Contract
平成27年3月12日判決言渡
平成25年(ワ)第22110号 労働関係存在確認等請求事件
主 文
1 原告が,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2 被告は,原告に対し,255万7500円及びこれに対する平成25年
9月13日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3 被告は,原告に対し,平成25年9月から本判決確定の日まで(ただし,本判決が平成27年5月5日までに確定しないときは,同日まで),毎月5日限り16万5000円(ただし,平成27年5月5日については,8万
2500円)及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
4 原告のその余の請求に係る訴えを却下する。
5 訴訟費用は被告の負担とする。
6 この判決は,第2項及び第3項に限り,仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 主文第1項及び第2項に同旨
2 被告は,原告に対し,平成25年9月から本判決確定の日まで,毎月5日限り16万5000円及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,被告との間で期間の定めのある労働契約を締結していた原告が,被告による同契約の更新拒絶は,xxxに照らし許されず,違法,無効であると主張して,労働契約上の権利を有する地位の確認を求める(主文第1項関係)とともに,労働契約に基づき,平成24年4月1日から平成25年7月15日までの15か月半の
賃金及びこれに対する訴状送達の日(平成25年9月12日)の翌日以降の遅延損害金(主文第2項関係)並びに平成25年7月16日以降の賃金及びこれに対する各支払期日の翌日以降の遅延損害金(請求第2項,主文第3項関係)の支払を求める事案である。
1 前提事実(争いのない事実並びに証拠〔末尾掲記のもの〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1) 被告は,金属加工業等を営む株式会社である。
(2) 被告は,平成22年4月1日,xx区から,指定の期間を同日から平成27年3月31日までと定めて,同区Aセンター及び同区立B図書館の管理者に指定された。(甲1,乙23〔以下,掲記する書証は,特に断らない限り枝番号を含む。〕)
(3) 原告は,図書館法4条所定の司書となる資格を有していたところ,平成22年4月1日,被告との間で,次のとおり,期間の定めのある労働契約(以下「本件労働契約」という。)を締結し,以後,B図書館において就労した。(甲2,乙2)
ア 雇用期間
平成22年4月1日から平成23年3月31日までイ 就業の場所
足立区α×番×号 B図書館ウ 業務の内容
図書館運営業務エ 就業の時間
1日8時間,1か月18日程度勤務オ 賃金
日給月給制,15万5000円カ 賃金の支払
毎月15日締め,翌月5日振り込み
(4) 原告及び被告は,平成22年9月,本件労働契約の労働条件を次のとおり変
更する旨合意した。(甲3,乙3)ア 業務の内容
図書館運営業務副統括イ 賃金
日給月給制,16万3000円(内訳:基本給15万5000円,役付手当80
00円)
(5) 原告は,平成23年4月1日以降も,B図書館において就労した。
(6) 被告は,平成24年1月19日,原告に対し,同年3月31日をもって本件労働契約を期間満了により終了させ,契約の更新を行わないこと(以下「本件更新拒絶」という。)を口頭で通知した。また,被告は,原告に対し,同月28日付けで,
「平成24年3月31日をもって雇用期間満了としその後の契約更新をしないことを通知いたします。」と記載された雇止め通知書を交付した。同通知書には,「契約更新しない理由」として,「ルールが守れない,協調性がない,誠意がない等業務を遂行する能力,勤務態度が十分でないと認められる為」との記載がある。(甲7)
(7) 平成24年3月31日の時点において,原告の賃金は1か月16万5000円であった。(甲4)
2 争点
原告が,平成24年3月31日の経過による雇用期間満了後も,被告に対して労働契約上の権利を有するか
3 争点に関する当事者の主張
【原告の主張】
(1) 総論
以下に述べるとおり,本件労働契約は,その実質が期間の定めのない雇用契約に類似し,原告において,被告が契約期間満了後も雇用を継続すると期待することに合理性を認めることができるような性質のものであり,被告が更新を拒絶することは,特段の事情が存在しない限り,xxxに照らし許されないと解すべきところ,
本件において,被告が本件労働契約の更新を拒絶することが相当と認められるような特段の事情は全く存在しないから,本件更新拒絶は,違法,無効なものである。
(2) 本件労働契約が更新されることに対する合理的期待について
下記アないしオの各事情によれば,本件労働契約は,その実質が期間の定めのない雇用契約に類似し,原告において,被告が契約期間満了後も雇用を継続すると期待することに合理性を認めることができるような性質のものというべきである。
ア 雇用継続の期待を持たせる言動・制度の存在
本件では,下記(ア)ないし(エ)のとおり,原告に雇用継続の期待を持たせる被告側の言動・制度が存在する。
(ア) 原告は,B図書館の職員として勤務を開始した5か月後の平成22年9月,副統括(副館長)という責任ある職務を担当するよう命ぜられた。
(イ) 原告は,上司であるAセンター・センター長のC(その後「○○」に改姓。以下「Cセンター長」という。)からも「業務への意欲が感じられ期待しています。 Bに必要な人材であ」るとの評価を受けていた。
(ウ) B図書館に係る業務委託契約の期間は5年であり,5年間という短期間に管理運営業務の実績を上げるためには,職員が一日も早く職務に習熟することが重要で,頻繁に職員が交代することは不合理であり,委託期間である5年間は,原則として職員の雇用を継続することが合理的である。
(エ) 被告は,B図書館の管理者に指定されるに当たり,自ら作成し,xx区教育委員会に提出した図書館運営事業計画書において,図書館職員の雇用について,継続的に安心して働くことができる環境を作る旨表明していた。なお,被告は,B図書館の職員が上記計画書を自由に閲覧できる状況においており,原告も現に閲覧していた。
イ ほかに雇止めの事例が存在しないこと
平成22年4月1日B図書館の職員として採用された者は,原告を含めて18名であったが,平成23年4月の契約更新において雇止めになった者は1名もおらず,
平成24年4月の契約更新において雇止めになったのは原告のみであった。ウ 正社員と異ならない職務を担当していること
被告は,指定管理者制度による図書館運営という業務の性質上,図書館職員としては,基本的に正社員(雇用期間の定めのない常勤の従業員)を採用していないが,原告が担当していた副館長という職務は,総合的に図書館管理業務を統括するものであり,原告は,このような責任ある立場に立って,1日8時間,週4日から5日の勤務を行っていたのであって,このような職員は,通常であれば,正社員としての待遇を受けるということが社会通念上認められる。
エ 図書館業務の性質等
(ア) 図書館の管理運営は,数万冊に及ぶ蔵書を管理する業務であり,どのような書籍があり,どのように管理されているかを把握する必要があるほか,他の公共団体や学校等に対する図書の貸出し,貸出図書予約の管理,季節行事の企画など,多数の業務が存在し,これらを把握するための作業に数か月を要する。このような図書館管理運営業務の性質上,職員の契約更新を原則とし,少なくとも委託期間である5年間は労働契約を継続することが合理的である。また,公共的な施設である図書館が,その役割を十分に果たすためには,そこで働く職員が,継続的,安定的に職務を行い,業務内容を習熟,蓄積することが必要であり,このような観点からしても,原告が契約の更新を期待することには合理性が認められる。
(イ) 平成22年12月28日総務省自治行政局長通知(総行経第38号)で指摘されているように,指定管理者制度の運用においては,公共サービスの水準確保や公の施設の安定的な運営が要請されるところ,公の施設の運営を現場において直接担う職員についても,安易に変更をせず,継続的に業務を行わせることが求められるというべきであるから,指定管理者の業務に従事する労働者が,期間満了後の契約更新を期待することは,合理的であるといえる。
オ 現行労働法制との関係
平成15年厚生労働省告示第357号が,1年を超えて継続勤務している者に係
る有期労働契約を更新しないこととする場合,労働者からの請求があれば,更新しない理由の証明書を遅滞なく交付しなければならないものとしていることに照らしても,少なくとも1年を超えて継続勤務している者については,契約更新への期待をできるだけ保護すべきであるといえる。
(3) 本件更新拒絶の不当性について
ア(ア) 本件更新拒絶に係る雇止め通知書には,契約を更新しない理由として「ルールが守れない,協調性がない,誠意がない等業務を遂行する能力,勤務態度が十分でないと認められる為」との記載があるが,原告は,B図書館において,副館長として誠実に勤務し,他の職員から厚い信頼を受けていたのであって,上記記載は何ら事実に基づかないものである。
(イ) 被告は,原告が平成23年4月期の雇用契約書を提出しなかったとして,原告が職員として不適格であると主張する。この点,原告は,契約更新に当たり,前任者と同水準の賃金にしてもらえるよう昇給の希望を出したものの,被告代表者に応じてもらえなかったが,Cセンター長が「会社と掛け合ってくれる」旨を約束してくれたため,昇給の可能性があるのに契約書を提出してしまうと賃金交渉がうやむやにされてしまうという危惧を抱き,労働基準監督署にも相談した上で,提出を留保していたものであり,理由なく提出を拒否していたわけではない。また,原告は,口頭で更新後の契約内容の説明を受けており,その範囲内では更新契約が成立していたのであって,契約書の作成が必須という状況でもなかった。したがって,原告が雇用契約書の提出を留保していたことをもって,原告が職員として不適格であるということにはならない。
イ 被告は,xx区教育委員会から書籍への盗難防止用磁気シール貼りの作業を依頼された際,B図書館の職員に対し,当該作業を,勤務時間外の「内職」として,最低賃金を大幅に下回る「報酬」で行わせたが,副館長であった原告は,このようなコンプライアンス上の重大な問題を看過できず,D館長等に対し,このようなことを止めさせ,勤務時間内の通常作業として行わせるよう度々申し出た。本件更新
拒絶は,このような原告の抗議,改善要求に対する報復として行われたものと考えられ,相当性を欠くものであることが明らかである。
【被告の主張】
(1) 総論
以下に述べるとおり,本件労働契約は,雇用継続を前提とするものではなく,契約更新に対する原告の期待は合理的なものといえないし,本件更新拒絶も合理性が認められるものであって,本件更新拒絶を違法とする事情は見当たらないというべきである。
(2) 本件労働契約が更新されると期待することに合理性がないことについて
下記アないしオのとおり,原告において,本件労働契約が更新されると期待することに合理性があるとはいえない。
ア 雇用継続の期待を持たせる言動・制度の存在に関する原告の主張について 原告が雇用継続の期待を持たせる被告側の言動・制度として指摘する点は,次の
とおり,いずれも更新への期待の合理性を基礎づけるものではない。
(ア) 原告を副館長の地位に就けたのは,当時の館長及び副館長から退職希望が出され,xx区からも速やかに後任者を選任するよう指摘を受けていたため,窮余の一策として行ったことであり,原告もこのような経緯は十分了解していたから,副館長に就任させたことは,何ら雇用継続の期待を抱かせるものとはいえない。
(イ) 原告の指摘するCセンター長の評価は,やり直されたものであり,最初の評価は決して優秀というものではなかった。Cセンター長は,最初の評価の後,被告に対し,原告が評価に不満を持っている旨の話をしてきて,同時に原告が指摘する記載のある勤務評定書を持参してきたものであるから,再評価の内容は,原告の強い意向が働いたとみるのが自然であり,信用するに値しないものである。
(ウ) B図書館に係る業務委託契約の期間が5年であることは事実であるが,業務委託期間と職員の雇用期間との間には何ら関連性がなく,被告が原告に対して5年間の雇用を約束するような発言をしたということもない。
(エ) 被告が指定管理者として作成した図書館運営事業計画書が,職員の雇用について「継続的に」,「安心して」という文言を含む記載をしていたからといって,直ちに,有期雇用の労働者に対して,雇用継続の期待を持たせる言動をしたと評価されることはない。この点に関する原告の指摘は,単なる一個人の思い込みを述べたものにすぎず,客観的なものとはいえない。
x ほかに雇止めの事例が存在しないことに関する原告の主張について
被告が平成22年4月1日にB図書館の職員として採用した者は11名であり,元々被告の従業員であった者と併せて17名で運営を開始したが,平成22年度だけで5名が退職し,平成23年度にも3名が退職している。この中には,試用期間のみで退職した従業員もおり,単に雇止めの者のみを考慮して原告の雇止めの適否を検討するのは適当でない。
ウ 正社員と異ならない職務を担当していることに関する原告の主張について 被告における就業形態としては,正社員,契約社員及びパート社員の三つがある
ところ,正社員は,現場の責任者であり,Aセンターに数名在籍する程度であって,図書館の職員としては,契約社員とパート社員しかいない。そして,原告の行ってきた業務は,全く契約社員としてのそれであり,決して正社員として遇されるべき職務を担当してきたとはいえない。また,正社員であれば,通常週5日の勤務となるから,1か月23日ないし24日の勤務となるが,原告は1か月18日勤務の契約をしていたのであり,正社員と同様の勤務であったといえないことは明らかである。
エ 図書館業務の性質等に関する原告の主張等について
(ア) 一般論として,図書館業務に習熟した職員がいるのが望ましいということはできるが,そのことは,どのような業務であっても同様にいえることであり,図書館業務に特有のものではなく,これをもって雇用継続に対して法的保護に値する期待が存在するという結論を導くのは,論理の飛躍といわざるを得ない。
(イ) 原告は,平成22年12月28日総務省自治行政局長通知(総行経第38
号)を引用して,公の施設の運用に携わる職員が契約更新を期待することは合理的である旨主張するが,この主張は,我田引水のものであり,抽象的で法規範とはいえず,目安程度にすぎない基準を,あたかも本件労働契約の法的性質であるかのようにいうものであって,理由のないことは明らかである。
(ウ) 図書館の管理者に指定された者が新たに職員を採用する場合,その適性を厳密に判断することは困難であり,有資格者,経験者等をとりあえず採用し,雇用期間中の勤務態度等で不適格者を排除する必要があるから,図書館の指定管理者である雇用主には,雇用契約を更新するか否かについて大きな裁量が与えられるべきである。そのため,本件労働契約に係る雇用契約書にも「雇用期間終了以後の契約の有無については,会社側が決定する。」と記載しているのである。
オ 現行労働法制との関係に関する原告の主張について
平成15年厚生労働省告示第357号は,更新しない理由の証明書の交付を義務づけるにとどまるのであるから,これをもって,更新に対する期待に合理性を認めるというような効力が認められないのは明らかである。
(3) 本件更新拒絶の合理性について
ア 被告は,原告に対し,平成23年4月期の契約更新に当たり,雇用契約書に署名押印して提出することを求めたが,原告はこれをかたくなに拒否し続けた。その理由について,原告は,昇給の可能性があるのに契約書を提出するとその可能性がなくなってしまうと考えて,労働基準監督署にも相談した上で,雇用契約書を提出しなかったと主張するが,そこでいう昇給とは,あくまで将来にわたってのものであって,契約書の提出が交渉上不利になるというものではないし,副館長への就任に伴い役付手当を支給しているのであるから,原告の主張に合理性はない。そもそも,原告は,当初,勤務評定に対する不満を漏らしていたにすぎず,被告社長らとの面談でも昇給の話は出ていないのであって,昇給の交渉という前提自体が事実に反するものであるし,労働基準監督署に相談したというのも事実に反する。被告は,原告の真意をはかりかね,顧問の社会保険労務士事務所の所長に原告と面談し
てもらい,契約更新の合意を確認してもらうことで,書面の作成に代えることとしたが,原告は,そのような被告の配慮に感謝することなく,「仕事が忙しいのに。」などと文句すら言っていた。このような経緯から明らかなとおり,原告は,被告の職員として不適格であった。
イ また,原告は,自己の勤務評定に不満があるとして,Cセンター長及びD館長に対して執ように文句を言い,Cセンター長らをして,再評価という通常では考えられない行動をとらせるに至っている。
ウ 以上のような原告の態度から明らかなとおり,原告は,ルール遵守の意識や協調性が致命的に欠如し,自己中心的であり,職員としての立場を自覚した行動がとれていないのであって,原告の業務遂行能力が低く,勤務態度も十分でないことは明らかである。被告は,上記再評価の件などから,このまま原告をこの職場に置いておけば,職場の人間関係に支障を来すと思料し,本件労働契約を更新しなかったものであり,本件更新拒絶には合理性が認められる。
エ 原告の指摘するシール貼り作業については,たしかに,時間外労働に対する割増賃金制度の潜脱となってしまうものではあったが,被告は,当時,この問題点に全く気が付いておらず,原告からも指摘はなかった。原告から指摘があったのは,雇止めを告知した後の平成24年1月24日のことであり,被告は,この指摘を受け,専門家に相談して初めて問題点に気が付いたのであるから,本件更新拒絶は,原告の指摘に対する報復とはなり得ないものである。
オ 以上によれば,本件更新拒絶は,合理的な理由に基づく社会通念上相当なものである。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
前記前提事実に証拠(各項に掲記したもの)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。
(1) 被告によるB図書館の指定管理者への応募等
ア 被告は,平成21年頃,平成22年4月1日以降のB図書館の指定管理者の公募に応募した際,xx区教育委員会に対し,申請書の添付書類として,図書館運営事業計画書(以下「事業計画書」という。)を提出した。事業計画書には,次の記載がある。(甲14,15)
「◎指揮命令系統は,館長を筆頭に,図書館司書有資格者を副館長として配置し,図書館業務に専念させます。また,運営に支障のない十分な人員を配し,各自の役割を明確にします。」
「<配置人数について>
図書館館長 1名
副館長(司書有資格者) 3名図書館司書 1名
一般従事社員(臨時社員)11名 カウンターには常時2名を配置します。」
「 次に,人事管理における効率化につきましては,サービスを低下させない人員を確保した上で,適正人数の配置と,ワーク・ライフ・バランスの推進により,経費・管理,両面での効率化を図ります。図書館は専門性を持った社会教育施設であるとの認識から,図書館業務を習得したスタッフを専業配置することが結果的に一番効率のよい方法であると判断しております。今後も経験の蓄積を図り,更に効率のよい運営が出来るよう管理をおこなってまいります。」
「◎安心して安定した就業を実現するため,ワーク・ライフ・バランスの推進対策などから,継続していきいきと働き続けられる職場環境の整備に全力で取り組みます。・・・弊社ではこれまでの施設運営において,従業員が意欲を持って,継続的に安心して働き続けられる職場環境の整備に全力で取り組んでまいりました。B図書館の運営においても,この考え方を基に中途退職者・若年者の新規採用を積極的に進めます。」
イ 被告は,平成22年4月1日,xx区から,指定の期間を同日から平成27年3月31日までと定めて,同区Aセンター及び同区立B図書館の管理者に指定さ
れた。(甲1,乙23)
(2) 本件労働契約の内容等
原告は,司書となる資格を有していたところ,平成22年4月1日,被告との間で,期間を平成23年3月31日までとする有期労働契約(本件労働契約)を締結した。本件労働契約において,賃金は月額15万5000円(日給月給制),就業の場所はB図書館,業務の内容は図書館運営業務とされており,また,本件労働契約に係る雇用契約書には,「上記雇用期間終了以後の契約の有無については,会社側が決定する。」との記載があった。(乙2)
(3) B図書館の職員構成,職員の退職及び原告の昇格等
ア 被告がB図書館の管理運営を開始した当初,B図書館の職員は,契約社員(雇用期間の定めのある常勤の従業員をいう。以下同じ。)である図書館長1名,副館長
2名及び司書2名(うち1名が原告)と,パート従業員(雇用期間の定めのある非常勤〔パートタイム〕の従業員をいう。以下同じ。)12名の合計17名であり,このうち,副館長1名,司書1名(原告),パート従業員9名が新規に採用された従業員であった。(乙5,20)
イ ところが,B図書館においては,平成22年5月下旬から同年6月上旬にかけて,図書館長のEと副館長のXが,相次いで被告に退職の意向を示し,Xは同年
6月30日限り,Xは同年8月31日限り,それぞれ退職した。(乙9,10)
ウ これを受けて,被告は,同年8月1日付けでパート従業員のGを司書に昇格させ,同年9月1日付けで,副館長のHを館長代行に,司書の原告及びIを副館長にそれぞれ昇格させるとともに,同月3日付けで副館長1名を新規採用した(。乙9,
10)
エ 原告の賃金は,副館長に昇格したことに伴い,月額15万5000円から月額16万3000円(内訳:基本給15万5000円,役付手当8000円)に増額された。もっとも,増額後の賃金は,前任の副館長であったFの賃金より低い金額であった。(甲3,乙3)
(4) 原告の勤務評定及び社長らとの面談等
ア Cセンター長は,平成23年3月頃,原告の平成22年度の勤務評定書(「平成22年度所内評定について」と題する書面)を作成し,被告に提出した。同勤務評定書の「所見欄」には,「児童担当として書架の充実や事業運営に従事されたことを評価されていますが,もう少し前向きな姿勢も望まれています。今後はのびのびと飛躍できるよう支援しますが,本人の努力も期待します。」と記載されていた。(乙
12)
イ 原告は,その頃,平成23年4月期の契約更新に関して,被告のJ副社長及びCセンター長と面談した。その際,原告は,J副社長に対し,昇給があるのかと尋ね,J副社長から昇給がある旨の返答を得た。(甲25)
ウ 原告は,前任の副館長であったFよりも賃金の額が低く,上記のとおりJ副社長から昇給がある旨の返答を得たこともあって,平成23年4月期の契約更新では特別の昇給があるものとの期待を有していたところ,上記面談の後に渡された雇用契約書に記載された賃金の額は,前年度よりも2000円高い16万5000円であった。もっとも,原告が他の従業員に確認したところ,他の従業員も皆一律に
2000円昇給しており,原告が特別の昇給を受けたわけではないことが判明した。そこで,原告は,Cセンター長に対し,賃金を前任者と同じ水準に上げて欲しい旨を申し入れた。(甲4,25)
エ そうしたところ,原告は,平成23年4月27日,B図書館において,被告のK社長及びJ副社長と面談することとなった。原告は,面談において,K社長らに対し,平成22年度の業務がいかに大変であったかなどを説明し,昇給を求めたが,K社長らは,原告に対し,皆2000円昇給させたこと,Cセンター長の評価では,そんなにがんばっているとは聞いていないこと,平成23年度に期待することなどを伝え,原告の昇給を認めなかった。(甲22,25,原告本人)
(5) 雇用契約書の不提出,勤務評定の再評価及び社会保険労務士との面談等
ア 原告は,その後もB図書館の副館長として勤務を続けたが,平成23年6月
頃になっても,署名押印した雇用契約書を被告に提出しなかった。
イ 同月頃,Cセンター長は,K社長に宛てて,「この度は当図書館の従業員の契約が一名滞り,ご迷惑をおかけしております。本人と何度か面談を重ねる中で,契約条件以前に,22年度の評価に対して納得がいかないとの事でしたので,館長と協議し,詳細事項を見直し,再評価いたしましたので,ご提出いたします。本人は業務への意欲もあり,現在も通常通り勤務しております。格段のご配慮をお願い申し上げます。」と記載した文書を,再評価した原告の勤務評定書とともに提出した。再評価に係る勤務評定書の「所見欄」には「児童担当としての書架整備や事業運営に関する評価は前回同様の高評価です。次年度(23年度)より新たに近隣施設への出張お話会を開拓し,23年度より実施しています。また,ビジネスコーナーを整備するなど,業務への意欲が感じられ期待しています。Bに必要な人材であり,特段のご配慮(再考)をお願いします。」と記載されていた。(甲6,25,乙13)
ウ また,同じ頃,B図書館のD館長は,J副社長に宛てて,「B図書館職員,Lの査定につきまして再度のご高配を賜りたく,以下に本人からの申出に基づき,積極的に携わっていると認められる点をご報告させて頂きます。宜しくお願い申し上げます。」などと記載され,原告が「特に携わっている仕事」を列挙した書面を提出した。(乙13)
エ もっとも,上記イ及びウの各書面の提出後も,原告の昇給が認められることはなかった。
オ 被告は,平成23年8月になっても原告から雇用契約書が提出されなかったことから,同月30日,原告と社会保険労務士との面談を設定した。原告は,同面談において,社会保険労務士との間で,平成23年度の賃金の額(1か月16万5
000円)を含む労働条件について,未提出の雇用契約書のとおりであることを確認したが,その際にも,雇用契約書に署名押印して提出することはしなかった。被告は,平成23年4月以降,原告から雇用契約書の提出がなかったことから,原告に昇給前の16万3000円の賃金を支給していたが,上記面談による労働条件の
確認をもって雇用契約書の作成に代えることとし,その頃,平成23年4月に遡って,昇給分の差額(1か月当たり2000円)を追加支給した。(乙4,24)
(6) 磁気テープの貼付作業等
ア ところで,被告は,xx区から,B図書館の書籍管理のために約2万冊の図書に磁気テープを貼る作業を依頼されていたところ,被告は,B図書館のパート従業員に対し,所定労働時間外にテープの貼付作業を行うよう依頼し,平成23年8月10日に作業が開始された。被告は,当初,1時間の作業で一人120冊程度を処理できるものと見込んでおり,これを前提に,作業に従事したパート従業員に支払う報酬を1冊当たり7円としていたが,実際に作業を開始したところ,想定よりも時間がかかることが判明した。(甲12,25,乙25)
イ 原告は,D館長に対し,パート従業員に対する報酬があり得ないくらい低い金額になっている旨指摘し,改善するように要請した。(甲25,原告本人)
ウ その後,D館長は,パート従業員らに対し,作業の一部を所定労働時間内に行うなどの作業手順の変更を指示した。なお,このテープの貼付作業は,平成23年10月末までに完了した。(甲12,25)
(7) 本件更新拒絶等
ア 原告は,平成24年1月19日,Cセンター長から,平成24年4月期の契約の更新を行わない旨を告げられた。
イ 原告は,平成24年1月24日,被告に対し,次の記載のある「雇い止め撤回要求書」と題する書面を送付し,同書面は,その頃,被告に到達した。(乙21,
22)
「 1月19日,xx区立Aセンター長・C氏を通じて『あなたとは,今年4月
1日以降の契約を締結しません』との通知が私に対してなされましたが,それについては,到底承服できませんので,以下の通り,異議を申し立てます。」
「・・・私が雇い止めを通知される理由としては,以下のようなことが挙げられます。
1)昨年,私の賃金が社内の同職の人と比べて著しく低かったために,同職の人と同じ水準にしていただけるようお願いしたこと
2)xx区立B図書館内において行われていたパート職員に対する時給180円にも満たない超低賃金労働の不正行為を上司に指摘したこと(括弧内略)
よって,雇い止めの即時撤回と,4月以降の雇用継続を求めます。」
ウ なお,B図書館の職員の中で,平成23年4月期の契約更新の際に,更新を希望したが被告に拒絶された者はおらず,平成24年4月期の契約更新の際に,更新を希望したが被告に拒絶された者は原告だけであった。(甲25,26)
2 判断の枠組み
前記認定事実によれば,本件労働契約は,期間の定めのある労働契約であり,当初の契約期間は平成23年3月31日までであったが,同期間の満了時に更新され,契約期間が平成24年3月31日までになったものと認められるところ,原告において,上記の新たな契約期間の満了時に同契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものと認められ,かつ,本件更新拒絶が客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないときには,平成24年3月3
1日の経過による期間満了後の原告と被告との間の法律関係は,本件労働契約が更新されたのと同様の法律関係になるものと解するのが相当である。以下,このような見地から検討する。
3 原告において本件労働契約の契約期間の満了時に同契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるか否かについて
(1) 被告は,xx区から委託を受けたB図書館の管理運営業務を開始するに当たり,同図書館の運営業務に従事する従業員として,司書となる資格を有する原告を雇用したものである(認定事実(1)イ,(2))ところ,委託の期間は平成22年4月
1日から平成27年3月31日までの5年間と定められており(同(1)イ),委託期間の更新が予定されていたとは認められないから,原告の雇用の前提である図書館運営業務は,xx的なものではなく,時限的な業務であったということができる。
また,本件労働契約に係る雇用契約書には「雇用期間終了以後の契約の有無については,会社側が決定する。」旨が記載されており(同(2)),当事者間において,雇用期間満了時の契約の更新に関して事前に何らかの合意があったとは認められない。
(2) しかしながら,他方において,図書館法13条1項は,公立図書館に館長並びに専門的職員(司書及び司書補を指す。同法4条参照。),事務職員及び技術職員を置く旨を定めており,公立図書館であるB図書館には専門的職員である司書を一定数配置する必要がある上,被告は,xx区に提出した事業計画書において,司書となる資格を有する副館長を3名,司書を1名配置する旨を明記していた(認定事実(1)ア)のであるから,少なくとも委託期間である5年間は,B図書館に司書となる資格を有する従業員を4名程度配置する具体的必要性があったといえる。
(3) また,被告は,事業計画書において,「図書館は専門性を持った社会教育施設であるとの認識から,図書館業務を習得したスタッフを専業配置することが結果的に一番効率のよい方法であると判断しており」,「今後も経験の蓄積を図り,更に効率のよい運営が出来るよう管理をおこなって」いく旨,「安心して安定した就業を実現するため,」「継続していきいきと働き続けられる職場環境の整備に全力で取り組」む旨,「これまでの施設運営において,従業員が意欲を持って,継続的に安心して働き続けられる職場環境の整備に全力で取り組んで」きたものであり,「B図書館の運営においても,この考え方を基に中途退職者・若年者の新規採用を積極的に進め」る旨を明らかにしており(認定事実(1)ア),被告は,図書館業務の効率的運営や職場環境の整備といった観点から,従業員を継続して雇用するとの方針をとっていたものと認められる。
(4) そして,実際にも,B図書館の職員のうち,平成23年4月期及び平成24年4月期の各契約更新の際,有期労働契約の更新を希望しながら,被告によって更新を拒絶された従業員は,原告のほかにはいなかったことが認められる(認定事実 (7)ウ)。
(5) 以上の事情を総合すると,被告において,館長,副館長を含むB図書館の全
ての職員について,期間の定めのある労働契約を締結したのは,雇用の前提となる同図書館の管理運営業務が,委託期間を5年とする時限的な業務であり,委託期間満了後の雇用維持を保障することができないことを主たる理由とするものと解することができ,その理由には合理性を認めることができるが,他方において,委託期間中は,司書となる資格を有する従業員を常時一定数配置しておく具体的必要性があり,期間の途中で従業員の数を減らすことが予定されていたとか,従業員の数を減らす必要が生じたなどの事情は認められず,むしろ,被告は,図書館業務の効率的運営や職場環境の整備といった観点から,従業員を継続して雇用するとの方針をとっていたことが認められるから,原告において,いまだ委託期間の中途である平成24年3月31日の経過による雇用期間の満了時に,本件労働契約が更新されるものと期待することには,合理的な理由があったというべきである。
4 本件更新拒絶が客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない事情があるか否かについて
(1) 被告は,原告について,ルール遵守の意識や協調性が致命的に欠如し,自己中心的であり,職員としての立場を自覚した行動がとれていないのであって,業務遂行能力が低く,勤務態度も十分でないとし,その根拠として,①原告が不合理な理由で雇用契約書の提出をかたくなに拒否し続け,社会保険労務士との面談を設定したことにも感謝せず,「仕事が忙しいのに。」などと文句すら言ったこと,②原告が自己の勤務評定に不満があるとして,Cセンター長及びD館長に対して執ように文句を言い,Cセンター長らに再評価をさせるに至っていることとの事実を主張する。
(2)ア しかしながら,上記①の点について,原告は,平成23年4月期の雇用契約書を被告に提出しなかったものの,同月以降も引き続きB図書館の副館長として勤務を続けており(認定事実(5)ア),原告が雇用契約書を被告に提出しなかったために,B図書館の管理運営業務や被告の人事管理業務等の業務に大きな支障が生じたことは認められない。また,原告は,平成23年8月30日,被告が設定した面
談において,社会保険労務士との間で,賃金の額を含む労働条件について,未提出の雇用契約書のとおりであることを確認した(同(5)オ)のであるから,その時点までには,原告と被告との間の労働契約の内容も明確になったということができる。イ(ア) また,原告の陳述書(甲25)には,署名押印した雇用契約書を被告に 提出しなかった理由について,契約更新に当たって昇給の希望を出しており,Cセンター長が会社と掛け合ってくれると約束してくれたため,昇給の可能性があるのに契約書を提出するとうやむやにされてしまうと思って提出しなかった旨の記載が
あり,そのような理由が全く不合理であるということもできない。
(イ) この点,被告は,平成23年4月27日の原告とK社長らとの面談の際,昇給の話は出ていなかったのであり,原告が雇用契約書を提出しなかったのは,自己の勤務評定に対する不満に基づく嫌がらせであることが容易に推測される旨主張する。しかしながら,証拠(甲22)によれば,原告が,上記面談のあったその日に,夫の携帯電話に宛てて「副社長が社長も連れてきて面接した。『皆ニセンエン上げたじゃないか。今年のC評価でそんな凄いなんて聞いてない。まあ23年度に期待』の1点ばり」と記載した電子メールを送信していることが認められるから,原告が上記面談においてK社長らに昇給を求めたことは明らかというべきであって,被告の上記主張は採用できない。
ウ そして,被告が社会保険労務士との面談を設定したことに対して,原告が「仕事が忙しいのに。」と不満を述べたとの点については,仮に当該事実が認められたとしても,これをもって原告の勤務態度に問題があるとまで評価し得る事情ということはできない。
エ 以上によれば,上記①の点をもって,原告について,雇用関係の継続に支障を来すような業務遂行能力の不足や勤務態度の不良があるということはできないというべきである。
(3) 次に,上記②の点について,K社長は,被告代表者尋問において,Cセンター長及びD館長が,原告から再評価をしてほしいとしつこく言われたという話をし
ており,D館長については,昼休みに何度も何度も来てしつこくお願いされたという話であった旨供述しており,J副社長の陳述書(乙28)にも同旨の記載がある。しかしながら,原告は,本人尋問において,これを否定し,Cセンター長に対しては,再評価の話ではなく,昇給の相談をしたことがあるが,その回数は3回くらいであり,D館長には,昇給の相談もしたことはない旨供述しているところ,K社長の上記供述及びJ副社長の上記陳述書の記載は,いずれもCセンター長及びD館長から聞いたという伝聞にすぎないし,これを裏付けるような客観的資料も提出されていないのであって,容易に採用することができず,ほかに上記②の点に関する被告主張の事実を認めるに足りる的確な証拠はない。
(4)ア なお,証拠(乙26,27)によれば,D館長は,原告について,「職員としての立場を自覚した行動が十分とれていない。」,「報告が少ない。」(乙26)とか,「館長への報告や連絡が極めて少ない。」,「職員としての自覚が十分でない。」(乙
27)などといった記載のある書面を作成し,被告に提出したことが認められる。イ しかしながら,上記各書面の記載は,いずれも抽象的な表現にとどまり,そ のような評価の根拠となった具体的事実の指摘はない。また,上記書面(乙26)には「現在,棚替え,BDS,など多忙で,休日も自宅で仕事をしている状態で,きちっとした評価をするに相当する時間がとれません。」との記載があるから,上記各書面は,D館長が自発的に作成したものではなく,被告がD館長に作成を指示したものであると認められるところ,被告において,定期的な勤務評定が実施されているにもかかわらず,あえて上記書面の作成を指示した経緯及び目的は明らかでない(この点に関し,原告は,被告が上記各書面を証拠として提出する前に実施された本人尋問において,B図書館に勤務していた時期に,同図書館の共有パソコンの中から原告について悪く書かれた文書ファイルを見つけてD館長を問いただしたことがあり,D館長は,J副社長から原告の悪いところを出せと再三言われて無理やり絞り出した内容だと告白してくれた旨供述している。)。そうすると,上記各書面
の記載をそのまま信用することはできないというべきである。
(5) そして,以上のほかに,原告について,被告が主張するような業務遂行能力の不足や勤務態度の不良があったことを認めるに足りる証拠はない。
(6) 以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,本件更新拒絶は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であるとは認められないというべきであるから,原告と被告との間には,本件労働契約が更新されたのと同様の法律関係が存在することになる。
5 賃金請求の当否及び賃金請求権の金額等について
(1)ア もっとも,本件労働契約の期間満了後も雇用が継続すると期待することの合理性に関し,原告の主張するところは,被告がB図書館の管理者であることを前提に,原告がB図書館の職員として継続雇用されるべきことをいうものであり,原告において,平成27年3月31日の経過により被告に対するB図書館の管理者の指定期間が満了した後も,なお雇用が継続すると期待することに合理性がある旨の主張立証はなく,また,証拠(甲25)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,同年
4月1日以降のB図書館の管理者に指定されず,同年3月31日限りB図書館の管理者でなくなる見込みであることが認められる。
イ 以上の事情に鑑みると,現時点において,原告と被告との間に本件労働契約が更新されたのと同様の法律関係が存在することを前提としても,原告の被告に対する平成27年4月1日以降の賃金請求権については,その発生の蓋然性を認めることができず,将来給付の訴えの基礎となる請求権としての適格を有しないというべきである。
ウ したがって,原告の被告に対する賃金請求のうち,平成27年4月1日以降の賃金の支払を求める部分については,訴えが不適法である。
(2) なお,本件労働契約における賃金の計算期間は,毎月16日から翌月15日までとされているところ(前提事実(3)カ),原告の被告に対する賃金請求が認められる平成24年4月1日から平成27年3月31日までの期間のうち,1か月に満たない計算期間である平成24年4月1日から同月15日まで及び平成27年3月
16日から同月31日までの各期間の賃金については,いずれも賃金月額16万5
000円の半分である8万2500円であると認めるのが相当である。第4 結論
以上によれば,原告の請求は主文の限度で理由があり,その余の請求に係る訴えは不適法である。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第11部
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