検証の視点 内容 事業としての評価 a.新しいまちづくりへの貢献 ・地域からの「学校を新しいまちづくりの核にしたい」との要望を受けて整備を決定したが、地域の核となり得たか b.近隣校の急増対策 ・栗⽊台小学校、白鳥中学校の児童・生徒急増に対する解決手段となりえたか c.小中学校合築の量的・質的効果 ・小中合築校の設置により、効率的な施設利用が図られたかまた、合築により小学校・中学校の学習的連携、指導的効果が得られたか 手法としての評価 d.サービスの質の確保と効率的な実施...
黒川地区小中学校PFI事業 総括評価
Ⅰ 事業の全体像
(8)契約金額 | 当 初:5,751,051,031 円 現 在:6,469,195,738 円(令和 3 年 6 月時点) ※主な変更契約内容:増築等による維持管理経費の増、児童生徒数の増及び中学校給食開始に伴う運営費の増 など(詳細は、8ページ参照) | ||
(9)支払方法 | 施設整備費相当額:3,909,094,897 円 ※施設整備費相当額のうち一括支払分(2,559,283,810 円)については、平成 20 年3月 31日に一括払い 維持管理費相当額:959,574,877 円、運営費相当額:959,469,391 円、情報システム初期整備費相当額:74,204,562 円、情報システム更新整備費相当額:147,072,778 円、情報システム維持管理費相当額:56,382,227 円、公租公課・保険料:16,691,417 円、消費税相当額: 346,705,589 円 ※施設整備費相当額の割賦支払分、その他のサービス料については、4半期毎に分割払い 上記金額は、全て令和 3 年 6 月時点 | ||
(10)VFM | 特定事業選定時 現在 | : : | 7.68% 8.59% |
(11)サービス対価以外 の事業者の収益 | なし | ||
(12) | 設計・建設業務 | ||
事業範囲及び業務内 | ①設計業務、②建設・工事監理業務 | ||
容の概要 | 維持管理業務 | ||
③建築物保守管理業務、④建築設備保守管理業務、⑤植栽・外構維持管理業務 | |||
⑥清掃業務、⑦環境衛生管理業務、⑧安全管理業務、⑨受付業務及びその他業務 | |||
⑩情報システム維持管理業務 | |||
運営業務 | |||
⑪小学校給食業務、⑫中学校給食業務、⑬中学校ランチサービス業務(中学校給食導入に伴い、 | |||
当該業務を平成 28 年 12 月廃止)、⑭地域交流センターランチサービス業務(中学校給食導入に | |||
伴い、当該業務を平成 28 年 12 月廃止) |
【外 観】 【配置図】
1.事業概要 | |
(1)対象施設 | 黒川地区小中学校新設事業 |
(2)事業概要 | 黒川特定地区区画整理事業(平成 3 年~平成 18 年)に伴い、栗木台小学校、白鳥中学校の児 童生徒数の急増に端を発し、さらに地域からの「学校を新しいまちづくりの核にしたい」との要望を受け、同一敷地内での小中学校合築整備を決定した。 本事業は、この決定を受け、平成 16 年度のPFI導入可能性調査により、速やかな学校施設 の整備、施設の適切な維持管理、ライフサイクルコストの削減、質的向上等を期待し、PFI 手法を活用した事業を実施した。 |
(3)施設概要 | ア 施設の立地条件 (所在地)川崎市麻生区はるひ野 4 丁目 8 番 1 号 (敷地概要)敷地面積:30,682.14 ㎡ 用途地域:第1種中高層住居専用地域建ぺい率:60% 容積率 :200%(地区整備計画により 100%に制限)防火指定:準防火地域 イ 施設概要 (施設概要) ・小中学校校舎等学校施設(延床面積:21,481 ㎡) 小学校校舎、小学校体育館/中学校校舎、中学校体育館/給食室、格技室(柔道・剣道場)、プール ・わくわくプラザ(延床面積:約 160 ㎡) 児童が、地域の人々との関わり、遊び等による豊かな生活体験を通して、生きる力、創造性豊な心、共感する心を育むための施設(市の「小学校施設を活用した児童の健全育成事業」(わくわくプラザ事業)を実施するための施設)⇒わくわくプラザ室/スタッフルーム ・地域交流センター(延床面積:約 370 ㎡) まちづくりの核、地域活動の拠点施設⇒多目的ホール/ミーティングルーム/コミュニティサロン/調理室/受付・事務スペース (クラス数、児童・生徒数)(令和 2 年度) ・小学校・クラス数:34 クラス(1年生:4 クラス、2 年生~6 年生:5 クラス×5 学年=25 クラス、特別支援学級:5 クラス)・児童数:1,011 人 ・中学校・クラス数:15 クラス(各学年:4 クラス、特別支援学級:3 クラス)・生徒数:455 人 |
(4)事業期間 | 平成 18 年 8 月 31 日(契約締結日)~令和 5 年 3 月 31 日 ・設計及び建設期間 平成 18 年 8 月 31 日~平成 20 年 2 月 ・維持管理運営業務準備期間 平成 20 年 2 月末日~同年 3 月末日 ・供用開始 平成 20 年 4 月 ・維持管理・運営業務 平成 20 年 4 月~令和 5 年 3 月 |
(5)事業方式 | PFI(BTO)方式 |
(6)選定方式 | 総合評価一般競争入札方式 |
(7)事業主体 | はるひ野コミュニティサービス株式会社 (構成企業:三菱UFJリース(株)、松井建設(株)、(株)ハリマビステム、コクヨマーケティング(株)、(株)東洋食品、(株)豊建築事務所 |
2.事業実施スケジュール | ||
実施方針の公表 | 平成 17 年 | 6 月 21 日 |
特定事業の選定 | 平成 17 年 10 月 20 日 | |
入札公告(1回目) | 平成 17 年 10 月 25 日 | |
入札公告(2回目) | 平成 18 年 | 5 月 25 日 |
落札者の決定 | 平成 18 年 | 8 月 1日 |
基本協定書の締結 | 平成 18 年 | 8 月 28 日 |
仮契約の締結 | 平成 18 年 | 8 月 31 日 |
議決・契約の締結 | 平成 18 年 | 9 月 14 日 |
引渡し・供用開始 | 平成 20 年 | 2 月 29 日 |
事業期間終了 | 令和 5 年 | 3 月 31 日 |
●翌月 10 日までに月報を学校(市)へ提出。 (市側) ●月報に記載の内容が維持管理業務等に係る業務実施基準を満たしていることを確認。 ③日報の提出と確認 (事業者側) ●作業日の翌日に学校(市)へ提出。 (市側) ●日報に記載の内容が維持管理業務等に係る業務実施基準を満たしていることを確認。 | ||
随時モニタリング | (市側) ●市は、必要に応じて、随時モニタリングを実施する。 随時モニタリングでは、事業者に通知した上で、本件施設の維持管理及び運営業務について説明を求め、又は本件施設内において、その業務内容を事業者及び業務受託者等の立会いの上、確認することができる。事業者は、当該説明及び確認の実施につき市に対して最大限の協力を行う。 ●具体的なモニタリングの方法及び項目については、本事業契約締結後に、甲が作成する モニタリング実施計画に基づき、市と事業者との協議を経て、市が決定する。 | |
(3)財務モニタリングの実施方法 | ||
財務モニタリング | (事業者側) ●事業年度の最終日より3ヵ月以内に、会社法(平成 17 年法律第 86 号)上の大会社に準じた公認会計士又は監査法人の監査済の財務諸表(会社法第 435 条第2項に規 定される計算書類(会社法第 435 条第2項に規定される計算書類及びこれらの付属 明細書をいう。)及び年間業務報告書を市に提出し、かつ、市に対して監査報告及び年間業務報告を行う。 (市側) ●事業者による本事業の維持管理、運営業務の実施は、事業者がPFI事業期間にわたり存続することが大前提となり、事業者の存続は、適切な財務基盤に立脚するものである。したがって、本事業における財務モニタリングは、公共側からその財務基盤の適切性を確認し、その結果に応じて、サービス供給の継続のため財務状況の改善を要求するために行うものである。 | |
(4)モニタリング結果に伴う措置等 | ||
事業契約書の規定 | 実施結果 | |
業務改善要求措置 | ●市は、事業者による要求水準に適合した本件事業の遂行を確保するため、本件事業の各業務につきモニタリングを行う。 ●モニタリングの結果、事業者による本件事業に遂行が要求水準を満たさないと甲が判断した場合には、市は、別紙に従って、 本件事業の各業務につき改善要求措置を行う。 | ●なし |
3.設計業務、施工・工事監理業務のモニタリング/完工確認 | ||
(1)モニタリング方法及び内容 | ||
設計業務 | (事業者側) ●提案書類及び設計計画書をもとに基本設計を開始し、市の確認後、実施設計を開始し市に提出する。 (市側) ●設計書類が要求水準書等もしくは協議において合意された事項に従っていない、 または要求水準書等において要求される仕様を満たさないと判断する場合、修正を求めることができる。 | |
施工・工事監理業務 | (市側) ●質問、説明を求め、報告、説明、又は立ち合いの結果、建設状況が要求水準書等及び設計書類の内容を逸脱していることが判明した場合、その是正を求めることができる。 (事業者側は、これに従わなければならない。) ●完工検査の結果、要求水準書等に定められた水準を満たしていない場合、事業者に対して補修もしくは改造を求め、又は改善要求を行うことができる。 | |
(2)モニタリング結果に伴う措置等 | ||
(事業)契約書の規定 | 実施結果 | |
業務改善要求措置 | ●是正の要求 | ●なし |
サービス対価の減額等 | ●なし | ― |
4.維持管理業務に係るモニタリング | |
(1)維持管理業務に係るモニタリングの実施方法 | |
書類検査によるモニタリング | 原則として、以下の方法によって行う。 ①年報の提出と確認 (事業者側) ●期末の翌月の 20 日までに年報を学校(市)に提出。 (市側) ●月報に記載の内容が維持管理業務等に係る業務実施基準を満たしていることを確認。 ②月報の提出と確認 (事業者側) |
5.業務見直しの仕組み | ||
事業契約書の規定 | 実施状況 | |
●市は、維持管理業務にかかる各業務について、維持管理要求水準書、運営業務要求水準書、事業契約書及び乙による提案書並びに業務計画書(本事業契約締結後に事業者が作成し市に対して提出。)に基づき、適正かつ確実なサービス提供がなされて いるかを確認するため、モニタリングを実施する。 | ●モニタリングにより事業契約書に規定する業務要求水準が達成されない、又は達成されないおそれがあると判断した場合には、改善通告、サービス料の減額、契約解 除等の措置を行うものとする。 |
6.契約期間終了時の対応 | |
設備の水準 | (事業者側) ●契約終了にあたっては、市に対して、要求水準書等記載の業務その他それに付随する 業務のために本件施設を市が継続使用できるよう本件施設の維持管理・運営業務に関して必要な事項を説明し、かつ、事業者が用いた維持管理・運営業務に関する操作要領、申し送り事項その他の資料を提供するほか、引継ぎに必要な協力を行う。 ●契約期間満了の 6 カ月前までに、契約期間満了後の本件施設、本件施設内の設備の修繕・更新の必要性について調査を行い、これを市に報告する。 (市側) ●契約期間満了の 1 年 6 カ月前から1年前の間に、契約期間満了時において要求水準書等に定められた要求水準が満たされるかを判断するために、別途協議により定められた事項について終了前検査を行う。事業者の責めに帰すべき事由によらないことが明らかな場合を除き、本件施設及び本件施設内の設備の状態が要求水準書等に定められた要求水準を満たしていないことが判明した場合(但し、通常の劣化、損傷は除く。)、市は事業者にこれを通知し、事業者は速やかにこれを修繕する。事業者がかかる修繕を行わなかった場合、市は、サービス購入費の支払を留保することができ、かつ、乙は、市の請求により、要求水準書等に定められた要求水準を満たすために必要な修繕費用を市に支払う。 |
なお、民活手法のうち、BTO方式やBOT方式、BOO方式についても検討を行ったが、市が施設所有者として 事業へ関与しやすいこと、施設所有にかかる公租公課が発生せず、その分財政負担の軽減につながること、確実な国庫補助を期待できること、民間事業者の参画しやすい事業スキームとなることといった理由から、PFI-BTO方式を検討することとした。
≪BTO方式≫
民間事業者が学校施設を設置、完成後に市に所有権を移転し、移転後は民間事業者が維持管理を行う事業方式
≪BOT方式≫
民間事業者が学校施設を設置、事業期間中は民間事業者が維持管理を行い、事業終了後に市に所有権を移転する事業方式
≪BOO方式≫
民間事業者が、設計、施工、維持管理、運営まで一括して行い、施設の所有権を民間に残したまま、維持管理運営を実施する。所有権は市に帰属しない。
検討に当たり、BTO方式によるVFM試算の結果、公共が直接実施した場合の公共負担額(PSC)より、PF Iで実施した場合の公共負担額が小さいという結果が得られた。
また、民間事業者へのヒアリングの結果、概ね事業規模、内容、立地ともに多くの事業者が関心を示すとともに、事業スキームについては、BTOが基本であると考えている事業者が多かったため、PFI-BTO手法を採用することとなった。
Ⅱ PFI手法の適用に至る経過
1.背景
はるひ野地区の開発に伴う近隣の栗木台小学校、白鳥中学校の児童生徒数の急増への対応に端を発し、さらに、地域からの「学校を新しいまちづくりの核にしたい」との要望をうけ、同一敷地内に小中学校合築での建設を決定した。本事業は、この決定を踏まえ、学校づくりの基本理念「地域と共に、小中 9 年を通して子ども達の豊かな心と個性 を育める環境の創造」に基づく、児童・生徒の個性を伸ばし、自主性と良心を育める学校づくり、さらには、新しいま ち=黒川の地域づくり・人づくりの核となる学校づくりを目指し、以下の目標に基づいた学校づくりを実施したもの
である。
視点 | 目標 |
教育 | ・9年間の成長を見通した教育目標を設定する。 ・子供達の成長過程を再考し、9年間の節を見直すと共に、節と節のスムーズな移行を行える「つなぎ」の仕掛けを生み出す。 ・教員-教員、教員-保護者、教員-地域、様々な場面で教育的連携を深める。 |
環境 | ・多様な教育環境を創出し、支え伸ばせる機能を持つ学習環境づくりを行う ・子供達の心身の健全な発達・成長の歩みを支える豊かな生活環境づくりを行う ・児童と生徒、児童・生徒と教員、教員と保護者・地域の心理的な距離感を緩和できる環境づくりを行う |
地域・ まちづくり | ・地域文化を創出し、継承する役割を担う学校作りを行う ・新しいまちづくり=ひとづくり=コミュニティ形成の核となる学校づくりを行う |
2.PFI導入可能性調査
本事業に関する民活導入の可能性調査(平成 16 年度実施)の中で、従来手法(分離・分割発注)で事業を実施した場合の市の財政支出とPFI手法で事業を実施した場合の市の財政支出の比較を行い、PFI手法導入により効率的な行政サービスの提供が可能であるかを検討するとともに、PFI手法を採用する場合の本事業への民間事業者の参入意欲についてヒアリングを実施した。
3.本事業の特定事業選定とPFI導入にあたっての期待
本事業は、平成 17 年 10 月に特定事業として選定し、選定にあたっての客観的評価の結果を以下のとおり公表した。
選定にあたっての客観的評価
【定量的評価】
財政負担額の削減❹ 約8%
【定性的評価】
ア 効❹的な維持管理・運営の実施
設計・建設・維持管理・運営までを一括して選定事業者に任せるため、業務毎に発注する場合と比較し、設計段階から維持管理・運営段階までの効率化やコストの最小化を視野に入れた整備が可能になります。
イ リスク分担の明確化による安定した事業運営
計画段階においてあらかじめ発生するリスクを想定し、その責任分担を市及び選定事業者の間で明確にすることにより、問題発生時における適切かつ迅速な対応が可能となり、業務の円滑な遂⾏や安定した事業運営の確保が期待できます。
ウ 財政支出の平準化
本事業に必要な費用(国庫補助対象を除く)を 15 年間にわたる維持管理・運営期間を通じて平準化し、サービスの対価として毎年一定額を支払うことから、財政支出を平準化することが可能になります。
その上で、前項の基本理念に基づく学校づくりにあたり、特に以下の効果を期待し、PFI手法により実施した。
⚫ 速やかな学校施設の整備
⿊川地区小中学校の整備に関しては、企画・計画段階から事業実施段階に⾄るまでに様々な調整を図るなど、一定の期間を要してきた。
よって、⺠間活⼒を活用し速やかに施設整備を⾏うことは、学校関係者をはじめ、地域住⺠等が期待しているところである。
⚫ 施設の適切な維持管理
学校施設は、学習や生活の場として子ども達が一日の多くの時間を過ごす場である。また子ども達を支える教職員の活動の場でもあり、地域活動の場ともなることから、より安全で快適に使用できるよう適切な維持管理を期待する。
⚫ ライフサイクルコストの削減
ライフサイクルコストの削減と毎年度における支出額の平準化が図られることを期待する。
⚫ 質的向上
限られた予算のなかで、事業者の創意工夫による提案によって、質的向上が図られた学校建設となることを期待する。
PFI導入への期待
Ⅲ 総括評価の目的と検証内容
1.総括評価(効果検証・課題把握)の目的
子どもたちの安全で快適な教育環境の実現と、低廉かつ良質な公共サービスの提供を継続するためには、事業期間中のモニタリングに加え、本事業の知見を次期事業に活かすことが重要である。本事業は令和4年度末に事業終了を 予定しており、これに当たっての総括評価を行うことにより、次期事業期間の実施に適した手法や民間活用のあり方について検証を実施する。
2.本事業の検証
総括評価においては、本事業のこれまでの報告書等を整理した上で、以下に示す検証のための視点に基づく評価と 課題把握を行う。
視点 | 検証内容 |
事業としての評価 | ・当初に期待した効果(定性的・定量的)が得られたか |
手法としての評価 | ・事業スキーム、リスク分担が妥当であったか |
施設としての評価 | ・施設、設備の現況は経過年数(要求水準)に対して適当か |
3.次期事業の検討
次期事業について、事業終了時の検証結果、事業を取り巻く状況変化、本事業への導入可能性のある手法の特質を 踏まえ、事業内容や民間活用範囲及び手法等を検討する。
視点 | 検証内容 |
次期事業の事業方針の整理 | 事業終了時の検証結果や事業を取り巻く状況変化を踏まえて、次期事業の方針を 検討し、整理する。 |
事業手法の検討 | 従来型手法をはじめ、様々な事業手法について検討し整理する。 |
業務範囲・分担の検討 | 次期事業の業務範囲及び分担について検討し整理する。新たに実施が必要となる 大規模修繕業務については、内容を検討し整理する。 |
民間事業者の意向調査 | 次期事業における事業手法を検討するにあたって、民間事業者の自らのノウハウ に基づく考えや意向を反映する目的として、サウンディング調査を実施する。 |
次期事業スキームにおける 総合評価 | VFMを算定し、民間活用の可能性、民間活用の場合における事業スキームにつ いて内容を検討し整理する。 |
Ⅳ 現PFI事業の事業評価(効果検証)
1.事業評価の目的と視点
本事業の検証にあたり、「事業」「手法」「施設」の視点ごとに評価を実施するため、評価項目の考え方を以下のとお り整理する。
検証の視点 | 内容 | |
事業としての評価 | a.新しいまちづくりへの貢献 | ・地域からの「学校を新しいまちづくりの核にしたい」との要望を受けて整備を決定したが、地域の核となり得たか |
b.近隣校の急増対策 | ・栗⽊台小学校、白鳥中学校の児童・生徒急増に対する解決手段となりえたか | |
c.小中学校合築の量的・質的効果 | ・小中合築校の設置により、効率的な施設利用が図られたか また、合築により小学校・中学校の学習的連携、指導的効果が得られたか | |
手法としての評価 | d.サービスの質の確保と効率的な実施 | ・事業期間にわたり、要求水準書等に示す水準以上の施設整備及びサービスの提供を効率的に実施し得たか |
e.財政負担の縮減 | ・本事業実施にあたり、当初期待した財政負担縮減が果たせたか | |
f.事業経営の安定性・継続性の確保 | ・PFI事業者は健全な財務状況を維持し、事業継続に支障はなかったか | |
g.事業スキームの妥当性 | ・事業スキーム(手法・方式・形態、業務範囲、事業期間等)は妥当であったか、またはどのような点が不都合であったか | |
h.リスク分担の妥当性 | ・リスク分担は適切であったか | |
施設としての評価 | i.運営施設の適切な保全の実施 | ・施設、設備の現況は、経過年数(または要求水準)に対して適当か |
2.事業としての評価
上記の検証の視点(a~c)により評価を行うものとする。
黒川特定地区区画整理事業(平成 3 年~平成 18 年)に伴う栗木台小学校・白鳥中学校の児童生徒数の急増への対応に端を発し、さらに、地域からの「学校を新しいまちづくりの核にしたい」との要望を受け、同一敷地内での小中学校合築整備を決定した。そこで、事業としての評価は、次の観点から検証を行うものとする。
(1)新しいまちづくりへの貢献:検証の視点 a
学校の新設に際し、当初は小学校のみの予定であったが、地域から、まちづくりの核としての学校整備の要望を受 け、小中学校合築とされた。また、開校前から、地域、行政、学校関係者の話し合いにより、「地域交流エリア」についてのコンセプトがまとめられ、開校後、この地域交流エリアは、「はるひ野黒川地域交流センター」として、開設当初においては、地域住民がボランティアとして運営に参画するとともに、毎年度において、多様な地域団体の活動の場として利用されている。また、最近では、はるひ野町内会が「読響サロンコンサート in はるひ野」を開催するなど、地域の核として、まちづくりに着実に貢献しているといえる。
(2)児童・生徒の急増対策:検証の視点b
従来、この地区の学区であった栗木台小学校・白鳥中学校については、当時の長期推計値により教室不足が生じることが想定され、学校適正規模の観点から受入困難となった。そのため、この学校新設事業により過大規模校の回避、 児童・生徒急増の対策が図られることとなった。
以下の表は、黒川地区小中学校の開校前後における関係する学校の学級数推移を示したものである。本校が開校し たことにより、栗木台小学校及び白鳥中学校の過大規模校化を回避することができ、教育環境の改善を図ることができたといえる。
一方で、開校間もなく、はるひ野小学校の児童数が想定以上に増加する見込みであることが判明した。そのことを受け、早急に対応する必要が生じたため、平成 21 年度に隣地(9,754.33 ㎡)を取得するとともに、平成 26 年度には増築棟などを供用開始し、必要となる教室数の確保を行った。
増築棟については、その施設の性質上、民間ノウハウを活かしたコスト削減や機能導入が困難であったことや維持管理業務等をSPC以外が行うことは学校運営に混乱をもたらす可能性があったため、設計・施工にあたっては分離分割発注により、管理については既存SPCとの契約変更により対応することとした。なお、設計などにあたっては、市と設計業者だけでなくSPCとも連携し、既存施設のコンセプトを踏まえた一体性のある建物となっている。
各学校の普通学級数推移(単位:クラス)
学校 | H18 | H19 | H20 | H21 | H22 | H23 | H24 | H25 | H26 | H27 | H28 | H29 | H30 | R1 | R2 | R3 |
栗木台小 | 28 | 30 | 23 | 24 | 24 | 24 | 24 | 24 | 23 | 22 | 22 | 22 | 22 | 21 | 21 | 21 |
はるひ野小 | ― | ― | 16 | 19 | 21 | 23 | 26 | 29 | 32 | 31 | 31 | 31 | 32 | 31 | 30 | 29 |
白鳥中 | 16 | 17 | 14 | 14 | 16 | 17 | 18 | 18 | 18 | 18 | 18 | 18 | 17 | 17 | 17 | 18 |
はるひ野中 | ― | ― | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 9 | 11 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 |
※学校教育法に定める学校規模の標準目安:12~18 学級、過大規模校の目安:31 学級以上
(3)小中学校合築の量的・質的効果:検証の視点c
量的効果として、管理諸室、特別教室等の小中共用により効率的な施設利用が図られ、施設建設における費用圧縮
が図られた。
【管理諸室、特別教室等の共用化】
職員室(1階)、事務室(1階)、保健室(1階)、図書室(2階)、理科室(2階)、プール(屋上)等
質的効果として、「ブロックに分けた教育目標」のもと、小中学校全体で取り組む各種行事や、児童生徒による交流活動、職員と児童生徒との交流、小・中学校の職員同士の交流による小中連携教育を通じた教育活動を実践することにより、中一ギャップ(※)の解消を効果的に進めることができている。
※中一ギャップ : 小学校を卒業して中学校へ進学した際、これまでの生活とは異なる新しい環境や生活スタイルなどに馴染めず、
授業についていけなくなったり、不登校やいじめが起こったりする現象
【ブロックに分けた教育目標(ハートフルはるひ野プラン)】
小学部1~4年・・・友達と仲良く・寛容な心(たいせつな自分、仲間づくりができる自分)小学部5年~中学部1年・・・集団への貢献(みんなのため役立つ自分)
中学部2年~3年・・・自信と誇り(生き方をみつめることができる自分)
3.手法としての評価
P.4 表中の検証の視点(d~h)により評価を行うものとする。
本事業は、「地域と共に、小中9年を通して子ども達の豊かな心と個性を育める環境の創造の基本理念を実現すること」を目的として、その目的を達成するにあたり手段としてPFIにより事業執行を行うものである。
そこで、手法としての評価は、次の観点から検証を行うものとする。
(1)サービスの質の確保と効率的な実施:検証の視点d
本事業は、特定事業選定時において、設計段階から維持管理・運営段階までの効率化への期待を表明するなかで、基本理念に基づく学校づくりにあたり、特に、①速やかな学校施設の整備、②質的向上が図られた学校建設、③施設 の適切な維持管理の効果を得ることを期待し、PFIを導入した。さらに、民間に委ねることによる効果が大きい業務は、法制面から可能な範囲で民間に委ねるとの方針から、④効率的な給食提供を期待した。
なお、サービスの質の確保と効率的な実施を図るためには、適切な実施体制が求められる。そこで、⑤組織運営及 び体制の面についてもモニタリング結果から検証する。
当初に期待したこれらの効果が、現PFI事業の実施を通し得られたかを次表の確認内容から検証する。
当初期待した効果 | 確認内容 |
①速やかな学校施設の整備 | 従来方式の場合(想定)と比較した現PFI事業での工期短縮期間 |
②質的向上が図られた学校建設 | 設計・建設業務の履⾏状況等に係るモニタリング結果 (要求水準で求められた事項及び審査時点で評価された提案事項が設計・建設に反映されたか) |
③施設の適切な維持管理 | 各年度の維持管理業務履⾏状況等に係るモニタリング結果 |
➃効率的な給食提供 | 小学校給食業務、中学校及び地域交流センターランチサービスの業務履⾏状況等に係るモニタリング結果 |
⑤適切な組織運営及び体制 | 組織運営及び体制に係るモニタリング結果 |
1) 速やかな学校施設の整備
本市における従来方式(分離・分割発注)による一般的な学校建設のスケジュールと現PFI事業による実際の工期を比較すると以下のとおりである。本事業においての整備期間は約2年6ヵ月に収め、従来方式に比べ約1年6ヵ 月の期間短縮を実現している。これは、PFI事業方式の入札手続きにおいて、大方の基本設計を作成した上で入札に係る提案書を作成するため、基本設計・実施設計の期間を短期間で行うことができた。また、建設期間の短縮については、実施設計段階から建設に係る準備をすることができ、発注条件がタイトな中での対応可能な提案企業での応募となったこと等の要因によるものと考える。
従来手法と現PFI事業の整備期間の比較
1年度⽬ | 2年度⽬ | 3年度⽬ | 4年度⽬ | |||
従来方式 | 準備〜 基本設計 入札手続 (約 8 ヵ月) (約 4 カ月) | 実施設計 (約 12 ヵ月) | 準備〜入札手続 (約 6 カ月) | 引 建設(約 17 ヵ月) 越 | ||
現PFI 事業 | (基本設計) 実施 ( 実施方針公表〜入札手続 (約 11 ヵ月) | 基本・ 設計 約5か月) (準備) | (実施設計) 建設 (約 13 ヵ月) | 引越 | 約1年 | 6カ月間の期間短縮 |
(当時) |
※改正労働基準法等により、建設業において4週8休の導入が進んでいる、現在の社会情勢とは異なります。
この約 1 年 6 ヵ月の期間短縮は、民間ノウハウとして以下の点が提案・実施されたことに依拠するもので、PFI 導入に対し当初に期待した「速やかな学校施設の整備」が達成されたといえる。
• 落札者決定後、SPC設立作業・事業契約関連作業などと並行し、SPC自身のリスクで設計準備作業~基本設計を開始し、早期の工事着手を可能にするための設計期間を確保
• 工程内の重要ポイントであるマイルストーンの達成度と工事全体の工程に影響を及ぼすクリティカルパス(大アリー
ナ、プール部分の工程)に対する厳格な管理を行い、確実な工事を実施
設計建設期間短縮のための⺠間ノウハウ
2) 質的向上が図られた学校建設
本施設は、事業者が一体で「設計―施工―維持管理」を実施しており、運営を見据えた施設、また、小中学校の合築施設であることから 9 年間の学校生活を見据え、工夫のなされた施設となっている。
●動線計画においては、他の学年クラスを通らない移動を可能とし、また、縦動線と各階廊下の交差部分にラウンジ やリビング及び教師ステーションを配置することでコミュニケーションを創出できるつくりになっている。
●諸室計画においては、低学年・中学年・高学年ごとに特徴を捉え、オープンスペースの作り込みを充実させることや展示・掲示・発表の空間を充実させることにより、教育環境としての質を確保するとともに、子ども達がリラッ クスできるスペースに積極的に木質を採用することにより、子ども達の心にも配慮した計画となっている。
また、校務センターが中庭やグラウンドに面しており、子どもたちからは訪れやすく、先生からは子どもたちを見 守りやすい配置となっている。
●環境教材として使用できる建物として、屋上散水への雨水利用、夏季ナイトパージができる施設・設備計画となっているほか、トイレ空間の設計時に外部協力者の参加と子どもたちとのワークショップを開催し設計内容に反映させるなど、子どもたちとともにつくる施設とした。
●家具デザイナーとのコラボレーションにより、施設計画と合わせた低・中・高学年の特性に配慮した家具備品を導 入するだけでなく、シックハウス対策として竣工 3 ヶ月前の什器・備品の納入を実施するなど、児童・生徒の健康にも配慮された備品計画となっている。
●維持管理面については、児童・生徒の登校時間終了後は全ての校門を施錠し、来訪者の受付を管理事務室一元化することで、来訪者の監視体制が確実でわかりやすいだけでなく、警備専用無線機器や内線短縮ダイヤル設置など、 安全管理も見据えた計画となっている。また、清掃作業を効率的に実施するための仕様(低リップ型トイレ、ターゲットマーク付トイレ、防汚処理済み床材、光触媒加工の低汚染型外壁タイル)としている。
【オープンスペース、家具・備品】
【展示・発表の空間】
●これらは、施設計画の目標としての提案が、審査会から評価されたもので、その提案内容が設計・建設に反映されたことから、現PFI事業は要求水準以上の『質的向上が図られた学校建設』を実現したといえる。
【フロア図(4F・屋上)】
【学年ごとの特徴に応じたつくり(低学年)】 【学年ごとの特徴に応じたつくり(高学年)】
【小学1・2年ゾーンの「包(パオ)」】 【校務センター廻りの配置】
【フロア図(2F)】
【フロア図(1F)】
【フロア図(3F)】
【ナイトパージ】
【ワークショップの意見を踏まえたトイレ空間】
3) 施設の適切な維持管理
日常及び月次モニタリングを踏まえた各年度の維持管理業務に係るモニタリング結果は次表のとおりである。
維持管理・運営期間を通し、維持管理業務の業務区分ごとに設定した評価項目に従い市が評価しており、各業務が、 仕様書や要求水準書等の基準を遵守し、要求水準に概ね沿った、あるいは、それ以上の水準で履行された結果を示している。
この結果より、PFI導入に当たり当初期待した「施設の適切な維持管理』は、事業期間を通じ達成されたと判断できる。
各年度の評価(維持管理業務)
平成 | 令和 | |||||||||||||
区分 | 評価項⽬ | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 1 | 2 |
建築物保守業務 | 定期保守点検業務、修 繕、更新業務の適切性 | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A |
建築物設備保守 | 運転・監視等の適切実施による、安全快 適な教育環境の提供 | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A |
植栽・外構維持 管理業務 | 植栽管理、外構管理 等、敷地の環境保持 | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A |
清掃業務 | 清潔で健康的な学校環境の保持 | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A |
環境衛生管理業務 | 環境測定、保守点検等による学校環境の 保持 | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A |
安全管理業務 | 警備・防災・防火等に関する記録・報告、啓発活動、防犯診断に よる安全管理の実施 | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A |
情報システム維持管理業務 | 情報システムの更新や保守点検、運用サポート業務の適切実施 | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A |
受付・校務業務 | 受付案内、校務連絡、適切な応接・接遇 | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A |
物品管理等 | 什器備品等の保守管理は適切な実施 | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A |
経の節減や環境保全、省エネルギーへの取り組み | 経の節減や省エネルギー、環境保全に向けた取り組み | A | A | A | AA | A | A | A | A | A | A | A | A | A |
【評価区分】
AA(優 良) ︓仕様書や要求水準書等の基準を遵守し、その水準よりも特に優れた管理内容である A (良 好) ︓仕様書や要求水準書等の基準を遵守し、その水準に概ね沿った管理内容である
B (課題有) ︓仕様書や要求水準書等の基準を遵守し、管理内容の一部に課題がある
C (要改善) ︓仕様書や要求水準書等の基準を遵守しておらず、改善の必要な内容である
※この評価区分は、以下のモニタリング結果の表において同じ。
4) 効率的な給食提供
日常及び月次モニタリングを踏まえた各年度のモニタリング結果は次表のとおりである。
維持管理・運営期間を通し、運営業務の業務区分ごとに設定した評価項目に従い市で評価しており、各業務が仕様 書や要求水準書等の基準を遵守し、要求水準に概ね沿った、あるいは、それ以上の水準で履行された結果を示している。
この結果より、PFI導入に当たり当初期待した「効率的な給食提供』は、事業期間を通じ達成されたと捉えることが可能と判断できる。
各年度の評価(運営業務)
平成 | 令和 | |||||||||||||
区分 | 評価項⽬ | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 1 | 2 |
学校給食運営業務 | 各種業務計画書・報告書の作成・提出は適切か | A | A | A | A | A | A | A | A | AA | A | A | A | A |
給食提供業務等は要求水準書・提案書等に基づく適切実施 | A | A | A | A | A | A | A | A | A | AA | A | A | A | |
給食設備の維持管理は適切か | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | |
衛生管理の実施状況は適切か | A | A | A | A | A | A | A | A | AA | A | A | A | A | |
調理従事者の教育・訓練は充実しているか | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A |
5) 適切な組織運営及び体制
日常及び月次モニタリングを踏まえた各年度のモニタリング結果は次表のとおりである。維持管理・運営期間を通し、組織運営及び体制に対する評価項目に従い市が評価しており、組織運営及び体制に係る仕様書や要求水準書等の 基準を遵守し、要求水準に概ね沿った水準で組織運営及び体制が取られた結果を示している。
この結果より、PFI導入に当たり当初期待した「適切な組織運営及び体制』は、事業期間を通じ達成されたと捉えることが可能と判断できる。
各年度の評価(体制)
平成 | 令和 | |||||||||||||
区分 | 評価項⽬ | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 1 | 2 |
組織運営及び体制 | 法令、条例などに基づく、適 切な点検・報告 | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A |
事業計画に即し、人員を過不⾜なく配置しているか | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | |
必要な資格等を有する業務担当者の確保、その能⼒向 上のための適切な教育・研修 | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | |
業務日報、日誌などを適切に記録、保管されているか | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | |
点検、修繕などの履歴が適切に記録、保管されているか | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | |
要求水準書・提案書等に基づく各種業務計画書・報告書類の作成・提出 | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | |
事故防止・安全確保のために必要な対策を講じているか | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | |
セルフモニタリング | セルフモニタリングが適切に⾏われているか | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A |
要望・苦情等への対応 | 学校関係者や利用者の意⾒を聞く仕組みや、苦情や要 望、意⾒等の適切に対応 | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A |
緊急時の対応 | 事故や災害時等緊急時の連絡体制、対応マニュアルなど が十分に整備されているか | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A | A |
以上から、仕様発注による従来型手法だと、通常、設計と維持管理の受託会社が異なること、また維持管理に関する業務ごとに携わる受託会社が複数となることによりトラブル等への対応に時間を要することも考えられるが、本P FI事業においては事業主体が単一となり、維持管理面を考慮した設計がなされており、建物維持管理業務と給食提 供業務を全体的な施設管理として運営することができ、適切な学校運営に資することができたといえる。
(2)財政負担の縮減︓検証の視点 e
事業終了時点のVFM(令和 3 年 8 月算定)につき、実際のサービス料支払いに基づき算定した結果は次表のとおりである。
特定事業選定時に見込んだ 7.68%を超える 8.59%のVFMを達成しており、現PFI事業は当初期待したとおりの財 政負担の縮減を果たしたと評価することができる。
PSC(公共が直接実施する場合のコスト) (千円)
事業終了時 | 特定事業選定時(参考) | 増減率 | 備考(増減理由等) | |
収入計 ① | 2,293,347 | 2,271,532 | 0.96% | |
起債 | 1,218,000 | 1,319,048 | ▲7.66% | ・PFIの場合と同額を反映 |
補助⾦ | 1,075,347 | 952,484 | 12.90% | ・PFIの場合と同額を反映 |
支出計 ② | 7,576,214 | 7,092,204 | 8.25% | |
開設関連 | 128,913 | 128,913 | 0.00% | |
設備投資 | 4,395,629 | 4,395,629 | 0.00% | |
維持管理・運営 | 1,625,893 | 1,024,393 | 58.72% | ・学校施設の増床に伴う維持管理対象エリアの拡張及び中学校給食の開始及び小中学校給食配食数の変更を反映 |
保険料 | 2,673 | 2,457 | 8.79% | 実績値を反映 |
起債償還(元⾦) | 1,218,000 | 1,319,048 | ▲7.66% | ・PFIの場合と同額を反映 |
起債償還(利息) | 205,107 | 221,764 | ▲7.51% | ・PFIの場合と同額を反映 |
負担額(名⽬値) ②-① | 5,282,867 | 4,820,672 | 9.59% | |
負担額(現在価値)A | 4,385,339 | 4,050,615 | 8.26% |
事業終了時 | 特定事業選定時(参考) | 増減率 | 備考(増減理由等) | |
収入計 ① | 2,298,725 | 2,300,686 | 0.00% | |
税収 | 5,378 | 3,439 | 56.38% | ・SPCの実際の純利益を元に再算定 |
起債 | 1,218,000 | 1,344,762 | ▲9.43% | ・実績値を反映(補助⾦の増による起債額 の減) |
補助⾦ | 1,075,347 | 952,485 | 12.90% | ・実績値を反映(充当額の増) |
支出計 ② | 7,654,980 | 7,240,313 | 5.73% | |
開設関連 | 69,143 | 69,143 | 0.0% | |
サービス対価 (維持管理 等) | 3,563,206 | 2,997,898 | 18.86% | ・学校施設の増床に伴う維持管理対象エリア の拡張及び中学校給食の開始及び小中学校給食配食数の変更を反映(実績値) |
一括支払支出 (施設整備) | 2,559,284 | 2,559,285 | 0.0% | |
モニタリング | 37,567 | 45,000 | ▲16.52% | ・実績値を反映 |
保険料 | 2,673 | 2,457 | 8.79% | ・実績値を反映 |
起債償還(元⾦) | 1,218,000 | 1,344,762 | ▲9.43% | ・実績値を反映(起債額の減) |
起債償還(利息) | 205,107 | 221,768 | ▲7.51% | ・実績値を反映(起債額の減等による支払 利息の減) |
負担額(名⽬値) ②-① | 5,356,254 | 4,939,627 | 8.43% | |
負担額(現在価値)B | 4,008,429 | 3,739,414 | 7.19% |
PFI方式で実施する場合のコスト (千円)
VFMの算定結果(現在価値ベース)
事業終了時 | 特定事業選定時(参考) | |
A︓PSC | 4,385,339 千円 | 4,050,615 千円 |
B︓PFI方式で実施する場合のコスト | 4,008,429 千円 | 3,739,414 千円 |
C︓財政負担削減額(A-B) | 376,910 千円 | 311,202 千円 |
D︓財政削減率(C/A×100) | 8.59% | 7.68% |
なお、本事業は、事業期間中において次の内容の変更契約を行っており、これに伴い、PFI事業者へのサービス料の支払額も増減している。
・学校施設の増床に伴う維持管理対象エリアの拡張
・中学校給食の開始及び小中学校給食配食数の変更
・物価改定
したがって、事業終了時のVFM算定にあたっては、PSCについても、次のとおり、各業務費の設定を事業環境の変更に合わせ調整した。
維持管理費(PSC)の⾒直し
特定事業選定時 | 事業開始後 | |||
備考 | ||||
延床面積 | ||||
15,706.00㎡ | 15,706.00㎡ | 平成20〜25年度 | ||
20,506.15㎡ | 平成26年度 ・増築棟整備(4,022.54㎡) ・通級指導棟整備(777.61㎡) | |||
20,541.15㎡ | 平成28年度 ・わくわくプラザ増築(35.00㎡) | |||
維持管理 | ||||
(年間) | 24,401千円 | 24,401千円 | 平成20〜25年度 | |
31,859千円 | 平成26〜27年度 20,506.05㎡×1,554円/㎡ | |||
31,913千円 | 平成28年度以降 20,541.15㎡×1,554円/㎡ | |||
(原単位) | 1,554円/㎡ | ― | ― |
運営費(PSC)の⾒直し経過
小学校食数 | 中学校食数 | 計 | 年間額※ (千円) | 原単位 | ||
特定事業選定時 | ||||||
433 | - | 433 | 20,431 | 47千円/食 | ||
事業開始後 | ||||||
平成20年度 | 506 | 506 | 23,876 | |||
平成21年度 | 634 | 634 | 29,916 | |||
平成22年度 | 743 | 743 | 35,059 | |||
平成23年度 | 816 | 816 | 38,503 | |||
平成24年度 | 930 | 930 | 43,883 |
平成25年度 | 1,049 | 1,049 | 49,498 | |||
平成26年度 | 1,139 | 1,139 | 53,744 | |||
平成27年度 | 1,135 | 1,135 | 53,556 | |||
平成28年度 | 1,159 | 351 | 1,510 | 71,250 | ||
平成29年度 | 1,196 | 440 | 1,636 | 77,196 | ||
平成30年度 | 1,187 | 438 | 1,625 | 76,677 | ||
令和元年度 | 1,146 | 451 | 1,597 | 75,355 | ||
令和2年度 | 1,087 | 474 | 1,561 | 73,657 | ||
令和3年度(⾒込み) | 1,045 | 446 | 1,491 | 70,354 | ||
令和4年度(⾒込み) | 1,045 | 446 | 1,491 | 70,354 |
(参考)VFMの考え方
※原単位47千円/食×配食数
(注1)中学校給食は、平成28年度から事業開始
(注2)令和4年度の小学校食数、中学校食数は、令和3年度と同額と仮定している
物価改定
改定対象業務 | 業務(年間、千円) | 改定後業務(年間、千円) | 備考 |
情報機器リース料 | 8,023 | 7,702 | 平成25〜29年度 8,023千円×0.96 |
7,863 | 平成30年度以降 8,023千円×0.98※ |
※平成25年度改定率×平成30年度改定率=0.96×1.03=0.98(小数点3位以下切り捨て)
改定年度 | 指標 | 改定率 | |
平成25年度 | 「企業向けサービス価格指数」 情報サービス平均 | 維持管理相当 | 0.96 |
平成30年度 | 「消者物価指数」 総合/全国 | 更新整備相当 | 1.03 |
1 VFMとは
VFM(Value For Money)とは、「支払い(Money) 対して、最も価値の高いサービス(Value)を供給する」という考え方のことです。同一の公共サービスの提供水準の下で評価する場合、VFM の評価は、従来型手法で実施する場合と、PPP/PFI方式で実施する場合の公的財政負担の見込額の現在価値の比較 より行われ、PPP/PFI方式 おける公的財政負担額が少ない場合は VFM があること なります。
なお、PSC(Public Sector Comparator:従来型手法で実施する場合の事業期間中の公的財政負担の見込額の現在価値)と PPP/PFI 事業の LCC(Life Cycle Cost: PPP/PFI方式で実施する場合の事業期間中の公的財政負担の見込額の現在価値)が等しくても、PPP/PFI方式 おいて公共サービス水準の向上が期待できるときは、PPP/PFI方式 VFM があることなります。
2 現在価値化とは
VFM の算出 当たっての費用総額の比較は、現在価値化をして行います。これは、複数年 わたる事業の経済的価値を比較するため、将来の価値を、現在の価値置き換えた上で比較するという考え方よります。
現在価値での比較とは、例えば、同じ金額の公的財政負担額があるとしても、現在の 10 億円と、10 年後の 10 億円では価値が異なります。そこで、公的財政負担の見込額の算定当たっては、現在価値換算して比較します。現在価値を算定する当たって重要となる概念が「割引率」です。
「割引率」とは、支出または歳入する時点が異なる金額 ついて、これらを同じ現在の視点から比較するため 現在価値換算する際 用いるものです。具体的 は、割引率を r とした場合、来年の 100 円は、今年の 100/(1+r)円の価値 等しくなり、これが「来年の 100 円」の現在価値です。
例えば、割引率を 2.5%とすると「来年 100 円」の現在価値は 97.6 円となります。97.6 円を 2.5%で運用すれば、1 年後 100 円となるという関係です。
なお、割引率 ついては、「VFM(Value For Money) 関するガイドライン」 おいて、「リスクフリーレートを用いることが適当である。例えば、長期国債利回りの過去の平均や長期的見通し等を用いる方法がある。」と記載されています。
(出典:PPP/PFI方式導入優先的検討規程運用の手引(平成 29 年 1 月内閣府民間資金等活用事業推進室)より抜粋)
(3) 事業経営の安定性・継続性の確保︓検証の視点f
毎事業年度にPFI事業者より提出される財務書類を確認する財務モニタリング結果は次表のとおりである。
維持管理・運営期間を通し、財務状況は健全であり、事業期間の途中で経営主体が破綻する懸念はなく、「事業経営 の安定性・継続性」が確保されていたと評価できる。
各年度の評価(安定性・継続性)
平成 | 令和 | |||||||||||||
区分 | 評価項⽬ | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 1 | 2 |
安定性・継続性 | 財務状況は健全であり、経営指標に懸念材料はない | AA | AA | AA | AA | AA | AA | AA | AA | AA | AA | AA | AA | AA |
なお、維持管理・運営期間の財務安定性を、毎期の損益計算書による当期利益及び貸借対照表による利益剰余金の推移から確認すると下図のとおりであり、平成 25 年度、平成 27 年度、平成 29 年度、令和元年度に当期利益の落ち
込みが見られ、特に大きな落ち込みがあった平成 29 年度及び令和元年度は当期純損失を計上している。
しかし、これは、本事業は修繕費に対するサービス料が平準化のうえ年平均 9.3 百万円が市より支払われるが、それを超える修繕費が計上されたためであり、予め想定された事態である。利益剰余金は、先述のとおり当期利益の大きな落ち込みがあった年度には目減りしているものの、その場合でも 5 千万円以上を確保しており、事業の安定性を棄損するものではない。
このように、本事業では当期純損失を計上した年度もあったが、十分な手元流動性を確保することで対応しており、
事業の安定性・継続性に問題はなかったと評価できる。
維持管理・運営期間における財務安定性(PFI事業者)
(出典)PFI事業者の各期財務諸表
平成 18 年度〜令和4年度の通算損益計算における実績・計画比較(PFI事業者)
(千円)
実績A(※) | 計画B | 増減A-B | ||
営業損益 | 収入 | 6 ,009 ,347 | 5 ,615 ,753 | 393 ,594 |
サービス料収入 | 5,922,269 | 5,428,553 | 493,716 | |
ランチサービス収入 | 87,079 | 187,200 | ▲ 100,121 | |
支出 | 5 ,664 ,041 | 5 ,302 ,807 | 361 ,234 | |
販売費及び一般管理費 | 189,536 | 124,397 | 65,139 | |
支払維持管理費 | 901,777 | 738,847 | 162,930 | |
支払業務委託費 | 896,051 | 588,782 | 307,269 | |
支払ランチサービス費 | 87,079 | 187,200 | ▲ 100,121 | |
割賦原価 | 3,589,598 | 3,663,581 | ▲ 73,983 | |
営業損益 | 345 ,306 | 312 ,946 | 32 ,360 | |
営業外損益 | 営業外収益 | 1 ,270 | 0 | 1,270 |
受取利息 | 791 | 0 | 791 | |
その他 | 479 | 0 | 479 | |
営業外費用 | 236 ,278 | 227 ,028 | 9 ,250 | |
支払利息 | 234,190 | 227,028 | 7,162 | |
その他 | 2,088 | 0 | 2,088 | |
営業外損益 | ▲ 235 ,008 | ▲ 227 ,028 | ▲ 7 ,980 | |
経常損益 | 110 ,298 | 85 ,918 | 24 ,380 | |
法人税・住民税及び事業税 | 40,789 | 48,092 | ▲ 7,303 | |
利益剰余金( 事業終了時) | 69 ,509 | 37 ,826 | 31 ,683 |
※令和3、4年度値は計画値を使用
(4)事業スキームの妥当性:検証の視点g
学校施設の整備にあたっては、民間企業の設計能力、施工能力、維持管理能力、運営業務等を最大限に利用し、また、民間企業へ創意工夫を求めることで、事業効果を高めることが期待された。本事業では、設計、施工、維持管理等を一括して契約することによる市の財政負担の軽減や性能の維持など、低廉かつ良質なサービスの提供を目指すため、 PFI手法を導入している。
本業務では、設計・施工から維持管理に至る業務がPFI事業者の業務内容となっており、建物の引渡しから本契約の終了までの期間を通じて、要求水準書等に示された性能を維持するため、維持管理業務計画書に基づき、業務を行うこととなっていることから、事業スキームの妥当性、リスク分担の適切性についての検証も行うものとする。
本事業の事業スキームを次表にまとめた。
担に基づき、対象エリア拡張に応じた業務費の支払いについて契約変更がなされ、SPC側も適切に対応し、特段の 問題発生には至らず、適切に事業が遂行されている。
一方、業務範囲に関しては、情報システムの更新及び維持管理に係る懸念事項として、技術革新が速い分野である ため 15 年間の長期契約になじまない点、また現PFI事業者の保守の範囲とは別に学校側が個別に発注している保守の範囲があり、トラブルが生じた際に原因追及が難しい点があった。
このように、業務範囲の設定おいては、情報システムの更新及び維持管理は除くことが望ましいとの課題が認識さ
れたが、その他の事業スキームについては総じて妥当であると考え、本事業にとって適切な設定であった。
項⽬ | 内容 |
事業手法・方式 | PFI―BTO |
事業形態 | サービス購入型 |
業務範囲 | • 設計・建設業務 設計業務、建設・工事監理業務 • 維持管理業務 建築物保守管理業務、建築設備保守管理業務、植栽・外構維持管理業務、清掃業務、 環境衛生 管理業務、安全管理業務、受付業務及びその他業務、情報システム維持管理業務 • 運営業務 小学校給食業務、中学校給食業務(中学校給食導入に伴い、平成29年1月に追加)中学校ランチサービス業務(中学校給食導入に伴い、平成28年12月に廃止) 地域交流センターランチサービス業務(中学校給食導入に伴い、平成28年12月に廃止) |
事業期間 | 15年間(維持管理運営期間) |
1) 事業手法・方式、事業形態、事業期間
事業手法・方式においては、PFI(BTO)方式で行ったが、市としては財政負担の平準化がなされ、また、一定 のVFMを実現できる見込みであり、財政負担の縮減が図られている。
次に、主な施設利用者が学校関係者であることから、施設の所有が市となるPFI―BTOは、学校運営、学校経 営上適切であった。
また、事業者にとっても、市からのサービス購入料以外の収入が得る機会がない(中学校及び地域交流センターのランチサービスは独立採算での事業であったが、主要業務ではなく、また事業途中により廃止となったため除く)ため、サービス購入型である、この方式は妥当であった。
事業形態としては、本事業が、新設学校の建築を含むことを踏まえると、金融、建設、維持管理、事務用品・什器、 給食、設計に携わる事業者で構成されていることが、事業規模・事業範囲に照らし適切であり、筆頭会社のマネジメントも適切に機能し事業を円滑に問題なく遂行させることができた。
事業期間については、長期事業期間の確約による参加意欲の創出という事業者募集の観点、設備等の耐用年数や技 術の陳腐化等の社会的変革を踏まえた一定の公共サービスの継続性の観点から 15 年間が妥当であると考える。
また、この手法の特徴の1つである一括発注が、設計と工事の連携を可能とし、速やかな学校施設整備に繋がったといえる。
2) 業務範囲
本事業は、想定以上の児童・生徒の増加があったことから、業務範囲・条件が事業途中で変更されている。具体的には、児童・生徒の増加に伴う学校施設の増築に応じた維持管理業務対象エリアの拡張、及び小学校給食配食数の増加である。また中学校給食も事業途中に開始され、それに伴い業務範囲が拡大している。
こうした事業条件の変更に対しては、リスク分担で規定する「維持管理コストリスク-市の責めによる事業内容・用途変更等における維持管理費の増大」「給食提供リスク-生後数・教員数の増減による給食数の変動によるもの」の市負
【増築棟及び追加した敷地】
(5)リスク分担の妥当性:検証の視点h
本事業の市とPFI事業者とのリスク分担は次表のとおりである。
リスク分担表
段階 | リスクの種類 | リスクの内容 | リスクの分担 | ||
市 | 事業者 | ||||
選定段階 | 入札説明書・募集要項リスク | 入札説明書及び募集内容の誤りに関するも | ● | ||
計画変更リスク | 市の指示による事業内容の変更に関するもの | ● | |||
応募リスク | 応募用の負担に関するもの | ● | |||
契約締結リスク | 市事由による契約締結の遅延、締結不能 | ● | |||
事業者事由による契約締結の遅延、締結不能 | ● | ||||
議会不承認による締結不能 | ● | ||||
全段階共通 | 政治関連リスク | 法制度・法令変更リスク | 法制度の新設・変更に関するもの(本事業に直接関連する法令変更) | ● | |
法制度・許認可の新設・変更に関するもの(上記以外のもの) | ● | ||||
許認可リスク | 市が取得すべき許認可の遅延に関するもの | ● | |||
上記以外の許認可に関するもの | ● | ||||
税制リスク | 一般的な税制変更(新設含む)に関するもののうち、収益関係税の変更、外形標準課税に関するもの | ● | |||
一般的な税制変更(新設含む)に関するもののうち、上記以外の変更に関するもの | ● | ||||
消税の範囲変更及び税率変更に関するもの | ● | ||||
PFI事業に特定的な税制の新設・変更 | ● | ||||
政治関連リスク | 政策の変更 | ● | |||
社会জ५ॡ | 住⺠問題リスク | 市による施設の設置及び市の指示による設計・建設・維持管理・運営の仕方に対する住⺠反対運動・訴訟・苦情・要望に関するもの | ● | ||
上記以外のもの(事業者が⾏う調査、建設、維持管理に関するもの) | ▲ | ● | |||
環境問題リスク | 事業者が⾏う業務に起因する環境問題に関するリスク | ● | |||
第三者賠償リスク | 事業者が⾏う業務に起因する事故等 | ● | |||
上記以外のもの | ● | ||||
債務不履⾏জ५ॡ | ⺠間事業者デフォルトリスク | 事業者の事業破綻・事業放棄等 | ● | ||
事業者のサービス水準の低下 | ● | ||||
公共デフォルトリスク | 債務不履⾏等 | ● | |||
フォースマジュールリスク | 戦争、外国の武⼒⾏使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱、その他これらに類似した事変又は暴動、天災など、市又事業者のいずれの責にも帰すことのできない自然的や人為的な事象 | ● | ▲ | ||
設計・建設段階 | 設計リスク | 市の提示条件、指示の不備・変更による設計変更 | ● | ||
事業者の指示、判断の不備による設計変更 | ● | ||||
測量・調査リスク | 市による地形・地質等調査に関するもの | ● | |||
事業者による地形・地質等調査に関するもの | ● | ||||
上記以外のもの | ● | ||||
資⾦調達リスク | 資本⾦、融資など必要な資⾦の確保に関するもの | ● | |||
建設জ५ॡ | 発注者責任リスク | 事業者の発注による工事請負契約の内容及びその変更に関するもの | ● | ||
市側の要求による工事請負契約の内容及びその変更に関するもの | ● | ||||
工事遅延リスク | 工事が契約より遅延、完成しないリスク | ● | |||
市の要求による設計変更により遅延する、又は完工しない場合 | ● |
(出典)入札説明書、事業契約書より
段階 | リスクの種類 | リスクの内容 | リスクの分担 | ||
市 | 事業者 | ||||
設計・建設段階 | 建設জ५ॡ | 施工監理リスク | 施工監理に関するリスク | ● | |
コスト・オーバーランリスク | 市の指示による工事 の増大・予算超過 | ● | |||
上記以外の工事 の増大・予算超過(建材や人件の増大、下請け・雇用者の不正 ⾏為による工事 増大を含むがこれに限られない。) | ● | ||||
性能リスク | 要求仕様不適合 | ● | |||
施設瑕疵リスク | 施設に瑕疵が⾒つかった場合 | ● | |||
施設損傷リスク | 使用前に工事⽬的物、関連工事に関して生じた損害 | ● | |||
経済জ५ॡ | ⾦利リスク | 設計・建設期間中の⾦利の変動 | ● | ||
物価リスク | 設計・建設期間中の物価の変動 | ● | |||
移管段階 | 移管手続きリスク | 施設移管手続きに伴う用の発生に関するもの | ● | ||
維持管理運営段階 | 支払遅延・不能リスク | サービス対価の支払遅延・不能 | ● | ||
利用者対応リスク | 窓口または警備担当者レベルで対処可能な、メディアセンター、創作系特別教室等、開放ゾーン諸室、(仮称)地域交流センター、及びわくわくプラザの利用者からの苦情や施設内での利用者間トラブル | ● | |||
上記担当者等では対処不可能な、上記施設内での利用者間トラブル | ● | ||||
維持管理জ५ॡ | 性能リスク | 要求仕様不適合 | ● | ||
施設瑕疵リスク | 供用開始後 2 年以内(ただし、事業者に故意・重過失があるときは 10 年以内)に瑕疵が⾒つかった場合の修復にかかる用の負担 | ● | |||
供用開始後 3 年⽬以降(事業者の故意・重過失による開業後 10 年以内のものを除く)に瑕疵が⾒つかった場合の修復にかかる用の負担 | ● | ||||
維持管理コストリスク | 市の責めによる事業内容・用途変更等における維持管理の増大 | ● | |||
上記以外の維持管理の増大 | ● | ||||
施設損傷リスク | 劣化による施設の損傷 | ● | |||
事故・火災による施設の損傷(市及び第三者の責めによる場合) | ● | ||||
事故・火災による施設の損傷(事業者の責めによる場合) | ● | ||||
事故・火災による施設の損傷(帰責者を特定できない場合) | ● | ▲ | |||
什器備品リスク | 什器備品の破損・不具合(市及び第三者の責めによる場合) | ● | |||
什器備品の破損・不具合(事業者の責めによる場合) | ● | ||||
什器備品の破損・不具合(帰責者を特定できない場合) | ● | ▲ | |||
施設開放リスク | 事業者が、市との合意によるマニュアルを遵守しておらず、事故・犯罪が起こった場合 | ● | |||
上記以外のもの | ● | ||||
運営জ५ॡ | 性能リスク | 要求仕様不適合 | ● | ||
運営コストリスク | 市の責めによる事業内容・用途変更等における運営の増大 | ● | |||
上記以外の運営の増大 | ● | ||||
給食提供リスク | 給食設備事故、給食提供の遅延、食中毒等 | ● | |||
生徒数・教員数の増減による給食数の変動によるもの | ● | ▲ | |||
検収リスク | 事業者が「学校給食用物資規格基準」を遵守せず、食中毒等が発生した場合 | ● | |||
上記以外 | ● | ||||
経済リスク | ⾦利リスク | ⾦利の変動 | ● | ||
物価リスク | 物価の変動 | ● | ▲ | ||
革新リスク(陳腐化リスク) | 施設の機能的・社会的劣化 | ● | |||
情報機器の技術的陳腐化 | ● | ||||
その他 | 事業清算に伴うリスク | 事業会社の清算手続きに伴う評価損益 | ● |
事業期間中にリスクが顕在化した事態は、①アリーナの照明器具の製造終了に伴う改修工事の発生(「革新リスク-施設の機能的・社会的劣化」)、②ビオトープの改修工事の発生(「施設損傷リスク-劣化による施設の損傷」)及び③厨房設備の拡張工事の発生(「給食提供リスク-生後数・教員数の増減による給食数の変動によるもの」)であるが、市又 はPFI事業者は、いずれもリスク分担に従い適切に対処したと考える。
また、現PFI事業者の業務範囲に関連するリスクである④維持管理業務対象エリアの拡張(「維持管理コストリスク-市の責めによる事業内容・用途変更等における維持管理費の増大」)、⑤給食配食数の増加「給食提供リスク-生後数・教員数の増減による給食数の変動によるもの」も、前述のとおりリスク分担に従い対処し、適切に契約変更に繋げている。
さらに、今般のコロナ禍の対応については、本事業においては内閣府の指針「PFI事業における新型コロナウイルス感染症に伴う影響に対する対応等について」を踏まえ「不可抗力リスク」と整理し、維持管理・運営期間は市の負 担とのリスク分担に従い対処したことで、事業の安定性に資することができた。
これらの詳細は次のとおりである。
1)リスク顕在化とその対処
①メタルハライドランプ照明器具の製造終了について
(革新リスク-施設の機能的・社会的劣化の顕在化:市負担)
【事態】
・大アリーナ・小アリーナのメタルハライドランプ1灯の不点灯が発生(令和2年度)
【対処】
・今後、メタルハイドランプ自体が製造中止となり、将来的にはLED照明への改修が必要となるが、現PFI事業において改修業務は事業者の要求水準外となるため、市負担でのLED照明への改修を検討中
②ビオトープの修復(施設損傷リスク-劣化による施設の損傷:民間負担)
【事態】
・ビオトープ は防水シートが施工されていたが、植物の根や石等により、防水シートが破損し水が漏れやすく、冬場も凍結と解凍の繰り返しによりシートが破損
【対処】
・ゴム製の防水シート上に保護モルタルを溶接し、水漏れが生じないように改修(平成27年度)
・改修後、学校と協議を行い、ビオトープの管理区分を明確化
③厨房設備の拡張
(給食提供リスク-生後数・教員数の増減による給食数の変動によるもの:市主負担、民間従負担)
【事態】
・想定以上の児童生徒数の増加
【対処】
・施設の改修などを行い対応
2)新型コロナウイルスへの対応
①新型コロナウイルス感染症の契約上の扱いについて
・令和2年7月7日に内閣府より発行された「PFI事業における新型コロナウイルス感染症に伴う影響に対する対応等について」では、基本的に「不可抗力」によるものとの通知
・現事業契約書の「不可抗力」として、リスク分担に基づき原則市の負担として対応。
②パート調理員の雇用確保
・給食提供中止期間中も、市から予定されていた給食数に基づいたサービス対価の支払いをしたことで、SPCのパート調理員に対しても手当を支払うことが可能となった
・今後、同様な事態が生じた場合にも同様の対応となるよう、事業契約書への明記の検討を行う。
これらから、本事業においては、事業期間の中でリスクが顕在化する事態が生じたものの、リスク分担に従い適切に対処できており、リスク分担は妥当であったと評価できる。
なお、「不可抗力リスク」については、現PFI事業者から、その定義に「予見可能でも損害発生の防止手段を講じ ることができない又は困難な場合についても不可抗力に含む」ことを要望され、また「物価リスク」の顕在化の際に
適用する指標の見直しの必要性が指摘されるなど、リスクに関連する細かな規定に関して状況に応じた見直しが求められており、事業の実態に即した再検討が課題として挙げられる。
4.施設としての評価
P.4 表中の検証の視点(i)により評価を行うものとする。
(1)評価方法の概要
PFI事業者は、要求水準書や事業年度毎に作成する維持管理業務計画書に従い、維持管理業務を実施するとともに、要求水準書等に示す機能を維持するために行う修繕は、規模にかかわらず維持管理業務に含めることとされている。
こうした維持管理業務が適切に実施されていることは、前述の維持管理業務に関するモニタリングの結果に記載したとおりであるが、さらに、施設、設備の現況は、経過年数(又は要求水準)に対し適当か、といった視点から、次のとおり、劣化診断調査を次のとおり実施し、評価を行うものとした。
1)調査実施日
令和 2 年 12 月 5 日・6 日・25 日(追加調査)
2)調査対象箇所
・外壁調査
・防水調査
屋上(屋根、テラス、屋上庭園部分)防水、シール
・鉄部調査
設備機器、設備配管、電気配管、金属庇、各建具、その他金属部材
・内装調査
床・床下・壁・天井内、天井仕上げ、建具(ガラス含む)・ユニット類等
・機械設備
冷暖房機器(熱源機器、空調機、除湿機、冷却塔、配管含む)、換気設備、ダクト設備、自動制御設備、
排煙設備、厨房設備、給排水設備(受水槽含む)、衛生設備、給湯設備、ガス設備、ポンプ類、その他機器等
・電気設備
受変電設備、幹線設備、照明設備(灯具、ルーバー含む)、非常用照明・誘導灯設備、照明制御設備、コンセント設備、動力設備、弱電設備、自家発電設備、蓄電池設備、中央監視設備、避雷針設備、
電気時計設備、放送設備、ITV設備等
・その他
エレベータ、防災設備、消火設備、各室(視聴覚室等)音響映像設備、各室照明設備、駐車管制設備、外構(舗装・擁壁・塀など)
3)調査方法
・建築施設の調査及び判定
文部科学省の学校施設劣化診断調査(文科省学校施設の長寿命化計画策定に係る解説書)の方法で調査を実施し、調書作成
・電気設備及び機械設備の調査及び判定
国土交通省の「建築物修繕措置判定手法」による調査を実施し、判定を行った後、その結果を文部科学省の学校施設劣化診断調査の手法で調書を作成
(2)評価の結果
PFI事業者による「学習・教育活動と地域活動を行う最適な環境を整備すること、将来にわたり施設の性能を維 持し、“ながく”、“よく”使われる学校施設をめざすこと」を目的とした管理方針のもとでの毎年度の維持管理業務計画のもと施設全体として適切な維持管理がなされており、経年等による部分的な劣化はあるものの、おおむね良好な状況であった。
劣化状況等の主な内容は次のとおりである。
棟 | 健全度 (※) (MAX:100) | 劣化診断調査の結果の概要 | 主な劣化等の内容 |
A棟 | 53.07 | ・屋上(屋根)の防水層や仕上げ、外壁、軒天井の経年劣化 ・仕上げ材の修繕周期による修繕が必要 ・内装は、部分的に早急な修繕を要する箇所があるものの、全体的に良好 ・電気/機械設備は、経年劣化はあるものの、特筆する問題なし ・外構において、一部の斜面に土砂の流出が見られ、フェンスの基礎が露出(A棟屋内運動場) ・トップライトからの雨漏り(通級指導教育棟) | ・防水層の劣化 ・ドレーンのつまり、劣化 ・擁壁、フェンスの劣化 ・外壁躯体の劣化(クラック、欠損、浮き、剥離) ・外壁仕上げ材の劣化 ・外部建具(ドア、窓)の劣化 ・外階段の劣化 ・階段滑り止めの劣化 ・地盤沈下 ・犬走りの劣化 ・手すり類(目隠しパネル)の劣化 ・体育倉庫、屋外WCの劣化 ・天井仕上げ材の劣化 ・内部建具(引戸)の劣化 ・床仕上げ材の劣化 ・什器の転倒対策なし ・什器の劣化 ・防火扉の什器による閉鎖不能 ・トップライトの劣化(雨漏り) など |
A棟屋内運動場 | 75.00 | ||
A棟プール | 56.04 | ||
B棟 | 57.73 | ||
C棟 | 53.07 | ||
D棟 | 57.73 | ||
D棟屋内運動場 | 75.00 | ||
E棟 | 57.33 | ||
通級指導教育棟 | 70.74 |
※(各部位の評価点×当該部位のコスト配分)の合計/部位のコスト配分の合計
外壁仕上げ材の劣化(A棟)
擁壁の劣化(A棟屋内運動場)
防水層の劣化(B棟)
犬走りの劣化(D棟)
(3)今後の対応
令和3年7月7日において、契約期間満了前の終了前検査として再度現地に赴き、劣化状況等を調査・確認した。
この時点で、既にPFI事業者により修繕等がなされていた箇所もあったが、その他の箇所のうち、要求水準にか かわる部分については、今後、同事業者とのリスク分担を踏まえ、本事業期間が終了する令和5年3月31日までにおいて、修繕等がなされる予定である。
5.SPCからの意見
(1)事業スキームに関する意見
確認事項 | 確認内容 | 意見 | |
事業手法の妥当性 | 現PFI事業の事業規模に照ら し、民間による資金調達を要するPFI手法は妥当であったか、不都合な点・課題点はなかったか | ・本事業は設計、建設、維持管理、給食運営の各業務を一括発注する事業であり、PFI事業で実施する意味は大きかった ・他方、施設整備規模は約37億円(税抜)に対して、一 括支払金は約25億円あり、資金調達は約12億円に留ま り、民間資金活用としてのメリットは小さかった。 | |
事業方式の妥当性 | 本事業の業務内容に照らし、竣工後に施設の所有権を移転する BTO方式は妥当であったか、不 都合な点・課題点はなかったか | ・本事業の対象施設は小中学校であり、市が所有権を保持すべき施設のため、BTO方式が最も適切な事業方式 | |
事業形態の妥当性 | 本事業の業務内容に照らし、サービス購入型は妥当であった か、不都合な点・課題点はなか ったか | ・教育施設という性質上、サービス購入型は妥当 | |
事業期間の妥当性 | 本事業の業務内容に照らし、事業期間15年間は妥当であったか | ・資金調達や修繕計画策定の観点から、15年の維持管理運営期間は妥当であった。 | |
業務範囲と条件等の妥当性 | ① | 設計・建設を1年半で実施したことをどのように評価するか (特に問題なく履行できたか、あるいは履行したものの懸念 点、課題等があったか) | ・異例の速さで設計業務を進めることができたのは、民間事業者の責任と判断により、落札者決定の通知を頂いた時点からSPC設立手続きを進める一方、事業契約締結以前から設計の準備業務を進めていたことによる。 ・僅か1年1ヶ月の工期での工事完了は、設計会社と工事会社の連携により、実施設計完了から速やかに工事に着手でき、工事会社と工事監理者による綿密な工程管理により達成できたことによる。 ・しかしながら、振り返ると、工期は極めてタイトであり、確認申請手続きや近年の工事の逼迫状況を考えると、当時と同じことを実現することは難しい。 |
② | 中学校及び地域交流センターのランチサービスについて、利用者ニーズや採算性の点から当該サービスを民間の業務範囲とし独立採算としたことをどのよう に評価するか | ・ランチサービスは事前の予約制でのため事業者にとってリスクヘッジがなされており、運営の点、価格設定の点においても問題なし ・地域交流センターでランチサービスを予約したにもかかわらずサービスを利用しなかった事例もあり、今後 同様のサービスを実施する際には慎重な検討が必要 | |
③ | 児童・生徒数が市による想定以上に増加したことから、維持管理業務の対象エリアの拡張、給食配食数の増加(中学校給食の開始含む)が生じた点をどのように評価するか | ■増築棟の維持管理業務対象エリア拡張について ・市との協議により対象エリアを確定し、業務量の増加に応じた対価が事業契約の変更に反映されたため、適正であった。 ■要求水準外の業務の対応 ・要求水準書に記載がなく、小学校給食で実施していない、中学校給食のランチルームでの盛り付け業務を求められ対応したが、ランチサービスから中学校給食に 切り替わる際の仕様を綿密に協議した上で決定する必要があった。 ・小学校と中学校で別の揚物を同日に調理する献立があるため、調理後2時間喫食の観点から、釜もしくは揚物機の増設が必要(揚物調理可能な釜が3つあるが、献立によっては別の用途に使用しており、1つまたは2つ しか使用できないことがある。) |
確認事項 | 確認内容 | 意見 | |
④ | 情報システム維持管理業務を民間の業務範囲とした点をどのように評価するか | ■業務内容について ・情報システム管理(更新含む)は技術革新の激しいため分野であるため、15年の長期の事業期間には不向きであった。 ・現PFI事業では生徒向けにパソコン教室内のシステム 構築・保守管理業務を実施、校務センターの先生方向けPCは市が個別発注にて保守管理を実施しているが、過去に不具合発生時の原因追及(不具合の切り分け)に時間を要した経験があるため、学校運営に支障が出 ないよう、管理者の一本化が望ましい。 | |
その他 | その他、本事業の事業スキームに関し、事業実施するなかで評価し得る点、不都合であった点はあるか | ■業績監視について ・次期事業の業績管理要領(モニタリング方法)では、以下に該当する場合には減額ポイントは発生しない形での検討が必要 -事業者から発注者に提出される状況報告書により、発注者がやむを得ない事由と認めた場合 -事前に水準未達の発生について事業者から発注者に連絡があり、発注者がこれを認めた場合 -明らかに事業者の責めに帰さない事由によって水準未達が発生した場合で、事業者から発注者に提出される状況報告書により、発注者が事業者の責めに帰 さない事由と認めた場合 |
(2)リスク分担に関する意見
確認事項 | 意見 | ||
リスクの顕在化とその対処 | ① | 事業者負担のリスクにおいて、顕在化しそうであった、あるいは顕在化した際、事態に適切に対処(事前に回避、損害を最小限に抑える)できたか、またどのように対処したか、その際、リスク分担は適切であったと思うか | ■メタルハライドランプ照明器具の製造終了について (革新リスク-施設の機能的・社会的劣化の顕在化:市負担) [事態] ・大アリーナ・小アリーナのメタルハライドランプ1灯の不点灯が発生(令和2年度) [対処] ・今後、メタルハイドランプ自体が製造中止となり、将来的にはLED照明への改修が必要となるが、現PFI事業において改修業務は事業者の要求水準外となるため、市負担でのLED照明への改修を検討中 ■ビオトープの修復(施設損傷リスク-劣化による施設 の損傷:民間負担) [事態] ・ビオトープは防水シートが施工されていたが、植物の根や石等により、防水シートが破損し水が漏れやすく、冬場も凍結と解凍の繰り返しによりシートが破損 [対処] ・改善策として、ゴム製の防水シート上に保護モルタルを溶接し、水漏れが生じないように改修(平成27年度) ・改修後、学校と協議を行い、ビオトープの管理区分を明確化 ■厨房設備の拡張(給食提供リスク-生後数・教員数の増減による給食数の変動によるもの:市主負担、民間従負担) [事態] ・想定以上の児童生徒数の増加 |
確認事項 | 意見 | ||
[対処] ・施設の改修などを行い対応 | |||
② | 事業者負担のリスクにおいて、顕在化しそうであった、あるいは顕在化した際、リスク分担が不適切であったため、事態に適切に対処(事前に回避、損害を最小限に抑える)できなかったケースがあるか、その場合、リスク分担のあり方を含めどこに 問題があったか | 該当する事項なし | |
コロナ禍への対応 | 2020年のコロナ禍は事業遂行にどのような影響・リスクが生じたか、その事態にリスクマネジメントの点からどのように対処したか、また同様な事態が生じた場合、リスク分担としてはどのようにあるべきと考えるか | ■新型コロナウイルス感染症の契約上の扱いについて ・本年7月7日に内閣府より発行された「PFI事業における新型コロナウイルス感染症に伴う影響に対する対応等について」では、基本的に「不可抗力」によるものとの通知 ・現事業契約書の「不可抗力」としてのリスク分担に基 づく、リスク負担が適切 ■パート調理員の雇用確保 ・給食提供中止期間中も、市より予定されていた給食数に基づいたサービス対価の支払いを受けたことで、パート調理員に対しても手当を支払うことが可能となった ・今後、同様な事態が生じた場合にも同様の対応となる よう、事業契約書への明記を希望 | |
その他 | その他、リスク分担について評価し得る点、見直しが必要と考える点はあるか | ■不可抗力の定義の明確化 ・不可抗力の定義として、本事業の事業契約では「暴 風・豪雨・・・(中略)・・・その他に人為的な現象のうち通常予見可能な範囲外のもの(後略)」とあるが、予見可能でも損害発生の防止手段を講じることができな い又は困難な場合についても不可抗力に含まれるように規定を希望 【他のPFI事業の事例】 ・経験ある管理者及び事業者側の責任によっても予見し得ず、若しくは予見できてもその損失、損害又は傷害発生の防止手段を合理的に期待できないような一切の事由 ■物価変動のリスク分担(指標)について ・日銀の「企業向けサービス価格指数」や、厚労省の 「毎月勤労統計調査(実質賃金指数/調査産業計現金給与総額)」などの指標が使われているが、各指標が物価 変動を適切に反映していない。 ・業務費の全てが人件費ではないが、パートタイマーを雇用して、管理運営を行っており、最低賃金の上昇が圧迫要因となっていますので、指標の見直しや物件費・人 件費等を細分化した上で適切な指標を用いるなど物価改定の精緻化が必要 ・企業向けサービス価格指数や毎月勤労統計調査では5年毎の基準変更があるため、基準変更があった場合の指 数の接続などの対応が必要 |
6.評価のまとめ
(1)事業としての評価
⮚ 地域から、まちづくりの核としての学校整備の要望を受け、小中学校合築とされた。また、開校前から、地域、 行政、学校関係者の話し合いにより、「地域交流エリア」のコンセプトがまとめられ、開校後は、毎年度において、多様な地域団体の活動の場として利用されているとともに、さまざまなイベントが開催されている。
⮚ 児童生徒の急増対策として、本校が開校したことにより、栗木台小学校及び白鳥中学校の過大規模化を回避す
ることができ、教育環境の改善を図ることができた。
⮚ 小中学校を合築したことにより、管理諸室、特別教室等の小中共有による効率化が図られ、施設建設における 費用圧縮がなされた。
⮚ 小中学校全体で取り組む各種行事や、児童生徒による交流活動、職員と児童生徒との交流、小・中学校の職員同士の交流による小中連携教育を通じた教育活動を実践することにより、中一ギャップの解消に寄与している。
以上のことから、事業として、「新しいまちづくりへの貢献」、「近隣校の急増対策」、「小中学校合築の量的・質的効 果」の観点において、期待通りの効果が得られたといえる。
(2)手法としての評価
⮚ PFI事業方式の入札手続において、大方の基本設計を作成した上で入札に関する提案書を作成したことによる設計期間の短縮や、実施設計段階から建設に関する準備をすることができたことによる建設期間の短縮により、従来方式と比べ、整備期間を約1年6か月短縮でき、速やかな学校施設の整備を実現した。
⮚ 他学年を通らない移動を可能とした動線、コミュニケーションの創出に配慮したラウンジ等の配置、各学年の 特徴を捉えた諸室空間の充実と什器・備品の導入、子どもたちとのワークショップでの意見を踏まえたトイレ空間、来訪者受付の管理事務所での一元化など、質的向上が図られた学校建設を実現した。
⮚ 維持管理業務、給食運営業務、PFI事業者の組織運営・体制・対応に関する本市による各年度のモニタリン
グの結果は「A〈良好〉(仕様書や要求水準等の基準を遵守し、その水準におおむね沿った管理内容である。)」 以上を維持しており、施設の適切な維持管理、効率的な給食提供の実現とともにPFI事業者の適切な組織運営及び体制が確保されていた。
⮚ 事業終了時点のVFM(令和 3 年 8 月算定)は、特定事業選定時に見込んだ 7.68%を超える 8.59%を達成して
おり、当初期待した以上の財政負担の縮減を実現した。
⮚ PFI事業者において、当期純損失を計上した年度においても十分な手元流動性を確保することで対応していたことほか、事業の安定性・継続性に関する本市による各年度のモニタリングの結果は「AA〈優良〉(仕様書 や要求水準等の基準を遵守し、その水準よりも特に優れた管理内容である。)」を維持しており、事業経営の安定性・継続性が確保されていた。
⮚ 業務範囲の設定において、情報システムの更新及び維持管理は除くことが望ましいとの課題が認識された。一方、PFI(BTO)方式の事業手法は、市にとって財政負担の平準化に寄与するとともに学校の運営・経営上 適切であったこと、設計と工事の一括発注により速やかな学校施設整備につながったこと、15 年の維持管理運営期間は、長期事業期間の確約による事業者募集における参加意欲の創出の観点、設備等の耐用年数や技術の陳腐化等の社会的変革を踏まえた一定の公共サービスの継続性の観点から適当であったことなど、事業スキーム全体としては妥当であった。
⮚ 事業期間の中でリスクが顕在化する事態が生じたものの、リスク分担にしたがい適切に対処できており、リス ク分担は妥当であった。ただし、PFI事業者から、不可抗力の定義の見直しや、物価リスクが顕在化した際に適用する指標の見直しの必要性が指摘され、再検討すべき課題も明らかとなった。
以上のことから、手法として、「サービスの質の確保と効率的な実施」、「財政負担の縮減」、「事業経営の安定性・継 続性の確保」、「事業スキームの妥当性」、「リスク分担の妥当性」の観点において、期待通りの効果が得られたといえ
る。
(3)施設としての評価
⮚ PFI事業者は、要求水準書や事業年度毎に作成する維持管理業務計画書にしたがい、適切に維持管理業務を 実施している。
⮚ 令和 2 年 12 月に実施した劣化診断調査及び、令和 3 年 7 月に実施した終了前検査で発見した建築・設備の劣
化又は不具合箇所のうち要求水準にかかわるものは、契約期間を満了する令和 5 年 3 月 31 日までに解消される 予定であり、要求水準書に示す基準を維持した適正な状況で事業を終了する見込みである。
以上のことから、施設として、「運営施設の適切な保全の実施」の観点において、期待通りの効果が得られたといえる。
(4)まとめ
本事業は、栗木台小学校、白鳥中学校の児童生徒数の急増への対応に端を発し、「学校を新しいまちづくりの核にしたい」との地域の要望を受け、速やかな学校施設の整備、施設の適切な維持管理、ライフサイクルコストの削減、質的向上等を期待し、PFI手法の活用により実施したものである。
その評価のための「事業」、「手法」、「施設」のいずれの視点においても、(1)~(3)のとおり、期待を上回る効 果が得られたものと評価する。
Ⅴ 次期事業手法の検討
1.サウンディング調査の実施
はるひ野小中学校の管理運営における次期事業手法としては、引き続き、PFIで実施するほか、従来型手法(業務委託を含む。)、DBO等が想定される。
そこで、大規模修繕業務を追加した場合(PFI-RO、DBO)も含めた各手法導入の可能性について、令和2年10月に1回目のサウンディング調査を実施した。
結果、建設業、金融業、不動産業、サービス業等の7事業者に対話に参加いただいたところであり、その主な提案内容は次のとおりである。
対話項目 | 主な意見等 |
業務範囲 (発注範囲) | ・施設の長寿命化や事業費抑制、利用者の利便性向上等の観点から、大規模修繕(期初・期中の計画修繕)を含む維持管理・修繕更新・給食運営の一括発注が望ましいものの、事業者側で、修繕工事費の変動リスクを過大評価して費用を大きく見込む可能性がある。 ・全ての業務の個別発注が望ましい。個別発注した方が市内業者にとって仕事の確保につながる。 |
業務範囲 (修繕範囲) | ・現場と専門メーカーによる点検結果を確認しながら、市の修繕計画を立て、期初や期中に修繕・更新すべき工事項目を示すことが望ましい。 ・夏休み等の長期休暇で実施可能な修繕範囲の精査が必要。 |
事業手法 | ・事業者のノウハウ活用により、施設の長寿命化や全体業務費の低減、事務手続きの軽減効果等が期待できることから、複数業務の一括・性能発注が可能な PFI 方式(PFI-RO、PFI-O)、DBO 方式又は包括民間委託方式が望ましい。 ・性能発注に対し、提案を行うノウハウが無く参画のハードルが高くなるため、仕様発注が望ましい。 |
事業期間 | ・長期契約により施設の長寿命化、雇用の安定化、財政負担の平準化、SPC 設立コスト回収等のメリットが得られるため、一般的な PFI 事業同様 10~15 年程度が妥当である。 ・包括民間委託方式の場合の事業期間は 5 年でも可能である。 ・個別・仕様発注とした場合は、単年度契約が望ましい。 |
リスク分担 | ・次期事業の業務範囲に大規模修繕を含む場合は、初期事業との契約不適合責任を明確化させる必要がある。契約不適合責任の明確化にあたっては、保全・更新記録及び現時点での図面(改修履歴含む)の公表をはじめ、市・現 PFI 事業者・次期事業者による現地確認及び協議の実施が重要となる。 ・近隣対応・対策業務や防犯・防災管理業務および備品管理については、施設利用は学校側であること、学校施設は防 災拠点(避難所)等として利用されること等の学校施設の特徴を踏まえると、官民双方によるリスク負担が望ましい。 |
劣化診断 | ・次期事業の業務範囲に期初修繕や期中の計画修繕等の大規模修繕を含む場合には、市側が劣化診断を行い、事業者の公募の際には、当該劣化診断結果や 1 期目事業における修繕履歴、点検結果等を示す必要がある。 ・厨房機器については、修繕履歴の開示に加えて、現地見学会を実施し、応募者に目視の機会を提供することも有効で ある。 |
その他 | ・コンソーシアム組成にあたっては、事業の安定性確保やリスク分担の明確化の点から SPC を設立することが望ましい。 |
上記の調査結果により、はるひ野小中学校における大規模計画修繕、維持管理、給食運営事業の民間活用の余地を確認できたところである。一方、本市の学校の管理運営上の課題として、全校的な効率化を推進する必要があることから、その取組の一環として、はるひ野小中学校を含む麻生区内の小中学校を対象とし、これまで施設ごと、業務ご とに発注していた保守管理や軽易な修繕等の業務を一括して委託する包括民間委託方式の導入可能性について、令和 3 年 8~9 月において第 2 回目のサウンディング調査を次のとおり実施した。
対話項目 | 主な意見等 |
市場性 | ⬝ 首都圏に近く、雇用環境を考慮すると市場性は高い。 ⬝ 業務範囲・施設数から包括民間委託として成立する事業規模であり、市場性はある。 ⬝ 現PFI事業者の実績が過度に優遇されるようであれば、競争性が低いと判断することもある。 ⬝ 今後の事業の発展性によっては市場性はある。今回のモデルケースとされる麻生区内の学校だけでは市場性は低い。 |
業務範囲 | ⬝ 維持管理業務と給食運営業務は、コンソーシアムの組成が必要となり、事業者の参画のハードルとなることから分けた方がよい。給食運営業務は、別途業務委託等を検討すべきある。 ⬝ 維持管理業務と給食運営業務は関連性があり、これらを合わせた業務範囲とすることで、市の管理監督負担の軽減及び施設利用者側の快適性の向上に寄与する。 ⬝ 業務範囲及び施設数を広く、多くすることでスケールメリットが働き、効率的な管理運営が可能となる。 ⬝ 性能発注とすることで、民間ノウハウを活用したコスト削減が可能となる。 |
市のメリット | ⬝ ビルメンテナンスのプロが定期的に建物を検査することで、施設の予防保全や、児童生徒の安全確保等にもつながる。 ⬝ 修繕対応・契約事務の負担軽減に伴う職員人件費の削減や、本来業務への人材の充当が可能となる。 ⬝ プロポーザルの採点表等において、地元経済への波及効果について加点評価することで、地元事業者の雇用確保や市税確保にもつながる。 ⬝ 市内事業者を活用することにより、より効果的な学校運営や故障等の際の素早い対応などが可能となる。 ⬝ 維持管理・軽易工事水準が平準化できる。 ⬝ システム導入による施設情報等の一元管理が可能となる。 ⬝ マルチな業務に対応可能な人材の活用による横断的な管理により、コストメリットが期待できる。 ⬝ この事業規模において、包括民間委託のスケールメリットを活かしたコスト削減は難しい。 ⬝ 委託期間が複数年となることで、施設への知識が深まることなどにより、施設利用者の満足度アップが見込まれる。 |
事業者のメリット | ⬝ 協力会社網が拡大する。 ⬝ 他自治体への営業活動にも効果的であり、今後の受注機会の拡大などにつながる可能性がある。 ⬝ 中長期的な視点で維持管理業務にあたることができ、作業・業務効率が向上する。 |
事業費の考え方 | ⬝ 事業費は現状の入札価格の合計と比較して高くなる傾向がある。 ⬝ 維持管理業務の委託費は予算額の積み上げとしてほしい。 ⬝ マネジメント費を適切に計上・予算化してほしい。 ⬝ 市内事業者への発注金額を削減することで、包括管理業務受託者の利益を創出するものではない。 |
事業期間 | ⬝ 3~5 年がよい。/5~6 年程度がよい。/5 年(以上)がよい。/6年がよい。 →事業が安定期に入る前に契約期間が終了してしまうと、課題解決や追加の業務提案につながらない。 →3 年以下では、事業効果の検証・改善という点で短く、また、官民ともに再公募に向けた負担が大きい。 →長期的な管理により、施設の特性・建物劣化状況・管理上の注意点を把握でき、利用者の利便性が向上する。 →事業期間が短い場合、業務理解や地元事業者との関係構築が進んだタイミングで期間が終了してしまう。地元事業者においては、包括管理委託に慣れた段階で監督事業者が変わる可能性があり、 負担が大きい。 |
結果、ビルメンテナンス業を中心とした 12 事業者に対話に参加いただいたところであり、その主な提案内容は次のとおりである。
対話項目 | 主な意見等 |
事業への関心や参画の可能性 | ⬝ マネジメント費の妥当性・事業期間・リスク分担・準備期間・対象業務数等により総合的に判断する。 ⬝ 事業費が適切に確保されれば参画したい。 ⬝ 公募時点で債務負担行為を設定してほしい。 ⬝ 統括マネジメント業務に関する提案の余地があれば参画したい。 ⬝ 性能発注として民間の自由度が高ければ積極的に参画を検討する。 ⬝ 学校施設を対象とした事業は発展性があり関心が高い。 |
市内事業者の積極的活用 | ⬝ 維持管理業務は全て再委託による実施を想定している。可能な限り市内事業者への発注を考えている。 ⬝ 包括民間委託において、市内事業者を優先して積極的に活用していくことは当然である。 ⬝ 維持管理業務は、時間的メリットの大きさを踏まえ、市内事業者優先で再委託する予定である。 ⬝ 市内の雇用環境維持などを仕様に明記した方がよい。 ⬝ 市との災害協定の締結などの条件を付けることも考えられる。 ⬝ 定量的な目標を掲げて市内事業者の参画割合を管理していくことが重要である。 ⬝ 市内事業者への発注率はこれまでの実績から上昇が見込まれる。 ⬝ 市内事業者の持続的な経営・成長は、自治体にとって市民のサービス向上や安定した税収確保等の利益につながる。包括管理業務を通じて、市内事業者と自治体、民間事業者で三方良しの関係を構築することが重要である。 |
2.次期事業実施に向けた今後の取組
次期事業に向けては、「民間活用(川崎版PPP)推進方針」に掲げる「優先的検討プロセス」に基づき、民間活力 の導入を前提とし、検討する。
これに当たっての定性分析においては、「1」で実施したサウンディング調査と、これをもとにした事業者への追加
ヒアリングなどを行い、事業手法ほか、業務範囲、事業期間、リスク分担等を決定するとともに、従来方式と民間活力を導入する場合における事業費算定のもとでのVFM算定による定量分析を行うなどし、令和 5 年度当初の次期事業 開始に向け、サービスの質や施設利用の安全性の向上と、事業の効率化の両立に根差した事業手法を検討・決定する。