自然条件、設計変更、工事範囲(scope of work)の変更、法律の改廃等、多様な不確定要因 がある。これらは契約当事者にとって予見できないリスクであり、契約当事者が、そのすべ てを制御することは不可能である。このように大きな不確実性やリスクが介在する場合、生 起しうるすべての状況に対応しうる契約を記述することは不可能である。むしろ、契約内容 を詳細に記述しない不完備契約(各状況に対して講じるべき行動が具体的に記述されてい...建設請負契約 • December 20th, 2018
Contract Type FiledDecember 20th, 2018日本の公共工事標準請負契約約款(平成 29 年版)(The Standard Form of Agreement and General Conditions of Government Contract for Works of Building and Civil Engineering Construction,以下GCW と略す)も、FIDI と同様に、1)外生的リスクの分担ルールに関しては大きな差異はなく,2)少なくとも理念的には望ましいリスク分担ルールを採用している。GCW においても請負者が追加的支払を請求する権利を認めている。この点では、 GCW と FIDIC において大きな差異はない。一方、追加的支払を得るための手続きに関しては大きな差異が見られる。GCW には、クレーム条項は存在しないが、請負者が契約変更に関して発注者と交渉する権利を認めている。例えば、GCW 第 23 条では『工期の変更については甲乙協議して定める.』と規定している。合意に至らなかった場合には紛争解決が直ちに第 3 者である調停人、又は紛争審議会のあっせん、又は調停あるいは仲裁に委ねられる.現実的には,発注者側が契約変更を決定するという立場に立っている。GCWには、契約変更の立証責任に関する規定が存在していない。発注者側が契約変更の内容を過不足なく規定できるという前提に立っており、請負者側の立証責任の必要性を認めていない。この前提が成立する限り,FIDIC が求めるような立証手続きを経る必要性もなく、契約変更の効率性も達成できる。なお、公共事業の場合、発注者は会計検査院に対して契約変更の正当性を立証する責務を負う。しかし、公費使途の効率性に関する検証を目的とするものであり、請負者に対する立証ではない。