Contract
2 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
その他の雇用に関連する法律
4
1 労働者派遣法
1 目的
この法律は、職業安定法と相まって労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の保護等を図り、もって派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする。
2 構成
定義 労働者派遣/紹介予定派遣事業の適正な運営 派遣禁止業務
事業の許可
業務の内容に係る情報提供
労働者派遣契約
派遣元事業主の講ずべき措置等
・派遣労働者に対する就業条件等の明示
・均衡待遇/・待遇に関する説明義務
・雇用安定措置/・教育訓練等の実施
派遣労働者の雇用の安定・福祉の増進
派遣労働者の保護等
・日雇派遣の禁止
・派遣元責任者の選任等
派遣先の講ずべき措置等
・派遣禁止業務に従事させることの禁止
・無許可事業主からの派遣受入れの禁止
・労働者派遣の受入れ期間及びその延長
・労働契約申込みみなし制度
・派遣労働者の直接雇用の促進
・離職労働者の派遣受入れの禁止
・労働者派遣契約の解除と
解除に当たって講ずべき措置
・労働・社会保険の適用の促進
・派遣先責任者の選任等
労働基準法等の適用に関する特例
第1部 職業紹介事業の基礎知識
職業紹介従事者のための 講習テキスト&実務ハンドブック
3 主な内容
(1)労働者派遣
労働者派遣とは、自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものをいう(法 2 条一)。
労働者派遣事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない(法 5 条)。許可基準の概略は次のとおりである(法 7 条等)。
1)専ら特定の者に役務を提供することを目的としないこと
2)雇用管理を適正に行う能力を有すること
①雇用管理を適正に行うための体制が整備されていること
○派遣元責任者の選任・配置
○労働・社会保険の適用等派遣労働者の福祉増進
○派遣労働者の能力開発体制整備
第2部 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
②派遣労働者のキャリア形成支援制度を有すること
○キャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供
○キャリアコンサルティングの相談窓口の設置
○適切な教育訓練計画とその周知、実施時期・頻度・時間数等
3)個人情報を適正に管理していること
○管理体制、個人情報適正管理規程
4)事業を的確に遂行する能力を有していること
①財産的基礎の要件
〔原則〕
○基準資産額≧ 2,000 万円×事業所数 ○基準資産額≧負債×1/ 7
○事業資金≧ 1,500 万円×事業所数
〔派遣労働者 10 人以下の中小事業主の暫定措置〕(当分の間)
○基準資産額≧ 1,000 万円 ○基準資産額≧負債×1/ 7
○事業資金≧ 800 万円×事業所数
第3部 労働法Ⅱ(労働条件等関連法令)
②組織的基礎の要件
○組織体制、指揮命令系統
③事業所要件
○面積概ね 20m2 以上等
④適正運営要件
○当該事業以外の会員の獲得、組織の拡大、宣伝等他の目的の手段として利用しないこと
○登録に際し手数料等に相当するものを徴収しないこと等
2 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
(2)紹介予定派遣
派遣元事業主(厚生労働大臣の許可を受けた者をいう。以下同じ)が、労働者派遣の開始前又は開始後に、派遣労働者及び派遣先に対して職業紹介*を行ったり、職業紹介*を行うことを予定して行う労働者派遣(6 か月が限度)をいう(法 2 条四)。
* したがって、派遣元事業主が紹介予定派遣を行うためには、労働者派遣事業の許可と職業紹介事業の許可の両方が必要となる。
(3)派遣禁止業務
次の業務について、労働者派遣事業を行ってはならない(法 4 条)。
① 港湾運送業務
② 建設業務
③ 警備業務
④ 病院等における医療関係の業務
(4)関係派遣先派遣割合の制限
派遣元事業主が関係派遣先に労働者派遣をするときは、関係派遣先への派遣割合(派遣労働者の総労働時間ベースで算定)が 80 / 100 以下となるようにしなければならない(法 23 条の 2)。
(5)業務の内容に係る情報提供
派遣元事業主は事業所ごとの派遣労働者の数、労働者派遣の提供を受けた者の数、マージン率(派遣料金の平均額と派遣労働者の賃金の平均額の差額の派遣料金の平均額に占める割合)、教育訓練に関する事項等、労働者派遣事業に関しあらかじめ関係者に対して知らせることが適当であるものに関し情報の提供を行わなければならない(法 23 条⑤)。
(6)労働者派遣契約
派遣元事業主と派遣先は、労働者派遣を行うにあたって、次の事項(「法定記載事項」)を定めるとともに、その内容の差異に応じて派遣労働者の人数を定
派遣元
労働者派遣契約
派遣先
めなければならない(法 26 条
①)。
法定記載事項の文書化義務
また、労働者派遣契約の方法については、上記事項を書面に記載しておかなければならないとされている(省令 21 条③)。
第1部 職業紹介事業の基礎知識
職業紹介従事者のための 講習テキスト&実務ハンドブック
<法定記載事項>
① 派遣労働者が従事する業務の内容
② 派遣労働者が派遣労働に従事する事業所の名称、所在地、派遣就業の場所、組織単位
③ 就業中の派遣労働者を直接指揮命令する者に関する事項
④ 労働者派遣の期間、派遣就業をする日
⑤ 派遣就業の開始・終了時刻、休憩時間
⑥ 安全衛生に関する事項
⑦ 苦情処理に関する事項
⑧ 労働者派遣契約の解除に当たって講ずる措置に関する事項(就業機会の確保、休業手当等の支払に要する費用の確保等)
⑨ 紹介予定派遣に係るものである場合にあっては、当該紹介により従事すべき業務の内容、労働条件その他の当該紹介予定派遣に関する事項
⑩ その他
-派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度
第2部 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
-派遣先責任者及び派遣先責任者に関する事項
-④の派遣就業をする日以外に派遣就業をさせ、又は⑤の派遣就業の開始・終了時刻を延長することができることとした場合の就業させることができる日又は延長することができる時間数
-福利厚生施設・設備の利用、制服の貸与、教育訓練等の便宜の供与に関する事項
-労働者派遣の終了後に労働者派遣の当事者間の紛争を防止するために講ずる措置
-派遣労働者を協定対象派遣労働者に限るか否か
-派遣労働者を無期雇用又は 60 歳以上の者に限定するか否か
-派遣可能期間の制限を受けない業務に係る労働者派遣に係る事項
第3部 労働法Ⅱ(労働条件等関連法令)
(有期プロジェクトの業務、日数限定業務、育児・介護休業等の代替要員としての業務)
また、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約締結に当たり、あらかじめ、派遣元に対し、法 40 条の 2 の規定に抵触することとなる最初の日(抵触日)を通知しなければならない(法 26 条④)。
2 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
(7)派遣元事業主の講ずべき措置等
ア 派遣労働者に対する就業条件等の明示
派遣元事業主は、派遣労働者に対し就業条件を明示しなければならない(法 34 条)。また、次の①又は②の場合には、それぞれ①又は②の労働者に対し、当該労働者に係る労働者派遣に関する料金の額等を明示しなければならない(法 34 条の 2)。
①労働者を派遣労働者として雇い入れようとする場合 | 当該労働者 |
②労働者派遣をしようとする場合及び労働者派遣に関する料金の額を変更する場合 | 当該労働者派遣に係る派遣労働者 |
x xx・均衡待遇
派遣元事業主は、不合理な待遇差を解消するため、【派遣先均等・均衡方式】【労使協定方式】のいずれかの方式により、派遣労働者の待遇を確保することが義務づけられている。
【派遣先均等・均衡方式】~派遣先の労働者との比較による待遇確保~派遣元事業主は、派遣労働者に対し、派遣先の通常の労働者との間の
不合理な待遇の相違を設けることが禁止され、均等待遇(* 1)・均衡待遇(* 2)を実現することが求められている(法 30 条の 3)。
(* 1)「均等待遇」とは…①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲が同じ場合には差別的取扱いをしないこと
(* 2)「均衡待遇」とは…①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲、
③その他の事情を考慮して不合理な待遇差を設けないこと このため、派遣先は、派遣元事業主に対し、比較対象労働者の待遇情
報を提供しなければならず、派遣元事業主は、情報の提供がないときは労働者派遣契約を締結してはならないこととされている(法 26 条⑦⑨)。
R2.4.1
施行
派遣先
待遇情報の提供義務
均等/均衡
< 通常の労働者 > < 派遣労働者 >
派遣 派遣元
職業紹介従事者のための 講習テキスト&実務ハンドブック
【労使協定方式】~一定の要件を満たす労使協定による待遇確保~
上記にかかわらず、派遣元事業主が過半数労働組合又は労働者の過半数代表者との間で一定の事項を定めた労使協定を締結したときは、一部の待遇を除き(*)、この労使協定に基づき待遇が決定されることになる
(法 30 条の 4)。
(*)待遇のうち、①教育訓練、②福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)は労使協定の対象にならないため、派遣元事業主は派遣先からの情報の提供により、派遣先の労働者との均等・均衡を図る必要がある。
派遣先
派遣
過半数労働組合 or
過半数代表者
派遣元
労使協定の締結
派遣労働者含む
第1部 職業紹介事業の基礎知識
第2部 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
第3部 労働法Ⅱ(労働条件等関連法令)
< 使用者 >
労使協定に定める事項
① 労使協定の対象となる派遣労働者の範囲
② 賃金の決定方法(次のア及びイに該当するものに限る。)
ア 派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金の額と同等以上の賃金額となるもの
イ 派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等の向上があった場合に賃金が改善されるもの
※ イについては、職務の内容に密接に関連して支払われる賃金以外の賃金
(例えば、通勤手当、家族手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当)を除く。
③ 派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等をxxに評価して賃金を決定すること
④ 「労使協定の対象とならない待遇(教育訓練及び福利厚生施設)及び賃金」を除く待遇の決定方法
⑤ 派遣労働者に対して段階的・計画的な教育訓練を実施すること
⑥ その他の事項
・有効期間(2 年以内が望ましい)
・労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を派遣労働者の一部に限定する場合は、その理由
・特段の事情がない限り、一の労働契約の期間中に派遣先の変更を理由として、協定の対象となる派遣労働者であるか否かを変えようとしないこと
2 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
ウ 待遇に関する説明義務
派遣労働者が不合理な待遇差を感じることのないよう、派遣元事業主には、雇入れ時、派遣時、派遣労働者から求めがあった場合に、待遇に関して説明する義務が課されている。
( ア ) 雇入れ時
派遣元事業主は、派遣労働者の雇入れ時、賃金の見込み、社会保険等の加入条件、事業運営、労働者派遣の制度について説明をする(法 31 条の 2 ①)とともに、労働基準法 15 条に基づく労働条件の明示とあわせて、次のⅰの労働条件に関する事項の明示及びⅱの待遇差を解消するための措置の説明をしなければならない(法 31 条の 2 ①②)。
R2.4.1
施行
ⅰ 労働条件に関する事項の説明
①昇給の有無
②退職手当の有無
③賞与の有無
④労使協定の対象となる派遣労働者であるか否か
⑤派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に関する事項
ⅱ 待遇差を解消するための措置の説明
・派遣先均等・均衡方式によりどのような措置を講ずるか
・労使協定方式によりどのような措置を講ずるか
・職務の内容、成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を勘案してどのように賃金を決定するか ( 協定対象派遣労働者を除く )
( イ ) 派遣時
派遣元事業主は、派遣労働者の派遣時、労働基準法 15 条に規定する省令に定める事項を含めた次のⅰの労働条件に関する事項の明示及びⅱの待遇差を解消するための措置の説明をしなければならない(法 31 条の 2 ③)。
ⅰ 労働条件に関する事項の説明
①賃金(退職手当及び臨時の賃金等を除く。)の決定に関する事項
②休暇に関する事項
③昇給の有無
④退職手当の有無
⑤賞与の有無
⑥労使協定の対象となる労働者であるか否か
※ 労使協定方式の場合は、上記⑥のみ明示することが必要。
ⅱ 待遇差を解消するための措置の説明
・派遣先均等・均衡方式によりどのような措置を講ずるか
・労使協定方式によりどのような措置を講ずるか
・職務の内容、成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を勘案してどのように賃金を決定するか(協定対象派遣労働者を除く)
第1部 職業紹介事業の基礎知識
職業紹介従事者のための 講習テキスト&実務ハンドブック
( ウ ) 派遣労働者から求めがあった場合
派遣元事業主は、派遣労働者から求めがあったときは、派遣労働者と比較対象労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに 30条の 3(均等・均衡待遇)、30 条の 4(労使協定)、30 条の 5(職務の内容等を勘案した賃金の決定)、30 条の 6(就業規則の作成の手続)により考慮した事項について説明しなければならない(法 31 条の 2 ④)。
また、派遣元事業主は、派遣労働者が説明を求めたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(同条⑤)。
エ 雇用安定措置
次のいずれかの措置を講じる必要があり、①の措置を講じた結果、派遣先での直接雇用に結びつかなかった場合には、②~④のいずれかの措置を追加で講じる義務がある(法 30 条)。
① 派遣先への直接雇用の依頼
第2部 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
② 新たな派遣の提供(合理的なものに限る)
③ 派遣元事業主による無期雇用
④ その他雇用の安定を図るために必要な措置
雇用安定措置の対象者 | 派遣元の責務 |
A:同一の組織単位に継続して 3 年間派遣される見込みがある方 | ①~④のいずれかの措置を講じる義務 |
B:同一の組織単位に継続して 1 年以上 3 年未満派遣される見込みがある方 | ①~④のいずれかの措置を講じる努力義務 |
C:派遣元事業主に雇用された期間が通算 1 年以上の方(登録状態を含む) | ②~④のいずれかの措置を講じる努力義務 |
注 A、B の措置の対象者を「特定有期雇用派遣労働者」と、A ~ C の措置の対象者を「特定有期雇用派遣労働者等」という。以下同じ。
第3部 労働法Ⅱ(労働条件等関連法令)
オ 教育訓練等の実施(キャリアアップ措置)
派遣元事業主は派遣労働者に教育訓練を実施するとともに、希望者にキャリアコンサルティングを実施しなければならない(法 30 条の 2)。
カ 日雇派遣の禁止
派遣元事業主は、その雇用する日雇労働者(日々又は 30 日以内の期間を定めて雇用する労働者)については、原則として、労働者派遣を行ってはならない。ただし、専門的な業務、雇用機会の確保等の観点で必要と認められる業務で政令で定めるものについては日雇労働者について労働者派遣を行うことができる(法 35 条の 4)。
2 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
日雇派遣の禁止の例外
① 専門的な業務で政令で定めるもの
「ソフトウェア開発保守」「機械設計・製図」等 18 種類の業務(政令 4 条①)
② 雇用機会の確保等の観点で必要と認められる業務で政令で定めるもの(政令 4 条②、省令 28 条の 2、28 条の 3)
(ア)「60 歳以上の者」である場合
(イ)「学校の学生・生徒」である場合
(ウ)当該「日雇労働者」及びその世帯の「他の世帯員」について、省令で定める方法で算定した収入の額が 500 万円以上である場合
キ 派遣元責任者の選任等
派遣元事業主は、派遣元責任者を選任するとともに、派遣就業に関する派遣元管理台帳を作成し、3 年間保存しなければならない(法 36 ~ 37 条)。
(8)派遣先の講ずべき措置等
ア 派遣禁止業務に従事させることの禁止
派遣先は、派遣労働者を上記(3)の派遣禁止業務に従事させてはならない(法 4 条③)。
イ 無許可事業主からの派遣受入れの禁止
派遣先は、許可を受けた派遣元事業主以外の労働者派遣事業を行う事業主から、労働者派遣を受けてはならない(法 24 条の 2)。
ウ 労働者派遣の受入れ期間及びその延長
(ア)労働者派遣の受入れ期間
派遣先は、無期雇用労働者の派遣の場合を除き、有期雇用労働者の派遣については、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの業務について派遣可能期間(3 年)を超える期間継続して労働者派遣を受けてはならない。ただし、当該労働者派遣が次の①~③のいずれかに該当する場合は派遣可能期間の制限はない(法 40 条の 2 ①②)。
① 60 歳以上の労働者に係る労働者派遣 |
②次のⅰ又はⅱに該当する業務に係る労働者派遣 ⅰ)有期プロジェクト業務 ⅱ)日数限定業務(就業日数が通常の労働者に比べて少なく、月 10 日以下であるもの) |
③当該派遣先に雇用される労働者が、産前産後休業、育児・介護休業等をする場合の代替業務に係る労働者派遣 |
第1部
職業紹介従事者のための 講習テキスト&実務ハンドブック
(イ)労働者派遣を受ける期間の延長
【事業所単位の期間制限】
職業紹介事業の基礎知識
派遣先は、有期雇用労働者の派遣であって上記(ア)の①~③に該当するもの及び無期雇用派遣労働者に係る労働者派遣以外の労働者派遣について、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの業務について派遣元事業主から 3 年を超える期間継続して労働者派遣を受けようとするときは、意見聴取期間(労働者派遣が開始された日以降派遣可能期間の規定に抵触することとなる最初の日の 1か月前の日までの間をいう。)に当該派遣先の過半数労働組合などの意見を聞いて、3 年を限度に、派遣可能期間を延長することができる(法 40 条の 2 ③)。
【個人単位の期間制限】
労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
また、派遣可能期間が延長された場合においても、組織単位(いわゆる「課」等)ごとの業務について、3 年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣を受けてはならない(法 40 条の 3)。
3年 3年
過半数労働組合などへの意見聴取
人事課
受入開始
1係
派遣は×
を超えて同じ課への
同じ人について、3年
第2部
人事課 2係
同じ課への派遣〇
別の人の場合、
会計課
第3部
労働法Ⅱ(労働条件等関連法令)
エ 労働契約申込みみなし制度
課が異なれば、同じ人の派遣〇
派遣先において次の①から④の類型の違法派遣が行われた場合には、善意無過失の場合を除いて、派遣先が派遣労働者に対して、派遣元事業主と派遣労働者との間の労働契約と同一の労働条件を内容とする労働契約を申し込んだものとみなされる。派遣先は違法行為が終了した日から 1 年間は、申込みを撤回することができない(法 40 条の 6)。
① | 上記(8)のアに違反し、派遣禁止業務に従事させた場合 |
② | 上記(8)のイに違反し、無許可事業主から労働者の派遣を受けた場合 |
③ | 上記(8)のウに違反し、労働者派遣を受けられる期間を超えて受け入れた場合 |
④ | いわゆる偽装請負の場合 |
2 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
オ 派遣労働者の直接雇用の促進
(ア)特定有期雇用派遣労働者の雇用
派遣先は、継続して 1 年以上特定有期雇用派遣労働者を受け入れた場合において、引き続き当該業務のために労働者を雇い入れる場合は、その派遣労働者を雇い入れるよう努めなければならない(法 40 条の 4)。
(イ)労働者の募集に係る事項の周知
派遣先は、同一の事業所その他派遣就業の場所において継続して 1 年以上同一の派遣労働者を受け入れた場合に、当該事業所等において労働に従事する通常の労働者を募集するときは、当該募集労働者が従事すべき業務内容・賃金・労働時間等の事項を派遣労働者に周知しなければならない(法 40 条の 5 ①)。
また、派遣先は、同一の事業所その他派遣就業の場所において労働に従事する労働者を募集するときは、当該事業所等の同一の組織単位の業務について継続して 3 年間当該労働者派遣に係る労働に従事する見込みがある労働者に対し、当該労働者募集の業務内容・賃金・労働時間等の事項を周知しなければならない(法 40 条の 5
②)。
カ 離職労働者の派遣受入れの禁止
派遣先は、派遣労働者が当該派遣先を離職した者であるときは、当該離職の日から起算して 1 年を経過する日までの間は当該派遣労働者(60歳以上の定年退職者を除く。)に係る労働者派遣を受けてはならない(法 40 条の 9)。
キ 労働者派遣契約の解除と解除に当たって講ずべき措置
派遣先は、自己の都合により労働者派遣契約を解除する場合には、当該労働者派遣に係る派遣労働者の新たな就業機会の確保(例;派遣先の関連会社での就業のあっせん等)、派遣元事業主による休業手当等の支払に要する費用を確保するための費用の負担(例;中途解除によって派遣元事業主に生じた損害(休業手当等の支払)の賠償等)その他の当該派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講じなければならない
(法29 条の2。なお、派遣契約締結時の取扱いとして法26 条①八参照。)。
ク 労働・社会保険の適用の促進
派遣先は、労働・社会保険に加入する必要がある派遣労働者については、労働・社会保険に加入している派遣労働者を受け入れるべきである(派遣先指針 8)。
ケ 派遣先責任者の選任等
派遣先は、派遣先責任者を選任するとともに、派遣就業に関する派遣先台帳を作成し、3 年間保存しなければならない(法 41 条~ 42 条)。
第1部 職業紹介事業の基礎知識
職業紹介従事者のための 講習テキスト&実務ハンドブック
(9)労基法等労働者保護法規の適用とその特例
ア 労基法の適用とその特例
第2部 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
第3部 労働法Ⅱ(労働条件等関連法令)
労基法の適用は事業に雇用される労働者に適用されることから、原則的には派遣元事業主がその責任を負う。しかし、派遣中の労働者に関しては、派遣先が指揮命令を行い、設備等の管理を行っているので、一定の規定については派遣先も適用すべき事業とみなして適用していくこととされている(法 44 条)。労基法の主な規定の派遣元・先の適用関係を整理すると次表のとおりである。
労基法の規定 | 派遣元事業主 | 派遣先 |
均等待遇、強制労働の禁止男女同一賃金 公民権行使の保障労働契約 賃金 労働時間、休憩・休日 36 協定、変形労働時間、みなし労働時間の労使協定割増賃金 年次有給休暇 最低年齢、年少者の証明書・帰郷旅費年少者の労働時間、就業制限 妊産婦の労働時間、就業制限 妊産婦の休業、軽易な業務への転換育児時間、生理休暇 災害補償 就業規則、労働者名簿、賃金台帳 法令の周知義務、記録の保存・報告の義務 | 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 | 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 |
2 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
x xx衛生法の適用とその特例
安全衛生法についても原則的には派遣元事業主がその責任を負うが、安全衛生に関する事項については、作業環境の重要な要素である設備等の設置・管理、業務遂行上の具体的指揮命令に関係することから、派遣先の負うべき責任範囲は大きい。そこで、派遣先も安全と健康を確保する事業者としての責務をはじめ、総括安全衛生管理者・衛生管理者・xx衛生推進者等の規定、衛生委員会の規定、作業内容変更時の安全衛生教育、法令の周知、報告等多くの規定については、派遣先も責任を負うこととされている。また、安全管理体制の一部(安全管理者等)、危険・健康障害の防止措置、作業環境測定等の規定については、もっぱら派遣先が責任を負うこととされている。(法 45 条)。安全衛生法の主な規定の派遣元・先の適用関係を整理すると次表のとおりである。
安全衛生法の規定 | 派遣元 | 派遣先 |
職場における安全衛生を確保する事業主の責務総括安全衛生管理者の選任等 安全管理者の選任等衛生管理者の選任等 安全衛生推進者の選任等産業医の選任等 安全委員会の設置等衛生委員会の設置等 危険又は健康障害を防止するための措置安全衛生教育(雇入れ時) 安全衛生教育(作業内容変更時) 安全衛生教育(危険有害業務就業時) 安全衛生教育(危険有害業務従事者に対する教育)作業環境測定 一般健康診断特殊健康診断 健康診断実施後の作業転換等の措置医師の面接指導等 ストレスチェックの実施病者の就業禁止 報告等 法令の周知書類の保存 | ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ | ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ |
第1部 職業紹介事業の基礎知識
職業紹介従事者のための 講習テキスト&実務ハンドブック
ウ 男女雇用機会均等法の適用とその特例
男女雇用機会均等法の適用について、差別禁止規定の責任主体は派遣元事業主であるが、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止、職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置、職場における性的な言動に起因する問題に関する事業主の責務の規定、職場における妊娠・出産等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置、職場における妊娠・出産等に関する言動に起因する問題に関する事業主の責務、妊娠中・出産後の健康管理措置の規定については、派遣先もまた事業主とみなして適用される(法 47 条の 2)。
エ 育児・介護休業法の適用とその特例
第2部 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
派遣労働者にも育児・介護休業法の適用があるので、派遣期間などの制約により適用除外にならない限り、派遣元事業主に育児・介護休業等を請求することができる。また、育児・介護休業法の適用に当たっては、育児・介護休業を理由とする不利益取扱いの禁止、看護・介護休暇を理由とする不利益取扱いの禁止、所定外労働の制限・時間外労働の制限・深夜業の制限・所定労働時間の短縮措置等の申出・請求等をしたことを理由とする不利益取扱いの禁止、職場における育児・介護休業等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置、職場における育児休業・介護休業等に関する言動に起因する問題に関する事業主の責務の規定については、派遣先も事業主とみなして適用される(法第 47 条の3)。
オ 労働施策総合推進法の適用とその特例
労働施策総合推進法の適用に当たっては、職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置、職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に起因する事業主の責務の規定については、派遣先も事業主とみなして適用される(法 47条の 4)。
カ 最低賃金の適用
第3部 労働法Ⅱ(労働条件等関連法令)
派遣中の労働者の地域別最低賃金については、派遣先事業場に適用される最低賃金によることとされている(最賃法 13 条)。
キ 障害者雇用促進法の適用
障害を理由とする差別禁止(障害者雇用促進法 34 条以下)の施行に伴い、派遣元事業主及び派遣先は適切な措置を講ずることが必要であるとされている(派遣元指針第 2 の 11(3)、派遣先指針第 2 の 4(2)等)。
2 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
2 高年齢者雇用安定法
1 法律の目的
この法律は、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進、高年齢者等の再就職の促進、定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置を総合的に講じ、もつて高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。
2 構成
総則 定義
定年の引上げ、継続雇用制 度の導入等による高年齢者 の安定した雇用の確保の促進
定年、高年齢者雇用確保措置
高年齢者等の職業の安定・福祉の増進
高年齢者等の再就職の促進等
国による高年齢者等の再就職の促進等
事業主による高年齢者等の再就職の援助等中高年齢失業者等に対する特別措置
地域の実情に応じた高年齢者の多様な就業の機会の確保
地域の実情に応じた高年齢者の多様な就業機会の確保に関する計画
定年退職者等に対する就業の機会の確保
国による援助等
雑則・罰則
シルバー人材センター
事業主に対する援助等
雇用状況の報告
職業紹介従事者のための 講習テキスト&実務ハンドブック
3 主な内容
〔総則〕
(1)高年齢者とは
この法律では、「高年齢者」を 55 歳以上の者と定義している(法 2 条、省令 1 条)。
高年齢者等
高年齢者
中高年齢者(45歳以上の者)である求職者
中高年失業者等(45歳以上65歳未満の失業者その他就職が特に困難な省令で定める失業者
第1部 職業紹介事業の基礎知識
〔高年齢者雇用確保措置〕
(2)定年を定める場合の年齢
事業主がその雇用する労働者の定年の定めをする場合には、当該定年は、 60 歳を下回ることができない(法 8 条)。
(3)高年齢者雇用確保措置
定年の定めをしている事業主(65 歳未満のものに限る。)は、その雇用する高年齢者の 65 歳までの安定した雇用を確保するため、次に掲げる高年齢者雇用確保措置のいずれかを講じなければならず(法 9 条)、厚生労働大臣は、これに違反する事業主に対して措置を講ずるよう勧告し、勧告に従わない場合は企業名公表ができることとされている(法 10 条)。
定年の引上げ
第2部 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
高年齢者雇用確保措置
継続雇用制度の導入定年の定めの廃止
改 正 情 報
高年齢者雇用安定法が一部改正され、10条の2の新設により、定年の定めをしている事業主
(65歳以上70歳未満のものに限る。)又は継続雇用制度を導入している事業主(高年齢者を70歳以上まで引き続いて雇用する制度を除く。)は、65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置
(①定年の引上げ、②継続雇用制度の導入、③定年の定めの廃止、④労使で同意した上での雇用以外の措置(継続的に業務委託契約する制度、社会貢献活動に継続的に従事できる制度)の導入のいずれか)を講ずるよう努めなければならないこととされた(R3年4月1日施行)。
第3部 労働法Ⅱ(労働条件等関連法令)
105
2 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針
(H24 告示 560) ― 一部抜粋 ――
第 2 高年齢者雇用確保措置の実施及び運用
65 歳未満の定年の定めをしている事業主は、高年齢者雇用確保措置に関して、労使間で十分な協議を行いつつ、次の 1 から 5 までの事項について、適切かつ有効な実施に努めるものとする。
1 高年齢者雇用確保措置
事業主は、高年齢者がその意欲と能力に応じて 65 歳まで働くことができる環境の整備を図るため、法に定めるところに基づき、65 歳までの高年齢者雇用確保措置のいずれかを講ずる。
2 継続雇用制度
継続雇用制度を導入する場合には、希望者全員を対象とする制度とする。(以下略)
3 経過措置
改正法の施行の際、既に労使協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めている事業主は、改正法附則第 3 項の規定に基づき、当該基準の対象者の年齢を令和 7 年 3 月 31 日まで段階的に引き上げながら、当該基準を定めてこれを用いることができる。
4 賃金・人事処遇制度の見直し
高年齢者雇用確保措置を適切かつ有効に実施し、高年齢者の意欲及び能力に応じた雇用の確保を図るために、賃金・人事処遇制度の見直しが必要な場合には、次の(1)から(7)までの事項に留意する。
(1)年齢的要素を重視する賃金・人事処遇制度から、能力、職務等の要素を重視する制度に向けた見直しに努めること。(以下略)
(2)継続雇用制度を導入する場合における継続雇用後の賃金については、継続雇用されている高年齢者の就業の実態、生活の安定等を考慮し、適切なものとなるよう努めること。
(3)短時間勤務制度、隔日勤務制度など、高年齢者の希望に応じた勤務が可能となる制度の導入に努めること。
(4)継続雇用制度を導入する場合において、契約期間を定めるときには、高年齢者雇用確保措置が 65 歳までの雇用の確保を義務付ける制度であることに鑑み、65 歳前に契約期間が終了する契約とする場合には、65 歳までは契約更新ができる旨を周知すること。
また、むやみに短い契約期間とすることがないように努めること。
(5)職業能力を評価する仕組みの整備とその有効な活用を通じ、高年齢者の意欲及び能力に応じた適正な配置及び処遇の実現に努めること。
(6)勤務形態や退職時期の選択を含めた人事処遇について、個々の高年齢者の意欲及び能力に応じた多様な選択が可能な制度となるよう努めること。(以下略)
(7)継続雇用制度を導入する場合において、継続雇用の希望者の割合が低い場合には、労働者のニーズや意識を分析し、制度の見直しを検討すること。
〔事業主による高年齢者等の再就職の援助等〕
(4)再就職援助措置
事業主は、その雇用する高年齢者等が解雇等により離職する場合において、当該高年齢者等が再就職を希望するときは、求人の開拓その他当該高年
第1部 職業紹介事業の基礎知識
職業紹介従事者のための 講習テキスト&実務ハンドブック
齢者等の再就職の援助に関し必要な措置を講ずるように努めなければならない(法 15 条)。
(5)多数離職の届出
事業主は、その雇用する高年齢者等のうち 5 人以上の者が解雇等により離職する場合には、あらかじめ、その旨を公共職業安定所長に届け出なければならない(法 16 条)。
(6)求職活動支援書の作成等
事業主は、解雇等により離職することとなっている高年齢者等が希望するときは、その円滑な再就職を促進するため、当該高年齢者等の職務の経歴、職業能力その他の当該高年齢者等の再就職に資する事項(解雇等の理由を除く。)として「求職活動支援書」を作成し、当該高年齢者等に交付しなければならない(法 17 条)。
(7)募集及び採用について 65 歳以下の一定の年齢を下回ることを条件とするときの理由の提示等
事業主は、労働者の募集及び採用をする場合において、やむを得ない理由により一定の年齢(65 歳以下のものに限る。)を下回ることを条件とするときは、求職者に対し、省令で定める方法により、当該理由を示さなければならない(法 20 条、省令 6 条の 5)。
第3部 労働法Ⅱ(労働条件等関連法令)
(注)省令で定める方法→当該理由を募集及び採用を行う際に使用する書面又は電磁的記録に記載する方法
第2部 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
(8)定年退職等の場合の退職準備援助の措置
事業主は、その雇用する高年齢者が定年その他これに準ずる理由により退職した後においてその希望に応じ職業生活から円滑に引退することができるようにするために必要な備えをすることを援助するため、当該高年齢者に対し、引退後の生活に関する必要な知識の取得の援助その他の措置を講ずるように努めなければならない(法 21 条)。
〔雑則〕
(9)高年齢者の雇用状況報告
事業主は、毎年一回、厚生労働省令で定めるところにより、定年及び継続雇用制度の状況その他高年齢者の雇用に関する状況を厚生労働大臣に報告しなければならない(法 52 条)。
2 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
3 障害者雇用促進法
1 法律の目的
この法律は、障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置、職業リハビリテーションの措置その他障害者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、もつて障害者の職業の安定を図ることを目的とする。
2 構成
総則
職業リハビリテーションの推進
職業紹介等
障害者職業センター
障害者就業・生活支援センター
障害者に対する差別の禁止等
障害者の職業の安定
対象障害者の雇用義務等
対象障害者の雇用義務等に基づく雇 用 の 促 x x
雇用調整金の支給等・雇用納付金の徴収対象障害者以外の障害者に関する特例
身体障害者、知的障害者及び精神障害者以外の障害者に関する特例
障害者の在宅就業に関する特例
紛争の解決
雑則・罰則
第1部 職業紹介事業の基礎知識
職業紹介従事者のための 講習テキスト&実務ハンドブック
3 主な内容
〔総則〕
(1)障害者とは
④その他の心身の機能の障害
③精神障害
(発達障害を含む)
②知的障害
①身体障害
この法律では、「障害者」を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」と定義している(法 2 条①)。
障害者
⑤長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者
第2部 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
「身体障害者「」知的障害者「」精神障害者」については「、障害者」のうち、上記①②③の障害がある者であって、身体障害者については法別表に掲げる障害を有するもの、知的障害者、精神障害者については省令で定めるものが該当する。
また、④は、障害の原因及び障害の種類については限定しておらず、例えば、難病が該当する。難病等によって、⑤の要件を満たす場合、障害者雇用促進法上の障害者に該当する。
(2)基本的理念
障害者である労働者は、経済社会を構成する労働者の一員として、職業生活においてその能力を発揮する機会を与えられるものとする(法 3 条)。
第3部 労働法Ⅱ(労働条件等関連法令)
(3)事業主の責務
すべて事業主は、障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する責務を有するものであって、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るように努めなければならないとされている(法 5 条)。
(4)国及び地方公共団体の責務
国及び地方公共団体は、自ら率先して障害者を雇用するとともに、障害者の雇用について事業主その他国民一般の理解を高めるほか、事業主、障害者その他の関係者に対する援助の措置及び障害者の特性に配慮した職業リハビ
R1.6.14、 R2.4.1
施行
2 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
リテーションの措置を講ずる等障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図るために必要な施策を、総合的かつ効果的に推進するように努めなければならないとされている(法 6 条)。
〔職業リハビリテーションの推進〕
(5)職業リハビリテーションの推進
職業リハビリテーションの措置は、障害者の障害の種類・程度やその希望・適性等の条件に応じて、関係機関の連携の下に、実施されるものとされている(法 8 条ほか)。
コラム
障害者の職業リハビリテーションの措置
以下のような雇用に向けた総合的な支援が行われている。
●ハローワーク
ハローワークでは、求職の登録の後にその技能、職業適性、知識、希望職種、身体能力等に基づき、ケースワーク方式による職業相談・職業紹介を実施し、安定した職場への就職及び就職後の職場定着を支援している。
<1> ハローワークを中心とした障害者向けチーム支援
ハローワークが中心となって、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所、特別支援学校、医療機関等の関係機関からなる「障害者就労支援チーム」を作り、一貫した支援を行う障害者向けチーム支援を実施している。
<2> トライアル雇用
事業所が障害のある人を一定期間試行雇用の形で受け入れることにより、障害のある人の適性や業務遂行可能性を見極め、障害のある人と事業主の相互理解を促進すること等を通じて、常用雇用への移行を促進する障害者トライアル雇用事業を実施している。
●地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構により設置・運営され、障害者職業カウンセラーにより、次のような専門的な支援を実施している。
• 職業相談、職業評価 • 職業準備支援
• ジョブコーチ支援 • 事業主に対する相談・援助
• 地域の就労支援機関に対する助言・援助
●障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターでは、障害のある人の職業生活における自立を図るために、福祉や教育等の地域の関係機関との連携の下、障害のある人の身近な地域で就業面及び生活両面における一体的な支援を行っている。
●障害者職業能力開発校
障害者職業能力開発校では、職業能力開発校等において職業訓練を受けることが困難な障害者に対して、その障害の態様に配慮した職業訓練を実施している。国が設置し都道府県や(独)高齢・障害・求職者支援機構に運営を委託しているものと、都道府県が設置・運営しているものがある。
職業紹介従事者のための 講習テキスト&実務ハンドブック
〔障害者に対する差別の禁止等〕
(6)障害者に対する差別の禁止
事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない(法 34 条)。
事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない(法 35 条)。
禁止される差別の例
<募集・採用時>
×単に「障害者だから」という理由で、求人への応募を認めないこと
×業務遂行上必要でない条件を付けて、障害者を排除すること
<採用後>
×労働能力などを適正に評価することなく、単に「障害者だから」という理由で、異なる取扱いをすること
第1部 職業紹介事業の基礎知識
第2部 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
(7)雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会の確保等を図るための措置(合理的配慮)の提供
事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない(法 36 条の 2)。
第3部 労働法Ⅱ(労働条件等関連法令)
事業主は、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない(法 36 条の 3)。
合理的配慮の提供の例
<募集・採用時>
〇視覚障害がある方に対し、点字や音声等で採用試験を行うこと
〇聴覚・言語障害がある方に対し、筆談等で面接を行うこと
<採用後>
〇肢体不自由がある方に対し、机の高さを調節すること等の作業を可能にする工夫を行うこと
2 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
〔対象障害者の雇用義務に基づく雇用の促進〕
(8)障害者雇用率制度
すべて事業主は、対象障害者(注;身体障害者、知的障害者又は精神障害者(精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者に限る)をいう。)の雇用に関し、適当な雇用の場を与える共同の責務を有するとされ、次のア、イのとおり、障害者雇用率に基づく雇用義務が課せられている(法 37 条)。ア 国・地方公共団体
国・地方公共団体の任命権者は、対象障害者である職員の数が、当該機関の職員の数に障害者雇用率(2.5%、都道府県等の教育委員会にあっては 2.4%)を乗じて得た数以上であるようにするため、対象障害者の採用に関する計画を作成しなければならない(法 38 条)。
また、国・地方公共団体における一層の①障害者雇用の計画的推進と
▲
▲
▲
▲
②対象障害者の適切な把握・計上を推進するために、次のような措置が講じられているところである。
①国・地方公共団体の障害者雇用の計画的な推進 | 国・地方公共団体が率先して障害者を雇用する責務を明確化(法 6 条) 「障害者活躍推進計画」の作成・公表の義務化(法 7 条の 3 ①、⑤) 障害者雇用推進者、障害者職業生活相談員の選任義務化(法 78 条①、79 条①) |
②対象障害者の適切な把握、計上 | 厚生労働大臣または公共職業安定所長による報告徴収の規定整備(法 82 条) 書類保存の義務化(法 81 条の 2) 対象障害者の確認方法の明確化(法 38 条⑥) ⇒適正実施勧告の規定整備(法 38 条⑦) |
▲ ▲
イ 一般事業主
事業主は、その雇用する対象障害者である労働者の数が、その雇用する労働者の数に障害者雇用率(2.2%)を乗じて得た数以上であるようにしなければならない(法 43 条①)。
R1.6.14 R1.9.6
施行
職業紹介従事者のための 講習テキスト&実務ハンドブック
最近における障害者雇用率の変遷の状況
事業主区分 | 法定雇用率 | |||
平成 30 年 3 月 31 まで | 平成 30 年 4 月 1 日以降 | |||
民間企業 | 2.0% | 2.2% | ||
国・地方公共団体等 | 2.3% | 2.5% | ||
都道府県等の教育委員会 | 2.2% | 2.4% | ||
留意点1 対象となる事業主の範囲が、従業員 45.5 人以上に拡大。
平成 30 年 4 月 1 日より民間企業の法定雇用率が 2.0%から 2.2%に変更されたことから、障害者を 1.0 人以上雇用しなければならない事業主の範囲が、従業員 50 人以上から 45.5 人以上に変更となった。
留意点2 令和 3 年 3 月 31 日より前に、更に 0.1%引き上げとなる予定。
令和 3 年 3 月 31 日より前に、民間企業の法定雇用率は 2.3%になる
第2部 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
(国等の機関も同様に 0.1%引き上げになる)。
第1部 職業紹介事業の基礎知識
% 2.3
2.3%
2.2
2.2%
2.0
2.0%
0
最近の障害者雇用状況
コラム
H30 年 4 月
第3部 労働法Ⅱ(労働条件等関連法令)
R3年4 月まで
R3年4 月
項目 | R1.6.1現在 | R30.6.1現在 | ||
民間企業 | 雇用障害者数 実雇用率 | 56万0,608.5人 2.11% | 53万4,769.5人 2.05% | |
国 ・地方公共団体等 | 国 | 雇用障害者数 実雇用率 | 7,577.0人 2.31% | 3,902.5人 1.22% |
都道府県 | 雇用障害者数 実雇用率 | 9,033.0人 2.61% | 8,244.5人 2.44% | |
市町村 | 雇用障害者数 実雇用率 | 2万8,978.0人 2.41% | 2万7,145.5人 2.38% | |
教育委員会 | 雇用障害者数 実雇用率 | 1万3,477.5人 1.89% | 1万2,607.5人 1.90% | |
独立行政法人等 | 雇用障害者数 実雇用率 | 1万1,612.0人 2.63% | 1万1,010.0人 2.54% |
2 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
(9)障害者雇用納付金制度
障害者を雇用するためには、作業施設や作業設備の改善、職場環境の整備、特別の雇用管理等が必要となるために、障害のない者の雇用に比べて一定の経済的負担を伴うことから、事業主間の負担の平等化のための調整を図りつつ、障害者雇用の水準を高めることを目的として「障害者雇用納付金制度」が設けられている。
ア 納付金の徴収
法定雇用率を達成していない企業のうち、常用労働者 100 人超の企業から、障害者雇用納付金が徴収される〔不足 1 人当たり月額 50,000円〕。
イ 調整金、助成金等の支給
a ) 調整金
法定雇用率を達成している企業に対して調整金が支給される〔超過 1 人当たり月額 27,000 円〕(法 49 条、50 条)。
※なお、暫定的に 100 人以下の企業に対して報奨金、在宅就業障害者特例報奨金を支給する制度が設けられている(法附則 4 条)。
b) 特例給付金
短時間であれば就労可能な障害者等の雇用機会を確保するため、短時間労働者のうち、週所定労働時間が一定範囲内にある者を雇用する事業主に対して、障害者雇用納付金を財源とする特例給付金が支給される〔対象障害者 1 人当たり月額 7,000 円(100 人以下の企業に対しては同 5,000 円)〕(法 49 条、51 条)。
c) 助成金
障害者を雇い入れる企業が、作業施設・設備の設置等について一時に多額の費用の負担を余儀なくされる場合に助成金が支給される(法 49 条、51 条)。
R2.4.1
施行
障害者作業施設設置等助成金 |
障害者福祉施設設置等助成金 |
障害者介助等助成金 |
重度障害者等通勤対策助成金 |
重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金 |
職業紹介従事者のための 講習テキスト&実務ハンドブック
(10)障害者雇用中小事業主認定制度
中小事業主における障害者雇用を促進するため、障害者雇用に関する優良な中小事業主の認定制度が設けられている(法 77 条)。
〔紛争の解決〕
(11)企業内における苦情の自主的解決
事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇に係る障害者であることを理由とした差別的取扱い(法 35 条)及び合理的配慮(法 36 条の 3)について、障害者である労働者から苦情の申出を受けたときは、その自主的な解決を図るよう努めなければならない(法 74 条の 4)。
(12)紛争解決手続
個別労働紛争解決促進法によらず、以下の手続により行われる。
ア 労働局長による紛争解決の援助
第2部 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
都道府県労働局長は、(6)及び(7)の紛争に関し、紛争の解決につき援助を求められた場合、必要な助言・指導又は勧告を行う(法 74 条の 6)。
イ 紛争調整委員会による調停
都道府県労働局長は、アの紛争について当事者から調停の申請があった場合において必要があると認めるときは、紛争調整委員会(障害者雇用調停会議)に調停を行わせる(法 74 条の 7)。
R2.4.1
第1部 職業紹介事業の基礎知識
第3部 労働法Ⅱ(労働条件等関連法令)
施行
(企業)
紛争解決のフローチャート
労働者
紛争
自主的解決
解決しない場合
事業主
(都道府県労働局)
紛争解決手続き
紛争調整委員会調停
都道府県労働局長助言・指導・勧告
2 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
4 雇用保険法
1 法律の目的
雇用保険は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とする。
2 構成
一般被保険者の求職者給付
基本手当
技能習得手当及び寄宿手当傷病手当
高年齢被保険者の求職者給付
短期雇用特例被保険者の求職者給付
日雇労働被保険者の求職者給付
就職促進給付
失業等給付
就業促進手当移転費
求職活動支援費
教育訓練給付
雇用継続給付
高年齢雇用継続給付介護休業給付
育児休業
給付
育児休業給付金
雇用安定
事業等
雇用安定事業能力開発事業
第1部 職業紹介事業の基礎知識
職業紹介従事者のための 講習テキスト&実務ハンドブック
3 主な内容
〔適用事業等〕
(1)適用事業
労働者が雇用される事業を適用事業とする(法 5 条)。ただし、適用範囲に関する暫定措置として一部の事業は任意適用とされている(附則 2 条)。
強制適用事業 | 法人経営の事業、船員が雇用される事業、国・地方公共団体等の事業 |
個人経営の事業のうち、下記以外の事業 | |
暫定任意適用事業 | 個人経営の農林水産業の事業であって、常時 5 人未満の労働者を雇用するもの |
(2)適用除外
次に掲げる者については、適用除外とされている(法 6 条)。したがって、これら以外の労働者で、適用事業に雇用される者は、原則として被保険者となる。
① 一週間の所定労働時間が 20 時間未満である者
② 同一の事業主の適用事業に継続して 31 日以上雇用されることが見込まれない者(日雇労働被保険者に該当する者を除く。)
③ 4か月以内の期間を予定して行われる季節的事業に雇用される者
③ 昼間学生
④ 船員のうち、政令に定める漁船に乗り込む一定の者
⑤ 公務員のうち、省令で定める一定のもの(退職手当受給対象者)
〔失業等給付~求職者給付~〕
(3)被保険者の種類
第3部 労働法Ⅱ(労働条件等関連法令)
一般被保険者 (法 60 条の 2) | 被保険者のうち、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者以外の者 |
高年齢被保険者 (法 37 条の 2) | 65 歳に達した日以後の日において雇用されている者(短期雇用特例被保険者又は日雇労働被保険者を除く) |
短期雇用特例被保険者 (法 38 条) | • 季節的に雇用される者 • 短期の雇用に就くことを常態とする者 |
日雇労働被保険者 (法 43 条) | 日雇労働者(日々雇用される者又は 30日以内の期間を定めて雇用される者)のうち一定の者 |
被保険者とは、(1)の適用事業に雇用される労働者であって、(2)の適用除外に掲げる者以外のものをいい(法4条①)、次のような種類がある。
第2部 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
H29.1.1
改正施行
2 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
(4)一般被保険者の求職者給付
① 基本手当(法 13 条~)
被保険者が失業した場合において、原則として離職の日以前 2 年間に、被保険者期間が通算して 12 か月以上であったときに支給する。
② 技能習得手当(法 36 条)及び寄宿手当(法 36 条)
③ 傷病手当(法 37 条)
(5)高年齢被保険者の求職者給付
高年齢被保険者が失業した場合には、高年齢求職者給付金を支給する。
(法 37 条の 2)
(6)短期雇用特例被保険者の求職者給付
短期雇用特例被保険者が失業した場合には、特例一時金を支給する。
(法 38 条)
(7)日雇労働被保険者の求職者給付
日雇労働被保険者が失業した場合には、日雇労働求職者給付金を支給する。
(法 43 条)
〔失業等給付~就職促進給付~〕
(8)就業促進手当
厚生労働省令で定める安定した職業に就いた者であって、当該職業に就いた日の前日における基本手当の支給残日数が一定の者に対し、公共職業安定所が必要と認めたときに、支給する(法 56 条の 3)。
コラム
失業の認定(基本手当の受給の流れ)
一般被保険者の離職
求職の申込み
住所地を管轄するハローワーク
受給説明会
受給資格決定
受給資格決定日から通算して7日間(待期期間)が満了するまでは基本手当は支給されない。
求職活動(認定対象期間に2回以上の求職活動)
失業の認定(4週間に1回)
自己都合退職など、離職理由によっては待期期間満了後3か月間は基本手当は支給されない(給付制限)
基本手当の日額、所定給付日数、給付制限期間は、被保険者期間・賃金・離職理由・年齢等により、公共職業安定所が決定する。(法16条~)
職業紹介従事者のための 講習テキスト&実務ハンドブック
(9)移転費
受給資格者等が公共職業安定所、特定地方公共団体若しくは職業紹介事業者
第1部 職業紹介事業の基礎知識
(ハローワークとの連携に適さないものを除く)の紹介した職業に就くため、又は公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けるため、その住所又は居所を変更する場合において、公共職業安定所長が必要があると認めたときに、支給する(法 58 条)。
(10)求職活動支援費
受給資格者等が公共職業安定所の紹介により広範囲の地域にわたる求職活動をする場合など求職活動に伴う一定の行為をする場合、公共職業安定所長が必要があると認めたときに支給する(法 59 条)。
〔失業等給付~教育訓練給付~〕
(11)教育訓練給付
第2部 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
雇用保険の被保険者である者又は被保険者でなくなってから 1 年以内である者が、厚生労働大臣の指定する教育訓練を受ける場合に、次のとおり、訓練費用の一定割合を支給(法 60 条の 2)。
①一般教育訓練に係る教育訓練給付 | 被保険者期間3年以上(初回の場合は1年以上)で、当該訓練開始日前3年以内に教育訓練給付金を受給したことがない場合に、教育訓練費用の 20%相当額(上限 10 万円)を支給。 |
②特定一般教育訓練に係る教育訓練給付 | 被保険者期間3年以上(初回の場合は1年以上)で、当該訓練開始日前3年以内に教育訓練給付金を受給したことがない場合に、教育訓練費用の 40%相当額(上限 20 万円)を支給。 |
③専門実践教育訓練に係る教育訓練給付 | 被保険者期間3年以上(初回の場合は2年以上)で、当該訓練開始日前3年以内に教育訓練給付金を受給したことがない場合に、教育訓練に要した費用の最大 70%相当額(上限年間 56 万円)を支給。 |
〔失業等給付~雇用継続給付〕
(12)高年齢雇用継続給付
高年齢雇用継続基本給付金は、60 歳から 65 歳までの被保険者に対して支給対象月に支払われた賃金の額が、60 歳時の賃金の 100 分の 75 に相当する額を下回るに至った場合について支給する(法 61 条)。
H30.1.1
改正施行
H30.1.1
第3部 労働法Ⅱ(労働条件等関連法令)
改正施行
改 正 情 報
雇用保険法の改正により、高年齢雇用継続給付を令和7年度から縮小する(法61条⑤、R7年4月1日施行)とともに、65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置の導入等に対する支援を雇用安定事業に位置付ける(法62条①、R3年4月1日施行)こととされた。
2 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
(13)介護休業給付
介護休業給付金は、休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の 67%に相当する額とする(法 61 条の6)。
〔育児休業給付〕
(14)育児休業給付
育児休業給付金は、育児休業の最初の 180 日間は休業開始時賃金日額の 67%相当、それ以降は 50%に相当する額とする(法 61 条の 7)。
R2.4.1
改正施行
改 正 情 報
雇用保険法の改正により、次のような取組みが進められることになった。
○1の事業主での所定労働時間が20時間未満である65歳以上の労働者について、2の事業主の週所定労働時間を合計して、20時間以上である場合、本人から厚生労働大臣に申し出ることにより高年齢被保険者となる。(法37条の5①、R4年1月1日施行)
○勤務日数が少ない者でも適切に雇用保険の給付を受けられるよう、基本手当等の受給資格の判定にあたっての被保険者期間の月数の計算において、現行の日数による基準(賃金の支払の基礎となった日数が11日以上であるもの)だけでなく、労働時間による基準(賃金の支払の基礎となった時間数が80時間であるもの)も補完的に設定する。(法14条③、R2年8月1日施行)
〔雇用安定事業等〕
(15)雇用安定事業
政府は、被保険者、被保険者であった者及び被保険者になろうとする者
(被保険者等)に関し、失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の拡大その他雇用の安定を図るための事業を行うことができる(法 62 条)。
(16)能力開発事業
政府は、被保険者等に関し、職業生活の全期間を通じて、これらの者の能力を開発し、向上させることを促進するための事業を行うことができる(法 63 条)。
また、政府は、被保険者であった者及び被保険者になろうとする者の就職に必要な能力を開発し、向上させるため、求職者支援法による事業に助成及び給付金の支給を行うことができる(法 64 条)。
第1部 職業紹介事業の基礎知識
職業紹介従事者のための 講習テキスト&実務ハンドブック
主な雇用関係助成金
事業主が、失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大、能力開発等労働者の職業の安定のために一定の条件に合う取組を行った場合に、雇用保険の雇用安定事業・能力開発事業として、いろいろな助成金が支給されている。
区分 | 助成金の名称 |
雇用維持関係の助成金 | 雇用調整助成金 |
再就職支援関係の助成金 | 労働移動支援助成金 |
転職・再就職拡大支援関係の助成金 | 中途採用等支援助成金 |
雇入れ関係の助成金 | 特定求職者雇用開発助成金 |
トライアル雇用助成金 | |
地域雇用開発助成金 | |
雇用環境整備関係等の助成金 | 障害者雇用安定助成金 |
人材確保等支援助成金 | |
通年雇用助成金 | |
65 歳超雇用推進助成金 | |
キャリアアップ助成金 | |
両立支援関係の助成金 | 両立支援等助成金 |
人材開発関係の助成金 | 人材開発支援助成金職場適応訓練費 |
求職者支援制度とは
求職者支援制度は、職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律(求職者支援法)により、雇用保険を受給できない求職者の方(雇用保険の適用がなかった方、加入期間が足りず雇用保険の給付を受けられなかった方、雇用保険の受給が終了した方、学卒未就職者や自営廃業者の方等)に対し、
①無料の職業訓練(求職者支援訓練)を実施し、
②本人収入、世帯収入及び資産要件等、一定の支給要件を満たす場合は、職業訓練の受講を容易にするための給付金(職業訓練受講給付金)を支給するとともに、
③ハローワークが中心となってきめ細やかな就職支援を実施することにより、安定した就職に向けた支援を行う制度である。
コラム
第2部 労働法Ⅰ(マッチング関連法令)
第3部 労働法Ⅱ(労働条件等関連法令)
(注)雇用調整助成金は、休業させ休業手当を支給した事業主に対して助成を行うものであるが、「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律」により、雇用調整助成金を活用して休業手当を支払うことの困難な中小企業で働く人に対して「休業支援金」が設けられた。