1.基本情報 (1)案件名 モデル地域での実践強化および評価制度の確立を通した、障がい児のためのインクルーシブ教育普及事業 (2)事業地 カンボジア王国 カンダール州クサイ・カンダール郡 (3)贈与契約締結日及び事業期間 ・贈与契約締結日:2019 年 8 月 2 日・事業期間:2019 年 8 月 2 日~2020 年 8 月 1 日・延長事業期間:30 日間、2020 年 8 月 31 日まで (4)供与限度額及び実績(返還額) ・供与限度額:310,777...
(様式4)
日本NGO連携無償資金協力 完了報告書
1.基本情報 | |
(1)案件名 | モデル地域での実践強化および評価制度の確立を通した、障がい児 のためのインクルーシブ教育普及事業 |
(2)事業地 | カンボジア王国 カンダール州クサイ・カンダール郡 |
(3)贈与契約締結日及び事業期間 | ・贈与契約締結日:2019 年 8 月 2 日 ・事業期間:2019 年 8 月 2 日~2020 年 8 月 1 日 ・延長事業期間:30 日間、2020 年 8 月 31 日まで |
(4)供与限度額 及び実績(返還額) | ・供与限度額:310,777 米ドル ・総支出:301,023.60 米ドル(返還額:9,753.40 米ドル) |
(5)団体名・連絡先,事業担当者名 | (ア) 団体名:特定非営利活動法人 難民を助ける会 【法人番号:0000000000000】 (イ) 電話:00-0000-0000 (ウ) Fax:00-0000-0000 (エ) E-mail:xxxxx@xxxxxxxx.xx.xx (オ) 事業担当者名:xxxxx |
(6)事業変更の有無 | 事業変更承認の有無:有り (ア) 申請日:2020 年 6 月 3 日 承認日:2020 年 6 月 15 日 内容:事業期間の延長および事業内容の変更 事業変更報告の有無:有り (ア) 報告日:2019 年 8 月 29 日(11 月 8 日に差し替え)内容:本部事業統括および事業担当の変更 (イ) 報告日:2020 年 2 月 11 日 内容:本部会計担当および現地職員の変更 (ウ) 報告日:2020 年 4 月 1 日内容:本部会計担当の変更 (エ) 報告日:2020 年 6 月 3 日 内容:本部会計担当および現地職員の変更、物資の追加購入 (オ) 報告日:2020 年 8 月 31 日内容:予算の変更 |
2.事業の概要と成果 | |
(1)プロジェクト 目標の達成度 (今期事業達成目標) | 専門性や教材を備えた特別支援学級およびリソースセンターが対象郡のモデル集合村に設立され、さらに能力強化に取り組んだ郡内全 18 集合村の障がい者支援委員会が年間活動計画の 8 割以上実施できるようになり、障がい児の支援体制が整備され就学支援も開始された。また、対象郡での新たな取り組みを含むインクルーシブ教育促進の優れた実践事例ととも に、全国に配布されるチェックリストドラフトの各評価項目が確定した。 |
特別支援学級やリソースセンターの設立および障がい者支援委員会の能 力強化を通して障がい児支援体制が整備されるとともに、インクルーシブ教育の評価ツールが策定される。 | |
(2)事業内容 | 第 1 年次は事業変更を行った活動を除き、申請書に記載した事業内容を変更することなく実施した。活動内容は以下の通り。 なお、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020 年 6 月 15 日に承認された事業変更申請書のとおり活動の一部の実施を取りやめている(第 1年次に実施した研修や会合の詳細は「補足資料①研修・会合一覧」を参照)。 活動 1:IE 実践状況を評価する仕組みづくり (1-1)国内のインクルーシブ教育(以下、IE:Inclusive Education)の実施状況を評価する IE チェックリストを策定するため、IE チェックリスト専門委員会会合を 3 回にわたって開催した。第 1 回会合では「学校設備や運営全体に係る視点」と「教員や教室環境に係る視点」の 2 点において、障がい児に配慮されているかどうかを IE チェックリストで評価することに合意した。第 2 回会合では、プノンペン市内の公立小学校 2 校お よび対象地域であるクサイ・カンダール郡内の公立小学校 2 校における小学校教員への聞き取りや、各小学校を管轄する教育事務所職員への聞き取り結果を踏まえ、チェックリストの項目を決定した。第 3 回会合では、2 種類のチェックリストの各項目を再度協議し最終化したほか、教員および教室環境に係るチェックリストについては、各項目の達成度を測るための 4 段階の指標も設定した。 (1-2)第 2 回専門委員会会合の前日には、上述のプノンペン市内の公立小学校 2 校において IE チェックリストドラフトの試用を実施した。参加した専門委員会メンバー21 名が 2-3 人ごとのグループに分かれ、学校長および各学年の学級担任に 2 種類のチェックリストを用いた質問を行った。 なお、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、第 1 年次事業期間内に予定していた IE チェックリストの試用の一部を取りやめた。(第 1 年次に作成した IE チェックリストのxxxxは「補足資料②IE チェックリストドラフト」を参照)。 活動 2:モデル地域における取り組みの国内普及 (2-1)IE 推進に向けた取り組みを協議する際に参考として活用できる事例集の第 2 年次での配布に向け、第 1 年次は、上述したIE チェックリスト専門委員会会合で事例集の構成や掲載内容について協議した。加え て、国内における IE 実践の優れた取り組みを同事例集に掲載するた め、モデル地域であるクサイ・カンダール郡での事例収集を開始した。なお、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、第 1 年次事業期間内に予定していた他地域からの訪問受け入れは取りやめた。 活動 3:障がい者支援委員会の能力強化 (3-1)クサイ・カンダール郡の全 18 集合村に設立された障がい者支援委員会(以下、CCPWD:Commune Committee for Persons with Disabilities)の活動や運営を中心的に担うメンバーを各集合村の CCPWD から 3 名ずつ |
選出し、2020 年 7 月と 8 月に、中心メンバー55 名(代理の参加者を含む)および CCPWD をとりまとめる郡障がい者支援委員会(以下、DCPWD: District Committee for Persons with Disabilities)メンバー7 名の計 62 名を対象にした 3 日間の能力強化研修を実施した。参加者は、障がい児の家族とのコミュニケーションや障がい児の多様なニーズに応じた個別支援の実施方法を学んだ。 (3-2)CCPWD および DCPWD メンバーに加え、カンダール州教育局職員を含むのべ 574 名を対象に、全体会合およびグループ会合を各 2 回実施した。各会合では、年間活動計画の実施状況や障がい児のデータ管理状況を確認するとともに、各 CCPWD が障がい児の就学支援を行うにあたって直面している課題と解決策について協議した。 (3-3)当会は、障がい児が専門の NGO や病院等で必要な治療やリハビリサービス、補装具の提供を受ける際に同行し、✎✎る費用を自己資金で支援した。事業期間中に、障がい児 92 名が支援を受けた。障がい児のニーズに沿った個別の支援によって、車いすや歩行器を供与された障がい児は、外出して近所の住民と交流するようになったり通学できるようになったほ✎、眼鏡や補聴器を得た障がい児は、学校での勉強や家族や友達とのコミュニケーションが容易になる等、生活状況や就学状況における改善が見られた。 活動 4:特別支援学級およびリソースセンターの設立と能力強化 (4-1)クサイ・カンダール郡ソンロン集合村のプレイ・トム小学校に、障がい児のための特別支援学級と、障がいに関する知識や支援を得られるリソースセンターを新設した。特別支援学級およびリソースセンターの建設工事に先立ち、当会はクサイ・カンダール郡教育事務所およびプレイ・トム小学校との間で、特別支援学級の運営や備品の維持管理に関する役割や責任範囲を定めた合意書を締結した(締結した合意書については「補足資料③工事前の合意書」を参照)。2020 年 1 月と 8 月には、特別支援学級およびリソースセンターの運営に必要な家具や機材、教材等、242 点をプレイ・トム小学校へ供与し、障がい児に配慮した教室環境を整備した (第 1 年次に供与した資機材については「補足資料④特別支援学級およびリソースセンター供与資機材・教材一覧」「補足資料⑤資機材・教材供与に関する合意書」「補足資料⑥資機材・教材供与に関する合意書改定版」参照)。 (4-2)障がい児が個々の特性やニーズに配慮された環境で学べるように、 2019 年 10 月に採用した特別支援学級を担当する SE 教員 4 名に加えて、リソースセンターを担当する教員 1 名、SE 教員の交代要員である教員 2名、州教育局職員 1 名、郡教育事務所職員 2 名の計 10 名を対象に、「視覚・聴覚障がい」「発達・知的障がい」「障がい児の療育」に関する専門研修をのべ 32 日間実施した。 視覚・聴覚障がいの研修は、2019 年 9 月~11 月の計 20 日間にわたって実施した。参加者は特別支援教員の教員養成校である National Institute for Special Education(以下、NISE)の職員✎ら、手話や点字の基礎、視覚・聴覚障がい児の教授方法を学んだ。 発達・知的障がいの研修は、同分野でxxの経験がある Rabbit School Organization(以下、RSO)と協力し、各障がいの特徴や教授法について学ぶ 5 日間の基礎研修と、一人ひとりのニーズに合わせて作成する個別 教育計画に関する 2 日間の研修を実施した。加えて、研修参加者は、RSOが運営するプノンペン市内の特別支援学級を訪問し、RSO の教員による授業を見学するとともに、特別支援学級と通常学級の児童の交流方法や転 籍を促す方法について意見交換を行った。2019 年 12 月および 2020 年 8 |
月、SE 教員の要望に基づき、個別教育計画と教材の作成に関する RSO 職員による訪問指導を計 1.5 日間実施した。 障がい児の療育についての研修は、障がい児へリハビリテーションや医療的支援を実施するCentre for Child and Adolescent Mental Health (以下、CCAMH)と協力して、2020 年 8 月に 2 日間実施した。参加者は、脳性麻痺や自閉症の基礎知識、教室での支援方法について学んだ。なお、当初は 2 日の座学研修と 3 日間の実践研修を行う予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、3 日間の実践研修は第 2 年次に延期することとした。 (4-3)2019 年 10 月、カンダール州教育局、クサイ・カンダール郡教育事務所、プレイ・トム小学校校長とともに、特別支援学級の開設および運営に関して協議を行い、11 月より午前のみの一学級制で、2 名の特別支援学級の担当教員(以下、SE 教員:Special Education 教員)を配置し開設することとした。SE 教員は、プレイ・トム小学校の現職の教員 2 名と契約職員 2 名の 4 名を採用したが、一学級制で開始することになったため、契約職員 2 名のみが特別支援学級を担当することとなった。開設にあたっては、通学が難しい等の理由で未就学の状態が続いていた障がい児が就学できるように、SE 教員および当会スタッフが電話や家庭訪問を通じて、就学を呼び✎けた。その結果、2020 年 3 月までに、特別支援学級の上限人数である 10 名の障がい児が本学級に通うようになった(障がい児 の内訳は視覚障がい児 2 名、聴覚障がい児 1 名、ダウン症児 2 名、肢体 障がい児 2 名、知的障がい児 3 名)。また、2020 年学年度(教育省より 2021 年 1 月開始予定との発表あり)✎らは午前と午後の 2 学級を開設することを目指し、2020 年 7 月に SE 教員およびソンロン集合村の CCPWD メンバーとともに当学級への就学希望調査を実施した。当調査では、ソンロン集合村に加え、近隣のビヒア・スオ集合村、シトー集合村およびロカ・チョンルン集合村にて、過去に一度も就学したことのない児童や退学児童等 10 名を訪問した。その結果、地元の公立小学校に就学予定の 2 名を除く 8 名が新学年度✎らプレイ・トム小学校の特別支援学級に就学する予定である。8 月✎らは二学級制開始に向けて郡教育事務所およびプレイ・トム小学校校長、SE 教員との調整を開始し、新学級に新たに配置する 2 名の教員の確保に関する依頼文書を教育省宛てに提出した。現在、教員の配置に向けた手続きの進捗状況を定期的に関係局に確認している。 なお、2020 年 3 月より新型コロナウイルスの感染拡大の影響で学校が休校していたため、リソースセンターはまだ利用されていない。新学年度の開始にあわせて、在籍児童や教員、地域住民の利用を開始する予定 である。 | |
(3)達成された成 果 | 成果 1:カンボジア国内の学校および教育行政機関におけるインクルーシ ブ教育実践状況を評価する仕組みができ、活用され始める。 学校設備や運営全体に係るチェックリストおよび教員や教室環境に係るチェックリストの 2 種類のドラフトの各評価項目が決定した。教員や教室環境に係るチェックリストについては各項目の達成度を測るための 4 段階の指標も設定された。 成果 2:IE 推進に関する事例集の共有や他地域との交流を通して、モデル 地域での取り組みが国内に広まる。 第 2 年次での配布に向けて事例集の構成および内容案が協議され、モデル地域における IE 推進の優れた事例の収集が開始された。 成果 3:地域住民による障がい者支援のモデル事例として、各集合村に公 |
的に設立された障がい者支援委員会が十分な能力を身につけ、その役割を 果たす。 CCPWD の活動計画(2019 年 6 月✎ら 2020 年 8 月)に含まれていた障がい児の実態調査や入学を呼び✎けるキャンペーン等の活動のうち、全 18 集合村において 80%以上の活動が実施された。 また、CCPWD による個々の障がい児の就学ニーズに応じた個別支援も行われ始めた。歩行が困難な児童に対して、集合村の予算や地域✎らの寄付を用いて車いすと学習用品を提供したり、特別支援学級に新学年度✎ら障がい児が通えるように、交通費の補助を決定したりするといった支援が行われた。 成果 4:特別支援学級教員およびリソースセンターが、専門性や教材を備 えた、インクルーシブ教育推進の中心的役割を果たす。 視覚・聴覚、発達・知的障がいおよび療育に関する専門研修に参加した 10 名を対象に実施した確認テストでは、いずれの研修においても研修後の 正答率は 8 割以上となった。事前・事後テストの正答率は、視覚・聴覚障がい研修については 64.9%✎ら 95.9%に、知的・発達障がい研修については 70.9%✎ら 96.3%に、療育研修については 81.0%✎ら 94.0%に上昇した。 2020 年 8 月末時点で、これまで就学経験のない児童 9 名を含む 10 名の障がい児が、研修を受講した SE 教員✎ら個々のニーズに応じた支援を受けながら、特別支援学級で学習している。 なお、2020 年 3 月より新型コロナウイルスの感染拡大の影響で学校が休 校していたため、リソースセンターはまだ利用されていない。 | |
(4)持続発展性 | IE チェックリストの策定においては、教育省特別教育局が専門委員会の会合運営や関係省庁との調整を担うことにより、事業終了後も当局が主体となって IE チェックリストを用いた評価の実施やリストの更新を行えるような体制作りに努めている。また、政府関係者だけではなく、障がい児教育支援に取り組む団体にも各会合に参加してもらうことで、教育現場で活用できる IE チェックリストの作成を目指すとともに、各団体の事業地においても活用されるよう協力体制を構築している。 また、クサイ・カンダール郡の全 18 集合村に設立されたCCPWD が持続的に活動を行えるように、選出した中心メンバーの能力強化に取り組むとともに、活動予算についても郡知事や郡庁舎の担当官と協議を行った。その結果、各集合村に毎年割り当てられる予算の一部を、同委員会の活動に使用することで合意が得られた。 特別支援学級およびリソースセンターの運営に関しては、カンダール州教育局およびクサイ・カンダール郡教育事務所との協議を経て、2019 年に開設した 1 学級を担当する SE 教員 2 名については、今後も継続して政府✎ら給与が支払われることとなった。また、教育事務所およびプレイ・トム小学校と、各々の役割や責任を明記した合意書を締結し、特別支援学級およびリソースセンターの運営体制を整えた。プレイ・トム小学校では、二学級制への移行に伴い、新たに就学する児童の保護者を対象とした学校公開日を設け、特別支援学級の教室環境や学校の受け入れ体制について校長が説明を行ったり、特別支援学級と通常学級をつなぐ通路に屋根を設けて、 行き来をしやすくしたりする等、自主的な動きも見られた。 |
3.その他 | |
(1)固定資産譲渡先 | 新設した特別支援学級、リソースセンター、ノートパソコン 1 台およびプリンター1 台をプレイ・トム小学校へ譲渡した。譲渡に際しては、 同校の責任を明記した合意書を締結した。 |
(2)特記事項 | 新型コロナウイルス感染予防のため、研修や会合実施時に参加者間で十分な間隔が確保でき、換気などの管理も可能な場所を探すのに時間が✎✎った。また、建設業者の材料発注先が一時的に閉店したこと等 の理由✎ら、予定よりも工事完成が遅れた。 |
完了報告書記載日:2020 年 11 月 30 日団体代表者名: 理事x x(志邨) xxx(印)
【添付書類】
① 事業内容・事業の成果に関する写真
② 日本NGO連携無償資金収支表(様式4-a)
③ 日本NGO連携無償資金使用明細書(様式4-b)
④ 人件費実績表(様式4-c)
⑤ 一般管理費等 支出集計表(様式4-d)
⑥ 外部監査報告書
⑦ 銀行通帳出入金記録写し
⑧ 補足資料①研修・会合一覧
⑨ 補足資料②IE チェックリストドラフト
⑩ 補足資料③工事前の合意書
➃ 補足資料④特別支援学級およびリソースセンター供与資機材・教材一覧
⑫ 補足資料⑤資機材・教材供与に関する合意書
⑬ 補足資料⑥資機材・教材供与に関する合意書改訂版