離婚後扶養. 2004年 BGH 判決によれば,夫婦財産契約は,離婚効果の中心領域に基づく扶養の要件事実を放棄した場合に,良俗違反となる。特に,子どもの養育に関する扶養(BGB 1570条)が第一にされている。しかし,夫婦が契約締結時に子どもを有していない,もしくは高齢であるために,婚姻に際して子どもを設けることを計画していない場合には,子どもの養育に関する扶養(BGB 1570条)を夫婦財産契約で放棄しても,有効性の規制の問題とはならない138)。これに対して,子どもがいる,もしくは婚姻締結時に妊娠している場合には,子どもの養育に関する扶養を含め放棄に対する補償がない合意内容は,良俗違反となる。同等の補償を合意している場 ドイツにおける夫婦財産契約の自由とその制限(松久) 合にはこの限りではないと判断する裁判例もある139)。子どもがいる場合には,金額に関する制限や養育期間に関する制限の取り決めは,有効性の制限により無効となる140)。 また,老齢もしくは疾病に基づく扶養(BGB 1571条・1572条)は,中心領域の第二順位に位置づけられているが,具体的な理由が存在している場合には,これに関する任意処分も可能である。特に,婚姻前に生じた疾病に基づく扶養は,夫婦財産契約により排除することができるとされている141)。両配偶者が婚姻前から行っていた仕事を継続する場合,お互いが単独で自身を扶養することができることから,清算すべき婚姻を前提とした不利益は成立せず,夫婦財産契約による排除も可能となる142)。また,一方配偶者が婚姻前に十分な専門教育を受けていなかったことから,十分な収入を得ることができなかったとしても,この場合には他方配偶者へ扶養義務を課すことは不適切であるとして,老齢に基づく扶養を放棄した夫婦財産契約を有効であるとしている143)。さらに,婚姻締結時44歳と46歳であったことから,各配偶者がこれまでの稼働によりすでに十分な老齢扶養を有していることを重視して,夫婦財産契約による老齢に基づく扶養の放棄を有効であると判断している144)。 他の扶養の要件事実は,全て放棄することができる。失業に基づく扶養 (BGB 1573条)は,法規定が扶養権利者に対して,扶養権利者が持続する保証された仕事場を見つけるとすぐに権利者に労働場所のリスクを移していることから,後位に位置づけられている145)。一方で,離婚効果の中心領域と異なり,疾病準備及び老齢準備扶養を,子どもの養育に関する扶養や疾病及び老齢に基づく扶養といった基本扶養(Elementunterhalt)と同 様に評価し,権利行使の規制によって契約内容を修正している裁判例も見られる146)。 また,第四順位に位置づけられている補充扶養(Aufstockungsunter- halt)(BGB 1573条2項)は,稼働しながら子どもを養育する一方配偶者の場合には,子どもの利益になることから,養育に関する扶養と同様に,