本稿では,こうした雇用契約をめぐる評価とインセンティブの問題を,関係的契約に関する契約理論の発展を拠り所として検討していきたい。まず最初に,一対の企業と労働者 との雇用関係を想定して,評価とインセンティブとの関連について Baker,Gibbons and Murphy(1994) の簡便なモデルを用いて説明を行う。 とくに,外部で立証可能な成果指標に基づく明示的契約と主観的査定の情報などによる立証不可能な成果指標に基づく暗黙的契約の相互作用を,長期雇用関係のモデルにおいて...