Contract
第7 労働者派遣契約
1 意義
(1) 法第26条にいう「労働者派遣契約」は、「契約の当事者の一方が、相手方に対し労働者派遣することを約する契約」であり、当事者の一方が労働者派遣を行う旨の意思表示を行いそれに対してもう一方の当事者が同意をすること又は当事者の一方が労働者派遣を受ける旨の意思表示を行いそれに対してもう一方の当事者が同意をすることにより成立する契約であり、その形式については、文書であるか否か、又有償であるか無償であるかを問うものではない。
(2) 労働者派遣に関する契約については、恒常的に取引先との間に労働者派遣をする旨の基本契約を締結し、個々具体的に労働者派遣をする場合に個別に就業条件をその内容に含む個別契約を締結するという場合があるが、この場合、法第26条の意味における労働者派遣契約とは、後者の個別契約をいうものである。
(3) 「労働者派遣契約の当事者」とは、業として行うものであるか否かを問わず、当事者の一方が労働者派遣を行い、相手方がその役務の提供を受ける場合をすべて含むものであり、労働者派遣をする者及び労働者派遣の役務の提供を受ける者のすべてを指すものである。
2 契約の内容等
(1) 契約内容
イ 契約事項の定め (イ) 概要
労働者派遣契約の締結に当たっては、(ハ)の事項を定めるとともに、その内容の差異に応じて派遣労働者の人数を定めなければならない(法第26条第1項、則第22条)。
(ロ) 意義
法で定める契約事項の定めは、労働者派遣を行うに当たっての必要最低限のものであり、それ以外の派遣料金、債務不履行の場合の賠償責任等の定めについては当事者の自由に委ねられる。
(ハ) 契約事項
労働者派遣契約には、次の事項を定めなければならない。
① 派遣労働者が従事する業務の内容
・ 業務の内容は、その業務に必要とされる能力、行う業務等が具体的に記述され、当該記載により当該労働者派遣に適格な派遣労働者を派遣元事業主が決定できる程度のものであることが必要であり、できる限り詳細であることが適当である。
・ 適用除外業務(第2の1参照)以外の業務に限られるものである。
・ 従事する業務の内容については可能な限り詳細に記載すること。
(例 環境関連機器の顧客への販売、折衝、相談及び新規顧客の開拓並びにそれらに付帯する業務)
・ 同一の派遣労働者が複数の業務に従事する場合については、それぞれの業務の内容について記載すること。
② 派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事する事業所の名称及び所在地その他労働者派遣に係る派遣労働者の就業(以下「派遣就業」という。)の場所
・ 派遣労働者が実際に派遣就業する事業所その他の施設の名称、所在地だけではなく具体的な派遣就業の場所も含むものであり、原則として、派遣労働者の所属する部署、電話番号等必要な場合に派遣元事業主が当該派遣労働者と連絡がとれる程度の内容であること。
・ また、第9の4の(3)のイの①から⑤までに掲げる業務以外の業務について労働者派遣を行うときは、派遣先の事業所において当該派遣労働者が就業する最小単位の組織(第9の4の(4)参照)を記載すること。
③ 労働者派遣の役務の提供を受ける者のために、就業中の派遣労働者を直接指揮命令する者に関する事項
・ 派遣労働者を具体的に指揮命令する者の部署、役職及び氏名である。
④ 労働者派遣の期間及び派遣就業をする日
・ 当該労働者派遣契約に基づき、派遣労働者が労働者派遣される期間及び派遣労働者が具体的に派遣就業をする日であり、期間については、具体的な労働者派遣の開始の年月日及び終了の年月日、就業する日については、具体的な曜日又は日を指定しているものであること。
・ 第9の4の(3)のイの①から⑤までに掲げる業務以外の業務について労働者派遣を行うときは、派遣労働者が労働者派遣される期間は、(3)により通知を受けた日以降とすることはできない。
⑤ 派遣就業の開始及び終了の時刻並びに休憩時間
・ 派遣就業すべき日の派遣労働者の日々の始業、終業の時刻並びに休憩時間(法律上は時間数のみであるが、一般的には休憩の開始及び終了の時刻を特定して記載することが適当)である。
・ この定めの内容は、労働基準法で定める労働時間、休憩時間に関する規定に反しておらず、かつ、派遣元事業主と派遣労働者との間の労働契約の枠内でなければならない。
・ また、いわゆる「複合業務」である場合(令第4条に規定する業務(いわゆる「26業務」)と、それ以外の業務とを併せて行う場合)等、第9の4の(3)のイの①から⑤に掲げる派遣受入期間の制限がない業務と、それ以外の派遣受入期間の制限のある業務とを併せて行う場合であって、第9の4の(3)のロにより、全体として派遣受入期間の制限を受けない業務として取り扱う場合については、それぞれの業務の通常の場合の1日当たり又は1週間当たりの就業時間数又はその割合を記載すること。
⑥ 安全及び衛生に関する事項
次に掲げる事項のうち、派遣労働者が派遣先において①の業務を遂行するに当たって、 当該派遣労働者の安全、衛生を確保するために必要な事項に関し就業条件を記載する必要があ
る。
(i) 派遣労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関する事項
(例えば、危険有害業務に従事させる場合には、当該危険有害業務の内容、当該業務による危険又は健康障害を防止する措置の内容等)
(ⅱ) 健康診断の実施等健康管理に関する事項
(例えば、有害業務従事者に対する特別な健康診断が必要な業務に就かせる場合には、当該健康診断の実施に関する事項等)
(iii) 換気、採光、照明等作業環境管理に関する事項
(iv) 安全衛生教育に関する事項
(例えば、派遣元及び派遣先で実施する安全衛生教育の内容等)
(v) 免許の取得、技能講習の修了の有無等就業制限に関する事項
(例えば、就業制限業務を行わせる場合には、当該業務を行うための免許や技能講習の種類等)
(vi) 安全衛生管理体制に関する事項
(vii) その他派遣労働者の安全及び衛生を確保するために必要な事項
⑦ 派遣労働者から苦情の申出を受けた場合における当該申出を受けた苦情の処理に関する事項
・ 派遣元事業主及び派遣先は、派遣労働者の苦情の申出を受ける者、派遣元及び派遣先において苦情処理をする方法、派遣元事業主と派遣先との連携のための体制等を記載すること
(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の3(第8の18参照)及び「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の7(第9の15参照))。
・ 派遣労働者の苦情の申出を受ける者については、その者の氏名の他、部署、役職、電話番号についても記載すること。
⑧ 労働者派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項
・ 労働者派遣契約の解除に際して、派遣労働者の雇用の安定を図る観点から、当該労働者派遣契約の当事者である派遣元事業主及び派遣先が協議して次の事項等に係る必要な措置を具体的に定めること(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の2の(2)(第8の 18参照)及び「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の6の(2)から(5)まで(第9の15参照))。
(ⅰ) 労働者派遣契約の解除の事前の申入れ
派遣先は、専ら派遣先に起因する事由により、労働者派遣契約の契約期間が満了する前の解除を行おうとする場合には、派遣元事業主の合意を得ることはもとより、あらかじめ相当の猶予期間をもって派遣元事業主に解除の申入れを行うものとすること。
(ⅱ) 派遣先における就業機会の確保
派遣元事業主及び派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に派遣労働者の責
に帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約の解除が行われた場合には、当該派遣先の関連会社での就業をあっせんする等により、当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の確保を図るものとすること。
(ⅲ) 損害賠償等に係る適切な措置
派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合には、当該労働者派遣契約に損害賠償についての定めがない場合であっても、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとし、これができないときには、少なくとも当該労働者派遣契約の解除に伴い当該派遣元事業主が当該労働者派遣に係る派遣労働者を休業させること等を余儀なくされたことにより生じた損害の賠償を行わなければならないものとすること。例えば、当該派遣元事業主が当該派遣労働者を休業させる場合は休業手当に相当する額以上の額について、当該派遣元事業主がやむを得ない事由により当該派遣労働者を解雇する場合は、派遣先による解除の申入れが相当の猶予期間をもって行われなかったことにより当該派遣元事業主が解雇の予告をしないときは30日分以上、当該予告をした日から解雇の日までの期間が30日に満たないときは当該解雇の日の30日前の日から当該予告の日までの日数分以上の賃金に相当する額以上の額について、損害賠償を行わなければならないものとすること。その他派遣先は派遣元事業主と十分に協議した上で適切な善後処理方策を講ずるものとすること。また、派遣元事業主及び派遣先の双方の責に帰すべき事由がある場合には、派遣元事業主及び派遣先のそれぞれの責に帰すべき部分の割合についても十分に考慮するものとすること。
(ⅳ) 労働者派遣契約の解除の理由の明示
派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合であって、派遣元事業主から請求があったときは、労働者派遣契約の解除を行った理由を当該派遣元事業主に対し明らかにするものとすること。
⑨ 労働者派遣契約が紹介予定派遣に係るものである場合には、当該紹介予定派遣に関する事項労働者派遣契約が紹介予定派遣に係るものである場合は、次に掲げる当該紹介予定派遣に関
する事項を記載すること(第1の4参照)。
・ 紹介予定派遣である旨
・ 紹介予定派遣を経て派遣先が雇用する場合に予定される雇用契約の期間の定めの有無(期間の定めのない雇用であるか有期雇用であるか)
・ 紹介予定派遣を受けた派遣先が、職業紹介を受けることを希望しなかった場合又は職業紹介を受けた者を雇用しなかった場合には、それぞれのその理由を、書面の交付、ファクシミリを利用してする送信、又は電子メールの送信の方法により、派遣元事業主に対して明示する旨
・ 紹介予定派遣を経て派遣先が雇用する場合に、年次有給休暇及び退職金の取扱いについて、労働者派遣の期間を勤務期間に含めて算入する場合はその旨
⑩ 派遣元責任者及び派遣先責任者に関する事項
・ 派遣元責任者及び派遣先責任者の役職、氏名及び連絡方法である。また、①(派遣労働者 が従事する業務の内容)が製造業務である場合には、当該派遣元責任者及び派遣先責任者が、それぞれ製造業務専門派遣元責任者(則第29条第3号)又は製造業務専門派遣先責任者(則 第34条第3号)である旨を記載すること。
・ なお、法第36条の派遣元責任者の選任義務規定の適用を受けない「派遣元事業主以外の者」、又は法第41条の派遣先責任者の選任義務規定の適用を受けない「派遣元事業主以外の者から労働者派遣の役務の提供を受ける者」若しくは「派遣元事業主から労働者派遣の役務の提供を受ける者(以下「派遣先」という。)であって、派遣先責任者の選任を要しない者
(第9の7の(4)のハ参照)」が労働者派遣契約の当事者である場合は、当該当事者に係る派遣元責任者又は派遣先責任者に関する事項の記載は要しない。ただし、それらの者が派遣元責任者又は派遣先責任者を選任している場合には、記載を要するものである。
⑪ 労働者派遣の役務の提供を受ける者が④の派遣就業をする日以外の日に派遣就業をさせることができ、又は⑤の派遣就業の開始の時刻から終了の時刻までの時間を延長することができる旨の定めをした場合には、当該派遣就業をさせることができる日又は延長することができる時間数
・ この定めをする場合には、当該定めの内容が派遣元事業主と派遣労働者との間の労働契約又は派遣元事業場における36協定により定められている内容の範囲内でなければならない。
⑫ 派遣労働者の福祉の増進のための便宜の供与に関する事項
派遣元事業主及び派遣先との間で、派遣先が当該派遣労働者に対し、診療所、給食施設等の施設であって現に派遣先に雇用される労働者が通常利用しているものの利用、レクリエーション等に関する施設又は設備の利用、制服の貸与、教育訓練その他の派遣労働者の福祉の増進のための便宜を供与する旨の定めをした場合には、当該便宜の供与に関する事項についても記載すること。
⑬ 派遣受入期間の制限を受けない業務について行う労働者派遣に関する事項
・ 第9の4の(3)のイの①に掲げる業務について労働者派遣を行う場合は、併せて当該業務の号番号を必ず付す必要がある(則第21条第2項第1号)。
・ 第9の4の(3)のイの②に掲げる有期プロジェクトの業務について労働者派遣を行うと きは、法第40条の2第1項第2号イに該当する旨を記載すること(則第22条の2第2号)。
・ 第9の4の(3)のイの③に掲げる業務(日数限定業務)について労働者派遣を行うときは、ⅰ)法第40条の2第1項第2号ロに該当する旨、ⅱ)当該派遣先において、同号ロに該当する業務が1か月間に行われる日数、ⅲ)当該派遣先の通常の労働者の1か月間の所定労働日数を記載すること(則第22条の2第3号)。
・ 第9の4の(3)のイの④に掲げる育児休業等の代替要員としての業務について労働者
派遣を行うときは、派遣先において休業する労働者の氏名及び業務並びに当該休業の開始及び終了予定の日を記載すること(則第22条の2第4号)。
・ 第9の4の(3)のイの⑤に掲げる介護休業等の代替要員としての業務について労働者派遣を行うときは、派遣先において休業する労働者の氏名及び業務並びに当該休業の開始及び終了予定の日を記載すること(則第22条の2第5号)。
(ニ) 派遣労働者の人数の定め
a 派遣労働者の人数の定めは次により行わなければならない(則第21条第1項)。
① (ハ)の①から⑫に掲げる就業条件の組合せが1つの場合は、当該労働者派遣に係る派遣労働者の人数
② (ハ)の①から⑫に掲げる就業条件の組合せが複数の場合は、当該組合せごとの派遣労働者の人数
b 派遣労働者の人数とは、当該就業条件の組合せで常時いることとなる人数であり、複数の者が交替して行うこととなる場合であってもその複数の者分の人数を定めるものではない。例えば、午前と午後で1人ずつ就業することとなる場合は1人となる。
(ホ) 労働者派遣契約の定めに関する留意事項
a (ハ)の①から⑫の契約事項の内容を一部(④の労働者派遣の期間については必ず変更される。)変更し、再度労働者派遣契約を締結するに際しては、一部変更することとなる以前締結した契約を指定し、当該一部変更事項を定めることで足りるものとし、再度すべての契約内容の定めを行うことは要しないものとする。また、(ニ)における派遣労働者の人数についても変更する場合は、併せて、人数を定める(就業条件の組合せが複数であるときには、組合せごとに人数を定める。)ことで足りるものとする。
b 派遣労働者が複数の事業対象業務を兼任して行う旨の労働者派遣契約を定めることができること。
c 就業条件の組合せについては、次のような就業条件は複数とはならないものであり、当該就業条件をもって、就業条件の組合せが複数あることとはならないこと。
・ 派遣労働者が令第2条各号の二以上の業務を兼任する場合
・ 派遣労働者を直接指揮命令する者が時間制により交替する場合
・ 派遣元責任者及び派遣先責任者が時間制により交替する場合
d 第9の4の(3)のイの③に掲げる業務(日数限定業務)について労働者派遣を行う場合は、 当該派遣先において、(ハ)の⑬のⅱ(当該派遣先において、同号ロに該当する業務が1か月間 に行われる日数)に記載した日数に係る日以外には当該業務が行われないものであることを、労働者派遣契約の当事者において十分確認すること。
(参考) 労働者派遣契約の定めの例
○○○○株式会社(派遣先)と□□□□株式会社(派遣元事業主)とは、次のとおり労働者派
遣契約を締結する。
1 業務内容 OA機器の操作によるプレゼンテーション用資料、業績管理資料、会議用資料等の作成業務。
(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令第4条第5号事務用機器操作に該当。)
2 就業場所 ○○○○株式会社本社 国内マーケティング部営業課販売促進係
(〒110-0010xxx区霞が関1-2-2○ビル2階
TEL 3593-****)
3 指揮命令者 国内マーケティング部営業課販売促進係長★★★★★
4 派遣期間 平成22年4月1日から平成23年3月31日まで
5 就 業 日 土、日を除く毎日
6 就業時間 9時から18時まで
7 休憩時間 12時から13時まで
8 安全及び衛生
派遣先は、労働者派遣法第44条から第47条の2までの規定により課された責任を負う
9 派遣労働者からの苦情の処理
(1) 苦情の申出を受ける者
派遣先 営業課総務係xx ☆☆☆☆☆ TEL3597-**** 内線101
派遣元事業主 派遣事業運営係xx ※※※※※ TEL3593-**** 内線5721
(2) 苦情処理方法、連携体制等
①派遣元事業主における(1)記載の者が苦情の申出を受けたときは、ただちに派遣元責任者の
◎◎◎◎◎へ連絡することとし、当該派遣元責任者が中心となって、誠意をもって、遅滞なく、当該苦情の適切迅速な処理を図ることとし、その結果について必ず派遣労働者に通知することとする。
②派遣先における(1)記載の者が苦情の申出を受けたときは、ただちに派遣先責任者の●●●
●●へ連絡することとし、当該派遣先責任者が中心となって、誠意をもって、遅滞なく、当該苦情の適切かつ迅速な処理を図ることとし、その結果について必ず派遣労働者に通知することとする。
③派遣先及び派遣元事業主は、自らでその解決が容易であり、即時に処理した苦情の他は、相互に遅滞なく通知するとともに、密接に連絡調整を行いつつ、その解決を図ることとす る。
10 労働者派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るための措置
(1) 労働者派遣契約の解除の事前の申入れ
派遣先は、専ら派遣先に起因する事由により、労働者派遣契約の契約期間が満了する前の解除を行おうとする場合には、派遣元の合意を得ることはもとより、あらかじめ相当の猶予期間
をもって派遣元に解除の申入れを行うこととする。 (2)就業機会の確保
派遣元事業主及び派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に派遣労働者の責に帰すべき事由によらない労働者派遣契約の解除を行った場合には、派遣先の関連会社での就業をあっせんする等により、当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとする。
(3)損害賠償等に係る適切な措置
派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとし、これができないときには、少なくとも当該労働者派遣契約の解除に伴い派遣元事業主が当該労働者派遣に係る派遣労者を休業させること等を余儀なくされたことにより生じた損害の賠償を行わなければならないこととする。例えば、派遣元事業主が当該派遣労働者を休業させる場合は休業手当に相当する額以上の額について、派遣元事業主がやむを得ない事由により当該派遣労働者を解雇する場合は、派遣先による解除の申入れが相当の猶予期間をもって行われなかったことにより派遣元事業主が解雇の予告をしないときは30日分以上、当該予告をした日から解雇の日までの期間が30日に満たないときは当該解雇の日の30日前の日から当該予告の日までの日数分以上の賃金に相当する額以上の額について、損害の賠償を行わなければらないこととする。その他派遣先は派遣元事業主と十分に協議した上で適切な善後処理方策を講ずることとする。また、派遣元事業主及び派遣先の双方の責に帰すべき事由がある場合には、派遣元事業主及び派遣先のそれぞれの責に帰すべき部分の割合についても十分に考慮することとする。
(4)労働者派遣契約の解除の理由の明示
派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合であって、派遣元事業主から請求があったときは、労働者派遣契約の解除を行った理由を派遣元事業主に対し明らかにすることとする。
11 派遣元責任者 派遣元事業主の派遣事業運営係長◎◎◎◎◎ TEL3597-****内線100
12 派遣先責任者 派遣先の総務部秘書課人事係長●●●●● TEL3593-****内線5720
13 時間外労働 6の就業時間外の労働は1日2時間、週6時間の範囲で命ずることができるものとする。
14 派遣人員 業務2人
15 派遣労働者の福祉の増進のための便宜の供与
派遣先は、派遣労働者に対し、派遣先が雇用する労働者が利用する診療所、給食施設、レクリエーション施設等の施設又は設備について、利用することができるよう便宜供与することとする。
ロ 労働者派遣契約の締結に際しての手続 (イ) 労働者派遣契約締結の際の手続
a 契約の当事者は、契約の締結に際し上記イの(ハ)及び(ニ)の契約の内容を書面に記載しておかなければならない(則第21条第3項)。
b 派遣先は、当該労働者派遣契約の締結に当たり、法第26条第4項の規定により派遣元事業主からなされる、許可を受け、又は届出を行っている旨の明示の内容(具体的には許可番号又は届出受理番号)を上記aの書面に記載しておかなければならない(則第21条第4項)。
(ロ) 労働者派遣契約の締結の際の手続に関する留意点
a イの(ホ)のaにより、以前締結した契約の一部を変更した契約を締結する際に行う書面への記載は、当該以前締結した契約の内容により労働者派遣を行い、又は受ける旨の記載並びに変更される契約事項について、その契約事項及びその変更内容を記載すれば足りるものとする。
例えば、「平成○年○月○日付け労働者派遣契約と同内容で○○○○株式会社は、□□□□株式会社に対し、労働者派遣を行うものとする。ただし、派遣期間については平成○年○月○日から平成○年○月○日まで、派遣人員は3人とする。」という記載となる。
b 派遣元事業主は、派遣先との間で労働者派遣契約を締結するに際しては、派遣先が求める業務の内容、当該業務を遂行するために必要とされる知識、技術又は経験の水準、労働者派遣の期間その他労働者派遣契約の締結に際し定めるべき就業条件を事前にきめ細かに把握すること
(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の1(第8の18参照)。
特に、労働者派遣の期間について1年を超える期間を定める場合は、派遣先はあらかじめ派遣先の労働者の過半数で組織する労働組合等に対して意見聴取を行う必要がある(法第40条の
2第4項)ことから、派遣元事業主は派遣先に対し、当該意見聴取が実施されているか確認してから労働者派遣契約を締結すること。
c 派遣先は、労働者派遣契約の締結の申込みを行うに際しては、就業中の派遣労働者を直接指揮命令することが見込まれる者から、業務の内容、当該業務を遂行するために必要とされる知識、技術又は経験の水準その他労働者派遣契約の締結に際し定めるべき就業条件の内容を十分に確認すること(「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の1(第9の15参照))。
ハ 違反の場合の効果
労働者派遣契約の締結に当たり、所定の事項を定めず又は所用の手続きを行わなかった場合、派遣元事業主は、許可の取消し(法第14条第1項)、事業停止命令(法第14条第2項、法第21条第2項)、改善命令(法第49条第1項)の対象となる(第13の2参照)。
(2) 派遣契約期間の制限
イ 概要
派遣元事業主は、労働者派遣契約を締結する際に定めなければならない労働者派遣の期間については、厚生労働大臣が期間を定めた業務に関しては、当該期間を超える定めをしてはならない(法第26条第2項)。
なお、派遣契約期間の制限のほか、派遣受入期間の制限(第9の4)にも十分に留意すること。ロ 派遣契約期間の制限の趣旨
(イ) 派遣先が安易に派遣労働者を利用する事態を防止し、派遣先の労働者の雇用の安定を図るためのものである。
(ロ) 禁止されるのは、派遣元事業主が厚生労働大臣の定める期間を超えた労働者派遣の期間を労働者派遣契約において定めることであり、契約の更新をすべて禁止するものではない。ただし、この場合も第9の4の派遣受入期間の制限を超えて、派遣先が労働者派遣の役務の提供を受けることはできない(法第40条の2第1項)。
(ハ) 派遣元事業主以外の者が労働者派遣を行う場合について規制するものではない。ハ 厚生労働大臣の定める期間
厚生労働大臣が定める期間は、当該労働力の需給の適正な調整を図るため必要があると認められ る場合に定められ、業務の種類に応じ当該労働力の需給の状況、当該業務の処理の実情等を考慮し、併せて常用雇用労働者の代替への影響、日本的雇用慣行との調和、派遣労働者の雇用の安定等につ いても勘案して定める。
具体的には次のとおりとする(平成2年労働省告示第83号)。
(イ) 第9の4の(3)のニの「令第4条で定める業務」のうち、(1)から(13)まで及び(16)のうち建築物又は博覧会場における来訪者の受付又は案内の業務並びに(17)から(23)まで、(25)及び(26)の業務 3年
(ロ)上記以外の業務 なし
なお、同一の派遣労働者が複数の業務に従事した場合についての派遣契約期間としては、第9の
4の(3)のイの①に掲げる業務のみ行う場合については、その主として従事する業務に係る期間を適用することとする。なお、第9の4の(3)のイに掲げる業務以外の業務と併せ行う場合については、派遣契約期間の制限とは別に、派遣受入期間の制限(第9の4参照)があるため、派遣受入期間の制限を超えない範囲内において、派遣契約期間を定める必要がある(第9の4の(3)のロ参照)。
ニ 労働者派遣契約の更新
(イ) 「契約の更新」とは、「一定の期間を定めた契約において、その期間の満了に際して、当事者の約定によりその契約の同一性を存続させつつ、その存続期間のみを延長すること」又は
「従来の契約期間の満了に際して、従前の契約に代えてこれと同一内容の別個な契約を新しく締結すること」をいう。
(ロ) 労働者派遣の期間が定められ、当該契約の更新が行われるにしても、当該更新が自動的に行われる定めとなっている場合(いわゆる自動更新条項がある場合)は、労働者派遣の期間を設定していると評価できないものであり、当該定めをしている場合は法第26条第2項に違反することとなる。
ただし、有期的事業の遂行のために臨時的に設けられた組織において就業させる労働者派遣については、当該更新された労働者派遣の期間を通算した期間が3年を超えないものについては当該更新が自動的に行われる旨を労働者派遣契約に定めることができるものとする。
この場合において、
a 「更新が自動的に行われる定め」とは、具体的には、例えば、「特段の事情(例えば、契約当事者の契約解除の意思表示)がない限り労働者派遣契約を自動的に更新する」旨の定めが該当する。
b 「有期的事業」とは、当該事業の始期及び終期が明確に定められているなど当該事業が一定の期間で完了することが客観的に明確であるものをいうものであり、例えば完成期日が契約により定められている情報処理システムの開発や各種プラント工事等をいうものである。
c 「臨時的に設けられた組織」とは、当該事業を行うために、新たに設けられた事業所及び部、課、xxの部署をいうものであり、かつ、当該事業の終了後は当該組織が解散又は消滅するこ とが客観的に明確であるものをいうものである。なお、いわゆるプロジェクトチームについて は、当該プロジェクトチームに専属の労働者が相当数存在し、かつ、業務上の指揮命令系統が 明確に他の部門と区別されているものについてはこれに該当するものである。
(ハ) 労働者派遣契約において、「契約当事者の合意により労働者派遣契約を更新する」旨の定めをすることは許容されるものである。
(ニ) 契約上は自動更新を行うものとはなっていない場合であっても、実態として自動更新となっているものは、法第26条第2項の趣旨に反するものであるので留意すること。
(ホ) なお、派遣契約期間の制限の限度を超える労働者派遣契約であっても、その超える部分が民事上当然無効となるものとは評価できないものであるので留意すること。
ホ その他
(イ) 派遣契約期間の制限の趣旨は、ロの(イ)に掲げるように、派遣先に常用雇用される労働者の派遣労働者による代替を防止することにあることから、3年を超えて引き続き同一の業務に継続して派遣労働者を従事させるような場合は、本来は直接雇用にすることが望ましい旨派遣元責任者講習及び定期指導はもとより、求人説明会、関係事業主団体等の会議の機会をとらえて周知を行うこと。
(ロ) なお、派遣先に直接雇用されることを希望する派遣労働者に対し派遣先による直接雇用の機会をより多く確保する目的から、第9の4の(3)のイの①から⑤までに掲げる業務について3年を超えて同一業務に同一派遣労働者を受け入れている派遣先が、当該業務と同一の業務に従事させるために労働者を雇い入れようとするときは、当該派遣労働者に対し雇用契約の申込みをしなければならないものであるので留意すること(法第40条の5、第9の5の(2)参照)。
(ハ) 「継続して」の判断については、当該派遣労働者に係る派遣就業の終了の日から次の派遣就業の開始の日までの期間が3か月以下の場合は当該労働者派遣を継続して行っているものとする。この場合において、継続して行われる労働者派遣の期間の算定については、それぞれ派遣契約
に係る当該派遣労働者の労働者派遣の開始の日から終了の日までの期間を合計するものとする。ヘ 違反の場合の効果
派遣契約期間の制限に違反した場合、派遣元事業主は、許可の取消し(法第14条第1項)、事業停止命令(法第14条第2項、法第21条第2項)、改善命令(法第49条第1項)の対象となる。
(3) 派遣受入期間の制限に抵触する日の通知
イ 概要
第9の4の(3)のイの①から⑤までに掲げる業務以外の業務について新たな労働者派遣契約に基づく労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約を締結するに当たり、あらかじめ、派遣元事業主に対し、当該労働者派遣の開始の日以後、第9の4の派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日を通知しなければならない(法第26条第5項)。
また、派遣元事業主は当該通知がないときは、当該者との間で、労働者派遣契約を締結してはならない(法第26条第6項)。
なお、当該抵触する日の判断は第9の4の(4)により行う。ロ 通知の趣旨
新たな労働者派遣契約を締結する派遣元事業主に対し、自らの行う労働者派遣について派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日を把握させ、派遣元事業主及び派遣先の双方に派遣受入期間の制限の規定を遵守させることを目的とする。
ハ 通知の方法等
(イ) 派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日の通知については、労働者派遣契約の締結に際し、あらかじめ、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者から派遣元事業主に対して、通知すべき事項に係る書面の交付若しくはファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信をすることにより行わなければならない(則第24条の2)。
(ロ) 通知すべき事項は、締結しようとする労働者派遣契約に係る労働者派遣の役務の提供が、当該労働者派遣の開始の日以後、派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日とする。中高年齢者臨時特例措置の対象である派遣労働者のみを当該業務に従事させる場合にあっては、その旨及び3年の派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日とする。
(ハ) 同一の労働者派遣契約において、派遣就業の場所ごとの同一の業務の範囲を超える複数の業務に係る労働者派遣が組み合わされている場合は、当該業務ごとの派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日をすべて通知することとする。
(ニ)派遣元事業主は、当該通知がないときは、当該労働者派遣の役務の提供を受けようとする者との間で、労働者派遣契約を締結してはならない。
ニ 派遣労働者への明示
(イ) 派遣元事業主は、第9の4の(3)のイの①から⑤までに掲げる業務以外の業務について労働者派遣をしようとするときは、あらかじめ、派遣労働者に対して、当該派遣労働者が従事する業務について派遣先が派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日を明示しなければならない
(法第34条第1項第3号)。なお、派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日の明示は、派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日を書面、ファクシミリ又は電子メール(ファ クシミリ又は電子メールによる場合にあっては、当該派遣労働者が希望した場合に限る。)を交 付することにより行わなければならない(則第25条、第8の6の(4)及び(5)参照)。
(ロ) 当該通知については、派遣労働者が派遣先における派遣就業に係る期間の制限を認識できることが派遣労働者のために望ましく、また、派遣先に対して派遣受入期間の制限の規定を遵守させるためにも有用であることから、行われるものである。
ホ その他
派遣先は、労働者派遣契約の締結後に当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る業務について派遣受入期間を定め、又はこれを変更したときは、速やかに、当該労働者派遣をする派遣元事業主に対し、当該業務について派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日を通知しなければならない(法第40条の2第5項)。
なお、当該通知については、派遣先から派遣元事業主に対して、通知すべき事項に係る書面の交付若しくはファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信をすることにより行わなければならない(則第27条第2項、第9の4の(6)参照)。
ヘ 違反の場合の効果
労働者派遣の役務の提供を受けようとする者から、派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日の通知を受けず、当該者との間で新たな労働者派遣契約を締結した場合、派遣元事業主は、許可の取消し(法第14条第1項)、事業停止命令(法第14条第2項、法第21条第2項)、改善命令
(法第49条第1項)の対象となる(第13の2参照)。
(4) 海外派遣の場合の労働者派遣契約
イ 概要
派遣元事業主は海外派遣(第6の2の(2)参照)に係る労働者派遣契約の締結に際しては、上記 (1)及び(2)で定めるもののほか、ハの派遣先が講ずべき措置等を定めた事項を書面に記載して、当該海外派遣に係る役務の提供を受ける者に対し、当該定めた事項に係る書面の交付若しくはファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信をすることにより通知しなければならない(法第 26条第3項、則第23条、則第24条)。
ロ 意義
海外派遣の場合の労働者派遣契約の定めに関する措置は、当該海外派遣が行われる場合、法が派遣先に適用されないことから、特に労働者派遣契約において派遣先の講ずべき措置を定めさせることにより、民事的にその履行を確保させようとするものである。
ハ 派遣先の講ずべき措置の定め
海外派遣の場合には、特に派遣先の講ずべき措置として次に掲げる事項を定めなくてはならない
(則第24条)。
① 派遣先責任者を選任すること。
・ 法第41条の規定による派遣先責任者の選任と同様の方法とすること(第9の7参照)
② 派遣先管理台帳の作成、記載及び通知を行うこと。
・ 法第42条第1項及び第3項の規定による派遣先管理台帳の作成、記載及び通知と同様の方法とすること(第9の8参照)。
③ 派遣労働者に関する労働者派遣契約の定めに反することのないように適切な措置を講ずること。
・ 法第39条の規定による措置と同様のものとすること(第9の2参照)。
④ 派遣労働者の派遣先における就業に伴って生ずる苦情等について、派遣元事業主に通知し、その適切かつ迅速な処理を図ること。
・ 法第40条第1項と同様のものとすること(第9の3参照)。
⑤ 疾病、負傷等の場合における療養の実施その他派遣労働者の福祉の増進に係る必要な援助を行うこと。
・ 海外への派遣であるために、特に求められる派遣労働者の福祉の増進のための援助である。
・ 「その他派遣労働者の福祉の増進のための援助」とは、例えば、派遣労働者の帰国に対する援助である。
⑥ その他派遣就業が適正に行われるため必要な措置を行うこと。
・ 法第40条第2項と同様のものであること(第9の3参照)。
⑦ 派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日の通知を行うこと。
・ 法第26条第5項と同様のものとすること((3)参照)。
⑧ 第9の4の(3)のイの①から⑤に掲げる業務以外の業務について労働者派遣を行う場合には、同一の業務について継続して1年以上、第9の4の派遣受入期間以内の期間、労働者派遣の役務の提供を受けた場合において、引き続き同一の業務に労働者を従事させるため、労働者を雇い入れようとするときの、当該派遣労働者の雇用に関する措置
・ 法第40条の3と同様のものとすること(第9の6参照)。
⑨ 第9の4の(3)のイの①から⑤に掲げる業務以外の業務について労働者派遣を行う場合には、同一の業務について第9の4の派遣受入期間を超えて、引き続き当該派遣労働者を使用しようとするときの、当該派遣労働者に対する雇用契約の申込みに関する措置
・ 法第40条の4と同様のものとすること(第9の5の(1)参照)。
⑩ 第9の4の(3)のイの①から⑤に掲げる業務について労働者派遣を行う場合には、同一の業務について3年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けた場合において、当該業務に労働者を雇い入れようとするときの当該派遣労働者に対する雇用契約の申込みに関する措置
・ 法第40条の5と同様のものとすること(第9の5の(2)参照)。
(参考) 海外派遣に係る労働者派遣契約における派遣先が講ずべき措置の定めの例
○○○○株式会社東京支店(甲)と、□□□□株式会社(乙)は甲の労働者2人を乙のアメ
リカ支局における秘書業務に従事させるための労働者派遣について次の事項を約するものとする
1 乙は甲の労働者に係る次の業務を行う派遣先責任者を1人選任すること。
(1) 次に掲げる事項の内容を、当該甲の労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者その他の関係者に周知すること。
a 当該甲の労働者に係る労働者派遣契約の定め b 当該甲の労働者に係る甲からの通知
(2) 当該契約に基づく労働者派遣に係る業務について、契約締結後に労働者派遣の役務の提供を受ける期間を定めた場合又はこれを変更した場合の甲への通知及び派遣先管理台帳の作成、記録、保存及び通知に関すること。
(3) 当該甲の労働者から申出を受けた苦情の処理に当たること。
(4) 当該甲の労働者の安全及び衛生に関し、乙の労働者の安全及び衛生に関する業務を統括管理する者及び甲との連絡調整を行うこと。
(5) (1)~(4)に掲げるもののほか、甲との連絡調整に関すること。
2 乙は甲の労働者の就業に関し、派遣先管理台帳を作成するものとし、当該派遣先管理台帳に次の事項について甲の労働者ごとに記載し、このうち(1)、(4)、(5)、(6)及び(7)につき甲に通知すること。
(1) 甲の労働者の氏名
(2) 甲の事業主の名称
(3) 甲の事業所の名称及び所在地
(4) 派遣就業をした日
(5) 派遣就業をした日ごとの始業し、及び終業した時刻並びに休憩した時間
(6) 従事した業務の種類
(7) 派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事した事業所の名称及び所在地その他派遣就業をした場所
(8) 派遣労働者からの苦情の申出を受けた苦情の処理に関する事項
(9) 派遣先責任者及び派遣元責任者に関する事項
3 乙は本契約に定める甲の労働者の就業条件の定めに反することのないように適切な措置を講ずること。
4 乙は甲の労働者の派遣就業に伴って生じる苦情等について、甲に通知するとともに、甲との密接な連携の下に誠意をもって、遅滞なく、その適切かつ迅速な処理を図ること。
5 乙は甲の労働者の疾病、負傷等に際し療養の実施を行うほか、甲の労働者の福祉の増進のために必要な援助を行うこと。
6 乙は甲の労働者の派遣期間終了後等の帰国について責任をもって行うこと。
7 乙が甲から本契約に基づく労働者派遣の役務の提供を受けることにより、当該業務について派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日は○年○月○日であること。
8 乙は1年以上派遣受入期間以内労働者派遣の役務の提供を受けた場合において、引き続き当該業務に労働者を従事させるため労働者を雇い入れようとするときは、当該業務に派遣実施期間中継続して従事した甲の労働者を遅滞なく雇い入れるよう努めなければならないこと。ただし当該派遣労働者が派遣実施期間が経過した日までに当該業務に従事することを希望する旨を乙に申し出ない場合、又は派遣実施期間が経過した日から起算して7日以内に甲と当該派遣労働者の雇用関係が終了しない場合はこの限りではないこと。
9 乙は、甲より派遣停止の通知を受けた場合において、当該労働者派遣の役務の提供を受けたならば、派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日以降も継続して甲の労働者を使用しようとするときには、当該抵触することとなる最初の日の前日までに、甲の労働者に対して雇用契約の申込みをしなければならないこと。ただし、当該派遣労働者が乙に雇用されることを希望しない旨を乙に申し出た場合にはこの限りではないこと。
ニ 海外派遣に係る労働者派遣契約の締結の際の手続等
派遣元事業主は、海外派遣に係る労働者派遣契約の締結に際し、上記ハの契約内容を当該海外派遣に係る派遣先に対して、書面の交付若しくはファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信をすることにより通知しなければならない。(則第23条)。
ホ 派遣先が当該労働者派遣契約の定めに反した場合
(イ) 派遣先が当該海外派遣に係る労働者派遣契約の定めに反した場合、当該契約について債務不履行となり、派遣元事業主は、その履行を派遣先に求めることができ、また、それを理由に労働者派遣契約を解除することができる。
(ロ) したがって、海外派遣については、派遣元事業主を通じて、派遣先における一定の措置の履行を確保するものである。
へ 違反の場合の効果
海外派遣に係る労働者派遣契約の締結に際し、所定の方法により派遣先の講ずべき措置等を定めなかった場合、派遣元事業主は、許可の取消し(法第14条第1項)、事業停止命令(法第14条第2項、法第21条第2項)、改善命令(法第49条第1項)の対象となる(第13の2参照)。
(5) 派遣元事業主であることの明示
イ 概要
派遣元事業主は、労働者派遣契約を締結するに当たっては、あらかじめ、当該契約の相手方に対し、当該事業所について一般労働者派遣事業の許可を受け、又は特定労働者派遣事業の届出書を提出している旨を明示しなければならない(法第26条第4項)。
ロ 具体的な明示の方法
具体的な明示の方法は次により行うこと。
① 一般労働者派遣事業を行う事業主は、許可証に記載される許可番号により明示すること。
② 特定労働者派遣事業を行う事業主は、届出受理通知書に記載される届出受理番号により明示
すること。
3 労働者派遣契約の解除の制限
(1) 概要
労働者派遣の役務の提供を受ける者は、派遣労働者の国籍、信条、性別、社会的身分、派遣労働者が労働組合の正当な行為をしたこと等を理由として、労働者派遣契約を解除してはならない(法第27条)。
(2) 解除の禁止の意義
イ 禁止されるのは、労働者派遣契約について、業として行われる労働者派遣であると否とを問わず、また、当該労働者派遣契約の一部であるか全部であるかを問わず、これを解除する行為である。
なお、労働者派遣の役務の提供を受ける者が労働者派遣をする者と合意の上、労働者派遣契約を解除する場合であっても、(3)の事由を理由とする限り、当該解除は、労働者派遣の役務の提供を受ける者について禁止されるものである。
ロ 法第27条に違反して、労働者派遣契約を解除した場合には、当該解除は公序良俗に反するものとして無効となる。したがって、労働者派遣の役務の提供を受ける者が当該解除を主張したとしても、労働者派遣をする者は解除の無効を主張して契約の履行を求めることができ、さらに、損害を被った場合には、損害賠償の請求をすることができる。
(3) 労働者派遣契約の解除が禁止される事由
イ 「国籍」とは、国民たる資格で、「信条」とは特定の宗教的又は政治的信念を、「社会的身分」とは生来的な地位をそれぞれいうものである。
ロ 「労働組合の正当な行為」とは、労働組合法上の労働組合員が行う行為であって、労働組合の社会的相当行為として許容されるものであるが、具体的には、団体交渉、正当な争議行為はもちろん、労働組合の会議に出席し、決議に参加し、又は組合用務のために出張する等の行為も含まれるものである。
これに該当しない行為としては、例えば、いわゆる政治ストや山猫ストがある。
なお、「労働組合の正当な行為」に該当するか否かは、主として派遣労働者が組合員となっている組合と労働者派遣をする事業主との間の問題として決定することとなると考えられる。
ハ 労働者派遣契約の解除が禁止される不当な事由は、労働関係において形成されている公序に反するものであり、その他には人種、門地、女性労働者が婚姻し、妊娠し、出産したこと、心身障害者であること、労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、又はこれを結成しようとしたこと、法第40条第1項の規定により派遣先へ苦情を申し出たこと、労働者派遣の役務の提供を受ける者が法に違反したことを関係行政機関に申告したこと等も含まれるものである。
ニ 「理由として」とは、国籍、信条、性別、社会的身分、派遣労働者が労働組合の正当な行為をしたこと等の事由が労働者派遣契約の解除の決定的原因となっていると判断される場合をいう。
この場合、当該事由が決定的原因であるものか否かについては、個々具体的事実に即して判断する。
4 派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置
(1) 概要
短期間の労働者派遣契約の反復更新に伴い、短期間の雇用契約を反復更新することは、派遣労働 者の雇用が不安定になる面があり、望ましくないため、派遣労働者の雇用の安定が図られるように、派遣元事業主及び派遣先は、雇用契約及び労働者派遣契約の締結に当たり必要な配慮をするよう努 めるとともに、労働者派遣契約の解除に際して、当該労働者派遣契約の当事者である派遣元事業主 及び派遣先が協議して必要な措置を具体的に定めることとしている(「派遣元事業主が講ずべき措 置に関する指針」第2の2(第8の18参照)及び「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の6
(第9の15参照))。
(2) 派遣先の講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置
イ 労働者派遣契約の締結に当たって講ずべき措置
派遣先は、労働者派遣契約の締結に当たって、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合には、派遣先は派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること及びこれができないときには少なくとも当該労働者派遣契約の解除に伴い当該派遣元事業主が当該労働者派遣に係る派遣労働者を休業させること等を余儀なくされることにより生ずる損害である休業手当、解雇予告手当等に相当する額以上の額について損害の賠償を行うことを定めなければならないこと。また、労働者派遣の期間を定めるに当たっては、派遣元事業主と協力しつつ、当該派遣先において労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間を勘案して可能な限り長く定める等、派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な配慮をするよう努めること。
ロ 労働者派遣契約の解除の事前の申入れ
派遣先は、専ら派遣先に起因する事由により、労働者派遣契約の契約期間が満了する前の解除を行おうとする場合には、派遣元事業主の合意を得ることはもとより、あらかじめ相当の猶予期間をもって派遣元事業主に解除の申入れを行うこと。
ハ 派遣先における就業機会の確保
派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約の解除が行われた場合には、当該派遣先の関連会社での就業をあっせんする等により、当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること。
ニ 損害賠償等に係る適切な措置
派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者 派遣契約の解除を行おうとする場合には、当該労働者派遣契約に損害賠償についての定めがない 場合であっても、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとし、これができないときには、
少なくとも当該労働者派遣契約の解除に伴い当該派遣元事業主が当該労働者派遣に係る派遣労働者を休業させること等を余儀なくされたことにより生じた損害の賠償を行わなければならないこと。例えば、当該派遣元事業主が当該派遣労働者を休業させる場合は休業手当に相当する額以上の額について、当該派遣元事業主がやむを得ない事由により当該派遣労働者を解雇する場合は、派遣先による解除の申入れが相当の猶予期間をもって行われなかったことにより当該派遣元事業主が解雇の予告をしないときは30日分以上、当該予告をした日から解雇の日までの期間が30日に満たないときは当該解雇の日の30日前の日から当該予告の日までの日数分以上の賃金に相当する額以上の額について、損害賠償を行わなければならない。その他派遣先は派遣元事業主と十分に協議した上で適切な善後処理方策を講ずること。また、派遣元事業主及び派遣先の双方に責に帰すべき事由がある場合には、派遣元事業主及び派遣先のそれぞれの責に帰すべき部分の割合についても十分に考慮すること。
なお、派遣元事業主が派遣労働者を休業させる場合における休業手当に相当する額、又は派遣元事業主がやむを得ない事由により派遣労働者を解雇する場合における解雇予告手当に相当する額(=派遣先による労働者派遣契約の解除の申入れが相当の猶予期間をもって行われなかったことにより当該派遣元事業主が解雇の予告をしないときは30日分以上、当該予告をした日から解雇の日までの期間が30日に満たないときは当該解雇の日の30日前の日から当該予告の日までの日数分以上の賃金に相当する額)については、派遣元事業主に生ずる損害の例示であり、休業手当及び解雇予告手当以外のものについても、それが派遣先の責に帰すべき事由により派遣元事業主に実際に生じた損害であれば、賠償を行わなければならない。
ホ 労働者派遣契約の解除の理由の明示
派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合であって、派遣元事業主から請求があったときは、労働者派遣契約の解除を行った理由を当該派遣元事業主に対し明らかにすること。
(3) 派遣元事業主の講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置
イ 雇用契約の締結に際して配慮すべき事項
派遣元事業主は、労働者を派遣労働者として雇い入れようとするときは、当該労働者の希望及び労働者派遣契約における労働者派遣の期間を勘案して、雇用契約の期間を、当該労働者派遣契約における労働者派遣の期間と合わせる等、派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な配慮をするよう努めること。
ロ 労働者派遣契約の締結に当たって講ずべき措置
派遣元事業主は、労働者派遣契約の締結に当たって、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除が行われる場合には、派遣先は派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること及びこれができないときには少なくとも当該労働者派遣契約の解除に伴い当該派遣元事業主が当該労働者派遣に係る派遣労働者を休業させること等を余儀なくされることにより生ずる損害である休業手当、解雇予告手当等に相当する額以上の額について損害の
賠償を行うことを定めるよう求めること。
ハ 労働者派遣契約の解除に当たって講ずべき措置
派遣元事業主は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約の解除が行われた場合には、当該労働者派遣契約に係る派遣先と連携して、当該派遣先からその関連会社での就業のあっせんを受けること、当該派遣元事業主において他の派遣先を確保すること等により、当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること。また、当該派遣元事業主は、当該労働者派遣契約の解除に当たって、新たな就業機会の確保ができない場合は、まず休業等を行い、当該派遣労働者の雇用の維持を図るようにするとともに、休業手当の支払等の労働基準法等に基づく責任を果たすこと。さらに、やむを得ない事由によりこれができない場合において、当該派遣労働者を解雇しようとするときであっても、労働契約法の規定を遵守することはもとより、当該派遣労働者に対する解雇予告、解雇予告手当の支払等の労働基準法等に基づく責任を果たすこと。
(4) その他
イ 労働者派遣契約の契約期間が満了する前に当該労働者派遣契約に基づく派遣就業をしている派遣労働者を交替させる場合は、当該派遣労働者について(2)のロ、ハ及びホ並びに(3)のロに準じた取扱いをすること。
ロ 労働者派遣契約の解除があった場合に、派遣元事業主が、当該労働者派遣をしていた派遣労働者との雇用契約書を派遣労働者の同意なく差し換え、又はその同意を強要することは適切ではない旨指導すること。
5 派遣労働者の保護等のための労働者派遣契約の解除等
(1) 概要
労働者派遣をする事業主は、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者が、当該派遣就業に関し、法又は法第3章第4節の規定により適用される法律の規定(これらの規定に基づく命令の規定を含む。)に違反した場合においては、当該労働者派遣を停止し、又は当該労働者派遣契約を解除することができる(法第28条)。
(2) 労働者派遣契約の解除の意義
イ 法第31条の規定による派遣元事業主の適正な派遣就業の確保を実質的に担保するためのものである。
ロ 解除を行うことができるのは、業として行われると否とを問わず、労働者派遣をする事業主であり、派遣元事業主以外の事業主であっても労働者派遣をする場合には、当該解除を行える。
ハ 当該労働者派遣の停止又は労働者派遣契約の解除は、直ちに行うことができるものであり、当該労働者派遣契約において解除制限事由又は解除予告期間が定められていたとしても当該定めは無効となるものである。
ニ 一般に、契約は、解除事由につき別段の定めがあり、また、契約の当事者の合意がある場合を
除き、法定の解除事由である債務不履行がある場合以外一方的に解除することはできず、一方的に解除した場合には、債務不履行で損害賠償の責を負うこととなるが、法第28条の規定により、当該労働者派遣の停止又は労働者派遣契約の解除により当該労働者派遣の役務の提供を受ける者が損害を被っても、解除又は停止を行った労働者派遣を行う事業主は債務不履行による損害賠償の責を負うことはない。
(3) 労働者派遣契約の解除等を行える具体的事由
労働者派遣の役務の提供を受ける者が次の規定に違反した場合である。
① 法第39条から第42条まで、第45条第10項及び第46条第7項
② 労働基準法、労働安全衛生法、じん肺法及び作業環境測定法の規定であって法第3章第4節の規定により労働者派遣の役務の提供を受ける者に適用される規定(第10参照)
6 労働者派遣契約の解除の非遡及
(1) 概要
労働者派遣契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる(法第29条)。
(2) 意義
イ 労働者派遣契約は、雇用契約と同様に継続的給付の実施を内容とするものであるため、契約の解除がなされた場合にその効果を遡及すると当該契約の当事者間に著しい不均衡が生じ、給付の返還を行うことが不可能となる等適当ではないことから、当該労働者派遣契約の解除の意思表示がなされたとき以後についてのみ解除の効果が生ずることとされたものである。
ロ 法第29条は、強制法規であり、当事者間において、労働者派遣契約においてこれに反する定めをしても無効となる。