、それぞれの趣旨・性格に照らして実態に違いがなければ同一の、違いがあれば違いに応じた支給をしなければなりません。
例2)昇給
労働者の勤続による能力向上に応じて行うものは、同一の能力向上には同一の、違いがあれば違いに応じた支給をしなければなりません。例3)賞与
会社の業績への貢献に応じて支給するものは、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給をしなければなりません。
例4)各種手当等
役職に対して支給する役職手当、同一の支給要件を満たす場合の単身赴任手当・地域手当・特殊勤務手当、業務内容が同一の場合の精皆勤手当、xx雇用労働者と同一の時間外、休日、深夜労働を行った場合に支給する割増率、通勤手当、出張旅費等については、同一の支給をしなければなりません。
例5)家族手当、住宅手当
家族手当、住宅手当等はガイドラインには示されていませんが、均衡・均等待遇の対象となっており、各社の労使で個別具体の事情に応じて議論していくことが望まれます。
※ ガイドラインの詳細については、 https://xxx.xxxx.xx.xx/xxx/xxxxxxxxxxxxxx/xxxxx/xxxx000000.Xxxx
をご覧ください。
■紛争が生じたときの解決方法(中小企業は令和3年4月~)
紛争が生じた場合は、紛争解決援助制度や紛争調整委員会による調停を利用した解決方法があります。詳しくは、46ページを参照してください。
なお、待遇差が不合理か否かや、説明の方法、内容が適切であるか否かは、最終的には司法の判断となります。
◆主な関係条文:労働基準法第14条、同法附則第137条、
労働契約法第17条第1項、第18~第20条、有期雇用特別措置法第4条、第6条、第8条
科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律第15条の2
大学の教員等の任期に関する法律(任期法)第7条
パートタイム・有期雇用労働法第8~第10条、第12条、第14~第15条、第 18条、第47条
2 パートタイム労働者
■パートタイム労働者とは
「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下「パートタイム・有期雇用労働法」)に定める「短時間労働者」とは、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者
(※)の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」のことをいいます。
したがって、一般に「パートタイマー」と呼ばれている労働者以外に、「アルバイト」、「嘱託社員」、「臨時社員」、「契約社員」などの呼び方をされている労働者でも、上記の条件に当てはまる労働者であれば、パートタイム・有期雇用労働法でいう「短時間労働者」となり、この冊子では、「パートタイム労働者」と表記しています。
※通常の労働者とは
「通常の労働者」とは、同種の業務に従事する、いわゆるxx型の労働者を言い、xx型がいない場合は、フルタイムの基幹的な働き方をしている労働者を言います。どちらもいない場合は、事業所における週の所定労働時間が最長の労働者を言います。
■パートタイム労働者と法律
パートタイム労働者には、通常の労働者と同様に、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、男女雇用機会均等法などの労働者を保護するための法令が適用され、その権利は保護されます。
※ 育児休業、介護休業及び労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険
については、各項目を参照してください。
例1)時間外労働と割増賃金
1日8時間を超えて働いた場合や深夜(午後10時から午前5時まで)労働をした場合は、通常の賃金の25%以上、休日に働いた場合は35
%以上の割増賃金が支払われます。
例2)年次有給休暇
6か月連続勤務して、所定労働日の8割以上勤務した場合は、年次有給休暇として所定休日以外に自分の希望する日に休むことができ、その分の賃金が支払われます。
なお、休暇日数は、所定労働日数で異なります(41ページ参照)。
■パートタイム労働者の労働条件の明示義務
○労働条件に関する書面の交付及び労働条件等の説明義務
事業主は、パートタイム労働者を雇い入れたとき(労働契約の更新時も含む)は、労働基準法で定められた労働条件の書面での明示のほかに、パートタイム・有期雇用労働法で定められた4つの事項について文書の交付など(パートタイム労働者が希望した場合は電子メールやファックスでも可)により、速やかに明示することが義務づけられています。
(労働基準法で事業主が書面で明示すべき事項)
① 労働契約の期間※1
② 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項※2
③ 就業場所、従事する業務
④ 始業及び終業時刻、休憩時間、休日、休暇
⑤ 所定労働時間を超える労働の有無及び交替制勤務の場合の就業時転換に関すること
⑥ 賃金の決定、計算、支払の方法、賃金の締切、支払日
⑦ 退職に関すること(解雇の事由を含む)
※1 期間の定めがある場合はその期間、期間の定めのない場合はその旨を明示しなければなりません。
※2 有期労働契約の更新をしないことが明らかな場合は、更新の基準の明示義務はありません。
(パートタイム・有期雇用労働法で事業主が書面で明示すべき事項)
① 昇給の有無※1
② 退職手当の有無
③ 賞与の有無
④ 相談窓口※2
※1 「昇給」とは、一つの契約期間の中での賃金の増額をいいます。
※2 「相談窓口」とは、パートタイム・有期雇用労働法第16条の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口をいいます。
■パートタイム労働者の就業規則の作成の手続
事業主は、通常の労働者の就業規則の中にパートタイム労働者に関する特則を設けたり、パートタイム労働者だけに適用する就業規則を作成・変更する場合は、パートタイム労働者の過半数を代表すると認められる者の意見を聴くように努めなければなりません。
■同一労働同一賃金
同じ企業で働く正社員とパートタイム労働者との間で、基本給や賞与、手当などあらゆる待遇(賃金・教育訓練、福利厚生施設の利用を含む)について、不合理な差を設けることが禁止されています。
事業主は、両者の働き方の違いに応じて、「均衡な待遇(不合理な待遇差の禁止)」と「均等な待遇(差別的取扱いの禁止)」の確保を図るための措置を講じなければなりませんし、待遇の違いやその理由などについて労働者から説明を求められた場合、説明しなければなりません。
また、説明を求めたことを理由として解雇等の不利益な取扱いをしてはなりません。
・均衡待遇(不合理な待遇差の禁止)
事業主は、次の3つの違いに応じた範囲内で、労働者の待遇を決定する必要があります。
① 職務内容(業務の内容及び責任の程度)
② 職務内容・配置変更の範囲
③ その他の事情
・均等待遇(差別的取扱いの禁止)
事業主は、次の2つが同じ場合、労働者の待遇について同じ取扱いをする必要があります。
① 職務内容(業務の内容及び責任の程度)
② 職務内容・配置変更の範囲
※単に「パートタイムだから」、「将来の役割期待が異なるから」という主観的、抽象的理由では待遇の違いの説明にはなりません。
★★同一労働同一賃金ガイドライン(63ページ参照)
■紛争が生じたときの解決方法
紛争が生じた場合は、紛争解決援助制度や紛争調整委員会による調停を利用した解決方法があります。詳しくは、46ページを参照してください。
なお、待遇差が不合理か否かや、説明の方法、内容が適切であるか否かは、最終的には司法の判断となります。
■パートタイム労働者の通常の労働者への転換の推進
事業主は通常の労働者への転換を推進するために、次のいずれかの措置を講じなければなりません。
① 通常の労働者を募集する場合、その内容を既に雇っているパートタイム労働者に周知すること
② 通常の労働者の配置を社内公募する場合、既に雇っているパートタイム労働者にも応募する機会を与えること
③ パートタイム労働者が通常の労働者へ転換するための試験制度を設けるなど、転換制度を導入すること
■パートタイム労働者に対する、待遇に関する説明義務
事業主はパートタイム労働者を雇い入れたとき(労働契約の更新時を含む)は、実施する雇用管理の改善措置の内容を説明することが義務づけられています。
また、事業主はその雇用するパートタイム労働者から求められたときは、待遇の決定に当たって考慮した事項を説明することが義務づけられています。
《説明義務が課せられる事項》
【雇入れ時(法第14条第1項)】 ・待遇の差別的取扱いの禁止 ・賃金の決定方法 ・教育訓練の実施 ・福利厚生施設の利用 ・通常の労働者への転換を推進するための措置 | 【説明を求められたとき(法第14条第2項)】 ・労働条件の文書交付等 ・就業規則の作成手続 ・待遇の差別的取扱いの禁止 ・賃金の決定方法 ・教育訓練の実施 ・福利厚生施設の利用 ・通常の労働者への転換を推進するための措置 |
■パートタイム労働者の解雇
事業主は、パートタイム労働者だからという理由だけで、解雇することはできません。
パートタイム労働者が解雇されるときにも、「会社が倒産した」、「勤務態度が非常に悪い」、「職務上の不正行為があった」などの客観的に合理的な理由もなく、社会通念上相当と認められない場合は、解雇権の濫用として解雇は無効となります(98ページ参照)。
パートタイム労働指針では、「パートタイム労働者が、親族の葬儀等のために勤務しなかったことを理由として解雇等が行われることは適当ではない」とされています。
◆主な関係条文:労働基準法第15条、第37条、第39条、同法施行規則第5条労働契約法第16条
パートタイム・有期雇用労働法第2条、6~16条、第18~19条、第22~第26条、第47条
■パートタイム労働者の収入と税、社会保険
パートタイム労働者本人の年収が100万円を超えると、税金や社会保険の扶養認定、配偶者(主たる収入を得ている)の所得税が変わります。
パート収入 | パート労働者 | 主たる収入を得る配偶者の控除 | |||
所得税 ※1 | 住民税 ※1 | 社会保険扶養認定 ※2 | 配偶者控除 | 配偶者特別控除 | |
100万円以下 | 非課税 | 非課税 | 可 | 可 ※4 | 不可 |
100万円超 103万円以下 | 課税 | ||||
103万円超 106万円未満 | 課税 | 不可 | 可 ※4 | ||
106万円以上130万円未満 | ※3 | ||||
130万円以上150万円以下 | 不可 | ||||
150万円超 201万円未満 | |||||
201万円以上 | 不可 |
※1 所得税・住民税は前年の収入をもとに判断します。なお、住民税の課税・非課税の判断基準は、市町村によって異なる場合があります。
※2 社会保険の扶養認定は、認定日以降の年間見込み収入額(非課税交通費を含みます。)により判定されます。
※3 以下の要件をすべて満たす場合は、扶養から外れ、社会保険に加入することになります。
(1) 週の所定労働時間が 20 時間以上
(2) 賃金の月額が 88,000 円以上
▲賃金の中に賞与、残業代、通勤手当などは含めません。
(3) 雇用期間の見込みが1年以上
(4) 学生でないこと(夜間、通信、定時制の学生は除く。)
(5) 以下のいずれかの事業所で働いていること
① 被保険者数が 501 人以上の法人・個人の事業所
② 被保険者数が 500 人以下で、労使合意に基づき申出をする法人・個人の事業所、国・地方公共団体に属する事業所
※4 配偶者の収入に応じ、控除額は変動します。
3 派遣労働
■派遣労働とは
労働者が労働契約を結んだ派遣会社(派遣元)から別の会社(派遣先)に派遣され、派遣先の指揮命令を受けて働くことをいいます。
派遣元 | 派遣先 | |
労働者を雇用する派遣会社
労働者
指揮命令関係
雇用関係
労働者派遣契約
労働者が実際に働く会社
派遣に似ている就業形態として、請負、業務委託、出向等があります。 契約の際は、派遣、請負、業務委託、出向等のどれに該当するのか、十
分に確認してください。
■労働者派遣事業の許可
労働者派遣事業を営むためには労働者派遣事業の許可が必要です。
■派遣の禁止・制限
○派遣の対象外の業務
・ 港湾運送業務、建設業務、警備業務、医療関係の業務(社会福祉施設等及び紹介予定派遣の場合は可)
※ 医療関係の業務とは、病院、診療所、助産所、介護老人保健施設の業務及び往診、訪問看護に関する業務です。
・ 人事労務管理業務(団体交渉又は労使協議で使用者側の直接当事者となる場合)
・ 弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士、管理建築士の業務
○日雇派遣の原則禁止
日雇派遣については、派遣会社及び派遣先において必要な雇用管理がなされず、安全衛生の確保等の労働者保護も不十分な傾向にあることから、雇用期間が30日以内の日雇派遣は原則として禁止されています。
ただし、次の①か②のいずれかにあてはまる場合だけは、例外として日雇派遣が認められます。
① 以下の業務の場合
ソフトウェア開発、機械設計、事務用機器操作、通訳・翻訳・速記、秘書、ファイリング、調査、財務処理、取引文書作成、デモンストレーション、添乗、受付・案内、研究開発、事業の実施体制の企画・立案、書籍等の制作・編集、広告デザイン、OAインストラクション、セールスエンジニアの営業、金融商品の営業
② 以下のいずれかの場合
・60歳以上の者
・雇用保険の適用を受けない学生(いわゆる「昼間学生」)
・副業として従事するもの(生業収入が500万円以上の者に限る)
・主たる生計者以外の者(世帯収入が500万円以上の者に限る)
○グループ企業派遣の8割規制
派遣先の大半が派遣会社と同一グループ内の企業である場合は、派遣会社が本来果たすべき労働力需給調整機能としての役割が果たされないことから、派遣会社はそのグループ企業への派遣割合は8割以下になるようにしなければなりません。
派遣割合=
全派遣労働者のグループ企業での総労働時間
- 定年退職者のグループ企業での総労働時間
全派遣労働者の総労働時間
○派遣先となる会社との事前面接禁止
派遣先となる会社が、派遣労働者を指名することはできません。派遣開始前に面接を行うこと、履歴書を送付させることは禁止されています。ただし、紹介予定派遣を除く(78ページ参照)。
○「離職後1年以内の人を元の勤務先に派遣すること」の禁止
派遣会社は離職して1年以内の人を元の勤務先に派遣することはで きません。また、元の勤務先が該当者を受け入れることも禁止されています。ただし、60歳以上の定年退職者は禁止対象から除外されます。
これは、本来直接雇用すべき労働者を派遣労働者に切り替え、労働条件を切り下げて使用する等の問題があるからです。
■派遣期間
○事業所単位・個人単位の期間制限
労働者派遣契約に基づく労働者派遣には、全ての業務で派遣先事業所単位の期間制限と派遣労働者単位の期間制限が適用されます。
・ 派遣先事業所単位の期間制限
派遣先の同一の事業所に対し派遣できる期間(派遣可能期間)は、原則3年が限度です。
派遣先が3年を超えて派遣を受け入れようとする場合は、派遣先 の事業所の過半数労働組合など (過半数労働組合が存在しない 場合は事業所の過半数を代表する者)の意見を聴く必要があります。
・ 派遣労働者の個人単位の期間制限
同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位
(いわゆる「課」などを想定)に対し派遣できる期間は、3年が限度です。
組織単位が変われば、引き続き、同一の派遣労働者を同一事業所に派遣することは可能です。
※以下の人や業務は、例外として期間制限の対象外となります。
・派遣会社に無期雇用されている派遣労働者
・60歳以上の派遣労働者
・有期プロジェクト業務(事業の開始、転換、拡大、縮小または廃止のための業務であって一定期間内に完了するもの)
・日数限定業務(1か月間の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ月10日以下であるもの)
・産前産後休業、育児休業・介護休業などを取得する労働者の業務
■労働条件について
派遣労働者も、男女雇用機会均等法などの労働関係法令が適用されます。年次有給休暇の付与は派遣元事業主に責務があります。
また、社会保険や雇用保険などについても、資格があれば適切な加入が必要です。
■同一労働同一賃金
派遣労働者の就業場所は派遣先であり、派遣先労働者との均衡(=不合理な待遇差を禁止すること)、均等(=差別的な取扱いをしないこと)が重要です。しかし、同種の業務であっても、派遣先が変わるごとに賃金水準が変わると、結果として、派遣労働者個人のキャリアアップと不整合な事態を招くこともあり得ます。
このような事情を考慮し、派遣元事業主には、以下のいずれか1つを選択し、派遣労働者の待遇を決定することが義務化されています。
①派遣先の通常の労働者との均等・均衡を図る方式
基本給、賞与、手当、福利厚生、教育訓練、安全管理等、全ての待遇について、派遣先の通常の労働者との間に不合理な待遇差がないように待遇を決定する方式。
②派遣元の労使協定に基づき待遇を決定する方式
派遣元において、労働者の過半数で組織する労働組合(又は労働者の過半数代表者)と一定の要件を満たす労使協定を締結し、これに基づき待遇を決定する方式(比較対象労働者や判断基準は表のとおり)。
比較対象労働者 | 判断基準 | |
賃 金 | 就業地域の同種業務に従事する同程度の能力・経験を有する一般労働者 | ・一般労働者の平均額と同等以上であること ・能力や意欲等の向上に 応じた昇給等があること |
賃金以外 | ・派遣元が実施するもの 派遣元の通常労働者(派遣労働者を除く) | 不合理な待遇差がないこと |
・派遣先が実施するもの(*) 派遣先の通常労働者 |
(*) 業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練、給食施設・休憩室・更衣室などの福利厚生施設の利用など。
※ 派遣先は、派遣元に対し、派遣先の通常労働者の待遇等に関する情報をあらかじめ提供しなければなりません。また、派遣元が上記①
②を遵守できるよう、派遣先が派遣料金について配慮するよう規定されています。
■派遣労働者に対する待遇に関する説明
労働者派遣法では、派遣労働者に対する待遇に関する説明義務が強化されています。派遣元は、労働者を雇入れ時、派遣時の2つの時点で労働条件に関する事項を明示するとともに、不合理な待遇差を解消するために講じる措置を説明することが求められています。
〇雇入れ時
・ 労働契約の期間、有期労働契約の更新基準
・ 就業の場所及び従事すべき業務
・ 就業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、休職等
・ 賃金、昇給(有無を含む)、退職、退職手当(有無を含む)
・ 臨時に支払われる賃金、賞与(有無を含む)等
・ 労働者が負担する食費、作業用品等
・ 安全及び衛生、災害補償及び業務外の傷病扶助、苦情処理
・ 職業訓練、表彰及び制裁
・ 労使協定の対象となる派遣労働者であるか否か
(対象の場合、労使協定の有効期間の終期)
〇派遣時
・ 労働者派遣をしようとする旨、労働者派遣期間、派遣就業日
・ 派遣労働者の指揮命令者
・ 賃金の決定等に関する事項
(退職手当及び臨時に支払われる賃金以外)
・ 就業時間、休憩時間、休暇に関する事項
・ 昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無
・ 労使協定の対象となる派遣労働者であるか否か
(対象の場合、労使協定の有効期間の終期)
・ 派遣労働者が従事する業務の内容、責任の程度(役職等)
・ 労働に従事する事業所の名称及び所在地等
・ 安全及び衛生、苦情処理
・ 派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置
・ (紹介予定派遣の場合)紹介予定派遣に関する事項
・ 派遣期間制限の抵触日 等
■派遣労働者の保護と雇用の安定
○派遣契約の締結に際して
派 遣 元 | 派 遣 先 |
当該労働者の希望及び派遣契約における派遣期間を勘案し、雇用契約の期間を当該労働者派遣契約における派遣期間と合わせる等、必要な配慮に努めること | 派遣元と協力しつつ、労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間を勘案して可能な限り派遣期間を長く定める等、必要な配慮に努めること |
○xxxx率、待遇決定方式などの情報提供・派遣料金の明示
労働者や派遣先となる事業主が良質な派遣会社を適切に選択できるよう、派遣会社のマージン率、教育訓練に関する事項、待遇決定方式
(労使協定締結の有無)などについてインターネット等による情報提供を行うことや、派遣料金等の明示が義務づけられています。
マージン率= | 派遣料金の平均額-派遣労働者の賃金の平均額 |
派遣料金の平均額 |
マージンには、社会保険料、労働保険料、福利厚生費や教育訓練費なども含まれていますので、マージン率が低いほど良いというわけではなく、その他の情報と組み合わせて総合的に評価することが重要です。
○労働条件、就業条件、派遣料金の明示
労働契約の締結時、派遣料金額の変更時などに、派遣労働者に対し、書面などにより労働条件(賃金・休日など)や派遣料金額(派遣先から派遣会社に支払われる額)の明示が必要です。
また、派遣就業前に、派遣労働者に対し、あらかじめ書面などにより就業条件(業務内容・場所など)の明示が必要です。この際、期間制限違反が労働契約申込みみなし制度の対象となることも明示しなければなりません。
○比較対象労働者との間に待遇の相違がある場合
派遣労働者は、派遣元事業主に対し、比較対象労働者との間の待遇の相違の内容と理由について説明を求めることができます。説明を求めたことを理由とした解雇その他不利益な取扱いは禁じられています。
○キャリアアップ措置
派遣会社から「段階的かつ体系的な教育訓練」や「キャリアコンサルティング(希望する場合)」 を受けることができます。
特に、期間を定めないで雇用されている派遣労働者については、長期的なキャリア形成を視野に入れた教育訓練を受けることができます。
○雇用の管理
・苦情の処理
派遣会社、派遣先は、派遣労働者からの苦情の処理体制を整備しなければなりません。
・責任者の選任、管理台帳の作成
派遣会社は、苦情の処理等を行わせるため派遣元責任者を選任し、派遣元管理台帳を作成しなければなりません。派遣先は、受入事業所ごとに、派遣先責任者を選任し、派遣先管理台帳を作成しなければなりません。
○雇用安定措置
同一の組織単位に継続して3年間派遣される見込みがある派遣労働者には、派遣終了後の雇用継続のために、派遣会社から以下の措置がとられます。(1年以上3年未満の見込みの者については、努力義務となっています。)
① 派遣先への直接雇用の依頼
② 新たな派遣先の提供(合理的なものに限る)
③ 派遣会社での(派遣労働者以外としての)無期雇用
④ その他安定した雇用の継続を図るための措置
(雇用を維持したままの教育訓練、紹介予定派遣など)
※ 派遣会社が上記①の措置を講じたが、派遣労働者の直接雇用に至らなかった場合は、派遣会社は②~④の措置をとります。
また、派遣先にも直接雇用や正社員化の推進等の雇用安定の取組が義務づけられています。
○派遣先の都合で派遣契約を解除する時に講ずべき措置
(この措置は、派遣契約の当事者(派遣元及び派遣先)は派遣契約書に明記しなければならない事項とされている。)
派 遣 元 | 派 遣 先 |
①契約期間が満了する前に、派遣労働者の責任に帰すべき事由以外の事由によって契約の解除が行われた場合には、派遣先と連携して、派遣先からその関連会社での就業のあっせんを受ける等により、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること ②契約の解除に伴って、派遣労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前に予告をしなければならない。予告をしないときは解雇予告手当を支払うこと、休業させる場合には、休業手当を支払 うこと | ①労働者派遣契約の解除は、相当の猶予期間をもって申し入れ、了承を得ること ②派遣先における新たな就業機会の確保を図ること ③②ができない場合、派遣元に対して中途解約しようとする日の少なくとも30日前に予告をするか、予告をしないときは30日分以上の賃金相当額を損害賠償として払うこと ④派遣契約の期間満了前に派遣元へ契約解除理由を明示しなければならない(派遣元から請求あったとき) |
○解雇について
派遣会社は、有期雇用契約を更新しない場合(雇止め)のルール、解雇に関するルールを守らなければなりません。
なお、派遣会社と派遣先との間の派遣契約と、労働者と派遣会社の間の契約は別の契約であり、派遣契約の解除がそのまま労働契約の解除となるわけではありません。
■労働契約申込みみなし制度
派遣先が以下の違法派遣を受け入れた場合、その時点で、派遣先が派遣労働者に対し、派遣会社と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす制度です。派遣労働者が承諾した時点で労働契約が成立します(派遣先が違法派遣に該当することを知らず、かつ、知らなかったことに過失がなかった時を除きます)。
○対象となる違法派遣
① 労働者派遣の禁止業務に従事させた場合
② 無許可の派遣会社から労働者派遣を受け入れた場合
③ 事業所単位または個人単位の期間制限に違反して労働者派遣を受け入れた場合
④ いわゆる偽装派遣の場合
○期間制限違反について
・ 事業所単位・個人単位の2つの期間制限のどちらに違反した場合も、労働契約申込みみなし制度の対象となります。
・ 平成27年9月30日以前の労働者派遣契約については、改正前の期間制限が適用されます。派遣先がその制限を超えて派遣労働者を使用しようとするときは、当該同一の派遣労働者に対し、雇用契約の申込みをしなければなりません。
■紹介予定派遣
派遣会社が派遣の開始前又は開始後に、派遣労働者と派遣先に対して職業紹介を行い、又は行うことを予定して派遣するものです。この紹介予定派遣の場合に限り、派遣先は事前面接等の派遣労働者を特定することを目的とした行為が認められています。
なお、同一派遣労働者の紹介予定派遣の期間は6か月を超えてはなりません。
■派遣元、派遣先が行わなければならない措置(本文掲載分は除く)
派 遣 元 | 派 遣 先 |
① 就業機会の確保と教育訓練の実施 ② 派遣先との連絡体制の確立による適正な派遣就業の確保 ③ 派遣労働者の個人情報の秘密保持 ④ 派遣労働者に対して、派遣期間が終了し、派遣できなくなる最初の日の明示 ⑤ 派遣先、派遣労働者に対して、派遣期間の終了及び派遣停止の事前通知 (派遣ができなくなる最初の日の一月前から前日までに通知) ⑥ 性・年齢による差別的取扱いの禁 止等 ⑦ 派遣先に対して、派遣労働者の労働保険・社会保険の被保険者資格について通知 ⑧ 期限の定めのある雇用から期限の定めのない雇用への転換推進措 置 | ① 労働者派遣契約の遵守 ② 男女雇用機会均等法、労働基準法等に定められた適正な派遣就業環境の確保 ③ 派遣労働者の直接雇用の推進 ④ 均衡待遇の確保に向けた派遣元への協力 ⑤ 性・年齢による差別的取扱いの禁止等 ⑥ 労働保険・社会保険の加入の確認(派遣される労働者の未加入理由が適正でないと判断される場合には派遣元に対して、当該派遣労働者を加入させてから派遣するよう求めること) |
■紛争の解決
紛争が生じた場合は、紛争解決援助制度や紛争調整委員会による調停を利用した解決方法があります。詳しくは、46ページをご参照ください。
◆主な関係条文:労働者派遣法第2条、第4~第5条、第23条、第23条の2、第24条の3、第26条、第29条の2、第30条~第37条、第
39条~第42条、第47条の2、第47条の5~第47条の9、同法施行令第2条、第4条
労働基準法第20条、第26条、職業安定法第3条