2)安全配慮義務 :根拠と効果に議論 cf.陸上自衛隊事件・最判
2024 年度春期 京都労働学校「労働法入門」
第 3 回「労働契約の成立と展開(配転・出向」
2024.06.04. xxxx(立命館大学)
はじめに:
1.労働契約
1)「労働契約」とは何か
1.民法上の雇用契約(民法 623 条~ 631 条)との相違
解約・解雇 告知期間 期間付与 保護規定民法 自由(627 条) 2週間(627 条) 5年(626 条)
労働法 不自由(16 条) 解雇は 30 日(20 条) 3年(14 条) 種々 2.区別の基準:労働の従属性
3.結論 民法上の契約=「合意」
労働契約 =単純な労使合意ではなく、生存権保障のための「保護」
2)「労働契約」上の権利義務
1.労働者の義務
1)労働力提供義務 :労働義務ではない
2)服従義務 :適法な業務指揮権に服する義務但し、富士重工事件 最三小判 昭 52.12.13
3)「職務専念義務」:存否に争い
xx観光(ホテルオークラ)事件 最三小判 昭 57.4.13
オリエンタルモーター事件 最二小判 平 3.2.22(否定) 2.使用者の義務
1)賃金支払義務
2)安全配慮義務 :根拠と効果に議論 cf.陸上自衛隊事件・最判
3)「労働受領義務」:存否に争い
3)労働契約関係
1.労働者概念(労基法 9 条) cf.労組法 3 条
労働基準法研究会「労働基準法の『労働者』の判断基準について」(1985 年)使用従属性=指揮監督下での労働、賃金支払
指揮監督→仕事xxx否の自由、指揮監督、拘束性、代替性。⇔人的従属 賃金支払 ⇔経済的従属
補強→事業者性(機械等の負担、報酬)、専属性
関連判例:xxx労基署事件・最一小判平成 8.11.28(傭車運転手)関西医科大学事件・最二小判平成 17.6.3 (研修生)
*多様な雇用形態→業務委託契約
x.x.xxxxイーツの配達員、xx興業のタレント
2.事実上の労働契約
関連範囲:xxPDP 事件 最二小判平成 21.12.18、大阪高判・平成 20.4.25
*違法派遣(偽装請負)の救済として認められるか
直接の賃金支払いはあり得ないので、上の要件からすると成立しない
⒉.採用
1)労働契約の成立
1.労使合意(労働契約法 16 条):「合意」解釈にあたっては、「労働」契約の特質を配慮
2.法律規定による規制
1)契約期間(14条)
2)労働条件の明示(15条)→罰則120条、契約の即時解除明示するべき事項:労働条件
明示方法:書面の交付、但し、絶対的記載事項につき就業規則交付でよい
3)封建遺制の排除(16条~18条)→「第4回講義」
3.一般条項による規制 e.g.公序良俗違反
1)思想信条を理由とした不採用 三菱樹脂事件 最大判 昭 48.12.12
2)国籍を理由とした不採用 日立製作所事件 横浜地判 昭 49.6.19
3)性別を理由とした不採用
2)採用内定と労働契約の成立
1.法的性質:解約権留保付労働契約の成立
→救済手段として、労働契約違反の損害賠償、労働者としての地位確認大日本印刷事件 最二小判 昭 54.7.20 (民間)
xxx建設局事件 最一小判 昭 57.5.27 (公務員)
*2.内々定
cf.コーセーアールイー事件 福岡地判 平 22.6.4
*3.内定中の権利義務関係
1)契約上の権利義務
2)効力の開始時期:効力始期付、就労始期付
電電公社近畿電通局事件 最二小判 昭 55.5.30
宣伝会議事件 東京地判 平 17.1.28
*4.解約事由
約定による解約事由を認めるが、合理的なもののみ
☆以下、後半☆
3.人事異動
1)労働契約内容の変更
1.合意範囲は何か=そもそも契約内容の変更といえるか否か
→合意の範囲内であれば契約変更ではなく、使用者は業務命令を発して労働者を移動させることができ、労働者がそれを拒むと業務命令違反として懲戒処分
→合意の範囲外であれば、契約変更であり、使用者が一方的に業務命令により労働 者を移動させることはできず、労働者が拒んでも懲戒処分に付されることはない。
2.変更であるとして、いかなる新たな労使合意であればよいか
2)人事異動の種別
1.配転 | 1.配転の種別 | 1)転勤(勤務地変更の配転) | 2)職種変更の配転 |
2.企業運営上の意味 | 1)能力開発/昇進 | 2)雇用調整/左遷 | |
3.労働者側の意味 | 1)能力開発、解雇回避 | 2)負担、単身赴任 | |
2.出向 | 1.出向の種別 | 1)在籍出向 | 2)移籍出向(転籍) |
2.企業運営上の意味 | 1)雇用調整 | 2)系列強化 | |
3.労働者側の意味 | 1)解雇回避 | 2)諸条件の変更 |
3)配転命令の拘束力
1.合意範囲
1.明示的合意のある場合
2.職務の性質上あるいは慣行上、合意内容が特定される場合
3.それ以外の場合が問題
2.東亜ペイント事件・最二小判 昭 61.7.14
1.使用者に包括的処分権
2.権利濫用の禁止
1)業務上の必要性がない場合
2)不当な動機・目的がある場合
3)労働者に通常甘受するべき程度を越える著しい不利益のある場合
*家庭生活への不利益、家族の合意
4)出向をめぐる権利・義務関係
1.労働者の新たな合意 *合意範囲であるはずはない。
2.出向中の法律関係
1.出向元での労務提供義務の免除
2.出向元への復帰命令 古河電気工業・原燃事件 最二小判 昭 60.4.5
*復帰命令が可能か、使用者の業務命令か