Contract
2.7.労働契約上の権利・義務 No.9(2004.11.12)
労
働者
使
用者
xxx(民 1 条 2 項)を根拠に
2.7.1.1.労働者の基本的義務 -
労働契約(就業規則・労働協約)で定められる範囲内で負う。あらかじめ、詳細に規定することは困難。
具体的内容は、使用者が有する によって定まる。
労働者は、適法な指揮命令には従わなければならない。従わなければ、懲戒処分や解雇の理由となる。
2.7.1.2.労働者の付随義務 - (使用者の正当な利益を不当に侵害しないよう配慮する義務)
・ :組織体として企業の秩序を守るべき義務。
服務規程・服装規則の遵守、企業施設の保全などについて、就業規則で規定されることが多い。
・ :使用者の営業秘密やノウハウをその承諾なく使用・開示してはならない義務。
・ :使用者と競合する企業に就職したり、自ら事業を営まない義務。
2.7.2.1.使用者の基本的義務 - 労働の対価として賃金を支払う義務。【→賃金】
2.7.2.2.使用者の付随義務 - (労働者の正当な利益を不当に侵害しないよう配慮する義務)
・安全配慮義務:労働者の生命身体を危険から保護する義務。【→労働災害・過労死】
2.8.配転・出向・転籍
2.8.1.配転
労働者の配置の変更であって、職務内容または勤務場所が相当の長期間に渡って変更されるもののこと。
2.8.1.1.使用者の配転命令権の根拠 - 使用者はなぜ配転を命令できるのか?
:労働契約の締結により、労働者は労働の場所や種類についての決定を使用者に委ねるという包括的な合意をしており、それを根拠に、使用者は職種や勤務場所の変更を命じることができる。
労働契約で職種や勤務場所が特定されていた場合は、その範囲に限定される。
労働契約を「労働者が使用者に対して労働力の処分を白紙委任的に委ねる契約」ととらえてよいか?
:使用者は労働契約によって合意された範囲内で指揮命令権・労務指揮権を行使することで配転を命じることができる。契約範囲外となるときは、命令することはできず、契約内容の変更を申込み、労働者の同意を得なければならない。
※両説に違いはあるか?
日本の雇用慣行(大卒ホワイトカラーの場合は、職種や勤務場所を特定しない)を前提とすると、違いはほとんど生じない。
就業規則の例:「業務上の都合により社員に異動を命ずることがある。この場合には、正当な理由なしに拒むことはできない。」
但し、新卒採用で「勤務地限定採用」や「職種別採用」が増えつつあり、中途採用では職務内容が特定されることもある。
そこで、契約説をとりつつ、以下のように配転命令権を限界付ける。
(1)労働契約で配転に合意、あるいは就業規則・労働協約に配転を命じる旨の定めがある。
(2)職種や勤務場所があらかじめ特定されていたか。 (3)配転は特約の範囲内に限定
No Yes
権利濫用法理による制約
(4)使用者に包括的な配転命令権が認められる。
V.S.
2.8.1.2.配転命令権の限界
2.8.1.2.1.法令による規制
・労組法 7 条違反【→不当労働行為】 ・均等待遇違反(労基 3、均等 6)
2.8.1.2.2.労働契約による規制
職種や勤務場所が特定されている場合は、その範囲内でのみ配転命令は可能。
☆日本テレビ放送網事件(東京地決昭 51.7.23 判時 820 号 54 頁)
2.8.1.2.3.権利濫用による規制
使用者の配転命令権は、 によって制約される(民 1 条 3 項)。
☆東亜ペイント事件(最二判昭 61.7.14 判時 1198 号 147 頁)
【事実の概要】
原告XはYの神戸営業所に勤務していたが、広島営業所への転勤の内示があった。しかし、当時原告は、高齢の母、xxをしている妻、幼い子とともに大阪府堺市に住んでいた。神戸に転勤すると単身赴任となることから、Xは内示を受け入れなかった。Yは名古屋営業所への転勤を内示した後、同営業所への転勤命令を発令したが、Xはこれにも応じなかった。Yは、Xが転勤命令を拒否したことは就業規則所定の懲戒事由に該当するとして、Xに対し懲戒解雇を行った。そこで、Xは、転勤命令と懲戒解雇の無効を主張し、Yに対し地位確認及ぶ賃金支払等を求めた。
【判旨】
就業規則等の規定を根拠に Y に配転命令権を認め、権利濫用の判断について、「当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではない」
・業務上の必要性
労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など
・労働者の不利益
家庭生活上の不利益が問題となることが多い。
家族に重病人がいる場合には権利濫用と判断されている。
☆北海道コカコーラ事件(札幌地決平 9・7・23 労判 723 号 62 頁)
使用者は として、単身赴任が労働者に与える不利益を回避軽減する措置をとる義務を負う。
①単身赴任を回避する措置、
②単身赴任となる場合の不利益の軽減措置、
③赴任期間の目安の明示 など
☆帝国臓器事件(東京地判平 5・9・29 労判 636 号 19 頁)