*使用者の安全配慮義務については、判例の積み重ねで、「労働契約に付随する義務として、使用者は、労働者が労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体などを危 険から保護すべき義務を負っている(電通損害賠償事件H12/3/24最2小判)」とする考え方が確立している。
⮚ 労働契約法 『第2章 労働契約の成立及び変更(第6条-第13条)』
⮚ 労働契約法 『第3章:労働契約の継続及び終了(第14条-第16条)』
⮚ 労働契約法 『第4章 期間の定めのある労働契約(第17条)』
・就業形態・就業意識の多様化
・労働契約関係の多様化・個別化
・個別労働関係紛争の増加
・経営環境の急激な変化
・集団的労働条件決定システム機能の低下
・就業形態・就業意識の多様化 ・経営環境の急激な変化
・労働契約関係の多様化・個別化 ・集団的労働条件決定システム機能の低下
・個別労働関係紛争の増加
「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」
施行状況 (平成18年度)
1 総合労働相談件数
946,012件( 4.2%増*)
2 民事上の個別労働紛争相談件数
187,387件( 6.2%増*)
3 助言・指導申出受付件数
4 あっせん申請受理件数
5,761件( 9.5%減*)
6,924件( 0.5%増*)
【*増加率は、平成17年度実績と比較したもの。】
【労働契約法の必要性】
「就業形態の多様化」、「労働契約関係の多様化・個別化」「個別労働関係紛争の増加」等に対応し、
「労働者の保護」を図りつつ、「個別の労働関係の安定」に資するようにするため、
「労働者及び使用者の自主的な交渉の下」で、紛争を未然に防止し、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという「合意の原則」及び「労働契約と就業規則との関係」等を定める必要がある。
単に判例法理を立法化するだけでなく、手続を規定することや、当事者の意思が明確でない場合にそれを補完するための規定(任意規定、推定規定)を活用することにより、労使当事者の行為規範となり、かつ、具体的な事案に適用した場合の予測可能性を高めて紛争防止にも役立つようなルールを形成することが必要である。
強行規定・・・当事者の意思に関わりなく適用される規定
任意規定・・・当事者の意思によりその適用を排除できる規定
推定規定・・・はっきりしない事実について、一応、一定の法律効果を発生させる規定実体規定・・・権利義務の内容について定める規定
手続規定・・・一定の手続を権利義務関係の要件として定める規定
【労働契約法の基本的考え方】
・労使自治の尊重と実質的対等性の確保
・労働関係におけるxxさの確保
・就業形態の多様化への対応
・紛争予防と紛争発生への対応
【労働契約法の性格】
・労働基準法(公法、刑罰法規)とは別民事上のルールを定める法律
・履行確保のための罰則は設けず、監督指導は行わない
・強行的な実体規定のほか、手続規定、任意規定、推定規定なども活用
行政取締法規
罰則・監督指導を前提に、
使用者に対して義務の履行を強制。
労働基準法
労働者
使用者
個別労使関係
労働契約
労働契約法
労使当事者の権利義務関係を定めた民事法規
罰則を伴わず、監督指導は行わない。
労使間の権利義務関係
に関する規定を移行
民法
私人間の権利義務関係を規
定する一般法
法律で明確に定められていない事項につい て、個別事案の裁判例により形成されてきた
判例法理
労働契約に関する民法の特別法 判例法理を法制化
労働契約法の概要
労働契約の原則(総則)
①
・・・労使対等の合意原則、契約内容の書面確認、安全配慮義務
労働契約の成立・変更のルール
②
・・・合意原則、就業規則による労働条件変更ルールの明確化
労働契約の継続に関するルール
③
・・・出向・懲戒をする場合のルールの明確化
労働契約の終了に関するルール
④
・・・解雇権濫用の禁止
有期労働契約に関するルール
⑤
・・・期間途中の解雇のルール、契約期間の配慮等
労使双方が安心、納得したうえで多様な働き方を実現できる労働環境を整備
労働契約法の条文構成
第1章 総則
第1条 目的第2条 定義
第3条 労働契約の原則
第4条 労働契約の内容の理解の促進第5条 労働者の安全への配慮
第2章 労働契約の成立及び変更第6条 労働契約の成立
第7条 労働契約の成立
第8条 労働契約の内容の変更
第9条 就業規則による労働契約の内容の変更第10条 就業規則による労働契約の内容の変更第11条 就業規則の変更に係る手続
第12条 就業規則違反の労働契約
第13条 法令及び労働協約と就業規則との関係
第3章 労働契約の継続及び終了
第14条 出向第15条 懲戒第16条 解雇
第4章 期間の定めのある労働契約第17条 同上
第5章 雑則
第18条 船員に対する特例第19条 適用除外
第1章 総則第1条 目的第2条 定義
第3条 労働契約の原則
第4条 労働契約の内容の理解の促進第5条 労働者の安全への配慮
第2章 労働契約の成立及び変更第6条 労働契約の成立
第7条 労働契約の成立
第8条 労働契約の内容の変更
第9条 就業規則による労働契約の内容の変更第10条 就業規則による労働契約の内容の変更第11条 就業規則の変更に係る手続
第12条 就業規則違反の労働契約
第13条 法令及び労働協約と就業規則との関係
労働契約法の条文構成
第3章 労働契約の継続及び終了第14条 出向
第15条 懲戒第16条 解雇
第4章 期間の定めのある労働契約第17条 同上
第5章 雑則
第18条 船員に対する特例第19条 適用除外
労働契約法 『第1章 総則(第1条-第5条)』
⮚ 法第1条:目的 ・・・労使自治・合意原則を基本としつつ、労働者保護を図る
≪新法の性格≫
・労基法のような行政取締法規とは一線を画する民事法
・行政監督指導や罰則はないが、判例法理の重要な部分を立法化したもの
⮚ 法第2条:定義 ・・・「労働者」と「使用者」の定義
⮚ 法第3条第1項:労働契約の原則 ・・・合意原則:労働契約は、労使対等の合意によって
締結・変更する
⮚ 法第3条第2項:労働契約の原則 ・・・均衡考慮:労働契約は、就業の実態に応じ、
均衡を考慮して締結・変更すべきもの
⮚ 法第3条第3項:労働契約の原則 ・・・労働契約は、仕事と生活の調和にも配慮し、
締結・変更すべきもの
期間の定めが無い
非xx社員
有期契約社員
フルタイムパートを含む
非xx社員
xx社員
パートタイマー
パート労働法の適用範囲
非xx社員
労働契約法の適用範囲
(
(
所 所
ー
パ定 フ 定
労 ル労
ト 働 タ 働
タ 時 イ 時
イ 間 ム間
)
ムが が
)
短 長
い い
期間の定めがある
均衡待遇の考え方
均等待遇の考え方
働き方が異なることを前提として、その違いの間でのバランスを問う
同じ働き方をしている場合に、賃金等の労働条件、処遇面で差別しないこと。
働き方が同じなのだから
働き方 働き方
働き方に違いがあることが前提
処遇 処遇
労働契約法 『第1章 総則(第1条-第5条)』
⮚ 法第3条第4項:xxxxの原則 ・・・
労働者も使用者も、労働契約を守り、xxに従い誠実に権利を行使し、義務を履行しなければならない。
⮚ 法第3条第5項:権利濫用の禁止 ・・・
労働者も使用者も、労働契約に基づく権利を濫用してはならない。
民法1条2項 「権利の行使及び義務の履行は、xxに従い誠実に行わなければならない。」民法1条3項 「権利の濫用は、これを許さない」
⮚ 法第4条第1項:契約内容の理解の促進 ・・・
使用者は、労働者に提示する労働条件と労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにする。
⮚ 法第4条第2項:契約内容の書面確認 ・・・
労働者と使用者は、労働契約内容について、できる限り書面で確認する。
労働契約法 『第1章 総則(第1条-第5条)』
⮚ 法第5条:安全配慮義務 ・・・
使用者は、労働契約に伴い、労働者の生命・身体等の安全に配慮する。
*使用者の安全配慮義務については、判例の積み重ねで、「労働契約に付随する義務として、使用者は、労働者が労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体などを危険から保護すべき義務を負っている(電通損害賠償事件H12/3/24最2小判)」とする考え方が確立している。
*しかし、この安全配慮義務については、労基法などの法令上の明確な規定はないため、この義務を新法に明示した。
【裁判例】 陸上自衛隊八戸車輌整備工場事件(最高裁三小昭和50・2・25判決)
【裁判例】 xx事件(最高裁xxxx59・4・10判決)
労働契約法 『第2章 労働契約の成立及び変更(第6条-第13条)』
⮚ 法第6条:労働契約成立の合意原則 ・・・
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことを労使で合意することにより成立する。
*民法623条 「雇用は、当時者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」
⮚ 法第7条:労働契約を締結するときの就業規則による労働条件決定のルール ・・・
(1)①合理的な労働条件が定められていて、②労働者に周知させていた就業規則があるときは、労働契約を締結する際の契約内容は、その就業規則の定める労働条件による。
(2)就業規則の内容と異なる合意があるときは、その部分は、労使当事者の合意が優先する。 (例:職種限定合意、勤務地限定合意)
*就業規則の法規範性
【裁判例】 秋北バス事件(最高裁大法廷昭和43・12・25判決)
【裁判例】 電電公社帯広局事件(最高裁第xx法廷昭和61・3・13判決)
【裁判例】 日立製作所武蔵工場事件(最高裁第xx法廷平成3・11・28判決)
【裁判例】 フジ興産事件(最高裁第二小法廷平成5・10・10判決)
労働契約法 『第2章 労働契約の成立及び変更(第6条-第13条)』
⮚ 法第8条:労働条件変更の合意原則 ・・・
労働条件を変更する場合は、使用者と労働者との合意によるのが原則である。
⮚ 法第9条:就業規則の変更による労働条件変更のルール ・・・
⮚ 法第10条:労働契約を締結するときの就業規則による労働条件決定のルール ・・・
(1)原則として、使用者は、労働者との合意なく、就業規則の変更により、労働者に不利益に労働条件を変更することはできない。
(2)①変更後の就業規則を労働者に周知させ、②就業規則の変更が合理的な場合は、契約内容である労働条件は、変更後の就業規則による。
(3)就業規則の変更によっては変更されないという合意があるときは、その部分は、労使当事者の合意が優先する。(就業規則を下回る内容は無効)
【裁判例】 秋北バス事件(最高裁大法廷昭和43・12・25判決)
【裁判例】 xx市農業共同組合事件(最高裁第三小法廷昭和63・2・16判決)
【裁判例】 みちのく銀行事件(最高裁第xx法廷平成12・9・7判決)
労働契約
使用者
x x
労使の合意
労働者
新法第8条
労働条件の変更
新法第9条
x x
変 労働者との合意なく、就業規則の変更によって、労働者の不利
更 益変更をすることはできない。
就業規則
新法第10条
例 外
就業規則の変更によって労働条件を変更することができる場合
【要件】
【合理性の判断要素】
①労働者の不利益の程度
②労働条件の変更の必要性
これらを総合的に勘案して判断する
①変更後の就業規則を労働者に周知させたこと
②就業規則の変更が合理的であること
③変更後の就業規則の内容の相当性
④労働組合等との交渉の状況
⑤その他の就業規則の変更に係る事情
労働契約法 『第2章 労働契約の成立及び変更(第6条-第13条)』
⮚ 法第11条:就業規則の変更手続き ・・・
就業規則の変更は、労基法の規定に従って行う。
*労基法第89条(作成及び届出の義務)、第90条(作成の手続)
⮚ 法第12条:就業規則と労働契約との効力関係 ・・・
就業規則で定める基準に達しない労働契約は、その部分が無効となり、無効となった部分は就業規則で定める基準に引き上げられる。
*労基法第93条の規定を移行
⮚ 法第13条:法令・労働協約と就業規則との効力関係 ・・・
就業規則は法令・労働協約に反する場合は、労働契約の内容は、その反する部分について、就業規則の内容によることはできない。
*労基法第92条(法令及び労働協約との関係)
【労働契約法 第13条】
法令・労働協約に反する就業規則は、その部分については、労働条件の決定・変更に関する第7条の、第10条、労働契約との効力関係に関する第12条を適用しない。
【労働基準法 第92条】
労働契約
就業規則
労働協約
法令
就業規則は、法令・労働協約に反してはならない。
法令・労働協約に違反する就業規則については、行政官庁の変更命令の対象となる。
> > >
【労働基準法 第93条】
労働契約と就業規則との関係について、労働契約法第12条の定めるところによる。
【労働基準法 第13条】
労基法に定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は無効。無効となった部分は労基法に定める基準による。
【労働組合法 第16条】
労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約は無効。無効となった部分は労働協約に定める基準による。
【労働契約法 第12条】
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は無効。無効となった部分は、就業規則に定める基準による。
労働契約を締結する場合の就業規則による労働条件決定ルール
使用者
労使の合意
労働者
労働条件の決定
原則
労働契約
就業規則
就業規則の定める労働条件によることができる場合
【要件】
①合理的な労働条件を定めていること
②労働者に周知させていたこと
労働契約法 『第3章:労働契約の継続及び終了(第14条-第16条)』
⮚ 法第14条:出向 ・・・
使用者が労働者に出向を命ずる場合に、その必要性、対象労働者の選定などの事情に照らして、権利の濫用に当たる場合は、その出向は無効とする。
≪出向の有効要件≫
① 諸規則や採用時の合意:出向の実情、採用時の説明と同意、職場労働者の同種出向の受容
② 出向の業務上の必要性:出向者選定の合理性:出向先での賃金、労働時間、休日・休暇、期間など
【裁判例】 新日本製鐵事件(最高裁第二小法廷平成15・4・18判決)
⮚ 法第15条:懲戒 ・・・
使用者が労働者に対する懲戒は、本人がした行為の性質・態様などの事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、権利の濫用として無効とする。
【裁判例】 関西電力事件(最高裁第xx法廷昭和58・9・8判決)
≪新法の性格≫
① あらかじめ就業規則などの懲戒の根拠規定があるか否かという形式的な問題
② 懲戒の根拠がある場合に、その権利行使が権利の濫用に当たるか否かという実質的な問題とに分けられる。新法で定めたのは②の部分。
≪懲戒の原則≫
① 罪刑法定主義の考え方 【 明確性、平等取扱い、相当性(罪と罰の均衡性)、適正手続き 】
② 「一事不再理の原則」 「刑事不遡及の原則」 「類推適用の禁止」
≪懲戒の原則≫
① 罪刑法定主義の考え方 【 明確性、平等取扱い、相当性(罪と罰の均衡性)、適正手続き 】
② 「一事不再理の原則」 「刑事不遡及の原則」 「類推適用の禁止」
明 確 性
罪刑法定主義の考え方
・・・ 懲戒処分をするには、懲戒の種類・程度が 就業規則で明記されていなければならない。
平等取扱い
・・・ 違反の種類・程度が同じ事案に対する懲戒処分は、同一の種類・程度でなければならない。
相 当 性
・・・ 懲戒の重さは、違反の種類・程度と比較して、
適正手続き
バランスのとれたものでなければならない。 (罪と罰の均衡性)
・・・ 懲戒処分を発動するには、本人に弁明の機会を
与えるなど、適正な手続きがとられなければならない。
労働契約法 『第3章:労働契約の継続及び終了(第14条-第16条)』
⮚ 法第16条:解雇 ・・・
解雇は、、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。
*現行の労基法第18条の2からの移行
【裁判例】 日本食塩製造事件(最高裁第二小法廷昭和50・4・25判決)
*民法628条 「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当時者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。」
労働契約法 『第4章 期間の定めのある労働契約(第17条)』
⮚法第17条第1項:契約期間途中の解雇 ・・・
有期契約による場合は、使用者はやむを得ない事由がなければ、契約期間が満了する前に労働者を解雇することはできない。
⮚法第17条第2項:契約期間を定める場合の配慮 ・・・
有期労働契約を締結する場合は、使用者は、契約の目的に照らして、必要以上に契約期間を短くし、その契約を反復更新することのないように配慮しなければならない。
*「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15年厚生労働省告示第357号)第4条 (契約期間についての配慮)
「使用者は、有期労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇い入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限る)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。」
【裁判例】 東芝xx工場事件(最高裁第xx法廷昭和49・7・22判決)
判断のポイント
1 業務の客観的内容
有期契約労働者が従事する仕事の種類・内容・勤務形態から、従事している業務が恒常的なものか臨時的なものか、通常の労働者の業務と同じかどうか
2 契約上の地位の性格
契約上の地位が基幹的なものか、臨時的なものか、労働条件が通常の労働者と同じかどうか
3 当事者の主観的態様
4.期待権保護(継続更新)タイプ
採用時の事業主の説明から、継続雇用を期待させる当事者の言動・認識があったかどうか
実質的に期間の定めがないと判断される可能性が高い事情
◆業務内容が恒常的
◆業務内容が通常の労働者と同じ
◆労働者の地位が基幹的
◆継続雇用を期待させる事業主の言動があった
(「頑張ってくれれば、長く働いてもらいたい」といった事業主の言動など)
1.純粋有期契約タイプ
下記の2~4のいずれにも該当しないもの。
2.実質無期契約タイプ
当該有期契約は、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っていると認められるもの。
3.期待権保護(反復更新)タイプ
2の状態とは認められないが、雇用継続への合理的な期待が認められる契約とされ、その理由として、相当程度の反復更新の実態が挙げられているもの。
4 更新の手続き・実態
更新の有無・回数、勤続年数等の契約更新の状況はどうだったのか、更新手続きの方法はどの程度厳格なものか
5 他の労働者の更新状況
その有期契約労働者と同じ地位にある他の労働者の契約更新の状況はどうなっているのか
◆過去の契約が更新されている
(少なくても1回以上更新。ただし、更新されたことがなくても、特段の事情がない限り更新されるのが通例となっている場合など)
◆更新の手続きが形式的
(都度更新をしていなかったり、契約内容について何の交渉もなく、形だけ契約書に判を押している場合など)
◆同じ地位にある労働者について過去の雇止めの例がほとんどない
2の状態とは認められないが、格別の意思表示や特段の支障がない限り当然更新されることを前提として契約が締結されてい るとされ、期間満了によって契約を終了さ せるためには従来の取扱いを変更して契約を終了させてもやむを得ないと認められる特段の事情の存することを要するとされるなど、雇用継続への合理的な期待が当初の契約締結時等から生じている契約であるとされたもの。
⮚ 雇用契約書、労働条件通知書の整備(記載事項の確認)
・有期契約社員に対する「更新の有無」「更新条件」の書面明示
・パート社員に対する「昇給の有無」「賞与の有無」「退職金の有無」の書面明示
⮚ 就業規則の整備(根拠規定確認)
「出向」 「懲戒」 「解雇」 「雇止め」 「雇止め予告」 など
⮚ 今回の労働契約法には盛り込まれていない内容
「採用内定」 「試用期間」 「継続雇用型継続変更制度」 「配置転換」 「転籍」 「休職」
「労働者の付随的義務(兼業禁止、競業禁止、秘密保持義務)」 「整理解雇」
「昇進、昇格、降格」 「労働者代表制度」 「解雇の金銭解決」 「労働者の損害賠償」
【対象となる待遇】
【パートタイマー分類】正社員と比較 | 比較する3要件 | 賃金 | 教育訓練 | 福利厚生 | ||||||
①職務の内容 (業務の内容及び責任) | ②人材活用の仕組み・運用等 (人事異動の有無及び範囲) | ③契約期間 | 職務関連賃金 ・基本給 ・賞与 ・役職手当 | 左以外の賃金 ・退職手当 ・家族手当 ・通勤手当 | 職務遂行に必要な能力を付与するもの | 左以外のもの (キャリアアップのための訓練 など) | ・食堂 ・休憩室 ・更衣室 | 左以外のもの ・慶弔休暇 ・社宅貸与 | ||
① | 同視すべき者 | 同じ | 全雇用期間を通じて同じ | 無期もしく反復更新により無期と同じ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
② | 職務と人材活用の仕組み等が同 じ者 | 同じ | 一定期間は同じ | - | ● | - | ○ | △ | ○ | - |
③ | 職務が同じ者 | 同じ | 異なる | - | △ | - | ○ | △ | ○ | - |
④ | 職務が異なる者 | 異なる | 異なる | - | △ | - | △ | △ | ○ | - |
◎ :パートタイマーであることによる差別的扱いの禁止
○ :実施義務・配慮義務
● :同一の方法で決定する努力義務
△ :職務の内容、成果、意欲、能力、経験等を勘案する努力義務
第○条(労働契約の期間等)
会社は、労働契約の締結に当たって期間の定めをする場合には、3年(満60歳以上のパートタイム労働者との契約については5年)の範囲内で、契約時に本人の希望を考慮の上各人別に決定し、別紙の雇入通知書で示す。
2 前項の場合において、当該労働契約の期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を別紙の雇入通知書で示す。
3 当該契約について更新する場合又はしない場合の判断の基準は、以下の事項とする。
(1) 契約期間満了時の業務量により判断する。
(2) 当該パートタイム労働者の勤務成績、態度により判断する。
(3) 当該パートタイム労働者の能力により判断する。
(4) 会社の経営状況により判断する。
(5) 従事している業務の進捗状況により判断する。
第○条(雇止め)
労働契約に期間の定めがあり、雇入通知書にその契約を更新する場合がある旨をあらかじめ明示していたパートタイム労働者の労働契約を更新しない場合には、少なくとも契約が満了する日の30日前までに予告する。
2 前項の場合において、当該パートタイム労働者が、雇止めの予告後に雇止めの理由について証明書を請求した場合には、遅滞なくこれを交付する。雇止めの後においても同様とする。
第○条(社員への転換)
1年以上勤続し、社員への転換を希望するパートタイム労働者については、次の要件を満たす場合、社員として採用し、労働契約を締結するものとする。
(1) 1日8時間、1週40時間の勤務ができること
(2) 所属長の推薦があること
(3) 面接試験に合格したこと
2 前項の場合において、会社は当該パートタイム労働者に対して必要な教育訓練を行う。
3 年次有給休暇の付与日数の算定及び退職金の算定において、パートタイム労働者としての勤続年数を通算する。