Contract
「新訂・労働基準の法律」
Ⅰ 労働契約の終了
労働契約の終了には、労働者又は使用者の一方的意思表示によって、その効力が発生する「退職」及び「解雇」が一般的であるが、当事者の合意の成立が前提となる「合意解約」もある。
なお、労働契約の期間が満了した場合は、当然に労働契約は終了する。
定年退職制については、当該定年年齢をあらかじめ約定された労働契約の終了事由の一つと解し、労働契約は自動的に終了するものと解されている。
一方、労働契約は、労働者の死亡、企業の消滅によっても終了することがある。
1 退 職
退職とは労働者による労働契約の解約である。
(*) これに対して、使用者による労働契約の解約が解雇であるが、これについては、本章Ⅱ「解雇(解雇法制)」において、述べる。
[1] 任意退職と労働者からする合意解約の申込
労働者の退職の意思表示は、(1)労働者の使用者に対する一方的意思による場合(任意退職)と(2)労働者から使用者に対して合意解約(依願退職)の申込をする場合に大別される。
(1)の任意退職の意思表示は、それが使用者に到達することによって効力が生じ、その 2 週間後には当該労働契約は終了する(民法第 627 条 1 項)。これに対して、(2)の使用者に対する合意解約の申込である場合は、使用者の承諾の意思表示があってはじめて効力が生ずる。
(1)において、退職の意思表示は撤回することはできないが、(2)の場合、使用者から承諾の意思表示がなされるまでの間は、労働者は合意解約の申込を撤回することもできる。
[2] 労働契約期間の満了
労働契約は、期間の満了によって当然に終了する。
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