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[361 号]
2023 年 9 月 26 日
( 毎月原則 2 回発行 )
社会保険労務士法人ヒューマン・プライム
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労働契約終了のルール
『人事・労務』実務の基礎知識❽
隔回でお届けしています「『人事・労務』実務の基礎知識」シリーズですが、今号は「、 労働契約終了のルール」をテーマに、紛争が生じやすい「解雇」、「雇止め」、「退職勧奨」を取り上げ、これらの場面における留意事項について解説していきます。
1. はじめに
労働契約終了の原因には、大きく分けて「、 使用者の意思によるもの」、
「従業員の意思によるもの」「、 期間満了等あらかじめ労働契約の期限が示されているもの」があります。
労働契約の終了
使用者の意思
従業員の意思
期間満了等
合意 合意
● 普通解雇 ● 雇止め
● 整理解雇
● 懲戒解雇
● 会社都合退職
(退職勧奨等)
● 自己都合退職 ● 定年退職
● 休職期間満了
● 辞職 等
解 雇
退 職
このうち、辞職とは、労働者による一方的な意思表示によって労働契約を終了させることをいいます。原則として辞職することは自由ですが、期間の定めがない労働契約の場合、2週間の予告期間が必要です(民法 627 条)。
また、期間の定めがある労働契約の場合は「、 やむを得ない事由」が必要(民法 628 条)とされていますが、この規定は、労働者の退職を規制する目的ではないことから、心身の不調や家庭の事情など幅広い事由が認められています。
2. 解雇
解雇には、大きく分けて「普通解雇」と「懲戒解雇」の二種類があります。
普通解雇は、民法 627 条 1 項に基づく使用
者からの解約の申入れであり、懲戒解雇は、企
普通解雇
▶労働契約法 16 条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
業秩序の違反に対する使用者の懲戒権の行使であって、両者は本質的に異なるものです。
整理解雇
➊ 客観的に合理的な理由
❷ 社会的相当性
なお、「整理解雇」は、
▶経営上必要とされる人員削減のために行われる解雇
経営上必要とされる人員削減のために
※普通解雇の一種
懲戒解雇
➊ 人員削減の必要性
❷ 解雇回避努力
❸ 被解雇者の選定の妥当性
➍ 手続きの妥当性
行われる解雇の
▶企業秩序違反に対する懲戒権の行使として行われる解雇
ことで、普通解雇に含まれます。
※普通解雇とは本質的に異なるもの
➊ 就業規則の根拠
❷ 懲戒事由
❸ 相当性
● 普通解雇
普通解雇とは、主に労働者の債務不履行を理由とした解雇のことをいいます。普通解雇の事由は、通常、就業規則に列挙されており、仮に就業規則に基づき妥当と判断の上で解雇した場合でも、労働契約法 16 条の解雇権濫用法理に該当する場合、その解雇は無効になりますので、留意が必要です。
この労働契約法 16 条の
① 客観的に合理的な理由については、労働者の能力不足や適格性・協調性の欠如、勤務不良、成績不良、業務外の傷病、また、使用者の経営上の理由(いわゆる整理解雇)などによって判断されます。
② 社会的相当性については、解雇事由が客観的かつ合理的なものであったとしても、社会通念から見て労働者を企業から排除するに値するほどのものとは評価し得ない等の点が考慮され、判断されます。
また、労働契約法 17 条 1 項は「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」と規定し ており、有期労働契約における解雇(期間途中の解約)には、客観的合理性、社会的相当性に加え、期間満了 を待つことなく直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由が必要になるとされています。
● 整理解雇
使用者が、経営状況の悪化を理由に人員削減を目的に行う解雇で、いわゆる人員整理(リストラ)の一環です。整理解雇は、普通解雇と違い、労働者には何らの非もないのに一方的に解雇されてしまうわけですから、当然ながらその要件は厳しくなります。これまでの判例や学説から、整理解 雇が認められるためには、次の 4 要件(または 4 要素)を満たす必要があると考えられています。
① 人員削減の必要性があること
② 解雇を回避する努力を尽くしたこと
③ 被解雇者の人選に合理的な理由があること
(被解雇者選定の妥当性)
3. 雇止め
➃ 労働者・労働組合への説明・協議を十分におこなったこと(手続の妥当性)
有期雇用契約の雇止め(原則は期間満了とともに契約終了)
期間の定めのない雇用契約と実質的に同視される
(労働契約法 19 条1 号)
はい
いいえ
以下の事情を総合的に考慮して判断される
●その雇用が臨時的であるか常用的であるか
●契約更新の回数や雇用の通算期間
●雇用期間の管理の状況
●雇用継続の期待を持たせる会社側の言動の有無
雇用契約の更新に対して合理的な期待が認められる
(労働契約法 19 条 2 号)
はい
雇止めに、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である
(労働契約法 19 条)
いいえ
いいえ
雇止め無効
はい
雇止め有効
雇止めとは、有期雇用契約の期間満了時における使用者側からの更新拒否のことをいいます。
● 懲戒解雇
懲戒解雇は、労働者が長期にわたる無断欠勤などによって企業秩序を著しく乱したり、横領・背任等によって会社に重大な損害を与えたりした場合などに「懲戒処分」として行われる解雇であり、懲戒のなかで最も重い処分です。懲戒解雇の有効性は、普通解雇と比べても非常に厳しく判断される傾向にあり、
① 就業規則等にその根拠となる規定が存在すること
② 労働者の非違行為に懲戒事由が認められること
③ 解雇という処分が相当性を有することが要件となります。
【労働契約法 15 条】
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
有期雇用契約が期間満了する場合、契約自体は終了して いますので、原則として雇止めは使用者の自由です。しか し、更新を希望していた労働者にとっては、雇止めは雇用機会が失われるという点で、解雇に近いダメージがあります。
そのため、労働契約法 19 条 2 項で、労働者が雇用を継続する期待に合理性がある場合は、使用者の雇止めが権利濫用とされ、有期労働者の雇用を保護しています。もし、権利濫用と判断されれば、労働者から契約更新の申込みがあり、使用者は承諾したものとみなされます。
なお、この期待の合理性の判断要素として、以下の事項が総合的に考慮されます。
① その雇用が臨時的であるか常用的であるか
② 契約更新の回数や雇用の通算期間
③ 雇用期間の管理の状況
➃ 雇用継続の期待を持たせる会社側の言動の有無
4. 退職勧奨
退職勧奨
使用者から労働者への
「労働契約を任意に解消する」ことのあくまでお誘い
退職勧奨≠解雇
【留意点】
✓労働者の意思決定に不当な圧力をかけると退職強要となり、違法性を帯びてくる。
✓労働者が退職しない意思を明確に示した後も退職勧奨を行う場合は、違法となり得る。
承 諾
拒 否
お誘いに応じるかどうかは
労働者の自由な判断
会社都合退職
雇用継続
退職勧奨とは、使用者からの労働契約解約の申し入れをいいます。労働者がその申し入れに応じた場合、解雇ではなく、合意退職(会社都合退職)となります。従って、合意が成立した場合には退職の効力が生じますが、解雇権濫用法理の適用はありません。
適切に退職勧奨を行うことで、紛争リスク、退職無効リスク、レピュテーションリスクを回避しつつ、労働契約解消の結果を得ることができます。
退職勧奨は基本的に違法ではありませんが、あまりに度を超すと違法性が帯びてくるので次のような注意が必要です。
● 退職勧奨の違法性に関する判断要素
①退職勧奨の際の会社側担当者の言動の内容:退職以外に選択肢がない旨の言動をしたか、退職に応じない場合の解雇の可能性の示唆を行ったか等
②退職勧奨の態様:退職勧奨を行った時間や回数、退職勧奨を行った際の会社側の人数等
③退職者の言動:退職を拒否していたか
● 退職勧奨の法的リスクを回避するために
退職勧奨時の会社側の言動が
① 侮辱的な内容ではないか
② 退職を強制する内容になっていないか
③ 退職する以外に選択肢がないことを示すものになっていないかに注意する。
なお、労働者が退職を拒否した後も退職勧奨を継続することは、違法と判断されるリスクが高くなりますので、退職勧奨を継続するべきかを慎重に判断することが必要です。
10 月 24 日配信予定の HP 通信 363 号では「安全衛生」をテーマに取り上げる予定です。次回もお楽しみに!