Contract
第1 労働者派遣事業の意義等
1 労働者派遣
(1) 「労働者派遣」の意義
労働者派遣とは、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まない」ものをいう(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「法」という。)第2条第1号)。
したがって、労働者派遣における派遣元、派遣先及び派遣労働者の三者間の関係は、①派遣元と派遣労働者との間に雇用関係があり、②派遣元と派遣先との間に労働者派遣契約が締結され、この契約に基づき、派遣元が派遣先に労働者を派遣し、③派遣先は派遣元から委託された指揮命令の権限に基づき、派遣労働者を指揮命令するというものである。
(2) 「労働者」及び「雇用関係」の意義
イ 「労働者」とは、事業主に雇用され、事業主から賃金を支払われる者をいう。
ロ 「雇用関係」とは、民法(明治29年法律第89号)第623条の規定による雇用関係のみではなく、 労働者が事業主の支配を受けて、その規律の下に従属的地位において労働を提供し、その提供した 労働の対償として事業主から賃金、給料その他これらに準ずるものの支払を受けている関係をいう。労働者派遣に該当するためには、派遣元との間において当該雇用関係が継続していることが必要で ある。
(3) 「指揮命令」の意義
イ 労働者派遣は、労働者を「他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」であり、この有無により、労働者派遣を業として行う労働者派遣事業(3参照)と請負により行われる事業とが区分される(第1-1図参照)。
第1-1図 労働者派遣事業と請負により行われる事業との差異
注文主
請負業者
派遣先
派遣元
○ 労働者派遣事業 ○ 請負により行われる事業労働者派遣契約 請負契約
雇用関係 指揮命令関係 雇用関係
労働者
労働者
ロ 「他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させる」ものではないとして、労働者派遣事業に該当せず、請負により行われる事業に該当すると判断されるためには、
第1に、当該労働者の労働力を当該事業主が自ら直接利用すること、すなわち、当該労働者の作業の遂行について、当該事業主が直接指揮監督のすべてを行うとともに、
第2に、当該業務を自己の業務として相手方から独立して処理すること、すなわち、当該業務が当該事業主の業務として、その有する能力に基づき自己の責任の下に処理されることが必要であるが、具体的には、次のような基準に基づき判断を行う(昭和61年労働省告示第37号)。
なお、労働者派遣を受け、当該派遣労働者を用いて、請負により事業を行うことが可能であるのは当然であるので留意すること。
労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準
(昭和61年労働省告示第37号)
Ⅰ この基準は、法の適正な運用を確保するためには労働者派遣事業に該当するか否かの判断を的確に行う必要があることにかんがみ、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分を明らかにすることを目的とする。
Ⅱ 請負の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させることを業として行う事 業主であっても、当該事業主が当該業務の処理に関し次の1及び2のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とする。
1 次の(1)から(3)までのいずれにも該当することにより自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること。
(1) 次の①及び②のいずれにも該当することにより業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。
① 労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと。
当該要件の判断は、当該労働者に対する仕事の割り付け、順序、緩急の調整等につき、当該事業主が自ら行うものであるか否かを総合的に勘案して行う。
「総合的に勘案して行う」とは、これらのうちいずれかの事項を事業主が自ら行わない場合であっても、これについて特段の合理的な理由が認められる場合は、直ちに当該要件に該当しないとは判断しない(以下同様。)という趣旨である。
〔製造業務の場合〕
受託者は、一定期間において処理すべき業務の内容や量の注文を注文主から受けるようにし、当該業務を処理するのに必要な労働者数等を自ら決定し、必要な労働者を選定し、請け負った内容に沿った業務を行っていること。
受託者は、作業遂行の速度を自らの判断で決定することができること。また、受託者は、作業の割り付け、順序を自らの判断で決定することができること。
〔車両運行管理業務の場合〕
あらかじめ定められた様式により運行計画(時刻、目的地等)を注文主から提出させ当該運行計画が安全運転の確保、人員体制等から不適切なものとなっている場合には、受託者がその旨を注文主に申し入れ変更できるものとなっていること。
〔医療事務受託業務の場合〕
受託業務従事者が病院等の管理者又は病院職員等から、その都度業務の遂行方法に関する指示を受けることがないよう、受託するすべての業務について、業務内容やその量、遂行手順、実施日時、就業場所、業務遂行に当たっての連絡体制、トラブル発生時の対応方
法等の事項について、書面を作成し、管理責任者が受託業務従事者に対し具体的に指示を行うこと。
〔バンケットサービスの場合〕
受託者は、バンケットコンパニオンがホテル等から業務の遂行に関する指示を受けることのないよう、あらかじめホテル等と挨拶、乾杯、歓談、催し物等の進行順序並びにそれぞれの時点におけるバンケットコンパニオンが実施するサービスの内容及びサービスの実施に際しての注意事項を打ち合わせ、取り決めていること。
② 労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を自ら行うこと。
当該要件の判断は、当該労働者の業務の遂行に関する技術的な指導、勤惰点検、出来高査定等につき、当該事業主が自ら行うものであるか否かを総合的に勘案して行う。
〔医療事務受託業務の場合〕
受託者は、管理責任者を通じた定期的な受託業務従事者や病院等の担当者からの聴取、又はこれらの者との打ち合わせの機会を活用し、受託業務従事者の業務の遂行についての評価を自ら行っていること。
(2) 次の①及び②のいずれにも該当することにより労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。
① 労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く。)を自ら行うこと。
当該要件の判断は、受託業務の実施日時(始業及び終業の時刻、休憩時間、休日等)について、事前に事業主が注文主と打ち合わせているか、業務中は注文主から直接指示を受けることのないよう書面が作成されているか、それに基づいて事業主側の責任者を通じて具体的に指示が行われているか、事業主自らが業務時間の実績把握を行っているか否かを総合的に勘案して行う。
〔製造業務の場合〕
受託業務の行う具体的な日時(始業及び終業の時刻、休憩時間、休日等)については、事前に受託者と注文主とで打ち合わせ、業務中は注文主から直接指示を受けることのないよう書面を作成し、それに基づいて受託者側の現場責任者を通じて具体的に指示を行っていること。
受託業務従事者が実際に業務を行った業務時間については、受託者自らが把握できるような方策を採っていること。
② 労働者の労働時間を延長する場合又は労働者を休日に労働させる場合における指示その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く。)を自ら行うこと。
当該要件の判断は、労働者の時間外、休日労働は事業主側の責任者が業務の進捗状況等をみて自ら決定しているか、業務量の増減がある場合には、事前に注文主から連絡を受ける体制としているか否かを総合的に勘案して行う。
〔製造業務の場合〕
受託業務の業務量の増加に伴う受託業務従事者の時間外、休日労働は、受託者側の現場責任者が業務の進捗状況等をみて決定し、指示を行っていること。
〔バンケットサービスの場合〕
宴席が予定した時間を超えた場合の請負契約に定められたサービス提供の終了時間の延長についてのホテル等との交渉及び延長することとした場合のバンケットコンパニオンへの指示については、現場に配置している責任者が行っていること。
(3) 次の①及び②のいずれにも該当することにより企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであること。
① 労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理を自ら行うこと。
当該要件の判断は、当該労働者に係る事業所への入退場に関する規律、服装、職場秩序の保持、風紀維持のための規律等の決定、管理につき、当該事業主が自ら行うものであるか否かを総合的に勘案して行う。
なお、安全衛生、機密の保持等を目的とする等の合理的な理由に基づいて相手方が労働者の服務上の規律に関与することがあっても、直ちに当該要件に該当しないと判断されるものではない。
〔医療事務受託業務の場合〕
職場秩序の保持、風紀維持のための規律等の決定、指示を受託者が自ら行う(衛生管理上等別途の合理的理由に基づいて病院等が労働者の服務上の規律に関与する場合を除く。)ほか、聴取及び打合せの際に、あるいは定期的な就業場所の巡回の際に、勤務場所での規律、服装、勤務態度等の管理を受託者が自ら行っていること。また、あらかじめ病院等の担当者に対して、この旨の説明を行っていること。
② 労働者の配置等の決定及び変更を自ら行うこと。
当該要件の判断は、当該労働者に係る勤務場所、直接指揮命令する者等の決定及び変更につき、当該事業主が自ら行うものであるか否かを総合的に勘案して行う。
なお、勤務場所については、当該業務の性格上、実際に就業することとなる場所が移動すること等により、個々具体的な現実の勤務場所を当該事業主が決定又は変更できない場合は当該業務の性格に応じて合理的な範囲でこれが特定されれば足りるものである。
〔製造業務の場合〕
自らの労働者の注文主の工場内における配置も受託者が決定すること。
また、業務量の緊急の増減がある場合には、前もって注文主から連絡を受ける体制にし、受託者が人員の増減を決定すること。
〔バンケットサービスの場合〕
業務に従事するバンケットコンパニオンの決定についてはホテル等による指名や面接選考等を行わずバンケット業者自らが決定すること。また、同一の宴席におけるバンケットサービスを複数のバンケット業者が請け負う場合には、異なるバンケット業者のバンケットコンパニオンが共同して1つのサービスを実施することのないよう、あらかじめ各バンケット業者が担当するテーブルやサービス内容を明確に区分していること。
2 次の(1)から(3)までのいずれにも該当することにより請負契約により請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること。
(1) 業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること。
(2) 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。
当該要件の判断に当たり、資金についての調達、支弁の方法は特に問わないが、事業運転資金等はすべて自らの責任で調達し、かつ、支弁していることが必要である。
〔医療事務受託業務の場合〕
受託業務の処理により、病院等及び第三者に損害を与えたときは、受託者が損害賠償の責任を負う旨の規定を請負契約に定めていること。
〔車両運行管理業務の場合〕
自動車事故等が発生し、注文主が損害を被った場合には、受託者が注文主に対して損害賠償の責任を負う(又は求償権に応ずる)旨の規定を契約書に明記するとともに、当該責任を負う意思及び履行能力を担保するため、受託者が自動車事故等に係る任意保険に加入していること。
〔給食受託業務の場合〕
契約書等に食中毒等が発生し損害賠償が求められる等注文主側が損害を被った場合には、受託者が注文主に対して損害賠償の責任を負う(又は求償権に応ずる)旨の規定を明記し ていること。
(3) 次のイ又はロのいずれかに該当するものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。
イ 自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること。
当該要件は、機械、設備、資材等の所有関係、購入経路等の如何を問うものではないが、機械、資材等が相手方から借り入れ又は購入されたものについては、別個の双務契約(契 約当事者双方に相互に対価的関係をなす法的義務を課する契約)による正当なものである ことが必要である。なお、機械、設備、器材等の提供の度合については、単に名目的に軽 微な部分のみを提供するにとどまるものでない限り、請負により行われる事業における一 般的な社会通念に照らし通常提供すべきものが業務処理の進捗状況に応じて随時提供使用 されていればよいものである。
〔製造業務の場合〕
注文主からの原材料、部品等の受取りや受託者から注文主への製品の受渡しについて伝票等による処理体制が確立されていること。また、注文主の所有する機械、設備等の使用については、請負契約とは別個の双務契約を締結しており、保守及び修理を受託者が行うか、ないしは保守及び修理に要する経費を受託者が負担していること。
〔車両運行管理業務の場合〕
運転者の提供のみならず、管理車両の整備(定期整備を含む。)及び修理全般、燃料・ 油脂等の購入及び給油、備品及び消耗品の購入、車両管理のための事務手続、事故処理全 般等についても受託することで注文主の自動車の管理全体を行っているものであり、また、当該受託業務の範囲を契約書に明記していること。
ロ 自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること。
当該要件は、事業主が企業体として有する技術、技能等に関するものであり、業務を処理する個々の労働者が有する技術、技能等に関するものではない。
Ⅲ Ⅱの1及び2のいずれにも該当する事業主であっても、それが法の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであって、その事業の真の目的が法第2条第1号に規定する労働者派遣を業として行うことにあるときは、労働者派遣事業を行う事業主であることを免れることができない。
ハ(イ) 「他人のために労働に従事させる」とは、当該労働への従事に伴って生ずる利益が、当該指揮命令を行う他人に直接に帰属するような形態で行われるものをいう。したがって、事業主が、自己の雇用する労働者を指揮命令する方法の一つとして、当該事業主自身の事業所の作業の遂行について専門的能力を有する「他人」に当該事業主自身のための指揮命令の実施を委任等の形式により委託し、当該指揮命令の下に自己の雇用する労働者を労働に従事させるような場合は、「他人のために労働に従事させる」とはいえず、労働者派遣には該当しない。
(ロ) 「労働に従事させる」の前提として場所的な移動は前提ではなく、他人が派遣元の事業所に出向いて指揮命令を実施する場合であっても、当該指揮命令に伴って生ずる利益が当該他人に直接に帰属する限りは労働者派遣に該当する。
(ハ) なお、「労働に従事させる」とは、派遣元が雇用主としての資格に基づき、労働者について自己の支配により、その規律の下に従属的地位において労働を提供させることをいうものであり、労働者に対する指揮命令に係る権限についても、派遣元から派遣先へ委託されてはいるが本来的には、派遣元に留保され、労働についても観念的には派遣元に提供されているものであることに留意する必要がある。
ニ ロに掲げる基準は労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準であるが、労働者派遣契約に係る規制(第7参照)、派遣労働者に係る雇用制限の禁止に係る規定及び就業条件の明示に係る規定の派遣元事業主以外の労働者派遣をする事業主についての準用(第8の5の(5)及び第8の6の(8)参照)、労働者派遣契約に関する措置に係る規定の派遣先以外の労働者派遣の役務の提供を受ける者についての準用(第9の2の(4)参照)並びに労働基準法(昭和22年法律第49号)等の適用に関する特例等の規定(第10参照)において必要となる「業として行わない労働者派遣」と請負の形態の区分においても、当該基準を準用するものとする。
(4) 出向との関係
イ 労働者派遣には、「当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まない」が、これによりいわゆる在籍型出向が除外される(第1-2図参照)。
第1-2図 労働者派遣と在籍型出向との差異
○ 労働者派遣 ○ 在籍型出向
労働者派遣契約 出向契約
派遣元
派遣先
出向元
出向先
雇用関係 指揮命令関係 雇用関係 雇用関係
労働者
労働者
ロ いわゆる出向は、出向元事業主と何らかの関係を保ちながら、出向先事業主との間において新た
な雇用契約関係に基づき相当期間継続的に勤務する形態であるが、出向元事業主との関係から、次の二者に分類できる。
① 在籍型出向
出向元事業主及び出向先事業主双方との間に雇用契約関係がある(出向先事業主と労働者との間の雇用契約関係は通常の雇用契約関係とは異なる独特のものである)。
形態としては、出向中は休職となり、身分関係のみが出向元事業主との関係で残っていると認められるもの、身分関係が残っているだけでなく、出向中も出向元事業主が賃金の一部について支払義務を負うもの等多様なものがある。
なお、労働者保護関係法規等における雇用主としての責任は、出向元事業主、出向先事業主及び出向労働者三者間の取り決めによって定められた権限と責任に応じて、出向元事業主又は出向先事業主が負うこととなる。
② 移籍型出向
出向先事業主との間にのみ雇用契約関係がある。
なお、労働者保護関係法規等における雇用主としての責任は、出向先のみが負うこととなる。ハ 移籍型出向については、出向元事業主との雇用契約関係は終了しており、労働者派遣には該当し
ない。
ニ 在籍型出向については、出向元事業主との間に雇用契約関係があるだけではなく、出向元事業主と出向先事業主との間の出向契約により、出向労働者を出向先事業主に雇用させることを約して行われている(この判断は、出向、派遣という名称によることなく、出向先と労働者との間の実態、具体的には、出向先における賃金支払、社会、労働保険への加入、懲戒権の保有、就業規則の直接適用の有無、出向先が独自に労働条件を変更することの有無をみることにより行う。)ことから、労働者派遣には該当しない。
ホ ニのとおり、在籍型出向は労働者派遣に該当するものではないが、その形態は、労働者供給((5)参照)に該当するので、その在籍型出向が「業として行われる」(3の(2)参照)ことにより、職業安定法(昭和22年法律141号)第44条により禁止される労働者供給事業に該当するようなケースが生ずることもあるので、注意が必要である。
ただし、在籍型出向と呼ばれているものは、通常、①労働者を離職させるのではなく、関係会社において雇用機会を確保する、②経営指導、技術指導の実施、③職業能力開発の一環として行う、
④企業グループ内の人事交流の一環として行う等の目的を有しており、出向が行為として形式的に繰り返し行われたとしても、社会通念上業として行われていると判断し得るものは少ないと考えられるので、その旨留意すること(3の(2)参照)。
へ 二重の雇用契約関係を生じさせるような形態のものであっても、それが短期間のものである場合 は、一般的には在籍型出向と呼ばれてはいないが、法律の適用関係は在籍型出向と異なるものでは ないこと(例えば、短期間の教育訓練の委託、販売の応援等においてこれに該当するものがある)。
ト なお、移籍型出向については、出向元事業主と労働者との間の雇用契約関係が終了しているため、
出向元事業主と労働者との間の事実上の支配関係を認定し、労働者供給に該当すると判断し得るケースは極めて少ないと考えられるので、その旨留意すること。
ただし、移籍型出向を「業として行う」(3の(2)参照)場合には、職業紹介事業に該当し、職業安定法第30条、第33条等との関係で問題となる場合もあるので注意が必要である。
チ いわゆる出向は、法の規制対象外となるが、出向という名称が用いられたとしても、実質的に労働者派遣とみられるケースがあるので注意が必要である。
(5) 労働者供給との関係
イ 労働者供給とは「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣法第2条第1号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないもの」をいう(職業安定法第4条第6項)。
ロ 労働者供給を「業として行う」(3の(2)参照)ことは、職業安定法第44条による労働者供給事業の禁止規定により禁止されることとなる。
ハ 労働者供給と労働者派遣の区分は次により行うこととする(第1-3図参照)。
(イ) 供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させる場合のうち、供給元と労働者との間に雇用契約関係がないものについては、すべて労働者供給に該当する。当該判断は、具体的には、労働保険・社会保険の適用、給与所得の確認等に基づき行う。
(ロ) (イ)の場合とは異なり、供給元と労働者との間に雇用契約関係がある場合であっても、供給先に労働者を雇用させることを約して行われるものについては、労働者派遣には該当せず、労働者供給となる(法第2条第1号)。
ただし、供給元と労働者との間に雇用契約関係があり、当該雇用関係の下に、他人の指揮命令を受けて労働に従事させる場合において、労働者の自由な意思に基づいて結果として供給先と直接雇用契約が締結されたとしても、これは前もって供給元が供給先に労働者を雇用させる旨の契約があった訳ではないため、労働者派遣に該当することとなる。
第1-3図 労働者派遣と労働者供給との差異
○ 労働者派遣 ○ 労働者供給
労働者派遣契約 供給契約 供給契約
派遣元
派遣先
供給元
供給先
供給元
供給先
雇用関係 指揮命 支配従属関係 雇用関係・ 雇用関係 雇用関係
労 働 者
労 働 者
労働者
令関係 (雇用関係を 指揮命令関係
除く。)
(ハ) (ロ)における「派遣先に労働者を雇用させることを約して行われるもの」の判断については、契約書等において派遣元、派遣先間で労働者を派遣先に雇用させる旨の意思の合致が客観的に認
められる場合はその旨判断するが、それ以外の場合は、次のような基準に従い判断するものとすること。
① 労働者派遣が法の定める枠組に従って行われる場合は、原則として、派遣先に労働者を雇用させることを約して行われるものとは判断しないこと。
② 派遣元が企業としての人的物的な実体(独立性)を有しない個人又はグループであり派遣元自体も当該派遣元の労働者とともに派遣先の組織に組み込まれてその一部と化している場合、派遣元は企業としての人的物的な実体を有するが当該労働者派遣の実態は派遣先の労働者募集
・賃金支払の代行となっている場合その他これに準ずるような場合については、例外的に派遣先に労働者を雇用させることを約して行われるものと判断することがあること。
ニ いわゆる「二重派遣」は、派遣先が派遣元事業主から労働者派遣を受けた労働者をさらに業として派遣することをいうが、この場合、当該派遣先は当該派遣労働者を雇用している訳ではないため、形態としては労働者供給を業として行うものに該当するものであり、職業安定法第44条の規定により禁止される。
これについては、派遣労働者を雇用する者と、当該派遣労働者を直接指揮命令する者との間のみにおいて労働者派遣契約(第7参照)が締結されている場合は、「二重派遣」に該当しないものである。したがって、労働者派遣契約を単に仲介する者が存する場合は、通常「二重派遣」に該当するものとは判断できないものであること(詳しくは(6)のロ及びハ参照)。
(6) ジョイント・ベンチャー(JV)との関係
イ JVの請負契約の形式による業務の処理
注文主
請負
JV
A B C
(イ) JVは、数社が共同して業務を処理するために結成された民法上の組合(民法第667条)の一種であり、JV自身がJV参加の各社
(以下「構成員」という。)の労働者を雇用するという評価はできないが、JVが民法上の組合である以上、構成員が自己の雇用する労働者をJV参加の他社の労働者等の指揮命令の下に従事させたとしても、通常、それは自己のために行われるものとなり、当該法律関係は、構成員の雇用する労働者を他人の指揮命令を受けて、「自己のために」労働に従事させるものであり、法第2条第1号の「労働者派遣」には該当しない。
しかしながら、このようなJVは構成員の労働者の就業が労働者派遣に該当することを免れるための偽装の手段に利用されるおそれがあり、その法的評価を厳格に行う必要がある。
(ロ) JVが民法上の組合に該当し、構成員が自己の雇用する労働者をJV参加の他社の労働者等の指揮命令の下に労働に従事させることが労働者派遣に該当しないためには、次のいずれにも該当することが必要である。
a JVが注文主との間で締結した請負契約に基づく業務の処理についてすべての構成員が連帯して責任を負うこと。
b JVの業務処理に際し、不法行為により他人に損害を与えた場合の損害賠償義務についてすべての構成員が連帯して責任を負うこと。
c すべての構成員が、JVの業務処理に関与する権利を有すること。
d すべての構成員が、JVの業務処理につき利害関係を有し、利益分配を受けること。
e JVの結成は、すべての構成員の間において合同的に行わなければならず、その際、当該J Vの目的及びすべての構成員による共同の業務処理の2点について合意が成立しなければならないこと。
f すべての構成員が、JVに対し出資義務を負うこと。
g 業務の遂行に当たり、各構成員の労働者間において行われる次に掲げる指示その他の管理が 常に特定の構成員の労働者等から特定の構成員の労働者に対し一方的に行われるものではなく、各構成員の労働者が、各構成員間において対等の資格に基づき共同で業務を遂行している実態 にあること。
① 業務の遂行に関する指示その他の管理(業務の遂行方法に関する指示その他の管理、業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理)
② 労働時間等に関する指示その他の管理(出退勤、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く。)、時間外労働、休日労働における指示その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く。))
③ 企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理(労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理、労働者の配置等の決定及び変更)
h 請負契約により請け負った業務を処理するJVに参加するものとして、a、b及びfに加えて次のいずれにも該当する実態にあること。
① すべての構成員が、業務の処理に要する資金につき、調達、支弁すること。
② すべての構成員が、業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としての責任を負うこと。
③ すべての構成員が次のいずれかに該当し、単に肉体的な労働力を提供するものではないこと。
ⅰ 業務の処理に要する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材を、自己の責任と負担で相互に準備し、調達すること。
ⅱ 業務の処理に要する企画又は専門的な技術若しくは経験を、自ら相互に提供すること。 (ハ) JVが(ロ)のいずれの要件をも満たす場合については、JVと注文主との間で締結した請負契約に基づき、構成員が業務を処理し、また、JVが代表者を決めて、当該代表者がJVを代表し て、注文主に請負代金の請求、受領及び財産管理等を行っても、法において特段の問題は生じな
いと考えられる。
ロ JVによる労働者派遣事業の実施
(イ) JVは、数社が共同して業務を処理するために結成された民法上の組合(民法第667条)であるが、法人格を取得するものではなく、JV自身が構成員の労働者を雇用するという評価はできないため(イの(イ)参照)、JVの構成員の労働者を他人の指揮命令を受けて当該他人のための労働に従事させ、これに伴い派遣労働者の就業条件の整備等に関する措置を講ずるような労働者派遣事業を行う主体となることは不可能である。
派遣先
労働者派遣
A B C
したがって、JVがイに述べた請負契約の当事者となることはあっても、法第26条に規定する労働者派遣契約の当事者となることはない。
(ロ)このため、数社が共同で労働者派遣事業を行う場合にも、必ず個々の派遣元と派遣先との間でそれぞれ別個の労働者派遣契約が締結される必要があるが、この場合であっても、派遣元がその中から代表者を決めて、当該代表者が代表して派遣先に派遣料金の請求、受領及び財産管理等を行うことは、法において特段の問題は生じないものと考えられる。
(ハ) この場合、派遣先において、派遣元の各社が自己の雇用する労働者を派遣元の他社の労働者の 指揮命令の下に労働に従事させる場合、例えば特定の派遣元(A)の労働者が特定の派遣元(B、 C)の労働者に対し一方的に指揮命令を行うものであっても、派遣元(A)の労働者は派遣先の ために派遣先の業務の遂行として派遣元(B、C)の労働者に対して指揮命令を行っており、派 遣元(B、C)の労働者は、派遣先の指揮命令を受けて、派遣先のために労働に従事するものと なるから、ともに法第2条第1号の「労働者派遣」に該当し、法において特段の問題は生じない。
ハ その他
JVの行う労働者派遣事業に類するものとして、次の点に留意すること。
(イ) 派遣元に対して派遣先を、派遣先に対して派遣元をそれぞれあっせんし、両者間での労働者派遣契約の結成を促し、援助する行為は法上禁止されていないこと(5)のニ、第1-4図参照)。 (ロ)また、派遣元のために、当該派遣元が締結した労働者派遣契約の履行について派遣先との間で保証その他その履行を担保するための種々の契約の締結等を行うことも、同様に法上禁止されて
いないこと(第1-4図参照)。
第1-4図 労働者派遣に係るあっせんと保証
○ あっせん ○ 保 証
労働者派遣 労働者派遣
派遣先
派遣元
派遣先
派遣元
あっせん 保 証
A
B
(7) 派遣店員との関係
イ デパートやスーパー・マーケットのケース貸し等に伴ってみられるいわゆる派遣店員は、派遣元に雇用され、派遣元の業務命令により就業するが、就業の場所が派遣先事業所であるものである。 ロ この場合において、就業に当たって、派遣元の指揮命令を受け、通常派遣先の指揮命令は受けないものは、請負等の事業と同様((3)参照)「他人の指揮命令を受けて当該他人のために労働に従 事させる」ものではなく、労働者派遣には該当しないが、派遣先が当該派遣店員を自己の指揮命令
の下に労働に従事させる場合は労働者派遣に該当することとなる(第1-5図参照)。
第1-5図 労働者派遣と派遣店員との差異
○ 労働者派遣 ○ 派遣店員
労働者派遣契約 派遣店員に係る派遣契約
派遣元
派遣先
派遣元
派遣先
雇用関係 指揮命令関係 雇用関係 就業場所の提供
労働者
労働者
ハ 現実にも、派遣店員に関する出退勤や休憩時間に係る時間の把握等については、派遣先の事業主や従業者等に委任される場合があるが、このことを通じて、実質的に労働者派遣に該当するような行為(例えば、派遣先の事業主や従業者から派遣元の事業とは無関係の業務の応援を要請される等)が行われることのないよう、関係事業主に対し、派遣店員に係る法律関係についての周知徹底等を行っていく必要がある。
(8) その他
老人、身体障害者等に対する家庭奉仕員派遣事業、母子家庭等介護人派遣事業、盲人ガイドヘルパー派遣事業、手話奉仕員派遣事業、脳性マヒ者等ガイドヘルパー派遣事業その他これらに準ずる社会福祉関係の個人を派遣先とする派遣事業については、法施行前は職業安定法第44条で禁止する労働者供給事業に該当しないものとして判断されてきたが、これらの事業が、今後従来と同様法第2条第1号の「労働者派遣」に該当しない態様により行われる限りにおいて、「派遣」という名称とは関わりなく、①派遣元が国、地方公共団体、民間のいずれであるかを問わず、また、②派遣先が不特定多数の個人であるか、特定の会員等であるかを問わず、労働者派遣事業とはならないものであること。
2 派遣労働者
(1) 「派遣労働者」の意義
派遣労働者とは、「事業主が雇用する労働者であって、労働者派遣の対象となるもの」をいう(法第2条第2号)。
(2) 「事業主が雇用する労働者」の意義
派遣労働者は、事業主が現に雇用している状態にある者である。したがって、いわゆる登録型の労働者派遣事業(3の(4)のニ参照)において登録されているだけで、当該事業主が雇用していない労働者は派遣労働者に該当しない。
なお、当該登録中の労働者についても、法第30条及び第33条において「派遣労働者として雇用しようとする者」として派遣労働者とは異なる規制の対象となる(第8の2の(1)及び第8の5の(1)参照)。
(3) 「労働者派遣の対象」の意義
イ 派遣労働者は、事業主が雇用する労働者のうち、労働者派遣の対象となる者である。この労働者派遣の対象とは、現に労働者派遣をされていると否とを問わず、労働者派遣をされる地位にある者のことをいう。
ロ 労働者派遣の対象となるか否かの判断は、具体的には、労働協約、就業規則、労働契約等の定めを確認することにより行う。
ハ なお、派遣労働者としての地位を取得させるためには、法第32条の定めに従った手続が必要である(第8の4参照)。
3 労働者派遣事業
(1) 「労働者派遣事業」の意義
労働者派遣事業とは、「労働者派遣を業として行うこと」をいう(法第2条第3号)。
(2) 「業として行う」の意義
イ 「業として行う」とは、一定の目的をもって同種の行為を反復継続的に遂行することをいい、
1回限りの行為であったとしても反復継続の意思をもって行えば事業性があるが、形式的に繰り返し行われていたとしても、すべて受動的、偶発的行為が継続した結果であって反復継続の意思をもって行われていなければ、事業性は認められない。
ロ 具体的には、一定の目的と計画に基づいて経営する経済的活動として行われるか否かによって判断され、必ずしも営利を目的とする場合に限らず(例えば、社会事業団体や宗教団体が行う継続的活動も「事業」に該当することがある。)、また、他の事業と兼業して行われるか否かを問わない。
ハ しかしながら、この判断も一般的な社会通念に則して個別のケースごとに行われるものであり、営利を目的とするか否か、事業としての独立性があるか否かが反復継続の意思の判定の上で重要 な要素となる。例えば、①労働者の派遣を行う旨宣伝、広告をしている場合、②店を構え、労働 者派遣を行う旨看板を掲げている場合等については、原則として、事業性ありと判断されるもの であること。
(3) 適用除外業務との関係
労働者派遣事業は、労働者派遣を業として行うことをいうものであり、派遣労働者が従事する業務に応じて労働者派遣に該当したり、該当しなかったりするものではなく、適用除外業務(第2の
1参照)について労働者派遣を業として行ったとしても労働者派遣事業に該当する。
(4) 一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業
イ 労働者派遣事業は、一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の二者に分けられる。「一般労働者派遣事業」は、特定労働者派遣事業以外の労働者派遣事業をいい(法第2条第4号) 、「特定労働者派遣事業」は、その事業の派遣労働者(業として行われる労働者派遣の対象となるものに限る。)が常時雇用される労働者のみである労働者派遣事業をいう(法第2条第5号)。
ロ 一般労働者派遣事業に該当するか、特定労働者派遣事業に該当するかについては、事業所ごとに判断されることとなるため、一つの事業所において一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業とが共存することはなく、常時雇用される労働者以外の派遣労働者が存在する場合は、一般労働者派遣事業を行う事業所となる(「事業所」の意義については第4の1の(2)参照)。
ハ 「常時雇用される」とは、雇用契約の形式の如何を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者のことをいう。
具体的には、次のいずれかに該当する場合に限り「常時雇用される」に該当する。
① 期間の定めなく雇用されている者
② 一定の期間(例えば、2か月、6か月等)を定めて雇用されている者であって、その雇用期間が反復継続されて事実上①と同等と認められる者。すなわち、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者又は採用の時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者
③ 日日雇用される者であって、雇用契約が日日更新されて事実上①と同等と認められる者。すなわち、②の場合と同じく、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者又は採用の時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者
なお、雇用保険の被保険者とは判断されないパートタイム労働者であっても、①から③までのいずれかに該当すれば「常時雇用される」と判断するものであるので留意すること。
ニ 派遣労働を希望する労働者を登録しておき、労働者派遣をするに際し、当該登録されている者の中から期間の定めのある労働者派遣をするいわゆる登録型の労働者派遣事業は、一般労働者派遣事業の典型的な形態であり、当該登録型の事業が当該事業所において行われる事業に含まれている場合は、一般労働者派遣事業である。
ホ イのとおり、「常時雇用される」労働者以外の者が派遣労働者(業として行われる労働者派遣 の対象となるものに限る。)の中に存在する場合は、一般労働者派遣事業となる。しかしながら、通常は常時雇用される労働者を労働者派遣することを業として行っている者については、臨時的 な理由により、たまたま一時的に常時雇用される労働者以外の労働者を労働者派遣する場合であ っても、今後とも、常時雇用される労働者以外の者を、反復して労働者派遣する意図が客観的に 認められないときは特定労働者派遣事業としての取り扱いを変える必要はないものであるので留
意すること。
4 紹介予定派遣
(1) 紹介予定派遣とは、労働者派遣のうち、法第5条第1項の許可を受けた一般派遣元事業主又は法 第16条第1項の規定により届出書を提出した特定派遣元事業主が、労働者派遣の役務の提供の開始前 又は開始後に、当該労働者派遣に係る派遣労働者及び派遣先に対して、職業安定法その他の法律の規 定による許可を受けて、又は届出をして、職業紹介を行い、又は行うことを予定してするものをいい、当該職業紹介により、当該派遣労働者が当該派遣先に雇用される旨が、当該労働者派遣の役務の提供 の終了前に当該派遣労働者と当該派遣先との間で約されるものを含む(法第2条第6号)。
(2) 紹介予定派遣については、派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止に係る規定を適用しない(法第26条第7項)。
(3) 紹介予定派遣については、円滑かつ的確な労働力需給の結合を図るための手段として設けられたものであり、具体的には次の①から③までの措置を行うことができるものである。
① 派遣就業開始前の面接、履歴書の送付等
② 派遣就業開始前及び派遣就業期間中の求人条件の明示
③ 派遣就業期間中の求人・求職の意思等の確認及び採用内定
(4) 紹介予定派遣を行う場合には、派遣元事業主及び派遣先は次の措置等を講じなければならない。
① 労働者派遣契約に当該紹介予定派遣に関する事項を記載すること(第7の2の(1)の⑨参照)
② 紹介予定派遣を受け入れる期間の遵守(第8の16の(1)及び第9の13の(1)参照)
③ 派遣先が職業紹介を希望しない場合又は派遣労働者を雇用しない場合の理由の明示(第8の16の(2)及び第9の13の(2)参照)
④ 派遣労働者の特定に当たっての年齢、性別等による差別防止に係る措置(第9の13の(3)参照)
⑤ 派遣労働者であることの明示等(第8の4の参照)
⑥ 就業条件等の明示(第8の6の(3)のイの⑨参照)
⑦ 派遣元管理台帳に当該紹介予定派遣に関する事項を記載すること(第8の11の(1)のホの⑨参照)
⑧ 派遣先管理台帳に当該紹介予定予定派遣に関する事項を記載すること(第9の8の(2)のハの
⑩参照)
5 法の適用範囲
(1) 法の適用範囲の原則
法は、(3)によりその適用を除外される「船員」を除き、公務員も含めたあらゆる労働者、あらゆる事業に適用される。
(2) 公務員等に対する法の適用
イ 国家公務員、地方公務員が派遣労働者となる場合にも、法の規制が適用される(国家公務員法
(昭和22年法律第120号)附則第16条、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第58条)。そのため、法第3章第4節の規定だけではなく、当該規定により適用される労働基準法等の規定も適用されることとなる。特定独立行政法人及び国有林野事業を行う国の経営する企業に勤務する職員や水道事業、軌道事業、自動車運送事業、地方鉄道事業、電気事業、ガス事業等の地方公営企業及び特定地方独立行政法人の職員についても同様である(特定独立行政法人等の労働関係に関する法律(昭和 23年法律第257号)第37条、地方公営企業等の労働関係に関する法律(昭和27年法律第289号)第17条、地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第39条、地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第53条)
ロ 国、地方公共団体が派遣先である場合についても、法(第3章第4節の規定及び当該規定により適用される労働基準法等の規定を含む。)は全面的に適用される。
(3) 船員に対する法の適用除外
イ 船員職業安定法(昭和23年法律第130号)第6条第1項に規定する船員については、法は適用されない(法第3条)。
ロ 船員職業安定法第6条第1項に規定する船員とは船員法による船員及び同法による船員でない者で日本船舶以外の船舶に乗り組むものをいう。
(イ) 船員法(昭和22年法律第100号)による船員とは「日本船舶又は日本船舶以外の国土交通省令で定める船舶(船員法施行規則(昭和22年運輸省令第23号)第1条)に乗り組む船長及び海員並びに予備船員」のことをいう(船員法第1条第1項)。
(ロ) 「船舶」には、①総トン数5トン未満の船舶、②湖、川又は港のみを航行する船舶、③政令の 定める総トン数30トン未満の漁船、④船舶職員及び小型船舶操縦者法(昭和26年法律第149号) 第2条第4項に規定する小型船舶であって、スポーツ又はレクリエーションの用に供するヨット、モーターボートその他のその航海の目的、期間及び態様、運航体制等からみて、船員労働の特殊 性が認められない船舶として国土交通省令で定めるものは含まれない(船員法第1条第2項)。
(ハ) 「海員」とは、「船内で使用される船長以外の乗組員で労働の対償として給料その他の報酬を支払われる者」をいう(船員法第2条第1項)。したがって、船内における酒場、理髪店、洗たく屋、売店、事務室内で働く労働者も、船舶内で使用される乗組員に該当する以上、直接に運航業務に従事しなくても、この海員に含まれる。
(ニ) 「予備船員」とは、「船舶に乗り組むため雇用されている者で船内で使用されていないもの」をいう(船員法第2条第2項)。
ハ 船員について法が適用除外されるとは、船員である者を派遣労働者として船員の業務以外の業務に就かせること及び船員以外の者を船員の業務に就かせることの双方について法の規定が適用されないという意味である。例えば船員以外の者が派遣先であるロの(ロ)の「船舶」内で就業する限りにおいて(ロの(イ)に該当する必要がある。)、派遣労働者は船員に該当することとなり、法の適
用は受けない。
ニ なお、船員に係る労働者派遣事業に相当する事業については、船員職業安定法第55条第1項により、国土交通大臣の許可を受けた者は、船員派遣事業を行うことができることとされている。「船員派遣」とは、船舶所有者が、自己の常時雇用する船員を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために船員として労務に従事させることをいい、当該他人に対し当該船員を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものをいう(船員職業安定法第6条第1項)。その旨に留意するとともに、必要な場合には、地方運輸局等運輸関係行政機関と相互に連携を保ちつつ、的確な行政運営を行うこと。