小 括 样本条款

小 括. Ⅱ.複合契約についての議論状況
小 括. 本章においては,複合契約にとらわれない一般的な意味での「契約の目的」をめぐる議論状況について確認した。目的不到達アプローチは,本稿で取り上げる複合契約の解除の他にも,債務不履行や事情変更,瑕疵担保などの場面でも採用される重要な基準である。それにもかかわらず,従来の学説では「契約の目的」を相手方からの反対給付という要素たる債務として当然に置き換えているものが多い35)。つまり,「要素の債務に不履行が生じた際に,債権者の契約目的が不達成になるということは当然のことであり,契約目的という概念を持ち出す必要がなかった」36)のである。このようなことも一因となり,これまでに「契約の目的」に関する議論は十分に行われてこなかった37)。 これに対して,小野説や森田説においてはその定義付けが行われ,細かな内容は異なるものの,「契約の目的」には小野説でいうところの直接目的,森田説でいうところの対象(objet)としての目的のような,反対給付などの要素たる債務を指すものと,間接目的,目標(but)としての目的のような最終的に目指すところを指すものの二種類があると考えている点では共通しているものと考えられる。本稿においても,基本的にこのような分類に基づいて分析を行っていきたい。そして,以下の分析においては,前者のようなものを「契約の対象」,後者のようなものを「契約の目標」と呼称することとする。特に,後者の「契約の目標」については,学説等では今まで意識されてこなかったものの,筆者の仮説にも関係しうる ものであり,注目したい。 また,國宗が着目した筏津の同意理論の考え方は,主体的同意という点に着目することにより,単一契約の分析はもちろん,複合契約の場面においてもその解除枠組みを説明する上で一つの重要な考え方の指針を示すものであると思われる。
小 括. 本章では,平成⚘年判決を契機として盛んとなった複合契約をめぐる議 論を取り上げた。例えば,池田説に対しては「ひときわインパクトがあり,複合的契約関係の構造を論じるうえできわめて興味深い視点(特に『付加 価値の発生』という考え方)を提供している」67),河上説に対しては「二 つの契約が結合して大きな一個の契約を形作るという構成はビジュアルで感覚的にも馴染みやすい」68)など高く評価されている。 しかし,これらには批判もなされている。まず,池田説に対しては,
小 括. 以上のとおり、国内ではベンチャー・キャピタル・ファンドを中心に海外ファンドとは異なる独自の実務が形成されている一方、海外ファンドについては定型的に用いられる条項もあることから、投資事業組合や投資家の性質に応じて組合契約を作成することが実務上必要になると思われる。GP 及び LP のいずれも、当該条項が投資事業組合の運営にどのような影響を及ぼすかを意識して交渉を行うことが重要であろう。
小 括. 以上の判例・学説の状況を踏まえ,復活請求時の告知義務の適用の有無についてどのように解するべきか。第⚑に,保険約款に失効保険契約の復活とその際の告知義務が定められている場合について,前記学説のうち失効保険契約の復活請求時に保険契約者等に告知義務を課すことに否定的・懐疑的な立場の論者が,その場合にまで当該約款の私法上の効力を無効と解したり,信義則を用いてその適用を制限すべきであると解したりするのかどうかは必ずしも明らかではない。 しかし,復活期間が保険契約の失効時から⚓年と比較的長めに設定されるケースが少なくないこと,この間における生命保険契約・傷害疾病保険契約の被保険者の健康状態等の保険事故の発生可能性に関する重要事実の変化の
小 括. 生命保険会社における苦情・紛争解決に向けた取組みである生保 ADR においては,生命保険各社が支払適切性を再確認するための専門組織の設置,保険金・給付金の支払いに関する専門相談窓口の設置,社外弁護士等による支払い審査会制度の設置等に取り組んでいるなかで解決できなかった困難な事案が審査されていることもあり,他の ADR 機関との比較で和解率が相対的に低い旨が指摘されている。積極的な事情聴取によって,法令や約款に基づかない柔軟な解決の糸口となる個別事情の詳細把握に従来以上に注力することは和解率の一定の向上に寄与するものであろうし,また,和解件数の増加によって先例が集積され,今後,事案審理の際に考慮すべき事項(チェックリスト)がより充実することで,より幅広い和解提案につながっていくこ とが期待される。
小 括. 第3章 2001年 BVerfG 判決
小 括. 第5章 2004年 BGH 判決
小 括. これまでのドイツの議論からは,男女同権や婚姻締結の自由,契約締結の自由といった「自由」と「平等」の理念の下,「子どもの福祉」という制限があるものの,両当事者が対等の立場で自由に契約を締結することを前提としていることが確認できる。したがって,BGH の判例理論は,夫婦財産契約に対する内容規制に消極的であった。また,BGB 138条や242条といった一般条項の適用範囲も明確に区別されていなかった。さらに, BGH は,原則として契約自由の原則を重視していたが,例外的に子どもの福祉を重視し,子どもの福祉・利益に反するような夫婦財産契約の取り 決めは BGB 242条によって無効とされてきた。 他方で,77年改正法によって離婚後扶養が改正された後でも,離婚後扶養は完全扶養を念頭に置いており,扶養請求権である夫の経済的負担が重くなったことから,夫婦財産契約によって,これらを修正することが試みられ,また事実婚の増加という社会的事実の一つの要因とされていた。 このような社会状況を考慮して,原則として夫婦財産契約の自由を認め つつも,一定の制限を試みたのが,ラムやシュベンツァーの議論であった。当時ラムが指摘した「社会的弱者」の多くは,性別役割分業によって専業 主婦として家事育児に従事する妻であった。性別役割分業の意識が強い社 会状況では,社会的・経済的弱者が,家庭内での弱者となることが多く, したがって妻が弱い立場になりがちである。ラムの見解には,このような 状況にある妻の保護の実現を試みるものであった。ジェンダーの視点から みれば,家庭内のジェンダー構造に対する是正の必要性を認識するもので あるとみることができる。またシュベンツァーの議論も,「構造的な従属 的関係」という概念を用いることで,ラムと同様に,ジェンダー構造の是 正を試みたものといえる。 しかしながら,「寄与の公正性(Teilhebegerechtigkeit)」や,1993 年 BVerfG 判 決 に よっ て 明 確 に さ れ た「一 方 的 な 優 越(einseitige Dominanz)」,「構造上の従属的関係」といった概念は明確なものではなく,批判の対象となった80)。ラムを除いて,夫婦財産契約の自由についてのみ 適用される内容規制が必要であることを説明することはなかったが,いず れにしても,学説の多くは,夫婦財産契約の自由とその制限という課題に 対する現行法の不十分さを指摘するものであった。これらの議論によって,夫婦財産契約における内容規制の必要性が明らかにされてきたが,具体的 な事例についての明確な判断基準を確立するまでには至らなかったことか ら,契約締結時に妊娠している女性との契約は常に無効となり,制限行為 能力者に近い状況に陥る危険性があることも同時に指摘されていた81)。 このような議論状況の下で,2001年に BVerfG が夫婦財産契約の内容規 ドイツにおける夫婦財産契約の自由とその制限(松久) 制に関する判断を行い,夫婦財産契約の自由と内容規制に関する議論に大きな変化が生ずることとなった。
小 括. 2001年 BVerfG 判決が,従来とは異なる判断基準を示したことから,判例・実務に大きな影響を与えている。裁判所が,2001年 BVerfG 判決の判断基準を適用することで,夫婦財産契約や離婚効果に関する合意の制限を試みてきた。しかしながら,契約自由が問題となる様々な局面に介入することになり,明確な基準・判断構造が示されることはなく,法的安定性の観点からは,問題視されてきた。このことからも,BGH には夫婦財産契約や離婚効果に関する合意についての裁判所による内容規制の構造化と,下級審判決によって明らかになった課題を解決することが求められることとなった。