Contract
特集●労働契約法と改正パート労働法
中国労働契約法の内容とその意義
xx x
(九州大学准教授)
社会主義市場経済の中国でも, 労働関係は, 契約関係として把握されている。 1994 年制定の中国労働法では, 原則的な規定が定められ, 労働契約に対して法規制を行ってきたが,実質的には, 労働行政部門や地方政府の諸規定によって規制され, 統一的で包括的な法規制としては不十分であった。 また, 市場経済の発展と国有企業改革に伴うリストラの中で, 1994 年の中国労働法が当初予定していなかったパートタイム労働や派遣労働が急速に拡大し, また, 労働契約の多くが期間の定めのあるものであったため, 不安定な雇用に従事する労働者が増加し, 調和のとれた社会を目指す政府にとって大きな問題となっていた。そうしたなか, 2007 年 6 月に中国労働契約法が制定され, その後, 就業促進法や労働争議調解仲裁法が制定されるなど, この 1 年の間に, 中国の労働法制は大きく展開している。日本でも, 労働契約法の制定やパートタイム労働法の改正があり, また, 労働者派遣法の改正が議論されている。 本稿では, こうした日本の動向に関連して, 主に, 中国労働契約法の制定の経緯・背景を概観したうえで, 労働契約の締結・就業規則の効力, 労働契約の期間, 解雇・雇止め, 派遣・パートタイム労働に関する法規制の内容を紹介し, 若干の検討を加えることとする。
目 次
Ⅰ はじめに
Ⅱ 中国労働契約法制定の背景
Ⅲ 労働条件決定システム
Ⅳ 労働契約の期間・試用期間
Ⅴ 労働契約の解約・終了に関する規制
Ⅵ 派遣労働・短時間労働に関する規制
Ⅶ おわりに
Ⅰ は じ め に
中国が改革開放政策を打ち出してから 30 年を迎える。 社会主義市場経済体制下のこの国においても, 労働関係は契約関係として理解され, 労働契約を媒介として, 労働者は労働し, また, 契約当事者は法規制を受けている。 そのため, 労働契約に関するxxかつ透明なルールの設定は, 中国
政府にとって, xxの懸案事項であり, ようやく, 2007年6月 29 日, 「中華人民共和国労働契約法」 (以下, 中国労働契約法という) の制定に至った。
ところで, 2006 年の貿易統計によれば, 日中の貿易総額が日米のそれを上回り1), 日本経済が中国経済に大きく依存している構造が浮き彫りとなっている。 そのような中で, 労働者の権利保護を重視したと評される労働契約法は, 中国における労務コストを上昇させ, 現地の日系企業の経営に大きな影響を与えるのではと懸念されている。
中国労働契約法については, 既に, いくつかの文献でその内容が詳しく紹介されているが2), 具体的運用を定めた下位規範が公布されていなかったため, 条文だけでは明らかではない部分があった。 この点に関して, 2008 年 5 月 8 日, 「中華人民共和国労働契約法実施条例 (草案)」 (以下, 条例草案という) が公表された。 これは, あくまで
も草案であって, 今後, 多方面からの意見聴取と審議を経ることになっているが, 中国労働契約法の具体的解釈を考える上で参考になるだろう。 中国労働契約法の制定に当たっても, 草案を公表し,パブリックコメントを募り, 草案も第 1 次から第 4 次草案まで作成された。 全人代法律委員会は,各草案に対する審議結果や改正意見を報告し3),草案の見直しを行うなどしており, その立法プロセスも注目されている4)。
そこで, 本稿では, 中国労働契約法の制定経緯を概観したうえで, 中国労働契約法の内容について紹介し, 若干の検討を加えることとする。 なお,紙幅の関係上, 法の内容全般を取り扱うことはできないため5), 日本における労働契約法の成立やパート労働法の改正, 労働者派遣法の見直しの動きなどをふまえ, 関連するいくつかの論点に絞ることとする。
Ⅱ 中国労働契約法制定の背景
1 労働契約をめぐる法制の展開
改革開放後の労働契約をめぐる法制の展開を振り返るとき, 大きく 3 つの時期区分が可能であろう。 1978 年 12 月に改革開放政策に転じて以降,中国は, 国営企業制度や金融制度など, 様々な改革を行ってきたが, 従来の硬直的な労働管理制度 (いわゆる固定工制度) を改革することもその中の重要な柱であった。 そこで, 当初, 外資系企業に限定して労働契約 (原語は 「労動合同」 という) 制度を実施していたが, 1986 年に, 国営企業における労働契約制度実施に関する 4 つの暫定規定が公布され, 国営企業にも一般的に適用することとした。 労働契約制度の導入は, 強固な終身的身分保障 (国家による仕事の配分から退職後の生活保障も含めて) と年功的賃金制度を改め, 当事者の合意による採用と労働条件 (賃金等) 決定および一定事由の下における解雇 (雇用調整) の実施を可能にするものであった。 ただし, 国営企業での導入は, あくまでも新規採用者からに限定して適用された。 労働契約制度の試験的実施の時期ということができる。
次に, 1994 年には, 「中華人民共和国労働法」 (以下, 中国労働法という) が制定され, その関連規定が公布された。 中国労働法は, 労働契約制度を前提としたものであり, 固定工制度から脱却し,労働契約制度への全面的な転換を図ることとなった6)。 ところが, 1994 年末時点で, 労働契約制労働者の割合はわずか 25.9%という状況であり7),労働契約制度の全面実施の政策とともに, 労働契約をめぐる法規制の枠組を形成する必要があった。そのプロセスにおいて, 国有企業の固定工をいったん離職させ, 非国有セクターで労働契約を締結して再就職させる (再就職プロジェクト) という方法をとった8)。 その際, 就業機会の確保を図るため, 短期契約労働者やパートタイム労働者 (「非全日制労働者」), 派遣労働者など多様な雇用形態が広がった。 こうした非xx労働者の増加は,リストラ後の再就職を促進するために, やむを得ない側面があり, また, 企業側のニーズにも合致していたこともあり, 政策的に誘導された結果ともいえる9)。 同時に, 国有企業の企業内福利として発展してきた社会保障制度の抜本的な改革が必要となり, 1999 年には, 国有企業改革や労働契約制度の全面実施に伴って, 失業保険や年金制度をはじめとした社会保障制度の大改正が行われた。この時期は, 労働契約制度の形成期ということができよう。
そして, 中国労働法では, 労働契約に関する原則的規定が定められていたものの (第 3 章労働契約と集団契約はわずか 20 カ条から構成), 不十分な内容であった。 労働行政部門の通達や地方政府が定めた規定が, 中国労働法の規定を補完する機能を果たしていたが, 問題ごとに対応したパッチワーク的なもので, 地方ごとにルールも異なっていた。そのため, 必ずしも統一的で, 普遍的なルールとはいえず, 労働紛争も増加の一途をたどっていた (図 1 参照)。 そこで, 労働契約法の制定に向けて, 2005 年に, 第 1 次の草案が作成・審議され, そ
の後, 第 4 次草案を経て10), 2007 年 6 月に中国労働契約法が制定された。 また, 同年 8 月と 12 月には, 「中華人民共和国就業促進法」 と 「中華人民共和国労働争議調解仲裁法」 (以下, 労働仲裁法という) が制定されており11), 2007 年の諸立法を
論 文 中国労働契約法の内容とその意義
契機として, 紛争解決の実践も含めて, 労働契約をめぐるルールの発展・展開に向けた新たな段階に入った。
2 労働紛争の増加とその処理手続
(1)労働紛争の増加
労働紛争の増加について概観する。 調停委員会と仲裁委員会 (それぞれについては後述する) における労働紛争の受理件数は, 図 1 のとおりである。 2006 年の仲裁委員会における受理件数は, 労働
法施行前の 1994 年と比べ約 17 倍に達しており,労働紛争が急速に増加したことがわかる。 また,紛争の類型別では, 労働報酬 (賃金未払いなど)や保険・福利に関するものがそれぞれ 30%程度を占め, 労働契約の解約・終了をめぐるものが20
%強となっている (図 2)。 こうした紛争の増加の
1 つの要因として, 中国労働法の規定が原則的規定を定めるに過ぎず, 紛争解決の規範としては不十分であったことが挙げられる。
(2)労働紛争の処理手続
労働仲裁法制定前の労働紛争の処理手続 (労働法 77~84 条, 1993 年制定の企業労働紛争処理条例)は, ①当事者間の協議, ②企業内の労働紛争調停委員会 (以下, 調停委員会という) による調停, ③県・市・市管轄区に組織される労働紛争仲裁委員会 (以下, 仲裁委員会という) による調停・仲裁,
④裁判所 (人民法院) での訴訟の 4 段階であった。労働仲裁法においても, 基本的に同じ手続であるが, 重要な改正点を 2 つ指摘しておく。 第 1 に,調停機能の強化である。 今改正により調停委員会は, 従業員の代表, 企業の代表から構成されることになった。 企業において, 調停委員会が必ず設
(件) 350,000
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
図1 労働紛争の受理件数
317,162
19,098
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
(年)
調停委員会 仲裁委員会
資料出所:『中国労働統計年鑑』(中国統計出版社)1995~2007年より筆者作成。注:1994年と2001年の調停委員会受理件数は不明(不記載)。
(年) 2006
2005
2004
2003
2002
2001
図2 仲裁委員会での労働紛争類型
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100(%)
労働報酬
社会保険 労働契約の変更
労働契約の解約
労働契約の終了
その他
資料出所:『中国労働統計年鑑』(中国統計出版社)2002~2007年より筆者作成。注:「その他」には,安全衛生等,職業訓練,下崗などの紛争が含まれる。
置されているわけではなく (企業内の苦情処理機関), 任意的な解決手続である。 そして, 労働紛争の調停にあたって, 調停委員会以外にも, 地域の人民調停組織の利用を認めることとした。
第 2 に, 仲裁裁定の効力の強化である。 仲裁委員会では, まず, 調停を行って調停合意の成立を目指すが, それが調わないときには, 仲裁裁定を出す。 仲裁裁定に不服のある者は, 人民法院に提訴することができ, 労働紛争では仲裁前置主義が採られている。 改正により, ①賃金・経済的補償や賠償金で最低賃金の 12 カ月相当額を超えない金額の紛争, ②労働時間12)・休憩休暇・社会保険等をめぐる紛争については, 仲裁裁定を終局裁定として, 人民法院への提訴を原則として認めないとした (それ以外については, 提訴ができる)。 このような紛争の多くが農民工 (農村からの出稼ぎ)に関わるものであり, 早期解決を図る必要があった。 そして, 従来, 仲裁委員は, 労働行政部門代表, 労働組合代表 (県・市・市管轄区レベル), 企 業代表により構成されていたが, 今改正で, 仲裁委員の資格を, 過去に裁判官であった者, 法律の研究・教育に従事し中級以上の職位の者, 法律の知識を有し労働人事管理・労働組合等の専門的職務に 5 年以上従事した者, 弁護士として 3 年以上従事した者に限定することとし, 法律の専門家による仲裁とした。 また, 仲裁費用は無料とされた (53 条)。
Ⅲ 労働条件決定システム
1 労働関係の形成と労働契約の成立
中国労働契約法では, 労働関係は労働者の実際の労務提供の日より生じるとされ (7 条), 労働関係の成立には, 書面の労働契約の締結が義務付けられている (10条1 項)。 労働契約において,企業名, 住所, 代表者・責任者の氏名, 労働者の氏名, 住所及び身分証明書番号, 労働契約の期間,職務内容, 勤務地, 労働時間, 休憩休暇, 賃金,社会保険, 安全衛生及び法令で定めるその他の事項は必要記載事項とされている (17 条)。 さらに,任意的記載事項として, 試用期間, 教育訓練, 秘
密保持, 補充保険・福利待遇等を定めることができる。 実態としては, 各地方政府の労働行政部門が, 労働契約書の雛型を作成し, そこに, 契約条件を書き込む形式が採用されている。
もちろん, 書面の労働契約を締結せずに, 実際の労務提供が開始されることもある。 この場合, 1 カ月以内に書面の労働契約を締結しなければな
らない (10 条 2 項)。 1 カ月を超えて書面の労働契約を締結しない場合, 使用者13)は, 労働者に対して, 2 倍の賃金を支払わなければならない (82条1 項)。 さらに, 1 年を超えて書面の労働契約を締結しない場合, 期間の定めのない労働契約が成立したものとみなされ (14条3 項), 使用者は, 2
倍の賃金の支払いも求められる (82 条 2 項)。 1
次草案 9 条 3 項では, 書面の労働契約を締結することなく, 労働関係を生じたときには, 期間の定めのない労働契約とみなす旨の規定となっていたが, 2 次草案の段階から 1 カ月の猶予期間をおくこととされた。
つまり, 実質的に, 労働関係に該当するか否かが, 中国労働契約法の適用を決する要素となっており, 労働関係の成立が認められれば, 書面の労働契約の締結が義務付けられ, 書面がなくとも,中国労働契約法は適用される。 そこで, 労働関係の成立のメルクマールが問題となる。 労働関係について, 条例草案では, 「使用者が労働者をその成員として採用し, 労働者が使用者の監督下において, 使用者から報酬を受けて労働することにより生じる権利義務関係を指す」 と定義している (同旨の規定は, 1 次草案 3 条に存在したが, 2 次草案から削除されていた)。
2 集団契約・就業規則と労働契約
(1)集団契約と労働契約
中国の 「集体合同」 は直訳すれば, 集団契約であり, 賃金, 労働時間, 休憩休暇, 労働安全衛生,保険福利等の事項について, 労働組合と使用者との間で締結するものとされるが, 労働組合がない場合には, 従業員の代表者と使用者との間で締結される (51 条)。 集団契約の草案は, 従業員代表大会又は従業員全体で討議し, 採択するとされ,労働行政部門に届出を行い, 15 日以内に異議が
論 文 中国労働契約法の内容とその意義
なければ, 効力を生じるとされる (54 条)。 また,その効力は, 従業員全体に及び, 労働条件の最低基準として機能する (55 条)。
(2)就業規則と労働契約
日本の就業規則に当たるのは, 「内部労働規則」であろう (以下, 就業規則という)。 中国労働契約法 4 条は, 使用者の就業規則の整備義務を定めており, 特に, 賃金, 労働時間, 休憩休暇, 労働安全衛生, 保険福利, 従業員の教育訓練, 職場規律及び労働ノルマの管理など, 労働者の切実な利益に直接関連する規則あるいは重大な事項を制定又は変更あるいは決定するときは, 従業員代表大会あるいは従業員全体の討論を経て, 労働組合又は従業員代表と協議して確定しなければならない。また, 就業規則や重大な決定事項については, 使用者は, これを公示し, または労働者に周知させなければならない。 そして, 就業規則の作成・変更にあたってだけでなく, 就業規則が具体的に運用・適用される中で, 労働組合又は従業員が不適当と認めるときには, 使用者に申し入れ, 協議を通じて改善を求める権利を有するとされ, 労働者側にも就業規則の変更について, イニシアティヴが与えられている (もちろん, 最終的に変更するのは使用者である)。 また, 労働行政部門は, 就業規則について監督する権限が与えられており (74 条),また, 規則内容が法令に違反する場合には, 是正を命じうる (80 条)。
そして, 就業規則と労働契約の効力関係については, 最高人民法院の解釈で 2 つのルールがある14)。 第 1 に, 法に基づき制定された就業規則が労働者に周知されている場合には, 裁判所での紛争解決規範になりうることである。 第 2 に, 就業規則と集団契約又は労働契約の内容が一致しない場合に, 労働者が集団契約又は労働契約の適用を求めるときは, 裁判所はこれを認めなければならないことである。 これらのルールによれば, 実質的に, 就業規則が最低基準としての効力を有する (就業規則より契約基準が下回る場合には, 就業規則の適用を主張するが, その逆の場合には, 契約の適用を主張する) ことになろう。 また, 書面の労働契約に記載されていない事項については, 就業規則の定めが裁判規範になりうることから, 実質的
に契約内容を規律する効果を持ちうる。 したがって, 書面の労働契約で定められていない事項については, 就業規則を通じて決定・変更しうると解することもできる。
Ⅳ 労働契約の期間・試用期間
1 労働契約の期間
労働契約は, 期間の定めのあるもの, 期間の定めのないもの, 一定の仕事の完成をもって期間の定めとするものに分けられる。 中国では, 固定工制度における終身的身分保障 (「鉄飯碗」) を打破するために労働契約制度が導入された経緯があり, 労働契約の期間を定めることが一般的である。例外的に, 既に勤続 10 年以上経過した者が, 本人が期間の定めのない労働契約の締結を希望する場合に, 期間の定めのない労働契約を締結しなければならないとされていた (中国労働法 20条2 項)。他方で, 期間のxxx更新回数に関する制限がなく, 労働契約終了 (雇止め) に関する制約もなかったことから, 労働契約関係の短期化が問題となっていた。
そこで, 中国労働契約法 14 条 2 項では, 上記の中国労働法の規定に加えて, 期間の定めのある労働契約を連続して 2 回更新し, かつ, 同法 39条, 40 条 1 号・2 号 (後述のように解雇が認められる場合を規定したもの) に該当しない場合に, 労働契約を更新したときには, 期間の定めのない労働契約を締結しなければならないとされている。この更新回数のカウントは, 本法が施行されてからの更新に適用される (96 条)。 これにより, 期間の定めのない労働契約を拡大するだけでなく, 1 回あたりの契約期間を比較的長い期間に設定する効果もあろう。
もちろん, 期間の定めのない労働契約であっても, 従来の終身的な身分保障 (「鉄飯碗」) を意味するものではない15)。 後述のように, 期間の定めの有無にかかわらず, 法所定の解雇事由に該当する場合には, 労働関係を解消することができるのであり, 法所定の解雇事由も, それほど厳格なものではない16)。
このように, 中国では, 更新回数への制約や書面化しない場合のみなし規定などを通じて, 期間の定めのない労働契約へのシフトを法政策として進めている17)。 ただし, 次のような問題がある。第 1 に, 連続した更新を避けて, 一定期間 (例えば, 1 カ月程度) をおいて, 同一の労働者と労働契約を締結する。 第 2 に, 契約期間が満了する直前に, 契約期間の変更を合意し, 契約の終了を先延ばしにする。 もちろん, 結局は, 10 年を経過して更新する場合, 期間の定めのない労働契約を締結しなければならなくなるが, その場合でも,第 3 に, 10 年に達する直前で, 労働契約を解消してしまうという問題がある18)。 ただし, このような行為は, 適法な形式をもって不法な目的を覆い隠す行為として, 無効と解される可能性がある (民法通則 58 条 1 項 7 号)19)。
2 試用期間
労働契約の期間に応じて, 試用期間の上限規制がある。 すなわち, 3 カ月以上 1 年未満の契約
の場合, 1 カ月以内, 1 年以上 3 年未満の契約の
場合, 2 カ月以内, 3 年以上及び期間の定めのない契約の場合, 6 カ月以内とされている。 一定の仕事の完成をもって契約期間とする場合及び 3 カ月以内の期間を定める場合には, 試用期間を設けることはできない。 また, 試用期間は, 同一の労働者について 1 回に限り, 定めることができる。
試用期間中の賃金については, 契約所定の賃金の 80%相当額および企業の同種の労働者の最低賃金基準を下回ってはならない。 試用期間中は,後述の 39 条及び 40 条 1 号・2 号に該当する場合 (非違行為があった場合や身体的・能力的適格性を欠く場合) を除き, 解雇してはならず, 解雇するときは, 理由を説明しなければならない。 留意すべきは, 経済的な条件 (原材料・エネルギーの供給条件, 生産設備条件, 生産品の販売条件, 労働安全衛生条件等) の重大な変化が生じた場合の解雇 (40条 3 号, 41 条) は認められない。 試用期間は, あくまでも労働者の職務に対する適格性を判断する期間と捉えられている。
Ⅴ 労働契約の解約・終了に関する規制
1 解雇・労働契約の終了
(1)解雇に関する法規制
解雇に関する法規制は, 手続的にみると, ①即時解雇, ②30 日前の予告を要する解雇, ③組合の意見聴取・行政部門への届出を要する解雇 (整理解雇) に分類される。 中国では, 法所定の解雇事由がなければ, 解雇できない。 また, 日本の解雇では, 期間の定めのある場合と期間の定めがない場合とで, 解雇の有効性が異なる基準で判断されるが, 中国では, 期間の定めのある場合と期間の定めがない場合とで, 異なるところがない。
また, 法所定の解雇事由がある場合でも, ①業務上の傷病により労働能力の一部又は全部を失ったと認められたとき, ②業務外の傷病により所定の治療期間にあるとき20), ③女性労働者が産前・産後・育児休業期間にあるとき21), ④法令に定めるその他の事由があるとき, ⑤危険を伴う作業に従事している者で離職前の検診・診断を受診していない者又は職業病に罹患している疑いで診断を受診している者, ⑥当該企業での勤続年数が 15
年を超え法定の定年年齢まで 5 年未満の者については, 後述の 40・41 条の規定に基づき解雇してはならないとされている (42 条)。 39 条所定の即
時解雇事由がある場合あるいは合意解約 (36 条)には, この制限は及ばない。 また, 使用者が解雇する場合には, 労働組合へその理由を通知しなければならない (43 条)。
(2)即時解雇
即時解雇 (39 条) は, ①試用期間中に採用条件を満たさないことが明らかになったとき, ②重大な就業規則違反があったとき, ③職務上の過失や私利を図った不正行為により使用者に重大な損害をもたらした場合, ④刑事責任を追及された場合,
⑤二重就職により業務に重大な影響を与えたとき,
⑥詐欺・強迫の手段で労働契約を締結・変更させられたとして労働紛争仲裁委員会又は裁判所で当該契約が無効と認定されたとき, の 6 つの解雇事由がある場合に認められる (このうち, ①~④は中国労働法でも規定されている)。
論 文 中国労働契約法の内容とその意義
(3)30 日前の予告を要する解雇
中国では 「無過失性解雇」 というが, ①業務外の傷病により治療期間を経てもなお従前の業務または使用者が再配置した別の業務にも従事できないとき, ②労働者が職務に不適格で22), 教育訓練や配置転換をしても, 職務を遂行できないとき,
③労働契約締結時に依拠した客観的情況に重大な変化が生じ, 労働契約を履行することができなくなり, 当事者が協議しても, 労働契約内容の変更について合意できないときには, 使用者は, 30
日前までに書面で予告するか, 1 カ月分の賃金を支払うことにより, 解雇できる。
(4)整理解雇
整理解雇については, ①企業が破産法の規定に基づき清算されるとき, ②生産経営に重大な困難が生じたとき, ③企業が生産転換, 重大な技術革新又は経営方式の変更によって, 労働契約の変更をしても, 人員削減をしなければならないとき,
④その他労働契約締結時に依拠した客観的情況に重大な変化が生じ, 労働契約を履行することができなくなったときに, 実施される解雇で, 人数の要件として, 20 人以上又は 20 人未満ではあるが企業の総従業員数の 10%以上の労働者を人員削減する場合には, 次のような手続が課されている。つまり, 使用者は 30 日前までに労働組合又は従業員全体に対して情況を説明し, 意見聴取を経た上で, 人員削減の方法を労働行政部門に報告しなければならない。
人選に関して, 比較的長期間の期間の定めのある労働契約を締結している労働者, 期間の定めのない労働契約を締結している労働者, 世帯に他に就業者がおらず, 高齢者又は未xx者の扶養をする必要がある者については, 解雇しないようにすべきとされている。
(5)労働契約の終了
労働契約は期間の満了によって終了する。 その他, 労働者が法所定の年金受給を開始した場合,労働者が死亡した場合 (人民法院の死亡宣告も含む),使用者が破産宣告を受けたときなども終了事由とされている (44 条)。 ただし, 前述の 42 条に基づく解雇制限事由がある場合には, 当該制限事由が解消されるまでは, 労働契約を終了することはで
きない。 (6)違法解雇等の効果
使用者が, 法所定の解雇事由がないのに, 労働者を解雇した場合 (あるいは使用者が違法に契約を終了させた場合), 労働者は, 労働契約の継続履行を求めることができる。 また, 労働者がそれを望まない場合あるいは労働契約の履行が不可能になっている場合には, 使用者は, 後述の経済的補償金の 2 倍の額を支払わなければならない (48 条, 87条)。
2 辞 職
労働契約は当事者の合意によって終了させることができる (36 条)。 また, 労働者は, 30 日前までに書面で予告することにより, 辞職することができる。 試用期間中は 3 日前の予告で足りる (37 条)。 これは, 期間の定めの有無にかかわらず適用されるものであり, 辞職理由の制限はなく,労働者には一方的な退職の自由が保障されている。そして, 使用者は, 教育訓練に関する服務期間と秘密保持・競業制限に関する特約に違反する場合を除いて, 労働者に対して違約金を求めることはできない (25 条)。 ただし, 労働者が, 後述の即時解約事由 (38 条) がないにもかかわらず, 合意によらず (36 条), 一方的に即時に退職した場合には, 損害賠償責任を負う場合がある (90 条)。
そして, 38 条によれば, ①使用者が労働契約で定める安全衛生や労働条件基準を提供しない場合, ②賃金をすみやかに全額支払わないとき, ③法所定の労働者の社会保険料を納付しなかったとき, ④就業規則や法令の規定に違反して, 労働者の権利・利益に損害を与えたとき, ⑤詐欺・強迫の手段で労働契約を締結・変更させられたとして仲裁委員会又は人民法院で, 当該契約が無効と認定されたとき, ⑥法令に定めるその他の事由があるときには, 労働者は, 即時に労働契約を解約することができる。 解約である以上, 告知 (通知)自体は必要だが, 暴力・強迫又は違法に人身の自由を制限する方法で労働を強制されている場合などには, 労働者は即時解約ができ, 使用者に通知する必要はない。
3 経済的補償
使用者のイニシアティヴあるいは原因により,労働契約を解約・終了する場合, 経済的補償の支払いが求められる (46 条)。 すなわち, 労働者が即時解約する場合 (38 条), 使用者が合意解約を申し出て労働者が承諾する場合 (36 条), 30 日前の予告を要する無過失性解雇 (40 条), 整理解雇 (41 条), 使用者が破産宣告を受けた場合など (44条 4・5 号), 労働契約が終了した場合 (44 条 1 号,ただし, 使用者が労働条件水準を維持・改善する契約更新の申込みをしたにもかかわらず, 労働者がこれを拒否した場合を除く), 法令に定めるその他の事由がある場合には, 経済的補償を支払わなければならない (46条1 項)。
その金額は, 勤続年数 1 年につき, 1 カ月分の
賃金相当額で, 6 カ月以上 1 年未満の期間については 1 年として算定する。 当該労働者が, 同地域の平均賃金の 3 倍以上の賃金である場合には, 経済的補償の算定基礎は, 同地域の平均賃金の 3 倍相当額とし, 経済的補償の上限は, 12 カ月分までに限定される (47条2 項)。 義務付けられた経済的補償を支払わなかった場合には, 労働行政部門より, 50~100%増の経済的補償の支払いが命じられる。
Ⅵ 派遣労働・短時間労働に関する規制
1 労働者派遣
既に, 実態として, 労働者派遣はxxに行われており, 下崗人員の就業や失業者の雇用拡大に大きな成果を上げている。 ただし, 現行の労働法制では, 労働者派遣について明確な規制がないため, 派遣業者は使用者としての法律上の義務を回避し, 労働者の権利・利益を侵害しているといわれていた。 そこで中国労働契約法では, 次のような定めをおいている。
まず, 派遣元事業主23)と派遣労働者との間で締結される労働契約は, 2 年以上の期間の定めのある労働契約でなければならず, 派遣労働者の派遣先がない期間については, 派遣元事業主所在地の
最低賃金の基準以上の賃金24)を支払わなければならない。 このように, 中国では, 常用型派遣を採用し, 派遣労働者が派遣されて労務提供している期間については, 派遣先の同種の労働者と同額の賃金を受ける権利があるとされるが (63 条), 仕事がない場合には, 派遣元所在地の最低賃金となる。 留意すべきは, 中国の最低賃金は, 非常に低い水準にあり (各地方の前年の平均賃金の 20~40%程度にすぎない), かつ, 地方ごとの格差が比較的大きい。 そのため, 基準の低い地方で派遣事業を営業し, 賃金の高い地域に派遣した場合, 労働契約の履行地である派遣先地方の基準が適用されるが (条例草案 17 条), 派遣先がない時期には, 履行地がないので, 派遣元のある地方の最低基準等が適用されることになる。
また, 派遣労働は, 一般に, 臨時的, 補助的又は代替的な業務において実施するとされている (66 条)。 派遣の適用対象業務を限定する趣旨であり, その具体的業務は明記されていないが, 条例草案 38 条では, ①当該企業の主たる業務ではない (「非主業」) 業務 (補助的), ②継続して 6 カ月を超えない業務 (臨時的), ③労働者が一時的に休業して25)出勤できない場合に代替的に就く業務 (代替的) に限定されている26)。 かなり限定的であり, 特に①の規制が実現すると, 製造業の生産ラインに労働者を派遣することは難しくなると考えられる。
そして, 派遣先は, 派遣労働者に対して必要な教育訓練を行うことなどが義務付けられ (62 条),違法行為により派遣労働者に損害が発生した場合には, 派遣先と派遣元が連帯して損害賠償責任を負う。 派遣労働者が, 39 条 (即時解雇事由) と 40条 1・ 2 号 (職務不適格等) で, 予定された労務を遂行できないときは, 派遣先は派遣元に労働者を返還することができるが (この場合, 派遣元は,法所定の手続に従い, 解雇することができるとされている (65 条)), 上記事情がない場合には, 派遣期間中の労働者の返還は認められない (条例草案 40 条)。
2 短時間労働者
短時間労働 (「非全日制就業」) とは, 時間によ
論 文 中国労働契約法の内容とその意義
る賃金計算を主とし, 1 日当たり平均労働時間が
4 時間を超えず, 1 週間当たりの労働時間の累積
が 24 時間を超えない就労形式をいうとされる。短時間労働の場合, 労働契約は書面でなくともかまわない。 短時間労働の場合, 当事者はいつでも労働関係を解消することができる。 また, 使用者は経済的補償を支払う必要はない。
Ⅶ お わ り に
以上, いくつかの重要な点について, 中国労働契約法の内容を紹介してきた。 日本の労働契約法との比較でみると, 労働契約の期間を期間の定めのない労働契約を拡大したり, 派遣対象業務を制限したりすることにより, 労働関係の安定化を図る政策が進められている点は強調しておきたい。他方で, 期間の定めのない労働契約であっても,法所定の解雇事由がある場合には, 解雇することが認められており, 中国労働契約法において, 解雇規制がことさら厳格になったわけではない。
いずれにせよ, 条例草案の内容は, かなり不十分であり, 実施にあたっての細則 (条例草案だけでなく, 労働行政部門の規定) を整備する必要がある。 例えば, 派遣については, 法律上, 抽象的な規定で対象業務が制限されているが, その細則がないために, 事実上, これまでの現状を放置したまま, 運用されている。 ただし, 現状をドラスティックに変えることは容易ではなかろう27)。
また, 全体として, 内容的には, 労働者の労働契約上の権利保護に重点を置いていると評価されており28), そのため, 労働者の権利主張が強くなることが懸念されている。 つまり, 労働関係の安定や紛争の予防を目的としてルールを明確にしたことにより, かえって, 紛争の増加を招く可能性がある。 この点は, 新たに改正された労働紛争処理手続が, どのように機能するかが注目される。
*本稿は, 文部科学省平成 18~20 年度科学研究費補助金・若手研究(B) 「判例分析による現代中国の解雇法理の研究」 の研究成果の一部である。
1) 既に 2004 年時点で, 中国と香港をあわせた貿易総額が,
アメリカのそれを上回っていた。
2) 例えば, xxxxxx 「中国における労働契約法の概要」
『労働法律旬報』 1661 号 36 頁 (2007 年), xxx 「中国労働
契約法について」 『NBL』 866 号 33 頁 (2007 年), xxxx
『中国・労働契約法の仕組みと実務』 (日本経済新聞出版社, 2007 年), xxxx = xxxx 『中国労働契約法の実務』 (中央経済社, 2008 年) などがあり, 規定内容等は, これらの先行研究を参照いただきたい。
3) 各草案に対する審議結果や修正意見については, 『実用版・中華人民共和国労動合同法』 (中国法制出版社, 2008 年) 参照。
4) xxxxxx・前掲注 2)論文 36 頁参照。
5) なお, 中国労働契約法の全文訳につき, インターネットで入手可能なものとして, JETRO のものがある (xxxx://xxx. xxxxx-xxxx.xxx/xxxxxx_xxxx/0000000000000000.xxx)。
6) 固定工制度から労働契約制度への展開過程は, 拙稿 「中国における下崗 国有企業の人員合理化策に関する研究」
『日本労働研究雑誌』 No. 469, 46 頁 (1999 年) 参照。
7) 労働契約制度の普及・拡大の情況については, 拙稿 「中国における雇用の流動化と労働関係の終了」 『日本労働法学会誌』 102 号 141 頁 (2003 年) 参照。
8) 下崗などを通じて, 2001 年末には, 労働契約締結率は 95
%を超えたといわれている。 「国別労働基礎情報・中国」 『海外労働時報』 臨時増刊 336 号 20 頁 (2003 年) 参照。
9) xxxxxx 「有期労働契約に対する法規制のあり方に関する日本・中国・ドイツの比較法的分析」 『神戸法学雑誌』 56 巻 4 号 145 頁 (2007 年) 参照。
10) 第 1 次から第 4 次までの草案の対照表を掲載した中国語文献として, 功成 = 程延園主編 『中華人民共和国労動合同法釈義与案例分析』 (人民出版社, 2008 年) がある。
11) また, 2007 年 12 月には, 中国労働法 45 条に基づき 「職工帯薪年休暇条例」 (有給休暇条例) が制定され, 2008 年 3月には, 労働社会保障部が人事部と統合されて人力資源社会保障部 (本稿では, 労働行政部門と呼ぶ場合がある) となり,現在, 「中華人民共和国社会保険法」 の起草が進められている。
12) 31 条では, 使用者が労働者に対して時間外労働を強制してはならないと明記されている。 法定労働時間は 1 日 8 時間週 40 時間とされ, 時間外労働は 1 日 3 時間・月 36 時間が上限で, 割増率は 50%以上とされている (中国労働法 41 条, 44 条)。 なお, 週平均の実労働時間は 47.26 時間 (2006 年 11月) である (『中国労働統計年鑑 (2007 年)』 119 頁参照)。
13) 中国語では 「用人単位」 といい, 「単位」 制度については,拙稿・前掲注 6)論文参照。 本稿では, 便宜的に, 使用者と訳すが, 「用人単位」 という言葉は, 労働契約の当事者としての 「使用者」 として用いられる場合と, 適用対象としての
「事業主」 や場所としての 「事業所」 の意味でも用いられることがある。
14) 2001 年 1 月 16 日法釈 [2001] 14 号 「最高人民法院関於審理労動争議案件適用法律若干問題的解釈」 19 条, 2006 年 8月 14 日法釈 [2006] 6 号 「最高人民法院関於審理労動争議案件適用法律若干問題的解釈 (二)」 16 条参照。
15) 「全国人大法律委員会関於《中華人民共和国労動合同法 (草案第三次審議稿)》審議結果報告」 三参照。
16) 日本の労働契約法 16 条所定の解雇権濫用法理も, 相当に厳格な解雇規制といえ, それと比べて, 中国の解雇制限が厳しいとはいえないだろう。
17) 日本においても, 契約期間をできるだけ長くしたり, 更新
拒否に制約を設けたりしようとする動きが見られる (労働契約法 17 条, 労基法 14 条 2 項・3 項)。
18) 文部科学省平成 18~20 年度科学研究費補助金 (若手研究 (B)) の助成を受け, 筆者は, 中国で解雇法制に関する聞き取り調査を行った。 その際に, 弁護士等の実務家の間で, こうした問題が指摘されていた。 期間の定めのない労働契約の締結を嫌って, 10 年未満で労働関係を解消する場合があり,結局, 中国労働法 20 条 2 項が, 労働者にとって不利益をもたらす場面があることが指摘されていた。
19) xx・前掲注 2)書 37 頁参照。
20) 1994 年の労働部の規定では, 治療期間は, 勤続年数等に応じて, 3 カ月から 24 カ月の範囲で定められている。
21) 「女職工労動保護規定」 によれば, 女性従業員の産前産後休業は 90 日 (うち産前が 15 日), 育児休業期間は子が 1 歳になるまでとされている。
22) 前述 (Ⅲ1) のように, 通常, 労働契約において職務内容が特定されている。
23) 派遣事業を営む事業者について, 資本金 50 xx以上という要件が設けられている。 1 元≒15 円 (2008 年 5 月)。 750万円程度。
24) 条文の文言は, 最低賃金基準に 「照らして」 とされているが, 解釈としては 「下回ってはならない」 とされているよう
である。 例えば, xx編 『中華人民共和国労動合同法釈義』 (中国労働社会保障出版社, 2007 年) 133 頁, = 程・前掲注 10)書 182 頁参照。
25) 原文では 「脱産学習」 で, 就学のため一時的に職場を休職することを指す。
26) なお, 条例草案の文言解釈として, 派遣対象業務として,
①かつ②の場合と, ③の場合の 2 つの類型と読むこともできる。
27) 筆者が現地で調査 (注 18)参照) を行った際, ある専門家が, 冗談ではあるが, 詳細な細則を作ってしまうと, 労働紛争が増加して, オリンピックのスタジアム建設が間に合わなくなってしまうといっていたのが印象的である。 また, 実際に, 日系企業のある担当者からも, 労働者からの労働契約法に関する権利主張をかなり気にしているという趣旨の発言があった。
28) xxxxxx・前掲注 2)論文 45 頁。
やました・のぼる 九州大学大学院法学研究院准教授。 最近の主な著作に 『中国労働契約法の形成』 (信山社, 2003 年)など。 労働法専攻。