ⅱ) 契約期間が31日以上の有期雇用労働者(b)の労働者派遣に限る場合 (ⅲ) (a)又は(b)の労働者派遣に限る場合
第5 労働者派遣契約
1 意義
(1) 法第26条にいう「労働者派遣契約」は、「契約の当事者の一方が、相手方に対し労働者派遣することを約する契約」であり、当事者の一方が労働者派遣を行う旨の意思表示を行いそれに対してもう一方の当事者が同意をすること又は当事者の一方が労働者派遣を受ける旨の意思表示を行いそれに対してもう一方の当事者が同意をすることにより成立する契約であり、その形式については、文書であるか否か、又有償であるか無償であるかを問うものではない。
(2) 労働者派遣に関する契約については、恒常的に取引先との間に労働者派遣をする旨の基本契約を締結し、個々具体的に労働者派遣をする場合に個別に就業条件をその内容に含む個別契約を締結するという場合があるが、この場合、法第26条の意味における労働者派遣契約とは、後者の個別契約をいうものである。
(3) 「労働者派遣契約の当事者」とは、業として行うものであるか否かを問わず、当事者の一方が労働者派遣を行い、相手方がその役務の提供を受ける場合を全て含むものであり、労働者派遣をする者及び労働者派遣の役務の提供を受ける者の全てを指すものである。
2 契約の内容等
(1) 契約内容
イ 契約事項の定め (イ) 概要
労働者派遣契約の締結に当たっては、(ハ)の事項を定めるとともに、その内容の差異に応じて派遣労働者の人数を定めなければならない(法第26条第1項、則第22条)。
(ロ) 意義
法で定める契約事項の定めは、労働者派遣を行うに当たっての必要最低限のものであり、それ以外の派遣料金、債務不履行の場合の賠償責任等の定めについては当事者の自由に委ねられる。
(ハ) 契約事項
労働者派遣契約には、次の事項を定めなければならない。
① 派遣労働者が従事する業務の内容
・ 業務の内容は、その業務に必要とされる能力、行う業務等が具体的に記述され、当該記載により当該労働者派遣に適格な派遣労働者を派遣元事業主が決定できる程度のものであることが必要であり、できる限り詳細であることが適当である。
・ 適用除外業務(第2の1参照)以外の業務に限られること。
・ 従事する業務の内容については可能な限り詳細に記載すること。
(例 環境関連機器の顧客への販売、折衝、相談及び新規顧客の開拓並びにそれらに付帯す
る業務)
・ 同一の派遣労働者が複数の業務に従事する場合については、それぞれの業務の内容について記載すること。
・ 業務の内容に令第4条第1項各号に掲げる業務が含まれるときは、日雇労働者に係る労働者派遣が可能な業務であることを労働者派遣契約当事者間で認識を共有するため、当該号番号を付すること。ただし、日雇労働者に係る労働者派遣が行われないことが明らかである場合は、この限りではない。
・ 「日雇労働者に係る労働者派遣が行われないことが明らかである場合」とは、
(i) 無期雇用労働者(a)の労働者派遣に限る場合
(ⅱ) 契約期間が31日以上の有期雇用労働者(b)の労働者派遣に限る場合 (ⅲ) (a)又は(b)の労働者派遣に限る場合
のいずれかであり、かつその旨が労働者派遣契約において明記されている場合である。
② 派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度(則第22条第1号)
・ 派遣労働者が従事する業務に伴って行使するものとして付与されている権限の範囲・程度等をいうこと。
・ チームリーダー、副リーダー等の役職を有する派遣労働者であればその具体的な役職を、役職を有さない派遣労働者であればその旨を記載することで足りるが、派遣元事業主と派遣先との間で、派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度について共通認識を持つことができるよう、より具体的に記載することが望ましい。
③ 派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事する事業所の名称及び所在地その他派遣就業の場所並びに組織単位
・ 派遣労働者が実際に派遣就業する事業所その他の施設の名称、所在地だけではなく具体的な派遣就業の場所及び組織単位(組織の名称)も含むものであり、原則として、派遣労働者の所属する部署、電話番号等必要な場合に派遣元事業主が当該派遣労働者と連絡がとれる内容であること。加えて、組織単位を特定するために必要な事項(組織の長の職名)を明記することが望ましい。
事業所等における組織単位については、課、グループ等の業務としての類似性や関連性が ある組織であり、かつ、その組織の長が業務の配分や労務管理上の指揮命令監督権限を有す るものであって、派遣先における組織の最小単位よりも一般に大きな単位を想定しているが、名称にとらわれることなく実態により判断すべきものである。ただし、小規模の事業所等に おいては、組織単位と組織の最小単位が一致する場合もあること。また、実際上の取扱いと しては、派遣先における組織が指定されることから、派遣先がこの基準に従って指定するこ とが通常であると考えられること。
・ 派遣労働者が実際に派遣就業する事業所等が、則第25条の9に掲げる「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」と一致しないこともあるため、労働者派遣契約に当該情報を併せて記
載することが望ましい。なお、「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」については、第7の5により判断する。
④ 労働者派遣の役務の提供を受ける者のために、就業中の派遣労働者を直接指揮命令する者に関する事項
・ 派遣労働者を具体的に指揮命令する者の部署、役職及び氏名である。
⑤ 労働者派遣の期間及び派遣就業をする日
・ 当該労働者派遣契約に基づき、派遣労働者が労働者派遣される期間及び派遣労働者が具体的に派遣就業をする日であり、期間については、具体的な労働者派遣の開始の年月日及び終了の年月日、就業する日については、具体的な曜日又は日を指定しているものであること。
・ 第7の5の(3)のイの①から⑥までに掲げる場合以外の労働者派遣を行うときは、事業所その他派遣就業の場所(以下「派遣先事業所等」という。)ごとの業務における派遣可能期間は3年であること。ただし、派遣可能期間の起算点は当該派遣先事業所等で最初に労働者派遣の受入れを行った日とする。なお、派遣先事業所等における組織単位ごとの業務について、派遣元事業主は3年を超える期間継続して同一の有期雇用の派遣労働者に係る労働者派遣を行うことはできない。
⑥ 派遣就業の開始及び終了の時刻並びに休憩時間
・ 派遣就業すべき日の派遣労働者の日々の始業、終業の時刻並びに休憩時間(法律上は時間数のみであるが、一般的には休憩の開始及び終了の時刻を特定して記載することが適当)である。
・ この定めの内容は、労働基準法で定める労働時間、休憩時間に関する規定に反しておらず、かつ、派遣元事業主と派遣労働者との間の労働契約の枠内でなければならない。
⑦ 安全及び衛生に関する事項
次に掲げる事項のうち、派遣労働者が派遣先において①の業務を遂行するに当たって、 当該派遣労働者の安全、衛生を確保するために必要な事項に関し就業条件を記載する必要があ る。
(i) 派遣労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関する事項
(例えば、危険有害業務に従事させる場合には、当該危険有害業務の内容、当該業務による危険又は健康障害を防止する措置の内容等)
(ⅱ) 健康診断の実施等健康管理に関する事項
(例えば、有害業務従事者に対する特別な健康診断が必要な業務に就かせる場合には、当該健康診断の実施に関する事項等)
(ⅲ) 換気、採光、照明等作業環境管理に関する事項 (ⅳ) 安全衛生教育に関する事項
(例えば、派遣元及び派遣先で実施する安全衛生教育の内容等)
(v) 免許の取得、技能講習の修了の有無等就業制限に関する事項
(例えば、就業制限業務を行わせる場合には、当該業務を行うための免許や技能講習の種類等)
(ⅵ) 安全衛生管理体制に関する事項
(ⅶ) その他派遣労働者の安全及び衛生を確保するために必要な事項
⑧ 派遣労働者から苦情の申出を受けた場合における当該申出を受けた苦情の処理に関する事項
・ 派遣元事業主及び派遣先は、派遣労働者の苦情の申出を受ける者、派遣元事業主及び派遣先において苦情処理をする方法、派遣元事業主と派遣先との連携のための体制等を記載すること(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の3(第6の27参照)及び「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の7(第7の19参照))。
・ 派遣労働者の苦情の申出を受ける者については、その者の氏名の他、部署、役職、電話番号についても記載すること。
⑨ 派遣労働者の新たな就業の機会の確保、派遣労働者に対する休業手当(労働基準法第26条の規定により使用者が支払うべき手当をいう。以下同じ。)等の支払に要する費用を確保するための当該費用の負担に関する措置その他の労働者派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項
・ 労働者派遣契約の解除に際して、派遣労働者の雇用の安定を図る観点から、当該労働者派遣契約の当事者である派遣元事業主及び派遣先が協議して次の事項等に係る必要な措置を具体的に定めること(法第29条の2、「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の2の(2)(第6の27参照)及び「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の6の(1)(第7の 19参照))。
(ⅰ) 労働者派遣契約の解除の事前の申入れ
派遣先は、専ら派遣先に起因する事由により、労働者派遣契約の契約期間が満了する前の解除を行おうとする場合には、派遣元事業主の合意を得ることはもとより、あらかじめ相当の猶予期間をもって派遣元事業主に解除の申入れを行うものとすること。
(ⅱ) 派遣先における就業機会の確保
派遣元事業主及び派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約の解除が行われた場合には、当該派遣先の関連会社での就業をあっせんする等により、当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の確保を図るものとすること。
(ⅲ) 損害賠償等に係る適切な措置
派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとし、これができないときには、少なくとも当該労働者派遣契約の解除に伴い当該派遣元事業主が当該労働者派遣に係る派遣労働者を休業させること等を余儀なくされたことにより生じた損害の賠償を行わなければならないものとすること。例えば、当該派遣元
事業主が当該派遣労働者を休業させる場合は休業手当に相当する額以上の額について、当 該派遣元事業主がやむを得ない事由により当該派遣労働者を解雇する場合は、派遣先によ る解除の申入れが相当の猶予期間をもって行われなかったことにより当該派遣元事業主が 解雇の予告をしないときは30日分以上、当該予告をした日から解雇の日までの期間が30日 に満たないときは当該解雇の日の30日前の日から当該予告の日までの日数分以上の賃金に 相当する額以上の額について、損害賠償を行わなければならないものとすること。その他 派遣先は派遣元事業主と十分に協議した上で適切な善後処理方策を講ずるものとすること。また、派遣元事業主及び派遣先の双方の責に帰すべき事由がある場合には、派遣元事業主 及び派遣先のそれぞれの責に帰すべき部分の割合についても十分に考慮するものとするこ と。
(ⅳ) 労働者派遣契約の解除の理由の明示
派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合であって、派遣元事業主から請求があったときは、労働者派遣契約の解除を行った理由を当該派遣元事業主に対し明らかにするものとすること。
⑩ 労働者派遣契約が紹介予定派遣に係るものである場合にあっては、当該職業紹介により従事すべき業務の内容及び労働条件その他の当該紹介予定派遣に関する事項
労働者派遣契約が紹介予定派遣に係るものである場合は、次に掲げる当該紹介予定派遣に関する事項を記載すること(第1の4参照)。
・ 紹介予定派遣である旨
・ 紹介予定派遣を経て派遣先が雇用する場合に予定される従事すべき業務の内容及び労働条件等
【例】
Ⅰ 労働者が従事すべき業務の内容に関する事項
Ⅱ 労働契約の期間に関する事項
Ⅲ 試みの使用期間(以下「試用期間」という。)に関する事項
※ ただし、紹介予定派遣により雇い入れた労働者について試用期間を設けることは望ましくない。
Ⅳ 就業の場所に関する事項
Ⅴ 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日に関する事項
Ⅵ 賃金の額に関する事項
Ⅶ 健康保険法による健康保険、厚生年金保険法による厚生年金、労働者災害補償保険法による労働者災害補償保険及び雇用保険法による雇用保険の適用に関する事項
Ⅷ 労働者を雇用しようとする者の氏名又は名称に関する事項
・ 紹介予定派遣を受けた派遣先が、職業紹介を受けることを希望しなかった場合又は職業紹介を受けた者を雇用しなかった場合には、派遣元事業主の求めに応じ、それぞれのその理由を、書面の交付、ファクシミリを利用してする送信、又は電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第1号に規定する電気通信をいう。以下「電子メール等」という。)の送信の方法(当該電子メール等の受信をする者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成できるものに限る。以下同じ。)により、派遣元事業主に対して明示する旨
・ 紹介予定派遣を経て派遣先が雇用する場合に、年次有給休暇及び退職金の取扱いについて、労働者派遣の期間を勤務期間に含めて算入する場合はその旨
・ 労働者を派遣労働者として雇用しようとする場合はその旨
⑪ 派遣元責任者及び派遣先責任者に関する事項(則第22条第2号)
・ 派遣元責任者及び派遣先責任者の役職、氏名及び連絡方法である。また、①(派遣労働者 が従事する業務の内容)が製造業務である場合には、当該派遣元責任者及び派遣先責任者が、それぞれ製造業務専門派遣元責任者(則第29条第3号)又は製造業務専門派遣先責任者(則 第34条第3号)である旨を記載すること。
・ 派遣先責任者の選任義務規定の適用を受けない場合(則第34条第2号ただし書)は、当該事項の記載は要しない。ただし、派遣先責任者を選任している場合には、記載を要するものである。
⑫ 労働者派遣の役務の提供を受ける者が⑤の派遣就業をする日以外の日に派遣就業をさせることができ、又は⑥の派遣就業の開始の時刻から終了の時刻までの時間を延長することができる旨の定めをした場合には、当該派遣就業をさせることができる日又は延長することができる時間数(則第22条第3号)
・ この定めをする場合には、当該定めの内容が派遣元事業主と派遣労働者との間の労働契約又は派遣元事業場における36協定により定められている内容の範囲内でなければならない。
⑬ 派遣元事業主及び派遣先との間で、派遣先が当該派遣労働者に対し、派遣先が設置及び運 営する物品販売所、病院、診療所、浴場、理髪室、保育所、図書館、講堂、娯楽室、運動場、体育館、保養施設等の施設であって現に派遣先に雇用される労働者が通常利用しているもの
(給食施設、休憩室及び更衣室を除く。)の利用、レクリエーション等に関する施設又は設備の利用、制服の貸与、教育訓練その他の派遣労働者の福祉の増進のための便宜を供与する旨の定めをした場合には、当該便宜の供与に関する事項についても記載すること(法第40条第4項、則第22条第4号、派遣先指針第2の9(1))。
なお、派遣先の給食施設、休憩室及び更衣室の利用については、法律上の労働者派遣契約の記載事項ではないが、法第40条第3項の規定に基づき利用機会を付与しなければならないものとされていることに留意すること。
⑭ 労働者派遣の役務の提供を受ける者が、労働者派遣の終了後に、当該労働者派遣に係る派遣労働者を雇用する場合に、その雇用意思を事前に労働者派遣をする者に対し示すこと、当該者が職業紹介を行うことが可能な場合は職業紹介により紹介手数料を支払うことその他の労働者派遣の終了後に労働者派遣契約の当事者間の紛争を防止するために講ずる措置(則第 22条第5号)。
なお、派遣先が派遣元事業主に紹介手数料を払うのは、派遣元事業主が職業安定法その他の法律の規定による許可を受けて、又は届出をして職業紹介を行うことができる場合において、派遣先がその職業紹介により当該派遣労働者を雇用したときに限られる。(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の2(2)ロ)。
紹介手数料のことを定める場合については、可能な限り記載例のように詳細に記載することが望ましいが、紹介手数料の額までを記載することまでは要しない(紹介手数料については別途定めるといった記載でも差し支えない。)。
⑮ 派遣労働者を協定対象派遣労働者(法第30条の4第1項の協定で定めるところによる待遇とされる派遣労働者をいう。以下同じ。)に限定するか否かの別(則第22条第6号)
⑯ 派遣労働者を無期雇用派遣労働者又は60歳以上の者に限定するか否かの別(則第22条第7号)
➃ 派遣可能期間の制限を受けない業務に係る労働者派遣に関する事項
・ 第7の5の(3)のイの③に掲げる有期プロジェクトの業務について労働者派遣を行うときは、法第40条の2第1項第3号イに該当する旨を記載すること(則第22条の2第2号)。
・ 第7の5の(3)のイの④に掲げる業務(日数限定業務)について労働者派遣を行うときは、
ⅰ)法第40条の2第1項第3号ロに該当する旨、ⅱ)当該派遣先において、同号ロに該当する業務が1箇月間に行われる日数、ⅲ)当該派遣先の通常の労働者の1箇月間の所定労働日数を記載すること(則第22条の2第3号)。
・ 第7の5の(3)のイの⑤に掲げる育児休業等の代替要員としての業務について労働者派遣を行うときは、派遣先において休業する労働者の氏名及び業務並びに当該休業の開始及び終了予定の日を記載すること(則第22条の2第4号)。
・ 第7の5の(3)のイの⑥に掲げる介護休業等の代替要員としての業務について労働者派遣を行うときは、派遣先において休業する労働者の氏名及び業務並びに当該休業の開始及び終了予定の日を記載すること(則第22条の2第5号)。
(ニ) 派遣労働者の人数の定め
a 派遣労働者の人数の定めは次により行わなければならない(則第21条第1項)。
① (ハ)の①から⑯に掲げる就業条件の組合せが1つの場合は、当該労働者派遣に係る派遣労働者の人数
② (ハ)の①から⑯に掲げる就業条件の組合せが複数の場合は、当該組合せごとの派遣労働者の人数
b 派遣労働者の人数とは、当該就業条件の組合せで常時居ることとなる人数であり、複数の者が交替して行うこととなる場合であってもその複数の者分の人数を定めるものではない。例えば、午前と午後で1人ずつ就業することとなる場合は1人となる。
(ホ) 労働者派遣契約の定めに関する留意事項
a (ハ)の①から⑯の契約事項の内容を一部変更し、再度労働者派遣契約を締結するに際しては、一部変更することとなる以前に締結した契約を指定し、当該一部変更事項を定めることで足 りるものとし、再度すべての契約内容の定めを行うことは要しないものとする(⑤の労働者 派遣の期間については、一部変更した内容で改めて派遣期間を決定することとなるため、必 ず変更を伴うものである)。また、(ニ)における派遣労働者の人数についても変更する場合は、併せて、人数を定める(就業条件の組合せが複数であるときには、組合せごとに人数を定め る。)ことで足りるものとする。
b 派遣労働者が複数の業務を兼任して行う旨の労働者派遣契約を定めることができること。 c 就業条件の組合せについては、次のような就業条件は複数とはならないものであり、当該
就業条件をもって、就業条件の組合せが複数あることとはならないこと。
・ 派遣労働者が法第40条の2第1項第3号ないし第5号の業務のうち2つ以上の業務を兼任する場合
・ 派遣労働者を直接指揮命令する者が時間制により交替する場合
・ 派遣元責任者及び派遣先責任者が時間制により交替する場合
d 第7の5の(3)のイの④に掲げる業務(日数限定業務)について労働者派遣を行う場合は、当該派遣先において、(ハ)の➃のⅱ(当該派遣先において、法第40条の2第1項第3号ロに該当する業務が1箇月間に行われる日数)に記載した日数に係る日以外には当該業務が行われないものであることを、労働者派遣契約の当事者において十分確認すること。
(参考) 労働者派遣契約の定めの例(有期雇用派遣労働者を派遣する場合)
○○○○株式会社(派遣先)と□□□□株式会社(派遣元事業主)(派**-******)とは、次のとおり労働者派遣契約を締結する。
1 業務内容 パーソナルコンピュータの操作によるプレゼンテーション用資料、業績管理資料、会議用資料等の作成業務
(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令第
4条第1項第3号の事務用機器操作に該当。)
2 責任の程度 副リーダー(部下2名、リーダー不在の間における緊急対応が週1回程度有)
3 事業所の名称及び所在地その他派遣就業の場所
○○○○株式会社本社 国内マーケティング部営業課販売促進係
(〒110-0010xxx区霞が関1-2-2○ビル2階
TEL 3593-****) 4 組織単位 国内マーケティング営業課(国内マーケティング営業課長) 5 指揮命令者 国内マーケティング部営業課販売促進係長★★★★★ 6 派遣期間 2020年4月1日か2021年3月31日まで (※紹介予定派遣の場合は、6箇月以内の期間とする。) | ||
7 | 就 業 日 | 月~金(ただし、祝日、年末年始(12月29日から1月3日)、xx休業(8月13日から |
8月16日)を除く。) | ||
8 | 就業時間 | 9時から18時まで |
9 | 休憩時間 | 12時から13時まで |
10 | 安全及び衛生 |
派遣先及び派遣元は、労働者派遣法第44条から第47条の4までの規定により課された各法令を遵守し、自己に課された法令上の責任を負う。なお、派遣就業中の安全及び衛生については、派遣先の安全衛生に関する規定を適用することとし、その他については、派遣元の安全衛生に関する規定を適用する。
11 派遣労働者からの苦情の処理
(1) 苦情の申出を受ける者
派遣先 営業課総務係xx ☆☆☆☆☆ TEL3597-**** 内線101
派遣元事業主 派遣事業運営係xx ※※※※※ TEL3593-**** 内線5721
(2) 苦情処理方法、連携体制等
① 派遣元事業主における(1)記載の者が苦情の申出を受けたときは、ただちに派遣元責任者の
◎◎◎◎◎へ連絡することとし、当該派遣元責任者が中心となって、誠意をもって、遅滞なく、当該苦情の適切迅速な処理を図ることとし、その結果について必ず派遣労働者に通知することとする。
② 派遣先における(1)記載の者が苦情の申出を受けたときは、ただちに派遣先責任者の●●●
●●へ連絡することとし、当該派遣先責任者が中心となって、誠意をもって、遅滞なく、当該苦情の適切かつ迅速な処理を図ることとし、その結果について必ず派遣労働者に通知することとする。
③ 派遣先及び派遣元事業主は、自らでその解決が容易であり、即時に処理した苦情の他は、相互に遅滞なく通知するとともに、密接に連絡調整を行いつつ、その解決を図ることとする。
12 労働者派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るための措置
(1) 労働者派遣契約の解除の事前の申入れ
派遣先は、専ら派遣先に起因する事由により、労働者派遣契約の契約期間が満了する前の解除を行おうとする場合には、派遣元の合意を得ることはもとより、あらかじめ相当の猶予期間をもって派遣元に解除の申入れを行うこととする。
(2) 就業機会の確保
派遣元事業主及び派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に派遣労働者の責に帰
すべき事由によらない労働者派遣契約の解除を行った場合には、派遣先の関連会社での就業をあっせんする等により、当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとする。
(3) 損害賠償等に係る適切な措置
派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとし、これができないときには、少なくとも当該労働者派遣契約の解除に伴い派遣元事業主が当該労働者派遣に係る派遣労者を休業させること等を余儀なくされたことにより生じた損害の賠償を行わなければならないこととする。例えば、派遣元事業主が当該派遣労働者を休業させる場合は休業手当に相当する額以上の額について、派遣元事業主がやむを得ない事由により当該派遣労働者を解雇する場合は、派遣先による解除の申入れが相当の猶予期間をもって行われなかったことにより派遣元事業主が解雇の予告をしないときは30日分以上、当該予告をした日から解雇の日までの期間が30日に満たないときは当該解雇の日の30日前の日から当該予告の日までの日数分以上の賃金に相当する額以上の額について、損害の賠償を行わなければならないこととする。その他派遣先は派遣元事業主と十分に協議した上で適切な善後処理方策を講ずることとする。また、派遣元事業主及び派遣先の双方の責に帰すべき事由がある場合には、派遣元事業主及び派遣先のそれぞれの責に帰すべき部分の割合についても十分に考慮することとする
。
(4) 労働者派遣契約の解除の理由の明示
派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合であって、派遣元事業主から請求があったときは、労働者派遣契約の解除を行った理由を派遣元事業主に対し明らかにすることとする。
13 派遣元責任者 派遣元事業主の派遣事業運営係長◎◎◎◎◎TEL3597-****内線100
14 派遣先責任者 派遣先の総務部秘書課人事係長●●●●●TEL3593-****内線5720
15 就業日外労働 6の就業日以外の就労は、1箇月に2日の範囲で命ずることができるものとする。
16 時間外労働 7の就業時間外の労働は1日4時間、1箇月45時間、1年360時間の範囲で命ずることができるものとする。
17 派遣人員 2人
18 派遣労働者の福祉の増進のための便宜の供与
派遣先は、派遣先の労働者に対して利用の機会を与える診療所については、本契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者に対しても、利用の機会を与えるように配慮しなければならないこととする。
19 派遣先が派遣労働者を雇用する場合の紛争防止措置
労働者派遣の役務の提供の終了後、当該派遣労働者を派遣先が雇用する場合には、その雇用意思を事前に派遣元事業主に対して示すこと。
また、職業紹介を経由して行うこととし、紹介手数料として、派遣先は派遣元事業主に対して
、支払われた賃金額の●●分の●●に相当する額を支払うものとする。ただし、引き続き6箇月を超えて雇用された場合にあっては、6箇月間の雇用に係る賃金として支払われた賃金額の●分の●に相当する額とする
20 派遣労働者を協定対象派遣労働者に限定するか否かの別協定対象派遣労働者に限定しない。
21 派遣労働者を無期雇用派遣労働者又は60歳以上の者に限定するか否かの別無期雇用派遣労働者又は60歳以上の者に限定しない。
(紹介予定派遣に係る契約である場合は下記の項目例を記載)
22 紹介予定派遣に関する事項
(1) 派遣先が雇用する場合に予定される労働条件等契約期間 期間の定めなし
業務内容 プレゼンテーション用資料、業績管理資料、会議用資料等の作成業務及び来客対応
試用期間に関する事項 なし
就業場所 ○○○○株式会社本社 国内マーケティング部営業課販売促進係
(〒110-0010xxx区霞が関1-2-2○ビル2階 TEL 3593-****)始業・終業 始業:9時 終業:18時
休憩時間 60分
所定時間外労働 有(1日4時間、1箇月45時間、1年360時間の範囲内)休 日 毎週土、日、祝日、年末年始(12月29日から1月3日)、
xx休業(8月13日から8月16日)
休 暇 年次有給休暇:10日(6箇月継続勤務後)その他:有給(慶弔休暇)
賃 金 基本賃金 月給 180,000~240,000円(毎月15日締切、毎月20日支払)通勤手当:通勤定期券代の実費相当(上限月額35,000円)
所定時間外、休日又は深夜労働に対して支払われる割増賃金率
・所定時間外:法定超 25%、休日:法定休日 35%、深夜:25%昇給:有(0~3,000円/月) 賞与:有(年2回、計1箇月分)
社会保険の加入状況 厚生年金、健康保険、雇用保険、労災保険 有労働者を雇用しようとする者の名称 □□□□株式会社
(2) その他
・ 派遣先は、職業紹介を受けることを希望しなかった又は職業紹介を受けた者を雇用しなかった場合には、その理由を、派遣元事業主に対して書面により明示する。
・ 紹介予定派遣を経て派遣先が雇用する場合には、年次有給休暇及び退職金の取扱いについ
て、労働者派遣の期間を勤務期間に含めて算入することとする。
ロ 労働者派遣契約の締結に際しての手続 (イ) 労働者派遣契約締結の際の手続
a 契約の当事者は、契約の締結に際し上記イの(ハ)の契約の内容を上記イの(ハ)の組み合わせごとに書面に記載しておかなければならない(則第21条第3項)。
なお、電磁的記録により当該書面の作成を行う場合は、電子計算機に備えられたファイルに 記録する方法又は磁気ディスク等をもって調製する方法により作成を行わなければならない。
また、電磁的記録により当該書面の保存を行う場合は、次のいずれかの方法によって行った上で、必要に応じ電磁的記録に記録された事項を出力することにより、直ちに明瞭かつ整然とした形式で使用に係る電子計算機その他の機器に表示し、及び書面を表示できるようにしなければならない。
(a)作成された電磁的記録を電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等をもって調製するファイルにより保存する方法
(b)書面に記載されている事項をスキャナ(これに準ずる画像読取装置を含む。)により読み取ってできた電磁的記録を電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等をもって調製するファイルにより保存する方法
b 派遣先は、当該労働者派遣契約の締結に当たり、法第26条第3項の規定により派遣元事業主からなされる、許可を受けている旨の明示の内容(具体的には許可番号。)を上記aの書面に記載しておかなければならない(則第21条第4項)。
(ロ) 労働者派遣契約の締結の際の手続に関する留意点
a イの(ホ)のaにより、以前締結した契約の一部を変更した契約を締結する際に行う書面への記載は、当該以前締結した契約の内容により労働者派遣を行い、又は受ける旨の記載並びに変更される契約事項について、その契約事項及びその変更内容を記載すれば足りるものとする。
例えば、「平成○年○月○日付け労働者派遣契約と同内容で○○○○株式会社は、□□□□株式会社に対し、労働者派遣を行うものとする。ただし、派遣期間については平成○年○月○日から平成○年○月○日まで、派遣人員は3人とする。」という記載となる。
なお、ここでいう労働者派遣契約とは、基本契約書や個別契約書等の名称にかかわらず、当該契約事項が定められていれば足りるものである。よって、例えば、必要な契約事項が個別契約書に定められていなくても、基本契約書に定められていれば差し支えないものである。
b 派遣元事業主は、派遣先との間で労働者派遣契約を締結するに際しては、派遣先が求める業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該業務を遂行するために必要とされる知識、技術又は経験の水準、労働者派遣の期間その他労働者派遣契約の締結に際し定めるべき就業条件を事前にきめ細かに把握すること(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の1(第
6の27参照))。
特に、労働者派遣の期間について、派遣先は派遣可能期間を延長する場合において、当該派遣先の事業所等ごとの業務に係る労働者派遣の役務の提供が開始された日から事業所単位の期間制限の抵触日の1箇月前の日までの間(以下「意見聴取期間」という。)に派遣先の労働者の過半数で組織する労働組合等に対して意見聴取を行う必要がある(法第40条の2第4項)ことから、派遣元事業主は派遣先に対し、当該意見聴取が実施されているか確認してから労働者派遣契約を締結すること。
c 派遣先は、労働者派遣契約の締結の申込みを行うに際しては、就業中の派遣労働者を直接指揮命令することが見込まれる者から、業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該業務を遂行するために必要とされる知識、技術又は経験の水準その他労働者派遣契約の締結に際し定めるべき就業条件の内容を十分に確認すること(「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の1(第7の19参照))。
(2) 派遣可能期間の制限に抵触する日の通知
イ 概要
新たな労働者派遣契約に基づき、第7の5の(3)のイの①から⑥までに該当する労働者派遣以外の労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約を締結するに当たり、あらかじめ、派遣元事業主に対し、当該労働者派遣の開始の日以後、第8の5の派遣可能期間の制限に抵触することとなる最初の日を通知しなければならない(法第26条第4項)。
また、派遣元事業主は当該通知がないときは、当該者との間で、労働者派遣契約を締結してはならない(法第26条第5項)。
なお、当該抵触する日の判断は第7の5の(4)により行う。ロ 通知の趣旨
新たな労働者派遣契約を締結する派遣元事業主に対し、自らの行う第7の5の(3)のイの①から
⑥までに該当する労働者派遣以外の労働者派遣について事業所単位の派遣可能期間の制限に抵触することとなる最初の日を把握させ、派遣元事業主及び派遣先の双方に派遣可能期間の制限の規定を遵守させることを目的とする。
ハ 通知の方法等
(イ) 派遣可能期間の制限に抵触することとなる最初の日の通知については、労働者派遣契約の締結に際し、あらかじめ、労働者派遣(第7の5の(3)のイの①から⑥までに該当する労働者派遣を除く)の役務の提供を受けようとする者から派遣元事業主に対して、通知すべき事項に係る書面の交付若しくはファクシミリを利用してする送信又は電子メール等の送信をすることにより行わなければならない(則第24条の2)。
(ロ) 通知すべき事項は、締結しようとする労働者派遣契約に係る労働者派遣(第7の5の(3)のイ の①から⑥までに該当する労働者派遣を除く)の役務の提供が、当該労働者派遣の開始の日以後、派遣可能期間の制限に抵触することとなる最初の日とする。
(ハ)派遣元事業主は、当該通知がないときは、当該労働者派遣の役務の提供を受けようとする者と
の間で、労働者派遣契約を締結してはならない。ニ 派遣労働者への明示
(イ) 派遣元事業主は、第7の5の(3)のイの①から⑥までに掲げる労働者派遣以外の労働者派遣をしようとするときは、あらかじめ、派遣労働者に対して、当該派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事する事業所その他派遣就業の場所における組織単位の業務について派遣元事業主が期間制限に抵触することとなる最初の日及び当該派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事する事業所その他派遣就業の場所の業務について派遣先が期間制限に抵触することとなる最初の日を明示しなければならない(法第34条第1項第3号、第4号)。なお、派遣可能期間の制限に抵触することとなる最初の日の明示は、派遣可能期間の制限に抵触することとなる最初の日を書面、ファクシミリ又は電子メール等(ファクシミリ又は電子メール等による場合にあっては、当該派遣労働者が希望した場合に限る。)を交付することにより行わなければならない(則第26条、第6の 13の(4)及び(5)参照)。
また、派遣労働者への明示については、個人単位の期間制限(第7の6参照)と事業所単位の 期間制限(第7の5参照)の2種類を示す必要がある点に留意すること(第6の13の(4)参照)。
(ロ) 当該明示については、派遣労働者が派遣先における派遣就業に係る期間の制限を認識できることが派遣労働者のために望ましく、また、派遣先に対して派遣可能期間の制限の規定を遵守させるためにも有用であることから、行われるものである。
(ハ) 派遣元事業主は、上記の個人単位と事業所単位の期間制限の抵触日の明示を行うに当たっては、当該個人単位の期間制限の抵触日以降同一の組織単位に派遣された場合、又は、派遣先において過半数労働組合等の意見聴取がされずに当該事業所単位の期間制限の抵触日以降派遣された場合には、法第40条の6の労働契約申込みみなし制度の適用があり、派遣先は当該派遣労働者に対して労働契約の申込みをしたものとみなされることとなる旨を明示すること。これは、労働契約申込みみなし制度が適用される場合が必ずしも派遣労働者にとって明らかでないことがあるので、明示することによって派遣労働者が労働契約申込みみなし制度の適用がある場合を認識することを容易にしようとするものである。
ホ その他
派遣先は、事業所における派遣可能期間を延長した時は、速やかに、当該労働者派遣をする派遣元事業主に対し、当該業務について派遣可能期間の制限に抵触することとなる最初の日を通知しなければならない(法第40条の2第7項)。
なお、当該通知については、派遣先から派遣元事業主に対して、通知すべき事項に係る書面の交付若しくはファクシミリを利用してする送信又は電子メール等の送信をすることにより行わなければならない(則第33条の6、第7の5の(5)参照)。
(3) 比較対象労働者の待遇等に関する情報の提供
イ 概要
労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約を締結するに当たり、あらかじ
め、派遣元事業主に対し、当該労働者派遣に係る派遣労働者が従事する業務ごとに、比較対象労働者の賃金その他の待遇等に関する情報を提供しなければならない(法第26条第7項)。
また、派遣元事業主は、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者から、当該情報提供がないときは、当該者との間で、労働者派遣契約を締結してはならない(法第26条第9項)。
ロ 意義
派遣元事業主は、派遣労働者の待遇について、派遣先に雇用される通常の労働者との間で均等・均衡待遇(法第30条の3第1項又は第2項の規定に基づき、派遣先に雇用される通常の労働者との間で不合理な待遇の禁止等に係る措置を講ずることをいう。以下同じ。)を確保しなければならない(法第30条の3)。派遣元事業主は、派遣労働者の均等・均衡待遇を確保するため、派遣先の労働者の待遇等に関する情報が必要となることから、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者に対し、労働者派遣契約を締結するに当たり、あらかじめ、比較対象労働者の待遇等に関する情報を派遣元事業主に提供する義務を課すこととしたものである。
ハ 比較対象労働者の内容
(イ) 比較対象労働者とは、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者に雇用される通常の労働者であって、その業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲が、当該労働者派遣に係る派遣労働者と同一であると見込まれるものその他の当該派遣労働者と待遇を比較すべき労働者であり、具体的には、次に掲げる労働者である(法第26条第8項、則第24条の5)。
なお、比較対象労働者の選定に際しては、派遣労働者が就業する場所にとどまらず、労働者派 遣の役務の提供を受けようとする者の事業所全体の労働者が対象となることに留意が必要である。
① 職務の内容並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲が派遣労働者と同一であると見込まれる通常の労働者
② ①に該当する労働者がいない場合にあっては、職務の内容が派遣労働者と同一であると見込まれる通常の労働者
③ ①及び②に該当する労働者がいない場合にあっては、業務の内容又は責任の程度のいずれかが派遣労働者と同一であると見込まれる通常の労働者
④ ①~③に該当する労働者がいない場合にあっては、職務の内容及び配置の変更の範囲が派遣労働者と同一であると見込まれる通常の労働者
⑤ ①~④に該当する労働者がいない場合にあっては、①から④までに相当する短時間・有期雇用労働者(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号。以下「短時間・有期雇用労働法」という。)第2条第3項に規定する「短時間
・有期雇用労働者」をいう。)
当該短時間・有期雇用労働者の待遇については、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者が雇用する通常の労働者の待遇との間で、短時間・有期雇用労働法第8条に基づき、不合理と認められる相違を設けてはならない(なお、中小企業事業主(※)においては、短時
間・有期雇用労働法が2021年4月1日より適用されるため、同年3月31日までの間は、短時間労働者にあっては、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)による改正前の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号)第8条に基づき、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者に雇用される通常の労働者との間の待遇の相違は不合理と認められるものであってはならず、有期雇用労働者にあっては、労働契約法(平成19年法律第128号)第20条に基づき、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者に雇用される無期雇用労働者との間の労働条件の相違は不合理と認められるものであってはならない。)。
(※)資本金の額又は出資の総額が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主について5千万円、卸売業を主たる事業とする事業主については1億円)以下である事業主及びその常時使用する労働者の数が300人(小売業を主たる事業とする事業主については50人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については100人)以下である事業主
⑥ ①~⑤に該当する労働者がいない場合にあっては、派遣労働者と同一の職務の内容で業務に従事させるために新たに通常の労働者を雇い入れたと仮定した場合における当該通常の労働者(以下「仮想の通常の労働者」という。)
仮想の通常の労働者の待遇は、実際に雇い入れた場合の待遇であることを証する一定の根拠に基づき決定されていることが必要である。「一定の根拠」とは、例えば、これまで適用実績はないが、仮に雇い入れるとすれば適用される待遇が示されている就業規則であって、労働基準監督署に届け出ている就業規則、労働基準監督署には届け出ていないがモデル就業規則に基づき作成している就業規則等が考えられ、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者が明示的に説明できることが必要である。
また、仮想の通常の労働者は、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者に雇用される通常の労働者との間で適切な待遇が確保されている必要がある。「適切な待遇が確保されている」とは、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者が、仮想の通常の労働者の待遇について、実際に雇用する通常の労働者との間で「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲」等も考慮しつつ、客観的・具体的な実態に照らして不合理でないことについて派遣元事業主に説明できる状態であることをいう。
なお、仮想の通常の労働者については、その時点では実在しない労働者を指すが、例えば、過去1年以内に雇用していた者や現存する就業規則等に基づき設定され、適用実績のある労 働者の標準的なモデルがある場合は、当該者が①から⑤までに該当する可能性があることに 留意すること。
(ロ) 比較対象労働者が(イ)の①から⑤までの同じ分類に複数の労働者が該当する場合には、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、例えば、次の観点から、派遣労働者と最も近いと考える者を選定すること。
・ 基本給の決定等において重要な要素(職能給であれば能力・経験、成果給であれば成果など)における実態
・ 派遣労働者と同一の事業所に雇用されているかどうか
(ハ) (イ)の①から⑤までの比較対象労働者に関しては、例えば、次に掲げる者又は区分等を比較対象として選定することが考えられる。
・ 一人の労働者
・ 複数人の労働者又は雇用管理区分
・ 過去1年以内に雇用していた一人又は複数人の労働者
・ 労働者の標準的なモデル(新入社員、勤続○年目の一般職など)ニ 比較対象労働者の選定手順
労働者派遣の役務の提供を受けようとする者が比較対象労働者を選定するに当たっては、その雇用する労働者と受け入れようとする派遣労働者との間で「職務の内容」及び「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同一であるかどうかを以下の(イ)から(ハ)までに基づき判断すること。
(イ) 「通常の労働者」の定義
「通常の労働者」とは、いわゆるxx型の労働者及び期間の定めのない労働契約を締結しているフルタイム労働者(以下「無期雇用フルタイム労働者」という。)をいう。「いわゆるxx型の労働者」とは、労働契約の期間の定めがないことを前提として、社会通念に従い、当該労働者の雇用形態、賃金体系等(例えば、長期雇用を前提とした待遇を受けるものであるか、賃金の主たる部分の支給形態、賞与、退職金、定期的な昇給又は昇給の有無)を総合的に勘案して判断するものであること。また、「無期雇用フルタイム労働者」とは、その業務に従事する無期雇用労働者のうち、1週間の所定労働時間が最長の労働者をいうこと。
(ロ) 「職務の内容」が同一であると見込まれることの判断 a 「職務の内容」の定義
「職務の内容」とは、「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」をいう。
「業務の内容」とは、職業上継続して行う仕事の内容をいう。
「責任の程度」とは、業務に伴って行使するものとして付与されている権限の範囲・程度等をいうこと。具体的には、授権されている権限の範囲(単独で契約締結可能な金額の範囲、管理する部下の数、決裁権限の範囲等)、業務の成果について求められる役割、トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度、ノルマ等の成果への期待の程度等を指す。
b 「職務の内容」が同一であると見込まれることの判断手順
「職務の内容が同一である」とは、個々の作業まで完全に一致していることを求めるもので はなく、それぞれの労働者の職務の内容が「実質的に同一」であることを意味するものであり、
「業務の内容」が「実質的に同一」であるかどうかを判断し、次いで「責任の程度」が「著し く異なって」いないかを判断するものであること。また、これらの判断に当たっては、将来に わたる可能性についても勘案した上で、「同一であると見込まれる」かどうかを判断すること。
まず、「業務の内容」が「実質的に同一」であることの判断に先だって、「業務の種類」が同一であるかどうかを確認する。これは、『厚生労働省編職業分類』の細分類を目安として比較し、この時点で異なっていれば、「職務の内容が同一でない」と判断することとなる。
他方、「業務の種類」が同一であると判断された場合には、次に労働者派遣の役務の提供を受けようとする者に雇用される労働者及び派遣労働者の職務を業務分担表、職務記述書等により個々の業務に分割し、その中から「中核的業務」をそれぞれ抽出する。
なお、「中核的業務」とは、ある労働者に与えられた職務に伴う個々の業務のうち、当該職務を代表する中核的なものを指し、以下の基準に従って総合的に判断する。
① 与えられた職務に本質的又は不可欠な要素である業務
② その成果が事業に対して大きな影響を与える業務
③ 労働者本人の職務全体に占める時間的割合・頻度が大きい業務
労働者派遣の役務の提供を受けようとする者に雇用される労働者と派遣労働者について、抽 出した「中核的業務」を比較し、同じであれば、「業務の内容」は「実質的に同一」と判断し、明らかに異なっていれば、業務の内容は「異なる」と判断する。なお、抽出した「中核的業務」がxxすると異なっている場合には、当該業務に必要とされる知識や技能の水準等を含めて比 較した上で、「実質的に同一」と言えるかどうかを判断する。
ここまで比較した上で「業務の内容」が「実質的に同一である」と判断された場合には、最 後に、両者の業務に伴う「責任の程度」が「著しく異なって」いないかどうかを確認すること。その確認に当たっては、「責任の程度」の内容に当たる以下のような事項について比較を行う。
① 授権されている権限の範囲(単独で契約締結可能な金額の範囲、管理する部下の数、決裁権限の範囲等)
② 業務の成果について求められる役割
③ トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度
④ ノルマ等の成果への期待の程度
⑤ 上記の事項の補助的指標として所定外労働の有無及び頻度
この比較においては、例えば、管理する部下の数が一人でも違えば、「責任の程度」が異なる、といった判断をするのではなく、「責任の程度」の差異が「著しい」といえるものであるかどうかを見るものであること。なお、いずれも役職名等外見的なものだけで判断せず、実態を見て比較することが必要である。
以上の判断手順を経て、「業務の内容」及び「責任の程度」の双方について、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者に雇用される労働者と派遣労働者が同一であると判断された場合が、「職務の内容が同一である」こととなる。
(ハ)「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同一であると見込まれることの判断 a 「職務の内容及び配置の変更の範囲」の定義
現在の我が国の雇用システムにおいては、長期的な人材育成を前提として待遇に係る制度が
構築されていることが多く、このような人材活用の仕組み、運用等に応じて待遇の違いが生じることも合理的であると考えられている。
人材活用の仕組み、運用等については、ある労働者が、ある事業主に雇用されている間又はある派遣先に派遣されている間にどのような職務経験を積むこととなっているかを見るものであり、転勤、昇進を含むいわゆる人事異動や本人の役割の変化等(以下「人事異動等」という。)の有無や範囲を総合判断するものであるが、これを法律上「職務の内容及び配置の変更の範囲」と規定したものである。
「職務の内容の変更」と「配置の変更」は、現実にそれらが生じる際には重複が生じ得るものである。つまり、「職務の内容の変更」とは、配置の変更によるものであるか、そうでなく業務命令によるものであるかを問わず、職務の内容が変更される場合を指すこと。他方、「配置の変更」とは、人事異動等によるポスト間の移動を指し、結果として職務の内容の変更を伴う場合もあれば、伴わない場合もあるものであること。
それらの変更の「範囲」とは、変更により経験する職務の内容又は配置の広がりを指すものである。
b 「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同一であると見込まれることの判断における留意点
「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同一であるかどうかの判断にあたっては、一つ一つの「職務の内容及び配置の変更」の態様が同様であることを求めるものではなく、それらの変更が及び得ると予定されている範囲を画した上で、これが同一であるかどうかを判断する。例えば、ある会社において、一部の部門に限っての人事異動等の可能性がある者と、全部門にわたっての人事異動等の可能性がある者とでは、「配置の変更の範囲」が異なることとなり、
「職務の内容及び配置の変更の範囲」(人材活用の仕組み、運用等)が同一であるとは言えない。
ただし、「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同一であるかどうかの判断に当たっては、その「範囲」が完全に一致することまでを求めるものではなく、実質的に同一と考えられるかどうかという観点から判断するものである。
また、「職務の内容及び配置の変更の範囲」(人材活用の仕組み、運用等)が同一であるか どうかを判断するに当たっては、将来にわたる可能性についても勘案するものである。ただし、この「将来にわたる可能性」(見込み)については、労働者派遣の役務の提供を受けようとす る者の主観によるものではなく、文書や慣行によって確立されているものなど客観的な事情に よって判断されるものであること。また、例えば、労働者派遣の役務の提供を受けようとする 者に雇用される通常の労働者の集団は定期的に転勤等があることが予定されているが、ある職 務に従事する派遣労働者については転勤等がないという場合にも、そのような形式的な判断だ けでなく、例えば、同じ職務に従事している他の派遣労働者には転勤等があるといった「可能 性」についての実態を考慮して具体的な見込みがあるかどうかで判断するものである。
なお、育児又は家族介護などの家族的責任を有する労働者については、その事情を配慮した
結果として、その労働者の人事異動等の有無や範囲が他と異なることがあるが、「職務の内容及び配置の変更の範囲」を比較するに当たっては、そのような事情を考慮することが必要となる。例えば、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者に雇用される通常の労働者のうち、人事異動等があり得る人材活用の仕組み、運用等である者が、育児又は家族介護に関する一定の事由で配慮がなされ、その配慮によって異なる取扱いを受けた場合、「職務の内容及び配置の変更の範囲」を比較するに際しては、その取扱いについては除いて比較することが考えられる。
c 「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同一であると見込まれることの判断手順
まず、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者に雇用される通常の労働者と派遣労働者について、配置の変更に関して、転勤の有無が同じかどうかを比較すること。この時点で異なっていれば、「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同一であると見込まれないと判断することとなる。
次に、転勤が双方ともあると判断された場合には、全国転勤の可能性があるのか、エリア限 定なのかといった転勤により移動が予定されている範囲を比較する。この時点で異なっていれ ば、「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同一であると見込まれないと判断することとなる。
転勤が双方ともない場合、及び双方ともあってその範囲が実質的に同一であると判断された 場合には、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者における「職務の内容」の変更の態様 について比較する。まずは、「職務の内容」の変更(労働者派遣の役務の提供を受けようとす る者における「配置」の変更の有無を問わない。)の有無を比較し、この時点で異なっていれ ば、「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同一であると見込まれないと判断することとなる。同一であれば、「職務の内容」の変更により経験する可能性のある範囲も比較し、同一である かどうかを判断する。
ホ 情報提供の方法
比較対象労働者の待遇に関する情報提供については、労働者派遣契約の締結に際し、あらかじめ、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者から派遣元事業主に対して、情報提供すべき事項に係 る書面の交付若しくはファクシミリをしてする送信又は電子メール等の送信をすることにより行わ なければならない(則第24条の3第1項)。
ヘ 情報提供に係る書面等の保存
派遣元事業主は、比較対象労働者の待遇に関する情報提供に係る書面等を、派遣先は、当該書面等の写しを、労働者派遣契約に基づく労働者派遣が終了した日から起算して3年を経過する日まで保存しなければならない(則第24条の3第2項)。
ト 情報提供すべき事項
(イ) 労働者派遣契約に、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を協定対象派遣労働者に限定しないことを定める場合
次のaからeまでに掲げる情報を提供しなければならない。
a 比較対象労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲並びに雇用形態
(a) 職務の内容
「職務の内容」とは、業務の内容及び当該業務の内容に伴う責任の程度をいう。
「業務の内容」とは、職業上継続して行う仕事の内容をいう。『厚生労働省編職業分類』等を参考として、具体的な内容を提供すること。
「責任の程度」とは、業務に伴って行使するものとして付与されている授権の範囲・程度等をいう。具体的には、授権されている権限の範囲(単独で契約締結可能な金額の範囲、管理する部下の数、決裁権限の範囲等)、業務の成果について求められる役割、トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度、ノルマ等の成果への期待の程度等を指すものであり、それぞれについて具体的な内容を提供すること。
(b) 職務の内容及び配置の変更の範囲
「職務の内容及び配置の変更の範囲」とは、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者に雇用される労働者が、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者に雇用されている間にどのような職務経験を積むこととなっているかを見るものであり、転勤、昇進を含むいわゆる人事異動や本人の役割の変化等の有無や範囲を総合判断するものであるが、これらの具体的な内容を提供すること。
(c) 雇用形態
ここでいう「雇用形態」とは、通常の労働者、短時間労働者、有期雇用労働者又は仮想の通常の労働者をいう。比較対象労働者がこれらのどの雇用形態に該当するか、これとあわせて雇用期間(期間の定めのある労働契約を更新している有期雇用労働者にあっては、当初の労働契約の開始時からの通算雇用期間をいう。)を提供することが必要であることに留意すること。
b 比較対象労働者を選定した理由
次に掲げる事項を情報提供することが必要。
・ ハの(イ)の①から⑥までのうち選択した比較対象労働者の分類とその理由。例えば、ハの (イ)の③の比較対象労働者を選定した場合の理由は、「派遣労働者と職務の内容が同一である通常の労働者はいないが、業務の内容が同一である通常の労働者がいるため」と記載すること等が考えられる。
・ 比較対象労働者としてどういう者又は区分等を情報提供するか(一人の労働者、複数人の労働者、雇用管理区分、過去1年以内に雇用していた一人又は複数人の労働者、労働者の標準的なモデル(新入社員、勤続○年目の一般職など))
c 比較対象労働者の待遇のそれぞれの内容(昇給、賞与その他の主な待遇がない場合には、その旨を含む。)
次に掲げるいずれかの内容を情報提供することが必要。なお、待遇ごとに(a)~(c)のいずれの方法によることとしても差し支えない。ただし、例えば、扶養家族の人数に応じて支給される家族手当等、機械的に計算・適用がなされる待遇であって、扶養家族の人数などの比較対象労働者
と派遣労働者のとの間で計算・適用の前提となる実態が異なり得るものについては、(c)の内容が提供されることが必要であることに留意すること。また、基本給等が時給単位で確認できるよう、年間の所定労働時間をあわせて提供することが必要であることに留意すること。
(a) 比較対象労働者が一人である場合に、当該者に対する個別具体の待遇の内容。例えば、賃金であればその額、教育訓練であればその実施状況。
(b) 比較対象労働者が複数人である場合に、これらの者に対する個別具体の待遇の内容。数量的な待遇については平均額又は上限・下限額、数量的でない待遇については標準的な内容又は最も高い水準・最も低い水準の内容。
(c) 比較対象労働者が一人又は複数人である場合に、それぞれの適用している待遇の実施基準
(比較対象労働者の賃金水準等を把握できるものに限る。)。例えば、賃金であれば、賃金テーブル及び等級xxの支給基準並びに比較対象労働者が当該賃金テーブル及び等級xxの賃金水準のいずれに該当するかがわかるもの。
d 比較対象労働者の待遇のそれぞれの性質及び当該待遇を行う目的
待遇の具体的な性質や待遇を行う具体的な目的をいうこと。例えば、通勤手当であれば「通勤に要する交通費を補填する目的」、精皆勤手当であれば「一定数の業務を行う人数を確保するため、皆勤を奨励する目的」等が考えられること。
e 比較対象労働者の待遇のそれぞれについて、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇に係る決定をするに当たって考慮したもの
考慮した具体的な職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情をいうこと。
(ロ) 労働者派遣契約に、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を協定対象派遣労働者に限定することを定める場合
次のa及びbに掲げる情報を提供すること。
a 法第40条第2項の教育訓練(派遣先が派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先に雇用される労働者に対して行う業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練をいう。このaにおいて単に「教育訓練」という。)の内容(当該教育訓練がない場合には、その旨)
教育訓練の実施の有無及び具体的な内容をいうこと。
b 則第32条の3各号に掲げる福利厚生施設(派遣先が派遣先に雇用される労働者に対して利用の機会を与える給食施設、休憩室及び更衣室をいう。このbにおいて単に「福利厚生施設」という。)の内容(当該福利厚生施設がない場合には、その旨)
福利厚生施設それぞれの利用の機会の付与の有無及び利用時間等の具体的な内容をいうこと。チ 比較対象労働者の待遇に関する情報の取扱い
(イ) 比較対象労働者の待遇等に関する情報のうち個人情報に該当するものの保管又は使用は、法第30条の3等の規定による待遇の確保等の目的に限られるものである(派遣元指針第2の11の (1)のニ)。
(ロ) 比較対象労働者の待遇に関する情報のうち個人情報に該当しないものの保管及び使用については、個人情報保護法の適用はないが、派遣元事業主は、当該情報の保管又は使用を法第30条の
3等の規定による待遇の確保等の目的の範囲に限定する等適切に対応することが必要である(派遣元指針第2の11の(4))。この「等」には、例えば、当該情報の保存義務経過後に利用することがなくなった情報について、当該情報を速やかに消去すること等が含まれる。
(ハ) 比較対象労働者の待遇等に関する情報は、法第24条の4の秘密を守る義務の対象となるため、派遣元事業主及びその代理人、使用人その他の従業者は、正当な理由がある場合でなければ、そ の業務上取り扱ったことについて知り得た比較対象労働者の待遇等に関する情報を他に漏らして はならない。
(ニ) この他、例えば、派遣先に雇用される通常の労働者が1名である場合等、比較対象労働者が 一定の個人に特定されるおそれがある場合には、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、当該比較対象労働者の意向を斟酌し、比較対象労働者の待遇等の情報を提供する際、個人が特定 されないよう、標準的なモデルとしての待遇情報を提供すること等の配慮を行うことが考えられ る。
リ 派遣先に雇用される通常の労働者がいない場合の取扱い
派遣先に雇用される通常の労働者がいない場合、法第30条の3の規定は適用されない。比較対象労働者の待遇に関する情報提供は、同条の適正な履行のために行うものであり、当該場合には、当該情報提供を行う必要はないものであること。
ヌ 変更時の情報提供 (イ) 概要
派遣先は、比較対象労働者の待遇等に関する情報に変更があったときは、遅滞なく、派遣元事業主に対し、当該変更の内容に関する情報を提供しなければならない(法第26条第10項)。
(ロ) 意義
労働者派遣契約を締結するに当たって提供された比較対象労働者の待遇等に関する情報に変更 があった場合には、その変更の内容によっては、派遣労働者の待遇と派遣先に雇用される通常の 労働者の待遇との間で不合理な待遇差が生じることとなりかねない。このため、派遣元事業主は、変更された比較対象労働者の待遇等に関する情報をもとに、派遣労働者の待遇を変更することに ついて検討し、必要な対応を行うことができるよう、派遣先に対し、労働者派遣契約の締結に当 たっての比較対象労働者の待遇等に関する情報提供と同様の義務を課すこととしたものである。
(ハ) 変更時の情報提供の内容
ヘの情報提供すべき事項のうち変更があった内容を提供すること。あわせて、当該変更が生じた時点を提供することが必要であることに留意すること。
(ニ) 変更の内容に関する情報提供の方法
比較対象労働者の待遇等に関する情報の変更時の情報提供については、当該情報の変更があったときは、遅滞なく、派遣先から派遣元事業主に対して、情報提供すべき事項に係る書面の交付
若しくはファクシミリを利用してする送信又は電子メール等の送信をすることにより行わなければならない(則第24条の6第1項)。
「遅滞なく」とは、1か月以内に派遣労働者の待遇に適正に反映されるよう、可能な限り速やかに情報提供を行うことをいうこと。なお、派遣元事業主は、派遣労働者の待遇について、情報提供を受けた時点からではなく、比較対象労働者の待遇が変更された時点から、法第30条の3に基づき、派遣先の通常の労働者との間の均等・均衡待遇を確保しなければならないことに留意すること。
(ホ) 変更時の情報提供が不要である場合
a 派遣労働者を協定対象派遣労働者に限定しないことを定めた労働者派遣契約に基づき現に行われている労働者派遣契約に係る派遣労働者の中に協定対象派遣労働者以外の者がいない場合には、法第40条第2項の教育訓練(派遣先が派遣先に雇用される労働者に対して行う業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練)及び則第32条の3各号に掲げる福利厚生施設(派遣先が派遣先に雇用される労働者に対して利用の機会を与える給食施設、休憩室及び更衣室)を除き、比較対象労働者の待遇等に関する情報の変更時の派遣先から派遣元事業主に対する当該変更の内容に関する情報の提供を要しない(則第24条の6第2項)。
b 労働者派遣契約が終了する日前一週間以内における変更であって、当該変更を踏まえて派遣労働者の待遇を変更しなくても法第30条の3の規定に違反しないものであり、かつ、当該変更の内容に関する情報の提供を要しないものとして労働者派遣契約で定めた範囲を超えないものが生じた場合には、比較対象労働者の待遇等に関する情報の変更時の派遣先から派遣元事業主に対する当該変更の内容に関する情報の提供を要しない(則第24条の6第3項)。
(ヘ) 変更時の情報提供に係る書面等の保存
派遣元事業主は、比較対象労働者の待遇等に関する変更時の情報提供に係る書面等を、派遣先は、当該書面等の写しを、労働者派遣契約に基づく労働者派遣が終了した日から起算して3年を経過する日まで保存しなければならない(則第24条の6第4項)。
ル 比較対象労働者の待遇等に関する情報を提供せず、又は虚偽の情報を提供した場合の取扱い
厚生労働大臣は、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者が比較対象労働者の待遇等に関す る情報を提供せず、若しくは虚偽の情報を提供した場合又は派遣先が比較対象労働者の待遇等に関 する情報に変更があったときに当該変更の内容に関する情報を提供せず、若しくは虚偽の情報を提 供した場合又はこれらの場合に派遣先等に法第48条第1項の規定による指導又は助言をしたにもか かわらず、当該派遣先等がその指導等に従わなかった場合等には、当該派遣先等に対し、当該派遣 就業を是正するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる(法第49条の2第1項)。
また、厚生労働大臣は、当該勧告を行った場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかった場合には、その旨を公表することができる(法第49条の2第2項)。
(4) 派遣料金の配慮
イ 概要
労働者派遣の役務の提供を受けようとする者及び派遣先は、当該労働者派遣に関する料金の額
(以下「派遣料金」という。)について、派遣元事業主が派遣先に雇用される通常の労働者との間の均等・均衡待遇の確保のための措置及び一定の要件を満たす労使協定に基づく待遇の確保のための措置を遵守することができるように配慮しなければならない(法第26条第11項)。
ロ 意義
派遣元事業主が、派遣労働者のxxな待遇を確保するため、派遣先に雇用される通常の労働者との間の均等・均衡待遇の確保のための措置及び一定の要件を満たす労使協定に基づく待遇の確保のための措置を行う場合には、これらの措置を行うための原資を確保することが必要となるため、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者及び派遣先に対し、派遣料金に関する配慮義務を課すこととしたものである。
ハ 派遣料金の配慮に関する留意点
(イ) この派遣料金の配慮義務は、労働者派遣契約の締結又は更新の時だけではなく、当該締結又は更新がなされた後にも求められる(派遣先指針第2の9の(2)のイ)。
(ロ) また、派遣先は、派遣料金の決定に当たっては、派遣労働者の就業の実態、労働市場の状況、当該派遣労働者が従事する業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度並びに当該派遣労働者に要 求する技術水準の変化等を勘案するよう努めなければならない(派遣先指針第2の9の(2)の ロ)。
(ハ) 例えば、派遣元事業主から要請があるにもかかわらず、派遣先が派遣料金の交渉に一切応じない場合や、派遣元事業主が法第30条の3又は法第30条の4第1項に基づく賃金を確保するために必要な額を派遣先に提示した上で派遣料金の交渉を行ったにもかかわらず、派遣料金が当該額を下回る場合には、配慮義務を尽くしたとは解されず、指導の対象となり得るものであること。
(5) 海外派遣の場合の労働者派遣契約
イ 概要
派遣元事業主は海外派遣(第4の3の(2)参照)に係る労働者派遣契約の締結に際しては、上記 (1)及び(2)で定めるもののほか、ハの派遣先が講ずべき措置等を定めた事項を書面に記載して、当該海外派遣に係る役務の提供を受ける者に対し、当該定めた事項に係る書面の交付若しくはファクシミリを利用してする送信又は電子メール等の送信をすることにより通知しなければならない(法第26条第2項、則第23条、則第24条)。
ロ 意義
海外派遣の場合の労働者派遣契約の定めに関する措置は、当該海外派遣が行われる場合、法が派遣先に適用されないことから、特に労働者派遣契約において派遣先の講ずべき措置を定めさせることにより、民事的にその履行を確保させようとするものである。
ハ 派遣先の講ずべき措置の定め
海外派遣の場合には、特に派遣先の講ずべき措置として次に掲げる事項を定めなくてはならない
(則第24条)。
① 派遣先責任者を選任すること。
・ 法第41条の規定による派遣先責任者の選任と同様の方法とすること(第7の11参照)
② 派遣先管理台帳の作成、記載及び通知を行うこと。
・ 法第42条第1項及び第3項の規定による派遣先管理台帳の作成、記載及び通知と同様の方法とすること(第7の12参照)。
③ 派遣労働者に関する労働者派遣契約の定めに反することのないように適切な措置を講ずること。
・ 法第39条の規定による措置と同様のものとすること(第7の2参照)。
④ 派遣労働者の派遣先における就業に伴って生ずる苦情等について、派遣元事業主に通知し、その適切かつ迅速な処理を図ること。
・ 法第40条第1項と同様のものとすること(第7の3参照)。
⑤ 法第40条第2項に規定する教育訓練の実施等必要な措置と同様の規定
⑥ 法第40条第3項に規定する福利厚生施設の利用の機会の付与と同様の規定
⑦ 疾病、負傷等の場合における療養の実施その他派遣労働者の福祉の増進に係る必要な援助を行うこと。
・ 海外への派遣であるために、特に求められる派遣労働者の福祉の増進のための援助である。
・ 「その他派遣労働者の福祉の増進のための援助」とは、例えば、派遣労働者の帰国に対する援助である。
⑧ 事業所単位の期間制限に係る派遣可能期間の制限に抵触することとなる最初の日の通知を行うこと。
・ 法第26条第4項と同様のものとすること((2)、第7の5及び⑪参照)。
⑨ 第8の5の(3)のイの①から⑥までに掲げる労働者派遣以外の労働者派遣を行う場合において、当該派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事する事業所その他派遣就業の場所における組織 単位の業務について継続して1年以上、同一の特定有期雇用派遣労働者に係る労働者派遣の役 務の提供を受けた場合であって、引き続き当該同一の業務に労働者を従事させるため、労働者 を雇い入れようとするときの、当該特定有期雇用派遣労働者の雇用に関する措置
・ 法第40条の4と同様のものとすること(第7の8参照)。
⑩ 同一の事業所等において、派遣元事業主から1年以上の期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けた場合において、当該場所において通常の労働者の募集を行う時は、当該募集情報の提供に関する措置。また、特定有期雇用派遣労働者が、事業所等における同一の組織単位の業務について3年間継続して従事する見込みがある場合において、当該場所において労働者の募集をし、かつ、派遣元事業主から派遣先に対して労働契約の申込みが求められた時は、当該募集情報の提供に関する措置。
・ 法第40条の5と同様のものとすること(第7の8、第7の9参照)。
⑪ 法第40条の9第2項の離職後1年以内の派遣労働者の受入れ禁止について、派遣先が派遣元
事業主より派遣する労働者名等の通知を受けたときに、その者を受け入れたときに当該離職後
1年以内の受け入れ禁止規定に抵触する場合は、速やかにその旨を通知する旨(第7の10参照)。
⑫ その他派遣就業が適正に行われるため必要な措置を行うこと。
(参考) 海外派遣に係る労働者派遣契約における派遣先が講ずべき措置の定めの例(特定有期雇用派遣労働者の場合)
○○○○株式会社東京支店(甲)と、□□□□株式会社(乙)は甲の労働者2人を乙のアメリカ支局における秘書業務に従事させるための労働者派遣について次の事項を約するものとする
1 乙は甲の労働者に係る次の業務を行う派遣先責任者を1人選任すること。
(1) 次に掲げる事項の内容を、当該甲の労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者その他の関係者に周知すること。
a 当該甲の労働者に係る労働者派遣契約の定め b 当該甲の労働者に係る甲からの通知
(2) 当該契約に基づく労働者派遣に係る業務について、契約締結後に労働者派遣の役務の提供を受ける期間を定めた場合又はこれを変更した場合の甲への通知及び派遣先管理台帳の作成、記録、保存及び通知に関すること。
(3) 当該甲の労働者から申出を受けた苦情の処理に当たること。
(4) 当該甲の労働者の安全及び衛生に関し、乙の労働者の安全及び衛生に関する業務を統括管理する者及び甲との連絡調整を行うこと。
(5) (1)~(4)に掲げるもののほか、甲との連絡調整に関すること。
2 乙は甲の労働者の就業に関し、派遣先管理台帳を作成するものとし、当該派遣先管理台帳に次の事項について甲の労働者ごとに記載し、このうち(1)、(6)、(7)、(8)及び(9)につき
甲に通知すること。
(1) 甲の労働者の氏名
(2) 有期雇用派遣労働者(無期雇用派遣労働者又は有期雇用派遣労働者の別)
(3) 60歳未満(60歳以上の者か否かの別)
(4) 甲の事業主の名称
(5) 甲の事業所の名称及び所在地
(6) 派遣就業をした日
(7) 派遣就業をした日ごとの始業し、及び終業した時刻並びに休憩した時間
(8) 従事した業務の種類
(9) 派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事した事業所の名称及び所在地その他派遣就業をした場所
(10) 教育訓練を行った日時及び内容
(11) 派遣労働者からの苦情の申出を受けた苦情の処理に関する事項
(12) 派遣先責任者及び派遣元責任者に関する事項
3 乙は本契約に定める甲の労働者の就業条件の定めに反することのないように適切な措置を講ずること。
4 乙は甲の労働者の派遣就業に伴って生じる苦情等について、甲に通知するとともに、甲との密接な連携の下に誠意をもって、遅滞なく、その適切かつ迅速な処理を図ること。
5 乙は甲の労働者の疾病、負傷等に際し療養の実施を行うほか、甲の労働者の福祉の増進のために必要な援助を行うこと。
6 乙は甲の労働者の派遣期間終了後等の帰国について責任をもって行うこと。
7 乙が甲から本契約に基づく労働者派遣の役務の提供を受けることにより、当該業務について派遣可能期間の制限に抵触することとなる最初の日は○年○月○日であること。
8 乙は甲から本契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者の氏名の通知を受けた場合に、当該労働者が乙を離職して1年を経過していない者である場合はその旨を甲に通知すること。ただし、当該者が60歳以上の定年退職者である場合は除く。
9 乙は、甲からの求めに応じ、本契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者について、当該派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する乙の労働者が従事する業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練については、当該派遣労働者に対しても実施するなど必要な措置を講じなければならないこと。
10 乙は、乙に雇用される労働者に対して利用の機会を与える給食施設、休憩室、及び更衣室については、本契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者に対しても、利用の機会を与えなければならないこと。
11 乙は、甲からの求めに応じ、乙に雇用される労働者に関する情報、本契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者の業務の遂行の状況その他の情報を提供する等必要な協力をするよう配慮しなければならないこと。
12 乙は1年以上の期間甲の同一の労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けた場合において
、引き続き当該同一の業務に労働者を従事させるため労働者を雇い入れようとするときは、当該同一の業務に派遣実施期間中継続して従事した甲の当該同一の労働者を遅滞なく雇い入れるよう努めなければならないこと。ただし、当該同一の労働者が継続就業を希望する旨を乙に申し出ない場合、又は希望する旨を乙に申し出た場合でも、甲が乙に対し当該同一の労働者に対する労働契約の申込みを依頼しない場合はこの限りではないこと。
13 乙は、乙の同一の事業所その他派遣就業の場所において甲から1年以上の期間継続して同一の労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けている場合において、当該事業所その他派遣就業の場所において通常の労働者の募集を行うときは、当該募集に係る事業所その他派遣就業の場所に掲示することその他の措置を講ずることにより、業務の内容、賃金、労働時間その他の
当該募集に係る事項を当該同一の労働者に周知しなければならないこと。
14 乙は、乙の事業所その他派遣就業の場所における同一の組織単位の業務について継続して3年間従事する見込みがある有期雇用派遣労働者に対しては、当該事業所その他派遣就業の場所において労働者の募集を行うときは、当該募集に係る事業所その他派遣就業の場所に掲示することその他の措置を講ずることにより、業務の内容、賃金、労働時間その他の当該募集に係る事項を当該有期雇用派遣労働者に周知しなければならないこと。
15 乙は、乙に雇用される通常の労働者であって、その職務の内容並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲が、本契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者と同一であると見込まれるもの等の当該派遣労働者と比較すべき労働者の待遇等に関する情報を甲に提供するとともに、当該情報に変更があったときは、遅滞なく、当該変更の内容に関する情報を甲に提供しなければならないこと。
16 乙は、甲が派遣労働者の不合理な待遇の禁止等に関する措置を遵守できるよう、労働者派遣に関する料金の額について配慮しなければならないこと。
ニ 海外派遣に係る労働者派遣契約の締結の際の手続等
派遣元事業主は、海外派遣に係る労働者派遣契約の締結に際し、上記ハの契約内容を当該海外派遣に係る派遣先に対して、書面の交付若しくはファクシミリを利用してする送信又は電子メール等の送信をすることにより通知しなければならない(則第23条)。
ホ 派遣先が当該労働者派遣契約の定めに反した場合
(イ) 派遣先が当該海外派遣に係る労働者派遣契約の定めに反した場合、当該契約について債務不履行となり、派遣元事業主は、その履行を派遣先に求めることができ、また、それを理由に労働者派遣契約を解除することができる。
(ロ) したがって、海外派遣については、派遣元事業主を通じて、派遣先における一定の措置の履行を確保するものである。
(6) 派遣元事業主であることの明示
イ 概要
派遣元事業主は、労働者派遣契約を締結するに当たっては、あらかじめ、当該契約の相手方に対し、当該事業所について労働者派遣事業の許可を受けている旨を明示しなければならない(法第26条第3項)。
ロ 具体的な明示の方法
労働者派遣事業を行う事業主は、許可証に記載される許可番号により明示すること。
3 労働者派遣契約の解除の制限
(1) 概要
労働者派遣の役務の提供を受ける者は、派遣労働者の国籍、信条、性別、社会的身分、派遣労働
者が労働組合の正当な行為をしたこと等を理由として、労働者派遣契約を解除してはならない(法第27条)。
(2) 意義
イ 禁止されるのは、労働者派遣契約について、業として行われる労働者派遣であると否とを問わず、また、当該労働者派遣契約の一部であるか全部であるかを問わず、これを解除する行為である。
なお、労働者派遣の役務の提供を受ける者が労働者派遣をする者と合意の上、労働者派遣契約を解除する場合であっても、(3)の事由を理由とする限り、当該解除は、労働者派遣の役務の提供を受ける者について禁止されるものである。
ロ 法第27条に違反して、労働者派遣契約を解除した場合には、当該解除は公序良俗に反するものとして無効となる。したがって、労働者派遣の役務の提供を受ける者が当該解除を主張したとしても、労働者派遣をする者は解除の無効を主張して契約の履行を求めることができ、さらに、損害を被った場合には、損害賠償の請求をすることができる。
(3) 労働者派遣契約の解除が禁止される事由
イ 「国籍」とは、国民たる資格で、「信条」とは特定の宗教的又は政治的信念を、「社会的身分」とは生来的な地位をそれぞれいうものである。
ロ 「労働組合の正当な行為」とは、労働組合法上の労働組合員が行う行為であって、労働組合の社会的相当行為として許容されるものであるが、具体的には、団体交渉、正当な争議行為はもちろん、労働組合の会議に出席し、決議に参加し、又は組合用務のために出張する等の行為も含まれるものである。
これに該当しない行為としては、例えば、いわゆる政治ストや山猫ストがある。
なお、「労働組合の正当な行為」に該当するか否かは、主として派遣労働者が組合員となっている組合と労働者派遣をする事業主との間の問題として決定することとなると考えられる。
ハ 労働者派遣契約の解除が禁止される不当な事由は、労働関係において形成されている公序に反するものであり、その他には人種、門地、女性労働者が婚姻し、妊娠し、出産したこと、心身障害者であること、労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、又はこれを結成しようとしたこと、法第40条第1項の規定により派遣先へ苦情を申し出たこと、労働者派遣の役務の提供を受ける者が法に違反したことを関係行政機関に申告したこと等も含まれるものである。
ニ 「理由として」とは、国籍、信条、性別、社会的身分、派遣労働者が労働組合の正当な行為をしたこと等の事由が労働者派遣契約の解除の決定的原因となっていると判断される場合をいう。この場合、当該事由が決定的原因であるものか否かについては、個々具体的事実に即して判断する。
4 派遣労働者の保護等のための労働者派遣契約の解除等
(1) 概要
労働者派遣をする事業主は、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者が、当該派遣就業に関し、法又は法第3章第4節の規定により適用される法律の規定(これらの規定に基づく命令の規定を含む。)に違反した場合においては、当該労働者派遣を停止し、又は当該労働者派遣契約を解除することができる(法第28条)。
(2) 意義
イ 法第31条の規定による派遣元事業主の適正な派遣就業の確保を実質的に担保するためのものである。
ロ 解除を行うことができるのは、業として行われると否とを問わず、労働者派遣をする事業主であり、派遣元事業主以外の事業主であっても労働者派遣をする場合には、当該解除を行える。
ハ 当該労働者派遣の停止又は労働者派遣契約の解除は、直ちに行うことができるものであり、当該労働者派遣契約において解除制限事由又は解除予告期間が定められていたとしても当該定めは無効となるものである。
ニ 一般に、契約は、解除事由につき別段の定めがあり、また、契約の当事者の合意がある場合を除き、法定の解除事由である債務不履行がある場合以外一方的に解除することはできず、一方的に解除した場合には、債務不履行で損害賠償の責を負うこととなるが、法第28条の規定により、当該労働者派遣の停止又は労働者派遣契約の解除により当該労働者派遣の役務の提供を受ける者が損害を被っても、解除又は停止を行った労働者派遣を行う事業主は債務不履行による損害賠償の責を負うことはない。
(3) 労働者派遣契約の解除等を行える具体的事由
労働者派遣の役務の提供を受ける者が次の規定に違反した場合である。
① 法第39条から第42条まで、第45条第10項及び第14項並びに第46条第7項
② 労働基準法、労働安全衛生法、じん肺法、作業環境測定法、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律の規定であって法第3章第4節の規定により労働者派遣の役務の提供を受ける者に適用される規定(第8参照)
5 労働者派遣契約の解除の非遡及
(1) 概要
労働者派遣契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる(法第29条)。
(2) 意義
イ 労働者派遣契約は、労働契約と同様に継続的給付の実施を内容とするものであるため、契約の解除がなされた場合にその効果を遡及すると当該契約の当事者間に著しい不均衡が生じ、給付の返還を行うことが不可能となる等適当ではないことから、当該労働者派遣契約の解除の意思表示がなされたとき以後についてのみ解除の効果が生ずることとされたものである。
ロ 法第29条は、強行規定であり、当事者間において、労働者派遣契約においてこれに反する定めをしても無効となる。
6 派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置
(1) 概要
短期間の労働者派遣契約の反復更新に伴い、短期間の労働契約を反復更新することは、派遣労働 者の雇用が不安定になる面があり、望ましくないため、派遣労働者の雇用の安定が図られるように、派遣元事業主及び派遣先は、労働契約及び労働者派遣契約の締結に当たり必要な配慮をするよう努 めるとともに、労働者派遣契約の解除に際して、当該労働者派遣契約の当事者である派遣元事業主 及び派遣先が協議して必要な措置を具体的に定めることとしている。
また、労働者派遣の役務の提供を受ける者は、その者の都合による労働者派遣契約の解除に当たっては、当該労働者派遣に係る派遣労働者の新たな就業の機会の確保、労働者派遣をする事業主による当該派遣労働者に対する休業手当等の支払に要する費用を確保するための当該費用の負担その他の当該派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講じなければならないこととしている
(法第26条第1項第8号、法第29条の2、「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の2の
(2)(第6の27参照)及び「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の6の(1)(第7の19参照))。
(2) 派遣先の講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置
イ 労働者派遣契約の締結に当たって講ずべき措置
派遣先は、労働者派遣契約の締結に当たって、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合には、派遣先は派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること及びこれができないときには少なくとも当該労働者派遣契約の解除に伴い当該派遣元事業主が当該労働者派遣に係る派遣労働者を休業させること等を余儀なくされることにより生ずる損害である休業手当、解雇予告手当等に相当する額以上の額について損害の賠償を行うことを定めなければならないこと。また、労働者派遣の期間を定めるに当たっては、派遣元事業主と協力しつつ、当該派遣先において労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間を勘案して可能な限り長く定める等、派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な配慮をするよう努めること。
ロ 労働者派遣契約の解除の事前の申入れ
派遣先は、専ら派遣先に起因する事由により、労働者派遣契約の契約期間が満了する前の解除を行おうとする場合には、派遣元事業主の合意を得ることはもとより、あらかじめ相当の猶予期間をもって派遣元事業主に解除の申入れを行うこと。
ハ 派遣先における就業機会の確保
派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約の解除が行われた場合には、当該派遣先の関連会社での就業をあっせ
んする等により、当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること。ニ 損害賠償等に係る適切な措置
派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとし、これができないときには、少なくとも当該労働者派遣契約の解除に伴い当該派遣元事業主が当該労働者派遣に係る派遣労働者を休業させること等を余儀なくされたことにより生じた損害の賠償を行わなければならないこと。例えば、当該派遣元事業主が当該派遣労働者を休業させる場合は休業手当に相当する額以上の額について、当該派遣元事業主がやむを得ない事由により当該派遣労働者を解雇する場合は、派遣先による解除の申入れが相当の猶予期間をもって行われなかったことにより当該派遣元事業主が解雇の予告をしないときは30日分以上、当該予告をした日から解雇の日までの期間が30日に満たないときは当該解雇の日の30日前の日から当該予告の日までの日数分以上の賃金に相当する額以上の額について、損害賠償を行わなければならない。その他派遣先は派遣元事業主と十分に協議した上で適切な善後処理方策を講ずること。また、派遣元事業主及び派遣先の双方に責に帰すべき事由がある場合には、派遣元事業主及び派遣先のそれぞれの責に帰すべき部分の割合についても十分に考慮すること。また、当該派遣労働者に対しても、派遣元等の責めに帰すべき事由によって、派遣労働者の労働義務が履行不能となった場合は、民法第 536条第2項の規定による反対給付や労働基準法第26条の規定による休業手当を求めることができることを周知すること。
なお、派遣元事業主が派遣労働者を休業させる場合における休業手当に相当する額、又は派遣元事業主がやむを得ない事由により派遣労働者を解雇する場合における解雇予告手当に相当する額(=派遣先による労働者派遣契約の解除の申入れが相当の猶予期間をもって行われなかったことにより当該派遣元事業主が解雇の予告をしないときは30日分以上、当該予告をした日から解雇の日までの期間が30日に満たないときは当該解雇の日の30日前の日から当該予告の日までの日数分以上の賃金に相当する額)については、派遣元事業主に生ずる損害の例示であり、休業手当及び解雇予告手当以外のものについても、それが派遣先の責に帰すべき事由により派遣元事業主に実際に生じた損害であれば、賠償を行わなければならない。
ホ 労働者派遣契約の解除の理由の明示
派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合であって、派遣元事業主から請求があったときは、労働者派遣契約の解除を行った理由を当該派遣元事業主に対し明らかにすること。
(3) 派遣元事業主の講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置
イ 労働契約の締結に際して配慮すべき事項
派遣元事業主は、労働者を派遣労働者として雇い入れようとするときは、当該労働者の希望及び労働者派遣契約における労働者派遣の期間を勘案して、労働契約の期間を、当該労働者派遣契約における労働者派遣の期間と合わせる等、派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な配慮をするよ
う努めること。
ロ 労働者派遣契約の締結に当たって講ずべき措置
派遣元事業主は、労働者派遣契約の締結に当たって、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除が行われる場合には、派遣先は派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること及びこれができないときには少なくとも当該労働者派遣契約の解除に伴い当該派遣元事業主が当該労働者派遣に係る派遣労働者を休業させること等を余儀なくされることにより生ずる損害である休業手当、解雇予告手当等に相当する額以上の額について損害の賠償を行うことを定めるよう求めること。
ハ 労働者派遣契約の解除に当たって講ずべき措置
派遣元事業主は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約の解除が行われた場合には、当該労働者派遣契約に係る派遣先と連携して、当該派遣先からその関連会社での就業のあっせんを受けること、当該派遣元事業主において他の派遣先を確保すること等により、当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること。また、当該派遣元事業主は、当該労働者派遣契約の解除に当たって、新たな就業機会の確保ができない場合は、まず休業等を行い、当該派遣労働者の雇用の維持を図るようにするとともに、休業手当の支払等の労働基準法等に基づく責任を果たすこと。さらに、やむを得ない事由によりこれができない場合において、当該派遣労働者を解雇しようとするときであっても、労働契約法の規定を遵守することはもとより、当該派遣労働者に対する解雇予告、解雇予告手当の支払等の労働基準法等に基づく責任を果たすこと。
(4) その他
イ 労働者派遣契約の契約期間が満了する前に当該労働者派遣契約に基づく派遣就業をしている派遣労働者を交替させる場合は、当該派遣労働者について(2)のロ、ハ及びホ並びに(3)のロに準じた取扱いをすること。
ロ 労働者派遣契約の解除があった場合に、派遣元事業主が、当該労働者派遣をしていた派遣労働者との労働契約を変更するよう派遣労働者に強要することは適切ではない旨指導すること。